江戸木純『『世界ブルース・リー宣言』 ('10、洋泉社)
極端な言説、偏った論考というのは、危険を孕んでなお感動的だ。
「いま、世界にブルース・リーが足りない。それは間違いなく、徹底的に足りない。」
と、著者が説くとき、われわれは無意識レベルでその真意を察知し、既に賛同している状態だ。
問題はそのアジテーションの外側にいる人々だろう。これでは意味が解らない。
だから世界は間断のない闘争状態にあり、理解と無理解との熾烈な戦いは日常の到る所で繰り返されている。
でもね、相手がきみだから砕けて云うが、すべてを納得させる結論なんて出ないんだよ。
ユリ・ゲラーは、本当にスプーンを曲げていたのか?
それを知ってどうする?
だから、この本の立場は積極的に「ユリの側に立とう!」という宣言の書であるのだが、でも、相手は自称・超能力者なんかじゃないからね。
世界の映画史上、空前絶後の大スターですから。
(この言い方自体が、私自身の信仰のカミングアウトになってしまうな。)
1995年に洋泉ムックが出した『映画秘宝Vol.3 ブルース・リーと101匹ドラゴン大行進』にグッときちゃった困った人々にとっては、窮天の慈雨、ショコタンにレイプされ(結果としてあれは、メディアによるレイプだと思う)ボコボコにされた映画界最大のイコンからの、返礼の一撃ということですよ。
で、返す刀で湯村輝彦のヘタウマ絵画も断罪ってことですよ。
作家としての湯村氏の評価はともかくとして、確かにあの絵(※'97『燃えよドラゴン』リバイヴァル時のパンフ)はねぇよなー。そういう説得力があります。
そもそも、世界正義の規範がブルース・リーであって何か問題はあるのか?
ね?
諸君、今こそ地上に蔓延るすべての悪を殲滅するときが来た!
立て、万国の労働者!ってことですよ。
| 固定リンク
「かたよった本棚」カテゴリの記事
- 『Yの悲劇』(1932、エラリイ・クイーン/砧 一郎訳1957、ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス302)(2023.06.17)
- 『三惑星の探求 (人類補完機構全短篇3)』(’17、ハヤカワ文庫SF2138)(2017.10.01)
- 小松左京『果てしなき流れの果に』 (’65、早川書房ハヤカワ文庫JA1)(2017.05.25)
- ニーヴン&パーネル『悪魔のハンマー(上)(下)』 ('77、ハヤカワ文庫SF392・393)(2017.03.18)
コメント