朝倉世界一『デボネア・ドライブ①』 ('08、エンターブレイン)
まずい。
これは、傑作である。
非常に、へなちょこな描線。適当そうで、意外とちゃんと繋がっているストーリー。
心地よさは相当なものだ。温泉に浸かっているみたいだ。
元クラゲの人間(!)。中年オカマ。痴呆の老極道。金庫破りのサーファー。盛り上げヘアーの極妻。それに、死神。
朝倉先生がマイナスイメージに憑かれているのは承知していたが、これはその集大成を謀っているのではないのか。
普通に考えれば、反則でしかない。
『デボネア・ドライブ』は、呆けてしまった、鯉の刺青のあるヤクザの会長を津軽の老人ホームまで護送する物語だ。
呆けてしまった老人は、可愛い。
かつて大島弓子が使った手法だが、あれには表裏一体の残酷な現実という毒素があった。
朝倉先生は、賢明にもそれをピュアネスとファンタジーの方向へ投擲する。
だから、すべては、かくも輝いているのだ。
まるで巨大なアメ車みたいな、三菱デボネアの描写が素晴らしい。
追いかける謎の追っ手のクラシックカーとのチェイスは、まるで『チキチキマシン』みたいにファンタスティックだ。
実は一巻だけでも二百ページ強という、朝倉先生にしては破格のページ数を費やして語られる長編なのに、読み心地はあくまで軽やか。
いったい、これはどうなっているのか。
もう少し、考えてみることにする。
(このままでは、白痴の感想文である。)
・・・例えば、本作に登場するデボネアの車内が、実車に比べて、相当、自由に広びろと描かれているところに秘密がある、というのはどうだ?
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