『JULIE WITH THE WILD ONES』

2010年4月 9日 (金)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「FRIENDSHIP」

流れはこっちだ
流れを集めて 一筋の輝きに向かって行く
未来を睨んでる 止まることのない
「アリガトウ」を振り撒いて
oh my FRIENDSHIP

(詞・沢田研二)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

拙ブログ、今回が200件目の記念記事になります。
ジュリーとはまったく関係のない偉そうな伝授からスタートしたこのブログ、ジュリー祭りを契機に様相がガラリと変わり、ついでに言葉遣いも徐々に変わり、今やじゅり風呂の末席に名を連ねるまでに。
多くのみなさまが読んでくださらなかったら、こうはいかなかったでしょう。
あらためて、御礼申しあげます。

しかし、そんなブログの経緯が示す通り、僕が完璧に”ジュリー道”に足を踏み入れてから、まだ1年半程度しか経っていません。
僕はその短い期間の間に、色々なことを経験しました。

ならば、ジュリーや加瀬さんはじめワイルドワンズのメンバー、さらには長きに渡ってジュリーと共に歩んできた柴山さんやタケジさん達、そしてファンの先輩方は、一体どれほどの経験を積んでこられたのでしょう。

その長い道程を、”奇跡としか言いようのない航海”に例えた屈指のバラードが、アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』の大トリを飾ります。

このナンバーを200件目の記念記事で採り上げられたことに、僕もささやかながらの運命を感じずにはいられません。
「FRIENDSHIP」、伝授!

やはりTVの威力はすごい。
予想した通り、「プロフィール」の記事検索数が伸びています。嬉しいですね~。
早く「FRIENDSHIP」も書いて、アルバムレビューを完璧にしておかないと!

まずは、”ジュリワンアルバム8大感動事項”最終回。

このアルバムで、ジュリーと加瀬さんのただならぬ仲が陽の下にさらされた!

とか言うと大ゲサかなぁ、な~んてつい先日までは思っていましたが、
NHK「songs」で見事全国にカミングアウト。
何枚も写真が紹介されましたが、ジュリー&加瀬さんのツーショット数枚はかなりヤバいぞ、あれは。
完全に密着してるように見える。

まぁそれは冗談としても(ジュリー曰く「ただならぬ仲と言っても、肌を合わせたことはありません」←「歌門来福」LIVEでのお言葉です)、この番組で2人の友情を初めて知った方も多かったと思います。
最後の曲「FRIENDSHIP」の映像にすべてが収束するようなコンセプトで企画編集されていましたよね。

僕はローリング・ストーンズの「友を待つ」という曲が大好きで、PVを観て泣いてしまったほどですが、そのせいかしらんロック・ナンバーで「friend」という単語が出てくる場合、それは男に向けた歌である、という先入観があります。なんだかなぁ。
「FRIENDSHIP」も最初そうやって聴いてしまいましたね。この曲が女性に分かるかなぁ、なんて。
すみませんでした~!

この船は、長い航海の途中。まだまだ未来へと向かっていく船なのです。
これまでの航跡を知っていらっしゃる先輩方にしか分からない、深い魅力があるに違いありません。
もちろん、ジュリーと加瀬さんにしかわからないことも、多くあるでしょう。
先輩のお姉さま達は、
「この曲が、新規ファンに分かるかなぁ」
と逆に思っていらっしゃったかもしれませんね。

だから、「songs」でこの曲が採り上げられ、掘り下げされた事はとても意義深い。
「songs」のトークは、「FRIENDSHIP」放映のためにあったと言っても過言ではありませんね。
アーティスト本人の言葉で、「この曲はこうこうこうやって作った」なんて聴く機会は滅多にないですし、僕はググッと身を乗り出しましたよ。

