2022年6月19日 (日)

怪獣ウラン (1956、X THE UNKNOWN、ハマー・プロ)

 意識を持った泥が人間を襲うドロドロ・パニック映画

 そんなもの正気で観たがる奴などいるだろうか。

 泥っぽいところで、昔トロマビデオで『悪魔の毒々モンスター』ってのがありましたが、あれは廃液で溶けて変形した人間だからね。同じハマーでも『原子人間』の系列。サム・ライミの『ダークマン』か。ジョーカーと同じ製造方法。人体改造、フランケンシュタインの流れですよね。

 『コロッサス』のマニング大佐も含め、人間が変形するモンスターには、人間的悲哀と喜怒哀楽とお色気があります。巨人獣と化したマニングがマンション窓からブロンド美女の入浴シーンを覗く場面を思い出してみて。あれ、人間だから成立するんであって、単なる泥じゃねぇ。

 しかし。

 泥がこっちを見ている。しかも、その泥が勝手に動いて、人間を襲ってくる。

 これって、かなりの確率で怖くないですか。ホラーじゃないですか。生命のない筈のものが意識を持って動く。ロボット物って全般そうだけど、あれはまだ人型ベースだったりするからねぇ。機械が動くのはまだ理解の範疇。意味が解る。動くように作られているんだから、そりゃ動くだろ。

 でも動きとまったく関係ないものが突然動き出したら、こりゃホラーですよ。本気で怖いですよ。意味わからんもん。私はレムの『大失敗』を連想した。究極の恐怖かも知れない。非生命に襲われるのって。

 放射能を帯びた被爆泥がさ、勝手に動き出して人間を襲う。ジューッと溶かしちゃう。で、泥に接触した人間が骨だけにされる、かなり呑気な残虐描写とか本作にはあって、そこが冒頭に映る、かの「この作品には過激で残酷な描写が含まれます!閲覧注意」テロップの要因になっているようなんですが、そんなこと言われてもねぇー。そこはホラ、『ウルトラQ』で放送できるレベルでお約束の範疇であって、血は出る、脳天に杭は打たれる、腕やら足は切り刻む。残虐の極みに達した現在の視点から見れば、ま、幼稚園レベルで生ぬるいものなんで、好きな人はかえって微笑ましく思えちゃうんでしょうけど。(主役の博士の見事なハゲ頭の方がよっぽど凶悪である。)

 でも、ここまで泥ネタ押し。

 あくまで、泥こだわり一辺倒。

 もう、煎じ詰めれば、すべて、泥ネタしかない!

 泥一発でここまで見せきる泥オンリー主演の映画がある。一時間半かけて大の大人が泥いじり。脚本ジミー・サングスター本気の泥チャレンジ。脱ぎも爆破もクソくらえ。泥こそはすべてだ!
 こういう、まったく観なくていい傑作に出会えるんだから、映画界もまだまだ捨てたもんじゃない。
諸君に言っておきたいが、見たい映像を見るだけが映画じゃないんだ。なんていうか、観たくないものを見せられる。そういう体験は非常に大事だし、これからの人生の糧となるんだよ。一回観たらもう衝撃もないような、ちょろいCGよか、動く泥ですよ。内部で水流して動かしてるのかな?

 

| | コメント (0)

2022年1月23日 (日)

ジャック・ウィリアムスン『宇宙軍団』The Legion of Space (1934) 野田昌宏訳 早川書房(ハヤカワ・SF・シリーズ、1968年。のち1977年1月ハヤカワ文庫収録)

やはり現実はフィクションと違って上手くいかないものなのだろう。
 それをわきまえた上で、虚構の実力を測ってみたい。
 ジャック・ウィリアムスン『宇宙軍団』は、異様にうまくいく物語の実例であり、それはご都合主義とも言うのだし、小説という嘘事のパワーを見せつける感動作でもあるのだ。
 
 私は昔からこの本を愛読していたので、他にも似たやつがいるだろうと思って検索してみたら、膝を打つ名批評どころか、まともなレビューすら発見できなかった。
 情報溢れるネット社会なのに?ITリテラシーってのはどうなった?
 お前ら、『宇宙軍団』読まずに何読んでんだよ、カスが。
 『宇宙軍団』なくして『宇宙軍団』なし。
 そんなことじゃメドウサに地球は乗っ取られてしまうよ。
 赤ガスに覆われ、発狂して理性を失くし、人肉食の野獣化人間が横行する世界ってのは、まさにこの現実のことじゃないかな。
 もうちょっと、よく考えてみようよ!

【あらすじ】
(私情私憤により「読め!」と一言書いて終わらせたいが、無視する罰当たりもいるだろうから、親切にちょっと教えてやろう。) 

 この物語は導入部が一番たるい。
 遥か未来の記憶を思い出す老人という、H・G・ウェルズがステープルトンを小規模にパクったみたいな小咄が付いているのだが、無くても成立する。例えば後年の『スターウオーズ』という作品は銀河帝国の歴史を字幕をスッ飛ばすことであっさり処理していた。
 だがな、いいか、お前ら。効率だけがすべてじゃないんだよ!
 無駄の中に宝がある。
 このケレン味、無意味な重厚感がヴィンテージSFの本物の味わいである。そこを理解して慎重に賞味しろ。年表をつくってもいいぞ。シリーズ2作目、3作目、4作目が訳される見込みは絶対ないから無駄だけどな!

 ま、そんな前説を要約してザックリ簡単に述べると、民主と帝政がぶつかって未来の地球は瓦解した。それを再建し自由主義アメリカの精神を蘇らせた偉大なるクズ集団、それが宇宙軍団だ!
 レンズマンより特殊能力が無い分、ハートが無性に熱い男達の集団だ!口数だけ多い女なんか入団できない、倫理観は小学生レベルの、ガチやばい暴力慣れした男の武装団体だ!
 この由緒ある男の殿堂に、とあるボンクラ新人が門を叩くところから物語は始まる。

「・・・新人ジョン、着任命令書により出頭しました!」
「よう、来たの。ま、座れや。われ」
「はッ!それで、どんな任務を頂けるのでありましょうか?」
「お前には火星に飛んで貰う。そこで超兵器AKKAの秘密を握る二十歳の娘を警護するのじゃ」

 警備についた途端に娘は攫われ、外宇宙の彼方バーナード星へ連れ去られてしまう!マジか!
 あせった新人は、宇宙軍団内部の卑劣な裏切り行為により抹殺されかけ、ボコボコに。宇宙軍団は鉄壁の軍規を誇る鋼鉄武闘派集団だが、人に騙されやすいのが玉にキズだ。
 地団駄踏んで悔しがる若僧に「助太刀するぜ!」と落ちこぼれベテラン職員3名が凸待ちコラボし、史上最強の燃える男の異星特攻チームが出来上がる。ここにはロバート・アルドリッチも影響を受けたと見える。

 空間を歪ませる(!)謎のエンジンにより駆動する宇宙船は、フォボスで軍団幹部を強制拉致し、冥王星で燃料を強奪し、犯罪者として全太陽系に指名手配されながら宇宙街道を爆進する。♪パララ、ララ~パララ~。
 途中で出くわしたバーナード星人の宇宙戦艦と激しいバトルとなり、小太陽を投げつけられ真空の藻屑と消えかけるが、暗黒星雲に逃げ込んで文字通りけむに巻き、6つの衛星が分子分解光線のバリアを張る警備強固なバーナード本星に辿り着く。分子結合を破壊する強力無比な警備網を努力と根性で耐え抜いて(「我慢しろ!」「イェッサー!」)、地球の数倍ある巨大惑星に超重力を感じることなく不時着する。

 だが、不幸にも海原の真っ只中に墜落したため、都合により全裸(事実)。徒手徒拳で怪奇植物生い茂る未知のジャングルを横断する破目になる。
 目指すは、この惑星唯一の大陸にある唯一の都市、夢の大都会。暗黒金属で造られた暗黒要塞の地獄塔だ・・・!

【解説】
 以上あながち嘘でもないあらすじを繰り延べてきたが。
 いや、しかし、ご都合主義をそう感じさせない、この物語のドライブ感は本物だ。
 中学の時読んで興奮したが、いまでも興奮するもの。そこは大いに褒め讃えていいと思う。突っ込みどころ満載なくせに、面白く項を捲らせる、時を忘れさせる。読書の効能ですよ。
 絶対無理な問題の立て方をして、腕に任せてその解決を図っていく手法が繰り返されるのだが、根幹は007原作シリーズと同じ。カウンター・アンド・アタック方式なんだよね。
 いきなりスラスラ解けるんじゃなくて、難題が襲ってきて、それを知恵と勇気で撃破していく達成感の地道な積み上げ。受験勉強ですよ。浪人生だね、うん。浪人生のロマンと同質だと思います。

 だから、最後の王道過ぎるサゲがいい感じにハマって、ちょっとウルウルしました。野田節って意外と芸が細かくて、やっぱいいよね。

| | コメント (0)

2021年10月26日 (火)

雨穴「とある一軒家で見つかった、不気味なビデオテープの真相」 2,050,876 回視聴2021/09/24

墓碑銘2021年―――。

災禍の年は粛々と進んでいた。昨年から空前の猖獗を振るったコロナウィルスは、真夏の感染爆発のあと、専門家も首を捻る謎のフェイドアウトを遂げ、列島各地を襲っていた中規模地震の不可解な連鎖は突如10月首都圏一帯にも及び、かの震災以降の交通機関の大混乱と共に広域に水道管被害を齎した。
 われわれが記憶しておかなくてはならないのは、皇族の異常婚礼でもなければ、安直な政権交代でもない。人類が直面する真の恐怖はまだその深淵の顔を僅か一端しか覗かせておらず、本当の地獄はこれから到来するということだ。

