沢田研二 「屋久島 MAY」
from『OLD GUYS ROCK』、2018
1. グショグショ ワッショイ
2. ロイヤル・ピーチ
3. 核なき世界
4. 屋久島 MAY
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こんばんは、熊本城主のDYNAMITEです。
先週あたりからすっかり暖かくなり、僕は季節の変わり目毎度お馴染みの風邪にやられていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
ということで、今年1月14日のジュリー50周年記念LIVE熊本公演に遠征した際、現地・熊本城にて申し込んだ『復興城主プロジェクト』。とりあえず仮の手形だけ発行して貰い、「後日郵送」の正式な城主証を待っている状況でしたが・・・先日遂に届きました!
いや~、「額でも買おうかな」と思うくらい立派な城主証にテンションが上がりました。
このプロジェクトでは、1万円以上の寄付で誰でも熊本城主になれます。
みなさまも今後熊本を訪れる機会があれば、是非申し込んでみてはいかがでしょうか(現地での申し込みだとその場で写真集も貰えます)。
まぁ、城主証を頂いたとは言え実際には僕は名もなき歩兵ではありますが、これで正式に加藤清正公の配下の者となったわけで、今後は「賤ヶ岳七本槍の中で一番好きなのは福島正則!」と言い辛くなりましたな・・・。
さぁ、『OLD GUYS ROCK』全曲考察シリーズもいよいよラスト1曲となりました。
今日のお題は多くのジュリーファンを仰天させた謎の4曲目「屋久島 MAY」・・・ある意味、収録曲中最も難解なナンバーでしょう。
2003年のシングル『明日は晴れる』に、ジュリーのオリジナル携帯着信メロディー(?)として収録されていた、ということも僕は今年初めて知りました。
ジュリーが何故今年この曲を改めてリメイク、レコーディングし新譜に収録したのか・・・その意図を僕がまるで理解できていないため、今日の記事はあちこちに話が飛びますが(汗)、ご容赦の上おつき合いください。
①ジュリー流「童謡」の中にヒントを探る
僕が生涯で初めて聴いたレコードは・・・3歳か4歳くらいの時、母親が買ってくれた童謡全集でした。
「こがねむし」と「山寺の和尚さん」が特にお気に入りで、その2曲にはなんとなく「怖さ」のようなものも感じつつ(まぁ歌詞は実際とても怖いんですけどね)繰り返し聴いていました。「山寺の和尚さん」なんて今聴くととんでもなくファンキーなロック・ナンバーですが、子供心にはそこまでは分からなかったなぁ。
ふと母親に「あんたは短調の曲が好きみたいだね」と言われて、「短調は悲しい感じ、長調は楽しい感じ」と教わったことをハッキリと覚えています。
「童謡の中に潜む怖さ」で思い出すのが、伝説的テレビ番組『イカ天』にゲスト審査員として出演された大島渚さんがズバリその通りの表現で、3代目グランド・イカ天キング「たま」を絶賛されていたこと。
『イカ天』では5週連続でキングを勝ち抜いたバンドが「グランド・イカ天キング」となりメジャー・デビューを勝ち取るシステムなのですが、その大島さんの言葉が飛び出したのは、「たま」がいよいよ運命の5週目に臨んだ放送回。その時チャレンジャーとなったバンドがあの「マルコシアス・バンプ」(ジュリー絡みでみなさまご存知の秋間経夫さんや佐藤研二さんが在籍)で、ゴリゴリのグラム・ロック「バラが好き」を立て説得力抜群の「マルコシアス・バンプ」に対し、5週目にして番組コンセプトそのものを挑発するかのようにアッと驚く変化球「まちあわせ」を用意した「たま」と、『イカ天』史上に残るハイレベルかつ「まったくタイプの異なる2バンドに敢えて優劣をつける」という審査員泣かせの名対決だったわけです。
