2017年5月25日 (木)

小松左京『果てしなき流れの果に』 (’65、早川書房ハヤカワ文庫JA1)

 『・・・宇宙飛行士D・・・!
 宇宙飛行士D・・・・・・!!』


 
突然スピーカーのボリューム最大値で飛び込んできた緊急通信に、寝棚に転がる男はだらけきった返事をした。
 「んーーーー、なんやねんな。うるさいなー。静かにしてや」

 『こちらヒューストン。どうもすんません。
 で、どうですか、最近は年に一回ぐらいしか交信しないけど、元気でやってますか?』
 「って、普通に時候の挨拶かよ。こちとら、恋に仕事にブログにヨイショに、大ハッスルの毎日ですよ。まったく三度の飯も寝る暇がない」
 『表現間違ってるが、ニュアンスだけはわかるな。残念。・・・しかし、アレですね、話は飛びますが、最近ツレが電子タバコを購入しましてねー』
 「ふん、ふん」
 『アイコスとかじゃなくて、ニコチンレスのリキッドタイプ。あの、ベープマットみたいな感じのやつ』
 「作動原理はたぶん同じだよ」
 『これがなかなか優れものでしてね。USBで充電するわ、長押しで爆煙を噴き上げるわ、近所のバァさん平気で犯すわ』
 (ウケて)
 「ゲフフ、ババァは犯さねぇだろ、ババァはー!!!」
 『と思って油断してたら、先日うちのカミさんとベッドに入ってました』
 「ギャッフン。って、今回は落語オマージュか。小朝か?」
 『話がちっとも前に進みませんな。これじゃ真剣に情報を知りたい、真面目な小松ファンの殺意を買うばかりではないか。Oh、なんたることだ』
 「お前は、そらぞらしいんだよ」

【あらすじ】

  

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年3月26日 (日)

大童澄瞳『映像研には手を出すな!』('17、小学館月刊スピリッツ掲載)

 気になるマンガをどうやって探す・・・?
 そもそもいい歳こいて、なんでマンガなんか気になるの・・・?

 人はさまざまな葛藤を抱えて生きている。衣食住が足りればそれで万事解決しそうなもんだが、そうもいかない。「人を殺してみたくて」わざわざ人を殺すやつも出てくるし、親戚の年寄り連中を虐殺した理由が「精神工学戦争」の結果だ、と言い張る42歳だっている。
 最近忙しいんだか暇なんだかわからない私の目下の悩みは、「あぁ、気持ちいい絵を読みたい!」である。言葉にしてみると本当バカみたい。でもしょうがない。

 本気で狂ってる諸君にはお恥ずかしくて到底及ばないが、これはこれでやっかいな精神状態だ。こういう場合、私は隙あらば落書き率が異常に高くなる。「気持ちいい絵を読みたい!」が嵩じて「気持ちいい絵を描きたい!」状態ね。日常に置き換えますと、顧客の電話を取りながら落書き。業者と電話しながら落書き。つまらん会議の合間に落書き。いい大人のくせに。もっと真面目にやれ。給料泥棒金返せ。さすがに誰かと面と向かってだと無理があるので、客先では勿論できないが、幸い私の職業は基本インドアの事務処理なのである。営業要素がある事務処理。気づいた周りの皆さんは、人間のできた方ばかりなので、「あぁ、あの人はあぁいう困った人なのよ。ありえないよね。っていうか、積極的に死ね」と温かく無視してくださる。これはこれで実に恥ずかしい事態なわけです。
 この病が発症したのは、たぶん小学生ぐらいだと思われるから、ずいぶん長い病歴だ。「全然“目下の悩み”じゃないじゃん!」という突っ込みがいま聞こえた気がするが(幻聴)、マジ治んないんすよ、この病気。誰かなんとかしてくださいよ。
 あぁーーーー、気持ちいい絵が見たい。で、検索を繰り返す。またなんか見つける。ブログアップ、って感じなんですよ。
 
 「僕は宮崎駿と吉田健一の影響が強くて」
 と、今回取り上げるこの本の著者はおっしゃる。アレ、吉田健一といえば元イカ天審査員じゃなくて文学者の方じゃなかったですっけ、と思いましてサーチしてみますと、こんな画像が。
 Yoshida_3
 
 そうそう、『交響詩篇ユリイカセブン』のアニメーターの方ですね。(私、ユリイカがどんな話か全然ご存知なかったんで、これまたサーチしましたら、スケボーに乗ったロボが大気圏外から滑走してくる画像が出ました。『木曜の男』の翻訳でおなじみの吉田健一先生もいろいろ手掛けてるってことですねー。)
 既にして話が逸れまくっている感濃厚ですので、話を本筋に戻しまして、まず褒めますが、この本、絵が気持ちいいです。細部に到るまでちゃんと考え抜かれていて、パースもきれい。手作りのよさですね。
 この絵を見まして単行本購入を即決したので、別に不満はないっちゃーないんですけれども、話の中味にはいろいろ思うところありまして。まず、あらすじを書きましょうか。誰も私に正確な内容紹介を求めてないと思うんだけど(笑)。ま、いいよね。

【あらすじ】
 (ある種の)アニメが好きだ!(ある種の)アニメのためなら死んでもいい!
 青少年を襲う原因不明の不可解な熱病・若さに憑りつかれ、高校へ進学した主人公・浅草は、同好の士・水崎と出会い、金勘定にたけた友人・金森を巻き込んでアニメ制作に邁進するのであった。既存勢力アニメ研との棲み分け問題を、映像研という曖昧なアチチュードで躱しながら、部を立ち上げ、学校側と交渉し廃屋のような部室も手に入れ、ついでにタップ台もゲットする。そして活動予算獲得のために生徒会へのプレゼン会参加。止め、連続コマ送り、一時停止、フラッシュ効果など作画コマ不足をごまかしごまかし、苦心惨憺で作り上げた作品は以下のような内容であった。

【さらなるあらすじ】
 いつの時代だかよくわからん超未来。たぶん西暦5000年くらいか、超未来都市の廃墟は苔むして緑に覆われ、宮崎駿と地球に優しい感じになっている。最後の巨大産業社会が崩壊してから約1000年が経過、それでも懲りずに人間どもは愚かな利権争いに明け暮れ、大国列強は侵略の覇を唱え辺境の小国・ナンダルシアに侵攻しつつあった。目的としては主に昆虫採集である。彼の地にしか棲息しない幻の蚊トンボは痔によく効くのだ。世界列強の傀儡君主どもは揃いも揃って全員大痔主なのであった。 
 ナンダルシアの王女で、セーラー服にガスマスクの労働運動闘士でもあるペントラ・ポポネスカは、本日もまたまた領空に無謀な侵犯をかけてきた敵国の空中戦闘艦に単身潜入し、テロ的ゲバルト行為に成功、撃ち落とす。しかし、その船は実は難民船で、国を追われた可哀相なダユタラ族の子供やら年寄りやら含む大人数を載せていたのだった。
 (わたしが・・・・・殺したんだ・・・・・・)
 いきなり大量殺人の罪に問われることになった16歳の王女。戦場に響き渡る悲痛なテレパシー。(肩透かしだけどヌケル)(これはれっきとしたオカズビデオです)(清楚な感じの女性で申し訳ないですが、水色水着と黒のアダルティーな下着で暴発してしまいそうになりました)(?)(申し訳ないですが、本能的に硬直化しそれをしごかずにいられませんでした)(・・・!!)(私は巷に流通してるAVというものを自分磨きの際に用いないのですが)(さりげなくその場面まで見てたもののここでいきり立ってしまっていたものをしごくはめに。ほんと久々だったのでかなり気持ちよく出させてくれちゃいました)
 「ナニシテ、けつかるねん!」
 