「二人のことを曲にしよう、という話になって」
「(ジュリーの)詞が先だったんだよね」
「後から加瀬さんが別のサビを作って・・・」

魔法のような、宝物のような会話。感動です。
詞先かぁ・・・。
加瀬さん、泣きながら曲つけたんじゃないの~。
と余計な詮索をしながら、ちょっとギターで合わせて歌メロ部を弾いてみますと。

「え?Bメジャー?」

ロ長調。
アルペジオで作ったはずの曲だから、これにはビックリ。
(ロ長調=Bメジャーがキーの曲は、ギターで弾くとほとんどの和音がハイポジションになり、やわらかいアルペジオ奏法には不向きなのです)
首をかしげながらも、イントロに戻ってアルペジオの構成音を拾って、「はは~ん」と。

実際どうかは解りませんが、この曲、加瀬さんは最初Dメジャー(ニ長調)で作曲したのではないでしょうか。
1弦から3弦までを、スリーフィンガーで、フォームを替えながらハイポジションで奏でる導入部。これは、ビートルズの「ヒア・カムズ・ザ・サン」間奏アルペジオの応用だと思うのです。
ビートルズが好きでギターを弾いていたみなさまはお分かり頂けると思います。この奏法が、手クセのように身体に染み付いてしまっている感覚。

ハイポジションでアルペジオを弾き、トニックのDのローコードに舞い戻ってくる快感は、「ヒア・カムズ・ザ・サン」を必死にコピーしたビートルズファンにとって、格別のものなのです。

そのようにDのキーで作曲されたものが、ジュリーの希望でBに移調されたんじゃないかなぁ。
本当のところは加瀬さんにしか解らないですけどね。


♪ ひとりは湘南ボーイ ひとりは京都ボーイ ♪
           E          B              F#7       B

太字で表記した最高音の部分を、ジュリーはスッと抜けるような感じで歌いたかったのではないでしょうか。

加瀬さんの作る曲は、初期のジュリーナンバーに多く見られるように音域がかなり広いです。
そのため、冒頭の

♪ 昔 運命という大きな船に乗り ♪
      B      D#m       E           B

この「むかし~♪」の「む」の音が、何と低い「ファ#」。
無理!

僕には出せません、この音。
無垢に伸び上がる高音が初期のジュリーヴォーカルの魅力だとすれば、太く艶のある低音が、今のジュリーの最大の武器であるように思います。

アオゾラ」でも編曲をなさっている坂本昌之さんは、あの坂本昌之さんですよね。超大物です。ドラマティックかつオールマイティーなアレンジを得意とされていますが、「FRIENDSHIP」に敢えてストリングス系の音色を一切使用しなかったのが素晴らしい!
その代わりにオルガンが大活躍するのです。この暖かいオルガンが、アレンジの肝でしょう。
この曲は、湿っぽいストリングスの音作りだと逆に泣けなくなってしまうと思うのです。


さて、新規ファンが簡単に感想を語れる類のものではないとは思いますが、ジュリー自身による作詞についても、少しだけ。

「二人のことを曲にしよう」という話になって、ジュリーは即座に「友情」「絆」「道程」というテーマを思いついたでしょう。
言うまでもなく、「FRIENDSHIP」の「SHIP」を”船”に見立てています。

♪ 流れに棹さし 流れに抗い 星に導かれて ♪
        E       B         E      B        E    B   G#7

決して平坦な道程、穏やかな航海では・・・なかったのですね。でも、強い志を持って、海原を来た、と。
凄いなぁ、と思うのは、「まだ航海の途中」という意思をジュリーがこの詞に込めている事です。
ジュリーはいつも、現在よりも先を見ている。未来を睨んでいるのです。
加瀬さんとの絆、またジュリー自身の航海も、これからまだまだ続いていくのだという、堂々たる決意表明ですよね。

♪ 一人はTHE TIGER 一人はTHE WILD ONE ♪

ココは、僕などが語るのは畏れ多い気が・・・。
聴いていてドキッとした方々、きっと大勢いらっしゃるでしょう。

トークによりますと、このジュリーの歌詞を叩き台にして加瀬さんと共同で練り上げていき、「FRIENDSHIP」は完成したそうです。
そのお話の中に出てきた、加瀬さんが「新たにつけ加えた」サビ。
おそらく最後の大サビ部のことですね。