結果は、7人の審査員のうち萩原健太さん、吉田建さん、伊藤銀次さんの3人がマルコシアス・バンプに票を投ずるも4対3で「たま」が勝利、5週勝ち抜きを達成します(ちなみに、「このバンドを1週限りの登場とするのは勿体無さ過ぎる」との審査委員長・萩原さんの計らいでマルコシアス・バンプには「暫定イカ天キング」の特例が与えられ、その後暫定週を含めた6週の勝ち抜きにより彼等もグランド・イカ天キングを勝ち取りました)。
この時の4対3の票分けは、「週替わり」の特別審査員に大島さんがいたことが大きかったのですね。
これがもしポンタさんなら、或いはジュリーだったならば、マルコシアス・バンプが逆転していたんじゃないかな。大島さんはマルコシアス・バンプについても絶賛した上で(曲のタイトルを「おまえのバラが好き」にしてくれ、と言いながら大喜び)も、キング対決に限っては「童謡の中に潜む怖さ」を以って「たま」の方を高く評価した、と明言されていました。
で、この放送回での楽曲対決を双方ジュリー・ナンバーで例えるならば、マルコシアス・バンプが「Come On!! Come On!!」(秋間さん繋がりでね)で、「たま」が「屋久島 MAY」といった感じ。
すなわち僕はジュリーの「屋久島 MAY」を、作曲手法からしていかにも「童謡」的だと思っているのです。
こんなことを書くと「ジュリーはロッカーだ、童謡とは何事だ」とお叱りを受けるでしょうが、僕はジュリーの「ロック」を愛しつつも、自らの狭量でそれのみを標榜し本質を見ない、ということはもうやめたのですよ・・・。
そもそも「屋久島 MAY」は2拍子なのですね。これが揺るぎない本質の面です。それはロック的なツービートではなく、童謡独特のもの。しかも日本古来のね。
採譜をすれば明快です。
(全編載せるとヤバイので一部のトリミングのみで。ちなみに「ホケキョ」や「ホケキョー」ではなく「ホケキョウ」と表記させているのがいかにもジュリー、という感じで好き!)
そこで僕は、一連の「祈り歌」の中でジュリーが突如この歌を採り上げた収録理由を求め、大島さんに倣って「屋久島 MAY」に「童謡の中に潜む怖さ」を見出そうと、この数日色々な聴き方をしてみました。
でも結局分からない。唯一引っかかるのはノン・クレジットのコーラス隊の存在ですが、荘厳ではあるのだけれど「怖さ」は感じない・・・まだ聴き方が甘いのか、センスが無いんでしょうかねぇ。
頭に浮かぶ光景は、数人の男女がてくてくと林間の山道をゆく姿。「自然への畏怖」・・・今僕はそのくらいしか、曲に込めたジュリーの思いを量れずにいます。
目からウロコなみなさまの解釈、コメントにてお待ちしております(笑)。
②さらに脱線しながら考えてみる
僕は鹿児島出身ですが、屋久島を訪れたことはありません。行ったことのある人は皆「是非」と勧めてくれますからそれは素晴らしいところなのでしょう。
実際にこの目で樹齢2000年とか3000年の屋久杉を見ることが叶えば、その時ジュリーの「屋久島 MAY」の中に「童謡の中に潜む怖さ」を感じられるのかもしれません。2000年以上の生命の前では、人類の欲望のぶつかり合いがいかに愚行であることか・・・そんなふうに思うものなのかなぁ。
それにジュリーの場合だと、かつて見た縄文杉を古稀を迎える年に改めて思い出しながら、「70才?ヒヨッコもいいトコじゃないか!」と考えているとか?
『OLD GUYS ROCK』が福島に捧げられた1枚であることはジャケットが示す通りですが、その中にポンと織り込まれた「屋久島 MAY」にはやはり謎が多いです。
シャクナゲ繋がりで「やくしま」と「ふくしま」を掛けた?
もしかするとLIVEでは「ふくしま」と発音する?
