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2011年7月10日 (日)

レイ・ハリーハウゼン『SF巨大生物の島』 ('61、コロンビア)

 世界有数の、午後のTV放映が似合う映画。

 決して面白くない訳ではないのだが、過剰にのめり込ませてはくれない。適度な緩さと、何故か最後まで観てしまう持続力のポテンシャル。
 ぐだぐだした物語の展開にいい加減飽きた頃に、インサートされるレイ先生(ハゲ)渾身の本番行為。つまりは特撮。ここだけ、突然本気度が上がるのでついつい見入ってしまう。
 構造的に、まだピンク映画流れでドラマ本編が残存していた、昭和末期のAVみたいな感じだ。

【あらすじ】

 1865年南北戦争、リッチモンド攻防戦。
 南軍の捕虜になっていたハーディング大尉、その部下の自由な黒人ボブとヘタレの若者ジョニーは、従軍記者の偏屈ジジイを伴い、大型気球で戦火を逃れ、決死の脱出を試みる。捲き添いになる可哀相な南軍兵士一名。
 彼らはアメリカ史に残る巨大台風の影響を受け、進路を見失い、大陸を飛び越えて太平洋へ。(その大きな原因として誰一人気球の運転に熟達した者がいなかった点が挙げられる。)
 この間、碌に食糧もなく飲み水にも事欠く有様だった筈だが、全員ジッと我慢していたのだった。
 やがて、ガスの抜けた気球は降下始め、砂袋を捨てるわ、玉袋を干すわ、最終的にゴンドラを切り離すわ、大騒ぎ。眼下に広がる海は大時化で、ビル何階建てクラスの大波が荒れ狂っているのだから、こりゃまぁ仕方ない。
 もう駄目か、と思われたとき、前方に見えてくる陸地。
 やった、助かった。でも、帰れない。

 彼らが辿り着いたのは、万事おっさんに都合がいい神秘の島だった。なぜ、こんな島が存在するのかさっぱり解らない。
 まず、海岸にいるのが巨大なカキ。通常の二十倍くらいのサイズがある。

 「おい、美味いぞ。喰ってみろ」

 「・・・ボクは、貝類が苦手なんです・・・」


 などと、おっさんとジョニーの気の抜けたやり取りがあって、すっかりリーダー風を吹かせ始めたハーディング大尉、いきなり、火山に登ろうと言い出す。
 島の中央には、絵に描いたように(本当にマット・ペインティングで描いてある)真っ黒い煙を噴き上げる、かなりテンション高めの活火山が一個あり、こういうジャンルにやたら詳しい不毛な人生を送っている哀れな人からしてみれば、あぁコイツが最後に大爆発してジ・エンドなのだな、と容易に察しがつくのであるが、とにかくそこへ登って周囲の様子を見ようよ、ということだ。
 原作、ジュール・ヴェルヌ。
 『十五少年漂流記』でもブリアン少年が同じ手口でリーダーの座を確保していたが、とにかく主導権を取るには、人より高いところに登れ。夢も希望もない意見だ。
 で、山に登ると、山羊の群れが。

 「捕まえろ!
 これでミルクもチーズもゲットだぜ」


 ポケモンより捕獲が簡単な山羊たちを掴まえ、意気揚々引き上げる一行。しかし島の周辺は他に陸地の影もなく、その方面の成果はゼロだった。
 その夜、黒人は星に祈った。
 「女、ください。
  このままじゃ、ホモにでも走りそうだ!」


 翌朝、海岸にパンツ一丁の若い女が、保護者のババアと共に打ち上げられた。
 沖で豪華客船が難破したらしく、逞しい船員も流れ着いていたが、ソイツは顔面を水に浸けて既に窒息死。おいしいものだけ、厳選素材。
 こいつはラッキー、と早速飢えた男どもが集団で忍び寄ると、突如襲い掛かってくる馬鹿でかいカニ。

