真心ブラザース『キング・オブ・ロック』 ('95、キューン・ソニー)
「ふむ。
きゅーん、か。
電話で名乗りたくない社名だな。」
遠藤部長は、股間を激しく掻きながら、云った。
この夏の異常な暑さで、はげ頭はすっかり茹で上がり、噴き出る汗は乾くいとまも無い。
ろくに洗濯もしていないワイシャツも、ズボンも、異様な臭気を放っていて、手洟やら精液の滲みた跡やらがテカテカ光って、この上ない汚らしさだ。
新人OLの緑子は、部長のそういうところがたまらなくて、現在、不倫に嵌まっているのだった。
昼食時の他に誰もいないオフィスに、真心ブラザースの「スピード」が流れている。
「あら。
でも、弊社の社名も問題あると思うんですが。」
豊かな乳房の間に、部長の名刺を挟んで上下にしごきながら、緑子が云う。
名刺には、『極地地場産業株式会社』と記載がある。
「私は、『南極資源開発(株)』を提唱したのだがね。」
「本当に、南極って天然資源の宝庫なんですか?」
「なぁーに、気にするなって。云っときゃいいのだ、云っときゃ。」
遠藤部長は、本格的に腰を入れて動き始めた。
「今期中にトンネルを掘るんだ。来期は、掘削事業。調査結果を得るのに、また半期。そうこうしてるうちに、また政権が変わるだろ。
そしたら、予算獲得の陳情がドッと増えて、事業仕分けなんて振り出しに戻るのさ。」
「あぁーん。」
緑子が着ている紺のタイトスカートが捲くれて、かたちのいい太腿が剥き出しになる。
「ふん。なかなかいいじゃないか、この曲。」
「“今しかない、後がない”というタイトル。 まるで私たちのようだわ。」
「女は、ロマンに酔い易いというが、本当だな。
このボーカルの男、異常におもしろ声だが、なにか厭なモノでも吸ってるのか?」
部長は、アナルを責め出した。
「はーん。
いえ、これは、いつものボーカルの人じゃなくて、もうひとりの地味な方なんです。
カエルか、カッパみたいな声だわ。」
「コミックボイスというやつだな。得してるな。ストリングスもバカに拍車をかけてるし、“詰めの甘い男って、俺のことかよ、バカヤロー”とかいちいち笑わせる。
本当に、詰めが甘そうだしな。」
秘所は充分な刺激に潤んで、花の蜜を滴らせ続け、ショーツはグッショリ濡れていた。
しかし、遠藤部長の容赦ない指先は、女の最も敏感な部分になおも攻撃を繰り返している。
「Oh!
Oh!
No、No!
あら、これ、ZEPの“胸いっぱいの愛を”のフレーズじゃありませんこと?」
「うむ。
(ZEPとか云うなよ、お前が。)
みなさん、お馴染みのフレーズに載せて、繰り返される歌詞が、これだ。」
「“俺のチンポから、石が出た。
俺のチンポから、石が出た。
チンポ!石!
チンポ!石!”
・・・あぁっ、か、感じちゃう~。」
遠藤部長は、(本気か、この女?)と内心疑りつつ、不吉な色にてかった遠藤自身をより深く突き入れた。
女の内部は、既にうるんで、サンゴの空洞のようだった。
※ ※ ※ ※ ※
やがて、楽しいお昼休みが終わり、オフィスに戻ってきた勤勉な社員達を出迎えたのは、いつもわき目もふらず業務に没頭する部長と、地方出身の地味なOLだった。
そのとき、世界の時間は既に逆さに廻り始めていたのだが、誰も知らない。
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