2019年5月29日 (水)

お詫び

申し訳ありません・・・。
昨年末から決まっていたことですが、勤務先の移転準備などがいよいよ本格化し、慌ただしい中でブログに向かう時間が無くなってしまいました。
無念ですがツアー初日・東京国際フォーラム公演のレポはいったん据え置き、なんとか次回参加の守山公演のレポと併せる形で書ければ、と考えています。
それもどうなるか分かりませんが・・・。

とにかく今回のツアーはセットリスト的にも演奏的にも書きたいことが山積みになっています。ただ今は休める時はひたすら休んで体調管理に努めるつもりです。
無理をして身体までおかしくしては元も子もありませんからね・・・実際先週は熱出しちゃったし(←いや、これはただの風邪です)。

この多忙な状況はこの先ずっと続くわけではなく、冬には落ち着くと思います。またバリバリ書ける日々を楽しみに、精進しつつ体力温存させて頂きます。
みなさまもどうぞご自愛ください。

DYNAMITE 拝

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2019年5月13日 (月)

沢田研二 「そっとくちづけを」

on 2019.5.9  東京国際フォーラムA


少し前から、自分のブログではジュリーLIVEのMCについてこと細かに書くことは控える、と決めていたのですが・・・今回の『SHOUT!』ツアー初日、東京国際フォーラム公演での最初のMCのことは、さすがに書かずにはいられません。

レポ本編にとりかかるのはもう少し先になりそうなので、ひとまずセトリ7曲目「そっとくちづけを」のお題にて単独の短い記事をupさせて頂きます。



その時・・・先月天国へと旅立ったショーケンへの思いを赤裸々に、涙を浮かべ吐露するジュリーがいました。

「昔のこと(GS~PYG時代)があるとは言え、ショーケンと言えばジュリー、なんて並べられるアイツがかわいそうだ。そういう報道に、だんだん腹が立ってきてね・・・」

「オイラなんて、ショーケンの足下にも及ばない!」

激しい感情を隠そうともしないジュリー。
今回ジュリーがここまでハッキリとショーケンへの思いを口にしたことを、「意外」と感じたファンも多かったと聞きます。
そてほど長きに渡って、ジュリーとショーケンには現実の接点が無いようにファンには思えていたのかな。

僕は幸いにも(と言うと変なのですが)いつも仲良くしてくださるタイガース・デビュー以来のジュリー道の先輩から、この10年に渡り機会あるごとに「ジュリーがどれほどショーケンのことを好きか」叩き込まれてきました。
そして先月末、ショーケンの旅立ち後にお会いし改めて濃密なお話も伺って、いざ迎えたこのツアー初日。
「ジュリー、やっぱりそうなんだね・・・」と思いながら、僕はジュリーの話を受け止めることができたのでした。

最初の2曲を歌い終えたジュリーのMC。始めは
「色々な人が亡くなられている中で、自分はまだ生かされている」
という話をしていました。
「長生きすることがそんなに良いこととは思わないけど」と言いつつも、生かされているからにはやらなきゃいけない(歌っていきたい)との力強い意思表示。
しかしその後、おもむろに「ただ、ショーケン(の訃報)は、堪えた・・・さすがに堪えた・・・」と、振り絞るような口調でショーケンのことを話し始めたのです。

僕にジュリーのショーケン愛を伝授してくださった先輩は、ショーケンのカッコ良さ、セクシーな魅力に加えて「可愛らしさ」「愛嬌」を常々仰っています。
後追いファンの僕などは、写真集『JULIE IN AEGEAN』や、『女学生の友』の切り抜き記事でジュリーとショーケンのツーショットを見ていると、年齢とは逆に「ショーケンがワイルドな兄貴で、ジュリーがキュートな弟キャラ」のように感じていました。でもジュリーと同い年の先輩はごく自然にジュリー目線になれるのでしょうか・・・年齢通りの「ちょっと大人びたジュリー兄貴と、ヤンチャな弟ショーケン」が見えていたのかもしれません。

その先輩の言う「可愛らしさ」はもしかすると「不器用なまでに純な性格」と同義なのかもしれない、と僕はジュリーのMCを聞きながら考えました。

確かにジュリーとショーケンは世間的にはGS時代からの最高のライバルであり同志、盟友です(2人を並べてしまってごめんなさい、ジュリー)。
でも・・・この日、自分のことを「オイラ」と言い、ショーケンのことを「アイツ」と呼んだジュリーの様子は、弟に先立たれてしまった兄貴の深い悲しみであり慟哭でした。
ジュリーはこう言ったんです。

「オイラもさ、人生を器用に生きられるほうじゃあないけど、アイツはもっと器用じゃなかったな・・・」

不器用な生き方で、世間から誤解を受けることもあったであろうショーケン。
ジュリーにもそういうことがあったでしょう。
でもそんなショーケンでありジュリーだからこそ、兄弟のように慕っている親友と互いの矜持を根底で分かり合えていさえすれば、世間にはどう思われたっていいんだ、と考えるのではないでしょうか。

ジュリーはステージから
「オイラはアイツのことが大好きだ!」
と涙ながらに叫びました。
そのすぐ後には宙を見上げ、震える声で
「見守っててくれよな?」
とも。
ヤンチャな弟ショーケンは、高いところで「うんうん」と頷いている・・・僕らはそう思うしかありません。

会場全員で、3秒間の黙祷。

ジュリーは気をとり直したように、「それでは、いつものように!」とギアを入れて、3曲目「a・b・c...i love you」、4曲目「勝手にしやがれ」、5曲目「ス・ト・リ・ッ・パ・-」とゴキゲンなナンバーを歌っていきました。
「いつもの感じのLIVEになったな」と思ったのもつかの間、空気がガラリと変わったのが6曲目「探偵~哀しきチェイサー」。後でレポ本文に詳しく書こうと思いますが、ジュリーファンならばこれが裕也さんに捧げた選曲と分かります。
圧巻、入魂のヴォーカル。しかし続く7曲目「そっとくちづけを」は、さらに凄かった・・・。
これまで生で体感してきたジュリーLIVEの中でも圧倒的な歌声、そう感じたのは僕だけではないはずです。

神様 お願い あの人を返してよ
Cm        A♭      Fm7   B♭7  E♭

僕は過去に「そっとくちづけを」を数回生のLIVEで聴いたことがありますし、その度にジュリーの素晴らしい歌、込められた思いに感動させられてきました。
でもこの日の「そっとくちづけを」はこれまでとは全然違って聴こえ、比べようもないほど打ちのめされました。

そもそも、僕は今まで一度だってこの歌の冒頭の歌詞部「神様お願い」からテンプターズの大ヒット曲のタイトルを連想したことなど無かったのです。
それが、歌い出しから既に「ショーケンに向けて歌ってるんだ」と分かる・・・ジュリーはやはり凄い歌手です。
最後の「言葉だけでなく 君を忘れない」の箇所では、何か人智を超えたエネルギーがジュリーの全身に降りてきているような気がしました。

セトリのインパクト重視の僕は元々「ツアー初日は絶対行きたい派」なのですが、今回ほど「初日に行けて良かった」と思ったツアーはありません。
この日のジュリーは本当にそのくらい神がかっていて、個人的にそれは「そっとくちづけを」の歌声に集約されていた、と断言できます。
だって次の8曲目「お前は魔法使い」って、僕にとってはどう考えても「狂喜乱舞の初体感ダイブ曲」のはず。なのに、ジュリーが歌い出してちょっとくらいまで、一転して明るくなった場内の照明から隠れるようにして、僕は必死に洟をかんでいましたから。
涙ばかりか鼻水が止まらなくなるほどの「そっとくちづけを」・・・ふざけて書いているんじゃなくて実際にそうだったんです。そしてどうしても、こうして書き残しておきたくなったのです。

ショーケンよ永遠に。安らかに。
一生、忘れまいと誓います。


ということで、先にこの曲の記事だけ単独で上げてしまいました。
もちろん他の曲も素晴らしかったですし、近年では最強とも言えるセットリスト構成・・・なんとか5月いっぱいにはレポ本編を書き終えたいところです。
頑張りたいと思います。

大阪フェス2days、その後の各会場に参加のみなさまのご感想も、引き続きお待ちしています!

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2019年5月 8日 (水)

『SHOUT!』開幕

今年は嬉しいことに、例年より早くジュリーの全国ツアーが始まりますね(これから毎年こんな感じのスケジュールになるのかな?)。
全国ツアー『SHOUT!』、いよいよ明日開幕です!

古稀ツアーが終わってからは、この日を楽しみに色々と頑張ってきたような感じです。
ただ、気を抜けない慌ただしい日常の中、僕が今回セットリスト予想として本館で記事を書けたのはPYGの「やすらぎを求めて」1曲のみでした。
書くには書いたけど、う~ん、自信なし(汗)。

なので少し他の曲の予想もしておきますと・・・今回は古稀ツアーより「有名シングル曲を増やす」とのジュリーの宣言がありましたし、「時の過ぎゆくままに」は堅いんじゃないですかね~。
古稀ツアーを体感して、柴山さんのギター1本体制に原曲のアレンジによる取捨など無いことが分かりました。「時の過ぎゆくままに」の場合はきっと、リフの間隙を縫って4拍目、1拍目のシンコペでコードを入れてくる演奏スタイルとなるでしょう。

あとは「追憶」「ス・ト・リ・ッ・パ・-」あたりが有力と考えます。「TOKIO」は来年のオリンピック・イヤーにとっておく感じかなぁ。

個人的にまだ未体感のシングルでは、そろそろ「ロンリー・ウルフ」「酒場でDABADA」の降臨に期待するとともに、「きめてやる今夜」をマーク。どちらのヴァージョンとしても僕にとっては激レアです。

シングル以外のレア曲では当然「湯屋さん」を期待するファンが多いことでしょう。2009年の裕也さんとのジョイント『きめてやる今夜』に参加できなかった僕は、実現すればこの曲も初の生体感となります。

やっぱりセットリストのドキドキ感に満ちたツアー初日の雰囲気は毎回格別。本当に楽しみです。
みなさまのビビッドなご感想、お待ちしていますよ~。

今回もside-Bをどうぞよろしくお願い申し上げます。

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2018年9月21日 (金)

2018.8.29和光市民文化センター 沢田研二70YEAR'S LIVE 『OLD GUYS ROCK』セットリスト&完全レポ

大変大変遅くなりました。
古稀ツアーも各地大盛況の様子で進む中、もう当日から3週間が経ってしまい今さら感バリバリですが、8月29日和光市公演のレポをお届けいたします。

それにしても、ジュリーは70歳であんなに元気だというのに、僕の身体の弱さよ・・・。ちょうど和光市の翌々日に発熱、喉と関節の痛みも長引きようやく日常を取り戻したのが先週のこと。仕事は1日も休まなかったのですが(と言うよりちょうど決算前後で休めなかった)、とにかく往生しておりました。
その間執筆作業は進まず・・・レポをお待ち頂いていた数少ないみなさまには申し訳なかったです。

和光市公演の日はジュリーがMCでも語った通り、ハッキリしないお天気で(出かける際にちょっと雨にも降られた)開場を待っている間はとても蒸し暑かったんですけど(1時間前に着いてしまいました)、いざ入場したら一転心地よい熱気。
多くのお客さんはもう今回のギター1本体制にも慣れた後なのか、開演前からジュリーと柴山さんを迎えるべく客席が「あったまってる」感じでした。

で、今ツアーは開演前BGMが「外国語ナンバー特集」じゃないですか。
僕が着席した時はちょうど「キャンディー」が流れていて、そこからアルバム『愛の逃亡者』収録曲がランダムに続いて。あの曲順に何か意味があるのかなぁ。
ジュリー自身が決めた順なのでしょうが、もしかしたら「レコーディングした順」とか?
それとも深い意味は無い?謎です・・・。

僕はこの日(また先輩方にどやされそうですが)ジュリーの息づかいが届いてきそうな大変良いお席に恵まれ、凝りに凝った衣装や、ギターのフォームまでバッチリ見えるという至福の公演となりました。
1着目の衣装は本当に凄いデザインで、カラーボールのような4つの飾りボタン(?)は上から2個目のオレンジ(だったかな)のやつだけ他の3つと比べてひと回り小さく、それがジャケットを実際に止めているようでした。あと、巨大なポケットの存在にも気づくことができました。
席は横位置としては割と端っこの方でしたが音のバランスも良く、やっぱりホールのジュリーLIVEは良いなぁと改めて感じた素晴らしいステージ、初日武道館から進化した部分もあり、記憶を修正できた部分もあり・・・大いに堪能しました。

ということでレポ本編に入るとしましょう。開演!


オープニング「
everyday Joe」(スクリーン上映)

Kitarubeki

この日で確信。これ、ギターのトラックについては間違いなく新規の後録りです。
そして十中八九、ごく最近の柴山さんの演奏だと思います。複音で「じゃ、じゃ、じゃ、じゃ・・・」とクレシェンドするあたりは今年の新譜『OLD GUYS ROCK』とそっくりの手クセ。良い意味で「引き摺る」感覚(ジャストのタイミングからコンマ数秒遅れる)は柴山さん特有の持ち味で、重厚なんです。
こうなると、多くのみなさまが仰るように実際このアレンジで「everyday Joe」をステージ再現して欲しい!
さいたまスーパーリーナ、どうでしょうか、ジュリー?

1曲目「
カサブランカ・ダンディー

Royal

僕は今ツアーの参加が初日の武道館以来でしたから、まずステージ上のジュリーと柴山さん、客席のファン双方が良い意味で「ずいぶん余裕が出てきたな~」という印象をこの冒頭1曲目で持ちました。今思えば初日はステージ、客席ともやっぱり硬かったかな。MCでジュリーが冗談っぽく言った「みなさんに緊張を強いる」感覚は、ツアーが進むに連れて自然に溶けていったようです。
ジュリーはもちろん、柴山さんに余裕が出てきたのは大きい。例えばこの曲の間奏、初日は単音ソロの隙間隙間にブラッシングを入れていたのが、この日は自然なロングトーンで、ジャスト4拍にお客さんの手拍子がビシッと決まるという。

ジュリーはセトリ初っ端ということでまだ喉の調子を探る感じもありますが、近年この曲ではサビの高音に苦労していたのが今回はそんな様子は無くて。
おそらく柴山さんが今ツアー最初の2曲で使用するテレキャスがドロップ・チューニングだからじゃないかな。そう考えれば3曲目での「テレキャスからテレキャスへのチェンジ」も合点がいきます。

2曲目「
彼女はデリケート

Gsiloveyou

さてこの日の僕は上手側ブロック2列目という神席に恵まれました。先の50周年ツアーの席運が尋常ではなかったので今ツアーの良席はあきらめていたところに、この和光市公演だけは「地元席」認定を頂けたのかもしれません。
和光市は前回2013年『Pray』ツアーで本神席(センターブロック最前列)を授かっていますし、席の相性が抜群ですな~。来年以降も開催して欲しい!

で、この席は位置的に前方にせり出してきた柴山さんがちょうど目の前に立ってくれる感じ。「彼女はデリケ-ト」のイントロで早速そんなシーンがあります。
元気良くカッ飛んできた柴山さんですが、ふと見るとジュリーはさほど極端には前に出張っておらず、柴山さんはそれが気になったのでしょうね。なんとあの高速イントロを弾きながらズズズ、と少しずつ駆け足後ずさりしていってジュリーとの横位置を合わせる、という神技を披露(笑)。マイケルのムーンウォークも真っ青のパフォーマンスでした。
柴山さんは「カモン!」のコーラス(と言うかシャウトですね)も結構な声量で、「おぉ、今日は相当充実してるぞ!」と嬉しくなります。

ジュリーの「デリケイ、デリケイ♪」の小動物のような小刻みな動きも至近距離だと「カワイイ」より「カッコイイ」印象です。柴山さんの真ん前席でも、やはりそこはジュリーに視線を持っていかれますね。

3曲目「お前なら」

Julie4

初日の後にセトリCDを作りたっぷり復習。この曲も改めて採譜しました(『沢田研二のすばらしい世界』『沢田研二のすべて』2冊のスコアが手元にあるのですが、採譜の精度が残念なレベルで・・・結局自分でイチから起こすことに)。
この曲は、Aメロのコード進行がそのままジュリーの作った武骨なメロディーとリンクする、という堯之さん渾身のギター・アレンジが肝です。
セーハ・コードで細かく移動させるように採譜しましたが、柴山さんがまったく同じ弾き方だったので感動。決して難易度の高いプレイではありませんが、「こう弾かずばこの曲にはならない」堯之さんの考案力への柴山さんの確かなリスペクトを感じます。使用しているのがテレキャスですしね。

この2本目のテレキャスがたぶんノーマル・チューニング。とすればオリジナル・キーでの再現はジュリーの意地かな。語尾のシャウトは苦しそうに聴こえる瞬間もあるけど、元々「絶唱」することに意義がある曲です。
「歌に賭ける」と道を決めた頃のジュリーの自作曲。
どこかの会場で「ギター1本でやる時のセトリをずいぶん前から考えていた」というジュリーのMCがあったと聞いています。
経験豊富な先輩方からも「初めて聴いた」との声が多い「お前なら」は、正に今ツアーのためにジュリーが用意していた「とっておき」だったのではないでしょうか。

4曲目「
F.A.P.P.

38

和光市ではこの曲から早くもジュリーの声が絶好調モードに。いやぁ魂入ってましたね~。

コード・チェンジが相当忙しい曲ですが、さすがそこは柴山さん自身の作曲、演奏は余裕です。
しかもイントロではソロもしっかり弾く!武道館ではそこまで気づけていませんでした。間奏も自然にソロへと移行し、もう「ギター1本」の違和感はまったく無し。
師匠の先輩も仰っていた「この曲は歌詞に囚われ過ぎてその魅力を見逃している人が多いかもしれない」とのお言葉はまったく同感・・・本当に綿密で、高度でストイックな進行の素晴らしいナンバーです。
と、そんなわけで柴山さんのフォームをガン見していたら、横からずずいと現れたジュリーが柴山さんをすっぽり隠し「かけがえのないたいせつなふるさと♪」と歌いながらガッキと睨みつけてくれましたけど。
神席ならではの僥倖です。

2012年以降の一連の「祈り歌」の中では、ダントツにセトリ入り率が高いですよね。

5曲目「
あなただけでいい

Acollection

今ツアー、みなさまの評判が特に大きい1曲。
何と言ってもジュリーのヴォーカルです。これは初日以降の進化のひとつでしょうが、和光市ではエンディング「ラララ、ララララ~♪」の後の「あぁおっ!」のシャウトで思いっきり身悶えしたジュリーに鳥肌が立ちました。
『ジュリー祭り』以来のセトリ入り、これも偉大な名シングルなのだと再確認。

柴山さんも凄いですよ。しょあ様も書いていらっしゃいましたが、バンドスタイルならば本来ドラムス(ハイハット)が受け持つ3連のリズムまで網羅してます。
かつて志村さんとのコントでジュリーが表現した「あなただけでいい~、ちゃかちゃかちゃか♪」の「ちゃかちゃかちゃか♪」を柴山さんが再現してくれるわけです。
そうそう、これは柴山さん近くの良席でないと気づけないと思いますが、演奏直前に柴山さんは「ちゃかちゃかちゃか、ちゃかちゃかちゃか」と8分の6の1小節ぶんを肩で大きくリズムをとってからイントロに入るんですよ~。この先の会場で上手側神席に恵まれているみなさまは、是非チェックしてみて下さい。

6曲目「
風は知らない

Tigerssingle

後追いファンの僕は、後期タイガースにフラワー・ムーヴメントのイメージが重なります。それは、堂々と恥じることなく「自分はこの花束を差し出すのだ」というLOVE & PEACEのひとつの形とも思えます。
一陣の風に寄せた慈しみの歌の中にもそれは確かにある、と僕は亡き人を思い出しながら和光市でこの曲を聴きました。

武道館のレポで今回のアレンジを、『ジュリー祭り』に近い「ボ・ディドリー風」の解釈、と書きましたがどうやら少し違っていて、実際は
「じゃっ、じゃっ、じゃっ、じゃら♪」
というタンゴ調のリズムです。
柴山さんの工夫は随所にコード・シンコペーションを挿し込むこと。例えば「きれいな虹に♪」の箇所は、前小節4拍目裏から「G#7」→「A7」と入ります。
特に間奏直後のシンコペーションは不思議な緊張感があり、なるほどギター1本でないとこういう表現はできないだろうなぁ、と。柴山さんがこの1曲だけアコギを採用した理由が分かったような気がしました。
来年以降も、「これぞ」という曲で柴山さんは素敵なアコギを弾いてくれるでしょう。

7曲目「
雨だれの挽歌

Love

「お前なら」同様、武道館後に初めて採譜した曲。
イントロの進行は「Am→E7→G→D」。これだけならいたって普通ですが、そのルート音は「ラ→ソ#→ソ→ファ#」と分数コードで半音ずつ下がり、続く5小節目のサブ・ドミナント「F」に収束します。
で、柴山さんもこの通り弾くんですけど、6弦だけ鳴りが深いと言うかズンズン響くんです。もしかすると今回、レスポールの6弦だけ特殊な設定かもしれません。
ベース音を補完する狙いじゃないかな。

柴山さんはこの曲をはじめ、バラード曲では驚異の指弾きを披露してくれます。
「雨だれの挽歌」では親指がルートで、1~3弦にひとさし指、中指、薬指をあてがい、表拍で同時に鳴らします。右手は1拍ごとにコンマ数秒単位のミュートが入り、左手は1音1音のフォームを押さえ込んで「打つ」かのように・・・単に「ちゃん、ちゃん、ちゃん・・・♪」ではなくて「ちゃん、つ、ちゃん、つ、ちゃん、つ・・・♪」と弾くのですな~。この奏法は「我が窮状」「Don't be afraid to LOVE」でも魅せてくれます。
僕なんかがマネしようとしても、なんだか音がデレッとしか感じになってしまう。4ビート・バラードのシャキシャキ感こそ柴山さんの匠、今ツアーの見せ場です。

それにしてもこの阿久さん特有の歌詞が、えげつなくもなく過剰に聴こえるでもなくスッと今現在の「ジュリー・バラード」の世界観に嵌ってしまうとは・・・。
50年を超えるヴォーカル・キャリアというのはやっぱり偉大。「風は知らない」と「ISONOMIA」に挟まれて何の違和感もないんですよね。

8曲目「
ISONOMIA

Isonomia

え~と、『おっさんずラブ』を観ていないみなさまには何のこったか分からない話で恐縮なのですが・・・この日僕はカミさんが作ってくれた「牧春Tシャツ」というのを着ていきまして、カミさんからは「もし会場のジュリーファンの中にその道の同志がいたら「わんだほう!」って挨拶されるから」と言われていました。
実際はさすがにそんな都合の良い出逢いは無く、着席する頃にはそんなこともすっかり忘れていたところ、この曲でジュリーに
「豊かな山、わんだほう♪」
と歌われて思い出したという・・・。
カミさんには「他でもないジュリーから「わんだほう」を頂きました」と報告しておきました(笑)。

お客さんの手拍子は完璧。思えばこの曲はジュリーにとって、耒タルベキ「ギター1本体制」に向けての試し斬りでもあったでしょう。
僕ら観る側の「進化」も大切。この体制が今後のジュリーの歌人生になっていくのですからね。
僕らを立ち止まらせない、飽きさせない、そして手を抜かせない・・・唯一無二の歌手のファンになってしまったんだなぁ、と腹を決めさせられた1曲です。

9曲目「
我が窮状

Rocknrollmarch

ジュリーが今(もちろん「今まで」も)どんな気持ちでこの歌を歌っているのか、と考え始めたら色々とキリがないんですけど、「届いていますよ」と応えたい・・・僕はもうその一言に尽きます。
魂を込めたヴォーカルは聴くたびに「圧巻」を超えてゆきます。今回はサイケデリックな衣装が驚くほどその歌声にマッチしていて、ジュリーの周りの空気まで美しく澄んでいるようでした。

先述の通り柴山さんはこの曲も指弾きで、奏法は「雨だれの挽歌」と同じ。
ただ初日・武道館の記憶では、同じ指弾きでも「ヤマトより愛をこめて」の方と同じ(ひとさし指で裏拍を弾いてピアノの左手パートを再現)スタイルだったはず。どこかのタイミングで弾き方を変えたんじゃないかな。
ジュリーの1番の歌メロが終わった瞬間にトグルスイッチでピックアップを素早く切り替える手法は初日と変わらず。ここ、柴山さんのファンのみなさまには是非チェックして欲しいシーンですね~。

10曲目「
屋久島 MAY

Oldguysrock

武道館ではまったく気づけないままだった、みなさま噂の「ジュリーのボレロ踊り」をしっかり確認。なんか、すごく衣装と合ってるんですけど!

僕はこの曲、新譜考察記事の中で「ツアーのセットリストとしては割愛されるんじゃないか」などと書いてしまいましたが(いや、これは僕だけじゃないんですよ~。saba様も同じように考えていらしたみたいです)、今は「これほどステージ映えするナンバーだったのか」と思い知らされるばかり。

柴山さんの演奏も結構注意して観ていたつもりなんですけど、サスティンの単音パートからバッキング・アルペジオ・パートに移行する際にエフェクターを踏む気配が無かったんです。見逃したのかぁ・・・。
いずれにしても奏法が高度過ぎて僕には解説不能。ただし「雨だれの挽歌」の項でも書いたように、今回のレスポールには何か特殊な仕掛けが施されているんじゃないか、とは思っています。

11曲目「
ロイヤル・ピーチ

Oldguysrock

これはセンターのジュリーしか観ていません。
今年の新譜に限らず、一連の「祈り歌」の中でも個人的には群を抜いて好きになっている曲のひとつ。それらの曲の何に最も惹かれるかと言うと、やっぱりジュリーのヴォーカルと歌詞なんですよ。
「ロイヤル・ピーチ」の場合はまず音域が広い(柴山さん作曲作品の特徴。転調するとバ~ン!と高くなるという個性です)。でも敢えてその広い音域を低音に寄せています。最低音はおそらくジュリーが出せる限界ギリギリの音階。逆にサビの高音部は余裕。
過剰に歌い上げるのではなく温かみ溢れる柔らかな発声となる・・・この曲最大のポイントでしょう。

歌詞から連想するのが、「あの世」からひょい、と遊びに来てくれるジュリーの大切な人達。ステージ下手側が賑やかな公演も増えてきているようですね。僕もこの先の参加会場で、ジュリーのそんなMCが聞きたいなぁ。

12曲目「
核なき世界

Oldguysrock_2

この曲は柴山さんガン見!と張り切っていたら、ジュリーから「F.A.P.P.」以来この日2度目の「俺のカズを見るな!」攻撃を食らいまして。
これをやられると、その後ジュリーが目の前から離れていっても視線はそのままジュリーだけを追いかけてしまうのですな~。

初日と同じくジュリーは「東京の国会に♪」とCDとは歌詞を変えて歌います。きっと「ステージではこう歌う」と決めて臨んでいるのでしょう。
あとは聴き手それぞれが、ここまで明解なジュリーのメッセージをどう考えるか、どう「我がこと」として向き合うか。ジュリーは間違いなくお客さんにそう投げかけていますよ。「YEAH!」のあの箇所が各自の「応え」になるのかもしれません。
周りのお客さん(と言っても2列目までしか見えないんだけど)みんなやってたし、聴き手参加型のパフォーマンスとして浸透してきたみたいですね。

13曲目「
グショグショ ワッショイ

Oldguysrock_3

今ツアーの柴山さんは多くの曲で、最後の1音を突き放しのロングトーンとし、ボリュームペダルでフェードさせるエンディングを採用しています。そのため残響音の中でお客さんの拍手が起こる、というシーンが多い中、「グショグショ ワッショイ」でのバシッ!と音を切るエンディングは鮮烈ですよね。
僕は今年の新譜考察記事で「もし白井さん作曲の「核なき世界」がああいう感じの曲でなかったら、柴山さんは「グショグショ ワッショイ」のアレンジをフィードバックで終わらせたかったのではないか」と書きましたが、どうやらこの曲、ピタッと音を切って終わる、というところに意義がありそうです。と言うのも、ジュリーの詞は「口寄せ」を描いているのではないかと今の僕は考えていますから(考察記事に頂いたBAT様からのコメントが大きなヒントになりました)。
つまり、描かれる情景は「あの世の者」とのコンタクト。当然それはあの震災で亡くなられた方々を僕ら聴き手は念頭に置くことになります。
「奴がいた頃の夢」の一節の中に「イタコ」の3文字が隠れているのは果たして偶然なのか、それともジュリー得意の語呂合わせなのか・・・そこは分からないんですけど、潔く音を切るエンディングは、口寄せ終了の瞬間なんじゃないかなぁと。

このように、初聴時と現在とで、歌詞解釈が大きく変わった1曲。もちろんそのぶんだけ僕はこの曲が大好きになっています。
初日がどうだったかまるで記憶が無い「ワッショイ!」の追っかけシャウト、和光市ではコンソールから出していて、柴山さんはサビ全編字ハモのコーラスでした。

14曲目「
A・C・B

Kitarubeki

なんたること・・・会場入りするまではあれほど「要チェック・ポイント」として自分に言いきかせていたのに、「2000年でもくたばってなかった♪」の箇所でのジュリーのアドリブ作詞を聴き逃してしまいました。

他の点に気をとられた・・・その理由は2つ。まず曲が始まる前にジュリーが手拍子を先導したんです。武道館ではそんなシーンは無かったので意表を突かれました。他の会場でもやってるんですかこれ?
とにかく頭が固く柔軟性の無い僕などは「えっジュリー、それは表なの?裏なの?」と。柴山さんのギターが噛み込んできたらお客さんの手拍子がどっちつかずになってしまって、結局謎は判明せず。
次参加のさいたまスーパーアリーナでジュリーが同じことをしてくれたら、今度は最初から「裏」のつもりで聴いてみたいと思います(その方が分かり易いので)。

もう1点は、僕は初日の後にセトリ全曲をすべてCDに合わせて自分でも演奏してみましたから、すべてのオリジナル・キーが頭に叩きこまれていました。
ところがニ長調で復習したこの「A・C・B」で、柴山さんのフォームはハ長調。どうやら今回ジュリーはこの曲を1音下げで歌っているようです。
それにしても柴山さん、「C」も「G」もセーハ・コードで弾くんですよねぇ。これが下山さんなら「F」も含めてロー・コードを使うはず。柴山さんはもちろんアコギの名手でもあるけれど、こういうところが生粋の「エレキ小僧」なんだなぁと再確認。「エレキ・ギターが好き」というジュリーとは相性が良いはずですよね。

15曲目「
マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!

Samosutatto

ジュリーが「次はみなさんにも歌って貰いますよ~。だ~だ~だ、だ~だ~だ、だ~だ、だ~♪・・・分かるかなぁ?」と可愛らしく首をかしげたところでイントロがスタート。もちろん僕も歌います。
が!途中で「おいおいこれ間奏直後の転調部はど~すんのよ?」と気がつき・・・いざその箇所を迎えて「さぁ、さぁ、ここで1音上がるぞ、え~と音階は・・・」なんて考えてるから声が出やしない。他のお客さんは(言うまでもなくジュリーも)すんなり1音上げで「だ~だ~だ♪」と自然に移行できてるし!
こういうのって、理屈とか考えちゃダメなんでしょうね。僕の欠点のひとつです。

さてその間奏ギター・ソロ、直前に「ギター!」だったか「ソロ!」だったか覚えていないけどとにかくジュリーのシャウトが1発あって、柴山さんが目の前にせり出して弾きまくってくれましたが、これは完全に「ソロ」なのね。純粋にバッキング無しのリード・ギター。
普通に考えればなんとなく寂しいシーン・・・しかしここでジュリーと僕ら客席は「おいっちに体操」タイムに入るのですな~。
こんな成立のさせ方があるとは、正直ジュリーと長年のジュリーファンのみなさま双方の柔軟性と潜在能力に、後追いファンの僕は驚いていますよ。
こうなってくると、この先2人体制で来年以降披露されるであろう「ポラロイドGIRL」あたりはメッチャ楽しみなんですけど!

「僕には自慢の君がいる♪」でお客さんを指差してくれるジュリー。でも僕は今ツアーでこのフレーズを歌われると、ジュリーの「自慢の君」は今回ばかりは柴山さんのことだ、としか僕には思えないなぁ(笑)。

16曲目「Don't be afraid to LOVE

Panorama

初日武道館では広い会場を彩る照明の美しさが強烈に印象に残っていましたが、良席を授かったこの日は純粋に、歌と演奏に痺れまくりました。

まず柴山さんのギターは、「アレンジ」の面で今セットリスト随一の素晴らしさ。
1番まではまぁ普通と言えば普通で、奏法は先述の「雨だれの挽歌」「我が窮状」と同じ4拍打ちの指弾き。これが2番で端麗なアルペジオに変化します。
単にコードを押さえて右手の運動というのではなく、音階移動に重きを置いた運指。以前「きめてやる今夜」の記事で、柴山さんの「本来キーボードに適した音階移動を単音アルペジオで弾く」超絶技巧について書いたことがありますが、こちらも負けてはいません。「コード弾き」の概念は超えていますね。

そんな演奏の変化もあって、ジュリーの2番からのヴォーカルがとにかく神々しくて。
ここで歌われる「君」の望むありきたりでない未来は、そのまま古稀ジュリーのこの先の道のりのよう。だから僕には今ツアーのこの曲の「君」を歌っているジュリー本人に転換させて聴いてしまいます。

~アンコール~

17曲目「ROCK'N ROLL MARCH

Rocknrollmarch

初日は「えっ、もう本割終わり?もうアンコール?」と思ったものです。ただ僕の場合それは曲数をカウントしていた(ツアー初日恒例)せいもあるかな。
タイガース完全再結成が明けてのお正月LIVE『ひとりぼっちのバラード』で曲数が減った時(全19曲)は「直前までタイガースで、準備期間が無かったから」だと考えましたが、それでも最高に素晴らしかったし、今思えばジュリーはその時から古稀ツアーの構成までしっかり考えていたのでしょう。
今回は全18曲。もちろんそのぶんだけ公演時間は短くなりますが、大事なのは長さより深さです。僕がこれまで観てきたジュリーLIVEの中でも、濃厚さではトップクラスの今ツアー。アンコール1曲目が「ROCK'N ROLL MARCH」というのは、17曲目にしてもうダメ押し、って感じですよね。

驚いたのはエンディングです。柴山さんが引っ張って引っ張ってソロを弾きまくる!
初日の時点ではこうじゃなかったですよね?
しかも、ジュリーがかなりの至近距離まで柴山さんの傍に近づいてそれを見守っているという・・・ステージのジュリーが特にうながしたわけでもないのに、自然と客席から沸き起こる拍手。ギター1本のソロ・タイムにこんな感じで拍手が送られるシーンを僕が体感するのは、一昨年のクイーン+アダム・ランバートの武道館公演以来(ブライアン・メイのギター・ソロ・コーナーがありました)です。
色々なバンドやアーティストのLIVEに参加していても、そうそう体験できるシーンではありません。

あ、アンコール前のMCは初日と大まかな話の流れは変わらず。ジュリーのゴキゲンの良さが伝わってきたのが嬉しかったです。
ジュリーより「4つ下」の柴山さんも世間的にはもう老人、そんな2人がヤンチャに歌とギターでこれから先エンドレスでバトルしてゆく、とうのが

カコキ~!と思う

とジュリー。
「カコキ~」って何?と思っていましたが、saba様が「カッコイイ」と「古稀」の合体語ではないかと最近書いていらっしゃいました。なるほど!

