マーク・ミラー&ジョン・ロミタJr.『キック・アス』 ('10、マーヴル・コミックス)
[あらすじ]
金髪、メガネの冴えない高校生が、アメコミのヒーローを気取ってウェットスーツに目差し帽でコスプレ。
火災現場から愛犬を救け出したり、チンピラの集団と乱闘したり、自警活動にせっせと励んで、ネットで大うけ。
おまけに、学校でゲイのふりをしたら、かわいい彼女まで出来た。(ま、やらせちゃもらえないんだが)
しかし、身を挺してのヒーロー活動は徐々に危険な領域へとスライドし、遂にはマフィアに徹底的にボコボコにされ、睾丸に電極を挟まれ拷問される憂き目に。
そこへ颯爽と救出に現れたのは、明らかにやばい、完全に殺人狂としか思えないコスプレの不審な親娘であった・・・。
[解説]
え?そんな話が面白いのか、って?
いや、それが面白いうえに、異常に読みやすいんだよ。どうなってんだ、これは。
非常にまずい事態である。
最近のアメリカ人、日本のマンガを相当読み込んでるし、積極的に自分たちのフィールドに取り込んでる。
「アメコミ、読みにくぅーーー!」
なんて云ってた人たちって、昔からたくさんいたんだけど、今やその認識は勉強不足でしかない。
これ、200P程の長編一本分だけど、サクサク読めます。
(私は一気読みした。)
といいますか、実は「ヤンマガ」連載でしょ?これ。
確かに、チンピラの頭が輪切りにされるとか、コンプレッサーで車ごと人間一名圧壊とか、メーター振り切り気味の暴力描写は多々ありますけどさ。
そんなの、別のミラーさんが『ダークナイト・リターンズ』で『バットマン;イヤー・ワン』で、そうそう、『ハードボイルド』(ガラスの割れかたはまるで同じだ)でもやってましたし、これはまた別の人だけど、『ヒストリー・オブ・ヴァイオレンス』なんていうのでも、執拗な暴力描写をにやらかしてましたなー。
懐かしいですなぁー。
ヒロシとトオルですよ。ミポリンだ。ミポリン。
ロミタJr.の絵は、なんか、もろ『ハードボイルド』の頃のジェフ・ダロウっぽいタッチを使ってるけど、いい感じ。話に合ってる。
ひさびさに見た、正調メビウス波及の影線のつけかたである。
意外とスケール小さい話になってる理由は、主人公が子供だからというよりも、ネット社会だ、ボーダーレス化現象だとかいいつつ、所詮は狭いコミニュティーが乱立するだけのせせこましい世の中だからじゃないのか。
あたしは、実際にキック・アスのmy Spaceが開設されていても、アクセスしないし、YouTubeで動画観たりもしないだろう。きっと。
[評価]
まぁまぁ。
でも、楽しく読めましたー。
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