『ヘヴィメタルFAKK2』 ('99、米)
股間に太いモノ持ってる人、集まれ!
いきなり下品に始まる訳だが、まぁ、効果的だからね!
この作品は、下品なアニメであるから、下品に始めるのが正しいのだ。
80年代に一世を風靡したアメリカのマンガ雑誌、『ヘヴィメタル』のことは知ってるね?その本家、フランスの『メタル・ユルラント(重金属)』のことも?
知らない?
じゃ三分で説明するから、聞いて貰おうか。あぁ、ちなみに、今回のブログの記述スタイルは私の普段の喋りに極めて近い。珍重するように。なに、毎回この調子じゃないかって?
正解だ。
で、まず大事なことを教える。
世界じゅうのあらゆる国で、マンガは子供のおもちゃだ。大の大人がマンガを読んでるのは、日本だけだったんだ、昔は。なぜって、そういう文化がなかったの。
日本では、60年代にはマンガ読者層が安く見積もっても学生運動の連中ぐらいにまでには拡大し、より増加の方向へ進んだ。
これは、世界史的に見て、実はかなり早い。
大人を対象読者とするマンガがブームを迎えるのは、アメリカでもフランスでも八十年代に入ってからなんだ。
もっともアンダーグラウンドでは、カルト的な作家もいるけどね。ロバート・クラムとか。
じゃウィル・アイズナーはどうなんだ、エドワード・ゴーリーとか絵本や挿絵系の作家は、とかね。その辺は、私が語るより小野耕世先生の優れた著作を読んでくれ。頼む。
フランスの漫画家というと、誰を思い出す?
そう、まずはエルジュだね。『タンタンの冒険』の。それ、認識正しいから。
エルジュは、ちょっとうまい作家だよね。達者すぎるくらい、達者で洗練されてる。
読んだことない人、いるのかな?いる?あ、そう、悪いことは云わない。福音館から出てる。買ってね。何か一冊というなら、『青い蓮』を勧める。あぁ、コラ自腹でやれ。馬鹿者。
そんなフレンチコミックスのお上品な流れ(どこが?)を変えたのが、フランスではBD(バンド・デシネ)なる、下品なマンガジャンルの台頭だった。まぁ、早い話、劇画だ。劇画。セックス、ドラッグ、暴力。子供にはちょっと難しい内容。
大友克洋や谷口ジローに影響を与えた(というか、パクられた)メビウスが、代表選手でそれしか紹介されないに等しいが、他にもガザとかアンキ・ビラルとかカステルマン社からいろいろ出てる。
面白い作家、多いよ。細かく紹介する時間ないけど。
あぁ、Dくん、昔サンリオでちょろっと出たピエール・クリスタンは、このBD系のマンガ原作者として有名だから。記憶に留めておいて、
友達に自慢しよう!
さて、フランスでBD中心に盛り上がったアダルト漫画ブームが、だね、『メタル・ユルラント』創刊に繋がり、アメリカへ飛び火して同誌の米国版『ヘヴィメタル』を産む。
アメリカでの代表選手は、まずは、なんたってコーベンだね。リチャード・コーベン。『DEN』の。
エアブラシでフルカラーがうまい作家ですけど、実はデッサンが結構歪んでて、それが重量感を醸し出してしまった。珍しい例。珍味です。
関係ないけど、この『DEN』とか、あと、あっちはイタリアだけどリベラトーレ『ランゼロックス』とか、輸入本で買った時は感心したなぁー。ちゃんと、ちんちん描いてあって。
『ランゼロックス』の方は、八十年代に永井豪先生監修(笑)で邦訳が出てるんだが、ホワイトでちんちん消してあった。そのくせ、定価は高校生には高すぎたゾ。オレは忘れてねぇからな!講談社。
(※『DEN』は異世界にトリップした高校生がマッチョな肉体を手に入れ、サル顔の美女とよろしくやる話。トカゲ人間とか、軟体じゅるじゅるの巨大アメーバとか、性的トラウマを感じさせるクリーチャーが多数出演。
『ランゼロックス』は良心回路を破壊された、不細工パンクス風のロボットが十歳ぐらいの幼女のお尻をぺんぺんする話。平均より身長の短い人や、あまりに顔面のバランスが悪すぎる人などが多数登場します。)
あー、もう、説明が多すぎて何の話だか解らなくなって参りましたが(だいたい、さっき三分で説明する、って明言しなかった?ごめん、ありゃ嘘だ!!)、
この『ヘヴィメタル』誌がアニメになりました、ってのが'82年の映画『ヘビーメタル』(表記が微妙に日本寄り)なのであります。あぁ、しんどい。
この映画の出来だが、検索したら「Allcinema」というところの以下の評が、言いえて妙だった。オレがちょっとでも楽するため、引用する。
(※太字変換は、私の操作である。)
「アメリカでカルト的人気を誇っているアダルト・コミック誌『HEAVY METAL』を基に作られたオムニバス形式のアニメーション。」
「著名な作家陣に短編アニメーションを好きなように作らせるという方法は面白く、ファンにとっても嬉しいものになるはずなのだが……。全体を通して、好き勝手やっているという感じ以外に受ける印象はない。」
「1話毎の繋ぎも、ショット的に続いているものあり、続いていないものあり、とバラバラで一貫性に欠けており、通しての演出はされているのかと頭をひねってしまう。」
「肝心のアニメーションの出来も作画部分がお粗末で見ているのはかなり辛い。」
「ただ逆に、“好き勝手さ”は半端ではなく、このノリについていくことができければ充分楽しむことはできるだろう。」
「まさにキワモノ的作品。」
「裸のお姉さんや残虐なシーンが沢山出てくるが、笑える部分もたぶんにあり(いろんな意味で…)妙なノリの作品が好きという人には胸を張って薦められる。」
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=21003
・・・この通り、だ。
引用箇所に対し、一切反論はない。つまり、
「この映画は別に面白くはないのだが、一見の価値はある。いろいろ目を潰れば、最高と呼べなくもない。」
ということだ。
だが、待てよ。今、鑑賞をスキップしようと思ったきみ。
待て!