突然どつく(剣と笑いの道の)師匠ゲーハー。「すっかり違う種類の映像研になっとるやないか!ドアホ」
 「さすが師匠、的確なツッコミ。でも、なぜここに?」
 怒りと苦痛が充満した戦場のボーイズラブは真っ赤に染まり、より具体的には墜落した機体やら、飛び出した少年従者やら、ヤックに子羊に、占いババ様の遺体やらがガンガン燃えている。
 「ウ~~~ン・・・heart もう、そんなの、どうでもいいでしょーーー?!」
 なぜか師匠はおネエ言葉でマジ切れだった。「勝手に進め、愛しき風よ」
 パッパカお馬に乗って去って行ってしまった。
 恐ろしい戦争の惨状を目の当たりにしたペントラ・ポポラスカは、しごく手伝い、もとい憎むべき無益な争いに終止符をうつべく、自慢の包丁を振り上げて戦車を一閃まっぷたつ。見事捌いて名を上げた。われわれ城ジイとしては、
 (なんかオカシイぞい、根本的に)
 (くさい、まったく胡散臭いゾ!こたびの戦さ)
 (てか、巨神兵の復活はまだか・・・?!)
 (それにつけても腹減った~)

 とか思いながら、とりあえず「姫君バンザイ」と絶賛の辞を送るしかなかった。気が向きゃ、そのうちやらしてくれるかも知れないし。そう想って死んでいった城代家老の数はもはや数千に及び、城の地下はボロボロになった死骸が死屍累々・・・・・・。
                              (完)
 
 「え・・・コレって、ただのアニパロじゃね・・・?!」
「(完)って、まだ完結もしてねぇし!」
「そもそも、姫君がやらしてくれるのか否か。そこが重要な問題です(深刻系)」

 怒り心頭、こぞって席を立たんとする審査の生徒会諸君!たち。そんな中に賢いやつが一名は混じっているもんで、そいつが場を仕切って御大層な口をきくのであった。
 「待ちたまえ、生徒会の朋友(はらから)どもよ。両耳かっぽじって、よく聞きやがれ。そもそも、アニメの本質とはアニパロなり!」
 「うわ、無茶いいやがる」
 「きみの知ってるアニメ、ボクの愛するアニメ、そもアニメに種類は沢山あれど、その本質はひとつでしょ?セルに描かれるひらひらが、ガバッときて、バカンと爆発。飛び散る閃光、爆風に逆巻く美少女の緑色の髪の毛。要は、どれもこれも小賢しくてアニメ臭い。アニメ臭がする」
 「おお、アニメ臭・・・・・!」一同は感嘆の声を上げる。
 「拡大再生産を繰り返す、(ある種の)アニメの本質とは、よりアニメなアニメ、自己模倣、飽くなき異形化を進化と偽る無限の自己肯定運動に過ぎぬのよ。これ、すなわちアニパロなり!」
 識者のあまりの独断専横ぶりに、全員言葉もない。
 「光子力も原子力も皆同じ。現実に使えぬ力を使って空を飛ぶ。そんなのがドラえもんの与えるアジアの子供への勇気であるとしたら、存在のあまりの貧しさに、拙者めまいクラクラでごじゃるよ~」
 「ごじゃるよ!」はずみで誰か唱和してしまった。
 「そりゃかつてアニメには、早稲田に現役で受かるような壮大な夢があったかもしれないよ。アニメの可能性が真剣に議論の対象になった時代もあったんだよ。でも、もういいよ。ここに描かれるような世界観を“最強の世界”と呼称する勇気は、もう俺にはねぇよ」
 老人が進み出てた。
 「王よ、それはすなわち、かつてあなたはアニメの力を信じておられたということかな?」
 「この現実を変革するパワーとして」
 王は語った。「アニメは存在する。でも、それが新たな創造を生むのではなくて、かつて存在していた感動の再生産に過ぎないとしたら、そんなのは最早ご新規開拓でもなんでもないんだよ。われわれは、そんな茶番に永久に付き合う義理なんてねぇんだよ!」
 「御意。・・・抹殺」
 閃光が走り、大地が炸裂。浮上したツェッペリン型飛行船(実は地球先住民族の残した古代兵器)は軌道上から急速落下する月に押し潰され、粉々に砕け散ってしまった。
 
【追補篇】
 このマンガでの錯綜する物語は常に二重構造をとっており、例えば主人公達の造形は外面女子高生でも、内面としては(最近は比較的小奇麗に化けた)ヤングオタクどもであったりはする。つまり、筋だけ追えばサッパリ面白くも可愛くもないってことだ。
 そうした実体のすり替えが日常風景や学校など建築や室内の造形にいたるまで徹底して及んでしまっているので(なぜか校舎裏に風車がある!)、既に現実は非現実側に向かって半歩以上踏み出しきっており、本来飛翔すべき対象となる空想世界が、現実を凌駕するイマジネーションの凄さという作者の狙った構図の本来持つパワーを逆に減じてしまった、という皮肉があるように思う。
 その過剰さに乗っかれるか否か。好意的な読者であり続けるべきかどうか、読み手は問われることになる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年3月18日 (土)

ニーヴン&パーネル『悪魔のハンマー(上)(下)』 ('77、ハヤカワ文庫SF392・393)

 あッ、あッ、あ・く・まのハンマァァァーーーーーー!!!
 世界の終りの物語には、ある種の快楽がある。既成秩序が台無しになるのを横目で眺める面白さ、とにかく人がいっぱい死ぬ爽快感、無駄にスケールでかいスペクタクルと浮き彫りになる人間の矮小さ。
 世にパニック映画ブームが起こり、おもに白人が絶叫を上げながら大量死する映画がスクリーンを席巻していた70年代末、既に生まれついての億万長者(親父は油田王だか何かで、かつ生まれも育ちもビヴァリーヒルズっ子)、別に小説なんか書かなくても生きていかれそうなもんなのにそうもいかない不憫かつひょうきんなヒゲ男ラリー・ニーヴンと、生真面目すぎてまったく面白いことを言えない堅物すぎる、そのマブ友達ジェリー・パーネル氏の二名が寄ってたかって共作をブチかまし世間をブイブイいわして最も脂がのった第三作目。ここに世界でもっとも不謹慎かつ無責任なパニック大作ノベルが登場した!
 文学的な深みなんか、なんだってんだ!小説は面白ければ面白いほどいいんだ!そうに決まってる!
 この低能すぎるマニュフェストに、キングもクーンツもくんずほぐれつ大賛成。これは、だからキング牧師の偉業(奴隷解放)に先立つ無内容な上下巻、超大作ノベルブームの嚆矢となった記念碑的作品なのである。
 そう、無意味で分厚い上下巻ブームはここから始まった。