18曲目「ヤマトより愛をこめて

Konndohakareina

ジュリーLIVE歴まだ10年の僕にとっても、「セトリ・オーラス率」の高さは頭抜けている印象の定番ヒット曲。
年が明けた1月の武道館に今回が初ジュリーLIVEとなる1コ年上の友人を1人誘っていまして、この選曲はきっと喜んでくれるはずです。

柴山さんは指弾きですが、ここまでの指弾きアルペジオ3曲とは異なり、ひとさし指で裏拍を弾く(ピアノで言うと左手のパートを網羅)奏法です。
親指がルート、中指と薬指が複音。これが基本形で、もちろんオブリガートも頻繁に登場します。
僕が惚れ惚れと観てしまうのは、オリジナル音源でピアノのフレーズをギターが追いかける箇所(歌メロ直前ですな)の再現。結構なハイフレットまで到達するフレーズを、アップのフィンガー・ピッキングで弾いてくれます。

ジュリー・ヴォーカルの説得力は言うまでもありません。改めて大名曲。記念すべき古稀ツアー、誰もが納得のオーラスです。

☆    ☆    ☆

終演BGMの「JUST A MAN」、そのままゆっくり浸って聴いてから帰ろうと思ったのですが、スタッフさんの「終わりですよ」圧に負けてスゴスゴと退散・・・残念。

ツアー2度目の参加で「初日より良かった」と感じることは多いけど(それでも僕は「まだ仕上がってしない」毎回の初日の雰囲気が大好きなのですが)、今回は色々とその意味合いも深いよなぁと。

まずギター1本体制に「慣れた」かどうかと言われれば個人的には完全に慣れたと思います。ただ僕としては和光市公演では「いつものジュリーと柴山さんに戻っていた」という感じが強かったのです。
例えば、実は周囲の先輩方やJ友さんの間では「この体制になって曲のテンポが遅くなった気がする」との感想がすごく多いです。もちろんそれぞれの公演、会場によって振り幅はあるにせよ、どちらかと言うと初日・武道館が全体的に演奏が「走っている」状態で、これが和光市ではほぼオリジナル音源のBPMに。ステージの2人・・・特に、たった1人で何に頼ることもなく全演奏を担う柴山さんに余裕が出てきた証ではないでしょうか。

僕は感性が鈍いせいか、ドラムスが抜けて曲のテンポを錯覚するということは逆に無くて。少なくとも和光市では、キックの密度が高く普段から実際よりBPMが上がって聴こえやすいであろう「カサブランカ・ダンディ」も「F.A.P.P.」も「ROCK'N ROLL MARCH」も原曲通りの速さだと分かりました。
ただしこれをして僕がみなさまよりリズム感に優れているのか、というとそれはまったく違って、「テンポを脳内で測る」のは所詮理屈の世界なんです。
「ギター1本になってテンポがゆっくりに感じる」と仰る多くのみなさまの方が音やリズムの変化には聡く、僕などよりも優れた感性をお持ちです。
僕には知識はあっても能力は無い・・・ジュリーのLIVEに通っていると、そうした己の「乏しさ」に直面する機会がこれまでも多かったんですよ。それが今回のギター1本体制で一気に纏めてやってきた感じ。それは例えば「A・C・B」でのジュリーの手拍子先導であり、「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」の転調部。
僕が「こりゃ手ごわい」と思うことでも周囲のお客さんは自然とジュリーについていける、というね。

でも、初日のMCでジュリーが「慣れますよ」と話していたのは、そういう点を含めて言っていたのかもしれないなぁ、とも今は思っています。
感性に劣る僕のような者がこの先もジュリーにしっかりついてゆくには、単に楽しむだけでなくさらなる不断の努力が必須のようですね・・・。

あとは、武道館と和光市での印象の違いが「慣れ」によるものなのか、それとも大会場と通常ホールの違いなのか、それを確かめるべく、僕の次回参加は10月17日、さいたまスーパーアリーナです。
同行のYOKO君はその日がツアー初日。何度も書いているように今回は「雨だれの挽歌」という彼のスーパーダイブ曲があるので反応が楽しみ。
加えてもう1人同行の友人、昨年の松戸公演に続き2度目のジュリーLIVE参加となる佐藤哲也君は仲間内では頭抜けた技量を持つギタリストですから、柴山さんのあれやこれやを的確に観てくれるでしょう。僕がまだ気づけていないことも多いと思いますし、彼の感想も本当に楽しみです。

ということで、そのさいたまアリーナのレポは本館で執筆いたします。
先日の福岡公演が、大会場にも関わらず満員のお客さんで埋まったと聞き嬉しく思うと共に驚嘆しています。さすがはジュリー、さすがは九州のジュリーファン。
さいたまアリーナ組も負けてはいられませんな~。
関東圏にお住まいのみなさま、是非是非この公演をご一緒しましょう!

ジュリーはちょうど今日が僕の出身地鹿児島での公演、続いてツアーの目玉大会場のひとつである真駒内アイスアリーナへと勇躍進んでいきます。
大変な状況の中ですが、北海道にお住まいのすべてのジュリーファンが元気に会場に駆けつけることができますよう、ここからお祈りしています。


例年よりも長めの開催期間となったこちら別館side-Bも今年の更新はこの和光市レポが最後。次回はまた来年のツアーで、ということになります。
とにかく今回はこのレポの完成までずいぶん時間がかかってしまいましたから、もうココの存在を忘れられているのではないかと心配です(笑)。みなさまからのコメントをお待ちしています。
そして・・・引き続きジュリーの古稀ツアーを応援し、楽しんでまいりましょう。

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2018年7月12日 (木)

2018.7.6日本武道館 沢田研二70YEAR'S LIVE 『OLD GUYS ROCK』セットリスト&完全レポ

長々とおつきあい下さりありがとうございます。
初日・武道館公演のレポを書き終えました。今回は更新日付は移動せず、執筆途中の段階で書いた序文とともにそのまま残します。よろしくお願い申し上げます。

☆    ☆   ☆

西日本豪雨の被害に遭われた方々に、心よりお見舞いを申し上げます。
日に日に拡大していく被害のニュースに心が痛み、なかなかこのレポを書き始めることができませんでした。
また個人的には、親しくしていたJ先輩がツアー直前に亡くなられ、正にお通夜の当日を武道館公演のジュリーの歌声とともに心でお見送りし、翌日告別式に参列という辛いスケジュールとなったこともあり、色々と考えさせられる日々を過ごしていました。
腰が痛かろうが何だろうが、笑ってジュリーのLIVEに参加できるということがどれほど特別なことなのか・・・。

僕に今できるのは、ジュリーを見倣い、いつもしていることをいつも以上に頑張るという、それしかありません。
素晴らしかった古希ツアー初日・武道館公演レポート、少し始動は遅れましたが気合を入れて書かせて頂きます。今回もよろしくおつきあい下さいませ。

☆    ☆    ☆

7月6日、日本武道館。
いやはや、参りました。畏れ入りました。
僕のような凡人の「想定」なんぞひとっ飛びに越えてみせるジュリー。そして柴山さん。イカシた「OLD GUYS ROCK」のステージにメロメロにさせられましたよ。

スージー鈴木さんの名言も生まれました。
「沢田研二」と書いて「チャレンジ」と読む!


当日、僕は入場するとすぐセッティングを確認しました。
広いステージの中央にシンプルすぎる演奏エリア。マイクが2本。さすがに「マジか!」とは思いました。一体どうなるんだろう?と。演奏が始まったら杞憂はブッ飛びましたが、やっぱり驚くことは驚きました。
セッティングを見た僕はまず「打ち込みを使うんじゃないかな」と考えました。それなら「生きてたらシアワセ」が聴けるかな、とか。
しかし毎度のごとく僕のセトリ予想は全敗。柴山さんが弾くギター1本の伴奏によるステージは、打ち込みなんぞ一切無し。完全なる生歌、生音の説得力。
むしろこの2人のステージに余計なガイド音は邪魔でしかないのだなぁ、と大納得です。

僕の浅はかな予想をねじ伏せたこのスタイル、初日ということもあってか会場のお客さん全体的には戸惑った空気もあったように思います。
ジュリーはそれも事前に予測していたと見えて、MCではこのスタイルに至った経緯を丁寧に話してくれました。ギター1本のツアーは、この先もエンドレスで歌い続けてゆくための決断であり、構想12年に渡り温めていたアイデアだったのだと。

それにしても。
こんなこと、ジュリー以外に考えつける話ではないし、ギタリストが誰でも良いわけはなくて。
さらにはギタリストにとっても気軽なオファーであるはずもなく。「沢田研二+柴山和彦」でなければあり得ないスタイルなのですね。
最も重要なのは、柴山さんほど全時代のジュリー・ナンバーに精通しているギタリストは他にはいない、ということ。柴山さん以外にこのジュリーのオファーを「受ける」ことはできません。正にジュリーの「意中の人」。
「鉄人バンド期」を終えてこの先続くジュリーと柴山さんの「『OLD GUYS ROCK』期」が勇躍スタートしました。

とまぁここまではあくまで理屈。
とにかくジュリーはこの日のMCで(他会場でも?)何度も「カズさん」「カズさん」と連呼するだけでなく「大好きなギタリスト」とまで言ってのけました。
ほぼフルハウスの武道館のお客さんの前で「僕とカズさんはつきあっています!」と突然カミングアウトしたに等しい雰囲気・・・誰もが感じたことでしょう。
天国でくつろいでいた堯之さんが
「え~っ、今なんつった?!」
と、慌てて武道館まですっ飛んで来てラブラブな2人が並んだ姿を目の当たりにし、複雑な笑顔とともに「ブラボー」と拍手を送っていたかも・・・。
あ、『おっさんずラブ』を観ていなかった人にはワケわからない妄想記述ですみません(笑)。

ともあれ、想定外に素晴らしいステージでした。
僕は一応ギターをやるから、今回はずいぶん得をしていると思います。今までのバンドスタイルでは絶対気づけないような演奏の機微が手にとるように分かる!
これを神席で観たら一体どうなっちゃうの?ってくらい。いやいやそれは贅沢ってものですが。

あとね、今回セットリストがアンコール含めて全18曲。これまでと比べて演目が減りましたよね。
OLD GUYSの体力を慮って、という面ももしかしたらあるかもしれないけど(このスタイルでの2人の疲労度合はバンド時代からさらに増していると思われます)、僕はこの曲数、「ツアー途中での複数回のセトリ一部変更」への布石と見ましたよ。
バンド・スタイルなら難しいこのアイデアも、柴山さんと2人なら可能なんです。
リハでは他の曲も試し斬りを済ませ、ジュリーと柴山さんはあっと驚く隠し球を用意しているんじゃないか・・・とりあえず大きな会場、個人的には僕自身が参加するさいたまスーパーアリーナでのサプライズ披露に期待していますが果たして・・・?

さぁ、枕はこのくらいにしまして・・・それでは開演!


~オープニング~
everyday Joe」(スクリーン上映)

客席の照明が落ちて、大きな拍手の中をまずはスルスルとスクリーンが降りてきました。この仕掛けは50周年ツアーと同じですねぇ。
始まったBGMは「everyday Joe」。
ステージから遠い西スタンド奥手にいた僕は一瞬「生演奏か?」と思ってしまったんです。
そう、アルバム『耒タルベキ素敵』のそれとは違う音・・・スクリーンの後ろで今柴山さんがこのギターを弾いてるんじゃないか、と。でも、ジュリーのヴォーカルが始まってBGMと分かりました。機械処理の再生エフェクトがかかっていましたからね。

もしこのBGM、ギターを柴山さんが弾いて録ったテイクだとすれば、ツアー前のジュリーのリハで仕込んだ音源と考えるのが自然。
ただし、ジュリーのヴォーカルは2000年のオリジナルテイクを加工しているようにも聴こえました。ですから、アルバムのマスター音源に誰かが(柴山さん?白井さん?)改めてギター・トラックを1本オーバーダブし、既成のヴォーカル・トラックにセンドリターンのエフェクトを施してバランスを馴染ませたニュー・リミックスである可能性も考えられます。

いずれにしても、僕はジュリーのこの選曲にはニヤリとしてしまいましたよ。
もちろん、終演後のBGM「JAST A MAN」が堯之さんへの想いを託したものであるなら、この「everyday Joe」はかまやつさんへの想いを込めた選曲・・・その意味はあるでしょう。しかし重要なのは、今回が70YEARS LIVE、「古稀」記念のツアーだということ。
古稀と言えば紫。そして「everyday Joe」と言えばオマージュ元はジミ・ヘンドリックスの代表曲「紫のけむり」(「パープル・ヘイズ」)です。セヴンス・シャープ・ナインスといういわゆる「ジミヘン・コード」が炸裂する紫色のロック。ジュリーの茶目っ気たっぷりな選曲で、記念すべき古稀ツアーが始まるわけです。

で、スクリーン上映の内容は・・・ジュリーと柴山さんの絆と歴史、と言うにはあまりにもラブラブ構成による「OLD GUYS ROCK」なお2人の動画集。
新郎新婦入場前の前説代わり(?)の映像に会場からも祝福の拍手と悲鳴が(笑)。
ちなみに僕は真横からなんとか映像を観ることができていましたが、これステージ後方席(北西、北、北東の各スタンド)からは見えてるの?と心配に。
後から先輩に聞いたところによれば、反転だったけどちゃんと観られた、とのこと。その先輩はギターを弾く方なので「サウスポー・スタイルの柴山さんの映像に萌えた」のだそうです。

最後に「でで~ん!」と『OLD GUYS ROCK』の文字が浮かび上がり、いよいよ新郎新婦入場・・・じゃなくて古稀ツアーのステージ、セトリ本編が始まります!


1曲目「
カサブランカ・ダンディ

Royal

登場したジュリーの衣装をひと言で表すなら「道化」。「見世物上等」な古稀ロッカー、堂々の降臨です。
その意味でも1曲目が「カサブランカ・ダンディ」というのは最適。ジュリーは先の50周年ツアーの時から今回の古稀ツアーの構成まで見据えていて、この曲を温存していたとしか思えません。
ちなみに今セットリストはアンコールのオマケ2曲以外、50周年ツアーとの重複は無し!と言うか「シングル曲」はセトリ本編ではこれと「あなただけでいい」の2曲のみという・・・正に冒険、チャレンジのステージ。この先エンドレスの歌人生をしっかり考えているからこそできることなのでしょう。

先述の通り、今回は全演目を打ち込みなどに頼ることなく柴山さんが1人でリード・パートとバッキング・パートを入れ替わり立ち替わりの大活躍。
この曲では見事にハーフタイム・シャッフルのビートをギター1本で再現しています。
間奏ではそれぞれの小節の4拍目或いは4拍目裏にミュート・カッティングを1発入れることで、フィル感覚も網羅。いやぁこんなことができるものなんですねぇ。

2曲目「
彼女はデリケート

Gsiloveyou

続くこの曲がまたヤバイ!
イントロが始まるか否か、というタイミングで2人がステージ前方にカッ飛んできて、お馴染みの「その場駆け足」から始まります。

ギター1本の伴奏になってもこの高速エイト・ビート・ナンバーをあのリフ弾きながら駆け足できるものなのか、とただただ柴山さんのスキルに驚くばかり。
手抜きが無いんですよ。「カサブランカ・ダンディ」同様オリジナル音源のリフをまったく崩さず忠実に再現するのです。まずは楽曲へのリスペクト、深い理解度。そこでものを言うのが柴山さんの的確なテクニックと、ジュリーと共に歩んだキャリア。ギター1本で聴くことによって改めて思い知らされます。

ジュリーLIVEでは定番の曲ですからお客さんも心得ていて、Bメロでは手拍子が「2、1」に変化。みなさま、さすがです。
初日この曲でのジュリーは、僕が初めて参加した『ジュリー祭り』を思い出させてくれるような熱演、熱唱だったと思います。やることてんこ盛りで忙しいけど、問答無用に迸っている、というあの感覚が甦りました。


3曲目「お前なら」

Julie4

この曲の前に短いMCがありました。「70歳です!」と言って大きな拍手を浴びた年齢の話の際には、現政府の政策(と言うか煽動ですな)をひと刺しチクリと。

で、MCのほとんどは登場時にいきなり外れてしまった紫の襟飾り(?)をジュリーが改めて装着し直す、という時間に費やされました。
首の後ろでホックを止める仕様らしく、「ちょっと待ってね」と可愛らしくお客さんにお詫びしながら悪戦苦闘のジュリー。無事止まったと思ったら「裏表やった!」と。もう一度外してからさらに正しくつけ直すと大歓声。
翌日お会いしたジュリー道の師匠が仰るには、「男性で後ろのホックを自力で止められるっていうのは、さすがジュリー」とのこと。確かに、僕は無理だろうなぁ。

さて、続く3曲目が予想だにしていなかったサプライズ・ナンバー「お前なら」。イントロ1発でそれと分かり、隣のカミさんに「これはレアやで!」と。

個人的に、すべてのジュリー・オリジナル・アルバムの中で「ギターの音が一番好き」な作品が『JULIE Ⅳ~今、僕は倖せです』。つまり僕はジュリーの音源制作に携わった歴代のギタリストの中では堯之さんが最も好み、ということになりましょう。
しかし、全時代のジュリー・ナンバー、幾多の名曲、レア曲含めたステージ再現力となればやはり柴山さんです。例えば「お前なら」の堯之さんのギターは非常に特徴的で、「こう弾かなければこの曲にはならない」というほど絶対のアレンジ。今回の柴山さんの完コピ再現には楽曲への確かな理解と、オリジナル・アレンジへのリスペクトが感じられます。
柴山さんもこれは初めて弾く曲だったと思いますから、リハの段階から気合が入ったでしょうね。

作詞・作曲・ジュリー。「いかにも」なカッコイイ曲です。曲想としては「ブルース」ですが、通常のブルース・パターンとは違う独創性がジュリー作曲の真骨頂。
そして歌詞・・・この古稀ツアーで歌われると、ジュリー自身の鼓舞のようでもあり、柴山さんへの信頼、親愛の情を込めた選曲のようでもあり、また被災地への祈り歌、エールのようでもあります。
ただ元々のオリジナル・リリースの作詞の時点では、72年と言う時期的にもジュリーからショーケンに捧げた曲なのかな、と僕は推測しています。そのあたりは後日”セットリストを振り返る”シリーズとして楽曲お題の記事で書かせて頂きます。


4曲目「
F. A. P. P.

38

これはイントロだけでは何の曲か分かりませんでした。ワン・コード(「E」)のストロークでしたからね。ジュリーが歌い始めて「あぁ、これか!」と。

それにしても、改めて何と複雑でクオリティーの高い展開のポップチューンでしょうか。
サビのイ長調への転調、突き抜ける高音。柴山さんはこの曲ではジュリーの音域に合わせてフレットどりをしていたと思うんです。「C#7」を普通あんな高い位置では弾かない・・・でも2人だけのステージ、伴奏がギター1本ならばそれは必要なことなのでしょう。ギター1本の伴奏と言っても、ただコードを鳴らせばいい、ということではないのだと感じ入ります。
徹底的に主役に合わせ、主役を立てる万能ギタリスト。やっぱりこのスタイル、ジュリーの相方が柴山さん以外では成り立たないですね。

「F.A.P.P.」はジュリーの歌詞のテーマ性から色眼鏡で見られることもありえる曲かもしれません。しかしこのメロディー、このコード進行、転調、構成の素晴らしさは図抜けて斬新であり、しかもポップです。
後で歌われた「ロイヤル・ピーチ」についてもそれは同様で、作曲家・柴山和彦の真髄を知らしめてくれるギター1本の演奏でした。
こうなると、「FRIDAYS VOICE」もこのスタイルで是非体感したい・・・ジュリー、来年お願いします!

5曲目「
あなただけでいい

Acollection

こちらはイントロですぐ分かりましたよね。柴山さんが「ミ~、ソシミ~♪」と弾いてくれましたから。
イントロなど伴奏部では、このオリジナル音源のギター・フレーズを上弦で単音弾き、同時にバッキングの和音を下弦で刻む・・・ディストーションを効かせた演奏は理屈はアルペジオに似ていますが奏法としては違います。練り込んでいますよ~。
しかもこれ3連ですから!(ちなみに今回の柴山さんの「あなただけでいい」のイントロと同じ音階、刻みをエイト・ビートに転換すると「バタフライ革命」に変身します。このあたりが「ギター1本」の面白さです)

ジュリーはエンディングで「ラララ、ララララ~ああ~おっ!」のシャウトも再現。
「カサブランカ・ダンディ」と同じく50周年ツアーのセトリとは重複しないシングル曲・・・『ジュリー祭り』以来10年ぶりに生で聴けた「あなただけでいい」のジュリーの絶唱に僕は大満足です。


6曲目「風は知らない

Tigerssingle

今ツアーの柴山さんのギターは、レスポール、テレキャス(結城に参加された先輩からテレキャスは2種使用していたとの情報を得ていますが、武道館では僕はそこまで気づけませんでした)、そしてアコギ。
今セ トリで柴山さんがアコギを弾くのはこの「風は知らない」ただ1曲ですが(個人的にはもう1、2曲あっても良かったかなぁ、と考えています)、来年以降どんな曲で柴山さんがアコギを使ってくるのか、その比率は上がってくるのか・・・楽しみにしています。

今回の「風は知らない」はリズムとしては1拍目、2拍目の裏、4拍目にアクセントをつけるアレンジで、オリジナルよりは『ジュリー祭り』でのボ・ディドリー的解釈に近かったです。イントロの単音は「Gm→Am」のコードトーンで構成されていたはず(初日はイントロだけでは何の曲か分からなかったので記憶が曖昧)。

2日前に亡くなられた先輩の告別式が武道館の翌日で、式場ではタイガース・ナンバー6曲がずっと流れていたのですが、その中に「風は知らない」も含まれていました。聞けば、最後の入院の際に娘さんがダウンロードを頼まれたタイガースの6曲を、お別れの曲として選ばれたのだそうです。
前日武道館で聴いたばかりのジュリーの歌声が甦り、僕はこの曲が流れるたびに必死で涙を堪えました。
岩谷さんの紡いだ「風」というフレーズをこれほど切実に、身近に感じた日はありませんでした・・・。

7曲目「
雨だれの挽歌

Love

ジュリーとしては音楽劇への感謝を込めた選曲だったのでしょうか・・・アルバム『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』を日頃から阿久さんの最高傑作とあちこちで称えまくっている僕としては、これはもう素晴らしいビッグ・サプライズでした。まさか古稀ツアーでこの曲がセットリスト入りするとは。
これはYOKO君のスーパーダイブ曲でもあります。さぁ来い、さいたまスーパーアリーナ最上段席!(笑)

それにしても、レスポールで奏でられるイントロ・フレーズの説得力が凄まじい。
単音メインでもしっかりバッキングのコード構成音も鳴ってるし(←このあたりはバンド体制だと気づけないことです)、柴山さんの再現力に改めて脱帽です。
歌メロ部の要所要所で繰り出されるテンション・コードの響きも素晴らしく・・・さすがに武道館のスタンドからはしっかり確認できませんでしたが、「C#dim」は5弦4フレットをルートにするフォームだったんじゃないかな。

そしてジュリー圧巻のヴォーカル・・・隣のカミさんが「いきなり声が若返った!」と驚嘆していたくらいです。
大野さんの王道イ短調のメロディーが、過去現在未来、ジュリーの喉にピッタリ合うのでしょうね。

8曲目「
ISONOMIA

Isonomia

開演前に男子トイレを探してウロウロしていたら、依知川さんにバッタリ。「うわあっ!」と思いつつも恥ずかしくて声はかけられず、無念でした。

依知川さんは南スタンド最前列でステージを観ていらしたのですが、この「ISONOMIA」を聴いている間、依知川さんの様子が気になって気になって(笑)。
これは昨年お正月、そして50周年ツアーと、依知川さんが手拍子をリードしてくれた印象が強く残っている曲でした。さすがに依知川さん、この日客席で大きなアクションは見せていらっしゃらない様子・・・でもファンはみな依知川さん直伝の手拍子の変化を覚えているものですねぇ。2つ打ちの箇所が見事揃っていました。

ジュリーはサビ最後の「ISONOMIA♪」をオリジナルのメロディーとは変えて、1番、2番、3番すべての語尾を3番の最高音パートで歌いました。
「支配し易い国民を作る」という現在の政権の方向性に、ガツン!と「ISONOMIA」のフレーズを声を上げてお見舞いしたかったのではないでしょうか。


9曲目「我が窮状

Rocknrollmarch


開演前のセッティングで今ツアーが柴山さんとの2人体制だと分かり、「ピアノメインの曲をどんなふうに弾いてくれるんだろう?」と僕は興味津々で本番のセトリを追っていました(「我が窮状」と「un democratic love」をセトリ有力候補と考えていましたから)。

いつものツアー初日のように曲順を数えて覚えていって、さぁ9曲目。多くのみなさま同様に「来るならここだ!」と待ち構えていた「我が窮状」。
いやぁ柴山さん、素晴らしい「完コピ」でしたね~。
ピアノ独特の和音をアルペジオで見事に再現。親指は1拍目と3拍目でルート弾き。中指と薬指はそれぞれ2弦、1弦にあてがい、表拍で同時に鳴らします。そしてそれらを追いかけるように弱拍で弾く単音がひとさし指。
この曲は2拍ずつコードが変わっていく進行が頻繁に登場するので、これがドンピシャの奏法となります。こうして的確に提示されると、「柴山さん、素晴らしい!」としか言葉がありません。

さらにジュリーが1番を歌い終えた最初の短い伴奏部に入る瞬間、柴山さんはトグルスイッチ(ピックアップをセレクトする部位)でフロントとリアを切り替えた!
これぞギター1本ならではの表現・・・ガラリと音の雰囲気が変わったことで、心の耳に荘厳なコーラスが届いてくるかのようでした。

ジュリーの歌声はピアノ1本の時と変わらず清らかで、確か並行移調の伴奏部だったと思うけど、北スタンドの方を向いて指揮をしてたなぁ。
「声なき声よ集え」ということでしょうか。初日、一番胸に残った素敵なシーンでした。


10曲目「屋久島 MAY

Oldguysrock

「ここから今年の新曲を歌います。新曲と言っても4曲だけですが・・・」とジュリー。
毎年のツアーでは、新譜収録曲をどんな順番で歌うのか、というのが初日の大きな楽しみのひとつ。柴山さんが構えたのはレスポールだったので僕は「とりあえず屋久島MAY以外のどれかだな!」と思ったのですが・・・何と始まったイントロは「屋久島MAY」のあのロング・サスティンだったので仰天しました。楽曲お題の記事で書いた通り、僕はこの曲の柴山さんのサスティンはフェルナンデスだとばかり思い込んでいたからです。
ちなみにCDでは2トラックのギターを別録りしています。イントロ、アウトロがフェルナンデスで、歌メロ部のバッキングがテレキャスだと僕は聴き取りました。

ところが武道館のステージで柴山さんはその両方をレスポールで弾いた~!
もちろんCDとLIVEが同じギターとは限りませんが、聴こえてきたレスポールの音色は正真正銘CDそのままの音・・・きっとCD音源の方も2トラックともレスポールでのレコーディングなのでしょう。これには参りました。
柴山マジックここにあり!

柴山さんは「Hu~♪」のコーラスも担当。
ジュリーのヴォーカルはどこまでも穏やかで、のどかで、壮大で・・・やはりこれは平和と自然の歌。
普段から仲良くしてくださる先輩が新譜リリース時に「ISONOMIA」を連想していらしたのも頷けます。今セットリスト8曲目からの「ISONOMIA」→「我が窮状」→「屋久島MAY」の流れは、この国の本当の「豊かさ」を歌い、伝えてくれているんだなぁと思いました。


11曲目「
ロイヤル・ピーチ

Oldguysrock_2

新譜については、CDそのままの音を完璧に再現してくれる・・・「屋久島MAY」でそう分かりいよいよ続く曲が楽しみになったところで、個人的には今年の新曲の中で最も好きになった「ロイヤル・ピーチ」のイントロ。自分でも何度弾いてみたか知れないクリシェ進行は、柴山さんが奏でればこそ綿密さが際立ち、美しい進行とフレット使いに惚れ惚れします。

それに何と言ってもこれはジュリーのヴォーカル。Aメロは低音域で訥々と、サビは一転高音域で、それでも張り上げるような感じではなく優しさと悲しみが入り交じった素晴らしいトーン、声の波動です。
考察記事で書いた通り、僕はこの曲に自らの「反差別」の意思を重ねます。心の痛みを抱えつつ生きる人の負けじ魂をジュリーが歌ってくれているようにも感じました。個人的な受け取り方なのでしょうけど・・・。

最後のヴァースの前にギターが止みジュリーの歌声だけが残り、そして再びギターが戻ってくるあの瞬間・・・遠く離れたスタンドから観ているはずのステージが、その時だけとても近くに感じました。

12曲目「
核なき世界

Oldguysrock_3

初日のジュリーは、歌詞を忘れて空白ののちに早口で追いかけてくる、というシーンはありませんでしたが、細かいところで前後が入れ替わったり、オリジナルとは違うフレーズを歌うことは何度かありました。
その中で僕が強く印象に残ったのがこの「核なき世界」の冒頭の歌詞でした。ジュリーは「東京の真ん中に」を「東京の国会に」と変えて歌ったのです。
故意だったと思います。ジュリーがこの曲を「捧げたい」人達が一層ハッキリしましたね。
例えば国が「成長戦略」と位置づけた原発の輸出。相手国の法整備などは国が調査するものの「安全である」とは言わない仕組みになっているわけです。万一輸出先の現地で重大な事故が起こったら、企業に「丸投げイイネ」となる・・・。
国はみんなを護りはしない。一事が万事。
ジュリーが「福島へのKURIOS」を歌う所以です。

「YEAH!」の瞬間は客席にも照明が射します。ツアーが進むに連れ、ジュリーと一緒にシャウトするお客さんの声も上がってくるのかな。
エンディングでは柴山さんのフィードバックも炸裂。テーマ性の深さ、楽曲の緻密さと共に、突き抜けるハートを持つ2人のOLD GUYSの熱演が鳥肌ものです。


13曲目「
グショグショ ワッショイ

Oldguysrock_4

「屋久島MAY」「ロイヤル・ピーチ」「核なき世界」と柴山さんはここまで新譜の3曲をレスポールで通しましたが、ここでギターをチェンジ。「いよいよ満を持してSGか?」と思ったらローディーさんから受け取ったのがテレキャスで。「屋久島MAY」のレスポールほどではなかったにせよ、意表を突かれました。

でも演奏が始まると大いに納得。
とにかくセーハ・コードの横移動がダイナミック。つまり高い位置でかき鳴らすシーンが多く、テレキャス独特のブラッシング音(「じゃ~んじゃ~じゃ、ちゅく、じゃ~んじゃ♪」の「ちゅく♪」ね)が最大限生かされます。
例えば「C」は3フレットではなく8フレット。
そうしておいて、ヴォーカル直前の単音をロー・ポジションで弾くのがカッコイイのです。
テレキャスのローポジの単音って、独特の「薄さ」(←これは絶賛しているんですよ!)があって、柴山さんがあのフレーズを弾くと驚くほどに流麗。これらのコンビネーションが「グショグショ ワッショイ」の「ギター1本でこの完成度!」の秘密だったんですね。作曲者でもある柴山さんの拘りだと思います。

悔やまれるのは、遠目からジュリーのアクションと柴山さんのギターに見とれていたせいか、僕はサビのコーラスの記憶がないのです(泣)。
柴山さんが「ワッショイ!」ってやってましたか?それとも無音だった?はたまた、コンソールから飛び道具が炸裂してた?
8月の和光市公演ではしっかり確認したいです。


14曲目「A・C・B

Kitarubeki

新譜4曲の披露も終わり、さぁ次は何が来る?と思う間もなく始まったイントロ。
こ、これをギター1本でやるか~!と驚かされた1曲です。LIVE定番曲ではありますが、「A・C・B」って高速のスウィング・シャッフルじゃないですか。裏打ちのビートを刻むリズム・セクションが不在、というのはあまりにハードルが高いのでは?

・・・とんだ杞憂でした。参りました。
ジュリーと柴山さん、そして武道館に集結されたジュリーファンのみなさま、素晴らしい!曲の最初から最後まで狂いなく繰り出される手拍子に感動。
この曲は要所で4拍目の裏から「突っ込む」タイミングのアクセントがあって、「裏」と「表」が入れ替わるフェイクがあるんです。僕なんかはリズムを頭で考えてしまう方だから、分かっていても「おっとっと!」となる・・・でも先達のファンのみなさまはそんな時でもモノともしないんですね。
正確なスウィング・ビートでステージを彩っていたのは、間違いなくみなさまの手拍子だったと思います。

「乗り損ねてはイカン!」と懸命についてゆくだけだった僕は、あろうことか一番重要な歌詞部・・・「2000年でもくたばってなかった♪」を古稀ジュリーがどのように変えて歌ったかを聴き逃してしまいました(泣)。
誰か教えて~!

