レイ・ハリーハウゼン『恐竜グワンジ』 ('69、ワーナー+セブンアーツ)
特撮の神様、レイ・ハリーハウゼン(ハゲ)の操る恐竜がやって来た!
意外と観られていない『恐竜グワンジ』は、神様の恐るべきテクニックをたっぷり堪能できる実にお得な作品だ。
正直なところ、まったく期待しないで観たのだが、あれよあれよと面白く一気に最後まで観通してしまった。90分という長さも気が効いています。
ドラマ部分は世評どおりかったるく、『アニーよ、銃をとれ』みたいなサーカス女と超適当な男のどうでもいい恋愛沙汰を軸に進むのだが、イケメンの馬と少年の驢馬と天秤にかけて迷わず少年を選ぶ気違いジジイやら、片目のジプシー老婆の子分が凶悪な小人(本当に登場以降悪事しか働かないので驚いた)など、細かいくすぐりが効いていて、深い考えを持たなければ充分楽しむことが出来るだろう。
物語は1900年頃のメキシコ。
ジプシーの守る秘密の谷に、とうに絶滅した筈の古代生物がウジャウジャいた!なんでやねん!
そこから始まる珍騒動!
恐竜を捕獲して一儲けをたくらむ悪い奴らと、自然の脅威と共に生きる善良なジプシーとの無意味な対立が、西部に生きる別にガンマンじゃないサーカス芸人のマイホーム願望と相俟って、まったく関係ない人達が次々恐竜に喰われる、史上空前の大惨劇へと繋がっていく!
いっとくが、恐竜に本当に丸齧りにされてますからね!死者の数なら残虐スプラッターを軽く凌駕!
細部は映さないから、血糊は一切出ませんけどね!逆に、むしろ粋じゃないか!
レイ先生(ハゲ)の操る登場モンスターは、まずはネコぐらいのサイズしかない、有史以前の可愛い子馬ちゃん!
驚くほど、よく出来てます!ミニサイズだけど、ちゃんと馬の動きをしてる!
『シンドバッド七回目の航海』の縮められたお姫様あたりが嚆矢だろうけど、先生、ちっちゃくて可愛いものが好きです。
例によって、ライブアクションとの絡め方が絶妙。
撃墜され、人間に頸をひねられ絶命する、弱すぎるランフォリンクス!
おっさんが馬乗りになり息の根を止めるので、実物大模型もちゃんとつくった!偉い!
ちょっと負け犬顔の表情が強調されすぎて気持ち悪いけど、質感はゴムっぽくてなかなか!
突進するしか能のないステゴサウルス!
ロストワールドの定番中の定番!
こいつが出ない失われた世界は、たいした世界じゃない!
そして本命、期待の恐竜グワンジ、なぜか皮膚の色が青い!
・・・なぜ?
合成の都合なのか、神様(ハゲ)のいたずら心なのか?
口の中だけ、血のように赤い。
もう、なんというか、きみの考えた悪い恐竜。
そのイメージの集大成がこいつだ。誰もそれを越えることなど出来やしない。『ジュラシックパーク』なんてお笑い草さ。
胸に手をあてて考えてごらん。ね?本当だろう?
さて、ストーリーに戻るが、拳銃を持たない無理やりなカウボーイたちが、太古の谷に潜り込み、恐竜を投げ縄で捕獲する暴挙に出る。
モデルアニメの恐竜に、次々と飛んで来るロープ!まさに、これどうやって撮ったんですか、と聞きたくなる大特撮!
散々前振りして出てきた恋のライバルはあっさりグワンジに喰われ(丸呑み!)、性格の悪すぎる小人も凶悪な牙の餌食に!
(エーーーッ?!この人達、出てきただけじゃん!)
そして舞台はメキシコシティーへ。キングコングの伝統よろしく、見世物にされるグワンジ。もちろん、鎖を切って暴れ出しますよ!当然でしょう?!
そして前人未到、ラストの大聖堂バトルは、教会、そしてパイプオルガンと恐竜、夢のコラボの実現だ!
誰も頼んでないのに!無駄に豪華なディナー!
すごい!
すごすぎるよ、レイ先生(ハゲ)!!
ラスト、崩壊する大聖堂に押し潰され最期の刻を迎えるグワンジを見守りながら、少年が涙を流すのは、レイ先生(ハゲ)の過剰すぎる恐竜愛を象徴しているのでありましょうが、
(大好きな恐竜が死ぬというだけで、もう悲しい・・・)
一般の観客は100%置いてけぼり。
みんな、なんのことやら分からないと思います。
脚本上の必然性はまったくない。当然だ。
・・・で、も、ね。
そんな奴らは、今すぐ死んでしまえ!!!
レイ先生(ハゲ)万歳!あんたはエライ!最高だ!
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