【あらすじ】
 彗星が地球に激突する!H・G・ウェルズの時代からしつこく警鐘を鳴らされてきた事態が、またも地球に襲い掛かる!ホントもういいよ!カンニンどすぇーーー!
 「発生確率、数億分の一」と巻頭で報道されていたありえない天空よりの危機であったが、たちまち数万分の一、数千分の一と縮んでいき、150ページ越える頃にはもはや既定事実になっていた。話が早くてイイネ!地球滅亡はたちまち大決定。誰もがそこまでされても、まだ科学者の発表をまだ信じて疑わないところがまたイイ。俺なら八つ裂きにしてやりますけどね、そんな無責任な連中。
 で、主人公は、ま、たくさん居すぎて本当どれが主役だかわからないんだが、とりあえず作者の一名をモデルにしたとおぼしき億万長者のアマチュア天文家は、地球滅亡より先に「なんで俺はこんなにモテないんだろう?」と悩んでいた。
 そこへ彗星到来。
 ロサンジェルスは洪水に呑まれて壊滅したが、リムジンで山へ逃げ込んだ先で、秘かに惚れてた向かいの自動車保険代理店の受付の女とカーセックス。
 「たった一晩で数万人が死んだが、やっぱりカーセックスはいいなぁーーー!!!」
 生きてる意味を取り戻した、元億万長者で現在現役の一文無しは、この女と結婚する意志を固め、合衆国上院議員の経営する秘密農場へ。この農場では、タネモミを植えるついでに広く、愚昧な大衆のクズどもに種付けの指導を行ってくださっているのだ。
 上級指導員の議員センセの娘(筋金入りのビッチ)は、近所の農家の長男(鉄壁のホワイトトラッシュ)と初体験後、さまざまな男遍歴(アラブ・ヨーロッパ含む)を重ね、ただいまのところ、やさ男のTVディレクター(妻を惨殺されたバツイチ)と絶賛交際中(交流場所は主に屋外のテント)。しかしそこへ、宇宙から元カレがロシア人連れてカプセルで降りてきて大騒ぎ。
 一方彗星落下による巨大地震、大津波に襲われて死の世界と化した地上では、元軍隊の人喰い集団が徘徊していた。災害後の世界ではとにかく食べるものがないのだ。ツナ缶一個で王様だ!この極悪非道な、親の頭の皮を剥がして乾かし酒のつまみにするような最低すぎる奴らが、ラジオの発狂キリスト教系宣教師と手を組んだ!どうしてそうなるのかサッパリわからないが、これも一種の現代アメリカの病んだ縮図。水野晴郎先生ならキッパリそう断言されるはず。
 そして、このヘンテコ集団同士の全面激突は、地球に最後に残された原子力発電所の再稼働問題をめぐって行われるという・・・・・・。
 このへんに、この本が東日本大震災以降まったく人目に触れなくなった原因があるのだろうと思う。ページは分厚く、中味は薄いが、そこそこ面白いんだけどね・・・・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年2月26日 (日)

高遠るい『みかるんX①』 ('08、秋田書店チャンピオンREDコミックス)

 ここはすべてが都合のいい世界。
  読者にとって真に都合のいいことに、登場するなり主人公のミニスカは捲れあがりそうだ。いたずらな春風が街路を吹き抜けて、長くスラリとした太腿がローアングルからまる見えになる。
 ウ~ン、いゃ~~~ん。
 彼女は小柄でシャイでスレンダーなロリ系ギャル。髪の毛、黒。(詳しくは後述するが、この世界において髪の毛の色はキャラクターの属性を示す重要なファクターである。)
 地方出身者の彼女が新たに通うことになった高校は、新入学の時期であり、つまりは彼女は新入生であり転入生でもあるという、実に甘酸っぱすぎる設定である。
 はァ、はァ、はァ・・・・・・ツバごっくん。
 そして、その舞台設定たるや「うら若き乙女ばかりが無駄にウヨウヨいる恐怖女子高」であって、しかも「完全寄宿舎制からなる神聖な女の花園」でもあるという厳正なる事実は、これはもう、神が定めたもうた絶対意志とでもいうべき、崇高な運命の成り行きであって、さらに、その場所で宿命的な衝撃の出会いをする相棒役の少女が、巨乳でイケイケな行動派ギャル、髪の毛・赤であることは、物語の登場人物が残らずある種類の卑俗な期待値に添ったロールにより厳密に分類され配置される、古代ギリシャより伝来しさんざん使い古された、全国民的美少女コンテストが如き超広域コンセンサスに基づく二律背反黄金律によりまして自動的に算出、決定されていると断言してしまっても、全然まったく徹頭徹尾、問題のある表現ではありますまいよ。
 つまりは、閉鎖世界だ。これがよくある設定であることを作者は知り抜いており、ゆえに私たちもよく熟知している。並行宇宙のように無数に存在する男子禁制の女学園は、往々にして歪んだレズビアニズムのよき温床であって、素敵なお兄様に憧れる無垢な妹キャラの発生母体である。

 かくて、われわれがあっけにとられてシーンの繋がりを、断片的に切り出される情報の連鎖を眺めて観ていくうちに、地球は宇宙からの侵略というわかりやすい脅威にさらされ、少女たちは秘められた能力を発動し、敵を打ち破る。

 これって、なに・・・・・・?

 「あぁ、それって、アニメだよね~」
 そう物分かりのいい方はおっしゃるだろう。確かに、われわれはこういうものを長年観てきた。見せられ続けたといってもいい。あまりに氾濫しすぎて、もうすっかり慣れっこになってしまった。だが、よく見りゃこれって異常の連鎖じゃないのか。あんたら、全員おかしいよ。
 アニメ、もしくはアニメ的なものとは、現代日本に生きる私たちに深く刺さった病根である。
 私はあえて、今更ながらにこれを分析し、ささやかながら治療を試みんと、フト日曜の朝起き抜けの寝惚け眼で思い立つや否やこの面倒な文章を書き始めた。
 こんなことして何が面白いのか。それはもう忘れた。

 わが師匠フロイト・デロイト・ロス・とど松の、精密かつ高度かつ大雑把な分析によると、アニメ的なるものとはふたつのフェイズから成り立っている。
 外的要因と内的要因だ。エイ、わかりにくい。
 
 1)ビジュアルに関連するもの
 2)プロット、ストーリーに関連するもの

 これでどうだろうか。ちなみに「世界観」ってのは2)ね。
 キャラクターってのは1)と2)の混合によって生み出されるもの。「外面が内面を規定する」、もしくは「内面は外面に影響を与える」。これって本物の精神分析の教科書にも載ってましたね確か。意外と学あるね、俺ね。とっても楳図かずお的だよね、ホラ、『うろこの顔』だよ。
 でね、アニメなるものが不愉快である歴然とした理由というのがあって、それがとっても誰かに都合がいいように出来てるからなの。その都合の良さが単なるビジュアルの趣味に留まらず、物語の構造、キャラクターの内面を侵食するとき、限界を越えた人は不快を叫ぶ。が、安直でわかりやすい快楽構造は、それでも観客の内面に忘れがたい傷を残す。
 でも、そんな世界は、本当はどこにもないんだよ。
 もう、ホント、それだけ。