15曲目「
マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!

Samosutatto

ギター1本の伴奏で難易度の
高い曲が続きます。
でも「A・C・B」同様、「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」はジュリー自身が大好きな曲で、この先もずっと歌っていきたいと考えているはず。新たなスタートに立った今、セトリ入りは必然だったでしょう。
いよいよもってこのギター1本体制、決断したジュリーも凄いし引き受けた柴山さんも本当に凄い。

実は僕はこの曲についても、初日は演奏面を色々と見逃してしまっています。今回ジュリーが一緒にハミングしているテーマ・メロディーのギターも、目で柴山さんを追うタイミングを逸しました。
これはギター1本だと相当難しい。何故って、途中に1音上がりの転調があるからです。同じポジション移動の長尺の単音を、2フレットぶんずらして複数回弾く、というのがね・・・運指ではなく、スケールどりが大変。

僕は今51歳ですが、年々「目の老化」を自覚させられる日々です。ギターを弾く際でも、明るい場所なら良いけど暗いとフレットの位置がずれちゃったり。
ギタリストはヴォーカリストと違って技術の衰えは無い、と言われますが(まぁジュリーについてはヴォーカリストですけど衰え知らず!)、世間のベテラン名ギタリスト達を唯一悩ませているのが「目」の老化なのですな~。指は動いてもハイ・フレットの位置が照明の加減によってはぼやけてしまう・・・。
柴山さんにも当然それは起こっているでしょう。
武道館以降の会場にご参加のみなさまの情報によれば、ジュリーはこの曲で(テーマ・フレーズ部を)「一緒に歌って!」とお客さんにリクエストしているそうですね。僕も今後の参加会場では応えなければ・・・そこにはジュリーの柴山さんへの配慮も込められていると想像できますから。
その上で「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」の1音上がりを柴山さんは初日武道館でも平然と弾いていたに違いない。見逃したのが悔やまれます。
ギターが通常のチューニングだったとすれば、この日の柴山さんのフォームはオリジナル音源通りの変イ長調→変ロ長調、そこは確認できました。ジュリーの高音適性、畏るべし!

もうひとつ聴き逃したのは、白井さんが「ヒア・カムズ・ザ・サン」へのオマージュを採用したと思われる「一瞬アルペジオ」部を柴山さんがどう弾いていたのか。
「自慢の君がいる~♪」の直後ですから、どうしてもそっちに集中しちゃうんですよねぇ。和光市では気合入れてチェックしたいです。
ともあれ、「俺はまだまだ歌いつくしてない!」とのジュリーの決意表明、頼もしいばかりですね。


16曲目「Don't be afraid to LOVE

Panorama

これがまた新鮮でした。この曲はオリジナル音源ではエレキギターが一瞬しか登場しません。本当に一瞬で、しかも効果音のようなパートですから、「エレキギターが入っていない曲」と認識されているファンがいらしても不思議ではないと思っています。
そんな曲、しかも思い入れの深いであろう自作詞の名バラードを柴山さんのエレキ1本で歌うジュリー。歌もギターも、キラキラと輝くような名演でした。

あと、この曲は照明の演出が特に素晴らしかったです。広い広い武道館に光の雫が次々に舞い落ちてくるような・・・これはアリーナよりスタンドの方が感動も大きかったんじゃないかなぁ。

ここまで16曲。
曲数をカウントしていた僕は歌い終えたジュリーが深々と礼をして一度ステージから去っていくのを観て「あれっ、本編終わり?早いなぁ」と驚きはしましたが、ギター1本体制での演者の負荷も踏まえ、素晴らしいバランスの本編セトリの流れだった、とも思いました。
ただの1曲も50周年ツアーのセットリストとは重複しない渾身の選曲。「今」ジュリーが歌いたいラインナップ。そしてきっとアンコールでは50周年ツアーでも歌われた「お馴染みの曲」が来るだろう、と予想しました。
ただ、「今回も事前に記事に書いたツアー・セトリ予想は全敗か~、と(笑)。
毎度のことながら、ジュリーの考え、選曲、手法は僕レベルでは予測不能。この良い意味での「裏切られ感」こそがジュリーLIVEの中毒性なのかもしれません。


~アンコール~

17曲目「
ROCK'N ROLL MARCH

Rocknrollmarch_2

再入場したジュリー2着目の衣装に拍手とどよめきが。いやぁこの衣裳は話題になっていますね~。
終演後に「スコットランドのキルトだったよね!」と先輩方と盛り上がりましたが、先の伊勢崎公演でジュリーから「この(2着目の)衣装は自分のリクエスト」であったことが明かされたとか。
夏が大好きだけど暑がりのジュリー、「下半身が涼しそうだな」と思ったのかな?
それにしても、あのスカートの内部がどうなっているのか、女性ファンならずとも(笑)気になるところです。翻した時のチラリを見越して、カッコ良いトランクスをはいてる?でもジュリーはブリーフ派だと聞きますし・・・。
まぁタケジさんのことですから細部まで丁寧に作りこみ、薄い裏生地のインナーパンツ仕様かな?

アンコール前のMCは、おそらく今月いっぱいくらいまでは各会場でジュリーから今回のギター1本体制決行についての動機、詳細が語られるでしょう。
僕はツアー初日早々にそれが聞けて大いにジュリーの決断、柴山さんの心意気へのリスペクトが高まりましたが、これはみなさまそれぞれの参加会場で直に聞かれた方が良いかと思います。

いつものように初日の大会場はMCも短め(それでも結構お話してくれていますが)に、「オマケです!」からのイントロは「ROCK'N ROLL MARCH」。ここでようやく50周年ツアー・セットリストと重複。
予想はできていましたが、それにしてもこの曲までギター1本でブチかますとは・・・。
でも考えてみればこれはコード・リフですからね。ギターという楽器の破壊力、ロック・ナンバーの説得力・・・演奏パートの数は問わないかもしれませんね。
柴山さんはちゃんと、オリジナル音源で他の楽器が噛んでくる箇所から弾き方を変えたりしていますから、個人的には身体への馴染みも早かったかな。

間奏後の「tu、tu、tu・・・」の箇所はちょっと短くなっていましたか?これも次の和光市で確認しなきゃ。

18曲目「
ヤマトより愛をこめて

Konndohakareina_2

大トリはこの曲。ジュリーの歌で、ツアー2日前に亡くなられた先輩を思い出してしまいました・・・。
ジュリーの「今はさらばと言わせないでくれ♪」のリフレインについて後日、告別式をご一緒したもう1人の先輩が仰っていました。彼女はきっと、最後の「ヤマトより愛をこめて」を歌うジュリーに大満足しながら、フワフワと上から私達のことを見て笑っていたわよ、と。
そうだといいなぁ、と思いました。

柴山さんがピアノの代わりにギター・アルペジオで再現する「ヤマトより愛をこめて」は、僕もDVD『CROQUEMADAME & HOTCAKES』で仮体験していました。今回はその時とも少し違って、本来のギター・パートを追いかけるピアノの裏メロまで単音で弾くのですから、さらに進化しています。
僕はこの曲にはこれまでGRACE姉さんのドラムスに思い入れがあったのですが、柴山さんは複音の1~3弦同時弾きでその4ビートまで一部ですが表現してくれました。流行りの言い方をするなら「そんなん、できひんやん普通・・・言うといてや、できるんやったら!」と。実際にこの目この耳でこの素晴らしい演奏に触れて、参りましたよ本当に。

確かに僕はこの古稀ツアー、バンドを引き連れて怒涛に駆け抜けるジュリーの姿を望んでいました。しかし何ですかこの途方もないOLD GUYS ROCKな2人。
まごうことなく冒険、まごうことなくド派手な歴史が今年、日本武道館から始まりました。記念すべき初日に立ち会えて幸せでした。
ただ、無事初日に参加できたことを「当たり前」と思うことのないよう・・・それだけは自戒したいです。


・終演BGM「JUST A MAN」

この曲がジュリーに捧げられた堯之さんの作品であることは、みなさまご存知でしょう。ここでは、今ツアーの終演BGMに「JUST A MAN」を選んだジュリーの気持ちに思いを馳せつつ、今年5月天国に旅立たれた堯之さんへの幾多書かれた世の追悼文の中で個人的に群を抜いて素晴らしいと思ったものを2つ、改めてみなさまにお勧めしておきたいと思います。

まずは『ロックジェット VOl.73』。「遠い旅」と題してライターの高柳和富さんが執筆された追悼記事は、ジュリーの歴史について深い知識と愛情を持つ大先輩だからこそ書ける「本物」の文章。付け焼刃の情報収集だけで書かれたものとは完全に一線を画します。
扉の堯之さんのショットもとても素敵で、さすがは『ロックジェット』という永久保存版。
高柳さんとは昨年ひょんなことでご縁を賜り、最新の寄稿を楽しみにしていたのですが、まさかそれが堯之さんへの追悼文となってしまうとは・・・。

もうひとつ、こちらはお母さんやお姉さんの影響でジュリー興味を持たれたという作家さんのブログで、周囲の先輩方も大絶賛の『からすの落墨ブログ』さん。
堯之さんの旅立ちを受けて「GS残党<PYG>シリーズ」と銘打ち複数の記事を執筆されていますが、僕がその中で最も強く感銘を受けたのが、大野さんをメインに書かれたこちらの記事
ここで綴られている堯之さんの人柄と苦悩は、後追いファンの勉強の末に築かれた僕の中の堯之さんの魅力、イメージとズバリ重なるものでした。
僕自身はこの記事中の分類で例えさせて頂くならば、音楽への姿勢は「タイプ②」なんですけど(とは言え大野さんと違って僕は「天才」には程遠い「努力」型ではあるんですけどね)、YOKO君はじめ周囲の音楽仲間はことごとく「タイプ①」、自らのポリシーに合わないことはやらない、突き詰めて音の動機や対世間を考えるという求道者揃いで、そんな一見気難しい「タイプ①」を、一見能天気で自由な「タイプ②」が心から必要としている、という関係性はとてもよく分かるのです。

柴山さんが今回テレキャスをメインに使用したことは、堯之さんへの追悼とリスペクトを表したもの、と考えることもできそうです。
幾多ひしめく名ギタリストの中にあって、堯之さんは決して、突出して「上手い」ギタリストではありません。「上手さ」で言うなら柴山さんや速水さんの方が上。
(とは言え、素人からすると到底及びもつかぬ技量の持ち主であることは当然です)
しかし、例えばニール・ヤングのエレキギターの単音を誰も「上手い」とは言わないけれど、オンリーワンの音として多くの同業者、ファンから絶大な信頼とリスペクトを集めています。堯之さんはこの日本においては非常に稀有な、ニールのようなオンリー・ワン・スタイルのレジェンド・ギタリストなんですよね。「ビジネス」が絡む際の反骨心もニールと共通しています。
以前、確か拙ブログ本館のコメントだったかと思いますが、70年代初めくらいに堯之さんがジュリーファンにニール・ヤングを聴くよう勧めていたことがあった、と先輩から教わりました。目からウロコのお話でした。
(後註:このお話を教えてくださった先輩からご連絡を頂きました。先輩にニール・ヤングを勧めてくれたのは速水さんだったそうです。堯之さんの一番弟子的な存在である速水さん、ニールのようなアーティストをジュリーファンに推薦するというのがまた、時代の特性もありましょうが大変興味そそられる逸話です)

今一度、堯之さんのご冥福をお祈りいたします。

☆    ☆    ☆

何十年か後に、世間では
「沢田研二という凄い歌手がいてな・・・70歳になってからしでかしたことがまたとんでもなかった!」
と語られる時が来るでしょう。いや、ジュリーならまだその時も現役で歌っているかな。100歳のバースデイ記念公演でバンドスタイル復活かもね!
僕はその時まで生きてはいないと思いますが。
とにかく、ジュリーの奇跡の歴史をこの先少しでも長く見届けていきたい・・・まずは今回の古稀ツアー、残された参加会場を大いに楽しみたいと思います。

みなさまも是非ご一緒に。
とりあえず「雨だれの挽歌」のイントロでスタンド最上段からアリーナにダイブするYOKO君を目撃したい方はさいたまスーパーアリーナに集合!(笑)

今ツアーはそのさいたまスーパーアリーナまでネタバレ我慢のYOKO君に配慮し、僕の次回参加会場である和光市公演レポートもこのside-Bに執筆します。
いつもより長めの別館開店期間、どうぞよろしくお願い申し上げます。またこちらでお会いしましょう!

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2018年7月 4日 (水)

『OLD GUYS ROCK』開幕!

いよいよ始まります!

70歳にしてアリーナクラスの会場をこれでもかと組み込んだ怒涛のスケジュール。前人未踏、空前絶後のジュリー古稀ツアー『OLD GUYS ROCK』の幕が遂に日本武道館公演で切って落とされます。
「派手にやる」「冒険がしたい」等々のジュリーの意気込みが、果たしてどんな形で披露されるのか。
演奏形態は?
セットリストは?
これまで以上にドキドキの初日ですね~。

僕はステージをほぼ真横から観る1階西スタンド奥手という、おそらく武道館で最も視界の狭いエリア席からの参加ではありますが、こんなめでたいツアーの初日に参加できるだけで嬉しい!
もちろんそんな席ならではの独特の見え方もあるはずですので、レポに反映できればと思います。

例によってレポはじっくり、ゆっくりの執筆となります。
興奮覚めやらぬみなさまの第一声を楽しみに待っていらっしゃるお留守番組のファンも多いはずですので、レポ執筆開始までの間、参加されたみなさまからはこの記事にて熱々のコメントお待ちしていますよ~。

当日、お天気はあいにくの雨の予報です。遠方からお越しのみなさま、道中くれぐれもお気をつけて・・・。
ご一緒にジュリーの70越えをお祝いしましょう!

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2017年8月 7日 (月)

2017.7.16NHKホール 沢田研二『50周年記念LIVE 2017-2018』セットリスト&完全レポ

3週間もかかってしまいましたが、本日8月7日、ようやくレポを書き終えることができました。
例によって、更新日付を執筆完了日に移動させて頂きます。
今回も長々とおつき合い頂きありがとうございました~。

☆    ☆    ☆

行ってきました!

Img1558


↑ 遠征の長崎の先輩に頂いたフライヤー

170720tokyo

↑ 『東京新聞』7月20日朝刊


この歴史的ツアーの、しかも初日・・・本当に仕掛け満載の「これぞツアー初日の醍醐味!」というステージを、とんでもなく素晴らしい席で体感させて頂きました。
端っこの方とは言え、最前列ですよ。どんだけスクリーンが近すぎて見にくかったことか(違)。
もうね、この望外の巡り合わせに感謝しかありません。今年の席運はこの1公演ですべて使い果たしました。そのくらい幸せで、素敵な神席でした。

セットリストの構成については様々な受け取り方ができると思うけど、ジュリーのMCから解釈すると、2曲目の演奏となった「君だけに愛を」から、ジュリーがワイルドワンズのメンバー許可を得て自ら編集作成したという「渚でシャララ」のスクリーン映像までを、ジュリーが今回用意した「シングル(A面)50曲」と考えたいところ。
1曲目に演奏された「あなたに今夜はワインをふりかけ」とアンコールの「いくつかの場面」が、ジュリーの言葉通り「オマケ」のプラスαとして50曲を包んでいると。

で、今回もこれから長々と時間をかけてレポートを加筆していきますが、初日については曲順不同で書かせて頂きます。やっぱり曲順までは覚えられませんでした・・・。本館に書く8月の大宮公演レポートは、なんとか自力で「セトリ順」とできるよう頑張ります。
以下、オープニングとアンコール以外の演目は「リリース年順」に列記いたします。
例によって執筆途中の更新でネチネチと時間をかけて完成させます。呆れずおつきあいのほどを・・・。


☆    ☆    ☆

僕がツアー初日の参加に拘るのは「会場の誰もセットリストを知らない」独特の雰囲気が好きだからなのですが、今回はそれ以外に、ジュリーがお正月に話してくれていた「趣向を凝らした」演出もね、これはやっぱり初日ならではの「お~~っ!」というお客さんの空気を体感できたこと・・・感動しました。

まず入場するとBGMに流れていたのが「シングルB面」特集。僕が入場した時には「君を許す」がかかっていたんですが、タイガースでデビュー以来のシングルB面曲がリリース順に流れていたそうです。
「美しい予感」(「許されない愛」B面)まで流れたところでブザーが鳴ってBGMは終了。
しばらくして場内の照明が落ちると「わ~っ!」という歓声。まぁここまではいつも通りと言えばそうでしたが・・・皆がジュリーを迎えようと身を乗り出して大拍手を始めたのと同時に、スルスルと巨大なスクリーンが降りてきてステージを隠します。
「なんだなんだ?」と思う間もなく最初に「産まれたて」のジュリーのショットがスクリーンに「どど~ん!」と大映しされた時点でお姉さま方は「きゃ~~!」と。
さすが、反応早い!
次々に写真が切り替わっていき、『水の皮膚』の時には会場の後方から「ギャ~~ッ!」という悲鳴が最前列まで異様な圧となって押し寄せてきて(笑)。
そんなわけで僕としては、どの写真でみなさまがどんな声を上げるのか、と確認しながら映像を追っていくのが楽しかったなぁ。

後のMCでジュリーは「さっき(スクリーンに)映ってたのは親戚の子達です」と言って笑わせてくれましたが、写真はジュリー自身が選び編集までやってくれた(静止映像の足をバタバタ動かしたりとかね)そうで。
これは間違いなく、デビュー50周年という特別なツアーで計らわれた、ジュリーから長いファンの先輩方へのプレゼントですよね。
デビューから50年休まずに歌い続けているジュリーも当然凄いですが、50年ファンを続けている先輩方というのも本当に凄いわけです。この日の(そしておそらくツアー中ずっと)ジュリーは、そんな偉大なジュリーファンの先輩方に心から感謝を表している・・・歌のステージの様子も含めてそんなふうに感じられました。

ジュリー自選の写真はギターを弾いているショットが2パターン選ばれていたのが興味深く、新規ファンの僕もとても嬉しいサプライズな演出でした。
で、最後に今年撮影したっぽいジュリーの貴重なショットでスライドショーは締めくくられ、スクリーンが上がって再びステージが見えると、ジュリーもバンドも定位置にスタンバイしていて・・・その瞬間はもう、今まで聞いたことがないくらいの凄まじい拍手でしたね。

それでは、開演です!



~オープニング~

あなたに今夜はワインをふりかけ

Omoikirikiza

後のMCでジュリー曰く「最初の1曲はオマケ」とのことで、「シングルB面」の中でおそらく最も有名なこの曲からスタート。
いきなり斬新なアレンジで、イントロの「レ、ファ~ソ~ミ~ファ、ソ、ラ、ド~♪」が数回繰り返され、ジュリーがチラッとGRACE姉さんの方を確認して歌メロに入るまでの間、結構引っ張っていた印象です。
ジュリーの声、初っ端から出てましたよ!

この初日は『大悪名』のマルガリータからまだひと月。今回のツアーは皆さん事前に「頭はどうするんだろう」と心配される声が多く、「ハット希望」の声をよく聞きましたが、いやいやさすがはジュリー&タケジさん、「隠す」なんて野暮はしませんでした。
ほぼ丸刈りに近い髪型、これが本当にカッコ良かったんですよ。エメラルドグリーンのジャケットを着ていると「王者」の風格があってね~。

僕の席は柴山さんの定位置よりさらに上手寄りの端っこでしたから、サビで左右に出張してくれるのがお約束のこの曲でも(この時点では)ジュリーはあと数メートルで真ん前、のところまで来て止まって、という感じ。
でも、曲が進んでセットリスト中盤あたりからだんだん接近度が上がってきて、何度も正面に来てくれましたけどね。「差し向かいで完全に目を合わせて」な最接近は「こっちの水苦いぞ」と「サーモスタットな夏」の2曲でした。まぁその話はまた後で。

それにしても柴山さんの髪はジュリーのそれとは対照的で、史上最高級にモリモリでしたな~。



~50周年記念・ジュリー厳選のシングル50曲!(音源リリース順にて列記)~


僕のマリー

Tigersred

ここからはセトリ演奏順ではなく、リリース年代順に列記した曲それぞれについて、印象に残ったことを簡潔に書いてゆくスタイルです。
記憶力抜群の先輩のおかげでもうセトリ順も分かってはいますが、それは今は確認せず、マッサラな状態でこの初日レポを書いた後にキッチリ頭に叩き込んでから次回参加の大宮公演に臨みます。大宮のレポートはしっかりセトリ順に書くつもりですけど、今回ばかりはこういう形で・・・すみません。
あと、いつもの調子で書きたいことを全部書いていくと、なにせ52曲ぶんですからシャレにならない文量になってしまいます。ポイントを絞って、短めに纏めたいと思っています。よろしくお願い申し上げます。

この「僕のマリー」は4曲目(このあたりまでは覚えています)で、「あなたに今夜はワインをふりかけ」「君だけに愛を」「自由に歩いて愛して」と3曲歌ってから最初のMCがあって、その直後でした。
今回タイガース・ナンバーでは「モナリザの微笑」「銀河のロマンス」といった有名曲が選曲から外れていますが、やはりこのデビュー曲は外せないのですね。

柴山さんは単音、コード突き放し、ストローク、アルペジオをたった1人で再現。相当大変だと思うけど、柴山さんもジュリーと同じように「できることはやるんです!」って人なのですね。

シーサイド・バウンド

Tigersred_2

こちらはセットリスト終盤のMC(「ISONOMIA」の後)直後に配されました。タイガース・ナンバーでは唯一セットリスト後半に食い込んだ形です。
「あと10曲です!まだ先は長い・・・盛り上がってまいりましょう」みたいな感じで皆を喜ばせておいて、「シ~サイド・バウン!」のタイトル・シャウトに続いて演奏がスタート。全セットリスト中、最もオイシイ配置と言うか、ま~盛り上がりましたよねぇ。

エンディングのかけ声も、ステージを端から端まで駆けながら張り切ってリフレイン。ピーの裏声パートまで再現していませんでしたか?
もちろん間奏のダンス・タイムもありましたが、僕はジュリーばかり観ていたので、弦楽器隊の柴山さんと依知川さんがステップを踏んでいたかどうかまでは確認していません。大宮でチェックしたいと思います!

君だけに愛を

Tigersred_3

これは2曲目。1曲目の「あなたに今夜はワインをふりかけ」を「オマケ」とするなら、「ジュリーが選んだシングル50曲」一番手の披露ということになります。
1階センターの10~20列目くらいを狙った指差しが多め。とにかくジュリー、冒頭からメチャクチャ声が出ています。この日「ちょっとキツそうだな・・・」と感じたのは「危険なふたり」の最初の方くらいで、あとは「常に全開!」で、お客さんへの「愛」に満ちた声。
そんな声で歌われたタイガース・ナンバー「君だけに愛を」、新鮮でした。

演奏では、とにかく柴山さんの負担がハンパない!
普通に考えれば、この曲でアルペジオ・パートと単音パートを同時に弾こうなんて考えません。それを平気でやっちゃうんですから。
ホント、そこまでやるか!ってくらいの難易度ですが、あまりに素晴らしいので曲が終わった時、「できればその勢いのまま、間奏ソロも聴きたかったな~」などと贅沢なことを考えてしまいました。
でも、タイガースの曲はどれもそうでしたが「ショート・ヴァージョン」が似合っていました(おかしな言い方でしょうか)。「テレビサイズ」ヴァージョンありが全盛の時代に作られた名曲群だからなのかな。

青い鳥

Tigersblue

これは鉄板のセトリ入り。やっぱり「メンバーのオリジナル曲でヒットしたタイガース・ナンバー」としてジュリーにとって大切な1曲なのでしょう。
そのうちタローがこのツアーの何処かの会場に姿を見せることもあるでしょうし、「あ~おい、と~り~♪」の箇所ではタローも血が騒ぐでしょうね。

柴山さんが意外に苦労していました。この曲のソロって全部複音で、それ自体は難しいことではないんだけど、タローのオリジナル演奏は徹底して横移動なんですね。フレット的には縦移動を採り入れても同じ音階は出せるわけだしどう考えてもその方が理に適った弾き方なんですが、敢えて横・・・これは柴山さんのタローへの、ひいてはタイガースへのリスペクトだと思います。
横移動で弾くと、「ちゃ~ん、ちゃ、ちゃちゃちゃちゃ♪」の「ちゃちゃちゃちゃ♪」の部分がかなり強引な運指になって、半拍ごとに引っかかるよう感じになるんですが、それこそが「青い鳥」のギターなのだ、と。

考えてみれば、ほぼ虎の時にサポート・メンバーだった柴山さんも、この曲のソロは完全にタローに一任して自らは弾いていません。
柴山さんが弾く「青い鳥」のソロは『ジュリー祭り』以来ということになりますか。
貴重な演奏が間近で観られたなぁ、と思います。

ラヴ・ラヴ・ラヴ

Tigersblue_2

ジュリーが歌う「ラヴ・ラヴ・ラヴ」を体感するのは2013年のタイガース再結成ステージ以来。
しかしその間僕は毎年、ピーのツアーでこの曲を生で聴き続けています。
二十二世紀バンドという多彩なヴォーカリスト数人を擁するバックを率いているピーも、この曲だけは必ず自らが歌います。「やらなければゼロはいつまで経ってもゼロのまま。やり続ければそれは必ず10となり、20となり、30となってゆく」というのは僕自身の座右の銘のひとつですけど、ピーのヴォーカル(特に高音の出し方)の進化は、毎年歌われる「ラヴ・ラヴ・ラヴ」に最もよく表れているでしょう。
一方ジュリーの場合は、これはもう天性なのですね。歌うために生まれてきたような人が、この難易度の高い曲を数年ぶりに歌うというのは宿命づけられていたことと言うのか、「自然である」と言うのか。
ジュリーの歌人生はタイガースのリード・ヴォーカリストから始まったんだなぁ、と改めてそんな当たり前のことを感じました。

僕は今回セットリストの曲順までは覚えられませんでしたが、「今何曲目」というのはリアルタイムでずっと数えていました。この「ラヴ・ラヴ・ラヴ」で25曲です。
「ちょうどこれで半分かな?」と思っていると、歌い終えたジュリーがここでMCに入りました。
「さて、ここまでで何曲歌ったでしょうか・・・24曲です」と言うので「あれえっ数え間違えたかな」と。
でもジュリー曰く
「厳密には25曲ですが、最初の1曲はオマケです!」
つまり「あなたに今夜はワインをふりかけ」はシングルA面曲ではないけれど、特別に歌うんだ、ということです。「さぁ、楽しいショーが始まりまっせ!」という「オマケのオープニング」として。
そこから24曲歌って、前半ラストの折り返し地点が「ラヴ・ラヴ・ラヴ」。本当に完璧な構成です。

そう言えば、『ジュリー祭り』も前半の締めくくりはこの曲でしたね。「還暦」記念も「デビュー50周年」記念も、「自らの節目を自ら祝う」のではなく、自分に関わる人達、歌を聴いてくれる人達すべてに「愛と感謝を捧げる」コンセプト。これぞジュリー・・・本当に素晴らしい!
この場に立ち合えて、幸せです。

自由に歩いて愛して

Pygbest

「君だけに愛を」に続いての3曲目。イントロ一瞬でそれと分かる曲ですから、「うお~!」と声が出ました。初めての生体感ということもありますし、なにせ数日前にセトリ予想記事書いたばかりでしたから。
でも今回は「セトリ予想が的中した」ってことじゃないと思ってます。だいたい僕は、「PYGは花・太陽・雨で堅い」な~んて書いています。
これはやっぱり、「お客さん(特に50年ずっとジュリーを観続けてきた長いファンの方々)への愛と感謝がコンセプト」ならではのセトリ入り。「PYGのシングルからこの曲を歌って欲しい」と切望されていた先輩方へのジュリーからのプレゼントです。
たとえDYNAMITEなんぞが余計なセトリ予想を書こうが何しようが、そんなことは今回ばかりは関係なく(笑)・・・ジュリーと先輩方の相思相愛ぶりを存分に見せつけられた、というそんな選曲でした。

僕は記事中で「もしこの曲が採り上げられたら、間奏のオルガン・ソロも再現される」と予想しましたが外れました。1番の後にすぐ「Now the time for love♪」のリフレインでしたね。
あと、イントロから炸裂する難易度の高いギター・リフについて「柴山さんもさすがにニコニコしてはいられないはず」と書いたのですが、これまた大外れ!
余裕の笑みとともに「どうだ!」と言わんばかりの演奏で。フォーム的には「Am」のローコード・ポジションですから、フレットすら見ない、というのは分かるんですけど、それにしてもあの変則アルペジオ(「プリング・オフ」の連続技を含む)をあんなに涼しげにブチかますとは・・・畏れ入りました。

この曲の後に最初のMC。先述した「親戚の子達」発言もここです。
「長く続けていれば50周年にもなるのですが、その50周年のステージをいっぱいのお客さんの前で歌えるというのが本当に嬉しい」
と。もちろん、会場の全員がその言葉に大きな拍手で応えましたよ!

君をのせて

Acollection

セトリ配置をまるで覚えていない曲のひとつ。
「ラヴ・ラヴ・ラヴ」より前だったか後だったか、前後の曲が何だったのかも覚えていません。まぁ、どんな配置でどんな曲と繋がってもしっくりくる、髄までジュリー!という大名曲だってことですよ!(←言い訳)

このソロ・デビュー・シングルが、今なおジュリーの声と喉にピッタリという奇跡。
ショート・ヴァージョンながら、半音上がりの転調リフレインまでキッチリと歌ってくれました。
指弾きのベースが優しい!依知川さんのピック弾きと指弾きの選択は的確、適切です。
歌い終わったジュリーがエンディングに合わせて優雅に腕をクルクル回し片膝をつくお辞儀のポーズも、すっかり定着しましたね。

許されない愛

Julie2

今回のセトリは、リリース時期が近い曲を数曲固めて歌う「プチ・時代別コーナー」が随所に織り込まれていて、この「許されない愛」は70年代前半のヒット・シングル・コーナーで披露されました(セットリスト序盤)。

この曲はアレンジも(リリース当時としては)すごく冒険的で、Aメロのリズムを刻んでいるのがドラムスではなく、ギターの「じゃ~、つく、じゃ~、つく」というストローク&ブラッシングです。当然今回のステージでは柴山さんが担当。鉄人バンドだとそこに下山さんのドアーズ直系な変態リードが絡むのですが、さすがにそこまでは再現されませんでした。
Aメロの間はドラムスが「ここぞ」のタイミングで効果音的に「ばしゃ~ん!」と噛み込むのがカッコイイ。オリジナル音源にも忠実な演奏で嬉しくなります。
もちろん泰輝さんのハモンドも大活躍。

満を持してのサビでようやくビートがハッキリしてくる、というアレンジ。ワンコーラスのショート・ヴァージョンでも楽曲のクオリティーが伝わる名曲・・・やっぱり僕はこの曲、大好きだなぁ。
「ここに~、あな~た、が~♪」と熱唱するジュリーの横顔が、今も脳裏に焼きついています。

あなたへの愛

Royal3

僕の記憶だと「許されない愛」→「あなたへの愛」→「追憶」なんですが、どうやら実際のセトリは「あなたへの愛」→「許されない愛」の順序が正しいようです。

柴山さん、この曲では毎回音色変えてくるんですよね。いつでしたか、まるで加瀬さんみたいなセッティングでエア・コードのフォーム移動を「きゅっ、きゅっ」と言わせていたことがありましたが、それは下山さんがアコギを弾いていたからこそ可能だったこと。
今回はリードも弾いて、アルペジオも弾いて、ストロークもやってと大忙し。音色はオリジナル音源に近い空間系のエフェクトで作り込んでいました。

サビのGRACE姉さんのキックが素晴らしいです。普通のエイトではなく、「どっどどどん、どっどどどん♪」と16分音符で跳ねるのです。これからの公演ご参加のみなさまは是非注目してみてください。

危険なふたり

Royal

「ギター・リフもの」ヒット曲コーナーの中の1曲として、「さぁここからスパートかけます!」的にセットリスト後半折り返し早々の位置に配されました。

ジュリーの声はこの日絶好調だったのですが、僕が唯一「あっ、ちょっと苦しそうかな」と感じたのが、「危険なふたり」の歌い出しあたり。前曲が「ウィンクでさよなら」で、とにかくステージを左右に走り回ってのパフォーマンス。そこから間髪入れずこの曲に繋がったので、少し息切れがあったのかもしれません。
ただ、お客さんの興奮は確実にジュリーにも伝わっていますから(やっぱりこの曲はイントロの一瞬で「うわ~っ!」と会場の温度が上がります)、喉を奮い立たせての熱唱・・・こういう「ちょっと無理してでも」歌ってのけるジュリーもまた素敵なのです。
ということで、恒例の「年上のひと・物色」はこの日は無し。ちょうどその歌詞部の時ジュリーは僕とは反対側ブロックに進出していて、そのあたりの最前列に普段から師と仰いでいる先輩がいらしたので、「出るかな?」と楽しみにしていたんですけど(笑)。
刈谷でどうだったのか分かっていませんが、京都公演あたりからはやってくるんじゃないですか~?

