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2010年6月 2日 (水)

朝倉世界一『デボネア・ドライブ①』 ('08、エンターブレイン)

 まずい。
 これは、傑作である。


 非常に、へなちょこな描線。適当そうで、意外とちゃんと繋がっているストーリー。
 心地よさは相当なものだ。温泉に浸かっているみたいだ。
 元クラゲの人間(!)。中年オカマ。痴呆の老極道。金庫破りのサーファー。盛り上げヘアーの極妻。それに、死神。
 朝倉先生がマイナスイメージに憑かれているのは承知していたが、これはその集大成を謀っているのではないのか。
 普通に考えれば、反則でしかない。

 『デボネア・ドライブ』は、呆けてしまった、鯉の刺青のあるヤクザの会長を津軽の老人ホームまで護送する物語だ。
 呆けてしまった老人は、可愛い。
 かつて大島弓子が使った手法だが、あれには表裏一体の残酷な現実という毒素があった。
 朝倉先生は、賢明にもそれをピュアネスとファンタジーの方向へ投擲する。
 だから、すべては、かくも輝いているのだ。

 まるで巨大なアメ車みたいな、三菱デボネアの描写が素晴らしい。
 追いかける謎の追っ手のクラシックカーとのチェイスは、まるで『チキチキマシン』みたいにファンタスティックだ。
 実は一巻だけでも二百ページ強という、朝倉先生にしては破格のページ数を費やして語られる長編なのに、読み心地はあくまで軽やか。

 いったい、これはどうなっているのか。
 もう少し、考えてみることにする。
 (このままでは、白痴の感想文である。)

 ・・・例えば、本作に登場するデボネアの車内が、実車に比べて、相当、自由に広びろと描かれているところに秘密がある、というのはどうだ?

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