 この関係性を考えるとき、すぐ思い浮かぶのが、例えば押井守『うる星やつら2・ビューティフルドリーマー』なんだけどさ。あれは意図的にやってみせた構造の抽出劇だったんでしょうけど。かなり歪んだ作劇になっちゃってるし、説明不足も甚だしい。
 ネタ元はディック『宇宙の眼』で、ブラウンの『発狂した宇宙』で、根本はホラーなんだ。そして誰もいなくなる系の。だんだん登場人物が消滅していって、最後に主人公がポツンと虚空に放り出される。そして、昏睡状態のガールフレンド。彼女は夢を見続ける。美しい夢を。
 この世界が誰かの夢、妄想だったとして、果たしてその内部に囚われた人間は幸福なのか。
 これね、このテーゼ、本当いいとこ突いてるんだけど、押井はホラ、アニメの側の人だからさ、最終的にその世界を肯定しちゃうわけ。あの世界全体。なんだかんだいっても、結局好きなんですよ、あの人。だからいまだに作り続けてるんでしょうけど。
 俺はイヤだね。やっぱり。 

 ね?
 こんな風に、この文章を早めに打ち切るなんて準備不足、説明不足もいいとこだけど、細かい話はまた今度。さっさと寝ないと明日は、明日の仕事が待ってるしさ。

 もうすぐ三月だなー。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年2月12日 (日)

クレイトン・ロースン「世に不可能事なし」 ('58、『密室殺人傑作選』ハヤカワミステり1161)

(昼食時間の会話)

 「レーコさん、レーコさん」
 「はいはい」
 「先日土曜ワイド劇場がなくなるって報道があったの、知ってますか?」
 「えーーーーー!なんでーーー?」
 「テレビのサスペンス枠が大好きなレーコさんにはショックですよね。
 テレ朝の編成が四月からの改編として発表したんですが、土曜枠をなくして日曜の午前中に持って来るんですって。その名も日曜ワイド」
 「ダサ~~~~~~」
 「ね?日曜ワイドってどう見ても東芝だろ!この枠では過去の名作の再放送や人気シリーズの新作をお届け、ってことになってるそうですが」
 「悲しい。生きてる意味が希薄になりそう」
 「いや、それはないと思いますが。体裁のいい予算減らしなんでしょうね。しかし、もう40年続いてたんですってよ、この枠」
 「そうでしょうね。あたし、そういや気がつくと、ずーーーっとずーーーっと観てたし」
 「若くして結婚され、倦怠期を幾度も繰り返し、流浪の果てに無関心へと辿り着いた現在のレーコさんにしてみりゃ長い、長いお友達ですよね。山村紅葉。このあと、どうすんだろ?」
 「(笑)」
 「そもそも、殺人・強姦・窃盗・詐欺といった我が国の社会派ミステリー一派は、おやじの娯楽としてスタートした筈なんですよ。だから、ハダカもあれば乱歩もあった。天地茂の眉間の皺もあったワケです」
 「ふーん・・・・・・」
 「70年代の松本清張や水上勉、森村誠一などの社会派大作映画化ブームに、新興角川映画の横溝ミステリーがガップリ四つに、クラーーーッシュ!そこへ『鬼畜』やら『復讐するのは我にあり』やら、もっぱら緒方拳独走態勢による実録路線(『仁義なき戦い』ビハインド)が雪崩れ込み、ライトな80年代テイストがハートカクテルに合流するという。
 端的に言って、ネタの供給過剰が発生!」 
 「たしかに、昔の方がワケわかんなかったかも知れない」
 「そういう無茶苦茶な混沌が整理されていくのが、80年代後半から90年代にかけて。気がつくと、バブルは崩壊していて、ワイド劇場は女性向けのソフトな枠になってました~~~」
 「そうか、あたしはその頃から観てるのかなー・・・(遠い目)」
 「その後の主流はキャラクター系とかですね。「赤い霊柩車」とか「法医学教室」とか。あと高橋秀樹の十津川警部とか。サラリーマン出張のお供の京太郎がまさか女子人気を獲得するとは。でも最近の窓際太郎とか確かに面白いですけど。あれ、一種の超人モノなんだよね(笑)」
 「お約束がいいのよ、なんかベタベタで」
 「そうすると、ヘンなもの、珍奇なものが出にくくなる。こっちは怪奇とエロスが専門ですから。たとえば、ヘンテコ具合で言うとクレイトン・ロースンなんかは・・・・・・」
 「なにそれ?」
 「昔ハヤカワから出た、密室トリックばっかり集めた『密室殺人傑作選』ってのがあって、チョイスもなかなか乙で、通好みも初心者にも楽しめる一冊。何回読んでも面白いブラウン神父の「犬のお告げ」とか、何回読んでもどこが面白いのかわからないアブナー伯父の「ドゥームドゥーフの謎」とか古典的なものから、“フレデリック・ブラウンだろ、これ!つーか、星新一かよ”なショートショート「時の網」、うっかり“いいね!”ボタンをクリックしてしまいそうなバカ系パロディー「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」などなど、中味の濃い内容になってます。おすすめ。お買い得。
 基本、密室での殺人ってバカっぽいでしょ?
 だからいいんだよ。で、このお話は・・・・・・」

【あらすじ】
 魔術師にして探偵という、胡散臭さ満点のジイさんが密室殺人の謎に挑む!被害者は変わり者の大富豪、第一容疑者は火星人。空飛ぶ円盤で飛来して、こめかみに銃口を押し付けて一発ぶっ放すと、四次元の断面を使って煙のように密室から消え失せたという。かつて、これほど胡散臭い話があっただろうか?!胡散臭さのチャンピオンシップだ!
 例によってさっぱり役に立たない警察が手を焼いているのを尻目に、現れた手品のおじさんは極めて常識的な指摘を行った。

 「いや、無関係な犯人が旅費を使って他の星からわざわざ来んでしょう。動機とかまったくないし。だいたい、使い方も知らんのに銃なんか撃てる訳がない。
 いちばん怪しいのは、なんといっても、なんでかこの密室の中で全裸で気絶して倒れていた秘書なんでは?」
 
 驚愕する一同。で、よく調べてみると本当に犯人はこいつだったのです。
 (完)

 「ふーーーーーーん・・・・・・」
 「どうです?言い忘れましたが、この密室からは凶器とおぼしき銃が発見されない。全裸で倒れている秘書には当然隠すポケットがない。では、どうやって射殺できたのか?」
 「うーーーん、なんでしょう?わからない・・・・・・」
 「このトリックも手作り感満載で好感が持てるんですが、証拠を探す最後の下り、シンプルな心理試験もいい感じなんですよ。
 ・・・どうです、読んでみます?」
 「あたし、テレビの方が」
 「ギャッフン・・・!!!」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年1月14日 (土)

戸川純+Vampillia『わたしが鳴こうホトトギス』 ('16、VirginBabylonRecords)

 妻が化石を掘りに行ってなかなか帰ってこない。その隙にこの文章を書いている私は何者だろう。不甲斐ない夫ではないのか。一体こんなことって。深夜にわれわれ夫婦に何が起こっているのか。事態は既によくわからないのだった。

