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2011年2月 5日 (土)

ロジャー・コーマン『金星人地球を征服』 ('56、AIP)

[あらすじ]

リー・ヴァン・クリーフといえばカニのような悪党面で有名だが(代表作『続・夕陽のガンマン』のヘンな顔の人)、彼が天才科学者で金星からカニを呼び寄せる。
 宇宙を越えたカニつながり。
 あまりの壮大なスケールに脱帽だ。
 やって来たカニは(形状はキュウリに似ているのだが)、金星の環境と酷似しているという町外れの洞窟に潜み、コウモリ型の洗脳マシンを操って、小さな田舎町の重要人物8名を次々と侵略の手先にしようとする。
 その重要人物リストとは、町長・保安官・先生・医者・軍人・・それに、ピーター・グレーヴス。
 なんだか人数が足りないようだが、気にするな。奥さんも勘定に入っているから。
 われわれはアメリカ人が常にワイフを大切にし、何処へ行くにも携行して行く事実を目の当たりにすることになる。これは衝撃的だ。ゾンビのはらわたがはみ出していても誰も驚かないが、アメリカ人の妻の扱い方には新鮮なショックがある。
 首筋にいい加減な受信器を埋め込まれ、金星人の手先となった愛妻を、ためらうことなく即射殺。
 普通ならば、洗脳を解除するとか、出来ずに主人公が苦悩するとか、よくある方向に話が転がっていく筈だが、ピーター・グレーヴスは手にした拳銃の引き金を引くのをまったくためらわない。ダーティー・ハリー以上の非情さだ。
 この非人間的所業に感銘を受けたリー・ヴァン・クリーフは、「この人についていこう」と決心し、金星キュウリに反旗を翻し、隠れ家の洞窟へ特攻。
 キュウリの目玉に鉄棒を突き刺して殺害、自らも巨大なはさみに縊られて死亡するのであった。

[クソ解説]

 アメリカB級映画界のゴッドファーザー。低予算映画のキング。ロジャー・コーマンの最大の特徴は、その心のこもっていない作劇術にある。
 展開を早くするため、とにかくバッタバッタと人が死ぬ。死に方もあっさりしている場合が多い。たいていは拳銃一発、倒れておしまいだ。(血糊すら、予算の都合で省略)
 若い、意欲に燃えるスタッフを国民生活水準の限度を越えた低予算で徹底的にこき使い倒し、同じセットや着ぐるみは常に使い廻して、ロケに行こうものなら同時撮影で最低3本は映画を作ってしまう。まったく、まともな神経ではない。
 そういう意味で、真に尊敬に値いする人物だ。

 余談。
 お色気方面も気が効かなくて、例えばこの映画では洗脳されたロケット研究所の男ふたりが、同僚の女科学者を首を絞めて殺害するのだが、この女、路上にスリップ一枚で放り出されるの。死体になって。
 アップが妙に長いから、ここで抜けってサインなんだろうが、無理です。
 だいたい、名前からしてコーマンなんだぜ?
 下品にもほどがあるだろ。

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