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2010年3月23日 (火)

川島のりかず②『狼少女のミイラ』 【中編】 ('85、日)

 (CMあける。)

 【ナレーション】
 ウンベル総司令の命により、大塚方面住宅地に非常線が張られた。配属されたのは警視庁きってのエリート捜査官達であった。

 警官A「いたか?」
 警官B「いねぇ!」

 (警官B、画面を左手に走る。科学探知器を装着して、徳川埋蔵金を探す男。)

 警官B「こっちは、どうだ?!」
 男「・・・クソッ!!ダメだ!!反応なし!!」

 (カット変わって、スズキ9号車、最初の事件のあったファミレス前に停車している。)

[シーン6・ファミレス内部]

  「・・・それじゃ、きみと話していた由美子くんがいきなり怪物に変身した、というんだね?」
 小学生相手に、真面目な顔で訊くウンベル。
 こくり、と頷く少年。両手に巻いた包帯が痛々しい。
 深夜なので、既にかなり眠そうだが、スズキくんが冷静に突っ込みを入れる。眠いのはお互い様だ。

 「しかし、変ですね。何の伏線があると、そういう事態になるんでしょうか?
 確かに今夜は満月ですが、それにしても話が唐突過ぎる・・・。」

 「ウーーーム、前触れなしの残虐展開か。
 これは、きみ、ひょっとすると・・・。」
 ウンベルの言葉に、ハッと緊張の色を浮かべるスズキくん。
 「もしや・・・のりかず・・・?!」

 そこへ、
  
 「大変です、司令!大塚駅南口に川島のりかずが出現!
 街の人を次々に襲っているとの通報です!!」


 駆け込んできた地元警官の言葉に、席を蹴るウンベル。

 「しまったッ!!出遅れた!!今回の敵は、まったなしだ!!
 ・・・おい、小僧!!丁寧な事情聴取なんか、もう、止めだ!!
 その由美子ってのは、他に何か云ってなかったか?!」

 大怪我している若年者を、緊急事態をいいことにガクンガクン揺さぶる。
 恐怖でしどろもどろになる少年、蚊の鳴くような声で、

 「あ・・・あの・・・たぶん、クラスの小宮山くんのところへ行ったんじゃないかと・・・。」

 「そいつだ!!」

[シーン7・大塚駅南口]

 暴れまわる毛むくじゃらの怪物が、ロータリーを越えてカメラの方向へ迫ってくる。
 人間を鷲摑みにし、千切っては放り投げ、残虐非道の仕打ちを繰り返す。まさに殺戮機械だ。
 荒れ狂う由美子の内面を反映しているのか、心なし巨大化しているようだ。

 対して、警官隊が到着し、駅を背後に道路をバリケード封鎖。
 拡声器を持った司直が、緊張した大声で話しかける。

 「アー・・・アー・・・アー・・・こんばんは!!」

 一斉にこける警官達。日頃の鍛錬が物を言う瞬間だ。
 そんな小手先技を嘲るかのように、街路樹を投げ飛ばし接近するモンスター。

 「エエィ、発砲を許可する!撃ちまくれェ!!」

 ダゥーーーン!!ダゥーーン!!
 ダゥーーーン!!ウゥーーーン!!


 ばら撒かれる薬莢、ビルの谷間に残響がこだまする。

[シーン8・平凡な住宅、二階の勉強部屋]

 激しい銃撃の音がここまで聞こえて来る。
 全裸で、シーツを身体に巻きつけた小宮山くんが、ガタガタと震えている。
 部屋には不釣合いな、豪奢な天蓋付きのベッドの傍らには、赤のグラスワイン。震動に揺られて、床に落ちで割れる。
 拡がる流血のような、不吉なしみを見ながら、小宮山くんが述懐する。

 「由美子・・・とうとう、発病したのか・・・。このままじゃ、オレも・・・。」

[シーン9・爆走するスズキ9号車内]

 ウンベル総司令が、安全ベルトにしがみつきながら、絶叫する。
 「話がなんだか、さっぱりわからん!ストーリー紹介モード、始動!」

 「了解!ストーリー紹介します!


 小学生がセックスすると発生する奇病が村に蔓延!!
 大人も子供も、その病原菌に罹患した者は前後の脈絡なく、突如狼人間となり、見境なく他人を襲っては食いちぎります!
 
発覚を恐れた村の指導者達は、感染者を発見次第、抹殺!近隣の市町村に情報が漏れることを警戒してきましたが、
 それとは関係なく、地元自治体の無謀な森林伐採により、村の西側の山が決壊!大規模な山崩れとなって、村に襲い掛かります!
 いちはやく、この災害を察したのは、村八分になっている超能力者の親娘でしたが、その言葉を信じる者など誰一人なく、娘の必死の訴えに耳を貸すことなく、村の連中は全員死亡してしまいます!

 隣町の小学校にちゃっかり編入を果たし、新たな学園生活の幕開けにルンルン気分になる娘でしたが、そこへ現れたのは、あの大災害から、片目を失いながら奇跡の生還を遂げた、ちょっとニヒルな幼馴染みでした!
 再会を無邪気に喜ぶ娘でしたが、恐ろしや、彼はセックス経験者!
 その肉体には、既に恐怖の種を宿していたのです・・・!!」

 「いろいろ、問題を孕んだストーリーだな!分析!!」

 「川島のりかず作品の中では、充分合格点クラスです!深い動機付けもなく、心ない残虐描写だけが進化している印象を受けます。
 特に、村に迷い込んだ小学生三人組に対する悪逆極まりない仕打ちは、絶対復刻不可能なハイテンションさ!!
 われわれの求めるブルータルなのりかず像が今ここに降臨!!」

 「お前が、煽るな!!行くぞ!!
 攻撃目標、若年層セックスだ!!」


 (劇伴、高まる。以下次号)
 

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