 戸川純に関して思い出す幾つかのことは、断片的な映像の記憶だ。例えばそれは、『夜ヒット』で観た、機械の腕をつけている「レーダーマン」の有名なステージだったり、たけしに徹底的ないじめを受けている(マジ蹴られたりしてた)『刑事ヨロシク』の清掃員姿だったりもする。
 あと、あの、ウォシュレットのCMね。あれを初めて見たころ、こんなに普及するなんて思いもしなかった。
 世間は意外とケツを洗うことに熱心であった。
 それが歴史というものだろう。

 歌手活動35周年記念として出た『わたしが鳴こうホトトギス』は、新曲1曲に旧作のリメイク9曲をプラスしたアルバムだ。
 戸川名義での新曲は12年振りだというから、まぁ全編新曲で揃えるのは最初から無理に決まってたのだろうが、それにしてもこの新曲は出来がよい。これをメインにするのを決めてから、全体の選曲をしたのだろうな。キャリアの中でも代表的な、押し出しのいいナンバーをずらり並べておいて、最終的に新曲ですべて持っていくという。ある種作戦勝ちみたいな。そりゃ「赤い戦車」で始められると、ねぇー。
 それでもね、『Men’s Junan』とか声色変化の際立ったやつだと、現在の戸川さんの声が大山のぶ代に聴こえる瞬間があったりしてヒヤリとしたりはするんだけど。でさ、次のドラえもんは戸川さんにお願いできないかな~、とか。これがまた意外と似合うし、黒いテイストも出てきて、現在の甘すぎて気持ち悪いお菓子みたいなカラーを完璧に払拭できるのに。その方が余程F氏の真実に近いってのにね。でも、本人に話したら、本気でキレられて100%断られるだろうなー。その場面がもう浮かびますもん。こりゃ妄想ですね。
 スターの存在意義って妄想の対象ですもん。
 これはね(と話を戻す)、声色が変化してるってのは、時間が経過しているってことの証しなんですよ。歌ってる人も聴いてきたわれわれも、気がつけばいつの間にか随分遠いところまで旅して来てる。もちろん中味は結局、ぜんぜん変わってないんだよ。でも、いろいろと、ホラ、そこに纏わるアレやらコレがね。劣化もしてます。風化してます。機敏じゃない。全盛期のスタイルをいつまでも演じ切るにはやはり無理がある。誰だってそう。
 ところがね。そういう無理が、タイトルチューンの新曲には奇跡的にないんですよ。獲れたての果実みたいにみずみずしい。嘘くさい表現けど、本当。
 ゲルニカの時代からして、レトロだ懐古だ、後ろ向き過ぎだとか、さまざま勝手に言われ捲りましたけど、歌ってる純ちゃん自身の資質からして、もともとそういう人だったんだね。三つ子の魂百まで。変わらない。本人がニュートラルに才能を出力すると、必然的にこういう結果に辿り着くという。
 
 人は変わらないが、時間だけは経過する。
 そういうことを考えながら、私は深夜妻の帰りを待った。バケツいっぱいに掘り出した化石を持って、彼女が笑いながら帰ってくるのを。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年1月 8日 (日)

白木まり奈『犬神屋敷』('16、ひばり書房)

 正月明けだというのに、深夜勤務をあてがわれた怪奇探偵スズキくんは巨大削岩機を廻し続けていた。直径5メートルものドリルをグリグリ回転させて地下をえんえん掘り進むという、単純極まりなくも、確実に神経をやられる種類のお仕事である。

 「・・・やれやれ、こりゃもう、2017年も初っぱなから確実な不遇が予想される展開でありますが~。しかし。
 何はともあれ、読者皆さん、明けおめであります~~~!!!」

 おめ~、おめ~という大声が暗闇に反響して消えていった。あとにはドリルの爆音ばかり。
 地下坑道には、他に誰の姿も見えない。
 ポツン、ポツンと点る安全灯の黄色い光がかえって物寂しさを煽り立てる感じだ。影の部分、光の届かぬ闇は真っ黒に塗り潰され、いっそう深い。

 「・・・孤独だな・・・・・・」
 耳元でボソッと声がした。
 「・・・ノー・フューチャー、絶望一直線。もう全然ダメって感じだな・・・・・・」

 さすがに連載長いだけあってこの展開を完全に読み切っていたスズキくん、少しも慌てず、削岩機を停止。闇に隠された坑道の端々へ鋭い視線を走らせながら、威嚇に出た。
 
 「フン、今年も性懲りもなく出ましたね、おやじ?
 ここはひとつ、ボクの手裏剣に縫い止められる前に、さっさと姿を現したらどうですか・・・?」

 古本屋のおやじは、フフンと鼻先で笑うや探照灯の明りの中に歩み出た。
 安全第一につきヘルメットを着用しているのは良しとして、片手にダランと斧をぶら下げているのは、さすがにいかがなものかと思われる。
 その斧には、誰のものかわからない血糊が付着していた。

 「フフフフフ、イヒヒヒヒ、ふはッふはッ、アはははははは・・・・・・!!」
 狂ったような哄笑には、正気と狂気の階梯を踏み外した者に特有の嫌な響きがあった。
 「正月からダラダラ、こたつにみかん、こたつにみかんと同じ動きを繰り返しておったら、遂にキレたかみさんから、こいつを投げつけられたわ・・・!」
 真っ赤な血に染まった斧を高くかざす。そういえば、おやじの額がちょっと切れてるようだ。
 「もう、わしには恐れるものなどない!神などなんぼのもんじゃい!
 今年こそ日本の路線バス全線乗り継ぎ旅を完了してくれる。そして、世紀末覇者として、小池百合子と堂々百合りますよ!
 ゆりり~~~ん!!!」(『1986年のマリリン』のメロディで)

 スズキくん、少々慌てて、
 「いや、だから有名人とか実名出しちゃダメなんですよ。余計な面倒多いんだから。
 チェインソー持って宅配業者脅しにいった(自称)ユーチューバー事件を知らんのですか。日本の知能指数はもう急速に下がってますよ、恐ろしいくらい」

 「そんな傾向に歯止めをかけるべく、白木まり奈の新刊が出たぞ。これはもう事件だ。さっそく嫁。じゃない、読め!」
 スズキくん、再びちっとも騒がず、
 「ええ、もちろんボクが今地下を掘っているのは、決して生活費捻出のためばかりでなく、小池都政に対する暗黙のプロテスタントといっていい訳ですが。
 ・・・って、え?なんで、いまさら2016年にまり奈の新刊が・・・???
 しかも、ひばりのロゴ、装丁で・・・???」


【あらすじ】


 50年前に廃村と化した村に、そろって乗り込んだバカマンガ家とふたりのこども。安く行けるリゾートなんぞ他にたくさんありそうなもんだが、敢えて過疎すぎる呪われた物件にホームステイ。さすがセンスあるなぁー。
 並ぶ廃屋群の中でも、いちばん住んではいけないと北九州の狂ったヤンキーでも楽勝で指摘できるであろう、村を見下ろす不吉な屋敷(これが当然タイトルチューンの犬神屋敷)に住み込んだ親子は、案の定、連続して幽霊に遭遇。それも全身血塗れで、脳天に斧をブッ込んだ派手な姿で、絶叫しながら屋敷内を練り歩くというハードコア・スタイル。
 「おとうさん、もういやよ!こんな村、さっさと撤収しましょう!」
 ベタ墨のハイコントラストで、必死に訴える小学生の娘に対し、父親は、
 「幽霊は怨みのある人のところに出るはずなのに、なぜわしらの前に姿を現すのか。これは絶対なんかあるぞ!!」
 と、誤った方向にヒートアップ。
 「わしの友人に心霊にくわしい男がいるから、来てもらおう・・・!」
 これでは全然回答になっていない。ほとほと、あきれかえる娘。
 しかも、そいつは結局来なかった。
                         (完)

