川島のりかず③『恐ろしい村で顔をとられた少女』 【顔面剥奪編】('85、ひばり書房)
(前号までのあらすじ)
怪奇ハンタースズキくん。学会から追放され異端の道を歩き続ける、二十代の好青年。
川島のりかずの正体は宇宙人?!証拠の鍵を握る、建設会社エイチ・シーの安藤社長は、しかし、マスコミ相手の記者会見でも鉄面皮を貫き通した。
警視庁の黒沢刑事と共に、会見場を去る社長のタクシーを追ったスズキくんだったが、手榴弾による攻撃を受ける。怒った黒沢のライフル狙撃により、タクシーは横転、火を噴いた・・・。
[タイトルバック]
アニメーションで文字が飛んでくる。
「大河」「ふしぎ」「ロマン」
「ジ ャ ン グ ル 大 帝」
[シーン4・首都高、再び]
ゴウゴウと燃えるタクシー。
その傍らに、停まったスズキ9号車。
持ち出した消火器を手に、消火活動に余念のないスズキくん。
その間、ヘリが着陸し、黒沢刑事が駆け寄ってくる。
「おう、おう、ご苦労さん。」
ポケットから出したハンカチで額の汗を拭う。
「所轄には連絡した。おっつけ、応援が来るだろう。」
「おっつけ、じゃありませんよ!!
これを見てください!!」
車内から転がり出る、真っ黒焦げになった焼死体!!
「・・・お、おおッ、タワーリング・インフェルノ・・・?!」
「あんたの不用意な攻撃でこの始末だ。
死んじまったら、情報も証言もなにも取れんじゃないですか。
どげんするとですか、星くん?!」
[ナレーション]
しかし、スズキくんの怒りを他所に、検死解剖の結果、ふたつの遺体は、タクシー運転手、同乗していたエイチ・シー社職員のものと判明。
安藤社長の遺体は、遂に発見されなかった・・・・・・。
[テロップ]
三ヵ月後。
[シーン5・奥秩父]
長閑な昼下がり。山中に鳥の鳴き声がする。周囲に人気はない。
古めかしいバスが来て、停留所に止まる。
荷物を担いで降りるスズキくん、黒沢刑事。
ふたりとも目立たないよう、一般の登山客に変装している。
「群馬県、アララギ山。標高5,137m、旧約聖書でノアの箱舟が流れ着いたとされる伝説がある。」
「本当かなぁー。」
スズキくんは首を傾げる。「アララギ派って、短歌じゃありませんでしたっけ?」
「伊藤三千夫はこの山を見て、代表作『TAN-TAN 短歌』を書いたそうだ。」
コンビニ本を片手に解説する黒沢刑事は、あくまで真顔である。
「チェッカーズといえば、フミヤのメタボ化が心配だな!」
うそくせー、うそくせーと毒づくスズキくんを無視して、リュックを持ち上げた。
「行くぞ。
この村で、安藤社長の目撃証言があったんだ。」
[シーン6・村]
聞き込みをするスズキくんと、黒沢刑事の連続ショット。
・鍬をかついだおばあちゃんに話しかけるふたり。
おばあちゃん、何を聞いても「YES、NOVA!!」としか答えない。
・村の駐在をつかまえるが、黒ぶち眼鏡の駐在は体操技しか見せない。
仲本工事だったようだ。
・伝説の大蛇と格闘。丸呑みにされる黒沢刑事。
洋服から何からデロンデロンになって、吐き出される。
・秘湯。疲れを癒すふたり。
背後でうさぎちゃん二名が泉質と効能を紹介している。
・スタローンしか登れない、切り立った崖を登攀するふたり。
画面手前、垂直に立った全身白塗りの子供が、キャッキャ駆けていく。
[シーン7・人類救済計画の本部]
ドン、とテーブルを叩く手のアップ。
「で?!・・・わしに、ショートコントを観せてどうするつもりだ?」
怒り狂うウンベル総司令を尻目に、通信機のスクリーンに映ったスズキくんが新書サイズの本を持ち報告を始める。
「主人公は、匿名希望の少女フッコ・・・。
この物語は、某県谷中村へ消息不明の姉を捜して乗り込んだ、彼女が遭遇する怪異譚です。
『あの村には行かんほうがえぇ、行方不明事件がよく起こる村じゃ。』
途中で会った不気味な農家のおばさんの親切極まる忠告を無視した主人公、地面に開いた穴に飲み込まれ、異次元世界の村に辿り着きます。
この世界では、同じ顔を持たない人間は、即、ギロチン処刑!!
主人公もいきなり処刑されそうになりますが、反体制組織の人間に匿われ、からくも窮地を脱して、逃げ回ります。
村人は全員、能面みたいな同じ顔に改造され、毎日人面岩の洞窟で電波で洗脳されています。
個性を持つのは、犯罪!!
毎日が、洗脳生活!!
素敵過ぎる設定ですが、なにせ全員が同じ顔なので、誰が誰だかわからない(笑)。
メジャー誌なら、笑って編集者にボツにされてるところでしょう。
“どこにも出口がない村”というのは、明らかに『プリズナーNo.6』のいただきですが、この世界の番人は巨大なボールとかじゃなくて、アグレッシブな一つ目メカ!!
ちょっと、描いときましょう。
動力源、不明!ピッピッって、云いながら空中に浮いてるだけ!
おそろしい!!」
「なんか、フランク・R・パウルが描きそうなデザインだな。
まるっきり、アメージング・ストーリーズの表紙じゃないか?」
博識なウンベル総司令が意見を述べる。
「そうです。そして、我が国にこんなメカを紹介する人物は、故・野田昌宏先生しかありえない。
よって、のりかずは当時日本版スターログを読んでいたに違いない、と確定!!」
「・・・ほんと二十代か、お前?」
「で、逃げ回っていたフッコですが、匿いきれなくなった組織の一方的な都合により、顔面の皮膚をはがされ、他の連中と同じ、能面みたいな顔に改造されてしまいます。
しかも、剥がした医者は、その顔を外部世界と通じる裏切り者に売っていた!
秘密を知られた奴らは、「殺せ!殺せ!」と云いながら、襲ってくる!
自分の顔をした、屈強な男に追いかけられる斬新な恐怖(笑)!!
後ろの坊主頭が、主人公の姉の顔を盗んでた奴。
世の中、悪い奴がいるもんですね!!」
「・・・それがまとめかよ?!
ともかく、早く安藤社長を発見するんだ!!」
(以下次号)
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