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2010年6月28日 (月)

ファブリス・ドゥ・ヴェルツ『変態村』 ('04、ベルギー)

 とある科学的理由により、この世界は記録的な女日照りに襲われる。

 山羊、犬、豚、流行歌手。永久に去っていった女性の代替物として、さまざまな対象が捕獲され性行為の祭壇に供される。
 生態学的バランスを失った世界が野蛮と狂気に走るのは、当然の成り行きである。
 映画は巧妙にシフトチェンジを幾度も繰り返しながら、『悪魔のいけにえ』の家族の食卓、『わらの犬』の襲撃シーン、『脱出』のレイプを俯瞰で見せていく。これが監督の考える地獄のイメージなのだろう。
 そういう意味では非常に素直な映画だ。先行者の悪意をそのまま受け継ごうという意志が感じられる。プロットを捻るのではなく、(死体を壁に隠すように)映画の筋書きの中に塗り込めること。
 但し、ここにはレザーフェイスやスーザン・ジョージはいないし、バート・レイノルズも出てこない。この華の無い感じが、ベルギーというヨーロッパの片田舎なのだろう。
 ワッフルとチョコくらいしか連想しないが、ひばり書房チックな底無し沼もあるようだ。ラスト近くのタルコフスキー的な霧に包まれた森の移動ショットはどうも頂けないが。
 原題は『磔刑』。主人公が割りと早い段階で磔になるので、先行きが怪しくなるが、その後は何もなかったかのように逃げていた。
 『手錠のままの脱獄』みたいに磔のまま逃げ回る映画だったら、見世物性は増したかも知れないが、やはり無理があるな。あの段階で主人公は死んでいて、以降は彼の幻想だという展開ではどうか。ジェス・フランコ的か。
 いずれにせよ、映画の方向性が見えなくなるエンタティメントというのは、いつの世でも有効なようだ。

 さしたる残虐描写がある訳でもないから、これはむしろテレビ向けだ。
 こういう訳のわからない悪意に満ちた映画が、平日の昼二時やなんかに素知らぬ顔でオンエアーされていると面白いのに、と思う。

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