そう、真面目な娯楽作品だと思うから、いけないのだよ。実験映画だと思えば、異常に面白い出来の映画ではないか?
そう、そうなんだよ。やはり、最高だ。必見。
さてさて、ようやく333メートルの天国に辿り着いた心境であるが、
ここからが今回の本題である。なんて、前戯が長いんだ。お前は、とっくにべったりだ。
『ヘヴィメタルFAKK2』は、前記映画のウン十年ぶりの続編である。
八十年代のブームを経て、九十年代になにが変わったか。
我輩と同期の諸君は、「宝島がいつの間にかエロ本に化けていた衝撃」をまだご記憶だと思う。
あれと同じ事態だ。
悲しいかな、いつの間にか、『ヘヴィメタル』もエロ中心主義になっていた。SFだって、喰わなきゃやってられない。それが嫌な奴は、特撮でも見続けろ。
だから、この映画、主演はジュリー・ストレイン嬢だ。
コスプレとかこなす、汚れ仕事も厭わない、根性の入ったモデルさんである。
声優さんもやり、ヒロインのデザインの基になっている。コスプレで衣裳着てね。
この人、ついでに言えば、『ヘヴィメタル』発行人のかみさん。
どう、きなくさいアメリカ的なサムシングを感じるでしょ?
ところで、九十年代『ヘヴィメタル』の看板スターは、度肝を抜く暴力(例えば、全身に銃弾が突き刺さる残虐描写をグロくもコミカルに演出する)を、パンク革命以降のヘビメタ的ライト感覚で描き込むサイモン・ビズレー先生なのである。
確かに、先生、最高!下品で!
ただし、サイモン先生はイギリス出身で『ジャッジ・ドレッド』とか描いて、アメコミ大手DC社からデビューした苦労人なので、『ヘヴィメタル』出身者とは位置づけられない。
このへんにも、『メタル』本体の弱体化を感じることが出来ると思う。それが、九十年代。
先生はこの映画のキャラデザインやら、いろいろ手掛けられているのだが、
映画の公開当時、先生の描いた映画本編のコミカライズ版が、『ヘヴィメタル』別冊としてリリースされていたのを洋書店でキャッチしてあったので、私は冷静に比較することが出来る訳だ。
まさに、読んでから、観る。角川商法。
で、映画の感想を(前記に倣い)箇条書きで申しますが、
「最近のアニメにしちゃあ、絵がカクカクで、お粗末である。」
「宇宙船の描写などに、わざとらしい、FFみたいなCGを導入しているのだが、座りが悪く、ダメな感じに拍車をかける結果になっている。」
「でも、Jヤンキー感覚溢れる、先端にレーザー丸のこ装着の宇宙バイクなんか、カッコイイぞ。」
「サイモン先生は、囚われたパンク系少女のヘアやら、大股開きのコーマンまで描いていらっしゃったのに、そういう悪逆な意地悪描写は(たぶん、レイティングとか気にして)カット。」
「話は、誰でも判り易い。女囚さそりの宇宙版みたいなもんだ。」
「前回の映画での失敗点を、まったく踏まえていない。ばかりか、祭りよ、もう一度、という空疎な空騒ぎに徹してしまっている、往生際の悪さだ。」
「そういや、前作でDEVOやら、ブルーオイスターカルトやら、ドナルド・フェィゲンまで担ぎ出していた無駄に豪華なサウンドトラックは、今回、誰だか判らない今どきメタル野郎に都合によりチェンジ!ガックシ。」
という訳で、総括するに、
「前作を楽しめた奴だけ、観ろ!あれの、拡大縮小版だ!」
あ、「拡大」ってのは、いちエピソードの尺が伸びただけ、って意味で、「縮小」ってのは予算規模の縮小ね!
まぁ、でも、なんだかんだ云って、楽しいかったよ!
また、作ってくれよ!
でも、いい加減、ヒロインの乳首ぐらい立体で描けるようになれよな!アメリカ人アニメーター!
| 固定リンク
「映画の神秘世界」カテゴリの記事
- 『人類SOS!』 ('63、TRASH MOUNTAIN VIDEO)(2012.12.24)
- トビー・フーパー『悪魔のいけにえ2』 ('86、CanonFilms)(2011.12.16)
- 『ある日、どこかで』 ('80、Universal)(2011.12.13)
- 『この子の七つのお祝いに』 ('82、松竹-角川春樹事務所)(2011.12.03)
- 『宇宙水爆戦』 ('55、ユニヴァーサル)(2011.11.12)
コメント