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2011年2月13日 (日)

『28週後・・・』 ('08、DNA、20世紀FOX)

[あらすじ]

  人間を凶暴にする致死性ウィルスの爆発的流行により、英国は壊滅した。やがて感染者達はすべて餓死。危機的状況は去ったかに思われた。半年以上経て米国主導のNATO軍が上陸し、再建が始まる。
 しかし、まぁ、そうは易々と問屋が卸さないのであった。

[解説]

 この映画の冒頭、夫が妻を見捨てて全力疾走で逃げる場面がある。
 感染者の襲撃が始まっており、決断は一刻を争うのである。に、してもだ。なにもそんなにスタコラ逃げることはないじゃないか。
 ここで観客は一挙に妻の側に同情的になる。だから、ボートを奪っての逃走劇は心底楽しめるものにならない。(まぁ、この映画のアクションカットのチャカチャカしたコマ割りも相当不快なものだが。)
 なんだかんだいって、ゾンビ映画の王様ジョージ・A・ロメロって「ゾンビ事態」に対して享楽的な印象だろうが、それは彼が根本で倫理を外さない男だからである。
 観客の期待を逸らさず仕上げる腕があるってことだ。
 だから、われわれは安心して映画を楽しめばいい。

 しかるに、夫は妻を見捨てて逃げた。
 
 現実には卑小な男もいるだろう。ハリウッド映画がかつてさんざん描いてきたヒーロー像なんて、いまや全然説得力がない。リアリティーを求めるなら、われわれは近所のおっさんを登場させるべきではないか。怠惰で卑屈で、自己言及ばかりくどくど繰り述べている、貧相な中年男を。
 誰が選択したのか知らないが(まぁ、ダニー・ボイルなんだろうけど)、この映画の主役はこのおっさんに決まった。
 途中ヒーロー的な役割で狙撃兵の青年とか出てくるが、彼は実は脇キャラなんだよね。真の主役は、あくまでこのおやじ。

 それで映画が面白くなったのだろうか。
 
 からくも生き延びたおっさんは海外から帰国した娘、息子と再会。妻への仕打ちをなじられると、おどおど弁解する。
 その妻が実は廃墟の町で生き延びていた!焦るおやじ。先に話をつくっておこうと、隔離病棟を訪れ、「女はこれで黙らせろ」の得意技、キス封じの濃厚なやつを一発かまして詫びを入れるも、妻は実は感染者!たちまちウィルスに侵され、血相を変えて暴れ出すクソおやじ!
 なんで妻が平気だったかというと、体内に特殊な抗体を持っていたらしい、というおざなりな説明だが、まぁ、世の中そんなもんでしょ。あまりにデタラメで製作側に好都合な脚本に怒り狂ったおやじは、妻を惨殺。食い殺してしまう。
 彼を先頭に体制に反旗を翻す感染者たち。噛んで、喰ってを繰り返してるだけなんですが。ロンドン・イズ・バーニング。
 その後、融通の利かない軍隊が市民を無差別に撃ち殺すとか、ロンドン市街にナパームを一斉投下し街路ごと生存者を焼き尽くすとか、いろいろと派手な場面があって、最終的におやじは娘の怒りの銃弾を浴びて射殺される。
 こいつがいなけりゃいい人生だったのに。
 そんな娘の怨み節が、夜明けのスタジアムへ響き渡っていった。
 
 愛する家族さえ信用できない9・11以降のすさんだ価値観を代弁?
 笑わせるな。
 なんて適当なんだ。こういうのを行き当たりばったりって云うんだよ。
 最後、生き延びた息子がこれまた母親の血を継ぐ免疫体質で、ウィルスは彼を経由して全世界へ拡大感染しました。ってのは何かの冗談のつもりか。

 モンティ・パイソンのスケッチとしては合格点だが、あっちは5分で終わるからな!
 人を殺すのに、9・11もクソもあるか!!
 ボケ!!

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