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2009年12月19日 (土)

《架空音楽》『オイルまみれの栄光~逆さ血ミドローズ・ヒストリー1989-1972~』(’99、日)

 いきなり画面一杯に飛び込んでくるのは、警官隊と激しく揉み合う皮ジャンの若者達の姿だ。
 警棒を脳天に喰らって倒れ込む者。殴りかかろうとして、つんのめり画面から消える者。
 奥手に、狂ったように振り回される、白いシーツ製と思しき大きな旗が見える。
 赤いスプレーで乱暴に殴り書きされた文字は、「頭狂☆童夢、建設ラッシュ!」と読める。

 テロップ、「日比谷公園1989年」 が挿入される。

 「そう。誕生するときが来たら終わりだな、って。」
 唐突に、室内で、静かに語る男が映し出される。
 「最初から、メンバー全員で、そう決めてました。」

 ロッカーズ風の皮ジャン。胸のところに、“がんばれ!キッカーズ”と書いてある。
 キーチェインに、髑髏をかたどった栓抜き。
 「あ、これ?どこでも、うまいビールが飲めるでしょ。」
 瓶ビール限定狙いか。

 毛利 年の差カップル(35)。
 
 「逆さ血ミドローズ」ベース。
 解散後の現在は自身のバンド、「マッド・マッド・ハニー・ライダー」を率いて活動中。松戸市在住。左官工をしている。
 「そう、そう、キッカーズは、まさに俺の青春でしたね。」
 照れ笑い。
 「(血ミドローズは?という質問を受けて)え、血ミドローズ?
  あんなの、宗教譫妄のたぐいでしょ。民俗学が真剣に扱う課題じゃないですよ!」

 口角に泡を飛ばして喋りたてると、瓶ビールを飲んだ。やっぱり、らっぱ呑みだ。
 
ソング 「ドクロ人生」 (作詞作曲・アーペーパー)

   ♪ ドクロの~~~、呪いにぃ~~~
     かかった、おまえは~~~、きょうから~~~

      ドクロ人生!!!

     どこへ行ったってぇ~~~、
      ドクロがついて~~来るぅ~~~
         トイレに、立っても~~~、
           証人喚問にぃ~立ってもぉ~~~

     こわい、こわい、こわい!!!
     こわい、こわい、こわい!!!

     楳図かずおの、こわい本!!!

 唐突に、ひげだるまのおっさんが映る。
 深夜、ビルの地下駐車場。遠くにエコーを効かした都会の喧騒が響く。
 おっさんは早歩きで、カメラから逃げるように急いでいる。
 チョコレートの箱を画面にかざし、吠えるように云う。
 「あいつら、絶対最低だよ!」

 テロップ。葉月里緒菜(53)、アイドル。

 
「店を壊して、逃げやがった。事務所に掛け合っても、びた一文寄越しゃしねぇ。ぜってぇ潰してやる!ぜってぇ殺してやる!」

 瞬間、時系列を無視して、画面に毛利が現れ、おっさんの頭をビール瓶でカチ割った。
 ばりん。
 派手に、コンクリートの床に倒れ込むおっさん。
 ニカーーーッ、と笑う毛利。ところどころ、歯がない。

 「逆さの歴史は、日本のパンクの歴史そのものなんですよ。」
 そう語るのは、「日本唯一の爆発パンクマガジン」BoKAAA~N!!編集長、棚田務(46)。
 貧相で、地味な顔立ちだが、とてつもなくド派手な、ラメ入りのダウンを着ている。
 丈の短い袖口から覗く両手には、マオリ族もかくやという、極彩色のタトゥー。
 