 「エ・・・・・・なんですか、コレ?」
 茫然として読み終えたスズキくん、本をパタリ置くと呟いた。
 「ま、要するに諸般の事情により未発表に終わってしまったまり奈先生の長編まるまる一冊が、今回初めて出版された、という記念すべき事態なワケだが・・・」
 おやじはニタリ笑う。
 「コレ、内容は確かにアレだけどさ、別に出来が悪いって程のこともなくて、安心のひばりクオリティーでしょ。ギャラで揉めたってことか知らんけど、作品としては白背でもヒットでも余裕で出せるレベルだよ。水準以上。かえってまり奈先生の作家性の確かさが浮き彫りになってると思う。
 具体的には、屍蝋の入った井戸水に対する的確なフォロー。見事だ」
 「たしかに読んで損は全然ない出来栄えですけど・・・・・・」
 スズキくんは唇を尖らせる。
 「現在、これを敢えてひばりロゴで出す意義ってなんなんですかね?ノスタルジィ?好き者達が夢のあと・・・?」

 「わからんのかね?」
 おやじは確信をもって断言した。
 「すべてのマンガはひばりを指向すべし、という明確なマニュフェストだよ。何が飛び出すかわからないおばけ屋敷。誰が得するのかわからない残虐展開、エスカレーション。こじつけ。悪意ある無理難題。いい加減極まる(毎度の)ご都合主義。
 まだまだ、こうした素晴らしい作品は、出版の機会を偶然逃したまま、歴史の闇にたくさん眠っているのかも知れん。具体的には、引出しに仕舞ったまま忘れたとか、上にマットレスを敷いちゃったとか。
 この本の売り上げがよければ、そうした作品に復刻のスポットがあたるチャンスも出てくるだろうし、そんなどうでもいい作品の集積の中に、実は本当の未来への扉を開く鍵が隠されているかも。
 もう、なんたら賞だの、なんたら大賞には心底飽き飽きだ!死ね!死んじまえ!選ぶ奴も、選ばれる奴も、読んでるそこのお前も。全員、共犯じゃねぇか。
 だから、キミも『進撃』だの『ワンピ』だの、毎週ジャンプを読み続ける惰性行為はいい加減辞めにして、自由なマンガの大地に羽ばたいてみてはどうか、という有難いお誘いなのだよ・・・!」

 斧がビュッと闇に飛んだ。
 髪の毛ひとすじ、スズキくんの傍らをかすめて岩に突き刺さる。ガキッと鋭い音がし、火花が散った。
 「怪奇の未来はこれからだ。わしに附いてくるがいい・・・!!」

 「イヤです」
 スズキくんは削岩機のスイッチを入れて仕事を再開しだした。ガガガガガ。
 「怪奇じゃ喰えないんだ、そんなこと、あんたも充分知り尽くした筈じゃないですか。これ以上、自己欺瞞を繰り返すのは辞めにしたらいかがですか・・・?」
 
 おやじはそれでもニヤニヤ笑いをやめない。
 「それじゃキミは、なんでいまだに怪奇探偵を名乗っているんだね。深夜労働者スズキくんでも、凡人サボーガーでもなんでもいい筈じゃないか。
 それは、いまだにキミが怪奇を好きで好きでたまらなくて、毎晩赤い夢を見て暮らす赤い部屋の住人だからじゃないのかね・・・?」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月22日 (土)

ひらのりょう『FANTASTIC WORLD』('16、リイド社)

 素晴らしい。ビューティフルだ。想像力の地平が拡張されていく感覚を味わえる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月15日 (土)

有森麗『花汁の舐め方』('93、マドンナメイト・ハード マドンナ社)

 これは難解な本だ。
 まず題名の読み方からして不可解である。かじゅう?はなじる?・・・え、鼻汁?
 勝手に出版社側の意図を汲むなら、「あのさ、花の蜜とかって表現あるじゃない?あれにならって、独自に命名してみたんだよねー、ラブジュース。和訳して毎回愛液、愛液じゃあさ、正直紙面が持たねぇんだよ!クリが花芯なら、溢れ出るのは花汁だろーがよ!100%果汁とかも連想させて売れ行きアップ!読者諸賢のムスコも仰角度アップだ!」
 なるほど。
 しかし、オリジナリティーを追求するあまり、読み方が別種類の体液とかぶっていることに気付けなかったのは編集会議の致命的な失策といえよう。私の頭の中では、中学時代に目撃した、青ッ洟をすするというか喰っていたジャリっ禿げのクラストメートを捉えた衝撃映像がフラッシュバックし轟沈。いや、轟チン。

 マドンナ社の刊行タイトルはこうした、いずれも「史上最強の土方センス」とでも形容すべき、昭和臭濃い品性下劣さに溢れていてかく凄まじいのであるが、その濃厚一辺倒、ハードコアすぎるアチチュードには往々にして意図せざるマヌケさが忍び込むようで感慨深い。
 宇佐美奈々の本の題名は、『巨乳なぶり』である。「嬲り」を読めない子が増えている文化状況に憂慮した結果、そこに刺身が紛れ込んでしまった。
 あるいは『館淳一の黒い巨尻』の存在をどう解釈すればいいのか。フランス書院でもお馴染みのベテランポルノ作家・館先生自身がお持ちの巨大な尻を、そこに一面びっしりと生えているであろう黒々したケツ毛のジャングルをいやがうえにも連想させるではないか。いやいや、館先生本人のことはまったく存じ上げないのですが。勝手に決めつけてる。
 しかし以下に挙げるタイトルは歴然と意味不明であり、トマソンの如く俗人の理解をきっぱりと拒む。
 早紀麻未『姦す いたぶられた密室』。

 ところで、有森麗というソープ嬢あがりのAV女優が主演するこの本(文庫版写真集)には、明確なストーリーが存在する。
 なんでって、その理由は後ほど述べるとして、まずは素晴らしすぎるその物語世界をご紹介しておこう。

【あらすじ】

第一章、店長の熱い舌先にあえぐ閉店後の下半身セクハラ
 
有森麗はウェイトレス。ウェイトレスといえばミニスカ。ミニスカでないウェイトレスなどウェイトレスではない。制服はピンクのサテン生地を大胆にカットし、激烈に安い夜のエロスを醸し出す。
 プロの職業ウェイトレスである有森は、前職・岐阜県金津園のソープランド勤務を辞め、現在はここ新宿歌舞伎町に来ている。店は無認可風俗店であるが、喫茶は喫茶だ。飲んで、かつ豪放に出せる喫茶店。なんか「オッシャレ~」で、話のわかる感じである。
 この店では、客はすべからく“店長”と呼ばれる。メイドカフェを訪れる者が“ご主人様“と呼ばれるのと同じ理屈である。(混雑時、店内は“店長”でいっぱいになる。)
 “店長”は店内で意のままに振る舞うことができる。サボって酒飲むもよし、床一面に張られた鏡を使ってウェイトレスのスカートの中味をじっくり覗き込むことができる。あるいは彼女を脚立に登らせて、キャビネット最上段に格納されている、ハウスワインのボトルを取らせることだって可能だ。
 いずれにせよ重要なのは、普段は衣服によって外気から遮断されている、彼女自身の秘密の部分を見てやることにある。かなり特殊な規律により、店内のウェイトレスは全員、パンティー着用を許されていないので、スカートの下では毛まんこがすっかりまる出しだってことだ。

