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2011年6月 1日 (水)

ショーン・タン『アライバル』 ('06、河出書房新社)

 いろんな人が絶賛してるので、いまさらあたしが尻馬に乗っかる必要はまったくないんだけど、これはちょいとすごい。
 最近の海外コミックスの出版は結構勢いがあって、やはりみんな国内のコミックスの出版状況に絶望していることの証明なんだろうけど、こういうのも出るんだねぇー。
 あぁ、いちおう断っておくが2006年というのは原著が刊行された年。
 日本版は今年の5月、出たばかり。
 ま、台詞の一切ない絵本的な作品なんで、日本語版もなにもないんだけどね。まぁ、いいじゃないか。
 今回のあたしは、馴れ馴れしげだ。

 いい本なので、読め。

 以上で紹介は終わり。
 あとは、よそがあんまりやらない下衆な方向に話を持っていくが、松本大洋は悔しがっているんじゃないのか。
 オレ、いいとこまでいった筈なんだけど、コッチにはいかなかったな、って。
 『竹光侍』やるんじゃなかった、って。
 あ、これ、憶測だけど。
 (でも実際、あれ、つまんないよね?)
 
 筋に凭れた話をやるのって、おのずと限界はある。絵は制限を受けるし。
 そこで、『アライヴァル』では台詞やト書きをすべてカットして、場面に語らせるという方法。これはもう、知り合いに何枚も写真を見せてもらってる感覚に近い。
 妙にリアルだ。
 でも、ここに取り入れられてる手法はそれだけじゃない。
 無声映画のように連続性で見せたり、古典的な絵画の一枚絵のカットがあったり。
 見せる、という技法に凝りに凝ってる。
 変な動物とか、変形した建物だとか、ついついなにが映っているかに興味がいきがちだけど、それよかどうやって見せてるかに注目していただきたい。
 物語を語るってのは、そういうことなんだよ。実は。 

 この本を見てあたしがまっさきに連想したのは、逆柱いみりの作品群だった。
 ('90年代『ガロ』の作家ね。
 単行本、最初の二冊だけ持ってました。)

 いみり、これ、やっときゃよかったんだよ。
 いみり、これだよ、って。

 ま、いみり、いみりって、面白がって言ってますが。
 国籍不明なアジアンテイスト、奇妙な小動物とか共通点は多い。
 が、あれは物語性を極力回避しようという方向だったからな。それはそれで、愛すべき作家性だったんじゃないかと思う。マイナーですが。
 より、イメージ重視ってことになるのか。
 あ、夢(無意識)をそのまま描いた、とか本人があとがきで述べてた記憶があるな。
 と来ると、つげ先生。そっちか。
 (ひとりで納得している。)

 夢は、現実の裏焼きである。

 ショ-ン・タンが楽してこの作品を描いたのかっていうと、そんな筈はまったくなくって、たぶん膨大な資料と首っ引きになってやってる。
 リアリズムそうで、リアリズムでない。
 ノスタルジア、つまりは過去の記憶の集積。
 同じように過去を素材にした、吾妻ひでお先生の傑作『地を這う魚』ってのがあったけど、あれですら、言葉で筋を補完してたもんな。
 そうしないと、我が国のマンガとしては出版困難なのか。
 うーん。
 ちょっと、困った。

 また、出直してきます。

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