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2010年10月 3日 (日)

スタンリー・キューブリック『シャイニング』 ('80、ワーナー)

 襲いかかるおやじ。
 空を切る斧。絶叫する黒人。



 何度観ても、面白いなぁー。
 しかし、私はあきらかに観すぎである。

この映画。観すぎ。


 なんで、こんなにこの映画が好きなのか。自分でもよくわからない。
 一応意味のある文章を綴らなくてはならない立場なので、冷静に分析するに、
 たいへんなことになっているのに、実はたいしたことが起こらない構造に魅せられているのではないか。

 冬の間、人里離れたホテルの管理人を任された男が、発狂して陰湿な家族いじめを繰り返し、凶行の末、雪に埋もれて野垂れ死ぬ。
 書いてみると本当に身も蓋もない、怪奇も幻想も欠落した夢のない話だ。
 この映画をホラー映画に分類するかどうかで、黒沢清と手塚眞の意見が割れた、というのは有名だが、
 それぐらい、極端な“恐怖”映画である。
 のちに、スティーヴン・キングの原作小説も読んでみたのだが、黒人がちゃんと活躍するので驚いた。
 終盤、怪物まで繰り出して無理やり盛り上げるなど、立派にエンターティメントとして成立している(ゆえに残らない)キングの小説と比べると、キューブリックの映画は地味すぎる。
 

だいたい、救いがなさすぎる。

 この映画に出てくる夫も妻も、どうやら完全に気が狂っていて、
 頻発する怪奇現象は、彼らの妄想の中にしか存在しない。
 息子は超能力者だが、超能力は事態を解決するのに、何の役にも立たない。

 ひどい話だ。
 人を小馬鹿にしているとしか思えない。

 

そんな話が、なぜこんなに心地よいのか。


 最初に観たときから取り憑かれ、もう何回目だかわからないが、私は繰り返しこの映画を観ている。
 
 たぶん、また観るだろう。

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