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2010年1月30日 (土)

『カルティキ 悪魔の人喰い生物』 ('59、伊)

 ジャンルに関心のない皆さんにとって、傑作『カルティキ』ですら単なる怪獣映画にしか見えないことは、百も承知だ。
 私が伝えたいのは、これが「良く出来た怪獣映画で、どなたでも充分楽しめますよ。」ということなのだが。わかるかね?この違い。どうだろう。

 かつてそういうマニア以外の諸君を捲きこむために、TVの洋画枠が有効に機能していた時代もあった。
 だから、その当時を知る方々には、
 「マックィーンの『絶対の危機』('58)みたいな映画ですよ。」
という紹介も可能だろう。
 つられてマックィーン主演の他の傑作、『ブリット』だとか、あの忘れ難い『ゲッタウェイ』の話も出来るかも知れない。
 だが、これで話にノッてくれる方は、だいたい四十代、五十代以上だ。
 
 あるいは、もっと俗っぽく、
 「『ウルトラQ』みたいな映画ですよ。」
 という紹介ではどうだろうか。
 『ウルトラQ・ザ・ムービー/星の伝説』('90)を連想させて、陳腐でマイナスか。あれはマズかった。実相寺の株価はさらに下がった。
 
 ま、それはともかく。
 不定形のモンスターが人間を襲う。
 こいつは明らかにハマーの開拓した分野で、宇宙飛行士が腕に怪物をブラさげて地球に帰還する『原子人間』('58)や、放射能を吸収し巨大化する不定形生物『怪獣ウラン』('56)などが始祖とされる。
 これらのヒットを受けて、バッタ物大国(一応、褒め言葉)イタリアが製作した『カルティキ』は、日本未公開作品で、ビデオ時代からタイトルのみ紹介本で流布されてきた幻の一本である。
 私は、単純に、これを観られて嬉しい。

 千五百年前、古代アステカ民族は、戦争や災害があったでもないのに、都を捨てて大移動を行った。その原因は何か。
 住む人の居なくなった都は廃墟となり、禁忌の場所として語り伝えられている。
 この地に、若い二枚目の教授が妻を連れ、探検にやって来る。どうやら、移住の謎は、古代人の崇拝していた女神カルティキに関係があるようなのだ・・・・・・。

 撮影と特撮に、後にイタリア怪奇界の大物となるマリオ・バーヴァが噛んでいるので、締めるべきところは締まった、実に見応えのある映画になっている。
 遺跡での水中撮影とか、カルティキに消化された人間の特殊メイクなど、律儀さに感心させられる出来映え。
 後半、イタリアに舞台が移ってからの展開もちゃんとしていて、「主人公夫婦の内輪喧嘩」「主人公の友人が妻に横恋慕」、さらに「その友人を慕う、情熱系(笑)の黒髪美女」という人間ドラマを横軸に敷いて、怪物の出ない場面もテンションを崩さず、73分を観せ切る堅実さ。
 
 主人公の警察署からの逃亡の仕方とか、クライマックス、砲塔から火炎放射する戦車だとか突っ込みどころがない訳ではないのだが、まぁ、そんなのは腐ったマニアが突けばよろしいではないか。
 (俺は、マニアは全員、人間のクズだ、と確信している。)
 あと、主人公の妻、派手で顔の大きいイタリア美人ね。オープニングのジャングル(セット)で、ノーブラ。強調しとく。ノーブラ。
 
前半では、原住民役の姐さんの、パンツ丸出し、セクシーダンスもございますよ。熱海に来テネ(笑)。
 
 それから、個人的な見どころとしては、カルティキに寄生され悪魔のような性格に変貌していく主人公の友人役が、知り合いのロックシンガー、中町チカラさんに驚く程そっくり。
 中町さんは、その他にも国内外問わず、多数の映画に出演(『狂い咲きサンダーロード』とか)されているので、彼を知っているとさらに映画が楽しく観れますよ。お勧めです。

 こういう楽しい映画が、「白黒だから」とか、「CGじゃないから」とかの下賎な理由で、一部の人達にしか観られていないという現状は、やはり改善していかなきゃいけないんじゃないか。
 誰に頼まれたわけでもなく、勝手に宣伝マンをやりながら、そう思うのだよ。わかるかね?

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