いまはまだ大破壊の前夜、世界は真にこれから破滅するのだ。
 
 そんな平凡なある日のこと。
 怪奇探偵スズキくんは一本の電話に起こされた。
「はい・・・怪奇探偵事務所ですが・・・」
『ハロー、ヤングボーイ』
 相手はよく知った口調で話しかけてきた。
『きみが、GW以降に来ると言ってなかなか来ないのでね。こうして自ら呼びに来たのだ』
「・・・だれ?借金取りなら間に合ってますよ。こちとら、去年から碌な仕事も無くって腐ってるんだ。おととい来やがれ、バカヤロウ」
『こいつはご挨拶だな。せっかく新しいネタを持って参上したんじゃないか。きみ、怪奇現象はまだまだ終わっていないぜ。謎は深まるばかりだ』
 スズキくんはボリボリ頭を搔いた。
 カーテンの向こうから新鮮な光が床に零れ落ち、日野日出志『恐怖怪談!!ぼくらの先生』の表紙を照らしている。
「いいですか、古本屋のおやじ」
 電話の向こうの相手は明らかにギクリとしたようだ。
「あんたとこうして漫才ごっこを始めてからもう何年になるか忘れましたが、その間に時代はドンドン進んでるんですよ。ひばり書房版を昨晩読んでた日野先生の『ぼくらの先生』だって、Amazon Kindle版が発売されてるくらいだ。それを知ってある意味ビビリましたよ」

恐怖怪談!!
ぼくらの先生1 Kindle

学校中から慕われている大仏先生。その周りでは何故か不可解な出来事が多かった。それでも生徒たちは先生に信頼をよせて、先生自体もより良い先生であろうとしていた。だが、大仏先生の過去には恐ろしい秘密があった……。表題作「ぼくらの先生」をはじめ、ナマズを寄生させて共生し利益を得ている少年の「おーいナマズくん」など日野日出志先生の魅力あふれる怪奇ファンタジー作品群。

『うん、それ実は日野先生の第一作品集「幻色の孤島」そのものだからな。実にエモくね?得も言われず、エモくね?』

「無理やりエモくなくてよろしい。電子版はフルコピー3分冊されていて、一冊当たり¥110
Kindle
価格にて読めるんです。獲得ポイント:
1pt
貰えます。ところがですよ、書籍は古書価格がバカ高くて、メルカリで¥44,444(税込)
送料込のぼったくり価格で出品しているバカがいた。絶対買っちゃダメですよ!」

『ふむ、虫プロ版はまんだらけで、¥3,800、ひばり版は¥3,000か。古書なんて所詮言い値だからな。それでも相場があるのは一定のマーケットが存在する商品だからだよな。知らん奴にしてみりゃ10円貰ってもいらん代物だろ。我が家でも家内がよく表紙にパンチをくれとる』
「ケッ、物の値打ちを知らない腐れ外道どもが。しかし、日野先生は著者と直接版権交渉できるから良いとしましても、作者行方不明で、再版のあてもないひばりは軒並み高価ですな。森由岐子ですら高い」

『あー。それ。それ言う。見事にフラグだよ、今回のテーマの』

 スズキくんは首をかしげて考え込む。

「へ・・・?!」

 

 咳払いした古本屋のおやじ、前説を続ける。

『日野先生が電子書籍化されるなんて誠に驚愕だが、考えてみれば内容もしっかりしてるし、文学的エッセンスもあるし、ファンシーな童話や寓話的な要素もふんだんにあるし。現代のよい子が読んでも一応問題なかろう。ま、日野先生には美しい奥さんを欲望から絞殺して死体をバラして薔薇の堆肥にする定番アブノーマルな話や、世間に理解されない恨み・つらみ・鬱憤に駆られて漫画編集者を衝動的に惨殺し、一部始終を目撃した読者に対して斧を投げて殺害しようとする異常な話もたまにあるのだが。セーフ。常識の範囲。問題ない。ギリ安心だ。子供が読んでもだいじょうぶ!』

「・・・そうかなァ・・・?」

『それよか、現在お読みの「神秘の探求」という無駄ブログ。今どきパッケージメディアに拘り続け、紙やら本やらディスクやらと心中しようと偏愛、収集を重ねてきた、この上なく悲惨な闘争記録であるのだが、正直もう限界なの』

「エッ?!」

『最初のこころざしは破綻崩壊、建物倒壊した。原因は収納スペース。もうこれ以上入らねぇ(泣)このままだと床が抜け落ちる。フロア崩落により死亡する。かといって収集の為に貸し倉庫やストレージボックスを借りる資金なんか無い。残念だが、俺は諦めた。神々の黄昏、地獄に堕ちた勇者ども。泣く泣く積み上げた財産を処分するしかない、ハムレット的状況に立ち至ったことを諸君に告げる。アドルフに告ぐ。ホレイショ、お前もか

「いや、それブルータス。BRUTUSって雑誌が昔ありましたよね?いや、そもそもコレクターの末路なんてのは、最初から分かり切ってたことじゃないですか。ボクなんか2,000冊積み上げて、一気に売って、また買い戻す。人生とはその繰り返しですよ」

『オレは気が小さいんだよ!ただ実際売ってみてわかった、くだらんもんが古書価格上がったりするんだな。同時代で体験した読者にしてみりゃ、物好き以外にはゴミだぜ、山尾悠子「仮面物語」なんか』

「あー、あー。作者が再刊を許可してない系ですね。出す出さないで本人Twitter書いてましたね」

『うむ。あの頃小松左京(豚)がなんでか褒めたりして、当時は星雲賞だか日本SF大賞の候補だかにもなってたような気がする。どこがSFなんだよ豚!でも、あれ、意外と買取高かったぜ。嫁が喜んでた』

「山尾をですか・・・()

『うん、山尾高評価()・・・いや、そういう話じゃないんだ。というわけで、今回はYouTubeやるぞ』

「え?」

『パッケージメディアはもう限界だ!!今どきそんなクソみたいなもん、集める奴はバカか河馬だよ。これからは、コホン、ズバリ電子だな。世界はダウンロード、ストリーミングの時代が来てるんだよ。ネトフリ、ネトゲ、ネトウヨなんだよ!CD屋なんか軒並み倒産じゃないか』

「はぁ、でも最近はハヤカワのポケミス、古いやつ拾い歩いてるって聞きましたが・・・」

 

 電話の向こうで古本屋のおやじはまた咳払いした。

『いいか。2014年に待望の翻訳が出たホセ・ドノソの大長編「別荘」の初版がわずか500部だったんだよ』

「これまた唐突すぎる展開。誰ですか、それ?」

『黙れ、俗人。ラテンアメリカ文学の高名な傑作だよ。本国チリでは文学的事件と呼ばれ、ラテンアメリカ各国で大ベストセラーだったってのに。私が見つけた日本版2020年三刷も、同じく僅か500部だった。こりゃつまりトータル1,500部での出版ってことだろ。露骨に過疎っとる。めちゃめちゃ過疎っとるネ!』

「あんたに言われたくないでしょ、ドノソも」

『うるせぇ。そこでだな。エヘン、これを大手配信サイト、例えばふわっちの閲覧と比較してみたまえ』

「え、ふわっちですか?なんでまた?今回もまた強引な話繋ぎで攻めますね」

『計算が分かり易いから引き合いに出しとるだけだ。他意は無いのよ。

 いいか、ふわっちの場合な、二桁数の閲覧ではまだ過疎と呼ばれるのだ。1,000人越えしてようやく一応大手配信者扱いにされる仕組みになっとる』

「フーン、やけに詳しいな。そうなんですか?」

『きみ、素人が個人で細々やっているいい加減な垂れ流し配信なんかを観るような、物好きな暇人が、この国にどんだけいると思うね?東京流れ者だって喰っていくには銭がいる。まともな奴は全員カツカツで働いとるよ。だから観てるのは無職やニートや住所不定者、扶養枠の人だけ。最低国民層。

 そんな逆境で人を集め、いちどきの閲覧が余裕で1,000人超えるなんていうケースは、もう並々ならぬ異常事態だよ。何か事件起こして警察絡むとか、連行されるとか、裁判だとか。自殺やらキチガイやら喧嘩色恋、刃傷沙汰だとか。放送しているマンションが火事で文字通り炎上中だとか、UFO着陸とか、青木ヶ原で心霊デートだとか。産まれた子供が実の旦那の子じゃないかも知れないからDNA鑑定するとか、あるいは大手配信者の炎上放送とかでもない限り、そうそう発生しないものなのだ。

 YouTubeなどメジャーとは違って、どこかから浮動票が大量に流入してきたりは絶対しないからな。ニコ生も同様だとは思うが、観る人、観ない人の差がハッキリしていて、一般人は間違っても偶然観たりしない。完全に閉鎖的な村社会だからな!』

「確かに。ボクは存在自体まったくに気にしてませんでした」

『大手配信者の相次ぐ不祥事や、規制強化によるアカウント停止により、ふわっち自体が最近超絶に過疎っとるが、それでも多ければ最大5,000人はいく。ネットの世界は恐ろしい。暇なやつがウヨウヨおる』

「はァ、それは確実にあんたですね」

『むむッ、MY NAME ISあんた?!どたわけが!あんた、あんたって気安く呼ばないで!
 YouTubeでは、登録者数5,000人ではまだまだ弱小。一万越えてなんぼ、10万人越えして成功、100万越えて有名人。とまぁ、恐ろしい基準があるのだがね。そうして比較すると、今回取り上げる記事の動画がどの程度の認知度をもっているのか、数字を突き合わせて初めて見えてくる訳よ』
「うーーーん。ドノソ閲覧500か。こうしてみると文学、メチャめちゃ過疎ですね!」

『本当は別ジャンルだから単純比較できないんだけどな。ドノソなんか、エンタメで本当面白いのに。もったいない。ただ、いまどき、人の関心がどこに集まりやすいか。観客の数字がどこに集まりやすいか、一応は頭に入れてもらっておいてだな・・・』

「はい・・・」

 怪奇探偵スズキくんはカップから冷めてしまったコーヒーを飲んだ。ドリップで淹れたハワイのLIONブランドである。遠くでチチチと可愛い小鳥の声がした。

『今回取り上げるのは、創作系YouTuberのホラー動画だ。まず昨年大ヒットして続編が書籍化されたという、どっかで聞いた話の、こいつを観てもらおうか。

 【不動産ミステリー】変な家

 9,318,060回視聴2020/10/30

https://www.youtube.com/watch?v=CBIL0eAwDs8

 注意警告!こっからネタバレ、ビシバシいくからな!

