人形劇①『コララインとボタンの魔女』 ('09、LAIKAプロダクションズ)
告白するが、私は人形劇が大好きだ。
実写も、アニメも好きじゃないんだ。実は。
人形劇こそは、世界の真実を伝える上で最も的確かつ有効な手段だ。
なぜなら、人形は嘘をつかないからだ。
以上の、歪んだケタックソ悪い思想のもとに、今夜お送りするのはヘンリー・セリックの最新作『コラライン』である。
セリックのことは、知ってるね?
グッド。
じゃあ、原作のニール・ゲイマンのことは?
OK。
”いまさら”な話は、全部キャンセルだ。諸君が飲み込みのいいお客で、私も嬉しいよ。
そう、ウィリス・オブライエンが創始し、レイ・ハリーハウゼンが拡めた偉大なる娯楽映画のパペット・アニメーションの血脈は、いまやヘンリー・セリックによって継承されている。
途方もない手間隙をかけてつくられる映像の驚異は、今日も色褪せることなくスクリーンを彩っている。
その事実に、乾杯しよう。
いや、冗談ではなく、「CGで事足れり」と思い込む浅薄なやつらが多いんだって。セリックが劇場長編を手掛けられるのは、とても幸運なことなのだ。
グビリ。
では、ファーストカットを見てみようか。
おお。手描き。あ、動いた。
音楽はまるきり『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』から借りてきました、だなー。
この動き。
タイミング。
私の涙腺はもう、ダブダブでえらいことになっている。
ある程度、話が進むまでには相当量の水分を失った。特に鼻水がいかん。
『アルゴ探検隊の大冒険』を、親に隠れてシーツ被って鑑賞した小学生時代以来、私は人形アニメの動きに弱い。異常に弱いのだ。
ところで、諸君は『ジャイアント・ピーチ』は観たかね?
あれもいい作品だったが、いかんせん実写が使われておったからね。『モンキーボーン』もそうらしいね。
ここでセリックのデザイン上の特徴を指摘するが、善良なんだよ。
根が。
『ナイトメア』のゴス風みたいなキャッチーさに欠ける。間違いなく可愛いんだが、単体でキャラ人形完売には成りにくい。
今回の『コラライン』もそんな感じなのだが、往年の日本のマンガみたいな。わかりやすいキャラデザインを入れてきていて、「一体どうなってんだ?」と思ったら、日本人イラストレーターにデザイン画を描かせていたりするのね。
そのせいか、ジブリ風味が混入していて、少女が主人公だし、お話も『トトロ』の世界に『千と千尋』の魔女が侵略してくるみたいな感じ。(ゲイマンが『もののけ姫』の英語字幕を監修してるのは知っとるね?)
まぁ、微妙な文句はいろいろありますがね。素晴らしい出来であることには変わりない。
CGアニメの連中は、この動きをコンピュータで得ることに躍起になっているんだろうが、結局、真似できない。
まったく別物だと思いますよ。
それにしても、双子が空中ブランコする場面、どうやって撮ったんだろうか。
まったくわからない。
霧の場面は特典映像で触れてくれたが、他にもいろいろ理解を絶する場面がある。
やはりメイキング本、買わなきゃダメか。
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