追憶

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「あなたへの愛」「許されない愛」と固まって「70年代前半のヒット曲コーナー」に配されました。このあたりの流れは特に、リアルタイムで体感していた先輩方には「あの頃」に引き戻される感覚があったでしょうね。
一方でこれら3曲の固め打ちで新規ファンの僕が「引き戻された」のは、2015年のツアー。「KASE SONGS」で彩られたあのセットリストを思い出しました。

「許されない愛」然り、「あなたへの愛」然り・・・そしてこの「追憶」も、ショート・ヴァージョンでワンコーラス歌うだけで楽曲の綿密さ、ヒット性、ポップ性がビシビシ伝わります。
Aメロ、サビの展開、構成が明快で、説得力があって・・・改めて「加瀬さんは凄い!」と。
残念ながら今回は「恋は邪魔もの」が選曲から外れましたが、これら加瀬さんの名曲群はジュリーがステージに立ち続ける限り、また何度も聴く機会があるはず。
僕は今ツアーを「ジュリーからの愛と感謝のステージ」だと思っていて(みなさまもそうでしょう)、「追憶」では、ジュリーからの加瀬さんへの「愛と感謝」を感じました。本当に素晴らしい歌、素晴らしい曲です。

「愛の逃亡者/THE FUGITIVE」

Fugitive

これもセトリ配置をまるで思い出せない1曲。
なんとなく「ラヴ・ラヴ・ラヴ」より後だったかなぁ、と思っていたんですけど、正しくは前半。「はは~ん、ちょうど僕が曲順を覚えるのをサッパリあきらめたくらいの頃かぁ」と、妙に納得したりして。

さて、今セットリストで僕がまだ考察記事未執筆の曲は計6曲でした。この「愛の逃亡者」と、「時の過ぎゆくままに」「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」「STEPPIN' STONES」「愛まで待てない」。
このうち、来年の6月25日に書くと以前から決めている「時の過ぎゆくままに」以外の5曲を、今年中に”セットリストを振り返る”シリーズとして採り上げようと考えています。僕は大宮の次は11月の松戸までしばらく間隔が開きますから、大宮のレポートを書き終えたら早速開始するつもりです。

で、「愛の逃亡者」。僕は初の体感でしたが、今回は「イギリスのシングル・ヴァージョン」でした。「うっ!」「はっ!」が無いんですよ(無かったですよね?)。
イギリスのシングルのこの曲に「うっ!」「はっ!」が無い、と僕が知ったのはつい最近のこと。福岡の先輩に聞かせて頂いたラジオ音源『愛をもとめて』の「ロンドン報告」の回でジュリーがそんな話をしてくれています。もちろん考察記事ではその話も書きますよ~。

エンディング、「FUGITIVE KIND~♪」のオクターブ上の高っかいメロディーをジュリーは気合で歌いました。その姿、歌声・・・グッと胸に迫ってきますね。

モナ・ムール・ジュ・ヴィアン・ドゥ・ブ・ドゥ・モンド

Kenjisawadafrance

年代順に列記しているので自分でもセトリ曲順が分かりにくくなっています(汗)。
これは「愛の逃亡者」より先に歌われました。歌い終わった後「メルシー、メルシー、フランス生活長いもんで・・・」とお客さんを笑わせてくれたのですが、間を置いて歌われた「愛の逃亡者」では「サンキュ~、サンキュ~、イギリス生活長いもんで」とヴァリエーションを変えて(笑)。このギャグは毎回やるつもりなのかな?

今年は『愛をもとめて』のラジオ音源が聞けたこともあって、流暢に「モナ・ムール・ジュ・ヴィアン・ドゥ・ブ・ドゥ・モンド」とタイトル紹介する若きジュリーの声が耳にこびりついているんですが・・・いやいや、69歳のジュリーがいざ歌い始めるとその当時の声のまんまと言うのか、「歌」って不思議だなぁと。
明らかに「今現在の声」でそれが「凄い!」と思う歌もあれば、「昔のまんまで凄い!」と感じる歌もある・・・この曲は後者ですね。
40年以上前のピエールさんの発音指導は、今もジュリーの中に息づいています。「パリ」を「ぱひ♪」と発音するジュリーの生歌に萌えまくり!

「時の過ぎゆくままに」

Ikutuka

さぁ、これです!
昨年から下山さんと依知川さんが入れ替わり、現在のジュリーのバンドはギター1本体制。僕は初のジュリーLIVEからずっと鉄人バンドの演奏でジュリーを観てきて、LIVE超定番曲について「この曲はこう、この曲はこう」と、演奏のポイントも自分の中で確立されたかな、という時期でのメンバー交代でした。
ギターが1本となり、柴山さんがフル回転するシーンを2016年お正月から3ツアー観てきましたが、「こればっかりはギター1本体制では無理!」と考えていた定番曲が2曲。「時の過ぎゆくままに」と「いい風よ吹け」です。
いや、「無理」というのは「曲の再現が無理」という意味ではないですよ。それは今セトリで言うと例えば「君だけに愛を」「憎みきれないろくでなし」などのように、「柴山さんが2つのギター・パートを1人で担う」スタイルが、「時の過ぎゆくままに」「いい風よ吹け」の2曲の場合は物理的に絶対無理だということです。
つまり、ギター2本体制での演奏パートいずれかを、ギター以外の楽器が代行することになります。

「時の過ぎゆくままに」は今回必ずセトリ入りする曲ですから、僕は事前にアレンジを予想してみました。
あの「時過ぎと言えばこれ!」というリード・ギターのパートをキーボードで弾くのはどんな音色であろうが違和感が大きい。ならば、アコギ・ストロークのパートをピアノで代行するのではないか、と。
「ヤマトより愛をこめて」のアレンジ・イメージですね。色々考えたけどそうするしかないだろう、と結論づけていざその時を待ちました。

セトリ前半のヤマ場・・・いよいよこの特大ヒット曲のイントロが流れ、ジュリーの歌が始まってビックリ。
何と、アコギのストローク・パートを依知川さんのベースが担うという・・・これは考えもしなかった!
なるほど、低音のロングトーンでルートの音とリズムを揃え、「体あわせる♪」以降の音の厚みは泰輝さんのストリングスに託すと。やられてみると、今のバンドならば「これしかない」という感じです。
本当に素晴らしい演奏でした。その上で、僕はやっぱり下山さんのアコギも恋しいです。昨年は柴山さんがスタンド弾きのアコギを魅せてくれたけど、今年になってからはジュリーのLIVEでアコギの音を聴いてない(お正月も柴山さんはエレキのみ)んだなぁ、と感傷的になったりもしました。

それにしても今回のセトリ、出し惜しみないですね~。前半部からバシバシ「超有名曲」が出てくる。でも後半になってもそういう曲がまだまだ残ってる・・・本当に贅沢で偉大な、歴史的ツアーなのです。

ウィンクでさよなら

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セトリ後半のスパート的な配置となった「ギター・リフのヒット曲」コーナーの切り込み隊長。この後「危険なふたり」「ダーリング」とリフものの「お馴染み」ナンバーが続くことになります。
前半の「STEPPIN' STONES」あたりからジュリーは僕の真ん前まで進出してくれるようになって、動き回る曲での接近度が上がっていましたからこの曲が始まった時は「来るぞ、来るぞ」と大いに期待したのですが、例の「アイ、ラ~ビュ~、アイ、ニ~ジュ~♪」の求愛ポーズ、上手側では僕の2つ内のお席のお姉さんの前まで。う~ん残念。下手側では結構奥手まで行ってたのにな~。羨ましい!(←最前列で観ているのに贅沢を言ってはいけません)

とにかく元気に走り回るジュリー。
初日はこの後の「危険なふたり」でちょっと辛そうにしていたくらいですから、ジュリーとしてもいつも以上に全開で暴れていたんだと思います。厚手(だと思う)の白シャツ越しに大汗かいてるのがハッキリ分かりましたし、夏男・ジュリーに似合う1曲ですね。
そして秋、冬へと続くツアー。これから公演を重ねるに連れて、2015年に魅せてくれた「スライディングしての求愛ポーズ」も再現されるんじゃないかな?

コバルトの季節の中で

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これは復帰直後の依知川さんがAメロでかなり苦労していたなぁ、という印象が残っている曲。
今回は初日からバッチリ!柴山さんの手元を見ながら、丁寧に1拍目を弾き、キッチリとオブリガートも入れてきた依知川さん。今年はBARAKAのアニヴァーサリー・イヤーと並行してのジュリー・ツアーで忙しいはずですが、いずれも稽古充分と見ました。


この機に再度広報しておきますと、依知川さん率いるBARAKAは、11月2日(ジュリー松戸公演の前日)での東京国際フォーラム公演が決定しています。

Baraka2

「なんとか満員にしたい」と後援会メンバー(あさいちのLIVEでお友達になりました)の方々も準備に邁進中とのこと・・・ジュリーファンのみなさまもご都合よろしければ是非!

ジュリーのヴォーカルは相変わらず涼やかで、美しい進行が際立ちます。
この曲だけではありませんが、今回の全国ツアーに来場する一般ピープルにも「作曲家・ジュリー」の素晴らしさをもっともっと知ってもらいたいですよね。

勝手にしやがれ

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イントロ一瞬で会場の空気が一変する感覚、ピアノの音に合わせてビシッ!とジュリーがポーズをとるや「わ~っ!」と沸く独特の瞬間。
これまで何度も体感しているけど、今回は『ジュリー祭り』の時にこの曲が始まった感覚に近かったです。やっぱり名曲、凄まじい大名曲なのだ、とあの時と同じことを考えました。

満員のお客さんの壁塗り・・・壮観な光景を振り返って眺めたかったけどさすがに最前列でそれは(笑)。
「アンタ、初日そんな席だったら大宮の俺らは2階最後列で確定じゃん!」とYOKO君が言ってくれていますので(自分だけ良い思いをしてすまぬ・・・)、会場総壁塗りを眺めるのは大宮の楽しみにとっておきます。

いやぁ、それにしてもショート・ヴァージョンでこれほどの説得力ですよ。
柴山さんの弾くコード、「F→Em」の箇所を確認。変則チューニングでないとしたら、これはオリジナル・キーです。数年前にジュリーよりずっと若いトップ・アイドルがテレビでこの曲をカバーしたことがありましたが、それでもキーは1音下げていました。
69歳のジュリーが軽々かつ豪快に歌う正にオリジナル、唯一無二の「勝手にしやがれ」。素晴らしい!

憎みきれないろくでなし

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「初日の柴山さんベスト・プレイ」個人的第2位!
最前列って、どうしてもオーラや吸引力に抗い難くてジュリーばかり観ちゃうんですけど、やはり上手端っこにいるわけですから、柴山さんが「おおおっ!」という演奏を魅せてくれた時には釘づけになります。
ま~~~、カッコイイですよ!
イントロの「でけでけでんでん、でんでででででん♪」から既に目が離せません。
しょあ様のレポでリンクを頂いて恐縮しきりなのですが、実のところは僕だって柴山さんの「創意工夫のカズカズ」を1割も理解できていないでしょう。

ただただ、カッコイイ!と思って目を奪われる。
この音好きだ!と思って魅入ってしまう。

と、そういうことなんです。本当は、理屈なんてまったく必要ないんですよ。
ロック・ナンバーにおいて、ギター・リフとカウベルを組み合わせてルーズに攻める、いわゆる「バカ・ロック」(←最大級の絶賛です)の世界最高峰楽曲こそ「憎みきれないろくでなし」。
で、そういうバカ・ロックのギター・フレーズを弾く時の名ギタリストって、世界共通でエロいんですが・・・柴山さんはその中でもトップ・クラスです!
もちろん堯之さんとも違う・・・堯之さんのこの曲のギターは「どうだ!沢田!」って感じ。もちろんそれは素晴らしいのだけれど、柴山さんの場合は外向きで「みんな、こっちおいで!」みたいなエロさになります。
顎を上げて下を見る(フレットではなくて、客席を見ます)挑発的なエロ。ギター・リフはAメロに入っても続き、Bメロでは「でけでけでけでん!」とシャキッと2拍で切ってくるのがまたカッコイイ。
この曲は当然ながらジュリーもエロいに決まっていますから次回大宮ではジュリーに注目して観たいと思っていますが、初日の僕は完全に柴山さんにヤラれてしまいましたね・・・。

各曲がワンコーラスにアレンジされた中で、「間奏ギター・ソロ」をそのまま「後奏」へとシフトさせていたのがこの曲と「greenboy」でした。
ジュリーが「歌のパートを早めに終えてでも、絶対ギターソロをブチかまして欲しい」のがこの2曲だった、というのもなかなか興味深いところです。

てなことで僕はこの曲、柴山さんばかり観ていたのですが・・・なんですか、後で聞くところによれば、ギターソロに行く直前ジュリーが「カズ!」と叫んでから指差ししていたんですって?
完全に見逃しました・・・(泣)。

あと、かつて鉄人バンドの演奏が素晴らしかったことを踏まえた上で書きますが、特にこの曲についてはベースが入った方が絶対に良いです。
イントロ冒頭、「ぎゅ~ん♪」に続く1拍目の音のインパクトが全然違う・・・これは大宮でYOKO君も同じ感想を持つだろう、と思っています。

サムライ

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これは10曲目(「ワイン」からのカウントで)。
結果的に曲順を覚えることはできませんでしたが、いつものように「後からじっくり思い出す」つもりでキリ番の曲はしっかり覚えて帰ったんですけどね・・・。「サムライ」は最初のキリ番でした。

スタンドマイクをセッティングしてジャケットを肩にかけた時点で「あぁ、次はサムライだな」とジュリーファンなら全員分かります。ジュリーはこの曲が終わるとジャケットを脱ぎましたから(いかな僕でも最前列だとそこは覚えてる)、翌日スポーツ新聞を賑わせたエメラルドグリーンのジャケット姿のショットは、「サムライ」までの10曲のうちいずれかのシーンということになります。
歌はもちろん素晴らしく、ジュリーの喉がこの日絶好調だったことを裏付ける1曲でした。

ダーリング

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「ウィンクでさよなら」「危険なふたり」に続く「ギター・リフもののヒット曲」コーナー。
括りで言うなら、このコーナーの中に「恋は邪魔もの」「カサブランカ・ダンディ」「酒場でDABADA」あたりが入ってもおかしくありません。
今回僕は「カサブランカ・ダンディ」がセットリストから外れたことが意外でした。ツアー途中のセトリ入れ替えがあるとすれば一番手に考えられるナンバーでしょうが、さてどうなりますか。

初日の「ダーリング」で特筆すべきはやっぱり、「その指で髪をかき上げてくれ♪」の箇所。坊主頭を必死でかき上げようとして「ああっ、髪がないッ!」みたいにクシャクシャッ!とやるジュリーの表情が強烈に印象に残っています(笑)。
これ、最終的にはフッサフサの髪を誇示するようなアクションへと変わっていくんでしょうかね~。参加会場ごとの変遷が楽しみな曲です。
いずれにしても、この愉快な「坊主頭無理矢理かき上げ」のシーンが観られるのはツアー初期限定。貴重ですよね。僕は次の大宮までギリギリ体感できるかな。

何度も体感できている曲ですが、なんだか久しぶりに感じました。「だ~~~り~~ん♪」の拳突き上げをジュリーと一緒にやるのも久々な感覚。
久々と言えば、大宮のこの曲ではYOKO君の指舐めが見られるはず。あれを僕がやっても気持ち悪いだけですが(泣)、彼がやると悔しいことにカッコイイのです!
二枚目しかやっちゃいけない所作なのでしょうね。

ヤマトより愛をこめて

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「えっ、意外と早いな」と思いました。
セトリ順が、ってことね。みなさまもそうかもしれませんが、僕にはこの曲、「気になるお前」と並び「セットリスト最終盤」のイメージが強いんです。

『ジュリー祭り』からの9年でしか語れないながら、生で聴くこの曲のジュリーのヴォーカルは、ツアーによって、公演によって表情を変えることがあります。
切々と何かを訴えるように情感が込められていたり、「別の喉」を使ってハスキーに歌いドキリとする時があったり、そしてこの日のようにひたすらメロディーを追う「無」の境地、優れた俯瞰力を感じさせられたり。
ただ毎回思うのは、激しいロック・コンサートにあって「ヤマトより愛をこめて」は常に安らかで、「バラード」を逸脱しないオンリーワンにして至高の1曲である、と。誰の真似でもないし、誰も真似はできないんですよ。
今ツアーはセトリ最終盤の「ヤマト」ではないけれど、「ス・ト・リ・ッ・パ・-」の次に配されています。曲想も世界観もガラリと変わるけど、「ヤマト」はいつものように「ヤマト」だったなぁと。
いつも最高の歌声が聴ける・・・そういう意味では「君をのせて」のように、どれほどの時が経とうと自分の声、喉にピッタリであるという奇跡をジュリー自身が感じながら歌っている曲かもしれませんね。

なんとなく誘われて会場に来てみました、という一般ピープルに強く訴える有名曲だと見ています。
僕は11月の松戸公演にロック畑の友人をたくさん誘っているけど、彼らがセットリスト中最も心奪われるのは、ロックなナンバーよりもむしろこの「ヤマトより愛をこめて」ではないかと予想しておきますか。

LOVE(抱きしめたい)

Love

セトリ後半早々の配置というのは覚えていましたが、改めて確認しましたら「灰とダイヤモンド」と繋がってましたか。いやいや贅沢なセトリです。
この曲も「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」同様、『ジュリー祭り』以降に採り上げられたのはお正月LIVEの2回で、YOKO君はまだ未体感。『昭和90年のVOICE∞』のセトリを伝えた時、1曲目がこの曲と知った彼は「凄ぇ!」とずいぶん羨ましがっていましたし、大宮ではイントロの瞬間に殴られるだろうなぁ。

個人的には、この曲はやっぱりアコギが恋しい。あの正攻法の、基本中の基本運指のアルペジオを再現して欲しい、と思ってしまいます。
僕はこの曲、誤解を招く言い方かもしれませんがジュリーにしか歌えない『魂のフォーク』だと最近は考えていて。そこは「ヤマト」とは別物の魅力があると言うか・・・心地よい痛み、恩讐とか情念。男独特のね。
そんな歌を歌うジュリーもまた素敵です。
いつか、「ヤマトより愛をこめて」→「LOVE(抱きしめたい)」というセトリを体感したいです。いずれも「男」際立つジュリー、でもきっと『A面コレクション』とは全然聴こえ方が違う、と思うんですよね。

TOKIO

Tokio

「ヤマト」ほどではないけどこの曲も「おお、早々に来たか!」と思いました。「早々」とは言ってもジュリーもお客さんもここまでの流れで完全に「デキ上がって」いますから、そりゃあ盛り上がります。

今ツアー、一般ピープルの人達を多くお誘いしているけど、松戸公演に集結する音楽仲間については、やはり同世代ということで反応が楽しみなのはこの曲。
僕も『ジュリー祭り』以前ポリドールのアルバムを全制覇した後、映像作品に手を出して『ジュリーマニア』を観た時、「TOKIO」には特に引きつけられた、という想い出があります。実際のセールス以上に『ザ・ベストテン』世代にインパクトを残している曲・・・かな?
まぁ世代によっては「危険なふたり」であったり「勝手にしやがれ」に同じ感覚があるのでしょうけど。

ショート・ヴァージョンなのでお馴染みのパントマイム・コーナーが無いのはちょっと寂しいかなぁ。
あと、全セットリスト中、エンディングのアレンジに最も驚かされたのがこの曲でした。「と~き~お!」のヴォーカル・ディレイで突然終わります。
でも後になって、そう言えば「TOKIO」の頃ってこういう終わり方するテクノ・ナンバーが流行っていたんだっけなぁ、とも思いました。

ス・ト・リ・ッ・パ・-

Stripper

「greenboy」のソロで柴山さんがステージ前方にせり出していなかったとすれば(記憶が曖昧なのですが、定位置だったように思います)、左右弦楽器隊がずずい、と進み出てきた最初の1曲。ここで「おぉ、柴山さん来た来た~!」と思ったことはハッキリ覚えています。
当然、イントロからずっとジュリーと3人並び体制ね。

ヴィジュアルとして見て、例えば『快傑ジュリーの冒険』なんかで弦楽器が全員ジュリーと横並びでズンズン前に迫ってくる構図っていうのは革命的でした。
「TOKIO」のパラシュートと同じくらいに斬新なステージング発想だと思います。誰が考案したのかなぁ?

麗人

Royal3_2

昨年一度生で聴いて、僕はどうしようもなくこの曲が好きなのだ、と再確認。
あの時は「生体感は最初で最後かも知れない」とYOKO君に話したりしたものだけど、この歴史的セットリストで再会叶いました。
YOKO君にとってもこれはきっとダイヴ曲なんだろうなぁ(彼は今回が初体感となります)。大宮ではこのイントロでも殴られる覚悟はしておこう・・・。

柴山さんのギターもカッコイイけど、これはやっぱりGRACE姉さんのドラムス!
イントロのスネア3打の圧倒的吸引力。そして最大の見せ場は「たったひとつ、あ~いするだけ♪」の箇所でのキック16連打です。
ただし今回はショート・ヴァージョンだから1回しかありませんよ。みなさまお聴き逃しなく!

”おまえにチェック・イン”

Wonderfultime

セットリスト最終盤、「シーサイド・バウンド」から怒涛に攻める「あと10曲」コーナーに配されました(京都や岡山のレポを書いてくださっているブロガーさんの記事を拝読するうち、だんだんセトリ順をソラで言えるようになってきました~)。
「ダーリング」同様に何故かずいぶん久々の感じ。大げさなアクションでこそありませんでしたが、ジュリーの「ほみたい、うん!」もなんだか懐かしくて。

さて、今回も普段から師と仰ぐ先輩の初日レポを個人的に頂いたのですが、僕などでは思いもよらない視点、あの素晴らしいステージを表現するお言葉の数々に毎度のことながら感動させられました。
その中のひとつ・・・先輩は今回のセトリのコンセプトを「祝福される歌たち」と仰っていたんです。
今ツアーでジュリーは長いファンの先輩方はもちろん、自分に関わったすべての人達、すべての出来事に愛と感謝を捧げている・・・そこまでは僕も考えたけど、なるほどそれは「持ち歌」に対してもそうなのか!と。
特に「普段は5曲くらいしかやらない」と言う「ヒット曲」1曲1曲にジュリーは「ありがとう」「愛してる」「おめでとう」の気持ちで歌ったかなぁ、と考えさせられました。

「祝福される歌」からパッと連想するのはやっぱり明るい、楽しいヒット・チューンです。「”おまえにチェック・イン”」はもちろんそうですし、この前曲の「シーサイド・バウンド」なんかもね。ジュリー本人にもお客さんにも「祝福されてる」感じ、確かにあったと思います。

「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」

Royal3_3

正に「佳境」の配置。ファン以外の一般ピープルのお客さんにとっては、「よく知ってるヒット曲」として大トリとなるのはこの曲です。

曲数をカウントしていた僕はこの時点で、「酒場でDABADA」と「ロンリー・ウルフ」は今回もお預けか~、と覚悟しました(笑)。「そのキスが欲しい」「愛まで待てない」「ROCK'N ROLL MARCH」が残っていましたからね(てか、「カサブランカ・ダンディ」も残ってる、とこの時は考えていたので・・・とにかく「永遠に」がスーパー・サプライズでした)。
『ジュリー祭り』東京ドーム公演開幕直前に僕とYOKO君が挙げた「ダイブ曲」2曲は、ジュリーに言わせれば「ワシがオマエらヒヨッコとも相思相愛になるには、まだまだ10年早いよ!」ということなのでしょうか(泣)。

いやぁ、それにしてもここへ来ての「ハッ!ハッ!ハッ!」の一体感が凄いです。
この配置でこの曲なら一般ピープルも全員参加で間違いありません。でも、最後の「ハイ!」をビシッと合わせられるのは僕らジュリーファン限定ってことで!

晴れのちBLUE BOY

Royal3_4

これも「あと10曲」コーナー、最終盤の盛り上がり曲。
一般ピープルの方々はこの曲普通に知ってるのかな。「あぁ、こういうのあった!」って感じでしょうか。そんな方々が総じて「改めて聴くと名曲じゃん!」と思ってくれそうなセトリ配置だと思います。

僕はギター1本体制でこの曲をやるなら「Espresso Cappuccino」みたいに「ぎゅ~ん♪」と言わせるギターを依知川さんがベースで再現するのでは、と予想していましたが外れました。リズムにサンプリングを使ってきましたね。それはそれで新鮮でした。
結果、個人的には今セットリストで一番ベースがカッコ良かった曲!がこれです。
ジャングル・ビートのフレーズをシャッキシャキに奏でる依知川さん。音階的にはたったの2音しかないリフがこんなにもカッコイイとは驚きです。

実はこの曲は(リリース当時の音つくりの流行も関係していますが)、オリジナル音源のベースが今ひとつなのです。いや、建さんの演奏が今ひとつなのではなくて、ミックスがね。どちらかと言うとリズム隊についてはパーカスに寄せているんですよ。
テレビ番組での映像を観返してもオリジナル音源と似た感じのパート・バランスになっていますから、そういう戦略だったのだと思います。
それだけに今回、ズンズン響く安定のベースに載せてジュリーの歌や他のパートが「泳ぎ回る」感覚・・・リリース前に加瀬さんが「絶対売れる!」と言った「晴れのちBLUE BOY」の魅力って本来こうだよなぁ、と。
僕はこの曲の当時の奇抜な衣装やステージングもとても好きではありますが、ひょっとしたらもっとシックにクールに、イントロでは建さんのベースをupにしたりとか、音も見た目も低音リズムでグイグイ攻める感じのアプローチにしていたら、大ヒットになったのかなぁ、なんて今さらのように考えてしまいました。

それはともかく、今ツアーのこの曲のベースは本当に気持ち良いですから、みなさまも次回ご参加の会場では気をつけて聴いてみてくださいね!

灰とダイヤモンド

Kakuu

折り返しMCの直後、後半1曲目です。
この曲を含めることにすると(厳密には違いますが)、今回CO-CoLO期からは5曲のシングルが採り上げられたことになりますね。CO-CoLOの曲を固めて歌うという意味でも今回のセットリストは本当に貴重です。

5曲のうち、「灰とダイヤモンド」「STEPPIN' STONES」の2曲はオリジナル音源とはかなり異なるアレンジでイントロが始まりました。「STEPPIN' STONES」の方はコード感からすぐにそれと分かりましたが、この「灰とダイヤモンド」はジュリーの歌が始まるまで僕は何の曲だか分からなかったという・・・後で聞いたら同じように仰る先輩も何人かいらっしゃいました。
これはYOKO君ダイブ曲のひとつですが、大宮では彼がイントロで反応できずに戸惑っている様子が楽しめることでしょう(笑)。

オリジナルのヴァイオリン・パートの音階がどんな音色でどの程度踏襲されているのか。或いは本当に全然異なるフレーズが考案され導入されているのか・・・今後の参加会場でじっくりアレンジを紐解きたい1曲です。

「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ ~千夜一夜物語~」

Royal80

「STEPPIN' STONES」「CHANCE」へと続く、前半佳境のCO-CoLO固め打ちコーナーの先鋒。
この曲はハッキリYOKO君から「もしセトリ入りしたら、アンタに”片翼の天使”を仕掛ける!」と宣言されています(僕は『奇跡元年』『歌門来福』で体感済みですがYOKO君はまだです)。
”片翼の天使”というのは、今正に旬のプロレスラーであるケニー・オメガ選手のフィニッシュ・ホールドで、相手を肩車で担ぎ上げた状態から強引に首根っこを掴んで真っ逆さまに叩き落すという、コンサート会場などでやられたら迷惑極まりない荒技ですから、大宮では何とか抵抗し未然に防ぎたいと思います(笑)。

至近距離で横から観るジュリーのキメの手刀は本当に鮮やかで、息を飲みました。
楽曲考察を書くには知識不足を痛感せざるを得ない曲ですが(タイトルの意味とか、当時の旅番組のこととかね)、なんとか頑張って”セットリストを振り返る”シリーズに採り上げることにします!

きわどい季節

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イントロのストリングス、その一瞬で思い出すのは、2015年の加瀬さんを送る全国ツアー。みなさまもきっとそうでしょう。あの時はセットリスト本割のトリでしたね。

今回はセトリ後半の真ん中くらい、「一般ピープルのみなさまはあまりご存知でないシングル」コーナー(という感じの括り?)に配されました。このあたりがジュリーの媚の無さというか、したたかさと言うか。
今回一般ピープルを誘いまくっている僕としては、このコーナーに「新規ファン開拓」の期待を持っています。復習用のCD作成を依頼されることも視野に入れていますが、ロック畑の友人達については「再発された『黒盤』を買え!」と言うつもりですけどね。

で、この曲は「初日の柴山さんのベスト・プレイ」個人的第5位です。
極限まで絞った音量で優しく、愛おしく奏でられる3連のアルペジオ。僕はたまたま最前列でその指の動きが見えたので「ハッ!」と気づいたのですが、とにかく音が小さいのでお客さんの多くはその入魂の演奏にまでは注目しないでしょう。
でも、音全体の中でお客さんの耳には無意識に届いているという究極の「逆・ミスディレクション」。柴山さんのこの演奏があるから、ジュリーのヴォーカルにゆったりと酔えるのです。
素晴らしい職人技だったと思います。

「STEPPIN' STONES」

Kokuhaku

CO-CoLO期から「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」と「STEPPIN' STONES」をセトリ入り確実!としていた予想は当たりましたが、その時拘っていた「ジュリーが30年前に歌った”虹色のかすか光”が今正にその輝きをハッキリさせて云々、などという僕のこじつけは吹っ飛んでしまいました。
いや、それ自体は僕自身の再確認として体感はできたんですけど、ステージ全体を通してあれだけジュリーと先輩方の相思相愛を見せつけられますとね~。言うだけ野暮と言うか、いかにも新規ファン的な発想だったなぁ、ジュリーがこの曲の自作詞で歌った虹色の光はもうずっと前からジュリーもファンも双方確信できていたんだろうなぁ、と。
「どう?今回は特別に、ヒヨッコのお前にも見えやすくしてやったよ!」とジュリーに言われているみたいでね~。参りました。

とにかく名曲ですよ名曲!
僕がこのセットリスト、初日のステージの数えきれない名シーンの中で敢えて「一番」を挙げるとしたら、「STEPPIN' STONES」→「CHANCE」2曲の流れです。
ジュリーのLIVEって、セットリスト中盤のある特定の曲からガラッと声の出方が変わると言うか、テンションとスキルがアップする瞬間がよくあるじゃないですか。だいたいそれはバラードが多いんですが(「我が窮状」とかね)、今回は躍動の自作ロック・ナンバーである「STEPPIN' STONES」でそれが起こりました。
ステップする足と歌声が連動するかのようなサビ。「キープ・オン♪」とはよく言ったもので、ただ「続ける」んじゃなくて「どう続けるのか」をガツン!と教わった気持ち。僕も色々頑張ろう、と思いました。

まだ記事未執筆の曲・・・気合入れて”セットリストを振り返る”シリーズに採り上げます!

CHANCE

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そしてこれ!
直前の予想記事が当たったとか、それでもやっぱり「意地になってオリジナル・キーで歌うだろう」という予想内容については無茶だったか、とかそういうことはもういい!というくらいに心奪われました。
こんなにカッコイイ曲だったか、と。
曲や演奏がカッコイイだけじゃなくて(当たり前ですが)ジュリーがとにかくカッコイイと。最前列で横から観ている角度がとても良かった!

ま~何を置いても圧巻だったのは
「身をひく、バチあたり♪(ぱんぱんぱん!)」
のトコですよ。
帰宅してリリース当時の映像を何度も見返しました。みなさまご存知の黄色のスーツのやつですね。もちろんカッコイイ。これほどカッコ良かったか、とは思う。
だけど、どう考えても今年観た坊主頭の白シャツ69歳ジュリーのハンドクラップの方がカッコイイぞ!
これを体感できただけで、初日からずいぶん日が経っても未だに幸せでいられますし、なかなか現実世界に帰ってこれません。

もちろん演奏も素晴らしかったんです。
「どこで自分は(ぱんぱんぱんぱん!)間違えたのか♪」のハンドクラップは、CDの音そのまま。その時点で「おおっ!」と思ったりしたけれど、まぁサビ前のジュリー自身によるハンドクラップに僕の心は全部持って行かれちゃったなぁ。
改めて、「ブルース進行を歌うジュリーは立ち振る舞いすら神である!」と思い知らされたのでした。

ポラロイドGIRL

Karehanemurenai

セトリ後半、「SPLEEN~六月の風にゆれて」から固め打ちされる「一般ピープルのみなさまはあまりご存知でないシングル」コーナーにして「新規ファン開拓確実コーナー」の大トリ。
松戸に誘っている友人達とは夏の間に集まる機会があると思うけど、この曲だけは事前に聴かせておこうかとも考えています。そのココロは・・・いざ本番で「オラオラ、全員参加しろ!」と。「TOKIO」と並ぶ問答無用の「お客さん参加型」大名曲ですからね。

それにしても凄い、ジュリーのテンションと体力。
最後、お決まりの箇所で思いっきりのジャンプを連発します。左隣のお姉さんもジュリーに負けじと跳んでいらっしゃいましたよ~。

SPLEEN ~六月の風にゆれて

Panorama

生体感は2度目。この曲は何と言っても、ジュリーの大きな転機でもあった2012年の全国ツアー『3月8日の雲~カガヤケイノチ』の1曲目に配された時の記憶が今も鮮明に残っています。「ビッグ・サプライズだ、これを生で聴く日が来るとは!」と思ったものでしたが、この曲は『ジュリーマニア』でも採り上げられていますし、メモリアル・イヤーに似合うオンリーワンの輝きを持つ名曲なんですよね。
ビートルズの「エリナー・リグビー」をオマージュしたアレンジは幾多のジュリー・ナンバーどれひとつ似た曲は無い、という点でも今回ジュリーが配したセットリスト・バランスの妙を感じさせます。

細かいバンド演奏のおさらいは大宮で。
初日はただひたすら、汗が光るジュリーの横顔を見つめながらその熱唱に酔いました。

そのキスが欲しい

Reallyloveya

鉄板曲です。いつやるかな、いつやるかな、と待ちながら聴いていた初日。セトリ最終盤の「総仕上げ」的な配置での降臨に、お客さんの「待ってました!」感が爆発、会場は異常に盛り上がりました。
アレンジは「1番→間奏ギターソロ→サビもう一丁(「そのキスが欲しい~♪」→キャ~!となるトコね)」という完璧なショート・ヴァージョン構成です。

でね。1番の最後、ジュリーのロングトーンが炸裂して「さぁ間奏!」というところで依知川さんが巨体を躍らせて颯爽と前方にせり出してきました。
が・・・何やらその後の様子がおかしい。しきりに柴山さんの方を見て「あれえっ?」みたいな。
「おりゃおりゃ~!」と渾身のソロを熱演する柴山さんは定位置のままなんです。
「カ、カズさん定位置ですか。どう考えてもここは俺ら2人揃って前に出てくるトコなのでは・・・」と、勝手に依知川さんの胸中を推し量ってみました(笑)。
このちょっとしたシーンについては後日、しょあ様もまったく同じように感じていたことが分かりました。僕はそこまで見ていませんでしたが、なんでも依知川さんはその後GRACE姉さんにテレパシーで「俺間違った?」と確認しているように見えたとか(笑)。

そこで、初日以降の各会場にご参加のみなさまにお尋ねしたい!
「そのキスが欲しい」の間奏での弦楽器隊は、次の3つのうちどんな様子だったでしょうか。

①やっぱり依知川さんだけ前方に進出、柴山さんの方は定位置でソロを弾きながらぬおりまくっていた
②2人揃ってステージ前方にカッ飛んできた
③2人とも定位置のままだった

②だったら、初日は柴山さんの「うっかり」でしょうか。
でももし③だったとしたら、初日の依知川さんがちょっとかわいそう・・・。
みなさまのご証言、お待ちしております~。

「愛まで待てない」

Aimadematenai

こちらも鉄板曲。
「愛まで待てない」→「ROCK'N ROLL MARCH」→「そのキスが欲しい」の3曲は「ジュリーファンならば絶対歌う、と思ってたコーナー」にして、「ご新規さんも必死で食らいつきファンと一緒に盛り上がるコーナー」といった趣ですな~。
「愛まで待てない」なんかは一般ピープルは初めて聴く曲だとは思うけど、サビの頭打ち手拍子とか、僕らに倣って積極的に参加してくれるような気がします。
そういう3曲を最後の最後に配してくるのがジュリーの心憎さ、奥深さでしょうか。

僕はかねてから「ジュリーの70越えまでに『ジュリー祭り』セットリスト全82曲の考察記事を完遂する!」というのを拙ブログ当面の大目標と掲げてきました。
リミットまではもうあと1年を切り、残すお題は6曲にまでこぎつけています。その中から「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」と「愛まで待てない」の2曲は今ツアーの”セットリストを振り返る”シリーズで採り上げることになるだろう、と前々から計算していました。
目論見は順調です。「愛まで待てない」については、プリプロの段階ではバラード寄りの曲だった、という驚きの逸話が有名ですが、作曲者が吉田光さんであることを踏まえ、「元々こんな感じの曲だったんじゃないかな」と考えられる洋楽オマージュ元も絞り込み済み。秋までには張り切って考察記事に取り組むつもりです!