 ちゃんと事前に観とけよ。本だと全然読まないおまいらも、YouTube動画だったら大好きな筈だ!ふんふんシッポを振って喰らいつく間抜けヅラが目に浮かぶようだ!』

「だれもそんな暇じゃないでしょ。・・・でも、まぁ、いいでしょう。観てやるか。どれどれ」

 (幕間)
『どうだ、YouTubeにおける100万回再生の真の意味とは“100万人が観た!”ではないのだ。“物好きが百万回も観てやがる”が正しい。だって、大人は誰もヒカルもヒカキンも観ない訳じゃん。それが超大手とか適当に呼ばれるとは、認識の狭さ、世間の狭さに片腹痛いわ!栗原ひろみだわ!』
「なにを独りで騒いでるんですか。観ましたよ」

『・・・で、どうだった?』

「ふつうかな。・・・これ、どのへんがホラーなんですか?」

『うんうん。期待通りの反応をありがとう。

 ホラーというか、ぶっちゃけ、映画「ホステル」は本当にありました!みたいな謎解き話だよね。物語的には普通に“あるある”。虚実の狭間を狙った伝統の風姿花伝スタイル。都市伝説本とかエヴァ本とかに共通する、「すべての謎を解明する!・・・うん、わかった!だから、なに?」的な肩透かしとでもいうか。ちっとも凄くない真相究明というか。ネタとしては前段で振っといた森由岐子の例の問題作「怪奇!この家にはトイレがない!」、いや「魔性わらべの家」だっけ、あれと同じ話なの』

「はい。確かに」

『しかし、閑話休題、これを観て初めて分かったことだが、この世に見取り図マニアってのが結構いるんだな。笠井潔『オイディプス症候群』に小野不由美が描いた館の図面がある理由が分かった』

「え?どういうことです?」

『ほら、推理小説とかでさ、事件のあった屋敷の見取り図とか結構載ってるじゃない。実は作者がトリックを考えるために使った、単なる資料だったりするけどさ。初心者ほど、なんか深い意味あるのかと思ったりして、ついジッと見てしまうなんてことあるよな』

「実はまったく意味がないという()

『でも、その行為が段々癖みたいになってしまって、家の間取りとか館の見取り図とか大好きになってしまって、集めたり、つい自分で書いてみたりする。電車でいえば、Dみたいな時刻表マニアはそこから鉄道マニアになるけど、見取り図マニアは進化すると一級建築士を目指したりするのか?』

「あぁ、でも、鉄道マニアが本当にJRに就職すると最悪らしいですよ。余計な蘊蓄ばかり垂れてまったく兎に角仕事しないって誰か嘆いてた。確かに趣味で仕事しちゃいかんでしょう。当然だ」

『怪奇探偵のお前が言うな!!!』

「違いますよ、怪奇はボクの運命なのです(断言)。

 それにしても、これ、ぬるいよなー。風邪引きそう。でも、この動画は続編含めて書籍化されるてんですよね。果たして1,700円新刊の価値はあるのか。よし、お馴染みの秘密道具、読書メーターさんで測ってみますか。

 おっ、あらすじ掲載あり。これ広告コピーでしょ。問題なさそうだし、以下引用しとくか。

※(引用開始)

『あらすじ』

話題騒然!! 2020年、ウェブサイトで166PVを記録

YouTubeではなんと700万回以上再生!

あの「【不動産ミステリー】変な家」にはさらなる続きがあった!!

謎の空間、二重扉、窓のない子供部屋——

間取りの謎をたどった先に見た、「事実」とは!?

知人が購入を検討している都内の中古一軒家。

開放的で明るい内装の、ごくありふれた物件に思えたが、間取り図に「謎の空間」が存在していた。

知り合いの設計士にその間取り図を見せると、この家は、そこかしこに「奇妙な違和感」が存在すると言う。

間取りの謎をたどった先に見たものとは……。

不可解な間取りの真相は!?

突如消えた「元住人」は一体何者!?

本書で全ての謎が解き明かされる!

※(引用終わり)

・・・うん、なるほど。色々な方のレビュー参照しましたけど。ボク的には以下の感想が妥当な評価です。“あまり深く考えずに読んだほうが・・・”、至言ですね。

※(引用開始)

nadami30

不思議な間取りの変な家。荒唐無稽な憶測から、ある一族の因習へと繋がる不動産ミステリ。
読みやすい。
金田一耕助の時代ならともかく、現代日本の東京や埼玉を舞台にして戦前のしきたりを受継ぎ、素人の子どもが殺人を続けるのは、少し無理がある気がする…。
昭和の舞台にしたほうが良かったのでは?と思ってしまう。
あまり深く考えずに読んだほうが楽しめる和風ミステリ。

※(引用終わり)

ま、これレビューが的確な評価だってのは、まったく1ページも読んでもいないやつが勝手に言ってるだけの、根拠薄弱なエアー感想ですけどね!」

『酷い評価だが、ま、納得。妥当かな。怪奇探偵は、読まずしてその本の評価を言い切ってしまう特殊能力の持ち主なのか。連載以来ここまで続いてきて、初めて明かされる衝撃の真実だよなー』

 スズキくんは世にも爽やかな笑顔で微笑んで、

「はい、時間もカネも有限ですから。馬鹿正直一本でやってるだけで、怪奇な世間が渡れるもんか!」

『貧乏暇なしは私もおんなじだよ。でも世の中全般そうだから、これほどSNSが流行るんだろ。裏で金を毟られてるのに、気づきもしない馬鹿どもの間でな!なにがデジタル大臣だ!ふざけんな!人体にメカのひとつも埋め込んでみろ!

 家庭にファミコンしかなかった時代は、実は意外と裕福な時代だった。

 紙雑誌メディアが盛り上がった時代はまだマシだった。

 真にデジタル化とは、実は貧乏人の為の救済措置だったのかも知れないよ。スマホ1台で幾らでも暇つぶし出来るんだろうがよ。いいよな、お前ら!本当幸せなやつらだ!路上交通を妨害するだけのゴミクズ野郎どもが!』

「・・・いや、ソーシャルゲーム最高。毎日ガチャ引きたい・・・」

『では本論の動画のコメ欄から一本引用しておこうか。本気なのかね?』

yushy
0314

2か月前

これほんとにすごいです、、

まじで鳥肌、、

 怪奇探偵スズキくんはタバコに火を付け、静かに問いかけた。
「・・・結局あなた、誰かを相手に喧嘩売りたいんですか?」

『違うよ。正しい意見を言ってるだけだよ。長い年月に渡り、わしは沈黙を保っていたんだよ。自分が間違っているのかも知れない。世間のみんなが正しくて、わしは悔い改めて坊主にでもなって即刻反省すべきなのかも。そう思いながら耐えて、我慢して、水面下に沈んだ石ころのように黙って生きてきて、さらに、手術したり、豊胸したり、理不尽なハラスメントを受けたりしながら、LGBT問題に理解を深めたりして、流浪の果てにようやく真実が分かった。

 あいつらを野放しにしてきた結果、世の中、どんどん悪くなるばかりだったんだよ!

 ジャンジャン不景気になって、へんな病気も流行り出して、誰も彼もがおかしくなって、なにも良いことなんか無くなったんだよ!』

「・・・・・・・」

『ならば、言いたいことを自由に言わせてもらうぜ。それがオレのスタイルだ!世の中なんてクソだぜ。黙ってて損をしちゃった。キャハ💛』

「はァ。どうぞご勝手に。それでは、本来のレビューに戻りましょうか。

 プロの怪奇探偵として謂わせて貰いますが、やはりこの家、単なる設計ミスだと思うんです。失敗してる建築なんて、有名施工業者が請け負った地盤沈下を起こしてる某タワマン含め、星の数ほどある。そこをグッと拡げて、妄想詰め込んで膨らまして、ほら、ハリー・ケメルマン『9マイルは遠すぎる』って有名な短編ありましたでしょ?あれですよ」

『安楽椅子探偵の古典だな。仮想に仮想を重ねて、意外な真相を炙り出す。ま、単なるこじつけとも言うけどな!』

「あれが短編で書かれてるとこにポイントがあると思うんです。日常の平凡な違和感を膨らませて、架空の理屈でねじ伏せていくのは悪い切り口ではないけど、長くなるほどボロが出る。入口が平凡なだけに進むほど“そんなアホな!”感がドンドンつのって収拾つかなくなるんですね。オカルトってすべてそうでしょ。ほら、高橋克彦『総門谷』ですよ」

『あぁ、典型的なバカ小説だったな。劣化した半村良というか、もっとマンガで、内容壊れ過ぎてて1作目は結構好きだったが。敵が使徒と呼ばれ、なんでかキリストとかなんだよな・・・』

「エヴァンなんかとの元ネタのひとつですね。ダサいですね」

 スズキくんは再び、チャッチャッと引用した。

『総門谷』(高橋克彦) -
講談社文庫

初版発行:
1985

岩手県で1年間にわたり、UFOの目撃者が続出、そして奇怪な焼死体さえも! だが、このUFO騒動の裏は? 疑惑を抱く超能力者霧神顕たちは、怖るべきパワーの魔手と闘い、傷つきながらも、ついに魔の本拠・総門谷に潜入した。そこで目にした驚愕の光景とは? 構想15年を費したSF伝奇超大作。

「で、今回使いまくる読書メーターさん評価はこれで決まりでしょ!」

かつりん

ふた昔前の角川映画って感じでした。

『うん、的確だ。物事の理を解ってんな、かつりん』

「あんたの同世代の方だと思いますけどね。「総門谷」はバカ小説の典型として、最後は時空崩壊して万物リセットが起こります。広げた風呂敷たためなくなっちゃうんですよね。ケメルマンは賢かったということですよ。喋る程ボロが出る。ついた嘘を、更に規模の大きい嘘で上塗りしなきゃならない。バカのインフレ、『少年ジャンプ』の強いやつインフレと同じ理屈です」

