『クォーターマス2/宇宙からの侵略生物』('57、英)
宇宙空間。
どこを見渡しても星の海だ。それに、底無しの暗黒。
ロケットは順調に飛び続けている。
『ヒューストンよりD、ヒューストンよりD。緊急呼び出し。』
コクピットで、銀色のヘルメットを被った人物がマイクを握る。
「こちら、D。ヒューストン、何かあったのか?」
『生物学研究チームの最新の成果を伝える。
オナニーに使う際のこんにゃくは、少し温めた方が具合がいいようだ。
だが、温め過ぎには注意。
おいおい、それじゃ、おでんだ!
どうぞ。』
「こちら、D。情報に感謝する。」
応えたDは、ヘルメットの前で手をかざしバタバタ扇ぐ。
「それにしても、夏でもないのに暑いな。どうにかならないのか?」
『うむ、いま、太陽のすぐ近くを飛んでいるからな。お約束だから仕方がない。
ちなみに、宇宙船の外側は、現在鉛も溶ける高温状態ですよ。』
「・・・むッ、キャプテン・フューチャーのネタか。
ヴィンテージSF文庫と、譜面解析は、僕の得意ジャンルです。
どうだ、伝授してやろうか、ヒューストン?」
『・・・結構!
それよか、今回は枕に、キャプテンつながりで、ちばあきおの“キャプテン”を使おうと思ったんだが。困った。』
「何か、トラブル発生か、ヒューストン?」
『実は谷口キャプテン時代すら、まともに読んでいないんだ。
野球マンガは、嫌いだ。死ね。
そこで、趣向を変えてキャプテン・ケネディを枕に使うことに、パンパカパーン、大決定!!』
「漫画トリオじゃないか。今頃全員死んでるぞ。」
(※原注・この情報は誤り。「そのうち死亡予定」に修正。)
『ヒューストンより、D。キャプテン・ケネディシリーズを覚えているか?』
「ハヤカワSF文庫、白背ですな。宇宙版CIAみたいな奴が、へんな仲間と無茶する話。」
『そのシリーズ第三作、“メテラーゼの邪神”なんだが、アタマは宇宙諜報部員が暗殺される007風の出だし、宇宙新興宗教が大ブームで、怪しんだケネディが潜入すると、その惑星を治める宇宙独裁者は、実は他の宇宙人に操られていた!というね。
そんなチャチいの、いまじゃ子供も騙せんぞ。』
「もろB級まる出しで、結構楽しんだけどな。
それが、なにか?」
『この話、実は下敷きにしてたのが、“クォーターマス2”って50年代の映画なの。侵略SFの名作です。今回はこの作品を伝授!どうぞ。』
「うわーッ、先に云われた。悔しい。
Dよりヒューストン。悪いけど帰らせてもらう。」
『大人げないな。まぁ、いいじゃないか、別に著作権を申請してる訳でもあるまいし。』
「“夏への扉”の主人公にでもなった心境です。」
『ヒューストンより、Dへ。
まぁ、確かにお前の云うのも尤もだな。俺も1980年の時点では、
2010年未来の地球で伝授が大ヒットし、お前が蔵を建てたなんて話、聞かされても到底信じなかっただろうな!!』
「リッキー・ティッキー・ティヴィー。おやすみ。」
『フン、下衆のロリコン野郎め。
・・・ヒューストンより、D。クォーターマス博士のシリーズは知ってるか?』
「・・・えぇと、電話ボックスがタイムマシンになってて、ダレックってブリキのゴミ箱の親玉みたいな種族が時空を越えて襲ってくる話。」
『それは、ドクター・フーだ!
同じイギリスBBCの作品だが、紛らわしいボケをかますんじゃねぇ。
クォーターマス博士は、イギリスが誇る天才科学者、月面に人類の植民地を造ろうとか真剣に考えている、本物の気違いだ。』
「こちら、D。その表現は不穏当。悪いが、一般読者が逃げるので、言い直してくれ。」
『ヒューストン、了解。
尋常でないことを考え続けて、頭のねじが二三本外れてしまった不幸なお年寄りです。』
「まぁまぁだな。不幸な、が付いているから是としますか。」
『不幸な人肉愛好家。』
「うぁあぁぁッ!」
『不幸な幼児強姦犯。』
「やめろー!」
『ヒューストン、了解。
これは、大ヒットした“原子人間”('55)に続く、テレビシリーズの映画化第二作目だ。
いわば、“踊る大捜査線、ザ★ムービー2”だ。レインボーブリッジ、閉鎖できませーん!だ。兵隊は口答えしないで!だ。ナイナイの岡村が連続猟奇殺人犯で、カマカマカマカマ、カマ、カミリィ~オ~ン!だ。』
「Dよりヒューストン。それだけは云わないで。青島刑事のコート、持ってたんだから。」
「ヒューストンより、D。本気か?
解説を続ける。
前回、怪生物を腕にブラ下げて帰還した宇宙飛行士の事件を見事解決したクオーターマス博士の研究所では、また性懲りも無く、月面に送るロケットの準備が着々と進んでいたが、常識的なイギリス政府が突然に予算カット、計画の中止を申し入れてきた。
博士が不貞腐れて、今夜はキャバクラでも行くかと財布と相談していると、研究所のレーダーが宇宙から落下してくる無数の怪物体を探知するんだ。
落下地点を調べに行くと、そこには政府の最重要機密とされる謎の工場プラントが。
ゾンビのように無表情な兵士に守られ、下院議員ですら自由に立ち入ることができない。
しかもプラントのデザインは、博士が模型まで作って温めていた月面基地と同じ!巨大なドームが林立する構え。
すわ、著作権侵害?と誰かの如く疑心に駆られた、心の狭い博士が山本晋也オトナの社会学の如く調査に潜入すると、警備兵が撃ってきた!
マジ?困るんですけど!
苦心して覗いた巨大ドームの中には、酸素を呼吸できない不定形の異生物がのたのたと蠢いていた!
ありゃー、こいつは侵略だー!!』
「Dよりヒューストンへ。
最後の台詞、“カリオストロの城”の銭形警部だな?」
『これは、よく出来た宇宙からの侵略映画だ。
侵略が二年前に既に始まっていた、という目のつけどころがいい。政府の要人まで侵略者の支配下になっている訳だ。
もっとも、これは原作・脚本のナイジェル・ニールの独創ではなくて、ハインライン“人形つかい”('51)が嚆矢なんだろうが。非常に盛り上がる設定である。
また、ロケには英国シェル石油の実在するプラントが効果的に使用されているから、工場萌えの人にもお勧めです。』
「あぁッ!しまった!」
『ヒューストンより、D。緊急事態か?!』
「こんにゃく、完全に茹で上がっちまった!
また、やり直しだ!!ちくしょうめ!!」
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