 「うわーーー!!」

 胴体を挟み上げられた黒人、ついでにオチンチンでもチョン切られんじゃないかと怯えていたら、大尉の陣頭指揮のもと、槍で甲羅を裏返し。
 ちょうどいい具合に、その場にあった間欠泉の噴き出る温泉プール(ここは火山島なので一応納得)に突き落として、見事巨大なカニが一杯、茹で上がった。
 あとは、やし酒飲んで大宴会。
 新参の女二名も加わり、飲めや歌えやどんちゃん騒ぎ。
 
 「おい、喰ってみろ!
 カニの肉はバターみたいに柔らかいんだぞ!!」
 
 「いや・・・あの、ボク、実は甲殻類も苦手でして・・・」


 どうやら海鮮系がとことん駄目らしい若手ジョニー。涙目。
 だが、なにが幸いするか分からないもので、そのういういしいヘタレっぷりに母性本能をくすぐられたらしいパンイチ女。ふたりは附き合い始める。

 そんなこんなで、今日も今日とて人目を忍んで山でデートしていると、今度は馬鹿でかい蜂が襲ってきた。
 巨大化のサイズは、どうも生き物によってかなりアバウトな設定らしく、今回のハチは全長5メートルくらいある。

 「どんだけーーー!」
 
叫びながら、目の前の洞窟へ逃げ込むふたり。
 息せき切って逃げ延びた幸運を喜び、祝福の熱いキッスを交わす。その眼前に、なんとも異様な光景が。

 「なんだ、コレ・・・?!」

 そこで見たのは、洞窟の奥に隠された潜水艦の発着ドックだった。
 停泊している、微妙にディズニー映画に版権を配慮したらしきデザインの、お馴染みのアレ。
 原作、ジュール・ヴェルヌ。
 「これって・・・?」
 「アレよ!間違いないわ」
 「でも、なんでまた、こんなところに・・・」

 その頃、海岸の大尉一行は、通りすがりの海賊船の襲撃を受ける。
 からくも応戦するも多勢に無勢、勝ち鬨を挙げて迫り来る凶悪極まりない海賊の乗る船の舷側に、突如、爆発の黒い煙が!
 あれよあれよ、と見守るうち、みるみる沈んで海の藻屑と散る海賊一味。

 「・・・なんだ、なにが起こったんだ?」

 混乱する一同の前に現れたのは、背中に大きなホラ貝を背負って、シャコ貝の仮面を被った怪人物であった。

 「ハロー」
 その男は厳格なクィーンズイングリッシュで挨拶した。
 「あの船は目障りなので、爆薬を仕掛けてふっ飛ばしてきた。もう危険はないので、安心して欲しい」
 
 「だ・・・誰だ、あんたは?」
 息を呑んだ大尉が訊いた。

 男は仮面を脱ぐと、日焼けした笑顔を見せた。

 「わたしは、ネモ船長。
 この島の生物が巨大なのは、みんな私のバイオテクノロジー研究の成果なのだよ!!」


 「エーーーッ?!これって、そういう話だったのーーー?!」
 驚愕する一行。

 「経済の根幹を変えなければ、戦争はなくならない。
 食糧問題を解決すれば、人々が争い合うこともなくなるだろう。
 そういった意味で、なぜかH・G・ウェルズの後発のアイディアを勝手にストーリーに織り込んで出来た映画がこれなのだよ!
 誰か、脚本段階で突っ込んでやれよ!
 この映画、絶対おかしいって・・・!!」

 ・・・その瞬間、溜まりに溜まったマグマの怒りが火を吐き、絶叫する登場人物全員を飲み込んで爆発し、神秘の孤島は太平洋の海底深く没し去ったのだった。
 
 暗い海の底で、数億年生きてきた巨大オーム貝が一部始終を見守っていた。
 が、そのうち飽きて、駅前のパチンコに行った。
 今日は出玉解放デー。


【解説】

 上記「ホラ貝背負って、シャコ貝の仮面を被った怪人物」というネモ船長に関する記述は、映画に即した、まったく真実の描写である。
 私は、思わず目を疑った。
 この恐るべき破壊的なセンスの無さこそ、この映画の最高の見所である。本家『海底二万里』や後の『アトランティス・七つの謎』も同様だが、ネモ船長の出て来る映画に碌な物はない。

 

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