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2010年12月28日 (火)

ホドロフスキー&メビウス『アンカル』 ('80-'88、レ・ユマノイド・ザソシエ)

[あらすじ]

 超未来。
 宇宙の運命を握る、謎の物体アンカルを手に入れたZ級超人(かなり常人以下)の探偵ジョン・ディフールが上に行ったり、下になったりする。
 その間、世界は何回か破滅を迎えているのだが、物語の進行には特に影響しない。

[解説]

 メビウスとは、いろいろあった。

 俺が若くて今より考えが定まらなかったころ、些細な行き違いで喧嘩になり、泣かせたりもした。
 だが、俺たちはずっと一緒に過ごしていたし、夜通しバカな会話に興じては飲んだくれ、釣り銭も貰わずに店を出たりした。

 その頃、波止場に船はいなかった。

 夜明け前の埠頭はやけに寒く、メビウスは風邪を引いた。
 一晩中月を眺めて吠えていたんだから、当然だ。
 前から変わった女だと思っていたが、あそこまでとは思わなかった。

 俺は徹夜で看病したのだが、彼女は日に日に痩せ衰えて、とうとうある日ポックリ逝っちまった。

 ・・・まったく、バカげた笑い話さ。

 海に落ちるのが趣味の女と、それを笑って眺めていた男。
 どちらがまともか解らないが、俺たちはどちらも同じようにいかれていたのかも知れない。
 彼女が絵を描く人間だと知ったのは、遺品を整理していたときだ。
 ずいぶん、間抜けな野郎だとお思いだろうが、それが真実だからしょうがない。

 絵には、砂漠が描いてあった。

 空気がスカスカに乾いて、歯抜けのじいさんの口みたいになった土地。
 奇妙な飾りを吊るしたナッパ服の男や、天まで届く壮麗な都市。汚れきった掃き溜めに蠢くミュータントや兵隊。
 背後に光輪をまとったエキゾチックな天女。
 宗教、占星術やら魔術に絡む呪的イメージ。
 こう書くとなにやら、おどろおどろしいが、すべては乾いてスカスカで抜けがいいんだ。
 さわったことがない、爬虫類の皮膚をそっと撫でてる感じだ。

 絵には風が吹いていた。

 俺はそれをじっと眺め、風に吹かれながらゆっくりタバコを一本灰にすると、立ち上がり、靴紐を固く結んで道路に出た。

 くそ面白くもねぇ街。
 電線に小便するカラスがとまって、こっちの出かたを窺ってやがる。
 だが、まだまだ時間はある。
 
 日暮れまでには、もう少し遠くまで歩けるだろう。

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