『ジュラシック・アイランド』 ('48、米)
(※以下の記事には、露骨な嘘が含まれる。期待して観て、「だまされた!」と叫ばないように。)
世の中には、「ジュラシック」物と呼ばれる映画ジャンルがある。
端的に云えば、「恐竜が出てきてアレをする」映画の総称だ。
要は、コナン・ドイルの小説『失われた世界』('12)をルーツとし、33年版『キング・コング』を不動の金字塔として、ラクウェル・ウエルチが金髪ビキニで原始人を演じる『恐竜百万年』('66)、リンゴ・スターが一切まともな台詞を喋らない『おかしな、おかしな石器人』('81)などのスター映画を経て、スピルバーグの『ジュラシック・パーク』('93)からジム・ウィノスキー『ジュラシック・アマゾネス』(94)へと急降下する、ま、そんな暇潰しに最適だが、何も残らない作品群たちのことである。
幼児性の抜けない男性諸君は、ちいさな子供だろうがアルムのおんじだろうが、「恐竜が出る映画!」と聞いた瞬間、もう臨戦態勢になっている。
これは、「乳房と見るや、むしゃぶりつく」と同じ、本能の作動原理だ。誠に遺憾であるが、本官もこの件ばかりは、如何ともし難い。人類の今日の繁栄は、これにより築かれたのだ。
そんなジュラシック・ジャンルの知られざる分水嶺、世界初のカラー恐竜映画『ジュラシック・アイランド』は、そんな、人類の発展に並々ならぬ関心を寄せる人々が、先史時代の島で痩せぎすの女を奪い合う物語だ。
冒頭、シンガポールの一杯飲み屋。
(堂々と「シンガポール」と英語字幕が出るのだから、そこはシンガポールなのだ。あまり、シンガポールらしく見えないが。)
そこへ婚約者の痩せぎすの女を連れ、カメラオタクで赤瀬川原平似の元・空軍大尉がやって来る。彼は、明らかに黒社会の事情によく精通していると思われる、現役アル中バリバリの船長を雇い、かつて戦時中に偶然恐竜を目撃した絶海の孤島へ行こうとしていた。
紆余曲折(風俗嬢を殴る蹴る)の末、破額のギャラで契約が交わされ、探検隊の費用は翌日、痩せぎすの女が銀行で船長に支払いを済ませる。カメラオタクは現在、就職浪人中なので一円も所持していないのだ。
彼の唯一の望みは、恐竜の島に行き、写真を撮影して帰り、次の職活にいかすことである。なんか、水木しげるのマンガのような生臭さだ。恐竜にロマンとか、憧れなんて一切ないのだ。その態度が逆に清々しいものを感じさせてくれる。
しかし、よく知られているように、オタクは性的に弱い生き物だ。
細腕とこけた頬の割りに、痩せぎすの女は、異常な性欲を持て余す凶悪な怪物だった。彼が、そんな彼女をどうして満足させられよう?
かくして、エイリアンに侵入されたノストロモ号のように、チャーター船ドルフィン号には人類の認識を超えた性的な危機が迫っていた。
船員として乗り組んだ現地人全員とファック、一等航海士と甲板でファック、「前回の探検の生き残り」(この役は、ジュラシック映画では重要である。)、今は引きこもり気味で自堕落な生活を送る金髪イケメンと連続ファックをキメる。
ひとり、ハブにされたアル中船長は、自室で、ヤケのせんずり掻いてます(笑)。
そうこうするうち、島に到着。
次々と登場する、着ぐるみでゴジラの万分の一も動かないモンスター軍団、ブロントザウルス、ディメトロドン、ティラノサウルス、それに毛の長い大猿(解説によればメガテリウム。エッ、これが?とわれわれの常識を軽く覆してくれる。)を、女は次々に喰っていく!
この時空を超越した獣姦マニアっぷりは、本作品の最大の見せ場と云えよう。
とりあえず数出しときゃいいや、という投げ遣りな監督の現場運営により、五匹のTレックスと痩せぎすな女が演じる、激烈かつ濃厚な濡れ場は、ヘイズコードどころか、現代のビデ倫も眉を顰める問題描写!
そして、すったもんだの末、オタクのカメラ男は野外トイレに屈んだところを頭から恐竜に喰われ、アル中船長は崖から身を投げて死ぬ。最後までしつこく生き残っていた金髪イケメンも、巨大毛長猿にカマを掘られて狂い死ぬ。
痩せぎすの女は、人類の進歩のために尊い犠牲となった人々の墓を、その辺に転がっていた流木で適当に作ると、その墓前まで行って本番オナニー。
意気揚々、「この映画はこれでお終いですが、次は、あなたの街へ行くかも知れません。」とカメラ目線で抜かすと、島から撤収するのだった。
帝都無線のタクシーで。
・・・って、嘘ばかり書いてきたが、誰が観たいんだ、こんな映画?! 俺は、嫌だ。
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