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2010年9月27日 (月)

まちだ昌之『血ぬられた罠』【序説】 ('88、ひばり書房)

(ナレーション) 
 「無限につらなる宇宙空間。

 これは、人類の叡智も及ばぬ、広壮なる神秘世界に今日も挑み続ける男達の記録である!」

 [クレジットタイトル]

 ダイナマイト・ウォーズ 帝国の逆襲

 隕石がびゅんと飛び過ぎる。 

 「・・・ヒューストン、ヒューストン、応答せよ。こちら、D。」

 宇宙船のコクピット内で、銀色のヘルメットを着用し、あとは全裸の男が言った。ヘルメットの上から、わざとらしくインカムを装着している。
 
 『こちら、ヒューストン。久しぶりだな、D!』

 「まったく、われわれのシリーズはとっくに終了したかと思っていた。今後二度と人前に出る機会もないと思ったので、最近宇宙船内ではもっぱら、この格好で生活しているんだ。」

 『・・・ちんちんを引っ張るな!
 
一般読者が逃げるぞ!
  
 お前がどんなにエロエロでも、喜ぶのは火星で待ってる嫁さんぐらいじゃないのか?違うとしたら、深刻な国際問題だぞ。ま、ちょと、覚悟はしておけ。
 ところで、ここで恒例の質問タイムだが、
 信長、秀吉、家康。あなたが一番好きなのは、誰? 』

 「加藤雅也。」

 『こちら、ヒューストン。・・・・・・回答は無期限に保留する。
 それでだ、レイア姫の件だが・・・。』

 「(小声)シーーーッ、姫のことは言わないで・・・!」

 『姫は、お前が来るのをずっと待ってるってさ。伝えて欲しい、と頼まれた。』

 突如、スピーカーより狂ったようにファンキーなソウルミュージックが流れ出し、宇宙船内の人影は弾かれたように踊り始めた。
 制御盤から幾つも火花のスパークが走り、心なし、宇宙船が傾いだようだ。

 『うわッ・・・!!わッ・・・!!
 やめろ!!
 このままでは、航行の安全に支障をきたすぞ!!』

 ヒューストンからの制止をまったく無視して踊り続ける宇宙服の男は、勢い余ってコンソール中央にわざとらしく置かれた、真っ赤な「緊急」と刻印のあるボタンに触れた。

 途端、激しくローリングし始める宇宙船。

 「うわわわァーーー!!」

 
『(広川太一郎の声で)・・・だから、ダメって云ったじゃないの・・・・・・!!』

 
宇宙船は煙を吐きながら、間近に迫った巨大な未知の惑星へ墜落して行った。

    ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※ 

 
 『もし・・・。もし・・・。』

 揺り動かされ、目覚めると、機器類がバラバラに取り散らかったコクピットの残骸の中。

 全裸に宇宙ヘルメットの男は、頭を擦りながら起き上がった。

 「ありゃー・・・また、やっちまった。まいったね。
 またもや宇宙船一隻、オシャカにしちまった。今月、給与から天引きされるぞ。くそ。
 
 んん・・・おや・・・お前さんは、誰だ?!」

 かたわらに立っていた人影は、ひるむ様子もなく立ち上がった。暗がりに隠れていて、姿がよく見えないうえに、ご丁寧に奇妙な仮面を着けているようだ。
 もっとも、奇妙といっても、六本木のSMクラブで見かける程度の奇抜さだが。

 『私は、メーテル。過去を背負って旅する女・・・。』

 「嘘つけ!零士先生は著作権にはちょっと五月蝿いんだぞ。」

 『あわわ・・・嘘です。嘘。

 本当の正体は・・・・・・。』

 ガバ、と仮面をかなぐり捨てた。瞬間、照明が最大になる。

 『嫁という名の、異星人!!』

 「ギィヤヤヤァーーーーーーッ!!

 出たァーーッ!!!」

 再び狂って、周囲のものを投げ散らかすDに、懐かしい声が響いた。

 『・・・こちら、ヒューストン!
 取り乱すな、D!!そいつは、本物のお前の鬼嫁じゃない・・・!!
 その惑星の原住生物が仕掛けた、たちの悪い罠だぞ・・・!!』

 「止めるな、ヒューストン!!オレは、今度こそ、悪を滅ぼす!!」

 Dは宇宙船のスクラップで十字架を組んでいる。

 『いや、だから、幻覚だってば。』

 (転がっていた光線銃に飛びつくD。)

 『そいつの本当の姿は、お前の嫁じゃないの。ええい、わかんないかな?』
  
 (近寄って来る人影に向かって、光線銃を乱射しまくるD。まったく手応えがない。) 

 『よく、SFとかにあるでしょう、ソイツはお前が深層心理の中で、本当に恐れる存在を実体化してみせてるだけなんだってば。

 アレだよ、アレ。“イドの怪物”って奴ですよ!』

 (ふと、動きを止めるD。)

 「イド・・・?!井土紀州・・・?!」

 『こまかいボケはいらねぇんだよ!!
 
 ちくしょう、なんてことだ!久々のシリーズ再開だというのに、まったく本筋の古書レビューに辿り着かないぞ!!』

 (Dの撃ちまくる光線によって、周囲の壁はドロドロに溶けて崩壊し消滅していく。)

 『こうなりゃ、アレだ。禁じ手を何度も使うのは厭だが、仕方がない・・・。』

 その瞬間、画面の動きが静止し、中央に巨大なテロップが出現した。


     (以下次号)

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こらこら

投稿: D | 2010年9月27日 (月) 19時49分

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KYONOです。いやぁ秋ですねぇ〜。夏も好きなんですが、歳を取るにつれて秋が良くなってきたオレです。さて先日、園児の前で替え歌を歌った運転手が話題になりましたね。大学事務局によると、運転手は14日朝、園児を乗せたバスの中で「ドは毒殺のド、レは霊きゅう車のレ、ミは皆殺しのミ」と歌った。運転手は「近くに座っていた園児がドレミの歌を歌っているのを聞き、幼いころの替え歌を思い出した」と説明していると�... [続きを読む]

受信: 2010年9月29日 (水) 21時47分

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