1番~3番のサビとはメロディーを一変させた、強力なコーダです。
いかにも、「LIVEでは会場全員で合唱して!」的な箇所なのに、ハハ・・・歌詞カードは記載が無いですね。
これは

♪ Sail our way,  Sail away forever ♪

と歌っています。
と、この部分については自信満々に書いてみましたが、問題はこの大サビ直前、3番の通常サビでの追っかけコーラスのパートなのですね~。
そこが良く聴き取れない。
まぁ2つ目は

♪ Burnin’ is love ♪
(後日註:全然違います!
♪ Time is now ♪
です!


で合ってそうですが(後日註:嘘です!Time is now♪でよろしく!)1つ目が・・・。
初見では「あんにゅい・そんぐ」って聴こえた(そんなバカな)。
(後日註:「♪Time is on♪」でございます。

♪ 流れはこっちだ(Time is on
    流れを集めて(Time is now) ♪

で、コーラス参加しましょ~!)

『JULIE WITH THE WILD ONES』というCDを聴き込むに連れて、このアルバムが「涙がこぼれちゃう」で始まり「FRIENDSHIP」で終る意味というものが、おぼろげながら見えてきました。
歌われている内容は、年齢を重ねているからこその物語です。
友情、夫婦の愛、若き日の仲間、恋人。
しかしその上で、”聴き手との再会”というテーマが浮き上がってくるように思われます。

ジュリーファンとしての再会。
ワイルドワンズのファンとしての再会。
或いは、GSファンとしての再会。

ジュリーwithザ・ワイルドワンズのメンバーが、
「僕らは今、こんな感じだよ。そっちはどう?」
と語りかけてくれている・・・そんな作品ではないでしょうか。
だからこそ、聴き手が元気になる。

そんなふうにして『JULIE WITH THE WILD ONES』を体感できる年長の方々が、僕は今、うらやましくてなりません。

さぁ、それでは。
本日のお題、「FRIENDSHIP」で見事に完結したNHK「songs」の感想にて、この記事を締めくくりたいと思います。
先週、第1回の放送直後は駄々をこねてしまいましたが(恥)、やっぱり素晴らしい番組だなぁ、と。

結局、2週に渡って『JULIE WITH THE WILD ONES』から選ばれた4曲については、すべてCD音源が流れたワケなんだけど。

今回の見せ方についてね、ほんの数人の先輩にしかお話できていないんですけど、僕なりに考えに考え抜いた末の解釈がありまして。
結局、ジュリーの男気って話になるんです。
本当は、全曲レビューが終ったらそれをこのブログで書こうと思っていました。
でも、もういいんだ、それは。
今はとてもスッキリしています。
だから今日は、本当に素直に、この素晴らしい番組の感想を書きますよ!

1. 「プロフィール」

先週の放送で、僕は「涙がこぼれちゃう」の演奏途中から、柴山さんと下山さんの姿をまともに観れなくなっていました。
しかし、今週しっかりと観てみたら、なんとお二人の楽しげであることか。