 おやじは電話の向こうで溜め息をついた。

『ま、楽しいからいいんだけど。そればっか観てると、本当に頭悪くなって、最後は気が狂って死んじゃうぞ。「サメ映画大全」とか「人喰い映画大全」とか、本当にそう思うな。あれと伊東美和「ゾンビ映画大辞典」の格式の差について一度真剣に考えてみるべきだよ』

「嫌です。でも、まァ、わかりますよ。内容スカスカってことですよね。それは単に著者の技術レベルの差、情報量の格差なのでは?」

『いや、違うよ。真剣さが足りない!ってことだよ。バカと心中する覚悟の差というべきかね。
 まぁ、いいよ。今回の話はあくまでYouTubeだし、次はこれを観るのだ!』

とある一軒家で見つかった、不気味なビデオテープの真相

2,289,521
回視聴2021/09/24

https://www.youtube.com/watch?v=QboNR30zqPk

「ゲッ、長大化して49分もありやがる」

『うむ。最新作はストーリーテリングはこなれてきて、普通になってきてる。というか、Jホラーあるあるだな。呪いのビデオテープってネタが既に古臭いが。300万回再生も楽勝でいくでしょ、これも。まったくドノソの何倍だよ!』

「まだ、拘りますか()250万というのは、バブル期の松任谷由美のCD出荷枚数でしたね。紙メディアで唯一気を吐く『少年ジャンプ』も公称200万部から落ちてたみたい。これらは有償、無償の区別はあるから同一テーブルで比較し辛いところがありますが、でも実は、すべてのメディアは受け手の貴重な時間を浪費するという一点ではまったく同等なのです。これがスマホ普及以降の、娯楽メディアの真実ではないでしょうか」

◆参考記事:ジャンプ一強状態だが部数減少継続中…少年向けコミック誌の部数動向をさぐる(20201012)

https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20210314-00226269

(幕間)

『・・・やっと観たか。観終わったか。わしはタバコ3本消費したぞ。どうだった?』

「やはり、ふつう」

()

「確かに、だいぶ語り口がこなれてきてますが。そこは、まぁ、3歳馬の馬体重増は成長分ってくらいに理解しとけばいいんですが。それよか、あの。この話、そもそもプロット破綻してませんか。呪いのビデオテープ、部屋の四隅に張る必要まったくないですよね?」

『うん、無いね。別にやってもいいけど、必然性はない。趣味の問題()

「はい。そもそも実際リアルタイムで呪いの儀式を行うことが出来ないのなら、嫁の留守中にこっそりやればいいんではないか?
 この呪術法が実在するのかどうか知りませんが、たぶん白石晃士『ノロイ』の“かぐたば”的なものでしょう。架空だけど元ネタある系。民間伝承でこの設定なら、そもそも発生時点からして、呪う対象の部屋の中でこっそりやるたぐいの呪術だったと考える方が自然でしょ。最初っから、面倒なビデオ撮影なんてしないで全然済む楽な呪い方だった訳じゃないですか。
 なんでこんなに苦労してるんですか、真犯人?」

『うんうん』
「やはり、これって、設定のための設定なんですよ。まずビデオ貼り付けありきで、そこから話が組み立てられてるので、辻褄合わなくなってしまったんだと思う。残念。

 あと、ここは声を大にして言いたいんですが、ラストの恐怖落ちがあまりに弱すぎ。やばすぎるレベルでしょ」
『そうだね。しかし、ゾッとしたって人もいるみたいよ』

YouTuber

3
週間前

最後の電話で鳥肌が立った。

YouTubeでこんなに惹きつけられるのは凄すぎる。

間取りとミステリーのシリーズ好きなのでまた見たい。


佐藤はる

4週間前

「完」の文字が出た直後に来た得体の知れない興奮。どことなく不気味で、物悲しくて、でも凄く恐ろしい、上質な映画を見た時と同じ感覚でした。今回も素晴らしい物語をありがとうございます!

『・・・都合の悪い感想は全部削除してる疑惑()それくらい、溢れる絶賛の嵐!』
「オチの弱さは特に気になりましたよ、根っからのホラー好きのボクとしては。この後に、最後の呪術が動き出して恐ろしい効果を上げるようには、どんなに好意的に解釈したって、まったく見えないんです。なんか全員無事そう、無傷そう。それってホラーとしては致命傷、最悪でしょ。 前半の展開の中でね、もうホント、軽い扱いでもネタ振りでもいいから、テスト的に猫とか犬を呪殺してみせるとかさ、隣人が狂い死んでくれてもいいんです、なんか異様な事態がないと。肝心の呪法の威力が伝わらないじゃないですか。“この呪いが発動したら世界は終わり”くらいの、大袈裟な緊張感あるハッタリでもって強引に話を盛り上げてくれないと。観てるこっちはイマイチ消化不良で、おモロくないんですよ!」

『だから、寸前で怖くない怪談という新ジャンル。虚実の狭間でリアルを狙いすぎたのか?』

スズキくんは机を叩いた。

「いや、ないでしょ、リアリティ。あったら絶対こうはならないよ!所詮アタマで考えただけの話だよ!例えば里子に出された赤ん坊の気持ちが、お前に分かるのかよ、クズ野郎が!本当の親が誰だか全然分からなくって、大人になって真相聞いて、ただギャフンと言うしかなかった、あの日の苦い経験を、あの日の夕焼け空をボクは決して忘れませんからね!このカスが!」

『え・・・?そこ?!』

 古本屋のおやじは、収拾つかなくなりそうな空気を察して、素早くまとめに入った。

『“怖い間取り”とかね、“事故物件に住んでみた!”とかね。実話系怪談が因縁話で盛り上がるのは、結構なことだと思うんだが、小学校のクラスで流行った心霊写真本みたいで新味がない。
 ホラー好きと心霊好きは、実は凄く相性が悪いのかも知れないよ。心霊とかオカルト好きな人ってさ、世にも奇妙な怖い現象が起きました!ってその事実だけで盛り上がれちゃう人達でしょ。ムー大陸は実在してました!とかさ。

 ホラーはもう少し高級というか、怪奇現象のその先を探求しちゃうものだから。

 でも以下の感想にはちょっと同意しちゃおうかな。※
スタイルズクラッシュという名の乗り物に乗っているヨシハシ

3週間前

雨穴さんのスゴいところは、

"新しい小説家像"を生み出したところだと思います。

「小説思いついたけど自費出版するお金はない」という人の先駆者になると思う。

※ 
 ニューメディアの効能を説明するのに旧メディアを持ち出すのは、政府のバカ共の常套手段。カス野郎が。この動画の内容だったら、平山夢明なら短編でやれるんじゃね?しかも、そっちの方が上手いし怖いと思うよ。第一小説書きたいなら文章にしろよ。いらねぇんだよ、新しい小説なんてよ。
 とはいえ、ま、確かにこういう小説があってもいんじゃね?頑張ってね』

「史上最強に、心こもってないですね」

| | コメント (0)

2021年2月23日 (火)

「ソンブレロ宣言(ジャクソン・ジョージ!)」

コヨーテが月に吠えついて 街は灯りを鎖ざしてる
可愛い女はベッドの中 飽食の果実齧ってる

移民しかいない国に生まれ 
流浪の暮らしを繰り返す
黄金争奪 権力の河
線路は闇へと延びていく

 男たちは荒野に立つ
 二丁拳銃、片手に握り締め
 過ぎてきた時間 拾い集めてる

Woh、Woh、Woh 夜が被る黒い帽子
Woh、Woh、Woh Wo、Wo、Wo、Woh ソンブレロ

郵便が届かないのなら 私を捜しに来るがいい
湖のほとり、静かな町 シェリフは何でも知っている

鉱石掘りの世迷い言 世界の天秤が歪んだって
真っ赤に灼けた神の鉄槌、一杯飲み屋を圧し潰す

 蠍と交尾のダンス
 毒の化粧に身を委ね
 託宣盤から新着のメッセージ  

Woh、Woh、Woh だれが被る黒い帽子
Woh、Woh、Woh Wo、Wo、Wo、Woh ソンブレロ

コヨーテが月に吠えついて 街は灯りを鎖ざしてる
汗と悲鳴は星空に満ち 国境の西を埋め尽くす

ソンブレロ(ジャクソン・ジョージ!)
ソンブレロ(ジャクソン・ジョージ!)
ソンブレロ(ジャクソン・ジョージ!)
ソンブレロ
 男は長い水を越えて
ソンブレロ
 神父の鬚に止まった空白
ソンブレロ
 馬を駆るなら彼方まで
ソンブレロ
 太陽の出ない世界へ
ソンブレロ・・・ 

| | コメント (0)

2020年10月 4日 (日)

小日向由衣『明日咲く』(’20、なりすレコード/こっこっこレコードNRSD-2282)

 うちの嫁がまったく効かないダイエットサプリを飲んでるんですけれども。食前にね。安いやつ。スギ薬局とかでポイントで貰えるみたいな。で、たまに俺に「飲め」と勧めてくるんですけど。
 まったくバカじゃないかと思うし、「そんなんで効果あれば苦労しないよ」と本人に何度も言っとるんですが、全然聞かない。結婚前から維持してる習慣らしくて。時々ポストに無料サプリの試供品が届く。仕方なく渡すと「水持ってきて」
 意味はまったく無いけど、可愛いですよね。そういうの。

 小日向由衣さんの新譜は、まぁなんというか、そういう説明しにくい可愛さが詰まった名作となっております。
 小日向さんの楽曲は、どれもがすべて、実はしっかりしたサビと耳馴染みのいいアレンジで構成されたクラシカルな構造を持つ王道作品でありまして、色物などでは決してない。世間一般メディアの扱いは違うかも知れませんが。本当よ。
 ちょっと実証してみましょうか。(以下各曲解説)

