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2010年7月14日 (水)

朝倉世界一『デボネア・ドライブ②』 ('09、エンターブレイン)

 いやー、やっぱり面白ぇなぁー。

 感心しちゃうなぁー。
 でも、正直、導入部はどうかな、と思ったんですよ。二巻。
 朝倉先生は、ストーリーの風通しを良くするため、わざと細部まで考えない状態でネタを振ってる節があって、ま、そこがいいんですけどね。
 高級そうな言いかたをすると“偶然性の導入”、またの名を“行きあたりバッタリ”っつてですね、作者にもこの先どうなるかわからないんだから、読者はもっとわからんだろう、という(笑)。  
 もちろん、意図してやってるんですよ。
 作者本人も、会長が幽体離脱してどうなるか?なんて深く考えてなかったと思いますよ。
 さらに加えて、追跡してくる謎のふたり組の正体やら、さらに迫り来る、逃げ水の如きクラゲの大群とか、いろいろ面倒なものが絡んじゃってね。
 だから、最後に、死神が会長の肩をポンと押したときは、作者も読者も、なんかホッとしたんですよ。
 だから、道路の真ん中を去って行く死神の後ろすがたには、なんか知れん、寂しさと解放、滑稽さがあるわけですよ。
 いいよなぁー。

 でもね、行き当たりばったりそうに見えても、一方でエチゼンくんがクラゲ拳の継承者だとかね。
 マリちゃんが実は泥棒だとか、そういうキャラ設定(というか、お話)は事前に用意してあったんだろうな、と。さすがに。
 ただし、その設定をどう本筋にからめるか(あるいは、からめないか)は、細かく段どってないんだなー。
 その突き放し加減が、ちょうどいい温度をストーリーに与えてる。
 あたたかく、可愛い造形に目がいきがちだけど、朝倉先生、キャラクターの扱いは結構クールなんですよ。
 だいたい、みんな酷い目にあいますし。
 単純ないい話にしないあたりは、さすがだなと。

 それでいくと、第十七話がすごい。
 死神が去って、話が一段落した直後に入る傑作エピソードです。
 小名浜フラガールズの話ね。これは、もう、展開のさせかたかたからオチまで、とんでもなく、うまいです。
 (中途に突然入る、追跡者ふたり組のカットもすごいかっこいい。)
 ともかく、サイレントで閉められる、最終ページをよく見てください。
 あたしゃ、恥ずかしながら、号泣しましたよ。このさりげなさに。

 マンガは、やっぱり絵なんですよ。
 それを忘れちゃイヤですよ。

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