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2010年2月 8日 (月)

『ダイヤモンドの犬』 ('74、英)

 FMスタジオ。マイク前の男は、黒覆面を頭から被っている。

 「ゴー!ゴー!!ゴー!!!銭金なくても、ゴゴー、ゴー!!
 
 ウンベルケナシの“ユア・ヒットしてねぇ・パレード”、この番組は、地元の健康守って三十年、瀬戸口薬局の提供でお送りします。
 今日のゲストは、糞溜めから来て貰った、このお二人だ!」

 「あ、どうも、佐々木です。」
 「瀬戸口です。」
 「という訳で、本日のゲストは四月五日にニューアルバムが出る、SUPER46のお二人。では、まずは挨拶がてらに一曲、(急に渋い声になり)
 ディーヴィット・ボウイ、『1984』。」

 (曲、掛かる。ナンか違う。)

 (佐々木、小声で)「・・・おい、これユーリズミックスの『1984』じゃねぇの?セックス・クラ~イムって云ってるぞ。」
 (瀬戸口)「いいんだよ、ヴァン・ヘイレンの『1984』でなきゃなんでも。」

 (曲、終わる。拍手で入るウンベル。)

 「いや~良かった、実にカッコいいですね。ボウイ。」
 (佐々木) 「ボウイなんか、クソじゃん。」
 (瀬戸口、慌ててその口を手で押さえ)「ワッ、こらお前、なんてことを。」
 「ほお、佐々木さん。興味深い発言です。
 これは文脈からして、当然、ディヴィット・ボウイさんのことを仰ってるんですよね?」
 「いや、そうじゃなくて、ホラ、あっちの・・・。」
 (瀬戸口)「ワーーーッ、やめて、トシ、お願いーーー!!」(泣く。) 

 「・・・なるほど。
 ところで、今回お掛けしている1974年のアルバム、『ダイヤモンドの犬』ですが、お二人は、どんな思い出がお有りですか?」
 「別に。昨日まで聴いてなかった。」
 「あ、瀬戸口ですけど、ボクがトシに勧めたんです、お前絶対好きだよ、って。」
 「私としては、こいつが勧めるものは一切聴かない、をポリシーにしてきたんですが、たまには主義を違えて騙されてみるのもいいか、などと思いまして。」
 「で、結果どうでした?」
 「クソつまらねぇ大味なロックでした。」
 
 「・・・そんな、佐々木さんのリクエスト、『ドードー』!」

 (曲、流れる。)

 (佐々木)「でもコレ、アルバム入ってないんだよな!」
 (瀬戸口)「ライコディスクから最初のCD再発された時のボーナストラックでしょ。シングルB面曲ですよ。」
 (佐々木)「今日は伝授しねぇの?」
 (瀬戸口)「・・・・・・。」

 (曲、終わる。)

 (ウンベル)「♪ヒュー、ヒュー、ヒュー!!ヒュー・マサケラ!!」
 「なに、こいつ?XXX(※特定の薬物名)やってんの?」
 「シーーーッ。
 ヒュー・パジャムって云わないだけマシだ。」

 「ところで、お二人の近況なんか伺えますか?」
 (佐々木)「え?近況ですか?
 そういや、こないだ奇妙なビデオ見ましたよ。井戸のほとりで、父親が娘を殺すんです。」
 (瀬戸口、ウンベル揃って)「そりゃ、『リング』だろ!!」
 「いや、その後が違ってまして。
 娘が紐パン一枚になり、お尻とかダラダラ見せつけてくれて、急に『おしっこ、したくなっちゃった。』とか抜かすんですよ。」
 「・・・え?」
 「で、お風呂の床にジャーーーッと。」
 「・・・ジャーーーッと?」
 「ええ、ジャーーーッとぶちまける。こりゃ拾い物かな、と思ってよく見ると、娘の背中にチュ-ブが通ってるんですよ。それが、丸判りなの。
 あのおしっこは、一体何だったんだろう?」
 「曲いけ、曲!!」

 (『愛しき反抗』が流れる。)

 (佐々木)「・・・それにしても流れねぇね、俺たちの曲。」
 ウンベル、汗を拭き拭き、
 「イヤー、最高でしたー!!デヴィット・ボゥイー!!
 ところで、お二人は、イカ天以前からバンドを組まれ、バンドで一儲けなんて幻想もすっかり崩壊し、どころかCDすら売れなくなって、音楽産業自体の存続も危ぶまれている現在も、地味に音楽活動を続けておられるワケですが、
 そんなの、やってて、何か意味ありますか?
 空しくなったりしませんか?」

 「・・・ダイナマイト。」
 「うん・・・。」
 「やっちまえ!!」

 その瞬間、滝のように溢れ出した大量の液体が、部屋中に飛び散り、渋谷道玄坂スタジオの赤い「ON AIR」のランプを押し隠したかと思うと、窓ガラスを割って、それでもパラパラといた見物人たちに襲いかかり、スペイン坂方面へ押し流していった。

 狂ったように哄笑する瀬戸口の背中に、チューブの接続は一切なかった。
 

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