 客が入ってきた。
 「コーヒーをひとつ」
 競馬新聞を片手にソファに座る。はげ上がった額に汗の玉。真っ白いフロアに白いアームチェア、テーブルまで白。室内は気の狂いそうな清潔感に溢れている。
 「おかえりなさいませ、店長。ミルクとお砂糖はいかがいたしましょうか」
 「砂糖はいらない。ミルク、濃いめで」
 「承知しましたー」
 彼女は既におしぼり片手に定位置にスタンバイしている。
 「しっかしクソ暑いねぇー。店の景気はどうなの?」
 「そうねぇー・・・ぼちぼちですよ」
 ローションを垂らし、しごき始めると店長自身は経済不況を吹っ飛ばす勢いで勃ちあがった。
 「んー。いいなぁー。絶好調。じゃ、手始めになにか淫語しゃべってみてちょ!」
 「はぁ。では、一丁失礼しまして。おまんこおまんこ、おいんごぼいんご」
 「もっと、でかい声で!」
 「いんぐりもんぐり、ふぐりのむすこ」
 「あー・・・・・・・んー、いいなぁー・・・本当素晴らしき・・・この世界・・・きみといつまでも、僕の妹ならば愛一筋に・・・」
 店長は目を閉じて恍惚の世界にジャックインしている。
 「どうですか。地上で一番気持ちいいですか?」
 「うん、地上で一番気持ちいいですよ。ときに、地上で一番速い動物はチーターだっけ?」
 「はい、チーターですね。さすがの切れ味シャープですね。
 ・・・ん~、キレテナ~イ!
 では、そろそろ、砂利まぜますよ」
 「ハイ、ワカリマシタ」
 赤くささくれた工事用砂利土が混入されると、店長の性感はいっそう高まるようだ。ロープが引かれ、やがて杭打ち工事が始まると、店長の口からは苦痛とも快感ともつかぬうめき声が流れ出すのだった。
 「うぎゃー、うげがー、もけもけぴょ!け、ぴょ!け、ぴょぴょら!ぱー」
 と、みるみるその場には官民問わぬおそるべき最新鋭技術を惜しげもなく投入し超高層建築物が建てられていったのであるが、語るに落ちるその技術的詳細は第二章に譲ることにしようではないか。ってまだ読みたいかこの文章。

 第二章、建築現場に散った恥辱の赤い花びら

 場面変わって、どこぞの建築現場に現れた有森の出で立ちは、頭に原色赤のバンダナ、白のTシャツにネックレスをジャラジャラぶら下げ、ジーンズ生地のホットパンツから太腿突き出し、スポーティヴな通行人を装っている。ロスト原宿系?みたいな。そんな言葉はないか。足元はNロゴの輝くスニーカーで、昨今はみなさん履いてる。
 「あたいは、けっこうハンパないよ!」
 そのセリフからして既に限りないハンパ感が滲み出すが、本人はやる気まんまんなのでまったく気づいていない。自己申告に潜む罠。悲劇は往々にしてこういうところに起因するものだ。
 凶悪にメンチ切って、ツバ垂らしながら歩いてくると、資材置き場の物陰から飛び出してきたのは、黒いつなぎに黒覆面を被った暴漢(それを証拠に、覆面の額に「暴力」と書いてある)。
 「おう、おみゃーさん、コッチ来いやー!!!」
 「わきゃー、なにするんぎゃー!!!」

 尾張か。尾張名古屋は恋の街、などと馬鹿げた歌を口ずさみつつ、有森を羽交い絞めにする覆面男。口は大きな毛むくじゃらの手でしっかり塞がれてピンチ。
 そして、そのまま連れ込まれていった先には、白昼に潜む暗闇が深々と口をあけているのであった。・・・って、まぁ、単に人けのない建築現場ですが。ここでじっくり脱がされ嬲られナブラチュロワ。で最終的にはレイプされるという、まことブリジャール※註1.にけしからんお話で。
 ※註1.マコトブリジャールはJRA所属の競走馬。最近調子いい。次走はエリ女だってよ。
 どう見ても建築施工中の木造民家にしか見えない、壁はまだ吹き抜けの一室で、さっそくぺろんと上衣を捲られて、乳房を剥き出しにされる有森。
 ここでご注目なのは、日付変更線の如く、白と黒とに水着の跡をくっきり浮かび上がらせた褐色の肢体ではなくて、小ぶりな乳房に屹立する、意外とピンクで固く尖った乳首でもなく、苦悶に歪んだ美しい眉間の皺でもなけりゃ、短パンジーンズの裾からはみ出す健康的に締まった太腿でもないのである。
  ポイントは、赤い花びらだ。
 われわれは目を凝らすのだが、それはなんと画面のどこにも映っていない(!)。見どころのない観光名所。「そんなバカな」と絶句するツアー客一同。なんだか詐欺の匂いがする。それでも平気で物語は進行していく。
 白昼、青空をバックに暴力的要素のない牧歌的レイプ。そんなものは童貞か、アルプスの少女ハイジの性的妄想だろうに、蹴りもパンチも飛ばなきゃ唇も切れない、そりゃもう、のんびりとした双方合意の上での性行為が繰り広げられる。(なにせ床にはタオルが敷いてある。)
 一応、ショットとして苦悶の表情はある。涙とかは・・・あれ、あったかな?・・・たぶんない(見直ししない)。要は、「内容は和姦だが、演出は強姦」という珍事の発生だ。いまだったら放送事故ですね。

 「あ・・・あんた、いったい何者よ・・・?!」
 熱い肉棒に内壁を抉られながら、息を弾ませ、有森が尋ねる。
 覆面の下の表情は窺うよしもないが、暴漢はひたすら無言で機械的に腰をつかってくる。
 「ど・・・ど、どういうことよ?!
 ・・・うッ、ぐッ・・・はァァ・・・キモチいいじゃないの・・・はびば、のん、のん」

 暴漢は重々しく口を開いた。
 「・・・ウルセエナ、静かにシロ」
 乱暴に有森を裏返すと、若々しく弾力性に富んだ尻をひっぱたき、背面から貫いた。
 「ぎゃっ!!」
 「オウ、オウ、これはタマランデス。フェルナンデス」

 抽送のピッチが上がったようだ。
 激しく肉棒に突かれながら、有森は目の前の建築資材を這う蟻を見ている。アリさん、アリさん、どこ行くの。アリさんマークの引っ越し社。アリよ、さらば。WHY、なぜに。
 「あッ、あッ、いい、いい、いいヤザワ!!」
 では悪いヤザワはあったのか。
 執拗に舐められ、たっぷり唾液を塗り込まれ、愛撫に意図せざる膣分泌液(つまりは花汁)を溢れさせ、充分潤いきった有森のアソコは、ぴっちゃらぺっちゃら、水木しげる描く妖怪が全力疾走しているが如き、湿った音をたてている。
 思い切り怒張した極太のペニスは、蘚苔色に濡れ染まった肉の内壁に幾度も没入を繰り返し、徐々に、そうジョジョに頂点へと導かれていく。これ以上は危険だ。弾けそうだ。
 暴漢は襲い来る快感に思わぬ弱音を吐いた。
 「ごほほほ、ホンマ、もう・・・カンニンどすぇぇぇぇぇーーー!!」
 「なんで京都弁?実は関西人なの・・・?
 ・・・あぁ、神様、なんで下劣な関西人ごときのチンポがこんなにイイの?!
 あぁ、イイ!イイ!イイ・・・!!
 
