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2011年7月24日 (日)

ルチオ・フルチ『ビヨンド』 ('81、FULVIA FILMS、パイオニアLDC版)

 フルチ残虐百連発。映画としての最低限の体裁を整えるのも怠って、暴走しまくる不自然極まるアトラクション。素直に云って素晴らしい仕上がりだと思う。
           ※
 (BGM、『ビヨンド』の自動ピアノ演奏。盲人がギョッとするアレが流れる。)

 ということで、今回は監督のルチオ・フルチさんに霊界よりお越し頂きました。
 どうも。

 -「ドウモじゃねェーヨ!!
 
俺に金を貸してクレ!!」

 
監督はとっくに故人となっているとお聞きしましたが、死後も金銭的にお困りで?

 -「ウルへー!!波平!!じゃりっパゲ!!
 地獄の沙汰も金次第、金さえありゃあの世(ビヨンド)はなんとかなる!!」


 確かに監督のキャリアを拝見しますと、芸術家というより、金稼ぎの為にしょうもない残虐描写をやり続けた職人という疑惑が濃厚ですもんね。

 -「芸術の為に映画を撮るのは、もっと偉い人に任せておけばいいんだヨ!!
 こっちは、生活がかかってるんだ!!ふざけんな!!
 毎日が無防備都市状態ですヨ!!リアル自転車泥棒ですヨ!!」


 それ、単なる窃盗行為ですから。
 『ビヨンド』はそんなさもしい男の最高傑作として、アメリカの顎の割れたおっさん(タランティーノ)も絶賛しているその筋では有名作品ですが、一体どんなお話だったのか?
 何度観ても話がわからなくなる、観終わる頃にはアタマが悪くなっている気がする、等々クレーム続出のストーリーを適当にご紹介しましょう。
           
【あらすじ】

 アメリカ。ルイジアナ州。
 かつて地獄の風景を描いた画家シュヴェックが、怒り狂った町民の皆さんに磔にされ惨殺された、曰くつきの呪われた旅館(事故物件)に、おばちゃんがひとりで越してくる。
 ここで何が残虐だって、このおばちゃん、女優・バレリーナ・ダンサー・作家・写真家・ライター・イラストレイター、日雇い掃除婦と若者が憧れる職業(サブカル系)に次々手を出して、ことごとくどれひとつ陽の目を見ず食い詰めて、このままでは生活保護を受けるしかない!
 相当にてんぱった危険な崖っぷち状態のところに、金持ちのおじさんの遺産として、この老舗旅館を譲り受けたのだ。
 したがって、改修費用なんか持っていない!
 水道屋に払うお金もない!なんて危険すぎる状態なんだ!

 その頃、町では地獄の門の入り口が開いて、脳の割れたおやじが多数、暴れていた・・・・・・。

         
 -「・・・って、オイ!!
 オマエ、わしの映画を馬鹿にしているダロ!!」


 いえいえ、どっちかというと、大好きですよ。
 無駄に痛覚描写を延々重ねるところとか、物語の整合性を無視してその場の勢いだけで話を強引に進めるところとか。
 監督の作品を観るたびに思ってたんですが、なんで毎回、あぁも悪意剥き出しなんですか?
 癒しブームって知ってますか?

 -「オレガ、“癒シ”ダ!!
   オレガ、“癒シ”ダ!!」


 確かに。
 ムチャクチャ無理やりな硫酸顔面溶かしとか、動物の本来の行動を完全に無視したタランチュラ顔面引き剥がしのち肉をクチャクチャの刑とか、なんか観ていて癒されるものがあります。
 “こういう残虐を観たかった!”っていう癒しですね。嫌だなぁー。

 -「オレも若い頃はいろいろ、あったんダヨ。
 ヴィスコンティに褒められたり、将来を嘱望されたりもした・・・。

 でも、さっぱり金にならなかった!!
 驚くほど、貧乏だった!!


 食い詰めたオレは、星の降る夜、ミラノ橋の下のドヤで心に誓ったんだ。
 この世を下品のどん底に叩き込んでヤル・・・!!
 お上品な奴らなんか、全員地獄へロケット便で直送してヤルゼ・・・!!」


 そういう感じが良く出てますね。
 今日は貴重なお話をありがとうございました。サインください。今なら、高く売れそうです。

 -「生きてるときにアガレヨ!!オレの評価!!
 ロメロはいい
ナ!!」

 まさに死人に口無しというやつですね。
 それに、あちらは真面目なテーマとかお持ちですから。映画監督の値打ちなんて、インタビューにどう答えるか次第なのかも知れませんね。
 今日はどうもありがとうございました。

 -「ギャラ寄越セ!!ギャラ!!」

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