すさまじいテンションで身体を動かしながらアコギを引き倒す柴山さん。
間奏、いつもと同じスタイルで高音部をかき鳴らす下山さん。

あぁ、現場では確かにバンドの音が出ている。
それが嬉しい。

先週は、観ている方の僕の姿勢に問題があったということ。お二人の勇姿に立ち向かう度量が自分に無かっただけです。

「プロフィール」という大名曲がこうして世に出たことが、ファンを誇らしい気持ちにさせてくれます。
きっと多くの方々が、この曲に興味を持ってくださったでしょう。

特大のホームランを打つ鳥塚さんがカッコ良かった~。

2. 「危険なふたり

このスタジオLIVEの臨場感。やはりコレですよコレ。
え~、あいら様、リードギターはすべて柴山さんです(てか、僕はちゃんと本文読んでますって!)。
2008年放映の演奏とは異なり、加瀬さんはコードバッキングに徹していました。
下山さんのバッキングもいつも通りですから、その分柴山さんは単音に集中できたようです。今まで観た「危険なふたり」の映像の中で一番サスティンが効いていました。
この音色設定だと、1音突き放して弾いても果てしなく音が鳴り続けます。音を切るためには、弦の振動を指で軽く押さえる事が必要になりますが、柴山さんはいったんフレット全体を豪快にすべらせて「ぎゅい~ん!」と言わせてから、「きゅっ」って感じで、音を切るのです

全国のカズラーのみなさま、その「ぎゅい~ん」「きゅっ」に是非とも萌えてくださいませ。

などと興奮して観ていた横で、「カメラ、寄り過ぎ寄り過ぎ!」とか、「お腹が、お腹が~!」とかいう悲鳴が聞こえていたような、いなかったような。
というワケですので、僕は多くのみなさまが話題にしていらっしゃる、この曲でのジュリーの衣装を・・・まったく覚えておりません(汗)。
えっ、「歌門来福」と同じだった?
この状況は、ジュリーファンとしては失格でしょう。

あと、この曲では、僕が今回の放映で最もツボったシーンがあります。

「いや、オレあんまり目立たなくてもいいっすから・・・」
てな感じで奥ゆかしげにギターを弾く下山さんに、執拗に絡みまくる島さん!

是非LIVEでもやって頂きた~い!!

3. 「TOKIO」

これは・・・まるで「歌門来福」ファイナルのアンコールばりのテンションではないですか!
素晴らしいスタジオLIVEです。

「わちゃ~!」「あ~ぅお!」
ジュリーの雄叫びに、「TOKIO」を歌謡曲の記憶としてお持ちの一般の方々がひっくり返ったでしょうね。
浮動票の方々が、LIVEに行きたくなったのではないでしょうか。
これが、ジュリーなんですよ。

4. 「FRIENDSHIP」

書きたいことは先にもう書いちゃいました。
ただ、映像を観ていてね・・・。カメラがジュリーと加瀬さんのツーショットになった時、何とも言い難い感動がこみあげてきましたよね。
これは、一般の方々がまだ知らない、ファン特権の感覚だと思います。

LIVEはきっと、この映像と同じ楽器編成なのでしょうね。楽しみです。
加瀬さんのこぼれちゃう涙にも期待しましょう!

最後に、蛇足でございますが。
拙ブログ、アルバム(CD1枚分)全曲レビューを達成したのは『PLEASURE PLEASURE』に引き続いてこの『JULIE WITH THE WILD ONES』が2枚目となりました。
この機に、収録全曲を網羅したアルバムの記事については、カテゴリーをアルバムタイトルに変更させて頂きます。
記事数も多くなり、みなさまにおかれましても、過去に遡っての検索が大変でしょうし。

すべてのアルバムカテゴリー化を達成する事は夢のまた夢です。普通に考えれば無理でしょう。
でも、「FRIENDSHIP」という歌にある通り、長い航海に臆せず、未来を睨んで進んでいきたい。
僕はまだまだヒヨッコですが、「ジュリーファン」というスーツの折り目がとれてきた頃に、年齢を武器にビッグウェイブを狙う・・・そんな意気込みでありたいものです。

今後とも、どうぞよろしくお願い申しあげます!

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2010年4月 7日 (水)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「ハートにズキューン」

ズキュ~ン!
ズキュ~ン!
ズキュ~ン!
ドキュン!
バキュ~ン!(ばきゅ~ん♪)
バキュ~ン!(ばきゅ~ん♪)
バキュ~ン!(ばきゅ~ん♪)
ド・キュ~ン!・・・ぅうう~、あ!あ!あ!