 「ウチも、逆ささんの爆破魂には共感しまして。デビューからずっと追っかけているうちに、影響受けて、こっちの編集方針まで変わっていきました。
 発破専門のライターとか、だんだん増えて来て。
 仕掛け花火の職人とか。
 ラーメン屋のバイトも、オカモチ持ちぶらさげて、出入りするようになりまして。
 で、マッドマックスの記事とか、西部警察の特集とか。あと、東映戦隊モノの現場ルポとかね。
 今じゃありきたりだけど、当時そんなことやってたの、ウチだけ。ホント。
 それが嵩じて、腹腹時計の製作法とか、自宅で出来る赤色テロル特集とかいって。
 で、長年やってくうちに、気がついたら、すっかり「爆破」と「パンク」の専門誌になってましたね(笑)。」

 丸の内の大型書店。
 店頭で、雑誌を手にした若者が、木っ端微塵に吹き飛ぶ映像。
 オーバーラップするパトカーのサイレン音。

 「パンクは、ひとつのアチチュードですから。」
 棚田は、傍らの、色の浅黒い若者と肩を組んでみせた。背後に、Xメイニ師のポスター。
 並ぶ機関銃は、本物のようだ。
 「ビバ、権力。イエーーー。」

ソング 「レッツ・ゴー、血まみれ」 (作詞カーセックス・作曲カーオナニー)

 ♪ (デンデレ、デケデケ、デンデケデン) レッツ・ゴー!! 
    (デンデレ、デケデケ、デンデケデン) レッツ・ゴー!! 


    ※画面下、「この曲は、インストゥルメンタルです。」の文字が流れる。

一転、穏やかな農村風景が映し出される。
 彼方から、雲霞の如く飛来する、黒いヘリコプターの群れ。

 テロップ。「ベトナム戦争、末期。」

 稲穂の揺れる水田を、ビール瓶を片手に振り回す毛利が、奇声を上げて駆けていく。
 その前方を、逃げる民族衣装の少女。
 
 毛利 「ホーーーイ、ホーーーイ、ドンジャラ、ホーーーイ!!」
 少女 「ドンジャラって、なんジャラーーー?!」

 感傷的な音楽、高まる。よせばいいのに、素人が演奏してしまったベートーベン。
 そこへ挿入されるのが、本人の肖像画が涙を流す怪奇映像。一台の手持ちカメラのみで全て撮影され、ハイビジョンマスター処理されている。
 しかし、結果として、粒子が粗くなっただけのようだ。

 毛利と第三国の少女が、路肩に積み上げられた藁の山に倒れ込むと同時に、
 カメラ、赤い幕の張られたステージ上にいる中年女性に切り替わる。

 次々と、手品を見せていく女。

 ちら見せ チチ(36)。 職業訓練校に通うかたわら、スナックを経営。先日、ボヤを出し営業停止処分に。
 逆さ血ミドローズ、初代ドラマー。通称、ウメちゃん。

 「ひどい話よ。あたいの綽名なんか、由来が梅川。梅川よ!三菱銀行事件の。
 チロルハットを一回被っただけでそれかよ!って、オールナイトニッポンに投書して、憧れのハガキ職人デビュー。これで、十代にして、早や一流芸能人よ、芸能人。
 スター街道驀進中なるも、徳川中出し禁止令。すったもんだの挙句に、熟考の末、立派なパン助になれましたーーー!!
 人生バラ色、おめでとーーーございまーーーす!!」」

 十円玉に、煙草を通す手品。拍手なし。
 パチパチパチ、と小声で呟きながら、話を続ける。

 「血ミドローズにドラマーは常時、三人居てね、誰が叩いてるのかわからないの。
 だから、大抵、問題なし。お咎めなし。でも、なにもやらないってのも、あたいのポリシーに反するわけ。
 ビッグになりたいかって?ならいでか!!
 
