CG④『グエムル 漢江の怪物』 ('06、Chungeorahm Film)
【あらすじ】
放射能入りの川の水を飲んだ大男が河川敷で暴れる。
【解説】
「お前、嘘を書くなよな!」
クラスメートが顔を真っ赤にして怒るので、少年はちょっと困った。
私立低能小学校。
春休み期間中は、特別に頭の悪い生徒を集めて、補習授業を繰り返している。なにせ自分の名前も満足に書けないバカ揃いなので、進級させる為にはこうした地道な啓蒙活動が欠かせないのである。
補修も終わり、下校しようとする少年を呼び止めたのは、知能が低いくせに正義感に溢れた熱血漢として知られるクラスメイトだった。
(36歳、社会人経験有り。)
「だいたい、お前は無責任すぎる。先日も掃除当番、忘れて帰ったじゃないか。」
「え?」
「それも忘れたってのか?エエ、どんだけ馬鹿なんだ。」
クラスメイトは苛立たしげに舌打ちした。
「そんなことだから、映画の記事は嘘だらけになるんだ。
お前、ちゃんと最後まで『グエムル』観たんだろ?何が印象に残った?」
「ペ・ドゥナちゃんのジャージの背中が捲くれるのを、おやじ役の人が親切に押し込めてあげるところ。」
「・・・・・・。」
「まぁ、悪くない映画でしたよ。最近ありがちのここぞというアクションで、スローモーションを挿入するのはどうかと思いますが。でも、みんなやってますから。『マトリックス』以降の編集の定番ですよねー。」
「偉そうに。お前、『マトリックス』ちゃんと観てないだろ?」
「ディスコの黒服が大挙して攻めてくる映画ですよね?地球侵略テーマの新機軸ってことで。いろんなものが人類を滅ぼそうと狙ってるよなー。アイスクリームとか。トマトとか幽霊とか。われわれも油断しちゃいかん、って教訓ですよ。」
「はぐらかすな!」
とうとう、切れて絶叫した。
「現在、日本は大変なことになってるんだよ!
いまだ事態の収拾が見えない大震災被害。雲行き次第でどんどん拡散する放射性物質。被害が目に見える頃には、俺もお前もこの世に居ないかも知れない。
あおりで今週は都内で水の買占めが起こり、たばこの出荷停止期間まで決まった。
街行く女の子が、“これを機会に禁煙すればいいじゃん?”って云ってるくらい、深刻な危機なんだぞ!」
「まぁまぁ、ヴァン・アレン帯が突然燃え出した訳でもあるまいし。」
下校のチャイムが鳴り出した。
少年はランドセルを背負いなおしながら、言った。
「今回の危機で、東京に集まってる連中の品性が日本一下劣であることが、諮らずも世界的に知れ渡ったんじゃないですかね?
地元民のみなさんも相当さもしいけど、あとの大半が自分の生まれ故郷に背を向けて金や欲を満たす為に全国から集まって来てる連中でしょ?
パニックになると最悪だってことですよ。こりゃ死ぬな、と思ったもの。」
「・・・生意気なクソ野郎が。お前に何が出来るってんだ。」
「さぁ?」
ひらひらと蝶のように手を振った。
「最悪なのは、なにも起こらなかった振りをして以前の日常を取り戻そうとする行為じゃないですか?
たぶん、またしても歴史は変わってしまったんですよ。決定的に。」
「なに、すかしたこと抜かしてやがんだ・・・?!くぬやろ!!」
クラスメイトはとうとう掴みかかってきた。
小学生の癖に、下校時間を過ぎても以上のような馬鹿げた会話を続け、しまいに取っ組み合っていたものだから、二名は当番の先生に見つかりこっぴどく叱られ、親まで呼ばれてこってり絞られた。
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