(詞・沢田研二)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

今日のお題は、「ハートにズキュ~ン」。
で、いきなり汗汗。
冒頭の引用箇所は、これで良かったのだろうか・・・。

みなさま既にお気づきの通り。
このたびの”大名盤『JULIE WITH THE WILD ONES』全曲レビュー”一連の記事冒頭には、各曲の中で僕が個人的に最も感銘を受けた箇所の歌詞をご紹介しております。
元々、「プロフィール」の記事に臨むにあたって、どうしても書き留めておきたい歌詞の一節があったがために始めたことですが・・・。
今日は、いきなりエライ部分を抜粋することに。

先輩じゅり風呂さん達も同じ状況かと思いますが、先週の「songs」放映直後から拙ブログも、ツアー開催期間に匹敵するほど多くのアクセスを頂いております。
TVを観た浮動票の方々が、「ジュリーwithザ・ワイルドワンズ」「涙がこぼれちゃう」といった検索フレーズで、情報を求めているのです。
今夜の放送で、それはさらに勢いを増すでしょう。
僕のブログをヒットしてくださった方々が、いきなり「ズキュ~ン」だの「バキュ~ン」だの、そんな文章で始まる記事を普通に読んでくださるものでしょうか。

でも。
嘘はつけない、大人のひとに♪
僕がこの曲で一番グッとしたのは、まぎれもなくこの箇所での、圧倒的にパワフルで挑発的なジュリーのヴォーカルだったのですから・・・。

ということで、今回は『JULIE WITH THE WILD ONES』収録曲の中でも抜きん出た存在感を持つ、炸裂・爆裂のナンバーが登場です。
「songs」放映の今日までに、この曲までは何としてもやっておきたかったんだ~。
「ハートにズキューン」、伝授!

昨年末にワイルドワンズとのコラボが公になった時、元気なおじさま達の力強い発動に胸を躍らせる一方で、「ジュリーらしさが封印されてしまうのではないか」と心配したファンの方々も多かったですよね。
そんなことは無かった・・・それどころか。

「ハートにズキューン」・・・作曲は加瀬さんですが、なんとジュリーらしいンンバーでしょうか!

GRACE姉さんのドラムスから始まる刺激的なイントロ、曲のタイトルだけ先に知っていたリスナーに、「これから何が始まるのか」と思わせておいていきなり

ばっきゅ~ん!!

この時点ですでに、名曲確定ですよ。
いわみ様が40年後もブログを続けていらっしゃったら、「史上最大最高齢の爆裂バンド」として確実にネタに挙げられるナンバーではないでしょうか。

そして僕の脳裏には、LIVE会場のお客さん全員が指差しポーズで「ばきゅ~ん!」と叫んでいる様子がまざまざと浮かびあがります。
え・・・またしても僕だけ?
みなさまは、おやりにならない・・・?
一人ぼっちはいやです・・・。

曲は進み、本編Aメロの歌詞も、叩きつけるようなフレーズの連続です。

♪ 犯罪だと妬いてやがる ♪

いいねぇ~、この語感とヴォーカル。
「新・センセイの鞄」にちなんでの”年の差愛”がテーマの詞かな?・・・などという真面目な深読みをする間も曲は元気に続き、再び

「ズキュ~ン!」「ドキュ~ン!」

このフレーズがすべての煩悩を吹き飛ばすのです。
わかったよ、ジュリー。
もっともっと続けて言ってくれ!他に何もすることはない!
そんな気持ちになります。

ただ、「ハートにズキューン」は単にエキセントリックな楽曲、ってだけじゃないんだなぁ。
ここで、「ジュリワンアルバム8大感動事項」のお話に移るのですが

このアルバム、ミックスが神です!