君を真実に愛せなくては他の何も続けられない

Teaforthree

まずはお詫びから(汗)。たぶん多くのみなさまが気づいていながら見逃してくださっていたと思うのですが・・・僕は時々この曲のタイトル「君を真実に愛せなくては他の何も続けられない」を、「君を真実に愛せなければ他の何も続けられない」と書くことがあります。

ずっと前にご指摘頂いたことがあり気をつけているつもりなんですが、油断しているとブログでも未だにそう書いちゃって自分で気づけずにいることがあります。
例えば最近書いた「自由に歩いて愛して」の記事中でも誤記があって、コッソリ後から修正したり。それはまだ良い方で、何と数日前まで、2013年6月に書いた楽曲考察記事のタイトルがズバリ間違っておりまして(滝汗)。もちろん修正しましたがあまりに長く放置していたのが恥ずかしく、よほど記事冒頭に「すみませんすみません!」と追記しようかと思いました。でも今、50周年ツアーが始まってすぐのタイミング。「あ、セトリに入っていてそれでようやく気づいたんだな」と分かっちゃうじゃないですか。ですからそれはグッと堪えて・・・本当に、穴があったら入りたい気持ちです。
元々「DYNAMITEはジュリーの長いタイトルの曲が覚えられない」説というのがありましてね。
もう1曲、「ハートの青さなら 空にさえ負けない」を「ハートの青さなら 空にだって負けない」と書いてしまうパターンもあります。今後は充分気をつけたいです。

さて、「君を真実に愛せなくては他の何も続けられない」。僕はもちろん初体感。
歌が始まって「おおっ来たか!」と思い手拍子していると、隣のカミさんが「つんつん」とやってきて「これ何だっけ?」と聞くので、「ティーフォースリー!」と答えたりしてたら、あっという間に曲終わっちゃった!
いやぁ短い。でも潔いアレンジで、今思い出すとクスッと暖かい笑いもこみ上げてくるんです。
用意周到なジュリーのことですから、この50周年記念LIVEの曲目も昨年の相当前あたりから概要を固めていたと思います。そんな時、ザ・タイガースのプチ再結成というサプライズもあったタローの古希お祝いLIVEを観にいったジュリー、タローが歌うこの曲を聴いて「エエ曲やな」と急遽セトリ案に追加・・・そんなふうに勝手に想像するとこのアレンジの短さも納得と言うか、ジュリーの楽曲愛だなぁと。
「忘れてないよ。いや、本当は忘れかけてたけど、もう忘れないよ」と曲に語りかけているような。

柴山さんが弾くギター・リフもカッコ良かったし(リフと言うより「テーマ」かな)、大宮ではあれこれ細かな点を確認したいと思っています。初日については「とにかくあっという間に終わった」印象ですね。

サーモスタットな夏

Samosutatto

「初日の柴山さんのベスト・プレイ」個人的第4位!
この曲のギター・パートを1人でやってやろう、と考える発想自体がまず凄いです。
もちろんすべてを再現できるわけではありません。例えばクロマチック・グリスまでは網羅していなかったと思います。それでも、バッキングのストロークとオブリガートの単音を余裕の表情で代わる代わるに繰り出す素晴らしさはいくら絶賛しても足りないくらい。
「おおお~!」と盛り上がった僕は、曲が始まってからかなり長い間を柴山さん完全ガン見状態でいたのですが・・・ふと気づくと、何やら左側から凄まじい圧をほとばしらせる大きな大きな気配が。
「えっ?」と思う間もなく・・・。


出た~!
超久々、「俺のカズを見るな」攻撃!


これを食らうのは一体どのくらいぶりでしょうか。
完全に差し向かいのジュリーに圧倒され、思わず身体が反応してワケ分からんタイミングで「L」の字を突き出してしまったという・・・これぞ最前列の至福。
そこから先は、目の前から移動した後のジュリーしか見てません(笑)。
最後まで柴山さんだけを観てたら第4位じゃ済まないくらいカッコ良いギターでしたが、やっぱりジュリーの目力、魔力には勝てませんな~。

永遠に

Dairokkan

「ISONOMIA」の後(「シーサイド・バウンド」の前)のMCでジュリーが「あと10曲」と言ったので、僕はそこから仕切り直して曲数をカウントしておりまして、「そのキスが欲しい」が終わり残すは2曲・・・「1曲はカサブランカ・ダンディ」で間違いないとして(←間違ってた汗)、もう1曲は何だろう、「耒タルベキ素敵」かな?と。
ところが、柴山さんがこの日初めてギターをチェンジ。ここまで1本で通してきたのをここで変えるからには相当特殊な楽曲だろう、とは思いましたが、まさかまさか「永遠に」が来るとは!
新規ファンには嬉しい初体感、サプライズでした。

柴山さんのギターについては京都に参加した男性ファンの友人にモデルの再確認をお願いしていたのですが、どうやら白のフェルナンデスだったようです(局地での通称「いい風ギター」または「『世界のカブトムシ図鑑』に載ってるやつ」)。
僕は初日のギターモデルの記憶が残らないほどジュリーばかり観て、その歌声に浸っていましたが、ギターの音はちゃんと聴いていましたよ。
シングル盤のアコギ1本の弾き語りヴァージョンではなく、柴山さん驚異の「1人ギター・オーケストラ」による再現。他のメンバーのバッキングを確認していなかったので演奏についての詳しい話は大宮レポに譲りますけど、とにかく「素晴らしかった」としか言いようがないです。

そもそも今回のセトリ、このまでの流れでここへ来て「永遠に」なんて来ちゃったら、「僕はいつも君のものさ♪」なんて歌われたら、ファンとしては至福の極み。
以前書いたこの曲の考察記事では、先輩方のコメントで歌詞中の「君」をファン(自分)のことだと思って聴いてしまう、というお話が出ていました。
ジュリー、今年は確信犯ですよ。初日は(きっとその後の会場も)明らかに、お客さんに向けての「君」だと分かるような歌声、セトリ配置でしたからねぇ。長いファンの先輩方はその感動もいかほどであったか、と・・・。

最後の1音まで静かにジュリーの表情を見守り続けるお客さん。とても良い雰囲気だったと思います。
で、「さぁあと1曲!」と待ち構えているとジュリーも楽器を置いたメンバーも「バイバイ」をして退場していきます。「ありゃ、曲数カウント間違えたかな?」と戸惑う間もなく、再びスルスルとスクリーンが降りてきて・・・(「渚でシャララ」の項に続きます!)。

鼓動

Iikazeyofuke

ギターを弾く人なら最初のオーギュメント1鳴りでそれと分かる、という特徴的なナンバーです。
僕は2度目ですがYOKO君はまだ。このイントロを初めて体感するのは本当にスリリングな一瞬なので、大宮での反応が楽しみです。特にダイブ曲とは聞いていませんが、「おおっ!」と盛り上がってくれるはず。

歌詞を追っていると、なるほど「50周年」には欠かせないシングルですね。
考察記事にも書いたように、作詞者もリリース年も違うのに「単純な永遠」と同じコンセプトを感じさせる名曲です。エンディングの1音上がり転調は割愛されましたが、セトリ的にもいよいよラスト・スパート、ジュリー入魂のヴォーカルでした。

忘却の天才

Boukyaku

こちらはハッキリと、YOKO君がかねてから「ダイブ曲」であると明言しています。
僕はこれまで2度の体感がありましたが、いずれもお正月だったので彼にはその度に羨ましがられていました。大宮で「鼓動」が終わってのこの曲への繋がりは、間違いなく殴られるところですな~。
僕もYOKO君も『ジュリー祭り』直後にまず聴いたアルバムが『サーモスタットな夏』と『忘却の天才』で、いずれのタイトルチューン(にしてシングル曲)には格別の思い入れがあります。一番「熱い」時に聴いた音源ということなんですね。

あと、ちょっと思ったんですが「忘却の天才」と「CHANCE」ってジュリーの上下運動のアクションの感じがかなり近いです。でも「CHANCE」はひたすらカッコ良く、こちらはコミカルです。
曲想、ジュリーの表情など色々違う面はあると思いますが、やはり「1曲」に相対した時のジュリーのセンス・・・イントロが始まりパッと何かしらの仕草をするだけでそれがどんな曲なのかが伝わる天性の歌手、ということでしょうか。
徹底的にスッ惚けた放蕩男を歌うジュリーもまた素敵です。誰にでも歌える歌ではありませんよね。

明日は晴れる

Asitahahareru

鉄板曲、と思っていました。今振り返って考えると、『ジュリー祭り』でこの曲が歌われていないことが意外に感じられるほどです。

以前「明日は晴れる」の考察記事で「顔晴る」(がんばる)という読ませ方の話を書いたことがあります。
LIVEではこれまで数度の体感をしている曲ですが、あの記事を書いて以降だと聴いたのは今回が初めてで、単純に「前向き」なだけでなく、「辛い」「苦しい」というところまで考えさせられた上で元気を貰える名曲なんだなぁ、としみじみ思いました。
ジュリーは今ツアーその後の各会場で50年の「山あり谷あり谷あり」を振り返り、「一生懸命やってるところを見て貰おう、ということに賭けた」と話してくれているそうですね。そうやって「顔晴って」きて最初に辿り着いた楽曲としての境地が「明日は晴れる」だったのではないか、と考えます。

初日の「OH~♪」のシャウトには艶やかなメロディーがあり、声の調子が良かったことに加え、「振り切った」ジュリーのステージが観られたように感じてとても嬉しく、頼もしく聴いた新鮮な「明日は晴れる」でした。

greenboy

Greenboy
セトリ序盤、プチ・タイガース・コーナーに続いて歌われました。とても意味深い配置でしたよね。
終演後にカミさんが「greenboyの曲順が、何でここ?って感じやったなぁ」と言ってきたので「いや、そこはファンなら分からないと!」と説教しましたが(笑)、僕とて全然偉そうなことは言えません。
2011年にこの曲の考察記事を書いた時点では、ジュリーが自らの少年時代を投影し作詞した「greenboy」にどんな気持ちが込められているのか、まで辿り着けずにいたのです。いい線までは行っていたんだけど、肝心のところに手が届いていないと言うか。
あの時先輩方からコメントを頂いてようやく「そうか!」と、言葉にはうまくできないんですが腑に落ちた感覚がありましたが、実はそれは同時期に書いた「青い鳥」についても同様でした。記事を書き終えてから、先輩方のコメントで楽曲の根本を学ばせて頂いた2曲。タイガースから歌人生を歩き始めたジュリーが、自らの最後の時までをも俯瞰している凄まじさ・・・50周年記念の今ツアーで、タイガースの曲に続いて、しかも「青い鳥」から繋がって歌われた「greenboy」。
改めてこの2曲の記事を書いた頃のことを思い出し(震災の直後、懸命になって更新を頑張っていた頃でした)、色々なことを考えました。
今回のセットリストで「曲と曲の繋がり」で一番感銘を受けたのは何処の箇所だったか、と問われたら僕は迷わず「青い鳥」→「greenboy」だと答えます。

演奏では、柴山さんのギター・ソロ(間近で体感するトレモロ奏法は圧巻!)をそのまま後奏にシフトしたアレンジが斬新だったなぁ。

ROCK'N ROLL MARCH

Rocknrollmarch

ファンにとっては言うまでもなく鉄板曲。一般ピープルにとってはとにかくついて行こう!とスリリングに盛り上がる曲、でしょうか。
最終盤の総仕上げコーナー、「愛まで待てない」と「そのキスが欲しい」に挟まれた絶好の配置です。

このショート・ヴァージョンは頼もしいですよ~。
『ジュリー祭り』での僕とYOKO君がそうだったように、この曲のサビ「ロッケンロール、マーチ♪」に続く「HEY!HEY!HEY!」・・・一般ピープルも見よう見真似で会場のファンに倣って拳を突き上げる最大の盛り上がりどころですが、フルコーラスだと「HEY!HEY!HEY!」が入らない箇所でフライングしちゃう人もいるんですよね。ドームの時点では僕らもそうでした。
でも今回は、ジュリーが「ロッケンロール、マーチ♪」と歌ったら必ず「HEY!HEY!HEY!」がついてくるヴァージョンです。一般ピープルも「あれっ?」と戸惑うことなく最後まで一体となれるのです。
各会場で満員のお客さんが拳を突き上げる様子が想像できます。セットリストの佳境として最適な、今回だけの特別なショート・ヴァージョンが誕生しましたね。

渚でシャララ

Juliewiththewildones

「あと10曲」宣言から数えて9曲目の「永遠に」でいったん退場したジュリー。
「10曲目」のカサダンは衣装替えか~!などと見当違いなことを考えながらアンコールの拍手をしておりますと、再び巨大スクリーンが降りてきて始まったのが「渚でシャララ」の映像ですよ。
驚きましたが本当に嬉しい演出です。今回ジュリワンからセトリ入りするとすればこの曲しかあり得ないけどさすがに厳しいかなぁ、と思っていましたがまさかまさかこういう手で来るとは!
みなさまお手持ちのジュリワン・ツアーDVD収録、「渚でシャララ」ダンス・コーナーをジュリーが大胆編集(ジュリー直接は手を入れていなくて、指示係だったようですが)したものです。
見どころ、と言うか笑いどころは1番、2番それぞれのAメロ、鳥塚さんと植田さんのヴォーカル・パートの箇所。顔ドアップのジュリーが「ちゅっ、ちゅるっ♪」と画面から飛び出して(いや、そう見えるのよ本当に)コーラスするという(笑)。

そんな感じで、「ワイルドワンズのメンバーに許可を貰って」いじり倒した映像は基本ジュリーばかり映る編集ですが、ワンシーンだけ加瀬さんとジュリーのラブラブな感じのコマ割りがあって・・・その時にはお客さんから大きな拍手が沸き起こりました。
後日、ジュリー道師匠の先輩が仰っていたんですよ。「今回は加瀬さんが大喜びしそうなステージ、セットリストだった」と。
ジュリーはこのツアーを「加瀬さんに見せたい、加瀬さんに喜んで貰いたい!」という思いはきっとあったと思うし、「渚でシャララ」の映像コーナーでは「ここで加瀬さんに笑って貰おう」と考えたのではないでしょうか。「いたずらのお返し」ですね。

ちなみにジュリーは直後のアンコール時のMCで「(「あと10曲」と言った)10曲目は歌っていませんが・・・」と話してくれたので僕はてっきり「君だけに愛を」からこの「渚でシャララ」までがジュリーの選んだ50曲だと解釈しましたが、その後の会場では「いくつかの場面」を10曲目、と位置づけているそうです。

さて問題は、果たして大宮でYOKO君はこの映像に合わせて踊るのか?という(笑)。
加瀬さんが旅立った時、YOKO君はしきりに「ジュリワンのツアーで1人スカしてダンスに参加しなかったことが本当に悔やまれる」と言っていました。
2015年の全国ツアー前にはネタバレ我慢しながら夜な夜なダンスの練習をしていたようですが報われず・・・しかしその成果は2年越しに今、試される?
一応僕も、彼につき合って一緒に踊る心構えはできていますがどうなりますか。

スクリーンが上がるとシャララ最後のお辞儀ポーズのジュリーが2着目の衣装でスタンバイしていて、割れんばかりの拍手。ポーズは加瀬さん風だったなぁ。

Pray ~神の与え賜いし

Pray

「祈り歌」(『PRAY FOR EAST JAPAN』『PRAY FOR JAPAN』コーナーに選ばれた4曲のうち1曲目。
素晴らしい歌声でした。何が凄いって、これセトリ順が「ポラロイドGIRL」の直後なんですね。
あれだけシャウトして、動き回って、飛び跳ねた次の曲が「PRAY~神の与え賜いし」。全然息も乱れていないし、歌詞も澱みなく出てきますし(お正月LIVE初日のことがあったのでちょっとハラハラしながら観ていましたが杞憂でした)、何の邪念もないのです。
正に「澄み渡る矜持あり」。

今回セトリ入りはしませんでしたが「三年想いよ」なども同様、最近の曲だとジュリーは特にGRACE姉さんの作曲作品と喉の波長が合うようですね。

こっちの水苦いぞ

Kottinomizunigaizo

今回はセトリ順ではなく音源リリース順に書いているので時系列が分かりにくくなっていますが・・・「サーモスタットな夏」の前に「ジュリーと完全差し向かい」な至福の時間が訪れていた最初の曲がこれでした。

みなさま、ジュリーLIVEで最前列のご経験がありますか?それはそれは本当に凄い時間ですよね。
体験されているみなさまならお分かりの通り、最前列でジュリーと差し向かいになると、「勘違い」をするんですね。「自分に向けて歌っているんじゃないか」と。
とは言え、今回の僕の「勘違い」は酷かった・・・なにせ、歌詞を勝手に聴き違えているのですから。
ジュリーが目の前にやってきてくれて、そこに留まって、目を合わせて、右手を差し出して掌をゆっくり上下に動かしながら歌ったのは「安全言わない 原子力委員長 福島の廃炉想う」の箇所。
僕はこれを「霧島の廃炉思う」と聴いたのです。今でもジュリーはそう歌ったような記憶が残っているんだけど、終演後カミさんや先輩方に尋ねても「さすがにそれは無かったでしょ~」とのことですから明らかに勘違い。そもそも、川内原発の立地、久見崎と霧島とでは同じ鹿児島県でも離れていますし(ただ、万一の事態が起こった時には確実に影響を受ける距離ではあります)。
でもとにかくその瞬間、僕にはそう聴こえてしまって。
胸を貫かれたと言うか、「楽しい」のとはかなり違う大きくも切実な感動が襲ってきました。

福島のみなさまに大変失礼きわまりない話ではありますが、2015年にこの曲を初めて聴いた時から、僕の中でずっと続いている感覚・・・聴くたびに、故郷・鹿児島の川内原発のことを考えてしまうのです。
もちろんこの初日、イントロが始まった時からも。
そんなふうに聴いていたから、「ジュリーが自分に向けて歌っている」との思い込みが重なって起こった、珍しいパターンの「勘違い」だったわけですね。
でも僕にとっては「こっちの水苦いぞ」を聴いて川内原発を思うことは自然なことだし、そういう感覚を持つ自分だからジュリーファンにもなれたんだと思います。

当然、僕はその瞬間から先はジュリーしか観ておらず、バンドの演奏の記憶がありません(汗)。
あっ!と思った時には柴山さんのコーダ・アルペジオが始まっていて・・・今回どんな技を使ってリフからアルペジオに切り替えたのかを見逃しているんですよ。
定位置だったから、お正月の時みたいにローディーさんが入ってきてエフェクターを踏んだ、ということは無いでしょう。柴山さんが自分で踏んだのかな。
ただ、音色はお正月とは違いましたよね?
もしかしたら、それまで弾いていたディストーション系の音色でそのまま通したのかもしれません。この点は大宮でしっかり確認したいと思います。

un democratic love

Undemocraticlove

これは絶対歌うだろうと思っていました。
2012年以降にリリーズが続けられている「祈り歌」22曲の中で、僕が今回セトリ入り鉄板と考えていたのはこの曲と「ISONOMIA」(あと、「揺るぎない優しさ」はアンコールで歌うかな、と思っていましたがこれは外れました)。「ISONOMIA」は今年のシングルですから当然として、やっぱり「un democratic love」はね、ヒヨッコ新規ファンの僕が「ジュリーと気脈が合う」と思える、唯一の個人的な相思相愛ソングなのですよ~。「歌う」機運が分かる、と言いますか。

全体的には暗めの照明の中で静かに立ち、メロディーを紡いでゆくジュリーの気高さ。
ジュリーのシングルの中でどの曲が一番好きかなんて誰しも到底決められっこないけど、僕はもしかしたらこの曲かもしれない・・・これはリアルタイムで聴いてきた「新曲」としては、群を抜いて考察記事に気合が入った曲でもあります。
あの時の記事をずっとネット上で公開し続けることが可能な世の中であることを、今改めて祈ります。

ISONOMIA

Isonomia


CDを聴きまくったおかげで、エレキ1本のアレンジが自然に感じられるようになりました。
アレンジこそ意表を突いていますが、これは白井さん得意の「パワーポップ」なんですね。だからちょっとモッズ感覚(ザ・フー寄りの)があるのでしょう。

お正月の時点では、CD発売前に「まったく初めて聴いた今年の新曲」でした。
今回はどんな曲かが頭に叩き込まれているのでイントロから余裕で手拍子参加していましたが、やっぱり「チャ・チャ!」と変化する箇所では一瞬「あれあれ?」と。オリジナル音源には入っていない音ですからね。
そんな時は依知川さんをガン見。「次、チャ・チャ!になるからね」と、お正月に引き続き大きなゼスチャーでお客さんをリードしてくれます。
大宮ではYOKO君も戸惑うでしょうから、「依知川さん見て!」と教えてあげるつもり。

初日は歌詞がオリジナルとは違っていて、このまま通してそう歌っているのか、それとも初日だけのことだったのかという点も大宮では確認したと思います。
オリジナル音源で「無支配イソノミア♪」の箇所のメロディーは3度登場しそれぞれ音階が違う、というのがこの曲の肝ですが、今回はショート・ヴァージョンということで、ジュリーは3パターンのうち最も高い音階のメロディーを歌って「最新シングル」を締めくくりました。力強いヴォーカルでした。


~アンコール~

いくつかの場面

Ikutuka_2

初日から日が経ってじわじわとね、本当に「これしかない!」というアンコールだったんだなぁと。
最近の会場でジュリーはこの曲を「50曲目」と明言しているそうですから、オープニングの「あなたに今夜はワインをふりかけ」がオマケ、スライドショーの「渚でシャララ」はセトリのカウント無しで、「君だけに愛を」から「いくつかの場面」までがジュリーが50周年に選んだ50曲、ということになりますか。
50年、とひと口に言うけれどやっぱり長いですよね。振り返って、色々なことがあったなぁと思いながらジュリーは「いくつかの場面」を歌っているのでしょうね。
僕がリアルタイムで知っているのはそのたった5分の1程度とは言え、感慨深い選曲です。

この先の参加会場でこの曲を聴いて思うことはどんどん増えてくると思いますが、このレポートでは演奏について書いておきましょう。「初日の柴山さんベストプレイ」、これはその個人的第3位です。
ギター1本体制でツイン・ギターの音が鳴っていたことにはみなさまお気づきだったでしょう。柴山さん、一体どうやって弾いていたと思います?
おそらくサム・ピックを使用しています。
3弦と4弦・・・上下隣同士の弦を同時に弾くということだけなら、「青い鳥」と同じ奏法で複音のハーモニーは再現できますが、この曲では間奏の2回し目からそれぞれのフレーズ音階が離れますから(高音がより高い音になります)、2弦と4弦を同時に鳴らさなければなりません。通常のピックでは不可能です。
そこで柴山さんは、親指と中指のフィンガー・ピッキングを披露!柴山さんがこの奏法を採用するのを、少なくとも僕は初めて見ました。

何故そこまで「ツイン・リード」の再現を、と思うんですよ。明らかに負担が大きいですから。
そもそも「いくつかの場面」の間奏って、オリジナル音源はツイン・リードではなくピアノとギターが絡み合うアレンジなのです。ギター1本体制でこの曲を演奏しようというなら、そちらを再現する方が自然です。
でも柴山さんは、鉄人バンドとして何度も演奏してきた「いくつかの場面」の間奏の音に拘りました。
柴山さん、「もう1本のギター」が帰ってくる日を待ってるんじゃないかな・・・。
僕にはそう思えてなりませんでした。

ジュリーのヴォーカルは、感極まったニュアンスもあり、それでもそれは悲しげな慟哭ではなく、心からの「感謝」を歌っているようだと思いました。


☆    ☆    ☆

ようやく今回のレポも締めくくりまで来ました。
今日(8月7日)、ちょうど会社の健康診断で休みをとっていたので、バリウムを飲んで帰宅してから一気に仕上げることができましたが、いやぁ長かった~。
50年。50曲。
口で言うのは簡単だけれど本当に凄いことだ、大変なことなんだと、なかなか終わりの見えてこないレポに取り組みながら身に染みる日々でした。

素晴らしいツアー初日だったと思います。
と同時に、ジュリーと先輩方の相思相愛を存分に見せつけられたステージ、セットリストだったなぁと。
ジュリーは大阪のMCで「僕と同じくらいの年齢の人でないと僕の良さは分からない」と話してくれたそうです。これは単に実年齢と言うより、「僕が歌ってきた歳月を昔から知っている人」という意味でしょう。
今回歌われたシングル曲に限らず、例えば2000年代のジュリーのアルバム収録曲を見ていくと、「共に歳をとっていこう」というメッセージ・ソング、たくさんありますね。50周年のツアーが始まった今、そのすべてを先輩方は深い実感を以って味わえるのではないでしょうか。

初日のステージを体感した僕は、そんなジュリーと「ジュリーの良さを分かる人達」との相思相愛に、妬けて妬けて仕方ないです。
その一方で、数年前からLIVE中に時折気づくようになった「あれっ、何か今僕には分からないところでジュリーとお客さんの愛が噛み合っているぞ」という感覚がなんとステージ全編に渡って繰り広げられるという今回のセットリストに、得体の知れない闘志を燃やし始めているところです(笑)。
時代を違えて生まれ、しかも相当遅れてファンになった僕には到底届かないはずの境地に、自分もなんとか行ってみたくなりました。これはもう「一生懸命」頑張るしかない。勉強して、愛を注いで必死に頑張って辿り着けるかどうか、というところですが、僕も最終的にはその場所に行ってやろう、と。
まぁ、一生かけての大目標ですな~。
有り難いことにジュリーは、この先も「倒れるまで歌う」と言ってくれているのですからね。

まずは来年年明けまで続く今ツアー。
単発数会場ではなく66公演それぞれの会場で50曲を歌いきろうという・・・凄まじいですよ。僕がこんな拙い初日のレポ50曲ぶんを書くのがこれだけ大変だったというのに、ジュリーの気力、体力、企画力、実行力は本当に畏るべしです。
本当はもっと回数参加するつもりでしたがグッと堪えて遠征を決意した来年の熊本公演まで、僕も気合を入れてこの歴史的なステージを楽しみたいと思います。

僕は次はお盆明けの大宮です。
昨日チケットが届き、まさかの神席に驚きました。初日と違い最前列でこそありませんが、ほぼそれに近い・・・しかも今度はド真ん中です。
参加する公演連続で神席を授かる、なんてパターンは初めてのことです。長くLIVEに通っていればこんな年もあるのかもしれませんが・・・それが50周年記念という特別なツアーで巡ってきたこと、本当に畏れ多く感謝しかありません。
喜びはもちろんですが、身が引き締まる思いです。

大宮のレポートはネタバレ全開で本館に書きます。
もう、こうなったら全力で頑張るしかない!

それでは、別館side-Bでの執筆は来年までしばしのお別れです。こちらではまた古希イヤー記念ツアーの時にお会いしましょう~。

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2017年7月15日 (土)

祝・デビュー50周年記念ツアー開幕!

いよいよ明日開幕です!
本館の方にも書きましたが、今回はセットリストの演奏順までは覚えられそうにありません。と言うか、そんな意識は開演と同時に吹っ飛びそう。
とにかくジュリーが厳選した1曲1曲に集中し、無心で味わいたいと思います。

いやぁ楽しみです。
『ジュリー祭り』直前にヒヨッコ同士のYOKO君と2人で宣言したそれぞれの「ダイブ曲」・・・「ロンリー・ウルフ」と「酒場でDABADA」を遂に生体感できるかもしれません(もし「酒場でDABADA」がセトリ入りしていたら、僕は大宮でYOKO君に首絞められるらしい・・・)。
他、未だ体感できていないシングル曲の数々。
「魅せられた夜」「愛の逃亡者」「立ちどまるな ふりむくな」「さよならをいう気もない」「背中まで45分」「きめてやる今夜」「どん底」「渡り鳥 はぐれ鳥」「灰とダイヤモンド」etc,etc...。どれだけ聴くことができるでしょうか。
『ジュリー祭り』以降のセトリしか生体感していない僕としては、「シングル」と言ってもまだまだ聴けていない名曲、たくさん残っていますからね。

レポ執筆にとりかかるのは、LIVE後数日経ってからになると思います。それまでの間、みなさまの感動のコメントはこちらでお待ちしています。

ちなみに、今回ばかりはセトリ速報は難しいです。
いや、「どの曲を歌った」ということだけなら、50曲だろうが100曲だろうが覚え込む自信はありますよ。でもさすがに演奏順まですべて、となるとこれは無理です(完全に時代順なら覚えられますが)。
いつも速報メールをお送りしている先輩ブロガーのケンケンジ姉さんにも、「演目はすべてお伝えしますが、順不同になると思います」とお話しています。

レポも順不同で書くかもしれません。おおまかには覚えて帰るつもりではいますが・・・。
ともあれ、最後に改めて。

ジュリー、デビュー50周年おめでとうございます!

それでは、初日・NHKホール公演にご参加のみなさま、道中お気をつけて・・・会場でお会いしましょう。
例年より期間の長いツアーとなりますね。頑張って各参加公演レポに取り組みます。
今回もよろしくお願い申し上げます!

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2017年1月31日 (火)

2017.1.8 NHKホール 沢田研二『祈り歌LOVESONG特集』セットリスト&完全レポ

大成功、大盛況のうちに東京国際フォーラム公演・ファイナルのステージを終えた2017年お正月コンサート『祈り歌LOVESONG特集』・・・その1週間後、ようやくツアー初日・NHKホール公演のレポートが完成いたしました。
今回はあのセットリストですから僕も気合が入って、いつも以上に大長文となりました。
にしても、時間かけ過ぎでしたね・・・(汗)。

例のごとく、更新日付を本日1月31日へと移行いたします。
今回も長々とおつきあい頂きありがとうございました。
こちらside-Bは、7月からのデビュー50周年メモリアル全国ツアー開幕まで、しばしのショート・グッバイです。
でも、まだまだ『祈り歌LOVESONG特集』の余韻醒めやらず、と仰るみなさまは、引き続きガンガンコメントくださいね!

