『イヴの総て』 (’50、米)
ベティ・デイヴィスは、なんだか安達祐美に似ている。
となるとキム・カーンズの『ベティ・デイヴィス・アイズ』は、『安達祐美の瞳』になりそうなものだが(「ならないだろ!」という愛ある皆さんからの突っ込みは無視することに)、それはともかく『なにがジェーンに起こったか?』は恐るべき傑作であった。
ジョーン・クロフォードと姉妹という恐ろしい役柄であって、ロバート・アルドリッチの例によって力技としか言いようがない演出により、動きの少ない筈の密室での監禁劇が、サスペンスフルなアクション映画として成立していた。
特にラストの海岸での狂いっぷりは見事で、悪い夢でも見ているようなだらだらした拷問シーンが延々と続く。そこまでスピーディな展開を連鎖させて、映画を停滞させなかったアルドリッチが、自信たっぷりに伝家の宝刀を抜き放った瞬間だ。
鮮烈な、あとに残るビジュアルとアクション。
それは『ヴェラクルス』の決闘場面であったり、『北国の帝王』のレールに廃油を撒くリー・マーヴィンの姿であったり、『ロンゲストヤード』のあの勝利であったりする。
ベティ・デイヴィスの顔は、老婆だか子供だかわからなくて、なんかこわい。
それが全開に生かされたのが、『ジェーン』のあの名場面だったのだと思う。
『イヴの総て』は、それから遡ること十二年前、ベティ・ディヴィス四十二歳の時の作品だ。(『Cannival God』の記事に続き、またしても四十二歳。私は四十二歳フェチか。)
顔は、この時点で、既に充分こわい状態に突入していることがわかる。
輪郭が丸くて、猫みたいな目。そこに、老化によるまぶたの弛みをプラスし、薄くブラッシングして仕上げる。身長低め。特徴あるだみ声。押し出しの効くタイプ。
デビューが七歳(舞台でいきなり全裸の妖精役!)で業界長いというのも、冒頭申し上げた通り、なんか祐美ちゃんとの共通項を感じさせますでしょ。
(祐美ちゃんの素晴らしい人間性については、テレ東で昔やってた芸能人接待番組で確認できる。タイのロケで、大人のリゾート満喫!ハーブ風呂でセクシーショット!無理ありすぎ!進行役の若手芸人をやたらと酷使!しかも、旅になぜか無名の弟まで同伴!芸人には、そっちまでヨイショ連発を強要!絶対無理!しまいにゃディナー後、カクテルを傾ける!悪夢のような反則映像の連発だ!)
さて、『イヴ』は演劇界の内幕を描いた、退屈しない程度には面白い作品。つまりは普通の映画。
ベティちゃんの役柄は舞台のベテラン大女優。極端に性格が悪く、口も悪い。当然ながらわがまま。
七つ年下の劇作家を愛人にしていて、公私問わず約束には何時間も遅刻するし、女優だからもちろん観客を常に見下しているし、勝手に酔っ払って勝手に帰るし、場所を構わず煙草吸いまくり。近くにいたら傍迷惑な、本当に嫌な人間である。
さすが、“ハリウッドの知性派”ジョゼフ・M・マンキーウィッツ、使いどころを心得てるな。
最初の本格的な登場シーンなんか、楽屋で、顔中ドーラン塗りまくりなので、おっかないうえに、本当に誰だかわからない。
あきらかに扱いが漫★画太郎のババァ級で、素敵だ。
育ててきた新人女優に裏切られ、肩を震わせて泣く場面なんかグッときますよ。イディス・ヘッドの衣裳も脇が開いてるのが妙にエロくてね。殊勲賞もんです。
この作品は、『サンセット大通り』のグロリア・スワンソンの貫禄より、ベティちゃんの可愛さをとりたい、という一部の特殊な趣味の方にお勧め。
(映画としては『サンセット』の方が殺人があるぶん、格上評価となりますから。)
おしまいに、ベティちゃんの思わず生唾を飲む名台詞をどうぞ。
「女優だって、年を取るのよ!」
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コメント
日本銀行券の、五千円札。
〔内山理名〕
の顔写真に変更してほしい
と数日前にふと思ったのを
ここに記します。
失礼の程
投稿: 鉛筆 | 2009年11月23日 (月) 01時05分