M-1 ブランコ
 これ、ちょっとした名曲ですよね。毎度おなじみ「ロビンソン」リフと、フジファブリック「若者のすべて」要素が入って、最終的に小日向メロでしかないものになってる。そんな大ヒットソングを踏襲しておいて、基本普段着で地味なのがいい。
M-2 雨の予感
 ベースラインがUB40。スクリッティの初期シングルみたい。とはいえ、八神純子の昔から「雨といえばストリングス」の故事がございます通り、バカラック並みに後追いで美しいサビメロを追いかけてくる弦楽器がいい感じ。
M-3 グッバイキャンディー
 チャラっす。チャラっすが、果たしてどのチャラなのか。具体的にはどの曲なのか。デジポップ?デジロック?謎は深い。
M-4 チューリップ
 これ、わかりにくいと思いますが、私にとってはLioの「バナナ」に通じるラテンソング。誤ってチューリップの球根百個を発注。かなりホラーなシチュエーションです。
M-5 秋空
 いい曲ですね。それしか言えなくてごめんなさい。サビがなんか相対性理論ですけれども。いいんです。
M-6 恋の呪文
 ジュディマリっす。ジュディマリ並みに売れるべきだと思いますよ。小日向さんは。百万枚です。
M-7 玄米
 テーマとしては、絵恋ちゃんなんですよ。木魚もそうですが。そこにゴーストバスターズとヒューイルイスが襲いかかってくる。YESのロンリーハートから、オーケストラルヒットも聞こえるね。
M-8 咲く
 これは名曲。なんとなく矢野顕子「花のように」の残響を感じますが、たぶん勘違い。矢野さんの評価って、今となっては微妙なものになってしまいました。
M-9 ラブユー
 めちゃ相対性理論ですけれども。テレ東ですけども。チャイナアドバイスですけれども。いいんだ、こっちの方が可愛いんだい!と強気に言い張り胸を張れ。
M-10 誓います
 イントロがブルハで、サビが戸川純でヤプーズで死にます。この歌詞は徳マル付きでいい。「死ねばいい」
M-11 明日
 地味ですけどいい曲ですよ。眉村の「大丈夫」へのアンサーなんでしょうが、端正なんですよ。小日向さんのはしっかりしている。ちゃんと王道の、安心してカラオケで歌える感じが凄くいいと思います。
M-12 猫みたいに
 性愛をテーマにした危険な楽曲。なのに曲調は「オブラディオブラダ」。あー、コレコレ。
M-13 手紙
 やばいっすよ。最凶っすよ。弾き語りチューンですけど、これ泣かされますよ。オレ、通勤電車で泣きましたもん。やばいっすよ。 
以上。

| | コメント (0)

2020年8月 1日 (土)

ショーン・ハトスン 『スラッグス』 <ハヤカワ文庫 NV モダンホラー・セレクション>茅律子 訳 

 不要不急の外出自粛。つまりはショーンハトソン祭り。ショーンハトソン帝国。

 とはいえ、これは本当にくだらない、唾棄すべき本だ。読書習慣を何か有難い物のように錯覚する者たちへ、本屋大賞選考委員の諸君へ渾身の力を込めて叩きつけてやりたくなる一冊だ。たかだか活字をたどる程度の行為がどのくらい有意義な価値を持つというのか。そんな金あったら肉を食え。まんこ買え。まったくお前さん、物事を知らなすぎるゼ! 
 例えばだ。なめくじに歯があるってのは知ってました?
 知ってる。
 あ。そう。そうだろう。カタツムリの歯は二万本あるそうだが、なめくじは一万本だってね。

 

 そうそう、こういう歯。
 いや、違うでしょーーーが!

 本書は無駄にご丁寧に映画化されており、原作にある奇妙な矛盾点(後述する)をスクリプト・ドクター的な観点から補完を試み、さらなる恥の上塗りを試みるという、宇宙船の上から宇宙船を打ち上げるような斬新なニューアイディアに満ちたプロレタリアート芸術を繰り広げてくれる。
 もはや嫌で嫌で仕方がないのだが、本書の恥ずべきストーリーを以下概要にて紹介するから、そう思え。

【あらすじ】
 舞台はイギリス。国家の首相自ら、EUから離脱したり感染したり治ったり、常にNEW WAVEな姿勢を失わないあの国だ。
 まずマッカートニーの’80年大ヒット「夢の旅人」を歌っては失禁する、どうしようもない飲んだくれが、自宅地下に異常繁殖した殺人ナメクジの犠牲になって死亡する。
 え?ナメクジに人が殺せるのかって?
 そういうことを言ってたら、立派な大人になれないよ。
 ここに出てくるナメクジはわれわれの知ってる概念を覆す、新種の生物だ。異常に知能が発達しており、群れをつくって行動し、リーダーと思しき大型の黒ナメクジに率いられて民家を襲撃し、人間を血肉の塊りに変えていく。その目的は不明だが、おそらく人類の絶滅とかそういう不毛な方面なのだろう。そう思わないとやってらんないよ。

 余談だが、先日仕事で地下鉄経由で東新宿に行きまして、帰路はそこからJR新宿駅を目指して歩いてみました。「夜の街感染」地帯へ入り込みたくないよなと思いながら歩いていきますと、ありましたよ。青い看板に「歌舞伎町」の文字が。金髪、茶髪に黒いシャツの若者たちのぶらつくスラム横を通り抜け、神舎前にどっかり座り込んだ、灰色あごひげを長く伸ばして野球キャップの古典ルックな浮浪者さんと素敵な出会いがあったり、タルコフスキーの撮った廃墟のような新宿ゴールデン街を覗いたり。あれだよね、ホロコースト映画の風景に似てるよね。ただの新宿なのに。

 で、ナメクジに話を戻すけど、レタスに混ざってナメクジ喰った男が脳内食い荒らされて血飛沫飛ばして頓死を遂げたり、ナメクジは体液字体が猛毒性だったらしく、飲んだ幼児が発狂して母親の喉笛食いちぎり、それが二階の階段踊り場だったりしたもんだから、母親は脳天を壁にこすりながら階段をでべでべでべって転落していって、帰宅したばかりのパパを驚かしたり。
 TPOを心得ない異常生物のアタックに街は滅亡寸前のピンチに。
 ここで立ち上がるヒーローは、ま、予測がつくでしょうが、保健所のおっさんである。連続する異常死の謎を追っていたオヤジは、ただひとり、すべての原因がナメクジだったという驚愕の真相を知ってしまうのだ。Oh、なんてこった。(確かに)
 ナメクジの潜んでいるのは市の全域に張り巡らされた下水道の中。
 おっさんは、下水清掃のプロ、メガネの生物学者とチームを組んで極秘裏にナメクジ絶滅作戦に取り掛かるのであった。
 さっさと警察に通報しろよ。

【解説】
 最後に出てくる疑問に関しては、この作品を映画化しようとした際に脚本家も思いついたらしく、主人公に敵対する存在として市長を作り出し、彼らが孤独な戦いに赴かざるを得ない理由を説明していた。
(原作では“どうせ誰も信じちゃくれないだろう・・・”という中二病過ぎる呟きしか出て来ない)
 だが。その結果、ハッキリしてしまった事実がある。
 中年の捜査官。若い学者。下水清掃のプロ。これってまるっきり『ジョーズ』じゃん。最もタフそうに見えるプロが死亡し、軟弱な主人公と学者が生き残る結末もいっしょ。安直だなぁー。
 そう考えると、一見無茶苦茶に聞こえる“どうせ誰も・・・”の方が、まだしもオリジナリティーを主張できるように思えるのであった。 

 


 

| | コメント (0)

2020年1月19日 (日)

エドマンド・クーパー『遥かなる日没』('67、中尾明訳、ハヤカワ・SF・シリーズ3276)

この本は、クリス・ボイス『キャッチワールド』の元ネタである。
 ゆえに『キャッチ』に魂を捕獲されてしまった哀れな読者諸君は、万難を排しても入手し絶対読まねばならない。それがディスティニー。人類のミッション課題だ。(ちなみに中古価格は高くないから今のうちだよ)
 大した本ではないが、意外と重要作。きっとK・H・シェール『オロスの男』並みには記憶に残る心の一冊になるだろう。

Haru
【あらすじ】
 乗組員が35日間離れていると勝手に自爆してしまう(!)難儀な仕様の宇宙船に乗って、アルタイル第五惑星にやってきた9人の調査チームは、想像を上回るヘタレさ加減を発揮しさっさと全滅。
 (そもそも異星探検隊のくせに人数が少なすぎだし、隊長アタマ悪すぎ。全員揃って原住民の掘った落とし穴にハマって(!)死亡。)
 生き残った主人公は、宇宙船内でお見合い婚した愛しの妻と生き別れ、現地の王様に指を切り落とされたり、少女妻を与えられてムフフなことになったり、近所のバカを集めて学校を開設するなど、なんとか現地人社会に溶け込もうと色々と苦労する。
 そう、誠に都合よいことに、地球から何十光年も離れたこの惑星にはどう見ても人類としか思えない種族が多数生活していたのだ。
 それはなぜか?真相は一応、終盤クライマックスを盛り上げる大ネタとして披露されるが、余りに薄い根拠と弱すぎる説得力には頭の悪い小学生だって納得しないだろう。