☆    ☆    ☆

い~や~、やられました。
さすがはジュリー、やっぱりジュリー。ロック史上空前絶後のとてつもないステージを魅せてくれました。
これほど「ツアー初日に参加できた」ことに感謝したセットリストは、今後含めて無いんじゃないかな。

毎回毎回”全然当たらないセットリスト予想”な~んて言いながらも「ジュリーに予想以上のものを提示して貰えるのが嬉しい」と感じている僕ですが、今回はもう、根底からすべて覆されたと言いますか、脳天劈かれたと言いますか。
『祈り歌LOVESONG特集』でジュリーは、既存のどんな「ロック・オペラ」も吹き飛ばしてしまいました。今、この日本の沢田研二よりもロックな歌手が世界に1人でも存在すると言うなら、挙げてみて欲しい。

『PRAY FOR EAST JAPAN』から『PRAY FOR JAPAN』。全世界の生きとし生けるものすべてへ。
2012年から2016年まで、毎年3月11日にリリースし続けた5枚の4曲入りマキシ・シングル、5年全20曲の揺るがぬコンセプト。
被災地の現状、襲い来る風化、原発再稼働、迫る戦争の跫音・・・歌うはジュリー、全作詞・沢田研二。

組曲『PRAY FOR JAPAN』とも表現したくなるセットリストだけど、やっぱりこれは『祈り歌LOVESONG特集』と言うよりなく・・・今思えば正に「これしかない!」ツアー・タイトルだったのですね。
しょあ様のブログで、カオリー様がコメントに書いていらっしゃいました。「LIVEが終わってチケットを見たら、セットリストがそこに書いてあった」と。
まさに仰る通りでした。

曲が進むに連れ、僕はジュリーの歌声と志に圧倒され、沸きあがってくる勇気に奮い立ち・・・隣のカミさんはと言えば本当に珍しく(ジュリーのLIVEでは初めてかな)涙を流しながら聴いていました。
後で「全人類に贈る音楽劇『LOVE&PEACE』のようだった」とカミさんは言っていましたが、肝心なのは、ここで歌われたのが架空の物語ではない、ということ。
2012年以来一貫してジュリーが取り組んできた「誇大でない現実を歌う」20曲。さらにはアンコールで歌われた今年2017年の3月11日にリリース予定という新曲2曲にもそのコンセプトは変わらずあり、ジュリーが「自分はこれをやるために今まで続けてきたんだ」と覚悟を決めていることを改めて実感させられました。
「惚れ直した」どころではありませんよ。本当に参りました。やられました。

それにしても・・・僕はこのセットリストにただただド肝を抜かれるばかりでしたが、どうやら幾人かの先輩方はこれを予想していらした、という。
心底、畏れ入ります。
そうして考えてみれば、これをやるなら今回、この2017年のお正月しかあり得なかったんですよね。
5年かけて20曲になった、その曲数もさることながら、デビュー50周年から70才超えとなる2年がかりのメモリアル・イヤー直前の、このタイミングしか無かったわけで、先輩方は当然そこまで考えていたのでした。
トンチンカンなセットリスト予想を書いていた自分が恥ずかしいばかりです。

そんな中、こんな僕のような者でも辛うじて誇れる点があったとすれば。
この日、次々に繰り出された1曲1曲それぞれについて僕は、完璧とまでは言えなかったにせよ歌っているジュリーより先にスラスラと次節の歌詞が出てきましたし、どのメンバーが作曲したのか、リリース時のオリジナル・アレンジはどうだったか、楽曲構成からコード進行まで頭に残っていました。
記憶に新しい昨年の新譜4曲や、リリース年以降もセットリスト入り率の高い「F.
A.P.P.」あたりの曲ならそれも当然かもしれませんが、「もう2度とは生で聴けないかも」と決めつけていた名曲達についてもそれができた、というのは自分でも驚くべきことでした。
これは何かって言うと、やっぱり僕はこれら5枚の作品、20曲について、リアルタイムで文字通り真剣に聴き込み、ジュリーの言いたかったことや曲の狙いは正しく理解できなかったかもしれないけれど、歌詞の一字一句はもちろん、鉄人バンドの演奏やアレンジまで、どんな思いが込められているのかと考えに考え抜いて、懸命になって真面目に考察記事を書いた・・・それで身について今まで残っていたのかなぁ、と。

そして、ジュリーがこれら20曲を一気に歌い切るというのがどれほど大変だったかも本当によく分かる気がしましたし、ジュリーの「心を込めて歌う」イコール「作った時の気持ちになろうとする」感覚が7曲目の「一握り人の罪」からのバラード連打で次第に加速してゆく感触もビンビン伝わってきました。
「無心」という他ない歌声に魅せられ、酔いました。

加えて、終演後に凄まじく元気が湧いてきたという・・・これが何より大きい。
2012年以降のジュリーの20曲にその都度真剣に対峙したおかげで、僕はそれぞれの曲で提示された様々な問題を「考える」ことについて今は日常的にできるようになっていて、今回このセットリストを前にしても、テーマに戸惑ったり後ずさりしたり、負荷を感じるようなことは一切ありませんでした。
「身近なテーマのメッセージ・ソング」ばかりで。
「こうだったら良いなぁ」「僕はこう思うなぁ」という日頃の思いをおさらいする感覚。
特に「un democratic love」や「FRIDAYS VOICE」「一握り人の罪」あたりは「ドンと来い!」って感じで。
この日は風邪が治りきらないままの参加となり、雨の中の入場前行列待機(定刻を過ぎてもなかなか入れなかったんですよ~)の寒さで具合が悪くなりかけて一緒にいたカミさんやMママ様に心配をかけてしまっていたのに、打ち上げでは一転、「食欲が止まらん!」状態となりみなさんに呆れられていたほどでした。
「un democratic love」を聴くと食欲バリバリになるのは、昨年からずっと変わらないなぁ。

実は僕は今回の初日のステージを体感していて、その素晴らしさに圧倒されつつも、不思議と「涙が上ってくる」ということは無かったんです。ちょっと変な表現で言うと、どの曲も過去に僕自身の中でそこは一度オトシマエがついているんですよ。
そりゃあ、「Deep Love」や「櫻舗道」を生であの歌声で歌われたら普通の気持ちではいられません。でも、これは本当に特殊な感想なのでしょうけど、それ以上に楽しかった、嬉しかった・・・僕はそれに尽きるのです。

それにね・・・僕がこの本文にとりかかる前に、名古屋公演を直前に控えたgoma様がはからずもコメントに残してくださったキーワード「一対一」。今回は何と言ってもこれですよ。ここまでステージ上のジュリーと会場の1人1人が「一対一」で向き合っている感覚になれるLIVEなんて、今回だけなのではないでしょうか。
それはお客さんばかりでなく、取材に訪れていた記者さん達にとっても同じだったはず・・・なのに。
世のメディアのみなさま、あの会場にいたのなら、貴方達は歴史に選ばれた幸運な伝授者です。土下座のシーンに触れるな、とは言いませんが、何故一番大切なことを真っ先に見出しとして伝えないのですか?

あ、すみません。連休明けの10日に出社したら、朝イチでいきなり会社の同僚に「沢田研二、バカウケじゃ~ん!」と話しかけられて絶句したりしたもので。
世の話題になること自体は嬉しいんだけどね・・・。

これから僕は、どんなふうに歌と演奏を楽しんだか、どんなふうに嬉しかったか、ということをメインに1曲ずつレポートを書いていきます。
結構少数派の感想ばかり書くことになるかと思いますが、「こんな感じであのステージを観ていた奴がいるのか」と、みなさまにお伝えできたら嬉しいです。

また、それぞれの曲について過去にリアルタイムで書いた考察記事を自分でもう一度読み直し振り返りながら(時間が経てば経つほど粗が見えてきて恥ずかしいんですけどね)、その後個人的に思うところや、「現実」についても書いていけたらと考えます。例によっての大長文ですけど、よろしくお願い申し上げます。
それでは、開演です!


1曲目「
福幸よ

Undemocraticlove


想い出が近すぎて 笑顔だけ戻っても
青空痛い 流れた何もかもと
後悔に懺悔 忘れるもんか


この日のステージを体感して僕が感銘を受けたのは、もちろんジュリーの歌ばかりではありません。バンドの演奏が本当に素晴らしかった!
「ツアー初日」の完成度としては、2014年お正月の『ひとりぼっちのバラード』に比するものがありました。
一体どのくらいのリハを重ねたのでしょうか。いや、あの統一感はリハの回数以上に、メンバーそれぞれの覚悟が生み出していたのかもしれません。

今回のセットリスト、アンコール前のMCでジュリーが疲労困憊を吐露していましたが、同じくらいに大変だったであろうメンバーが柴山さんです。
2015年までの4枚について言えば、新たなベースラインを作ることになった依知川さんも相当大変だったでしょう。しかし柴山さんは多くの曲で下山さんのパートを取り込んだ「1人2役」を担い、しかもアレンジを変え・・・。
さらに4人のアンサンブルは、昨年同じメンバーでステージに臨んだ『un democratic love』収録4曲についても進化を魅せてくれたのです。特にこの「福幸よ」と「犀か象」の2曲は大きく演奏のアプローチを変えてきました。イントロのギターから、いきなりね。
ロック・バンドの真髄ここにあり!です。
エンディングのリフレイン部、まず2回依知川さんの16分音符のソロがあり、3回目は柴山さんがユニゾン。僕が確認できたのはそこまででしたが、後に泰輝さんにピンスポットが当たっていた箇所もありましたから、何らかのアレンジの進化がそこにあったはず。

それにしても柴山さん、年々「背負い方」が尋常ではなくなってきている・・・そう感じませんか?
演奏のことだけではありません。
作曲についても、改めてこの「福幸よ」のサブ・ドミナントの徹底したマイナー変換。「進んでゆく」曲だけれど、それは平坦な道では決してなく、何度も何度も躓いて、挫けそうになって、それでも顔を上げて進んでゆく・・・柴山さんのコード使いはきっとそんなことを表現しています。これほどの「詞曲一体」は、20曲の中でも一、二を争うでしょう。

この日曲が進むに連れて、僕が心配げに「どれほどのものを背負っているんだろう」と思ってステージを観れば、いやいや柴山さんは穏やかです。自然体です。
「好きこそものの上手なれ」を究極まで突き詰めたギタリストにとって、ステージ上でのパフォーマンスは最高に楽しい時間に違いありません。
すべての演奏が終わり、最後の退場のシーンではいつものように最後の1人となり笑顔でお客さんに手を振ってくれた柴山さん。でも、楽屋に戻ったらホント疲れたんじゃないかなぁ、とも思うんですよね・・・。

ジュリーの声は最初の2曲ではまだ本調子ではないようでしたが、畳みかけるニュアンス、発声にはこの1曲目から並々でない「気持ち」を感じました。

2曲目「
F.A.P.P.

38


BYE BYE A.P.P BYE BYE 原発
哀しみは ひとりひとりで違うよ 当然

BYE BYE A.P.P BYE BYE 原発
HAPPINESS LAND へこたれないで福島

ここまでの2曲は、この直後のMCでの「セットリスト宣言」前でしたから、「おぉ、いきなり柴山さんの曲連発か~」と呑気に(?)に考えていましたね。多くのみなさまがそうだったでしょう。
2012年以降の楽曲の中では最も多くツアーで採り上げられている名曲です。

で、「鹿児島県人」の僕は今ジュリーにこのテーマを歌われると、やっぱり胸がチクッとするわけです。
と言うのは・・・。

昨年、現職知事の失言騒動による自滅の要素はあったとは言え、保守色の強い土地柄の鹿児島としては異例の結果となった県知事選挙。当選したのは「脱原発」を掲げた三反園さんでした。
これは、熊本地震を受けて完全に「川内原発」が争点となった故の結果です。選挙があの時期でなければ三反園さんに勝ち目は無かったでしょう。つまり、普段例えば自民党推薦候補者に投票するような人の多くが、その時ばかりは「川内原発を止める」と言った三反園さんに票を投じたということ。
「野党が支持された」わけではないのですよ。

それだけに、保守だの革新だの抜きにして三反園さんへの県民の期待は大きかったのですが・・・三反園さんは1年も経たないうちに「県知事に再稼働を止める権限は無い」などと「それを言っちゃあおしまいだよ」みたいなことを平気で言うばかりか、「こちらが何を言っても九電は原発を動かすんだろう」といった「人のせいにして白旗を揚げる」ような発言も。
早い話が「消極的再稼働容認」です。
これは「変節」とすら言えない・・・意を決して三反園さんに投票した県民からすると「この人は腰抜けであった」ということになるんです。
「こんなことなら前知事のままの方がまだ良かった」と考えている鹿児島県民は、相当数いるでしょう。当然、次の国政選挙にも大きく影響するでしょうね・・・。
いやはや、ただの1年も志を持ち続けられないとは情けない。「ジュリーを見ろ!」と言いたいですね。5年続けてきて、これからも続けていく男の矜持を。

この日の演奏はオリジナルよりテンポ速めだったと思います。縦ノリの「福幸よ」と続いているから、敢えてそうしたのでしょうか。

歌詞中の「当然」はすべて「東電」と歌いましたよね?
最高音部は喉を絞り出すように歌ったジュリー。この時点ではまだ「気持ちの方が声より先を行っていた」感じだったかなぁ。
MCを挟んだ次の「3月8日の雲」で、いよいよジュリーの喉にスイッチが入ります。

~MC~

「あけましておめでとうございます!」の第一声に、思わず反応して頭を下げてしまったという・・・この日授かっていた1階C8列は、そのくらいジュリーがよく見え、身近に感じさせてくれる素晴らしい席でした。感謝!

「今日がいわゆる”仕事初め”です」とのことでまず自らを「准高齢者の沢田研二」と。
この「准高齢者」ネタのおかげで、ステージ最初のMCコーナーとしてはいつもよりちょっと長めのお喋りタイムとなりました。ジュリーファンとしてはラッキー!

先頃お国が決めた「75歳以上が”高齢者”で、65歳から74歳までは”准高齢者”」にもの申すジュリー。
老人だ老人だと思ってやってきたのに、国から突然「あなたは老人ではない!」と言われてしまい・・・老人だと思っているから頑張ってきたのに、老人じゃなかったら「頑張って当たり前」ってことになるじゃないか、とのことで、「あの還暦は何だったのか!」とお客さんを大爆笑させてくれたのは、この時だったか、アンコール前のMCだったか。
「みなさんもそうでしょ?自分は老人だと思っていたら、いきなり何か新しい種族に奉られたみたいで」
ですって。
ジュリー、本当に面白い表現しますねぇ。

しかし・・・ジュリーのユーモアには笑っていられるけど、こりゃ僕のような世代は「75歳まで年金が受け取れない」未来が来るのを我が身のこととして覚悟しなきゃいけないなぁ、と改めて思いました。
個人的には、「75歳」なんて言われてもそこまで生きてる気が全然しないにしても。

つまり、僕がもし60歳になっても65歳になっても70歳になっても年金が貰えなくて、なおかつまだ元気に生きていたとしたら・・・なんとか働いて、その頃には名実ともに「高齢者」となっている(笑)ジュリーの年金を微力ながら負担します、ということですな。まぁジュリーはそれでもまだまだ働いているでしょうけどね!
僕が75歳の「高齢者」に無事到達できたら、その時ジュリーは93歳。元気に歌っていて欲しいです。

で、唐突に・・・というほどでもなかったと思うけど、ジュリーの「セットリスト宣言」がありました。
2012年以降の5枚のマキシシングル収録全20曲、今日はそのすべてを歌う、と。
その試みをジュリーが「大胆な」と自分で表現しただけのことはあって、会場にはどよめきが起こりました。

そんな中、僕は「マジですか~!」と、カミさんは「やっちまったな~」と声が出ました。
いえ、誤解しないでください。僕ら2人ともそのセトリ宣言を「嫌だ」と言ったのではありません。その時僕らの頭の中には、オーラスのフォーラムで初のジュリーLIVE参加が決まっている、カミさんの仕事絡みの4人のお姉さま方のことがよぎったのです。
僕が代行して澤會さんでチケットを申し込んだわけですが、「こりゃまた、よりによって凄いセトリの時に当たっちゃったな~」とね。
でも、LIVEが終わって、打ち上げでお腹もいっぱいになって大満足で帰宅する途中の電車内で、「今回初参加で、先入観がまったく無いというのはかえって良いんじゃないか」と話しました。
元々その4人のお姉さま方には、「お正月のコンサートはマニアックなセットリストになる傾向が強く、有名な曲を多く聴きたいなら夏からの全国ツアーの方がおススメです」とお伝えしたところ、「それでもいい。今の沢田研二の生き様が見たい」とお返事頂いていた、という経緯がありました。
今のジュリーの生き様を見たい、ということならこれほどふさわしいセットリストもないわけで。

最初のMCの〆に「一生懸命つとめます!」と言って片膝つくのはもうお馴染みとなりました。
さぁ、どの曲が飛び出すのでしょうか。どんな歌声とアレンジが聴けるでしょうか。僕自身にも「特別なLIVEを楽しむ」スイッチが入ったMCでした。

3曲目「
3月8日の雲

38_2


泣いてもしかたない笑っていなきゃ
忘れたことなど一時もない 3月11日の空は
やり切れんです そよ風に疼きます


2012年のリリース当時、この曲や「恨まないよ」を聴くごとに感じていた「非・被災者の卑屈」な感覚が今の僕には無くなっていて・・・でもそれは風化なんかじゃなくて、心構えの進化だと自分では思うんですけど、ステージ上のジュリーから「陽」に近いオーラが感じられた、というのはやっぱり少数派の感想なのかな。

シリアスなこと、重いテーマを歌っているからと言って、それを「楽しめない」というのは勿体無いことだと僕は思う・・・ジュリーはこんなに素晴らしいのだから。
2012年から2014年までのツアーで、ジュリーに「悲壮感」を感じていたのは、もしかすると受け取る側の僕らの思い込みだったのかもしれない、とすら思われるほどに、この日のジュリーのオーラは明るかったです。

僕が今回、躊躇なく「楽しい!」「嬉しい!」「凄い!」と夢中でステージに集中することになったのが、この3曲目「3月8日の雲」以降でした。
直前のMCで、2012年以降のあの曲達を全部やってくれるんだ、と分かって・・・ジュリーとの「一対一」の感覚へと完全に気持ちが切り替わったのです。

そして、「スイッチが入る」ことについてはジュリーもこの曲からだったと感じました。
お客さんにセットリストの「告知」をして覚悟が決まる、という部分があったんじゃないかな。これは初日に限らずフォーラムまでずっとそうではないでしょうか。

「怒り」「悲しみ」ともつかない、ギリギリと歯軋りするような感情、ジュリーが表現したところの「みょうな感じ」・・・そんな歌を再現するために、ジュリーは「作詞した時の気持ち」に戻らなければなりません。
大げさにシャウトするわけでもない、地の底から湧いてくるような発声に気持ちが乗り移り、「あっ、ジュリーの声が変わった!」と思いました。
ここから先のセットリスト、ジュリーの歌はどんどん素晴らしくなっていきます。「無心」の歌が気持ちにまで追いつき心身一体となったのは、7曲目の「一握り人の罪」だった、と僕は思いましたがその話はまた後で。

まず何が楽しいって、「うわ、ベースが入るとこうなるのか!」という曲が正にここからだったから。
この日のバンドの演奏で特筆すべきは、柴山さんがただの一度もアコギを使用しなかったことです。
鉄人バンド期の4枚の曲のアレンジはアコギ導入率が高くて、そのほとんどを下山さんが担っていました。もし今回柴山さんが1曲でもアコギを弾いたら、僕は「あぁ、下山さんはここにはいないんだ・・・」と寂しい気持ちに駆られていたでしょう。
「福幸よ」の項で書いた、柴山さんが背負った「アレンジの変化」とは、オリジナル・ヴァージョンでアコギが活躍する曲でこそ真価を発揮していたと言えます。

2012年のツアーでの「3月8日の雲」は、CD音源と同じくまずは下山さんのアコギとGRACE姉さんのドラムスのみの演奏で始まりました。ツアー初日はテンポが速くて「さすがに鉄人バンドの猛者2人も緊張しているのかな」と思って聴いたことをよく覚えています。
一方今回はGRACE姉さんのドラムスに載せて、ハードロック王道の特徴的な主進行を柴山さんと依知川さんがユニゾンで弾く、という新たなスタイルで幕開け。
「レ~、ド、レドシ♭ラ♪」のオブリガートをベースで再現する依知川さんに痺れます。
柴山さんの方は、2回し目からはリフに加えてカッティングのニュアンスも出さないといけませんからこりゃ大忙しだ!(2012年の時は、「ちゅくちゅくちゅくちゅく・・・」のカッティング・スタンバイが観られました)

Aメロ途中から噛み込む泰輝さんのオルガンは正に「切り裂く」かのような演奏です。
そう、この曲は泰輝さんの作曲作品。5年間で泰輝さんが作曲した5曲のうち、ただひとつ「バラードではない」曲がこれです。
初めて『PRAY FOR EAST JAPAN』のテーマで曲を作って欲しい、とジュリーから依頼されて鉄人バンドのメンバーが作曲した『3月8日の雲』収録4曲は、4人それぞれの当時の気持ちがよく伝わる作風だった、と僕には思えてなりません。
泰輝さんはあの年、激しく怒っていたのか、無力感に苛まれていたのか・・・そこまでハッキリ分かるわけではありませんが、泰輝さんの気持ちはこの曲想から感覚として受け取ることができる、と思っています。

ジュリーの「そよ風に疼きます」の鬼気迫るヴォーカル。そして演奏がドラムスだけになる「後悔ばかりです」から最後の一節「折れないで」までの声の繋がり・・・「圧巻」と言うには凄まじ過ぎます。
「3月8日の雲」のアレンジ最大の個性は「唐突なエンディング」ですが、ラスト1音に合わせて「グッ」と顔を上げるジュリーの仕草は2012年と同じ。
ジュリーの志は5年経とうがこの先何年経とうが変わることはないのだ、と思いました。

4曲目「
東京五輪ありがとう

Sannenomoiyo_2


東日本の復興には もっと時間が必要
東京五輪まであと3年 成功復興叶え
あの町を忘れないで 思い出して
遠い町の 出来事じゃない


2012年からの5枚の作品はいずれも素晴らしい名盤ですが、みなさまの「特に好きな1枚」はどれでしょうか。

僕はまず『3月8日の雲』がリリースされた2012年、「これは凄い。圧倒的な1枚」だと思いました。ところがその後新譜が届けられる度、毎年のように「う~ん、これまた凄い、甲乙つけ難い」と思い続けて計5枚。
それぞれに違った思い入れや、「好き」のベクトルがある中で、僕は収録4曲の曲想バランスや音楽性については『三年想いよ』推しとなっています。
「櫻舗道」と「一握り人の罪」(+みんな入ろ」)は最初から大好きで、後にその年のツアーを体感しタイトルチューンの「三年想いよ」でのジュリーと鉄人バンドのパフォーマンスに感動、特別な1曲となりました。

そして今回、セットリスト4曲目に配された「東京五輪ありがとう」・・・こんなに素敵な曲だったか!と。
後日改めて『三年想いよ』の歌詞カードを眺めていて、詞も曲も収録4曲それぞれ突出したパワーがあって、バランスの良い1枚だなぁと。
ジュリーが今回歌った5枚をまだCDで聴いていないお客さんがいらっしゃったら、「導入篇」としては意外と『三年想いよ』が最適かもしれません。

元々、「東京五輪ありがとう」についてはベースが入れば「化ける」曲だとは思っていて、2020年には依知川さんのベースで聴けるのかなぁと勝手に予想していましたが、今年ひと足早く「重厚なロック・チューン」の真髄を味わうことができました。
イントロの依知川さんのフレージングはビートルズの「サージェント・ペパーズ~」のようでした。着地するトニックにマイナーとメジャーの違いはありますが、コード進行がちょっと似ているんです(この2曲のイントロの類似については、YOKO君がリリース後早々に発見していました)。「さぁ、始まるぞ!」という独特の臨場感は、低音が似合う「イントロ限定」の見せ場です。

他パートが頭打ちでアクセントを決めるギター・ソロ部、柴山さんのギターはさながら咆哮のようでしたが、僕には「軽快」とも受け取れました。
「柴山さんが弾くからこそ」という部分は他のどの曲にもあるでしょうが、「東京五輪ありがとう」にはそれが特に強いように思います。

あと、この曲がそうだったどうかはもう覚えていないんですけど、今回のツアーでは柴山さんがステージ前方までせり出してきてソロを弾く(エフェクターを踏んで単音の音を太くする、或いは音色を変えてからカッ飛んでくる)曲では、ソロが終わる時に「エフェクトを切る」役目をローディーさんが受け持っていました。
タイミングを見計らってローディーさんが入場してエフェクターを切ってくれるので、従来のツアーより柴山さんが前方に留まっている時間が長くなります。
この日、何曲かでそんなシーンを見ていて「なるほど、こりゃ柴山さんのファンにとっては嬉しいアイデアだ」と僕はそうんなふうに思っていました。

でも実はそれはすべて「あの曲」への伏線でした。

その瞬間の「目からウロコ」と言ったらもう・・・でもそのお話はまた後で(←焦らしてばかりですみません)。

ジュリーは「東京五輪まであと3年」と歌いました(本来の歌詞は2014年に作られた「あと6年」)。
もう『三年想いよ』から3年、あの震災の年から6年が過ぎました。果たして復興は成ったのか、原発事故は「アンダーコントロール」などという言葉の通りに終息したのか・・・現実はまったく違います。
経済産業省は昨年12月、東京電力福島第一原発の廃炉および事故対応費用(賠償など)を、従来の試算の倍、21兆円超と上方修正したそうです。
僕らには現実感すら沸かない数字です。そもそも、お金だけで解決するようなことでしょうか。

ジュリーが「あと6年」の時点で警鐘を鳴らした「復興にはもっと時間が必要」が身につまされます。
「東京五輪ありがとう」というタイトルの意味を、僕らは皆で考えなければなりません。

5曲目「
Uncle Donald

Pray


あなたの言葉の続き知りたい
手繰って紡げば糸になる
あなたの言葉が突き刺さった日
胸に刻みつけて


これも「3月8日の雲」同様、「リリース年のツアーが終わったら、二度と生では体感できないだろう」と勝手に決めつけていた曲のひとつでした。

『東京新聞』を購読している人なら、ジュリーが2013年にドナルド・キーンさんに深い親愛を込めて「知りたい」と歌った「あなたの言葉の続き」を、キーンさんの手記『ドナルド・キーンの東京下町日記』連載で継続して「知る」ことができていますね。
90歳を超えたキーンさんは手記の中で、その長生きの秘訣を「特に何も気をつけないこと」だと笑い飛ばしていたことがありました。これ、僕らがあやかろうと思ってもなかなか難しい・・・キーンさんはジュリー同様「特別な気構えを自然体で持つ人」なのでしょう。

連載でのキーンさんのお話は、被災地への想い、自身の戦争体験談など多岐に渡りますが、「忘れてならないことは忘れない」「言わねばならないことは言う」というスタンスの中でも、「日常」の楽しみ、堂々と生きることの「喜び」を隠さず、それをメッセージに「生かす」・・・そんな個性があり、それはキーンさんの日々の生活そのものであるようです。
そのあたりはもしかしたらジュリーと共通しているのかもしれない・・・キーンさんは「文学」、ジュリーは「歌」にその根っこがあるのかなぁ。

「忘れてはならない」のはもちろん3・11だけではありません。はからずも僕が今この「Uncle Donald」の項を書いているのが1月17日。22年前、阪神淡路大震災が起こった日付です。
僕が今なおこの日付を身近に刻み続けていられるのは、当時カミさんが現地で震災を体験し、目の当たりにした大きな被害について時々話をしてくれることがまずひとつ。

もうひとつは、尊敬している将棋棋士、森信雄七段(「西の名伯楽」と言われ、多数のプロ棋士を弟子として育てていることで有名。昨年映画化された『聖の青春』の主人公である故・村山聖さんが森七段の一番弟子でした)がこの日を「一門の日」と定め、門下一同で祈りを捧げ続けていることをブログなどで毎年発信してくれるからです。
阪神淡路大震災では、森七段の弟子であり奨励会(プロ棋士養成機関)に所属していた故・船越隆文さんが、当時17歳の若さで犠牲となってしまいました。以来森七段は「一門の日」に必ず船越さんが犠牲となったアパートの跡地に弟子を集合させ、自身の家族、船越さんのお母さんらと共に鎮魂の祈りを続けています。
(「前日」16日に森七段がupしたブログ記事は
こちら。「当日」の17日は皆がアパート跡地に集まったはずで、そのことも近々に記事にしてくださるでしょう)。
(また、1年前のネット記事になりますが、森七段と船越さんのことが書かれた記事が
こちら

森七段は先日、「阪神淡路大震災の日が近づくと毎年、身体のどこかが反応して心身のバランスを崩す」とブログで吐露されていました。
「大切な人を不条理に失ってしまった」人が抱えているそうした心情を、僕らも常に胸に留めておかなければならない・・・そう考えるばかりです。
森門下も今では震災当時まだ幼い子供だった若い弟子達が続々とプロ棋士となっていますが、船越さんはじめ震災の犠牲となった方々への「祈り」は彼等にも間違いなく受け継がれています。

僕は、キーンさんが文章を書いていることやジュリーが同じテーマで新譜をリリースし歌い続けていることにはそういう意味もある、と思っています。
キーンさんの痛ましい戦争体験は、戦争を知らない僕のような世代の胸にも確かに響いています。
そして・・・ジュリーにも若いファンが増え続けています。いずれ、東日本大震災の記憶を持たない世代のジュリーファンも現れるでしょう。
でも彼等は3・11をリアルタイムでは知らずとも、きっとジュリーの歌から「祈り」を受け継ぐことになるはずです。今そんなことを考えていると、ジュリーがNHKホールで歌った「Uncle Donald」で、「人は変われる」の歌詞部に僕が特に胸を打たれたことも納得できるのです(正確には「人は変われ」+「RHU」)。

さて、2013年の「Uncle Donald」の演奏で強烈に印象に残っているのは、何と言っても下山さんのアコギ・スタンドの採用でした。ごく狭い世間で「遂に衆人ガン見の中で霊力を!」と話題になったものです。
その後その手法は『昭和90年のVOICE∞』での「カガヤケイノチ」の再演、2014年全国のツアーでの「こっちの水苦いぞ」にも受け継がれました。

それを今年のこの曲では柴山さんがエレキ1本でやり遂げた、という・・・しかも柴山さんの演奏は、下山さんが再現していなかったエンディングのジェット・サウンドまで網羅しているんですよね。
この柴山さんの大活躍には、やはり依知川さんの考案したベース・ラインが不可欠だったと思います。2013年に柴山さんがパワー・コードを担っていたアレンジ・パートを、依知川さんがスタッカートの効いたエイト・ビートに置き換えたのです。
ベースの低音で奏でられるクリシェは格別でした。

そして改めて感じたのが、この曲をはじめ今回歌われた下山さんの作曲作品4曲が、いずれも素晴らしい名曲ばかりだということ。
他に「似た曲」が無い個性派ジュリー・ナンバー4曲。
バンドへの復帰はもちろんのことですが、またいつか下山さんが提供したジュリーの新曲が聴きたい、と僕は切望しています。

6曲目「
犀か象

Undemocraticlove_2


地震多発も犀か象 舌の根乾き犀か象
神をも畏れない犀か象


柴山さんの「じゃら~ん♪」の音合わせからGRACE姉さんのカウント。その数秒のシーンだけで「おっ、次はこれか!」と分かりました。
昨年のツアーの記憶も新しい「犀か象」。
ところがところが、同メンバーでの再演にも拘らず、これがまた「福幸よ」以上にアレンジを変えてきました。

大きく変わったのはAメロ、作曲者でもある依知川さんのベースライン。
溜めを効かせたオリジナル・ヴァージョンが、明快、軽快なエイト・ビートに進化していました。
これはジュリーのリクエストではないか、と僕は推測します。確かに「原発再稼働」をテーマとしたシリアスなメッセージ・ソングだけど、ジュリーとしては「楽しく、軽快に」歌いたい曲なのではないでしょうか。そこで、昨年のツアーの経験、感触を踏まえ、「もっとビートを強調して!」とバンドに提案したんじゃないかなぁ。

僕は昨年この曲の考察記事で、「動物たちが賑やかに登場する、一見楽しげなポップ・チューンが、実はとんでもないメッセージ・ソングだった」という狙いのニュー・ウェイヴの手法を見た、といったことを書きました。この考えは今も変わっていません。
ジュリーをよく知らない人がひょんなきっかけで「犀か象」というタイトルの楽曲の存在を知ったとします。特に子供達。「なんだろう、どんな曲だろう」と思って聴いてみたら・・・という、そのインパクトですね。

川内、伊方、玄海・・・今この国は各地で「再稼働」「再稼働」の合唱状態です。
知事は青海鼠で、国は鹿馬。
万が一2011年の福島の事故のようなことが再び起きてしまったら、誰が、どのように責任をとるのか。
犀に腹を切らせようと言うのか。
象に廃棄物を食って貰おうと言うのか。
「できもしない」とジュリーは歌います。「安全じゃないっしょ」と、それは誰しもが分かること。
それでも再稼働に突き進む国の意図とは何なのでしょう。経済なのか、「潜在的核保有」なのか。

でもジュリーは、新たなアレンジを得て、この曲を今年も楽しげに「陽」のオーラをふりまきまがら「犀か象」をハッキリと「再稼働」と変えて歌い、躍動します。
「バイヤ」の清々しさ。躊躇の無さ。
「いざ間奏」の合図となる「パオ~ン!」の雄叫びは、大きなアクションで象の鼻を振り上げてくれました。

良質なポップチューン、かくあるべし。
LIVEでの体感はまた格別。
改めて確認したコード進行の面白さもあって、僕はますますこの曲が好きになりました。

7曲目「
一握り人の罪

Sannenomoiyo_3


原発に乞われた町 原発に憑かれた町
神話流布したのは誰 一握り人の罪
原発に怯える町 原発に狂った未来
繰り返すまい明日に 一握り人の罪
嗚呼無情


柴山さんのエレキによるコード・ストロークからスタート。一瞬「ん?どの曲だ?」と戸惑いましたが、柴山さんのフォームを見て、これは「一握り人の罪」だ!と。

ただ僕はコード進行が頭に残っていた(泰輝さんが好きなビリー・ジョエルの曲「場末じみた場面」を思わせます)からすぐにそれと気づけただけで、過去に採譜をしていなかったら果たしてジュリーの歌が始まるまでにこの曲だと把握できたかどうか。
みなさまはいかがでしたか?
ジュリーの歌が始まるまで「一握り人の罪」とは分からなかった、と仰るお客さんが多くいらっしゃったとしても不思議ではない・・・そのくらい、アコギとエレキの印象って(この曲の場合は特に)違うと思うんですよ。特に「伴奏がギター1本」の状況だとね。

ジュリーのヴォーカル、僕はこの曲で「来た!」と思いました。8年LIVEを観続けてきて新規ファンなりに体験している、「ジュリーの一番良い時」の歌声・・・気持ちと声が完全にリンクして、無心無垢となったジュリー。ただそこには「歌」がある、という感覚。
何度かそんなジュリーを体感してきていますが、これまでで一番強く印象に残っていたのが2012年『3月8日の雲~カガヤケイノチ』びわ湖ホール公演での「恨まないよ」です。
表現のしようが無いほど素晴らしかったあの時のジュリーの歌声の感覚が、今回のNHKホール、7曲目「一握り人の罪」でスパ~ン!と降りてきました。
そして驚くべきは、そんなジュリーの「無心無垢」がこの後バラードが連続して配されることになるセットリスト(14曲目「Pray~神の与え賜いし」の1番までの間)で、ずっと継続したのです。

