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2011年5月23日 (月)

「受」の新世界

 (小ネタをもう少し、続ける。)

 私の手元に、先日入手した某マンガ専門店の買取チラシがある。
 「女性向け同人誌買取情報」というものだ。
 怪奇古書マンガを仕入れに行くとき、同人誌が並ぶコーナーを通過することがあっても、その内容には特に関心を持たずにいた。
 一般書店のBL本関連を素っ飛ばすのと同様だ。
 そこに集う人々も。

 似通った内容。似通った絵柄。
 男性向けのロリコンコミックもそうだが、そこにあるのは効率のよい装置を指向するマンガである。
 余剰が紛れ込む隙のない洗練。精査。
 死角なく尖った描線は、的確に造形の快楽へと、すなわち記号へと読者を導く。
 無駄がないというのは、進化の余地もないということだ。
 ゆえにそれは奇形なのだ。
 記号を共有できる人々は、さらなる洗練を目指し、日夜研鑽を積む。誰もがバベルの塔のエンジニア。狭い世界に鬼が棲む。

 90年代、大塚英志が編集者として太田出版と組んでいた頃、同人誌をブロウアップしてダウンタウンの耽美マンガが出ていたのは記憶にあった。
 ダウンタウン。耽美。
 なんだか食べ合わせの悪い食材を無理に盛ったような。クリームパフェに味噌を落としたような。
 それから、業界の定番、『キャプテン翼』で、『聖闘士星矢』。ジャンプ系。
 (それらがどのように実用に供されていたかは、卯月妙子『実録企画モノ』に正直な記述があるので参照されたい。)
 あるいは対象がジャニーズであれ韓流ブームと移っても、すべては敷かれた路線の延長上。そんな風に捉えていた。

 だが、諸君。
 私は少し、偏狭に過ぎたのかも知れない。
 かの世界がとんでもないことになっている、という認識はあっても、事態を少々甘く見過ぎていたようだ。
 リストの先頭にある名前は、意表を突いていた。

   高価買取ジャンル。たけし軍団。

 え。軍団。
 なぜ、軍団がここに。
 夜のたけし城をせめぎ合うとでも云うのか。
 あるいは、秘密の熱湯コマーシャルか。

   ジャンル。キン肉マン。ウォーズマン受。

 ・・・嫌な予感がする。

   ラーメンマン受。

 ここで私の意識は銀河の彼方に吹き飛ばされ、幾千億の塵となって新たな惑星を誕生させるべく果てしない胎動を始めた。
 こいつは予想しなかった。
 なぜだか、旺盛で貪婪な人々に負けたような気がした。
 
 私は慌てて、その先を考えてみた。
 世界をあの連中の好き勝手にさせてはならぬ。

    板尾創路。

 うーーーん、これは実際パンフに書いてあるな。
 それなら、これはどうだ。

   板尾の嫁、受。
 
 
 ・・・普通だ。

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