【解説】
 以下の文章は本書を読み終えた読者を対象としているのでそのつもりで。
 ※
 浅倉久志先生がジャック・ヴァンスの作風を「星際観光冒険SF」と評していたのを記憶しているが、その伝でいくなら、本書は「宇宙土人生活モンドSF」である。
 地味で慎ましく英国風に典雅なクーパーの筆致は、妙に真面目なドキュメンタリータッチなので、読んでいく感覚としては、ヤコペッティ『世界残酷物語』('62)みたいなモンド映画を観ている気分に近い。(実際、土人の娘が神の生贄に捧げられたり、主人公が指を鉈で切り落とされたりする典型的なモンド描写が存在する。)
 そしてインパクトあるのは、おやじ感あふれる素晴らしい性描写だ。 
 “(彼女は)血気盛んなバヤ二族の男を数多く経験していたのに、彼の陽物だけは受け入れるのに骨が折れて、われながら驚いた。そのたびに苦痛だった。でも、またそれは神が与えてくれるありきたりの悦びよりも遥かに深い歓喜を彼女にもたらした。”  
 とても地球を25光年以上離れているとは思えない泥臭さ。このゲスな感じがまさに難波弘之とセンス・オブ・ワンダー!イイネ。 
 物語の後半は『ロストワールド』や『ソロモン王の洞窟』みたいな秘境アドベンチャー行となり、恐竜に頭から喰われる奴が出たり、土人に弓で喉を射抜かれる奴がいたりで、波乱万丈に盛り上げたい作者の心意気だけは妙に感じられるのだが、基本、地味で淡々としているので驚くほど盛り上がらない。
 それよか、死んだと思われていた主人公の妻が、土人の部落に飼われて生き延びていた!(そして感動の再会の途端、槍で突かれて即死亡)とか、その後愛しの現地人妻と再会したら、お腹の子供も含めて王様の家来に惨殺されてしまった!とか、生臭い人間絡みのコテコテな鬱展開の数々の方があなたの心にはきっと残るはずだ。
 全体に、アステカ風の神王が支配する鉄器文明レベルの農耕社会が牧歌的なトーンで描かれており、違った世界で生きることの難儀さが地味に、ひたすら地味~に描かれている。実はこれって、裏『闇の左手』(ル=グィン)である。表『所有せざる人々』だ。おんなじやん。

<追記>
 そういえば、本書がなぜに『キャッチワールド』の元ネタなのか、まだ説明していなかったな。
 ズバリ、FTL船が先に着いていたからだ!この野郎!

| | コメント (0)

2019年11月 4日 (月)

三智伸太郎『呪いの首に白蛇が!』【ひばり書房】【ヒットコミックス119】('86、ひばり書房)

   A1n1omj4njl   

↑この恐怖の場面はすべて本編中に実際に現れるシーンです。表紙に偽りなし!

 世の中には、「速いのがイイ人種」が確実に存在します。
 ジェット旅客機、スポーツカー、新幹線だって負けじとあくなきスピード開発に血眼になっている訳ですし、視点を変えれば、速弾きギタリストだって、超高速爆音演奏のメタルやパンクス諸君だって、あるいは300キロ越えの法定速度違反だって、牛丼早食い王だって、挿入前に漏らす早漏野郎だって、すべて世間一般からすれば「なにもそんなに速くなくていいだろ」レベルを乗り越え未知の次元に突き抜けようとする偉大なアウトローどもであり、言語道断無茶苦茶な人達なのです。
 そして私は、マンガにもたぶんスピード狂がいると思うのです。
 それがたとえば、三智伸太郎先生です。

 怪奇探偵スズキくんへ。
 きみはよく「内容スカスカなんですよ!」「15分あれば読めますよ!」とひばり系書籍をバカにしておるが、15分で180ページ強を読ませる技術って実はすごいことだよ。客がずうずうしくも、支払った対価以上の価値を当然の如く要求してくるコスパ重視のせこい世の中で、強烈なアンチとして機能する。明確な反社会的行為。
 いわば暴力テロに等しい行為だとおやじは思うのだよ。

【あらすじ】
 時代は1946年。広島長崎への原爆投下によって日本は敗戦を迎え、国民に不安と虚脱とが蔓延していたその時代。
 幼少期から病弱で布団を離れられない悲惨な生活をおくってきたブサイク少女・お菊は、かねてから計画してきた無謀なプランを実行に移す。親から貰ったこの身体、弱すぎてダメだ。最強ボディを集めて華麗なる輪廻転生を果たしてやる!
 動機は完全に私利私欲だけである。他人の迷惑など一顧だにされない。
 決意したお菊は、逆恨みの形相恐ろしく、家伝の日本刀を床の間の柱に突き立てるや、慌てる両親の見守る眼前で、自ら白刃の下へ全力ダッシュで飛び込んで一撃首チョンパに成功し自決!
 その際、「あたしの首は北の山の祠に納めてちょうだいネ!」と合間にチャッカリお願いするのも忘れなかった。

【解説】
 以上の場面はわずか合計8ページ。プロットと展開は以上の通り。
 この無理ありまくりなプロローグ、マンガの本編では欧米ホラー並みのインパクトを持つ異様なハイテンションでもって描かれている。

 具体的に細かく分析してみるが、まずファーストカット「床の間に置かれた、明らかに戦国時代の大将級の鎧兜と大振りな太刀」で1ページ。
 「ガシッ」と刀を掴み取り、ご丁寧にゴボゴボ吐血までしてみせる病弱少女・お菊のアクションに、両親がツインで駆け付けるところまでで1ページ。
 「こないで!」
 刀を振りかざし、癒えない病の連続に完全に心が折れたお菊の演技に1ページ。この間のお菊、セリフ吐きながら日本刀をビュンビュン振り回し両親を威嚇中。おやじ切りつけられ、からくも身をかわす。
 そして、大見得を切るお菊。
 「あたしは輪廻転生を信じ、かならず蘇ってくる!」
 「狂ったのか・・・」怯える黒髭に和服姿のおやじ。
 「約束して!私が死んだら、私の首を北の岩場に穴をあけ、その中に保存するのよ!」ここまで1ページ。
 しかし相当考え抜かれた計画であることだけは解るが、なんでわざわざ、そんなことする必要があるのか。必然性がさっぱり分からない。だが、問いかけても無駄だ。アンデルセン神父が放った弾丸の如き進行スピードで、三智先生は読者を常識の彼方へドライブさせていく。
 「もし約束を破ったら、父さんや母さんばかりか、村全体にまで災厄が及ぶわ!」
 え。
 どうやって?たたり的な?できんの。ホントに。おやじの頭は既にクエスチョン。
 「・・・わかった、菊。約束する」
 おいおい、涙目のかあさん、先走りで約束しちゃったよ。おやじ愕然。これで丁度1ページ。
 にやり笑った菊、日本刀を超高速アンダースローで床の間に投げつける。また斬られそうになったおやじ、瞬時に身をかわす。テンポいいアクションの末尾で、既にタタタと全力ダッシュを開始したお菊の姿。見つめる両親の恐怖の表情。これが1ページ。
 1ページぶち抜きで、勝手に斬首され、宙に舞うお菊の生首。噴き上がる真っ赤な血柱。
 次ページ、障子を突き破り庭に落下する、首なしの胴体。白漆喰の壁にビュシャーーーッと降りかかる鮮血。床に転がり(すべて自作自演なのに)無念そうなお菊の生首。
 
 どうです、すごいでしょ。
 まず指摘しておきたいのは、ミッチー(トラボルタ)先生が、あ、勝手に呼称を変えてますが、ともかくミッチー先生が映画的な記憶力をフル活用しながらこの場面を設計していることがわかりますよね。日本家屋の白壁や障子に鮮血がブシューーーッとしぶく演出は、もう誰が始めたんだかわからないくらい、日本映画の王道。残酷時代劇かジャパニーズ化け猫ホラーか中川信夫が先だと思うけど。でもね、自刃して果てる下りを独特のエクストリームなゴアシーンに仕立ててみせるのは、紛れもないミッチー・オリジナルクオリティ。だいたい行為自体がまず意味わかんないし、過剰すぎるし。ちょっとマンガ以外では成立しにくい独自性に満ちた表現であります。
 あと、この無茶を成立させるテンポ良さは特筆していい。 
 筋書きをポンポン叩きつけるようにカットを切り替えていく、その間画面は「ガッ」「ゴホゴホ」「ゲボ」「ガラッ」と騒々しい擬音に満ち溢れ、派手な音響効果の連鎖の果てに、お菊の無念すぎる形相の生首が宙に舞う名場面は、狙いすましたように無音でキメ。さすが演歌歌手ミッチー。サウンド効果も演出が完璧すぎる。
 そして後段への伏線として、刀を構えて見得を切るお菊の右腕に、大きめの紫紺のあざがあるところも完璧。ミッチー先生の構成力って的確なんですよ。実に無駄がない。

 ・・・・・・・
 これは素晴らしい名作を読めるぞ。居住まい正してあらためて本編を読み出してから15分後。

 「内容スカスカなんですよ!」
 「15分あれば読めますよ!」

 怪奇探偵スズキくんへ。
 きみは正しかった。この本には見事に内容が無い。
 この文章で本稿を締めてもよいのだが、蛇足を承知でもう少し続ける。ネタばれするけど、いいよね。

【その後のあらすじ】
 「あたしの蘇る前触れは、白い蛇!」
 豪快に予言し自刃を遂げたお菊の祠に、いつしか歳月は走馬燈のように過ぎ行き、万博、オイルショック、ジーパン殉職など日本の歴史を動かす幾多の星霜をけみしながら、時代は狂騒の80年代タケノコ族の世紀に突入していた。(註、タケノコ族とは南方の蛮族の意)
 こんな時代にたたりもなかんべと、祠に蛇の文様の入った不吉な石をわざわざ持ち込んだトンチキの行動が引き金となり、ミイラ化していたお菊の生首が大復活!石から抜け出た巨大白蛇に巻かれた生首は、竹とんぼを飛ばす原理と同一の手法で空中高く飛び去ってしまう。

Images 
 「・・・マジかよ、まいったな・・・」
 頭を掻くお菊の父親。
 生首は故郷・岡山県(註、岡山県は日本一八つ墓な地として知られる)を抜け出し東進、出会う先々の小学生から身体パーツを勝手に拝借する非道でどろろチックな裏技を披露。具体的にどうやるかといいますと、もう説明になってないんだが、以下の手順。

Images1 
 お菊の生首が口から白蛇を吐き出す→少女がぐるぐる巻きにされる→蛇が外れるとアラ不思議、少女は脱水状態でミイラ化しバタリアンのオバンバになっている→お菊が気合一発クエッと叫ぶと、少女は五体バラバラ→両手足、アタマもギャグ漫画みたく、スポーーーンとすっこ抜けたあと、残った胴体にお菊の生首がパイルダーオーーーン!