だからこそ、14曲目での出来事があった、と言えます。
後でも書きますが、僕はあのアクシデントが起こったことはジュリーとお客さんが良い意味で「我に返る」タイミングとして良かったんじゃないか、と思っています。
そりゃあ、「一握り人の罪」以降数曲のバラードで僕が感じたような素晴らしい感覚をLIVEの最後まで持ち続けることができれば最高ではありましょうが、もしそうなったらもうジュリーは人間を超えてしまうと言うか、別世界に行ってしまうと言うか、到達して燃えつきてしまうと言うか・・・とにかく尋常ならざる事態になっていたのではないか、と想像するのです。
変な話、そこまでのジュリーを魅せて貰うのは、最後の最後にとっておきたい、と僕は思ってしまいました。
ジュリー110歳くらいのLIVEでね(その時僕はもうこの世にいないでしょうけど)。

それにしても、何と美しいメロディーでしょうか。
僕はこの5年の泰輝さんの作曲作品の中では抜きん出て「un democratic love」にZOKKON状態だけど、この「一握り人の罪」は泰輝さん自身が純粋にそのメロディーに最高の手応えを得ている傑作かと思います。

あと、今回この曲で感動させられたのは依知川さんのベースでした。
ジュリーの無心無垢のヴォーカル、そして柴山さんがエレキを弾いてくれたイントロのおかげで、オリジナル・アレンジに強い思い入れを持つ(「この曲は柴山さんと下山さんのツイン・アコギ!」という特別な感情)僕も、自然に新たなアレンジに気持ちが入りました。
「一握り人の罪」で聴く、まったく新しい音・・・依知川さんが考案したベースラインは、まず小節の頭でルート音を可能な限りのフレット最低音で弾くロングトーン。
それを受ける次の音は思いっきり高音へと跳ね上がり、そこから小刻みに音階を下げてゆくフレージング。高音から降って「これ以下はない」ところまで辿り着いた低音が、次のルート・ロングトーンへの着地点です。
ベース演奏についてよく「レベルが高い」と言われるのが、「次の小節へと向かってゆく」感覚。それを依知川さんはじっくりと、澱みなく続けてくれました。

ジュリーと鉄人バンドが作り上げたオリジナルの「一握り人の罪」とアレンジは違えど、その志に乖離するところはまったくありません。
それを引き出したのが柴山さんのエレキだっとも言えます。本当に素晴らしかったです。

8曲目「
Fridays Voice

Pray_2


放射能は呻いた こんな酷い支配を
意に介さぬ人が嗤う 何故恐れない
福島だけ問題? 無関心が問題
生けるものの大切な未来 決めてしまう問題


こちらは柴山さんの最高傑作、と僕は思っています。
ジュリーの声域を高低すべて網羅したようなメロディーライン、調号の変化が無いにも関わらず変化に富んだコード進行と豪快な楽曲展開。ジュリーが歌詞を載せた「We Are Fridays Voice」のリフレインが1番では1回、2番では2回、エンディングでは「無限」を示唆するかのような大コーラスへと拡がるアイデア。
人々の「声」が時とともに重なり、大きなパワーとなっていく様を体現した、これもまた「福幸よ」同様に「詞曲一体」が最大の魅力と言える名曲です。
「福幸よ」は柴山さんの作曲にジュリーが乗った、という感じですが、こちらはジュリーの歌詞が載ってから柴山さんをはじめ鉄人バンドのメンバーが入念に細部を詰めていった、という感触。当たっているかどうかは分かりませんが。

経済産業省前のテントが撤去された、というニュースが報じられてからもうずいぶん時が経ちます。もしかするとみなさまの中に「それ以降、”Fridays Voice”は途絶えてしまった」と思っている方がいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。
『東京新聞』では毎週土曜日の朝刊で『金曜日の声』と題した連載を今も継続しています。必ず、参加者数名の「声」を拾い上げ、年配のかた、若いかた、バランス良く取材されているようです。
それにより、原発の問題に止まらず様々な観点で「Fridays Voice」が今なお健在であることが分かります。

「一握り人の罪」から、歌詞中で明快に「原発」というフレーズが登場するバラードが2曲続くことは、僕らジュリーファンはもとより、今回初めてジュリーのLIVEを観るお客さんにも大きなインパクトを残したでしょう。

「原発」というフレーズの語感がポップ・ミュージックの歌詞としては不自然、などという考え方は、生のジュリーの歌声の前には吹き飛びます。
こうした社会性の高いメッセージ・ソングをして「ハッキリ言った方がいい」という手法は、ジュリーが常に「LIVE」を意識しているからこそ自然に生まれるもの。
「どうしたら伝わるのか」と考えるベクトルが、50年継続してステージに立ち続け、欠かさず全国ツアーを敢行していする歌手・ジュリーだけの、特異にして実は一番「真っ当」なところへ向いていると思うのです。
この境地へ、この場所へ辿り着けたというだけで、ジュリーという歌手は凄まじい。
だから「可哀相な原発」「行き場のない原発」「止めるしか原発」と明快に歌えるのです。

反して、世の現実はどうでしょう。
この項を書いている今日1月18日に、玄海原発3、4号機が新規制基準に合格(適合)、とのニュースがありました。
この先待っているのは「使用前検査」と県知事の承認。この2つがいかに軽いハードルであるかを、僕は故郷・鹿児島の川内原発再稼働までの経緯で思い知っているだけに、なんともやりきれない気持ちです・・・。

バンドの演奏で印象に残ったのは、まず1番と2番の間に挿し込まれるピアノとギター単音のユニゾン(柴山さんのハンマリング・オン→プリング・オフもCD音源通りに再現されました!)。
そして同箇所でのGRACE姉さんのリム・ショットにグ~ッときました。何だろう・・・この優しく鳴っている「木」の音のような存在感は。

ドラムスと言えばこの曲ではやはり、大サビのリフレイン部が圧倒的な見せ場です。GRACE姉さん、今回はちょっとフィル・フレーズを変えていたかな?

9曲目「
涙まみれFIRE FIGHTER

Kottinomizunigaizo


無力感 震え止まらず 悔しさが眼に焼き付いて
消えぬまま 町の四年が過ぎ去り
襲い来る風化とともに 北国の短い夏よ
押し寄せる 寂寥だけが今でも


もしかすると、今回歌われた全20曲の中で最も「重い」のかもしれないこの曲の項でいきなりこんなことを書かなければならないのが本当に情けないのですが・・・不肖・DYNAMITEがこの度「やらかしてしまった」2つの点について。

まずは、セットリスト曲順の記憶間違いです。
最初のMCで2012年からマキシ・シングル5枚全20曲をやる、と聞き「あぁ、今回はセットリスト覚えるのは楽勝だな」と油断してしまったのは、「演目タイトルの記憶漏れはあり得ない」からですが、いざLIVEが終わってみると、これほど「曲順」を思い出すのが困難なセットリスト構成は無かった!と痛感。
僕は毎回ツアーの度に、いつも仲良くしてくださる関西のケンケンジ姉さんから「初日セットリスト速報」を請負っておりまして、今回も「お任せあれ!」と自信満々に言ってしまったばかり。こりゃマズイぞ、とは思ったのですが、何とか記憶を振り絞って速報メール。
ところがその時僕は「9曲目=泣きべそなブラッド・ムーン」「10曲目=涙まみれFIRE FIGHTER」と記憶違いのままお伝えしていまいました。

その後、どうもこの2曲が逆だったんじゃないかという話になり、僕は「え~、そうだっけな~」と迷っていたところ、絶対の信頼を置いている先輩がSNSにセットリストを書いてくださっているのを拝見。これにて、「うわ、これは俺が完全に間違ってる!」と慌ててケンケンジ姉さんに訂正メールを送った次第でした。
すぐに「大丈夫ですよ!」と返信くださり(優しい!)ホッとしました。
でもケンケンジ姉さんの方は姉さんの方で、今回のセトリに驚いて色々と考え込んでいらしたみたいで、そんな時にこの失態・・・本当に申し訳なかったです。

で、この2曲の順序について先に「逆じゃない?」とご指摘頂いていた先輩に「凄いですね~。よく覚えていらっしゃいますね」とお話したら、いやいや他の曲の順番はよく覚えていない、しかし「涙まみれFIRE FIGHTER」と「泣きべそなブラッド・ムーン」についてだけは
「だって、ジュリーが上着脱ぐ前と後の曲でしょ?」
と。
てなことで僕のもう1点の「やらかし」は


ジュリーがジャケットを脱ぎシャツ姿になっている記憶がまったく無い

という・・・(大恥)。
当然、目には入っているわけですし、ジュリーが上着を脱いだシーンも「見て」はいるはず。それを全然思い出せないというのは・・・ジュリーファンとして大いに問題あり、ですよね。
打ち上げでも先輩方とカミさんが1着目の衣装について「あそこに北斗七星があった、あそこには何があった」と話している中、そこでも僕はそのことすらよく覚えていなくて会話に入っていけず。
まぁ、それだけ歌に集中していたってことですよ(←苦しい言い訳)!・・・さすがにこの状態ではタケジさんに申し訳ないですから、夏からの全国ツアーでは心を入れ替えようと思います。

曲順の記憶違いについては、やっぱりCDの並びのイメージが強かったのかな。
にしても、僕が各曲ごとに「これはどのメンバーの作曲」と脳内で考えていたのは確かで、この時も「柴山さんの5曲はもう全部歌ったなぁ」と思ったことは覚えてる・・・それなのに、冒頭の1、2曲目に続いて、「Fridays Voice」からまた柴山さんの曲が2曲連続だ!とハッキリ意識できなかったことは痛恨です。

依知川さんのベースが加わり、その微妙に後ノリ気味の重厚な低音を体感して、「あっ、この曲はメタル・バラードなんだな」と思いました。
実は僕はロックの中でメタルって一番苦手なジャンルで、特に歌詞フレーズに「ファイヤー」が出てくるとそれだけでヘナヘナと力が抜けちゃう奴なんですけど、ジュリーの「涙まみれのFIRE FIGHTER」は例外。
だって、このジュリーの歌詞は・・・とてつもない。自らが胸をかきむしられるような思いをしていないと、とても出てこない表現の連打また連打です。
毎年リアルタイムで新譜を聴くと、「ジュリー、何故そこまで・・・」と感じる曲が2015年までの作品には必ず収録されていますが、この曲はその最たるもの。ひとつひとつのフレーズが「安易」とは対極の、魂から選び出され絞り出された言葉であり、歌なのです。

加えて、柴山さんの人柄を思わせる楽曲構成。
この曲はサビで嬰ト短調からロ短調というかなり大胆な転調が登場しますが、今回改めて意識、感動させられたのが、その繋ぎ目です。
柴山さんは、サビ直前はギター単音、元の調に戻る箇所はジュリーが「あああ~♪」と歌うメロディーで大事に、大事にキーを変えてくれます。
この包容力・・・「ヘヴィー」なだけでなく、繊細なデリカシーがあると思うんですよね。

エンディングのジュリーの声は、2015年のツアー同様の「咆哮」です。
柴山さんのフランジャーを効かせた最後の和音と共に照明が暗くなり、ジュリーが直立不動の体勢を解くまで、この「寂寥のバラード」の余韻は続きます。
お客さんが息を飲んでステージを見守っている空気が伝わってくるようでした。

10曲目「
泣きべそなブラッド・ムーン

Kottinomizunigaizo_5

誤解なら 仕方ない
笑ってられないな もう限界


2015年のリリース直後、僕はこの曲について「前年に南相馬公演を実現させたジュリーが、その時会場に駆けつけたお客さんに捧げた、「ファンに直接歌いかけているような」内容の歌詞だとまず思いました。
でもその後何人かの先輩から考察記事にコメントを頂いたり、直接感想を伺ったりしているうちに、「激しい怒りの歌」ではないかと思い直しました。
「花束を渡す」という表現に、「祝福」とは程遠い意味で社会的なメッセージとして使われる場合があることも学びました。例えば、「非情」な相手に対して、届かぬまでも自らの心の在り処を指し示す、という使い方です。

その一方で、「自分に親しみを届けてくれてるみたい」という気持ちでこの曲を聴く楽しみ方はあって良い、とも思います。僕は残念ながら参加できなかったけれど、あの南相馬公演を体感されたファンの方々は特に。

「涙まみれFIRE FIGHTER」と同じ短調のバラード。ただこちらはメロディーもアレンジもどこか幻想的です。
GRACE姉さんのタム、泰輝さんのピアノでイントロから独特の世界に引き込まれ、静かに歌われる1番Aメロでは、ジュリーの持つ「妖しさ」の魅力が引き出されます。触れることの叶わない、天上人のような・・・。
それが2番のサビ直前「もう限界」の箇所の半音上がりの転調によって、生身の人間の慟哭へと収束してゆきます。これこそ正に「祈り歌LOVESONG」でしょう。
ステージのジュリーと観ている側との距離感に、歌い出しとエンディングでは驚くほどの違いが生まれる名曲。これはLIVEでなければ味わえない感覚です。

今僕がこの項を書いているのが1月20日。ジュリーは大阪2days真っ只中。
フェスに参加されたみなさまのご感想の声も続々と届けられていて、会場のテンションの高さにジュリーがとにかくご機嫌だった様子。
そう聞くと、やっぱり東京の初日はジュリーもお客さんもどことなく硬かったかな。
「泣きべそなブラッド・ムーン」あたりはずいぶん東京とは雰囲気も違って聴こえたのかもしれません。
まぁ、関西公演独特のジュリーの立ち振る舞い、という要素も大きいでしょう。今年このセットリストを大阪で体感されたみなさまが羨ましいばかりですよ。

そう言えば僕はもう何年も、ジュリーの関西ツアーを体感していません(と言うか、フェスティバルホールに参加したことがまだ一度も無い)。
全国ツアーは遠征を考えてみようかなぁ。

11曲目「
Deep Love

Pray_3

Deep Deep Deep Love 癒えないのだろうね
何年の月日 生きて行くのだろう


ある詩人が自ら紡ぎ出した言葉に涙する、というシーンがあったとして、受け手がそんな詩人に感情移入できることは本当に稀でしょう。「とても入っていけない」と感じるのが普通ではないでしょうか。
それが叶うのはよほどのことだと思います。その「よほどのこと」が起こる曲がジュリーの「Deep Love」。

先に僕は、不思議に今回のセットリストで涙が上ってくることは無かった、と書いたんですけど、もちろんこの曲を平常心で聴いてはいられませんでしたし、周囲には泣いているお客さんも多くいらっしゃいました。
「ナルシズム」とはあまり良い意味で使う言葉ではないでしょう。しかしジュリーという詩人が体現するそれは「心の美しさ」であって、「歌に心ごと身体ごと入り込む」天賦の才の為せるところです。
確かに「Deep Love」で歌われているテーマはそんな綺麗事ではない・・・でも、美しい心を持てなければ歌えない歌でもあるでしょう。
「気持ちを込めて歌う、ということがどういうことなのか思い知らされた」というのは、ジュリーwithザ・ワイルドワンズに「涙がこぼれちゃう」を提供した吉田Qさんが当時語っていらしたことですが、ステージに立つジュリーには常にその境地があり、今セットリストでの「Deep Love」のヴォーカルは正にその極みです。

思えば、2013年のツアーでジュリーが「Deep Love」を涙なしに最後まで歌い終えたことは、少なくとも僕が参加した会場では皆無だったんじゃないかなぁ。
特に大宮なんてボロボロでした。
この初日、「一握り人の罪」で「無心無垢」のスイッチが入ったジュリーはひたすらに歌だけに向かい、声を乱すことなくここまで来ていました。「Deep Love」も、今日はこのまま最後まで歌いきるのではないか、と思っていた矢先、間奏直前の歌詞部最後の一節でジュリーは声を詰まらせ音程が無くなり、なんとか言葉を絞り出すのが精一杯、という状況に陥りました。
今日のジュリーの素晴らしい声は、本当にギリギリのところで生まれていたのだ、と気づかされました。

同時に、僕はそんなジュリーに勇気を貰いました。
「お前、仮にも男だろ」と喝を入れられたような・・・とても個人的なことなのですが、僕自身の中に置き去りになっていた「薄情」をつきつけられたのです。

勇気を得た僕はNHKホール公演から数日後、2012年の夏以来(僕に勇気が無かったせいで)連絡をとれずにいた忘れ難い先輩にメールを差し上げました。
お返事はまだ頂けていませんが、ジュリーファンでなかったら、鉄人バンドのファンでなかったら意味不明であろうアルファベットが並ぶアドレスが不通とならず、無事送信が叶っただけで嬉しかった・・・。

「お元気ですか?僕は元気です」
たったそれだけのことをお伝えするのに5年近くもかかってしまって、ごめんなさい。

あとはゆっくり、お待ちするだけです。
忘れずに、いつまでも。

「Deep Love」は重い曲です。
とは言え、「涙まみれFIRE FIGHTER」「泣きべそなブラッド・ムーン」とは違い短調ではありません。リリース年には、こんなに辛く切ない曲が長調のメロディーである、というのが信じられないほどでした。
でも今年、依知川さんの新たなベースラインを得たこの曲がまぎれもなく「ハ長調のバラード」なのだと再認識することができました。

依知川さんは「跳ねる」ニュアンスのフレージングで、ジュリーの美しさに光を当てる華麗なベースラインをぶつけてきました。「シ」の音がフラットしない・・・具体的に言うと長調のメジャー7thの音を強調してくれたので、アレンジに明るさが灯りました。
そんなベースラインに載って放たれるジュリーの声、そしてイントロや間奏での柴山さんのギター・ソロを聴いて、作曲者の泰輝さんは、ビリー・ジョエルの「キャプテン・ジャック」のような曲を目指したのかもしれないなぁ、と思いました。これは依知川さんのベースが入って初めて思い当ったことでした。
歌詞の哀しさをバンドの演奏が優しく包み、とても美しい曲だと改めて感じ・・・この日、音程を無くした間奏直前のジュリーの声まで含んで、「Deep Love」という「歌」が聴けたのではないか、と今思っています。

名古屋、大阪に参加された先輩方からも、「Deep Love」絶賛の声が多いです。初日以降、ジュリーはこの曲をどんな様子で歌っていたのでしょうか。


12曲目「
un democratic love

Undemocraticlove_3

祈りますとも 君の国のため
君と同じ以上に 自由が好きだよ


僕としてはこれはもう、「待ってました!」という1曲。
今回は特別なセットリストとなりましたが、もしそうならなかったとしても、『祈り歌LOVESONG特集』のツアー・タイトルが発表された時に僕が真っ先に連想していた曲がこの「un democratic love」でしたからね。

2012年以降の20曲の中、個人的には圧倒的に好きな曲、共感できる曲、元気と勇気が沸いてくる曲で、この日最初のMCを聞いてから「いつ来るか、どんなふうに、どの曲と繋がって歌われるのか」と待ちかまえていたわけですが、あの凄過ぎる「Deep Love」のヴォーカル直後に続けて聴いたことで、これまでとはまったく違うメッセージをジュリーから受け取ったように思えました。

この『祈り歌LOVESONG特集』というステージに、それぞれの楽曲が持つ「政治性」は二の次、三の次だったのだ、と僕は考えます。
ジュリーが全セットリストを通して歌ったのは、第一に「大切な人がある日突然いなくなってしまった」という「人の気持ち」に尽きる、と。
心の傷が癒えないまま、この先何年も生きてゆく人達。

「大切な人を思う気持ち」をジュリーが歌に込めることで、「un democratic love」のような反戦のメッセージだったり、「一握り人の罪」「Fridays Voice」のような「反原発」であったり、色々なジュリーの基本的な考え方へと繋がってくる・・・そう考えると、「Deep Love」の11曲目というセットリスト配置が何と重要なことでしょう。
これまで惚れこんでいた「un democratic love」にも新たな面、見落としていた魅力が感じられてきます。
とても新鮮に聴きました。

演奏も最高でした。この曲はセットリスト本割全20曲のうち、リリース年の全国ツアーとまったく同じアレンジ、音色で再演された唯一の曲だったでしょう。
それはそれでまた素晴らしい!
やっぱり僕は「君と同じ以上に自由が好きだよ」の箇所が一番グッときます。「僕もそうだ」と思えます。

「50周年だからといって、グッズを作ったりはしない」と言うジュリーですが、昨年は『democratic Japan』のTシャツを製作してくれました。これがどれほど特別なことか。Tシャツの文字に託された思いとは何か。
「大切な人を思う」ところにその答がある、と思います。ジュリーが歌詞中で言う「魂の言葉」ってそれじゃないのかなぁ、と・・・。

昨年同様、掌を前に出して「don't love me so」の箇所を歌い上げたジュリー。
ジュリーのこの詞は「独白」のスタイルです。主人公が「日本国」であり、「そんなふうに僕を愛さないでくれ」と訴える相手は安倍さんである、という僕の楽曲解釈は、リリース直後から今までまったく変わっていません。

13曲目「
Welcome to Hiroshima~平成26年(2014年)8月6日『平和への誓い』より

Undemocraticlove_4

平和について これからについて 共に
語り合い 話し合いましょう
たくさんの違う考えが
平和への大きな 力となること 信じて


前曲「un democratic love」で、「これで泰輝さんの5曲はすべて歌い終えたなぁ」と思いつつふと考えると、「柴山さんの5曲も終わった、依知川さんの「犀か象」も歌った・・・あとは下山さんとGRACE姉さんの曲しか残っていないんだ!」と。
まだまだセットリスト中盤、というこの時に・・・しかもよくよく考えたら、「GRACE姉さんの曲はまだ5曲全部残ってるんだなぁ」と待ち構えていて始まったイントロが、昨年の新譜からGRACE姉さん作曲のこの曲でした。

歌詞の内容であったり曲想であったり、何か共通する要素を持つ曲を連続で繰り出すセットリスト配置を得意とするジュリー。その意味では、2012年からの20曲はどんな曲順となっても「共通の要素」はあるわけですが、「un democratic love」「Welcome to Hiroshima~平成26年(2014年)8月6日『平和への誓い』より」の2曲には、20曲の中でも際立った「反戦」「平和」をテーマの繋がりがある、と言えます。
また、次曲「Pray~神の与え賜いし」との繋がりを考えると、こちらはキーが共通することに加えて、転調の理屈も同じなんですね(連結部に当てているコードは異なりますが)。「Welcome to Hiroshima・・・♪」からの転調と「澄み渡る矜持あり・・・♪」からの転調。
この2曲の配置は「作曲者・GRACE姉さんの得意技繋がり」とも言うべきところでしょう。

今この時代、僕らは「子ども達」そして「戦争を体験している高齢者」という2つの隔たりある世代の声に特に耳を傾けるべきだと考えています。
「子ども達の声」はジュリーのこの曲で歌われている通り。一方「高齢者の声」について、一篇の「平和の俳句」をここで紹介しておきたいと思います。
「平和の俳句」とは『東京新聞』が毎日朝刊1面に連載している一般公募作品(「俳句」といっても特に季語の制約は無く、5・7・5で読者それぞれの平和への思いを表現する、というもの)のことです。
金子兜太さん、いとうせいこうさんのお2人が選考委員となり多くの応募作品から選んだ、さまざまな世代の「選ばれし1日1句」の掲載を僕も楽しみにしていますが、今年に入っていとうせいこうさんが選んだ強烈な1句があり、とても印象に残りました。
作者は80代の男性のかたです。

かっこいい 戦争なんて ないぞ君!

先の大戦を美化せんとする風潮に、グサリと1句。
80代の作者から見れば、戦後生まれの大臣さん達はヒヨッコも同然というこの痛快さ。

「戦争を知る高齢者」の声を「un democratic love」、「子ども達」の声を「Welcome to Hiroshima~平成26年(2014年)8月6日『平和への誓い』より」と置き換えて聴くのもアリかな、と思った次第です。
昨年の新譜からの素晴らしい2曲の繋がりでした。

ジュリーの歌メロが終わると同時に、僕は柴山さんの足元をガン見(よく見えました)。
おおっ、踏んだ!
柴山さんがエフェクターを踏みました。
そして奏でられるギター・ソロ・・・間違いありません。今回はオクターバーです。
昨年の全国ツアーでは、「三年想いよ」の後奏に近いサスティン強めの設定でこの曲のソロを弾いていましたが、今年はCD音源と同じ音色に変えてきた柴山さん。
これまた、ジュリーの熱唱にもひけをとらない素晴らしい熱演だったと思います。

14曲目「
Pray~神の与え賜いし

Pray_4

彼の人のたもうた 天罰だと
神が何故罰など 与えましょう


一般世間ではすっかり「LIVE中に歌詞を忘れて土下座したジュリー」という偏った情報ばかりが広まってしまいました。
ネットニュースの煽動的なヘッドラインやミスリードはジュリーのことに限らず今に始まったことではないですし、ジュリーが話題になること自体は僕も嬉しく思うところはあるんだけど、そうした記事中で最低限「どんなLIVEだった」「どんな内容だった」という全体像までは押さえて欲しいですよね・・・。
NHKホールから週が明けて出社したら、そんな報道に何気なく目を通したらしい会社同僚からいきなり「ジュリー、バカウケじゃん!と話しかけられ唖然とした、ということは既に書きましたが、僕はその後しっかり「ジュリーはずっと、LIVEではイヤモニもしないし歌詞のカンペも使わないからね」と話しておきましたよ。

ということで、巷で話題の「歌詞忘れ→演奏ストップ」というアクシデントがあったツアー初日、14曲目の「Pray~神の与え賜いし」。
僕自身、7曲目の「一握り人の罪」以降のジュリーの圧倒的、神がかったヴォーカルに息詰まるような緊張が続いていて、このアクシデントでは「ふ~っ」と一度呼吸を戻すような安堵感を覚えました。
おかしなことを言うようですけど、「タイミングとしてはバッチリ」だったと今でも思っています。

僕が日頃から「師」と仰いでいるジュリーと同い年の先輩も当然この日のLIVEに参加されていて、この「14曲目」の出来事について
「みんながジュリーからの強い力と祈りに気を張り続けている頃合いに、たくまずして現れたインターミッション」
だと仰っていました。
僕も同じように感じてはいましたが、こんなふうに上手く言葉にはできなかった・・・さすが!のひと言です。

加えて僕としては、ジュリーが一瞬「忘れてしまった」歌詞部がこの「Pray~神の与え賜いし」という曲においていかに重要な箇所(即興の「作詞」をせず演奏をいったん止めてしまうほどに)であったか、ということを書いておきたいと思います。

その瞬間、僕は依知川さんを見ていました。
キーボードで軽く音合わせの後、アカペラ・コーラスで導入するこの曲。柴山さんと泰輝さんは身じろぎせずにコーラスをとっていました(この日はGRACE姉さんの上半身がずっとシンバルに隠れて見えず)が、依知川さんは・・・おお、親指とひとさし指、中指を重ねて「パッチン」のポーズ(←これで伝わります?汗)を作り、巨体を躍動させて腕を振りながらリズムをとる独特のアクションで歌っています。
今回、2013年のツアーと比べてアカペラ部の聴こえ方がずいぶん違ったのは、依知川さんが受け持ったパートの声量が著しく上ったからではないでしょうか。

依知川さんの動きと熱唱に見入りながら、歌はAメロ2回し目へと向かい・・・そこでジュリーの声が途切れ、僕は慌ててジュリーに目を移しました。
2回し目冒頭の歌詞が出てきません。
普通の箇所ならば、ジュリーは即興の作詞をしたと思います。実際この日、他の曲でそんなシーンが多々あったのですから(と、いうところまでメディアの報道を求めてしまうのはさすがに無理か・・・)。
でも、ここはジュリー、絶対歌いたい箇所なんですよ。

「彼の人のたもうた 天罰だと」

「Pray~神の与え賜いし」の穏やかなアカペラ部に、ジュリーはどうしようもなくやるせない「怒り」のメッセージを以てこの歌詞を組み込みました。
その「怒り」は1番直後のバンド演奏の急変に引き継がれるのですが、肝心要の歌詞が出てこない事態。「ワシ、よりによってここが出てこんのか?」とジュリーが焦ったことは想像に難くありません。

あの震災を「天罰だ」などと言い放った東京都知事がかつていたことは、みなさまもご存知でしょう。
3・11を境に「被災地の人達の気持ちを考える」詩人となったジュリーは、烈火のごとく怒りました。「のたもうた」という表現は「偉そうに言ってくれやがった」くらいの意味で、とにかく強烈です。
ちなみに、「犀か象」のジュリーの作詞にある「大臣最後金目」・・・福島第一原発の汚染土中間貯蔵施設の建設について「最後は金目でしょ」と言い放ったのが、当時環境相(大臣)を務めていた「彼の人」の息子さんでした。親子二代に渡ってその発言をジュリーの歌詞中で一喝されるとは・・・やれやれ。

歌の空白時間が進み、バンドメンバーのコーラスだけが続く中、とうとうジュリーは咄嗟のひと言。
忘れちゃった・・・
キュートな声、照れた表情。
ジュリーが背を向けてメンバーに「仕切り直し」をゼスチャーで告げると、その場の空気が良い意味で弛緩したように今では思い出されます。
依知川さんが指のポーズをほどき、ニコッと笑いました。会場に充満していたガチガチの緊張が解け、お客さんからも屈託のない笑い声が起こりました。

初日に参加叶わなかったみなさまのために、これだけはきちんとお伝えしておきたい・・・。
ジュリー自身には「しまった」との思いはあったでしょうが、「何事もなかったかのように・・・」という言葉に続いてイントロから歌い直したこの曲は、僕が2012年からさかんに書いている「憑き物落とし」のような効果があって、セットリスト佳境に向かうバンドメンバーやお客さんの笑顔を取り戻す、「アクシデント」と言うよりむしろ爽快な役割をはからずも果たしたのだ、ということを。

今度は無事に歌い終えたジュリー。会場の空気が「陽」へと変わったのを感じ取ったのでしょう・・・おどけるように土下座のシーンとなったのです。

以上、「報道されていないこと」でした。
いやいやこの曲の項は長くなってしまいました。
すっかりお客さんの雰囲気も和んだところで、これもまた個人的に大好きな曲へとセットリストは進みます。

15曲目「
櫻舗道

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人っ子いない ふるさと
三寒四温 春は来たのか
櫻舗道 防護服着て
櫻舗道 くぐった花吹雪


下山さんの最高傑作、と思っています。
「Deep Love」同様、美しくも切ない曲。でも、直前の出来事の効果か会場に「構えた」感じがなくなっていて、ただただジュリーの歌に酔いました。

前曲に続き、この曲にも「空白」がありました。1番の最後、まるまる8小節。
これはジュリーが「歌詞を忘れた」のではなく「サビのリフレインをうっかりした」のかなぁと思いますが、計算してそうしたようにも感じられました。
ギター・ソロの前に美しいピアノ伴奏が残され、新たなアレンジのようにも受け取ることができたのです。

泰輝さんのピアノは、リリース時に考察記事で書いた「桜アレンジ」をイントロ以外にも繰り出すという、気魄漲る素晴らしい熱演。
ジュリーが「櫻舗道~♪」と歌うと、ピアノのフレーズで桜がヒラヒラと追いかけるように舞うんですよ。

そして美しいギター・ソロ・・・この曲では柴山さんはシンラインだったでしょうか。今回の柴山さんは、「下山さんが弾く」イメージが強いソロを擁する曲でシンラインを使っていたなぁ、と記憶しています。

2番「非常線のふるさと」と歌われる箇所、実際には再現されていないのに、CDに入っているコーラスのような効果音のような薄い音が聴こえてくるような気がしました。ググッ、と引き込まれる感覚です。
「Pray~神の与え賜いし」での仕切り直しの影響など微塵も感じさせない、ジュリー無心無垢の歌声。
なんという名曲でしょうか・・・!

この曲を聴くといつも思い出すのは、バリケートに遮られた富岡町の桜並木の写真です。
一方、福島県のいわき市にあるフリー・スペース『いわき泉玉露交流サロン』(富岡町からいわき市に避難されている方々への支援の場として利用されています)には、バリケードなど無かった頃の富岡町の桜並木の写真が飾られています。
いつも応援している将棋棋士・瀬川晶司五段のブログ記事でこのことを知り、瀬川五段がupしてくださったその写真を見た瞬間、僕の胸に「櫻舗道」を歌うジュリーの声が流れたのは言うまでもありません。

ジュリーの歌に、いわき市の交流サロンに、「桜のふるさとを離れて暮らす人々の、断ち切れぬ故郷への思い」は確かに形を為し、僕らにも見えています。

16曲目「
カガヤケイノチ

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笑顔で ララララララ カガヤケイノチ
寡黙に ララララララ カガヤケイノチ


今、この項を書いているのは1月24日。
特別な日付ですね。そして僕にとっては、参加できないことが本当に残念でならない、『祈り歌LOVESONG特集』ファイナル・東京国際フォーラム公演の前日、という意味合いが今年は大きいのです。

特別なセットリストですから僕もいつも以上に気合が入って、じっくりと、それぞれの楽曲ごとの文量も多くなって・・・ツアー千穐楽までにレポートを書き終えることができませんでした。
でも、なんとかしてこの16曲目「カガヤケイノチ」の項まではファイナルまでに書き終えていたい、と思って今日は頑張って筆を進めています。

僕は明日、気持ちだけはフォーラムに飛んでいます。素晴らしいステージとなることを祈り、念を送ります。
これは型通りの言葉ではなく、心からの気持ちです。

「カガヤケイノチ」エンディングの大合唱。
明日ご参加のみなさま、どうか留守番組の僕の分まで・・・しかと託しましたよ!