いやいやそれは考えにくいし安易すぎます。そもそも僕は「屋久島 MAY」が古稀ツアーでセトリ入りするかどうかも可能性半々だと考えているのです(演奏上の理由が大きいのですが、それは次のチャプターで)。開演前のBGMに採用かなぁ、とかね。
ただ、4曲入り1枚の作品構成、その楽曲並びにおいて「屋久島 MAY」のようなタイプの意外なタイプの小品で締めくくる、落とすというプロデュースについては幾多のロック名盤に先例があり、大変心地よい、馴染みやすいということは言えるでしょう。
ビートルズなら『アビィ・ロード』の「ハー・マジェスティ」、ウィングスなら『ヴィーナス・アンド・マース』の「クロスロードのテーマ」。邦楽に目を向ければ、佐野元春さんで『Someday』の「サンチャイルドは僕の友達」、杉真理さん『ミストーン』で「タラップにて」。僕は収録ヴァージョンをレコードで持ってはいないけど、ジュリーの「くわえ煙草にて」も加えて良いのかもしれません。
今回の「屋久島 MAY」の場合は、ここまで一連の「祈り歌」が(楽曲的にも演奏的にも)ロックで固められていただけに意外性が高く、「素」のジュリーに聴き手が立ち会えるような・・・ホッとした気持ちになります。
とにかくメロディーが癖になる!ことに尽きます。
僕が今回の新譜で最も好きになった曲は「ロイヤル・ピーチ」ですが、CDを聴いていない仕事中などに頭を駆け巡るのは「屋久島 MAY」の旋律なんですよね。
これ、「五・七・五」じゃないですか。僕は俳句や短歌が大好きですから(毎年カミさんの誕生日には下手な歌を詠んでる笑)、いつの間にやら脳内で自分の好きな句とジュリーのメロディーが合体しちゃって
ひとつ家に~ 遊女も寝たり 萩と月~ ♪
なんて具合に再生されたりとか。
あ、この句は横溝正史さんの『獄門島』の小説や映画で知る人にはおどろおどろしいイメージを持たれていると思いますが、「ええっ寝ちゃうの!?まぁ、こんな月の晩じゃしゃあないか~」と苦笑いしながら娘の寝顔をつまみに一杯やってる芭蕉さん、みたいな絵を想像すると、とても愉快な心温まる名句です!(←なんという失礼な解釈・・・汗)
・・・と、グダグダに話が逸れましたが、結局「屋久島 MAY」の収録理由は僕には分からないまま。
それでも、この歌を聴いていると瑣末な諍い、悩みが馬鹿らしくなるというのは確かにあるんだよなぁ。この穏やかさ、煩悩の無さは一体何だろう。「達観」ともまた違う、独特の自然体。
それは、1曲目から3曲目のシリアスさは何だったの?とすら思ってしまうほど。
ここまで新譜3曲、僕はずいぶん重いことを書いてきましたし、古稀ツアーの編成についてもあれやこれやと・・・。でもそれって、自分自身の心配を紛らそうと勝手にあり得ない妄想を振り撒いたに過ぎないわけで。僕は正に煩悩の人なのですな~。
泰然としたジュリーの本質、ジュリーが「整えた」古稀ツアーの大きな楽しみが、この朴訥なメロディーに表れているのかもしれない、と思い直しています。
本当はボ~ッと聴くのが一番良い曲なのでしょうが、あれこれ考えてしまうのは僕の性質ですかね。
③2本のギターが織り成す神々しさ
新譜への収録意図を量りかねている僕でも、「屋久島 MAY」でのジュリーの歌と柴山さんのギターの音に神々しさを感じることはできます。
実は僕はまだシングル『明日は晴れる』収録の正規ヴァージョン(つまり、完全に信頼に足るピッチでは)聴けていません。でも、You Tubeでチラッと聴いた限りではどうやら当時とはキーを変えてきているようですね。
ジュリーの歌が入るということで、今回のテイクはメロディーの最高音が高い「ミ」の音、最低音が低い「シ」の音と、ジュリーの現在の声域にピタリと嵌るようホ長調の設定ででレコーディングされています。
ギターの音色は、収録曲中一番好きですねぇ。
最初にイントロを聴いた時、「出た~!『世界の昆虫図鑑』に載ってるやつ!」と(笑)。
今回の新譜4曲はすべて2本のギター・アンサンブルですが、「屋久島 MAY」だけそのミックス配置が異なります。他3曲は2つのギター・トラックが明快に左右に分かれているのに対し、この曲はセンター付近で塊に近い感じ。よく聴くと、それぞれのトラックが微妙に左右に振られていることが分かります。
PAN設定は10時と2時くらいでしょうか。
で、音色自体もここまで3曲がゴリゴリのハード・ロックで来て、最後にガラッと変わる・・・これは柴山さんが使っているギターも他3曲(たぶんSG)とは違う、と僕は聴き取ったわけです。
「10時」(僅かに左のトラック)の方は、例の白いフェスナンデス(しょあ様命名「いい風ギター」、もしくはDYNAMITE命名「『世界の昆虫図鑑』に載ってるやつ」)じゃないですか?先の50周年ツアーで、唯1曲「永遠に」で登場したあれです。
