『蜂女(インベージョン・オブ・ザ・ビー・ガールズ)』 ('73、WHDジャパン)
[あらすじ]
アメリカのとあるど田舎。昆虫と人間の生殖細胞を結合させる、という目的がさっぱりわからない研究をしているクルクル博士がいた!
(居るには居たが、博士自身は一度も画面に登場しないのだった。予算の都合だろう。)
邪悪かつ好色な、金髪の美人助手(ちょっとしゃくれ顔)は、博士がヨーロッパの学会に出掛けて留守なのをいいことに、研究の成果を悪用。
町じゅうの有閑マダムを、蜂人間にしようとたくらむ!
さて、「蜂人間」とは、なにか?
細かい説明が一切ないので詳細は謎だが、要するに女王蜂の指令に忠実な、セックス好きの女集団のことらしい。
人類との、外観上での主な相違点は、眼球が光彩なしの真っ黒な複眼だってこと。他、一切なし。
カラーコンタクト入れて撮影。こりゃ究極の安上がりモンスター。
『ビヨンド』の、常に白目を剥いているおばさんよりは多少はエロチックだろう。
ちなみにその特徴を隠すため、常に大型のサングラスを着用。
あからさまに怪しい。
蜂女には、なぜかカマキリの如く、交尾の絶頂でオスを殺す性質があり、研究所の要人が次々とプレイに誘われては、当然の如く全裸死体となって発見される。
全員、すごい間抜けなイキ顔のまま死亡していて、面白いのだが、でもこの映画の方向性は全然コメディではないのだ。かといって真剣とも思えない、なんとも中途半端な印象だ。
研究者のおやじが下卑た笑いを浮かべて云う。
「なにしろ、イクときと逝くときが同時なんだぜ!たまんねぇよな!」
なんのために合衆国政府が、こんな下らない連中に金を出資しているのかは不明だが、とにもかくにも国家機密にかかわる重大な研究をしているブラント(誰?)研究所ではあるので、異常事態の調査の為、国務省のお役人が派遣されて来る。
しかし、こいつが、到着後まずしたことは、研究所の秘書を飲みに誘うことだった。
穴倉のようなウェスタン・バーでカクテルを傾けながら、気の利かない会話。
「なんか、最近あやしいことってない?」
「うぅん、別にないと思うわ」
そんな間抜けな会話の最中も、背後より、秘書をぎらつく目でウォッチする好色なおやじの群れ。
なにしろ、ここはクソ田舎。
愉しみといえば酒とセックスと乱交だけなのだ。お陰様で公然とスワッピングの秘密クラブまである始末。
あいつぐ不審死に勝手に危機感をつのらせた主人公、公衆電話ボックスから国務省長官を叩き起こし、軍隊の派遣を要請する。
その間、ひとり待ちぼうけの秘書は建物の裏手に連れ込まれ、車のボンネットの上でレイプされる。
ギャー、ギャー。イグーーー。
三発連続で濃い射精をキメられたところへ、遅ればせながら救援に駆けつけた主人公は、悔しまぎれにレイプ犯たちをグーで思い切り殴りつけ、ボコボコにするのであった。
一方、悪の親玉、研究所の女助手は、要人たちを殺害後に必ずその妻を誘拐(なぜ?)、レズプレイで手なずけ、蜂女をバンバン増やしていく。
『フレッシュ・ゴードン』にも登場した、謎のセックス光線を浴びて心身ともに淫らになった蜂女たちは、町に出てはフェラチオ、野原をゴロゴロ転げまわっては青姦(このカットの間抜けさには特筆すべきものがある)のち殺害、と無軌道極まる暴虐を繰り返す。
あとには例によって限界のエクスタシーにカッと目を見開いたおっさんの変死体だけが残され、空しさ百倍。
そして、次第に町の住民達の間にもパニックというには微妙すぎるレベルの恐慌が拡がっていく。
「やりまくりの女が暴れまわっているんですって!」
「まぁ、うらやましい!」
地元の高校でも、バカ学生が雁首揃えて云う。
「あの校長、若い女とやりまくって腹上死だってよ!」
「エッ、マジかよ・・・?!
く、くゥッ、ボビー、こいつはキンたまんねぇーぜ!!」
事態を重大視した、親切きわまる米国政府は遂に軍隊を出動させ、町を完全封鎖。非常警戒態勢を敷いて、自動小銃を担いだ陸軍兵士たちに二十四時間監視にあたらせた。
自分たちが一体何のために駆り出されたのか知らぬまま、真面目に警戒を続ける兵士たち。
かくして、つのる微妙な危機感のなか、研究所内に仕掛けられた秘密の仕掛け(書棚の本を抜くと、書架がドアとなり秘密室への通路が開く。少年探偵団レベルのからくり)を見破った主人公は、クルクル博士の『ダ・ヴィンチ=コード』を軽く凌駕する、恐るべき真実を知る、篠山紀信似のパーマの男と出会う。
「そもそも、蜂女はどうやって男を殺すんだね・・・?」
「まんこから毒を吐くんだ」
驚愕する主人公。
「しかし、博士はどうして・・・。なぜ、彼は犠牲にならなかった?!」
「あいつ・・・ホモなんだ。俺が、その相手さ」
そのころ、蜂女の本性を剥き出しにした金髪の女助手は、聞き込みに訪れた地元の警察署長をふたつの谷間を使って誘惑。
パックリ開いた秘密の部分に、思わず、生ツバを飲み込むゲーハー・ブーデー、口ひげがトレードマ-クの、かなりの精力家と思しき署長ではあったが、寸でのところで、自宅で待っているブタ妻のことを思い出し、一気に萎えきり、矛先を収める。
露駐したパトカーへ去っていく署長の背中を見つめ、蜂女はローレン・バコールのようにアンニュイな微笑みを浮かべるのであった・・・。
[解説]
観る価値なし。
だが、何も説明しないし、何も解決しない姿勢の潔さにはちょっと共感。
脚本、ニコラス・メイヤー。
ジャケ裏に『マニアック・コップ(地獄のマッド・コップ)』のウィリアム・スミス主演、とあるのだが、ハテ、そんなやつ、出てたっけ?
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