 もう意味全然わかんないでしょ。でもスピードとアクションへのこだわりだけは充分感じてもらえるだろうか。
 こういう悪業を繰り返し、京都、名古屋と小学生を次々惨殺しながら、だんだん五体満足、完全体に近づいてきたお菊であったが、最後のパーツ、あざのある右腕を所有する少女には思わぬ苦戦を強いられることに。あろうことか、実の父が近所の山伏を連れて応援に駆つけるという地下アイドルもかくやという大盛り上がり。
 山伏は、うさぎで油断させておいて、首に荒縄も輪っかを捲きつけ、青竹しならせて宙に吊り上げ縛り首にし始末。(これまたスピード溢れる流れるような、見事なアクション描写)
 実の父親は、全身を枯れ葉まみれにし、かつその枯れ葉をブクブク溶かし、バッチイと電話ボックスに逃げ込んだところを、街路樹を引っこ抜いて即席でこさえた(割には先端がよく尖っている)3mはある巨大棒杭を投げつけ、ボックスのガラスを突き破って腹腔部を貫通させ見事に惨殺。『オーメン』と『エクソシスト』を中途半端な記憶力で脳内フルダビング再生し、無理やり繋げた奇想天外アクションの連鎖に、痺れるねぇ。SFは絵だねぇ。大友克洋の『童夢』とかとっくに出てる時代にこれだもの。素晴らしすぎる。

 でもね、きみ。
 大友マンガとひばり。どちらがマンガとしてより魅力的で、ワイルドで、アナーキーで、かつ野性の魅力に富んでいると思う?真の意味でのイマジネーションを体現しているのは一体どちらなんだろうか。(え?大友だって?あ、そう)
 
 右腕担当の少女とお菊の最終対決は、深夜の遊園地だ。
 全速回転するメリーゴーラウンドの上で、回転木馬を飛び越えながらロケットパンチの如く着脱式の手足をバシバシ撃ってくるお菊に対し、童謡かごめかごめを爆音で歌唱しながら、隠し持っていた日本刀でお菊の頭を唐竹割りに斬り下げる最後の見せ場を見逃すな!
 (そして、スピード狂につきものである、爆走後の死にたくなるような虚脱感もお忘れなく)

| | コメント (0)

2019年11月 2日 (土)

アルフレッド・ヒッチコック 『ファミリー・プロット 』(’76、ユニバーサル・ピクチャーズ)

Familyplot 

(※古本屋のおやじのシネマカフェにて、本編上映後フリートーク)

 「意外と見落としがちな本作のポイントとしては、バーバラ・ハリスの演じるブランチが胸のないセックス好きだってとこかな?やたら彼氏に“泊っていきなよ”とおねだりするんだが」
 「いや、セックス好きと胸は関係ないでしょ」
 「ヒッチはそう思わなかったみたいよ。終段の監禁室前のショットだったと思うが、上部からのぞき込む盗撮目線カメラがあるんだけど。ネグリジェだか薄いぺらぺらシャツだか、胸元の開いたやつを上から覗くセクハラアングルね。女優さんってたいへんよね。その場面で映る胸元の薄さは、こりゃもう、絶対狙ってやってるとしか思えないんだよねー」
 「偶然でしょ?そもそも何の意味が?」
 「失礼ながら、たぶんギャグの小ネタ(笑)サービスショットへのアンチ。ひねくれ者だから。
 この作品、実はヒッチさんの遺作として有名であるんだけどさ。往年の犯罪スリラーの70年代版を依頼されたのに、何をトチグルったか、明るくコミカルでベタベタな犯罪コメディにしちゃったの。終幕のカット、最後のオチなんか『奥様は魔女』風の粋な演出(笑)監督自身はもう体調崩してて、撮影中も心臓にペースメーカー入れてたそうだし(しかも、それをやたら人に見せたがった)。もうなんか、しんどいこと全部忘れて、楽しくパーッといきたかったんだろうね。堅物だったオタクがアイドルにハマるみたいな感じよ」
 「はぁ。たとえがよくわかりませんが・・・」
 「いや、いいんだよ。わかる奴、絶対全国に3人くらいいるから。
 あとこの映画の見どころはね、そう、成功したヒッチ映画には、かならず、特殊効果をフルに活かした必殺の見せ場が存在する。誰が見ても”面白い!”って言うMAXレベルのやつ。例えば『見知らぬ乗客』のメリーゴーラウンド全速ぶん廻しの場面。
 今回はアクセルの壊れた車で山降りする名場面を見逃すな!ここでのブランチちゃんの邪魔くささ加減はホント最高!リアル・ブラック魔王を越えて、リアル・ケンケン!最高だよね!」
 「はぁ、なんか全然わかりませんが、楽しんでいただけたようで有難うございます。・・・で、あの、もう一人のヒロイン、カレン・ブラックさんには触れないんですか?」
 「あれはキャスティング自体が高級なギャグの一環でしょ。『殺しのドレス』が億面なくパクった、例の金髪女のコスプレ姿が有名ですけどさ、わざとグラサンさせて寄り目隠して、高いヒールのブーツ履かせて、しかもセリフは一切喋らせない。でもピストルはぶっ放す!「男って、どいつもこいつもブロンドで背の高い女が好きよね~」ってブラックさんのセリフがあって、これってティッピ・ヘドレンに言い寄ったりしてた、ヒッチさん自身への自虐ネタでしょ。キム・ノヴァクとかさ」
 「そこへあえてブサイク投入ですか。なるほど、そうすると、音楽が『ジョーズ』で当てたばかりのジョン・ウィリアムスだってのも・・・」
 「ギャグです(笑)しかも当時サントラ盤出してもらえなかったっていう。シュールな高踏ギャグ(笑)」
 

| | コメント (0)

カイ・チーホン『魔 デビルズ・オーメン』(’83、ショウ・ブラザースエクセレントセレクション)

Mv5bmwy3mjuzzdgtntm3nc00zwu4ltkzmjgtywjk     
タイ仏教の黄金力VS.アジア諸地域の危険な黒魔術パワー!

 国際問題になりかねない危険なサイキックバトルを、怖いもの知らずの英国統治期の香港映画界が熟練のカンフー技でねじ伏せて奇跡の映像化。
 音楽でもラグビーでもリーチマイケルでもなんでもそうなんですけどさ、その時しか創り出せないミラクルってありますやん。そういう形容不能のエネルギーを感じてもらえたらいいと思います。多少気色悪くってもね。
 さぁ勇気を出して、目の前の豚の内臓をガシッと素手で掴んで、そのままペロリと舐めてみようよ!そしてコレラに感染しちまえ。
 
【あらすじ】
 舞台は香港。ボクシングの試合において、タイから来た凶悪無類のムエタイ使い(ヤン・スエ)に、延髄斬り一撃で弟を廃人にされた主人公のヤクザ(フィリップ・コー)は、自宅で悔しさのあまり愛人と濃厚なバックをキメる(幾度も扉の遮光ガラスに押し付けられる豊満な乳房)。そして得心の爆睡。イヤなことがあったら疲れて寝てしまうに限る。
 
 しかし、思うようには寝付かれず、幾度も寝返りを打つ浅い眠りの中で、遥か彼方から何者かの呼ぶ声を聴く。
 「・・・来い~・・・私のもとへ来い~・・・」
 明らかにこの世のものではないそのダミ声に、汗だくでビビって起き上がったコーさん、宙に浮かぶ金色に輝く僧侶の幻影を目撃。どひーーー。
 にやり笑った謎の僧侶は、指でナゾの逆Ⅴの字サインを描くと、空気に溶けて消え失せた。
 「え、誰?・・・なんだ?!なんのまじないだ、ソレ・・・?!」
 思わず一歩前に身を乗り出したコーさんだったが、強力に肩を掴まれた。背後に険しい表情の愛人が。
 「ちょっと、あんた!またテレビが点けっ放しだったよ!寝惚けるのもいい加減にしてよね!」
 見ると、なるほど暗闇の中に突け放したブラウン管を流れるご存知砂の嵐。すいません。以後気をつけます。
 
 翌日。
 試合に判定負けしたくせにヤン・スエは何故かタイ・ムエタイ協会から表彰されるという、理不尽極まる報道をYahoo!ニュースで目にしたコーさんは、居てもたってもいられず、自腹でタイへ駆けつける。
 そして表彰式の現場に勝手に乱入。ヤンさんの貰ったチャンピオンベルトを地べたに叩きつけ、タイ警察数名が制止に入る大乱闘に。お騒がせすぎる二名に対する処置として、三か月後ヤンさんとコーさんの生死を賭けたデスマッチがものの5秒で決定事項となった。
 さて、話の流れが速すぎてイマイチついていけないが、まぁいいや。せっかくタイまで来たんだ、タイ飯のひとつも喰って帰るか。
 帰路、水上生活者のうようよ居る泥臭い運河を現地人女性の操るモーターボートで飛ばしていたコーさんだったが、突然とある寺院の屋根が目に留まる。
 「あーーー!あれは!」
 午後の日差しに輝く欄干飾り。あれぞ、夢で坊主が指していた逆Ⅴの字サインと同じ。でた。啓示だ。オーメン666だ。
 