このタイミングで語るからにはもちろん、「ハートにズキューン」は格別に素晴らしい。

僕は、90年代に入ったあたりから、巷のロック、ポップスのミックスが好みに合わなくなり悩んだことがありました。
すべての楽器がそれぞれ同じように、音量がやたらとデカくて、楽曲の最初から最後まで常に沸騰点を押しつけられているような感覚があったんですよ・・・。
間が感じられないと言うか。
まぁ、実はジュリーのおかげで今は克服したんですけどね。

『JULIE WITH THE WILD ONES』のミックスは、痛快でした。僕の好みから逸脱する箇所はまったく無く、最後まで安心して聴けましたね。
ここまで”純情武器に正攻法”な楽器構成を、ここまでデリケートにPANを振り、やわらかく軽快な音に仕上げたミックスには、現代ではそうそう出会えません。

みなさまにも解り易い例を挙げるなら、楽器で言えばアコースティック・ギター。音の配置に注目してください。
どの曲も共通して、行儀良く左チャンネルから聴こえます(2本以上になると、逆にも振られていきますが)。
これだけバラエティーに富んだラインナップ(しかも演奏者がそれぞれの楽曲で異なる)を統一し、アルバム全体の流れを心地よく仕上げるのは、プロデューサーではなく、ミキサーの重要な仕事なのです。
ですから『JULIE WITH THE WILD ONES』は、1曲目から10曲目までの繋がりが素晴らしい!

このアルバムのアレンジ・コンセプトにおいて、アコースティックギターの積極的な導入は最大の肝かと思います。
素晴らしいミックスによって、それが最大限に生かされましたね。
特に、「ハートにズキューン」のアコギは刺激的です。
熱愛台風」にしてもそうですが、パワー型の楽曲でアコースティックギターが鳴っているのは、本当に気持ちが良いものです。

またまたイカ天の話をしますと、かつて
吉田建さんも言っていましたよ。
「この曲にアコギが入ってる、というその時点で、既にイイ!」って。
THE WEEDというバンドについてのコメントだったかと記憶しています。

ところで僕は、この曲のアコギが下山さんなのか柴山さんなのか、特定できないんですよ。
「熱愛台風」は確実に下山さんの音だけど・・・。
まだまだ修行が足りませんね。
LIVEではお二方ともエレキで臨むと思います。
中盤間奏の兄弟バトルでは、ワンズのみなさまよりもさらに一歩前に、ずずいっとせり出してきてくれるはず。

そうそう、LIVEでコーラス参加予定のみなさま。
最後のひと回しだけ「ばきゅ~ん♪」のタイミングがそれまでより1拍遅いですから、気をつけていきましょうね!

さぁ、いよいよ今夜は「songs」2週目。
まずは「プロフィール」。
この大名曲を全国にオンエアーし、多くの新たなリスナーを獲得してほしい、という僕の願望が実現します。
SUNSET-OILというクレジットについての紹介はあるかなぁ。
いわみ様の御説が当っていれば、そのあたりのナレーションがあるかもしれません。
加瀬さんは夕陽がお好きだったのですね。期待しましょう。

危険なふたり」「TOKIO」は鉄人バンドがハジけてくれるでしょう。もちろんワンズのみなさんとのバトルも必見です。

そして「FRIENDSHIP」。
過度な期待は禁物ですので一応冷静に臨みますが、やっぱり、先日「アオゾラ」の記事に書かせて頂いた僕の予想・・・というか熱望ですけど・・・そんな歌と演奏であってほしい。
いずれにせよ、次回更新は「FRIENDSHIP」をお題に、200件目の記念記事となります。
テンション高く行きたいものです。

みなさまも、どうぞお見逃しなく!