そこで思いついたのが、お猿の電車よ。お猿の立場は、運転しているのか、それとも乗客なのか、実態はまだ解明されていないじゃない?
 血ミドローズを抜けて・・・あたいは、ひとり香港へ飛んだわ。」

 筒状のハンカチに、水を注いでもこぼれません。

 「香港での暮らしは最悪だった。鬼のおやつはおあずけなのよ。サンクス。サンクス。モニカ。説明は以上。
 お返しのカナッペなんか、期待しないで頂戴。
 別れはいつも背中をついて来るもの。宿命。暗い世相の浮世占い。
 彼とは、お互い深く理解しあったし、夜通し線香の匂いも嗅いでられた。知り合ってから、仏壇にお供え物の上がらない日はなかった。でも、万事に潮時ってあるものなのよ。
 あたしは、奥多摩地方の自然を愛していたし、彼は根っからの秩父っ子。
 だから、ふたつの未来は、しっかり結び合わされていた筈だった。
 未来予想図、常に晴れ。降水確率ゼロパー。ゼロパー。
 でも、ダムなのよ、結局。問題はダム。
 すべてはダム問題に集約されると思う、恋愛は。(※財政破綻の比喩的表現と思われる。)
 不要なダムばかり建てまくる行政誘導型の地方財政。
 でも、これはお上も、桜田門もご存知の事実。げへへ。だからって、その程度で、慌てるようなウメちゃん様じゃなくてよ。よろしくてよ。いらっしゃい、新婚さん。
 でも、人面犬?
 まじで?!
 ちょっと、人面犬がどうしたっていうの??」

 画面いっぱい、藁の山。
 突如顔を突き出した毛利、カメラに向かい、大声で叫ぶ。

 毛利 「オレっち、とっても、ビッグだぜーーー!!」
 
少女 「イヤーーーーーーーン

 彼方に、ヒンドゥシュターナ山脈が見える。雲を裾野にたなびかせ、雄大な眺望である。
 「DOSパラ」の看板も見える。秋葉原が近いようだ。

ソング 「はりつけ教祖」 (作詞千秋楽・作曲青いモンゴル狂徒)

  ♪ はりつけ~ら~れて~~~
         また、はりつけ~ら~れて~~~
   (ド、ドゥン!!)
     
        オレは、はりつけ教祖!!

    痛い~、痛い~、痛い~~~
    痛い~、痛い~、痛い~~~


       誰か、クギを抜いてくれ!!!

    痛い~、痛い~、痛い~~~
    痛い~、痛い~、痛い~~~


               オレは、はりつけ教祖!!
                 元祖、はりつけ教祖!!
   
 
画面、再び日比谷公園で警官隊と揉み合う、若者達が映る。
 彼等は、メガホンを片手に口々に何か叫んでいるが、声が割れてしまっているので意味は聞き取れない。
 と、白メットの男がひとり、携帯のライター用オイル缶を取り出し、これ見よがしに宙に差し上げた。
 一層激しい怒号が飛び交うなか、彼はじゃぶじゃぶとその中味をおのれ自身、かぶり始める。
 その動作が合図だったかのように、周りの皮ジャン連中も懐中から取り出したオイルを自分にふりかけ、周りにもばら撒いていく。
 ビルの壁面を走るサーチライト。機動隊の輸送車両が到着する。新聞社のヘリの旋回音がバタバタと聞こえ、野次馬の顔ひとつひとつが、ぶれたカメラアングルを斜めに横切る。
 どこかで、火がついた。
 ボワン、と空気の爆ぜる音。
 キャーーーッ、と叫ぶ女の悲鳴。
 一瞬、フラッシュが焚かれたように画面が明るくなり、フルフェイスヘルメットに皮のつなぎの人影が踊り出す。
 揺らめく炎に包まれ、彼の身体は、右に左に大きくステップを踏む。
 思わず、後ずさる警官隊。
 驚くほど高く上がった火の手は、要所に飛び、数秒を待たずして画面は火の海と化していた。
 倒れ込む、黒い人間の姿。
 逃げ惑う群衆にパニックが拡がり、喧騒はますます激しい。

 彼等が何の目的で争っていたのか、そもそも彼等はいったい何者なのか、最後まで観とおしたが、さっぱり解らなかった。
 以下のテロップと共に、映画は終わる。

 「世界各地の戦没者の霊魂に捧ぐ。」

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