『恐怖の火星探検』 (’58、米)
火星探検隊は、全滅した!
救助に向かった第二次探検隊は、唯一人の生存者と一緒に、鼻の穴のでかい全身鱗に覆われた見るからに悪そうな、異星怪物を乗せてしまう!(通称・火星番長)
拳銃も、ライフルも、トーチの炎も、高圧電流すら効かない、不死身の怪物に、ひとり、またひとりと全身の体液を吸い取られ絶命していくクルーたち!
強い!強すぎる!
なんで、こんなに強いんだ、コイツ?!ただの学ランの高校生なのに!!
そして、生き残りを賭けて、人類の叡智を集めた、最後の作戦の火蓋が切って落とされようとしていた!
・・・って、うっかり、普通にストーリーを紹介してしまったが、それくらい、この話は面白い。
ハリウッド的な人間ドラマは、ギューーーーッと隅に寄せてしまって、ひたすら生き残りゲームに焦点を合わせた脚本の勝利だ。
脚本家は、ジェローム・ビクスビィ。
野田昌宏先生の名著『SF英雄群像』をご愛読の、奇特な皆さんはご存知だろう。ランスロット・ビッグスシリーズで有名な、粋な作家さんである。
ヴァン・ヴォークトの、例の「ケアル」のモチーフ(※知らんのか、きみは?)をきれいに換骨奪胎し、スマートな室内劇にすり替えて使っている。
ダン・オバノンも脚本に感心したくちだったのだろう、『ダークスター』では宇宙船内で繰り広げられるドタバタ劇に、『エイリアン』では殺戮劇に、それぞれ読み替えて再利用している。実にエコな考えの持ち主だ。
さらに云えば、ジェームス・キャメロンは『エイリアン2』のクライマックスを、前作のリドリー・スコットのラストから受け継いでいる訳であって、
ということは、元を正せば、これまた性懲りも無く本作から再度頂いているとも見えるのでありまして、いやはや南友、作家間を飛び越えた物凄い感染力である。
「宇宙(や深海)を舞台に」
「未知の生物が」
「クルーを殺して廻る」
映画におけるこの黄金パターンを築き上げただけで、ジェローム・ビクスビィの名はハリウッドの歴史に残るべきであろう。
早い話、われわれは何本こんな話ばかり観せられたと思ってるんだ!
ありがとう!(笑)
『恐怖の火星探検』に話を戻すが、出てくる役者は全員、地味なおっさん、おばさんばかりで、物も見事に華がない。舞台も、四階建てのアパートみたいな、くすんだ宇宙船の中(梯子で上下するところが、ドリフの舞台コントを連想させる。)。
それでも面白く観れてしまうのだから、脚本の力は偉大だ。低予算、ノースターでも楽しい作品を。
この発想は後にテレビの時代に生かされ、ビクスビィは『ミステリーゾーン』などのライター仕事もこなして行くのでありました。
結論。
器用は、身を助ける。って、そんなオチかよ、おいおい。
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