CG③『ロード・オブ・ザ・リング』 ('01、ヘラルド)
畜舎の裏庭は、今日も賑やかだ。
「そもそも、これはどういう話だっけ?」と、片目のネズミが云う。
「ホラ、首輪ってあるじゃん。」
鼻をほじりながら、大きな豚が気だるげに答える。
「滅びの首輪を、製造元に持ち込む話だよ。全員で苦情を言いに。で、そこの社長に“知るかーーーッ!”って怒られる。」
アヒルが、ガアガア鳴いた。
「面白い。面白い。そうそう。そんな感じ。
滅びの首輪って、つけてると身の破滅に繋がる危険な存在。
つまりは、調教グッズ!!」
豚が続けた。
「まず、小人がプロレスしているところから幕が開く。ハリウッドといえば、小人ですから!
で、そこへジジイが出てきて、何か呪文を唱えると、ヤクザが数名現れて小人をボコボコにしようとするんだよ。」
「え、でも、なんで?」
「小人はジジイの闇金に多額の借金があるんだけど、最初から払う気なしで借りてるんだ。いっぱしのワルだネ。
で、小人の情婦は返済の為にトルコで働いてるんだが、若いツバメが出来たんで、この際小人を置いて逃げちまおうと腹を固めてる。
それで思いついたのが、競馬場襲撃だ。」
ネズミが小首をかしげた。
「・・・なんか、そんな話、前に他で観た記憶があるなぁー。」
「闇金ジジイも話に乗ってきて、いよいよ作戦はスタート!
世界各地からその道のプロが勢揃いしますよ。ルパンとか、ショーン・コネリーとか。あと、キアロスタミ。」
「え?!そんな有名な人まで?」
「5両で仕事を請け負います。」
豚がゴロリ寝転び、腹を掻いた。
「まったく、だらしねぇやつだな。盗っ人の風上にも置けねぇや。
それで、そんな愉快な“旅の仲間”が集まって、それからどうなるの?」
「まずは軍資金を稼ぎに、モンテカルロにあるエルフの館を目指そうということになる。」
「エルフってなによ?」
「車です。」ネズミが自信を持って答えた。「高級車。トヨペットみたいな。」
「ふぅーーーん、そうかぁ?」
大きな豚は懐疑的だ。
「でも、小人が嫌がってカジノ到着前に逃亡しちゃうんだよ。首輪を持って。モナコで。性転換する、って。
で、残されたあとの連中は球場の外でひたすら二時間半、おろおろする。」
アヒルは羽根をバタつかせ、興奮して喋る。
「トヨペットを乗り逃げした小人は、地底の暗闇へ。そこで、土左衛門と出会う。
土左衛門は地底のどぶ河に浮かんでもう四半世紀も生きてきたんだけど、いい加減生き続けることにもうんざりしてきている。
そこへ、魔王の影が・・・。」
豚が拍手した。
「おっ、ようやく出たか、魔王。待ってた、魔王。
で、魔王の影が、どうしたの?」
「鮒をつかんで、立ちはだかる。」
「物凄いピンチですな。つかめるか、つかめないかの瀬戸際というわけだ。」
「土左衛門は死に、小人は魔王の手下にやはりボコられる。滅びの首輪は遂に悪の手に渡ってしまうのか・・・?」
「おぉーーーっ。」と、豚が云った。
「おぉーーーっ。」と、片目のネズミが云った。
「にゃおぉーーーん。」と遠くで猫が鳴いた。
なんだか卑猥な口笛が聞えてきた。
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