と、このことを書いておきたかったのでした。

大阪公演ではジュリーがエンディングで「ご一緒に!」と言ってくれたのだそうですね。
初日のNHKホールではそれは無く、「一緒に歌って」との思いを載せて指揮のアクションを繰り出していたジュリー。僕は大声で歌っていたけれど、会場全体に歌声が満ちる、という感覚は無かったかな。
そもそも、男声のメロディーを女声で歌うのがなかなか難しい、という面はあります。例えばポール・マッカートニーのLIVEでは「ヘイ・ジュード」のサビをを男性、女性に分けて「歌って!」タイムがありますが、女性の箇所で会場の声が小さくなるのは決して女性が歌っていないからではなくて、キーの問題があるのです。
それを承知で・・・女性の客さんが圧倒的に多いであろうフォーラム千穐楽での「カガヤケイノチ」大合唱実現を切に望んでいます。
「歌ってきました!」というみなさまのコメント、お待ちしていますよ~。

柴山さんのソロは、CDと言うより下山さんがステージで弾いていたフレーズのカバー、という感じでした。それでもフレーズやチョーキングの箇所が違ったりして大いに楽しみました。
依知川さんのベースも素晴らしかったですし、最後はGRACE姉さんの力強くも優しいマーチング・ロール!
2012年には、「3月8日の雲」は”鬼姫ロール”で「カガヤケイノチ」は”くの一ロール”なんて話で盛り上がったりしてたなぁ・・・。

確かに、時は経ちました。
でも僕らは決して、あの時ささくれだっていた気持ちを「カガヤケイノチ」という曲が癒してくれたことを、ずっと忘れてはいません。

17曲目「
三年想いよ

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ありがとう 温もり
やさしさ 好きだよ
あの日 すべて夢ならば 三年想いよ


ジュリーのLIVEに参加し続けていると、それまで特に強い思い入れを持たずにいた曲が、生の歌、演奏を体感し一気に「大切な1曲」へと劇的に変わることがままあります。みなさまもきっとそうでしょう。

その最たる例・・・僕にとっては2014年の全国ツアー『三年想いよ』でのツアー・タイトルチューン、この「三年想いよ」がそんな1曲です。
しかも、ツアー参加会場を重ねるごとにどんどん愛おしくなっていく・・・圧倒的な感覚。これは鉄人バンドの演奏の素晴らしさもさることながら、何と言っても後奏、柴山さんのギター・ソロをバックに暗がりの中を「必死」で駆ける、というジュリーのあのパフォーマンスに魅せられたのでした。
CD音源だけでは理解し得ないメッセージ。「LIVEこそがジュリー」を証明するパフォーマンス。

今回、メンバーが変わっての再演。依知川さんはかつて下山さんが弾いていたパワー・コードのパートをそのままルートのエイトビートに置き換えてきました。
ジュリーが「わが嫁」と歌い出す最初のAメロでは、イントロの柴山さんのピッキング・アルペジオと泰輝さんのエレクトリック・ピアノがサ~ッと退いて、GRACE姉さんのドラムスと共に依知川さんのエイトビート、この2つの音だけが残されます。
ベースとドラムスとヴォーカル・・・この状態でイヤモニ無し、モニター返し無しは本当に凄いぞ、ジュリー!
そして、ジュリーはあの忘れ難い後奏のパフォーマンスを今年も繰り出してくれました。
照明の演出は変わりました。2014年のツアーでは、暗闇の中をジュリーの駆けている姿だけが浮かび上がっていましたが、今回は少なくとも柴山さんの姿は最後まで見えていました(席によるのかもしれませんが)。

柴山さんのソロ、サスティンの効いたスロー・ハンドの素晴らしさも再体感。
速弾きするわけでもない、前にせり出してきてアピールをすることもない、ゆったりとした歌のメロディーをそのまま単音でなぞるだけのギター・ソロがこれほどの説得力を持つとは、驚くべきことです。

ギターと言えば・・・余談ですが、絶対音感の無い僕は日頃ギターをとりだしてチューニングする際、以前はチューニングメーターに頼るか、キーボードを使って音を合わせていました。でも今は”「三年想いよ」チューニング”という技を編み出しています。
この曲の音源を流しながら、イントロから「わが嫁」までの箇所に合わせてまずはしっかり4弦(「D」=レ)の音を確定させます。
それを起点に「娘よ」で5弦(「A」=ラ)、「父母」で3弦(「G」=ソ)、「ごめん」で2弦(「B」=シ)、「うつむいてる」で1弦と6弦(「E」=ミ)と合わせてゆきます。
転調部からは「B♭」→「C」→「D」とコード弾きをして全体の「鳴り」を確かめ、再びAメロに戻ってから先と同じ要領で各弦の微調整。そして仕上げに間奏の単音を弾いて、高いフレット位置でオクターブのズレが無いかどうかを確認。
間奏が終わってからは、じゃかじゃかと気持ちよくジュリーと一緒に弾き語る、という按配です。

鉄人バンド期の作品はギター・チューニングも美しくて、ギター各弦の開放音を合わせられるコード「E」「Bm」「G」「D」「A」「E」すべてが曲中に登場する「三年想いよ」はその点でとても貴重です。
ギタリストのジュリーファンのみなさま、是非”「三年想いよ」チューニング”をお試しあれ!

いえね、何かって言うと、「三年想いよ」ってとても「辛い」詞なんですよね。
「何故自分のような者が残り、あなたがいなくなってしまったのか」という、葛藤と言うにはあまりに切実なテーマをジュリーは歌います。
「木偶の坊」のフレーズに込められた無念、悔恨、懺悔。でもそれを歌うジュリーの声の優しさに気づかされた瞬間から、GRACE姉さんのメロディーとバンドの演奏の聴こえ方は変わります。

悲しい歌を、優しく伝える。
ジュリーの詞の一番最後の一節で、そのすべてが氷解するような「三年想いよ」。
僕はチューニングの度にこの曲を繰り返し聴いていくうち、「大好き」と同時にすごく「身近」な1曲になっていきました。ジュリーの曲はどれもそうですが、聴き手の心持ちでイメージが変わることがありますね。
「三年想いよ」はその意味で、底知れない魅力を永く放ち続ける名曲ではないでしょうか。

18曲目「
恨まないよ

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もっともっと 寄り添いたいのに
待ってください
きっときっと 立ち直れるはずさ
恨まないよ 海よ


2012年からの全20曲が歌われると分かり、「どんな繋がりで、どんな配置で歌うのか」と真っ先に考えた曲は「un democratic love」とこの「恨まないよ」でした。
「un democratic love」の方は「どんな感じになるのかな」との思いでしたが、「恨まないよ」については「一体どうするんだろう?」というのが素直な気持ち。それほどこの曲の「痛烈さ」は突出しています。

僕は2012年のびわ湖ホール公演で体感した「恨まないよ」の記憶がいつまで経っても薄れることがありません。本当に凄まじいヴォーカルでした。
「きっと、きっと」と歌うジュリーの口から、鬼気はらんだ唾が飛沫のように飛び散ってホールの床に落ちていったシーンをいつも思い出します。

ただ、胸を締めつけられる息苦しさも確かに感じていたように思います。
「生で聴く時に相当な覚悟のいる曲」というのがそれ以来の僕のこの曲のイメージです。
それが今回、切なさ、辛さはもちろん伝わってくる一方で、驚くほど気負いなく聴けたのは・・・やっぱり「Pray~神の与え賜いし」のインターミッションで、僕の中にあった「憑き物」が落ちていたんじゃないかなぁ。

前曲「三年想いよ」が終わった時、「次だ!」と思いました。僕は今回、まず「20曲歌う」と分かっているわけですからいつもと違い曲数をカウントすることはせずに聴いていました(それが、曲順を思い出すのに苦労する要因となってしまったのですが)。
でももうここまで来たら「まだ歌われていない残り3曲」は頭に浮かんでいます。アンコールがどうなるかは分からないけど、少なくとも本割20曲、「恨まないよ」が最後の1、2曲というのは考え辛い、しっくりこない・・・「三年想いよ」後奏のギター・ソロからあの日の記憶を遡って、という繋がりを考えても、「恨まないよ」を歌うならここしかない、と思ったのです。

ジュリーのヴォーカルが素晴らしかったことは言うまでもありません。
1番で歌詞に詰まる箇所があり、ジュリーは咄嗟に「天国へいってしまったよ」と即興の作詞で切り抜けましたが、それがまた凄まじい迫力でした。

そして演奏。当時とはメンバーと楽器編成が変わっているにも関わらず、この曲がオリジナルCD音源の完コピであったのは特筆すべきこと。つまり、CDで演奏されている泰輝さんの擬似ベースを依知川さんが見事に再現したわけですね。
この曲に新たにベースを加えて演奏する、となれば普通なら「重み」を強調する意味でもフレットの低い位置で重厚なルート音を入れ、コード進行をハッキリ表現したくなるところ。
でも依知川さんはそれをせず、高い位置でオリジナルのシンセのフレーズをそのまま弾きました。とは言え本物のベースですから音自体はCDより太い・・・まるでサビのジュリーのヴォーカルに呼応して波がうねっているような演奏でした。
驚嘆したのが柴山さんのギターです。個人的は、この日のすべての演奏で最も素晴らしかったのがこの曲での柴山さんのギターだったと思っています。
下山さんが弾くと「LOSER」を想起させるディレイ・アルペジオ。柴山さんの方は1音1音の粒を揃えてくる繊細な奏法となります。下山さんとも違う、U2のような音とも違う切れ味。それでいて下山さんの不在を完璧にカバーしているのです。
それだけに、柴山さんの背負っているものの大きさをも感じさせた名演でした。

そして・・・「3月8日の雲」と同じくこの曲も「唐突に音が途切れる」エンディングがアレンジ最大の肝。
最後の1音へと向かうGRACE姉さんのドラムのクレシェンドは、やはり生のLIVEだと迫力が違いますね。

19曲目「
限 界 臨 界

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これ以上善人を 未熟でも若い者を
先行きに迷う者を
馬鹿にしない 愛と平和下さい
限界 臨界 生きる希望下さい 限界臨界


残るはあと2曲・・・これはどちらが来るかまったく予想がつきません。
始ったイントロは「限 界 臨 界」。GRACE姉さんの作曲作品が3曲連続で歌われることとなりました。

政治家や経済人への警鐘、のテーマとしてはジュリーが最も強くその思いを託した曲・・・だと、僕はリリース時からずっと思っていました。
ジュリーが誰を非難し、誰を応援しているのか。歌詞中で使われている「未熟」というフレーズは決して悪い意味ではないのだと考え、折りしも声を上げ始めた若者達の登場を頼もしく思っていた僕は、この曲を勝手に彼等へのエールと関連づけて聴くことがありました。
また2015年の全国ツアーでは、最後の「限界臨界」の物凄いシャウトを何度も体感し、その度にジュリーを反体制の旗手のように捉えてしまう「落とし穴」に嵌る(ジュリーという歌手はそんな動機だけでは語れません)のを自重したりしていました。

この初日、最後の「限界臨界」を2015年のような絶叫ではなく、CD音源に近い感じで歌ったジュリー。
何か、原点に引き戻されるように受け取れました。

ここで是非書いておきたいことがあります。
先に最初のMCの項で書いた、一般ピープルのお姉さま方の東京国際フォーラム公演のご感想です。
今のところ4人のお姉さま方のうちお2人だけの感想を伺っているのですが、お2人とも「ひとつのお芝居を観ているようで、とても良かった」と。
心配していたんです。このセットリストですから、僕は事前に考えていた「予習用CD」も作成せず、お姉さま方は何の先入観も予備知識もなくご覧になられることに・・・「今の沢田研二の生き様を観たい」と仰っていた方々が、今回のジュリーのステージ、歌を実際どう思われたのか。知らない曲ばかりで退屈してしまわれたのでは?
それに、ホールへの入場に1時間近くも待った、と聞いていましたからね。いざLIVEが始まっても集中できなかったのではないかなぁと。

すべて、杞憂でした。
うちお1人は「知ってる曲を聴きたかった気持ちもある」とのことでしたが、もう1人のお姉さまのご感想が凄くてね・・・。還暦を過ぎていらっしゃる、人生の大先輩でもあるそのお姉さま曰く
「あの中にヒット曲が混ざってたら変よ」
と。
「社会性、政治性の強い歌を歌っているけど、自分はこういう考えだ!とそれを押しつけているんじゃなくて・・・彼は吟遊詩人なんじゃないの?」

これには驚きました。
これ、僕も常々同じことを考えてはいます。つまり、各国を旅する詩人がその地その場で心にとめた題材を詠うように、「人生の旅」・・・時代を旅するジュリーがその時その場で「今こんなことが起きている。これからどうなるのだろう」と自身の思いを歌にする・・・凡人にはとても真似できませんが、今のジュリーは人間として一番自然で、一番ピュアなやり方で「歌人生」を歩んでいるということ。
でも、初めてのジュリーLIVEで、最近のジュリーの曲もまったく初めて聴く人がそんな感想を持てるというのは、どれほどの感性でしょうか。
いや、そのお姉さまの感性もさることながら、今回のジュリーのステージにそれを伝える力が確かにあったという・・・それが証明されたのではないでしょうか。

そしてお2人とも揃って、「是非、次のツアーもチケットのお世話になりたい」とのこと。
いやぁ本当に嬉しい!
「今の沢田研二の生き様」を知るにふさわしい特別なセットリストを体感された上で、夏からの「シングル・オンパレード」なステージを観てしまったら・・・「本格ジュリー堕ち」は間違いありません。どうぞご覚悟を(笑)。

そんなお話を伺ったのち、改めて「限 界 臨 界」を聴き返してみたら、これまでとは全然聴こえ方が違ってビックリ。
政治性、社会性の高さは、物事の考え方のアピールなどではなく、ジュリーにとっての「自由」なのだ、と思いました。NHKホールの時点では、僕はとてもそこまで到達できていませんでした。
いつかもう一度、この曲を生で聴きたいです。

20曲目「こっちの水苦いぞ

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誰のための 等閑な再稼働
桜島と川内断層
安全言わない 原子力委員長
福島の廃炉想う


「誇大でない現実を歌う」吟遊詩人・ジュリーが、一連の20曲から大トリに選んだのは、下山さん作曲のロック・ナンバー。
セットリスト中唯一”おいっちに体操”が繰り出される曲とあって、お客さんの緊張は完全に解け、会場がハジけまくった本割ラスト。僕はと言うと、もうニッコニコ・・・とにかくアレンジの変わりっぷりが嬉しくてね~。
僕の好みドンピシャのリフ・ロックを堪能しました。

まずイントロ、柴山さんのリフが始まった段階では
「ありゃ、ずいぶんシンプルにしてきたな」
と戸惑ったんです。
リフ3音目の16分音符で跳ねる箇所が、なだらかな8分音符のフレーズによって割愛されていて・・・たったそれだけで、相当にイメージが違いました

「何故こんな平坦に?」と首を捻った刹那、カッ飛んできたのが依知川さんのベース。謎は解けました。
新たに加わったベースラインは

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こ、これはまるで・・・ビートルズの「タックスマン」じゃあないですか!
後世、16ビートの王道として定着するフレージング。例えば、『G.S. I LOVE YOU』収録の「HEY!MR. MONKEY」にもこの曲のリフ・オマージュがあります。しかし・・・まさか「こっちの水苦いぞ」がこうなるとは!

今回歌われた20曲のオリジナル・アレンジを考えると、「ギター1本体制」での再現難易度が高いのは「一握り人の罪」と「こっちの水苦いぞ」だと思うんですよ。
その2曲で炸裂した依知川さんの新たな解釈によるベース・アレンジ。そして「こっちの水苦いぞ」では、柴山さんがベースラインの16ビートとぶつからないようにギター・リフを変化させてきたわけです。

斬新にして緻密、緻密にして大胆。
さらに言えば、「60年代の尖りまくったロック」と「70年代の過激なロック」の融合を狙ったと思われる下山さんのコンセプトが完璧に生かされているという。
だって、ベースが「タックスマン」ならば、ギター・リフの変化形の方はだんだんボウイの「世界を売った男」みたいに聴こえてきましたからね。これは、曲が進むに連れて柴山さんのチョーキング・ビフラートの入魂度が増していったからこそそう感じたのだと思います。

躍動するジュリーを挟んで、柴山さん、依知川さん2人もステージ前方に陣取って横並びとなり盛り上がる中、いよいよエンディングが近づいてきました。
この曲のアレンジは何と言っても最後のトリッキーなアコギ・アルペジオによるコーダ部が大きな特徴。2015年のツアーでは、それまでずっとリフを弾き続けていた下山さんがラスト1小節のワンフレーズのみを柴山さんの演奏に託し(鉄人バンドでしかあり得ない神技!)、およそ2秒ほどの間にアコギ・スタンドへと移行するという驚愕のシーンがありました。
今回どうするのか・・・僕には既に分かっていました。

この日ここまで、柴山さんがステージ前方にせり出してきて間奏ソロを弾く曲では、その度にローディーさんが入場してエフェクターのセッティングを変え、そのぶん柴山さんの「いつもより長くせり出しております」状態が楽しめたわけですが、それはすべてこの「こっちの水苦いぞ」コーダ部へのお膳立てでした。
と言うか、この曲の最後をこうする!と決めたことで、他の曲にもエフェクト操作のアイデアが波及し踏襲されていたのです。

クライマックスで予想通りローディーさんが入場しました。リフの最後の1音が鳴った直後に素早くエフェクター設定を変更します。
柴山さんはエレキを持ち変えることなく、アコギの音色のエフェクトでコーダのアルペジオを弾きました。いかにも下山さんらしいコード・・・add9のフォームでフレット移動してゆく華麗なコーダが見事甦ります。
ローディーさんGJ!
この場合のエフェクターの切り替えは、コンマ数秒のタイミングでしか許されません。少しでもズレたら大惨事となるところですからね。
そのことも含め、貴重な今回のセットリスト、本割ラストにふさわしい曲であり、名演でした。

~MC~

20170115


↑ 1月15日付『東京新聞』文化・娯楽面より

気合入れて大長文書いてるのはまぁいつものこととしても、ツアーも終わってもまだ初日のレポートが完成していない、というのは今回が初めてのこと。
オーラスに参加できないことが本当に残念で、そのぶん引っ張っていたのもあるんですけど・・・歌や演奏については今でも強烈に頭に残っていてまだまだ余韻醒めやらず、の一方でMCの記憶はというとこれがサッパリ。
名古屋、フェス、フォーラムのMCを各地で拝読しているうちに「初日」でどこまでジュリーが話してくれたのかゴッチャになっている状況ですが、一応いくつか書いておきましょう。

大きな拍手に迎えられ、衣裳を替えて登場したジュリーは、開口一番「疲れた・・・」と。もちろん、この20曲を歌う「大胆な試み」についての言葉です。
本音の吐露だったと思います。
その後フェスあたりは「いい汗かいた」に変わってきたみたいですけど、初日はジュリー自身、お客さんの緊張もヒシヒシと感じていたでしょうし、何よりここまで魂入れて作ってきた5年間の20曲を一気に歌うというのはね・・・僕らには想像を絶するものがあります。

MCの主な話題はやはり50周年イヤー、今後の活動予定について。
まずは、「音楽劇はこれでラスト」という『大悪名』。初日の時点では
「まだ台本もできていないんですが・・・マキノさんとは色々話はしています」
とのことだったんですが、その後フェスの日には衝撃の「マルガリータ」宣言があり、先輩方はビビリまくっています(笑)。朝吉親分、出家してるんですってね。

そうそう、さすがに今回の『大悪名』の澤會さん枠チケットは未だかつてないほどの大激戦となっている様子。
特に千穐楽は・・・そりゃ、みんな行きたいものね。
僕は「おそらくS席とB席は予約が殺到するであろう、ならばここはAだ!」と考えて千穐楽のA席を申し込んだのですが、それでも見事落選しました!
とんでもない競争率だと思いますよ。
僕はおとなしく第2希望の振替日に参加し、末席からジュリーの音楽劇・ファイナルイヤーを楽にご参加のみなさまよりひと足早く、見届けようと思っています。

そして、夏からの全国ツアーのお話。
50周年のメモリアル・ツアーということで、各地各ホールの反応も凄いらしくて
あの!沢田研二が50周年ですか・・・」
と。
「そりゃあ、腐っても鯛でっせ!」とジュリーはご満悦の表情。普段呼ばれていない会場、このところご無沙汰となっている会場もあるのでしょうね。
出水(鹿児島県)あたりどうなのかな?今からツアー・インフォの到着が楽しみです。
で、その全国ツアーの内容について
シングルばかりやる
50という数字にはこだわりたい!
と言った瞬間の拍手は凄かったです。
ところが続いて「ワンコーラスだけ歌って50曲、というやり方を考えている」との言葉には一転(今考えると本当に失礼だったなぁ、とは思うのですが)僕も含めて会場から「え~っ?」という声が。
すかさずジュリーは
「皆、え~っ?とか言うけど、考えに考えた結果や」

還暦の時には『ジュリー祭り』で5時間半かけて80曲歌ったジュリーですが、「あの時にはそれだけの体力、気力があったんや。今はもう無い」
正直な告白でしょう。
それでもこのメモリアル・イヤーに、シングル50曲を歌いたいという気持ちがあって、楽しみにしてくれているお客さんに応えたい、というジュリーのその志・・・僕らはファンは幸せだと思います。

50曲と言ってもジュリーの全シングル中、半分にも満たない曲数である、というのがまた凄い話ではありますが、名古屋でしたかフェスでしたか
「沢田研二が選ぶ50曲、どの曲を選んだかを楽しみにしてください」
と言ってくれたそうですね。
メドレーなどにはしないで、1曲ずつ「サンキュ~!ありがと~ね!」を言う、と。
本当に、本当に楽しみです。

まだ先の話になりますけど、僕は全国ツアーの前にも恒例のセットリスト予想記事をいくつか書きます。
いつもは「全力で当てに行ってるけど当たらない」僕の予想・・・でも今回は、まだ記事未執筆のお題から「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」や「愛まで待てない」あたりを書けば楽々当たってしまうことでしょう。
でもね、僕はそんなことはしませんよ~(笑)。
「絶対やりそうな曲」は敢えて外し、「全力で外しに行ってるのに当たっちゃった!」的なノリを目指して予想曲の献立を考えます。
さぁジュリー、勝負DA~!

「この後歌いますが・・・」と、アンコールに歌った新曲2曲についてもこのMCで紹介してくれました。
作曲が久々の白井良明さんであること。
「イソノミア」は「無支配」という意味であること。
今年も3月11日に発売されること。

そう、2016年お正月LIVE『祈り歌LOVESONG特集』は、2012年からのマキシ・シングル全5枚20曲に加えて、レコーディングしたてホヤホヤの最新シングル2曲をリリースに先がけて披露するという、これ以上は無いほどに「攻め」のセットリストとなりました。
さすがはジュリー!こんな凄いことをやってのける歌手を僕は他に知りません。

MCの最後に、音楽劇に始まる今年からのチケット代「値上げ」についてひたすら恐縮し頭を下げてくれたジュリー。「ご祝儀、ご祝儀!」と笑いを誘ったところで
メンバー紹介からの「オマケです~!」

~アンコール~

(註:新曲については、リリース後にじっくり聴きこんでから考察記事を書きます。ここでは「初めて、しかも生のLIVEで聴いた」印象を書き留めておくことにします)

21曲目「揺るぎない優しさ」

リリース前にLIVEで新曲を体感する・・・先輩方は何度も経験されていますね。例えば2004年お正月コンサート『爛漫甲申演唱会』の「届かない花々」だったり。
僕はこのパターン、2度目です。初体感は2009年全国ツアー『Pleasure Pleasure』初日、渋谷公演。ジュリー曰く「満タンシングル」の新譜『Pleasure Pleasure』収録の6曲がそれでした。

ただこの時は新譜の発売日とツアー初日が重なっていて、公演前に長蛇の列に並んでCDを購入(会場先行販売の『ジュリー祭り』DVDと同時購入。懐かしい!)していたので、終演後すぐ復習することができました。
今回のように一度生で聴いてからしばらくの間、音源リリースを楽しみに待つというのはまったくの初体験。これはこれでなかなか良いものですね。
でもここ数年のジュリーの新譜がそうであるように、やっぱり歌詞をしっかり読んでから色々なことを考えたいと思っています。
ここではおもに「音」から受けた印象を。

まずはこの「揺るぎない優しさ」。
イントロはじめ要所に「キメ」のリズム・フレーズがあります。「じゃ、じゃっ、じゃ~ん♪」という、ポップなエイト・ビート特有のもの。ジュリーはそれに合わせて「狙い撃ち!」なアクションを繰り出してリズムを強調。
はからずも、『大悪名』で共演される石野陽子さんのお姉さん、真子さんの大ヒット曲「ジュリーがライバル」の「バン、ババン、バ~ン♪」のような?
これはなかなか楽しそうな曲だ、との印象を持ちましたがさぁCDで聴くとどんな感じでしょうか。

22曲目「ISONOMIA」

澤會さんのHPでの告知を見ると、こちらがいわゆる「A面」扱いということになるのかな。
これはとにかくアレンジに仰天しました。何と、最初から最後までラウドな爆音エレキ・ギター1本のみの伴奏で歌い通すというね。
当然、白井さんがアレンジも担当されているでしょう。僕としては「やってくれた!」という感じで大歓迎。ジュリー・シングルとして歴史的な1曲となる気がします。

メロディー自体はクイーンの「ファット・ボトムド・ガールズ」に似ているように感じましたが、肝は何と言っても斬新なアレンジ・アイデア。アコギ1本のバラード弾き語りではなく、エレキ1本の豪快なロックですからね。
これはニール・ヤングが得意とする手法ですけど、ゴリゴリの爆音ギター1本で社会性の高い歌詞を吐き散らす(しかも優雅に)という点で、ジュリーの新曲は今回ニールをも凌いだかもしれません。

ちなみに、老境となっても新作への意欲衰えず、次々に新たな問題作(良い意味ですよ!)を世に投げかけ続けている歌手として僕が「世界三大カッコイイお爺ちゃん」と大いにリスペクトしているのが、ボブ・ディラン、ニール・ヤング、そして日本の沢田研二。
大御所の「ロック」とは、若作りして昔の名声をなぞることではありません。ましてや形式美などではない・・・堂々と「老人」を自覚しありのままの姿を晒しつつも、常に尖り進化し、新しい作品に挑む志こそが「ロックを生き抜く」ことだと僕は思っています。
その上で過去のヒット曲を引き出しとして持つ、というのは大アリです。
しかしジュリーは今回のセットリストでそこを削ってきました。それはきっと、夏からの全国ツアーでその「引き出し」を全開にしようとしているから。つまり、1年2ツアーかけての二部構成ステージという。
正しく「ロック王道を行く」ど真ん中のジュリーなのです。

「ISONOMIA」に話を戻すと、伴奏を柴山さんのエレキ1本に託して他メンバーはハンドクラップで参加。
このハンドクラップはおそらく音源にも組み込まれているでしょう。1ヴァース中の2小節に「ん、ぱん!ん、ぱぱん!」とリズムを変える箇所があって、初日のお客さんは最初戸惑ってなかなかついていけなかったのですが、依知川さんが大きなゼスチャーで「はい、次だよ!」と誘導してくれて、曲の進行と共にタイミングを掴んでいきました。
ファイナルのフォーラム公演では、お客さんの手拍子も綺麗に揃っていたのではないでしょうか。

それにしても気になるのが、この曲で柴山さんが使用したギター・モデルです。
僕はグレッチかなと思いましたが巷ではエピフォン説もあるようで、まだハッキリ分かっていません。
いずれ再確認できる日が来るでしょう。ジュリー、夏からの全国ツアーでまた歌ってくれるかな?

☆    ☆    ☆

初日のジュリーは最後に「ジジィでした~!」とにこやかにステージを後にしましたが、フォーラムでは一度「ジュリーでした!」と言ってから改めて「ジジィでした」に言い直したと聞いています。
デビュー50周年のメモリアル・イベントに向けて、ジュリーは確実にスイッチが入っていますね。

今年も、「恒例・1週間に1曲ずつYOKO君にセットリストを伝えて、関連スコア研究」シリーズが始まっておりまして、現在3曲目「3月8日の雲」まで終えています。
まぁ毎年夏の初めまでこれが続くんですけど、「同じようにLIVEを追体験して貰いたい」思いから、2曲目後のMC・・・2012年からの全5枚20曲を歌う、というジュリーのセットリスト宣言は既に伝えています。
YOKO君曰く「おとそ気分を吹っ飛ばすセットリスト」と驚愕していました。
確かに「おとそ気分」は吹き飛びました。でも、「酔える」という点では史上稀に見る唯一無二、空前絶後のステージでしたよね。「ジュリーは新年から強いお酒を出してきた」と仰った先輩も。

アンコール前に「疲れた」と言ったジュリーは、すべてのセットリストが終わり最後の挨拶をする時には一転して、この22曲を最後まで歌いきる自らの気力、体力に、自分で惚れ直していたように僕には見えました。
『祈り歌LOVESONG特集』NHKホール初日。ジュリーの長い長い歌人生の中でまたひとつ、ふっと突き抜けた感覚があったんじゃないかな。

最後に・・・フェス、そしてフォーラムでお客さんを歓喜させたというジュリーの「頑張れ」エールについて書いておきたいと思います。

色々な意味があるでしょう。
ファンの受け取り方も様々でしょう。

僕はその場にいなかったわけですから、その嬉しい出来事を俯瞰することができます。
一番に思うのは、「こんなにも、ジュリーのエールを求め、励まされる方々がいらっしゃったのだ!」と。
実際会場にいても、いなくてもね。

僕は新規ファンです。『ジュリー祭り』からこの8年、本当に「時々」でしたが、タイガース時代からジュリーを応援してこられた長いファンの先輩方と、ステージ上のジュリーの気脈が通じる瞬間、それを「いいなぁ」と羨ましく思える瞬間があったものです。
今回の「エール」は、その最たるものだったのでは?

たとえ「中抜け」はあったとしても、デビュー50周年の最初の1年目からジュリーと共に歩んでこられた先輩方をして歓喜に暮れるほどのパワーを、自然に、普通に纏い持ち続けていたジュリー。それが「今回このセットリスト」のステージで起こった、というのが歴史の重みでしょう。「媚びない」の極致でしょう。
しかもそうした先輩方は、自分がジュリー言うところの「みなさん」の中の1人である、ということを特に意識することなく、当たり前に会得していらっしゃる。

そう考えると、やはり僕はまだまだジュリーファンとしてはヒヨッコです。
でも、ジュリーの「頑張れ」を受けて「よ~し!」と奮い立ち、一丁「頑張れ」側に立つか~!というエネルギーを持てるほどには辛うじて成長しました。
初日のレポートはじっくり、ゆっくりの執筆でまさかの「ツアー終了から1週間」での完成と相成りましたが、本館での「いつもの」楽曲考察記事・・・怒涛の更新ペースで巻き返しをはかります。

困難に立ち向かい懸命に頑張っている人、大勢いらっしゃいます。個人的に応援したい先輩もいます。
「その思い、いかばかりか」と想像することを怠らず、自分にできる限りのことをやる・・・そう決心させてくれた今回の『祈り歌LOVESONG特集』でもありました。
僕はこれから夏の全国ツアーまでの間、「今、頑張っている人」のために更新を頑張ろうと思います。

それでは、こちらside-Bはしばしのお別れです。また7月にここでお会いしましょう。
ジュリー、最高のLOVESONGをありがと~ね!

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2017年1月 5日 (木)

『祈り歌LOVESONG特集』!

あけましておめでとうございます。
今年もこのネタバレ専門別館side-Bにて、ジュリーのお正月コンサートのレポートを書いてまいります。
よろしくお願い申し上げます。


デビュー50周年のジュリーがいよいよ始動しますね。
「この時のためにシングル曲をとっておいた」とジュリーが昨年語っていたのは夏からの全国ツアーのこととして、さてお正月の3大都市公演、ジュリーはどんなセットリストで新年のスタートを切るのでしょうか。

ツアー・タイトルに織り込まれた『祈り歌LOVESONG』なるフレーズをここ数年のジュリーのステージ・コンセプトと照らし合わせると、まず「un democratic love」であったり「PEARL HARBOR LOVE STORY」の「LOVE」を連想させますが、あくまでそれは僕個人のイメージ。
今回”全然当たらないセットリスト予想”シリーズで書いたのは「あなただけでいい」「HELLO」「麗しき裏切り」「SPLEEN~六月の風にゆれて」の4曲でした。
う~ん、我ながらまったく当たる気がしない・・・(汗)。

せっかくですので、先述の「un democratic love」「PEARL HARBOR LOVE STORY」以外に3曲ほど、個人的な予想(期待)曲をここで挙げておきます。

まずは、アルバム『第六感』から、「風にそよいで」。
何と言ってもこの曲には、今年新聞などで目にする機会が増えるであろう(と、僕は思っています)「オリーブの木」というキーワードがあります。
2009年に考察記事を書いた際、僕はこのジュリーの作詞について「語感重視の遊び心が満載」みたいな解釈しか持てなかったのですが(いや、それはそれで合ってはいるのでしょうけど)、今は「風にそよいで」のジュリーの詞には、社会性の高いメッセージが託されていたのかなぁと思います。「右」「左」のフレーズあたりも、深読みしようと思えばできますしね。

次に、アルバム『Beautiful World』から「坂道」。
これはね・・・僕はこの年始に大阪で『真田丸』ゆかりの地巡りで大坂城から天王寺周辺までずっと下って歩いていて、「大阪ってこんなに坂道が多かったのか」と初めて知ったんですね。土地の高低の関係で「あべのハルカス」が現時点で日本一高い建物、という割にはさほど高く見えなかったりして。
まぁそんなことを、時間があれば年始1発目の考察記事としてジュリーの「坂道」のお題にあやかって「旅日記」を書こうと思っていたのですが、後回しになってしまいました。もし今回ジュリーが歌ってくれたら、そのまま「セットリストを振り返る」シリーズとして採り上げます。

最後はアルバム『俺たち最高』から「weeping swallow」。
ここ数年ツアーの度に「今度こそ歌って欲しい!」と期待し続けているメッセージ・ソングです。
今年は酉年ですから実現の可能性は高い・・・かな?

ステージの構成についても、前半が「じっくり聴かせるコーナー」、長めのアンコールがスタンディングの「怒涛のロック・コーナー」と個人的には予想していますが・・・さて、どうなるでしょうか。本当に楽しみです。


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それでは、初日NHKホール公演にご参加のみなさま、会場でお会いしましょう。
お留守番組のみなさまは気が気ではないでしょうが、ネタバレまでしばしお待ちあれ!

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