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2009年12月26日 (土)

ウンベル楽屋噺 「真夜中の緊急会議、ライブat大学病院!」の巻

  (都内地下の某所。防腐剤の臭いがする暗闇。)

「スズキくん、スズキくん。」

 「わッ!!突然声をかけないでくださいよ、ビックリするじゃないですか。」
 「いや、実は相談したいことがあってだね。」
 「だからって、なにもこんな場所に呼び出す必要ないじゃないですか。
 だいたい、なんでボクはこんなゴム長を着てるんですか?」
 「いいから、このブラシを持って。」
 「やけに柄の長いブラシですね。・・・これでいいですか?」
 「オッケー。じゃ、浮かんできたら、沈めるんだぞ。わかってると思うがな。」

  (ウンベル、部屋を出て行ってしまう。鉄の扉が閉まる音。)

 「え??ちょっと、どこ行くんですか?困るなぁ、あいかわらず勝手な人だ。」

  (プカプカ、巨大な水槽に浮かび上がる死体。)

 「うわわわッ、こういうことか!」

  (しばらく、闇に中でバシバシと濡れたものを叩く音が響く。)

 「ふう、ふう、こりゃ、しんどい。都市伝説は本物だったわけだ。とすると、巨額のバイト代が・・・。」
 『バイト代は、出ません。』
 「わッ!!どこですか、どこから話してるんですか?!」
 『その部屋はガスが篭もって危険だから、表に出させて貰った。現在、外部からマイクで話しております。』
 「ふざけんな!!出せ!!なに、考えてんだ!!」

  (壁を蹴る靴音が、連続して聞こえる。)

 『落ち着け、スズキくん。暴れても事態は解決しないぞ。』
 「うるせぇ!!この、人殺し野郎!!こうなりゃ、テメエを殺して、オレも死んだるわ!!」
 『微妙に永井豪を入れてくるとは、こんな情況でも衰えを知らぬやつ。あるいは、きみならば、私の抱えた悩みを解決できるかもしれん。
 時に、きみは、前回自分が登場した記事を憶えておるかね。』

 「・・・ゼイゼイ、ゼイ。
 川島のりかず連続レビューの第一回・・・。」
 『そう、『血ぬられた処刑の島』だ。
 喜べ、現在Googleでこのタイトルを検索すると、二番手くらいにウンベル先生の記事がヒットします。』
 「嬉しくないわ!!誰がサーチするんだ、そんなマイナータイトル!!」
 『そこだ。まさに、それなのだ。私の悩みは・・・・・・。』

  (パチン、とスイッチを弾く音。
  遺体安置室のどこかの壁が開き、カタカタとフィルム映写機の回る音がする。)

  (次々と映し出される、ひばり書房刊行の川島のりかず作品、その表紙絵。)

 「『悪魔の花は血の匂い』、『死人沼に幽霊少女が!』、『怨みの黒猫がこわい!』、『狂乱!!恐怖の都市へ』・・・・・・。」
 『そう、マンガ史に輝く、錚々たる名作群だ。しかし、問題がひとつ、ある。』
 「へ?!」

『誰も知らんのだ、そんなマンガ家!!!』

 「え、そ、そうかな?近々、BSマンガ夜話でも取りあげるとか、聞きましたが・・・。」
 『ない、ない!!絶対、ない!!』
 「しかし、古本マンガ収集家の間では知らぬ者がない有名人ですよ!!
 超傑作『中学生殺人事件』なんて、中学の教科書にだって載ってますよ!!」
 『絶対ねぇよ!!追い詰められた中学生が、発狂して家族を皆殺しにする話だぞ。』
 「スカスカの絵柄と、理不尽な展開が読む者に、軽いショックを与えるという。ボクは、やはり名作だと思うのですが・・・。」
 『おまえだけ!
  世間は、誰も知らねぇんだよ、そんなマンガ家!』
 「ウゥッ、そうだったのですか・・・・・・。」

  (背後に映るスクリーン、真っ暗になり、
   「ガーーーーーーン」
という手書き文字が現れる。)

 『川島のりかずが誰かも知らないようなレベルの連中相手に、のりかずのパロディをいくらやっても無駄なんだよ!!
 オレは、突如それに気づいたの!!究極の真実に!!』
 「そんな、身も蓋もない。そんなこと云ったら、『神秘の探求』なんて、誰も知らないネタばっかりですよ!」
 『・・・むむむ。(小声で)ちょっとは、メジャー作品も扱ってるんだが・・・。』
 「世間の方こそ、もっと、のりかずを大きく扱うべきなんです!!『FLASH』のグラビアでもいい。」
 『むむ、写々丸もボッキン、だな。』
 「写々丸もボッキン、ですよ!!誰も知らなくたって、確実に、有名作品より数段面白い、そういう優れたマンガがたくさんあるんです!!
 そんなマンガを通して、アジアの子供に夢を与えるんですよ、ウンベル先生!!」
 『・・・・・・・なるほど。私が、間違っていたのかも知れん。

  ・・・わかった・・・。
 川島のりかず連続レビューは、継続して掲載することに大決定する。いばら美喜先生も、西たけろう先生の記事も急遽アップだ!!』

  (急ぎ立ち去ろうとするウンベル。立ち止まり、読者に向かいクルリと振り返る。)

 「わかっていると思うが、読者諸君!
  例によって、扱う作家や作品に関する細かい解説は、意図的にカットさせて貰う!
  気になるなら、持てる検索能力をフル活用して、自分で調べろ!
  画像や書誌解説の充実したサイトはたくさんあるぞ。

 以上だ。」

  (バタン、と遠くで重い鉄扉が閉まる音。)

 「あ・・・ちょっと・・・待ってくらはぁぃ・・・。」
 その後、スズキくんはホルマリン溶液の中に浮かび上がる死体を、叩いては沈め、叩いては沈め、一夜を過ごす羽目になったという。

 翌朝、遺体安置所で意識を失っているひとりの男が、病院の管理責任者らにより助け出されたが、彼の頭髪は極度の恐怖と疲労のためだろうか、まだ二十代だというのに、老人の如く、根元まで真っ白く変色していた。
 警察では、男の回復を待って事情を聴く方針だという・・・・・・。

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