イー・アール・カンフー!!!!」

 さんさんと光差し込むサンルーム。睦み合うふたつの影は、設置前の羽目板にくっきり焼き付けられ、淫美なダンスを踊り続けていた。
                 (完) 

 さて、われわれはもう一度、「人間はなぜ物語を必要とするのか」という問題を考えてみなくてはなるまい。
 現代はネットの時代だ。アクセスして検索さえすれば、お好みの動画に行き着くことができる。あなたのちょっと社会的に問題のある趣味でもお構いなしだ。そこにあるのは、かつて映像メディアが展開してきたさまざまな表現形態の集積である。旧来通りのフル動画だって勿論あるが、たいていは断片だ。プロモ素材やサイト勧誘のツールとして、溢れかえるほどのおまんこを目にすることができる。
 断片化された情報は連続して摂取するに都合がいい。
 それはつまり、「ゴーイング・トゥ・カリフォルニア」を飛ばして「天国への階段」を聴く行為だ。そして、「パラノイド」でもなんでもいい、どこまで行っても「天国への階段」は続くのだ。YouTubeをうっかり検索して眠れなくなった体験は誰にもあると思うが、あれはつまり、そういう悪夢の迷宮だったのだ。ま、飽きたら寝ればいいワケですけど。一度は止まんなくなりますよね、「今夜はドント・ストップ」。
 ところで、どんな性行為にも煩雑な手続きがある。そこをスッ飛ばしていきなりハメてる局部のアップから始めりゃ、そりゃ盛り上がりますよ。全編サビですよ。で、知ってる人は知ってるんですけど、全編サビって飽きるんですよ。エロを見続けてウン十年、私の出した見解ですが、どうも人間は興奮するのに無駄な細部を必要とするらしい。
 
 ということで、この本は(予算の都合もありますが)単なる性行為のブツ切り集ではなく、ワンテーマに添って掘り下げるという、版元マドンナ社の姿勢の変化を記録したものになっているであります。「マドンナメイト・ハード」とは、そういうこった。
 それがいいのか悪いのか、そこは諸君の腹の空き具合ってことで、以下次号シクヨロ。                  

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年8月 3日 (水)

ジャック・ヴァンス『宇宙探偵マグナス・リドルフ』 ('16、国書刊行会)

 「なんで今更ヴァンス?」って疑問に思う方に、どうぞ幸あれ。誰もが七面倒くさい理屈を求められる、心底不快な世の中に対して、この本が提供するのは昔ながらのひとときの娯楽、つかの間の慰みに過ぎない。だが、そこに文句言うのも立派な大人の態度としてどうかと思います。客なら何を言っても許されるのか。そんな訳ねぇだろ。そういうやつは積極的に大嫌いだ。この古典的アナログ感にもっと敬意を払え。具体的にはいくらかの金を、ね。万事本を読むってのはそういうこった。
 宇宙を彷徨う、万能よろずごと解決人マグナス・リドルフは、時折街で飲み屋で見かける、仕事は何やってんだか全然わからないが毎日ブラブラしてる挙動不審な怪しいおやじに酷似。
 時代は適当に未来で、適当に宇宙の片隅で、早い話がこれがアメリカそのものなんですよ。説明飛びすぎて全然意味わかんないと思いますけど。ヴァンスの独特な倫理観、というかアウトロー感覚が結実した、公衆秩序に無関心な大宇宙のお騒がせ男が見事に異常トラブルを解決!あるいは解決しないでそのまま放置!基本姿勢は、だいたいが放置!そして勝手に豪華銀河客船で立ち去るケースが多いという、どれもこれも宇宙冒険活劇に分類するのもどうかと思われるような中途半端な話ばかりで素晴らしい。
 なんかオチでもっと笑わせて欲しい気はしますけど、結末の中途半端さもまたヴァンス。

【あらすじ】
 第一話、ココドの戦士
  宇宙のかなた、巨大アリさんばかりが棲息する謎の惑星では、蟻塚同士を戦わせるボッタクリ極悪ギャンブルが横行。宇宙人権無視の疑いがあると睨んだ汎宇宙人権協会が非合法トラブル解決人マグナス・リドルフに解決を依頼。単身潜入したリドルフが突き止めた影の黒幕、元締2名は、彼自身がかつてなけなしの老後貯金をボッタクられた“おっさん助けて”詐欺の常習犯だった!
 復讐に燃えるおやじの血潮が真っ赤に滾る、そこに機関銃乱射などのセガール的要素を持ち込まない、勝手に設定されたジェントル・ルールがやたら眩しい。パンチラおやじ。
 
 第二話、禁断のマッキンナ
  マッキンナって誰だ?マッキントッシュの男に訊いてもアンガス・マッキーに訊いてもわからない。闇のシンジケートを仕切る正体不明の覆面ボス、「その化けの皮は俺が暴く!」と意気込んで乗り込んでいった諜報部員たちは次々殺された。原因不明の謎の腹イタで。正体不明の病原菌が彼らを死に追いやったのだ。そんな器用なマネができるのって一体誰なの?謎だらけのこの事件、どんだけ正体不明の連続なのか。
 泥の惑星テラコッタ・パンナコッタに降り立ったマグナス・リドルフは単身危険な捜査を始める。って、実態は、昼間っから酒飲みながらあちこちぶらぶらしてるだけですが。容疑者はどうやらこの惑星の有力者たちの中にいるらしい。しかしこの貧乏惑星では、有力者といえるのは、すべて市役所勤務県庁の地方公務員ぐらい。わずかな手掛かりを繋ぎ合わせ、ズバリ犯人を特定。容疑者を全員一室に集めて得意げに推理を披露するマグナスを襲うのは、自暴自棄になった犯人の放つ、世にも危険な毒ゲロの洪水!
 「なにくそ、マッケンローには負っけんろー!」

 全身ゲロまみれになり半死半生のマグナスだったが、しっかり一張羅のクリーニング代だけはせびり取った。
 
 ・・・とこんな、読んでどうするって話が10本も入ってお買い得。ガジェットが古臭い、50年代風味がうんぬん抜かすクソ野郎がいますが、無視して結構。この本の値打ちはそういうとこにはないんだよ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

«赤瀬川原平「お座敷」 ('15、河出書房新社『赤瀬川原平漫画大全』収録)