朝倉世界一『デボネア・ドライブ②』 ('09、エンターブレイン)
いやー、やっぱり面白ぇなぁー。
感心しちゃうなぁー。
でも、正直、導入部はどうかな、と思ったんですよ。二巻。
朝倉先生は、ストーリーの風通しを良くするため、わざと細部まで考えない状態でネタを振ってる節があって、ま、そこがいいんですけどね。
高級そうな言いかたをすると“偶然性の導入”、またの名を“行きあたりバッタリ”っつてですね、作者にもこの先どうなるかわからないんだから、読者はもっとわからんだろう、という(笑)。
もちろん、意図してやってるんですよ。
作者本人も、会長が幽体離脱してどうなるか?なんて深く考えてなかったと思いますよ。
さらに加えて、追跡してくる謎のふたり組の正体やら、さらに迫り来る、逃げ水の如きクラゲの大群とか、いろいろ面倒なものが絡んじゃってね。
だから、最後に、死神が会長の肩をポンと押したときは、作者も読者も、なんかホッとしたんですよ。
だから、道路の真ん中を去って行く死神の後ろすがたには、なんか知れん、寂しさと解放、滑稽さがあるわけですよ。
いいよなぁー。
でもね、行き当たりばったりそうに見えても、一方でエチゼンくんがクラゲ拳の継承者だとかね。
マリちゃんが実は泥棒だとか、そういうキャラ設定(というか、お話)は事前に用意してあったんだろうな、と。さすがに。
ただし、その設定をどう本筋にからめるか(あるいは、からめないか)は、細かく段どってないんだなー。
その突き放し加減が、ちょうどいい温度をストーリーに与えてる。
あたたかく、可愛い造形に目がいきがちだけど、朝倉先生、キャラクターの扱いは結構クールなんですよ。
だいたい、みんな酷い目にあいますし。
単純ないい話にしないあたりは、さすがだなと。
それでいくと、第十七話がすごい。
死神が去って、話が一段落した直後に入る傑作エピソードです。
小名浜フラガールズの話ね。これは、もう、展開のさせかたかたからオチまで、とんでもなく、うまいです。
(中途に突然入る、追跡者ふたり組のカットもすごいかっこいい。)
ともかく、サイレントで閉められる、最終ページをよく見てください。
あたしゃ、恥ずかしながら、号泣しましたよ。このさりげなさに。
マンガは、やっぱり絵なんですよ。
それを忘れちゃイヤですよ。
| 固定リンク
「マンガ!マンガ!マンガ!」カテゴリの記事
- 伊藤潤二「赤い糸」(’90、月刊ハロウィン掲載、朝日ソノラマ『脱走兵のいる家』収録)(2010.10.15)
- あさいもとゆき『ファミコンロッキー①』 (’85、てんとう虫コミックス)(2010.10.07)
- まちだ昌之『血ぬられた罠』 【風立ちて、D】('88、ひばり書房)(2010.09.29)
コメント