ヴィクター・フレミング『オズの魔法使い』 ('39、MGM)
M.G.M.ミュージカル、不滅の金字塔。総天然色の娯楽大作のはしり。あらゆるファンタジー映画の源流であり、与えた影響は計り知れない。
私が申し上げたいことは、この映画を大好きなやつに心の歪んだ人間が多いってことだ。
そういう意味で、これはおっかない映画なのだ。
なにが歪んでいるのか、本当のところはわからない。
色彩?画面構成?
退屈を恐れるように矢継ぎ早に展開する、狂ったジェットコースターのようなストーリー展開か?
音楽は素晴らしく、ジュディ・ガーランドはういういしい。
だが、小人を百人集めて、ダンスを踊らせるような映画がまともな感性によってつくられる筈がない。
病める者を救済する映画。
あなたがこの映画を気に入ったのなら、あなたは自分の病的気質を疑った方がいい。
われわれは全員、ある意味失格者であり、出来損ないの存在だ。
この映画はファンタジーと現実の入れ子構造を巧みに操り、人それぞれの値打ちを高らかに謳い上げる。
だが、壮大な背景は書き割りであり、セットに過ぎない。
ドロシーの生命を縮める砂時計。あれは、一体なんだったのか。
映画という魔法のマントが消え去った瞬間に、われわれは何を見るのだろうか。
だから、これはとても大切な映画だ。
私は、これが大好きだ。
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