そして「2時」(僅かに右のトラック)の方・・・2番の「屋久島の~♪」の「の」からアルペジオで噛んでくる瞬間が僕は特に好きなんですけど、こちらはテレキャスと見ました。いずれも確証はありませんが・・・。
不思議なコーラス・ワークも相俟ってか、2本のギターがそれぞれになんとも神々しい。
「屋久島 MAY」は、ジュリーが作ったメロディー部についてはワン・コードです(全編「ミ・ソ#・シ」の和音伴奏で通すことが可能)。
ジュリーから「好きに仕上げて良いよ」と言われた柴山さん(妄想)は、幾多の手管、ヴァリエーションを見事ギターだけの表現でこの曲に捧げています。
イントロ、エンディングは単音のみで和音は登場しないんですけど、柴山さんはそこで新たな和音進行を考案し組み立てているに違いなく、それがまた荘厳な想像をかきたてられます。
僕の推測では、柴山さんは単音部で
ソ#~ファ#、ミ~ ラ~ソ#、ファ#~
E F#m
シ~ラ、ソ#ファ#ミ~ ラ~、シシ~
G#m A B
シ~ラ、ソ#~ ミ~レ#、ド#~
E C#m
ファ#~ミ、レ#ド#シ~ ミ~ ♪
F#m B E
とコードを当てているのではないでしょうか。
実際には鳴っていない音を探す・・・「屋久島 MAY」はそんな楽しみも差し出してくれる曲。もちろんそれは柴山さんの尽力によるものです。
先にちょっと書いたように、僕は今回の新譜からこの「屋久島 MAY」だけは古稀ツアーのセトリ入りの可能性半々、と考えています。
これは僕自身がこの曲をうまく「祈り歌」として溶かし込めていない、という個人的状況に加えて、柴山さんのギターが推測通りフェルナンデスとテレキャスだったら、という点からも言えること。
無限のサスティンが奏でる単音と、吸い付くような鳴りのアルペジオ。CDではその2トラックが重なることなく独立しているとは言え、音色がまるで違います。
まさかLIVEでは2本のギターを構え、一方では背負って、瞬時に取り換えて弾くとか?
柴山さんなら何とかしちゃうのかな。
もしセットリスト入りしたら「HU~」およびリフレイン部の「膝はガクガク、ホ~ホケキョウ♪」に参加したい(笑)と思っていますが、みなさまはどうされますか?
2012年からは毎年、ちょうどジュリーの新譜全曲の記事を書き終える頃に春がやってきます。
でも、今年は春が来る方がかなり早かったなぁ。
先月25日の日曜に川越に行った時は、桜も「もうちょい」な感じだったのに、一昨日に訪れた谷根千の桜スポット、寛永寺近くの上野桜木はもう葉桜に。
満開の桜を見ることができなかったのは残念でしたが、この後いつもお世話になっている先輩の薫陶を受けて、晴れ晴れと過ごすことができました。
4月に入り、ツアーを待つ僕の気持ちも「屋久島 MAY」のメロディーのような自然体になれた・・・かな?
さて、次回からは自由お題にてまた様々な時代のジュリー・ナンバーを採り上げていきます。
何かテーマがないかと考えて思いついたのは・・・50周年ツアーでは、入場してからのシングルB面BGMが楽しみのひとつでしたよね。その振り返りというわけでもないのですが、次回、次々回とジュリー珠玉のシングルB面を2曲続けて採り上げたいと思います。
その後、今年も加瀬さんの命日にワイルドワンズの曲を書いて・・・そこから先はまだ未定。毎年ジュリーの誕生月6月に開催しているactシリーズ月間も、今年は7~9月あたりにシフトします。
と言うのは、古稀ツアーのセトリ・ネタバレ禁止期間が長くなりそうなのですよ~。なにせYOKO君の初日が10月のさいたまスーパーアリーナですから。
さすがにそこまで長期間こちら本館を留守にするのも何ですからね。セトリに関係なさそうなテーマで色々と更新のネタを考えていかねば・・・。
さて、そのさいたまスーパーアリーナ。
ツアー後半日程のチケット申し込みはまだ先で(5月くらいですかね)、なんとか古稀ツアー最大の箱(現在告知されている中では)、あの広い会場を埋め尽くしたいと思って今は仕事関係など色々な人に声がけ、お誘いを頑張っているんですけど、「平日ど真ん中の水曜日、17時開演」という条件はなかなかハードルが高いようで・・・色よいお返事が頂けません。
僕自身はもちろん有給休暇を申し込みむつもりですし、YOKO君も「職場のカレンダーに今から”腹痛で休み”って書いておくよ!」と言っていましたが(笑)、特にジュリーファンでない人はなかなかそこまではねぇ・・・。もう少し頑張ってみますが。
それでは次回、ジュリー・シングルB面のお題にて。
曲はもう決めています。2015年に書いた「バイバイジェラシー」に続き、『過去記事懺悔やり直し伝授!』カテゴリー2本目の記事となります。
よろしくお願い申し上げます。
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