 岸に寄せ、ここまでの料金をちゃんと払い終えるや否や寺院の扉を開けて駆け込むコーさん。居並ぶハゲ頭の修行僧たちに囲まれ、そこに待っていたのは、まぁ当然ではあるが、金色に輝く袈裟を纏った例の僧侶。大和尚。
 「フ、ワッ、ハッハッハ。フラガラッハはケルトの剣。ずっとお待ちしていましたよ、ミスター・コーさん!」
 「だったら、サッサと俺宛に電話して来いよ!!!(プンスカ)
  だいたい、あんた、なぜ俺の名前を知ってるんだ?お前はいったい何者だ?」
 「私の名は、正義の僧侶ムー。マジで世界の平和を祈願する、新陛下並みに広い心の持ち主です」
 「え?・・・ホントかな~?!」
 「幻影を見せてあなたをここに呼んだのは無論私です。ありがちですが、実は貴方に折り入って頼みがあるのです」
 「ふーーーん、やっぱりな~。ケッ、金なら無いぜ。あらかた愛人に巻き上げられすっからかんだ!」
 「あー、いや、ご安心ください。そういう現実的な方面でのご相談では全然なくて。ま、ともかくこれを見てください」
 コーさんの視界に唐突に精神幻覚ヴィジョンが示される。VRだ。サラウンド音声だ。ビジュラマだ。

(以下、脳内映画上映中) 
 香港の地下駐車場。鞄を抱えて歩くディスコ黒服風の男。
 「わたしの師匠、正覚大法師が先日香港にて、宿敵・悪の大魔術師マグーソを退治したのですが・・・」
 「馬・・・糞ぉ?」
 突如パーキングメーター横にプリズムに包まれ結跏趺坐する老法師が現れ、強力な念波を送る。
 「うげ~~~、ヤメテ、ヤメテ~」
 もがき苦しむマハラジャ店員。皮膚がゲル状に爛れて、仕込んだフォームラバー下の風船がぷくぷく膨らむ。でも最後なかなかきれいに破裂しないので自ら機転でパンパン割っていく。
 「ぶぼわっ。はげら。ぶぼら、げしげし」
 断末魔の表情となり、カメラ切り返しの初歩的トリックで白髪の老人と化し煙を吐いて息絶えるマグーソ。その干からびた死体の口を内側からこじ開けて、内部から一匹の妙に茶色いムクムクしたコウモリが飛び出す。
 地下駐車場の広い空間を自由に羽搏くその醜い生き物を瞬間移動でハシと片手に掴む正覚老師。あたかも一ミリも移動していないかのような神技だ。いや、絶対あんたに向かって投げられたんだよね、そいつ。

 さて、捉えたコウモリをこっそり寺院に持ち帰った正覚大法師、袱紗に入れ四隅を入念に釘止めしておいて、上から銀の小槌をこんこん振るいますってぇと、あら不思議。
 さすがの魔性のコウモリも「キー、キー」と断末魔の悲鳴をあげて木っ端微塵。ボヒュンという気の抜けた煙の後、白骨と化す。
Mv5bn2ywmdiyytqtogvmms00ymy1ltlhztatmmu1

 一方宗教の違いから対立する、悪のアジア黒魔術寺院。本殿では、ショボい口ひげにバンダナ捲いた悪の呪術師(fromインドネシア)がウンウン唸っていた。
 「あかんやーーーん!コウモリくん、やられて もうたやん!」
 翼を背負った巨大な悪魔像をご本尊とする悪の寺院では、各種忌むべき使い魔たちの像が飾られ信仰の対象となっている。毒蜘蛛、ムカデ、サソリ、そして蝙蝠。あれ?一匹だけ昆虫系じゃないのね。
 「うわーーー、ええやん、ええやん、そこは適当でぇー。突っ込まんどいてーーー!」
 いにしえのコメディアンにしか見えないカワイイ悪の黒魔術師、骨壺を転用した魔界飼育箱に手を突っ込み、豚の腸を餌に丸々太らせた黒い野ネズミをむんずと掴み上げ、
 「はむ!はむ!はむ!」
 内腹にがぶがぶ噛みついて、生きてるやつを踊り食い。口の周りは血塗れになり、内臓のかけらが唇からぷらぷら垂れる惨状に。
 んで、
 「ぶりっ、ぶりっ、ぶはーーーーーーー!!!」 
 ネズミの生き血を蝙蝠像に思い切り吐き掛けると、正覚大法師の寺院で、骨になったコウモリがパペットアニメで生き返った。大腿骨を二本、打楽器代わりに打ち鳴らし気合い入れて念波を送り込む呪術師。
 「ホレホレホレ、踊れよ踊れ!カカリン、カマヤーーー!!!」
 聖なる寺院の床を這い、かなりスローな全力疾走で表に逃亡しようとする骨コウモリだったが、発見した正覚法師、全力で柄の長い金属ハンマーを振りかざし、木っ端微塵に叩き割る!見たか、これが正義の力だ!
 
 「クソ―、術を破りやがって!此ン畜生ッ!」
 怒り狂う黒魔術師は、ぷらー、ぱららら、ららーと蛇寄せのラッパを吹き鳴らす。まるでアジアのマイルス・ディヴィス。その渾身の音色に操られるジャズファン一同の如く、籠から毒ヘビが顔を出した。ちなみにカッコいいフレーズが尽きるとこのインチキマイルスは、チャルメラの唄にしか聴こえないフレーズをひとしきりブチかますので、きっとマイルス本人より腕は上なのだと思います。
 床を這い、ニョロニョロ集まってきた毒蛇をムンズと掴んだ黒魔術師、首ねっこを締め上げ、剥き出した牙から滴る毒液をビーカーに溜めるお仕事に精を出す。
 緑の毒液がある程度溜まると、今度は壺から髑髏を取り出し、頭頂骨の蓋をカパッと開けまして、ピンク色のとぐろを巻く脳内にケバケバしい毒液をジャバジャバ振りかける。
 そしてぐつぐつ煮詰めると脳内ヘビ毒茶が出来上がり。こいつを今度はクモに吸わせるんだ。ストローで。(本当にクモの模型にジョワに刺さるみたいなストローがついてる。)もはや何を目的にしているのかまったく分からない方向に描写は転がっていくのだが、話は依然として悪の術師と坊主の戦いである。

 以上の工程により超常的なパワーを身につけたスーパー毒グモを二匹懐に隠した悪の呪術師は、マント翻し真夜中のお寺に侵入。
 袈裟一枚、フリチンで、涅槃に入るブッダの如き、だらしない格好で寝ていた正覚大法師を発見。にやり笑うと、やもりの如く壁に張り付くとするする天井に登っていく。
 (・・・え、なんで?!なにすんの?なんで普通に襲わないの?)
 天井に背中剥きに張り付いた術師(背中が吸盤になっているとしか思えない)は、両手に毒グモ大を握ると、直下に横たわる正義の坊主目掛け「屋根裏の散歩者」方式の毒垂らし作戦を敢行!まぶた周辺にに毒汁垂らされ、じゅわっと赤く腫れて苦しむ坊主。
 魔術師はとどめとばかり、口に含んだ30㎝くらいある長い毒針をミサイル発射。
 「ぐわわ、わわわ!!!痛ってぇえーーーー!」  

(上映終了) 
 「・・・ということで法師は盲目になられたのです。これでは即身仏にはなれません(泣)」
 「エ。てことは今までの映像、すべて前振り?!」
  あまりの描写の無駄の多さに呆れ果てるコーさんだったが、ブチキレ一歩手前で踏みとどまった。
 「で、結局あんた、俺に悪と戦えってんでしょ?この話、詰まるところ秘密戦隊ゴレンジャーみたいなもんなんでしょ?」
 「ま、ゴレンジャーは5名、貴方はおひとりですが。がんばってくださいね」
 「はぁ・・・まぁ・・・」
Mv5bzdqwmdg4zjytzgqzni00mmmyltk3mgitywi4   
【解説】
 DVDのパンフレットリーフを読むまで皆目見当つかなかったが、この映画、登場する悪の呪術師は4人。最初の敵がインドネシア呪術師で、続いて登場する3人組の構成が、タイ呪術師・マレーシア呪術師・サバ呪術師。
 ※註引用(サバ州は、ボルネオ島北部にあるマレーシアの州。山頂から鋭く突き出た花崗岩が特徴的な国内最高峰のキナバル山(標高 4,095 m)がある。また、ビーチや熱帯雨林、珊瑚礁、豊富な野生生物でも知られ、そのほとんどが自然公園や保護区内で保護されている。沖合のシパダン島とマブール島は、有名なダイビング スポットである)
 そして、3人組が死から蘇らせる地獄の全裸美女がラスボスとして登場し、よくわからん魔界パワーを発揮し主人公を苦しめる。この女の蘇生方法も特殊で、腹を切り裂いた巨大ワニの内臓を3人がかりでエッチラ放り出し、墓地から持ち帰った埋葬したての若い娘の死体をワニ内部に格納。じっくり寝かせて、黒い蛆虫がウヨウヨたかる状態にしたところへ、3人で皿廻しながらカット済みニワトリの肛門(!)やら腐ったバナナやらを喰ってはモドし、喰ってはモドし、ドロドロのゲロゲロになった悪の咀嚼物を溶かしてジュースにして振りかけ、鉦を鳴らして魔神に祈るという。
 端的に言って、話を進める上で特に必要が無い、生理的に不快な描写ばかりが連続し無駄が多いのだが、その要領の悪さはなんか愛らしいものだ。
 悪の全裸美女という点ではトビー・フーパー『スペースバンパイア』('85)に先駆けてるし、『エル・トポ』('70)などホドロフスキー的な色彩感覚にも近いものがあるし、登場するクリーチャーの愛らしさは『ヴィ・妖婆死棺の呪い』かヤン シュヴァンクマイエルの映画みたいだし、やたら目玉のついたドクロが登場し重要な役割を果たすところは貸本怪奇マンガ、よく見てないと気付かないと思うが、口が開いたエイリアン・エッグそのものが登場するカットさえあるのでお見逃しなく。
Mv5bnzljzjkxmmytowezmi00njyyltk2nditmgmz  
 そういや映画の舞台は、香港とタイの往復だけで終わるかと思ったら、最終決戦の地はなぜかネパールでしたよ。アジアン呪術オリンピックみたいなもんなんすかね(思考放棄)。

| | コメント (0)

«フリッツ・ライバー『放浪惑星』('64、東京創元社 創元推理文庫SF)