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2010年4月 4日 (日)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「いつかの”熱視線ギャル”」

年齢(とし)重ねてもグレそうになるよ
「バカ」と罵られそう
遊び慣れずに臆病なまま
内緒の午後にビビりまくる俺

(詞・吉田Q)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

本日は「新・センセイの鞄」観劇にお出かけのみなさまも多いでしょうが、こちらは気持ちも新たに、アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』全曲レビューを続行いたします。
元気百倍なのでございます。
あとね、「ジュリーの事で心が苦しくなるのは、真のジュリーファンになった証」なんですって。
J先輩が、そう仰ってくださいました。
ひえ~。前途洋洋にして多難ですわ~。頑張ります。

今日はアルバム8曲目収録の、完全無欠のポップチューン。
収録曲の中、「プロフィール」と共に僕の強力推薦ナンバーですから、大長文は確定してます。あんまり長いと途中で寝てしまう方(カミさん)がいらっしゃるらしいので、枕もそこそこに、いきなりまいりましょう。
「いつかの”熱視線ギャル”」伝授!

まずは恒例、”ジュリワンアルバム8大感動事項”。
今回は僕にとってかなり重要なポイントなのですが。

ジュリーが、自身以外の男性作詞家のペンによる楽曲をレコーディングするのは、「夢見る時間が過ぎたら」(2003年)以来7年ぶり!

コレです。
しかも、ジュリーはそれ以前(90年代後半)から、おそらく覚和歌子さんとの出会いを契機に「自分自身の作詞曲意外は、女性の作詞家に限定したい」というスタンスを貫いていました。
「夢見る時間が過ぎたら」の場合は、大物・伊集院さんが「どうしてもジュリーの詞を書きたい」と猛烈にアピール、例外的に実現したワケで。
(後註:あまりにもプライヴェート感が強過ぎたせいか、サリーとの共作「Long Good-by」という重要な曲を失念しておりました。これも例外ということで・・・汗)

そして今回、ワイルドワンズとのコラボによって、本当に久しぶりの例外パターンが再び産まれました。
これは当初、「涙がこぼれちゃう」の記事で書こうと思ったことなんですよ。
しかし、グッと堪えた。ジュリワン公式サイトで、アルバムのクレジットを見てしまったからです。

「いつかの”熱視線ギャル”」
作詞・作曲・吉田Q

おぉ~っ!
常に詞の考察を不可欠として楽曲に入れ込むスタイルの僕にとって、これは大事件です。
Qさんの尋常ならざる「完全男性視点」な才能による詞については「涙がこぼれちゃう」である程度考察できましたが、僕のような凡人に、Qさんの楽曲タイトルだけで内容を予測するなど不可能。
「いつかの”熱視線ギャル”」・・・なんですかそれは!
と、楽しみにする以外、手の打ちようがないのです。

しかも、みなさま。
事もあろうに”ギャル”ですよ!

ジュリーがかつて「OH!ギャル」について語った言葉は、僕などよりみなさまの方が詳しく御存知でしょうね。
「”ギャル”って単語が、ちょっと・・・」
というワケで、あのカッコいい大名曲が「一番嫌いな曲」とすら言われてしまったのです。
あれから30年余。
今再び眼前にした”ギャル”という単語に、ジュリーはどのように挑んだのでしょうか。

大丈夫なんです。
ジュリーとしてもOKなんです、これは。
以下、得意の深読み体勢に突入いたしますが、吉田Qさんの書いた”ギャル”は、歌われる物語の時点ではもう既に・・・ちょうどジュリーファンのお姉さまくらいのお年に達しているの
ではないかと。
”ギャル”ではなくなっているのですよ。
「いつかの」というタイトル部分を、「あの日の」と置き換えることができると思います。


この『JULIE WITH THE WILD ONES』というアルバム、「あの日」というキーワードを核にしたコンセプト・アルバムである事はみなさまとっくにお気づきでしょう。
「いつかの”熱視線ギャル”」は、その中でも特に重要な1曲なのです。
タイトルを知っただけでは内容を憶測すらできなかった僕は、初めて曲を聴いた瞬間、ひっくり返りましたからね。

なんと、夫婦讃歌!

面白おかしく言葉を散らしていますから、一目では解らないように作られていますが、その実、何という豪快な直球であることか。
「真実の愛」がテーマなんですよ、この曲は(爆爆)!

そしてそれは、ジュリーwithザ・ワイルドワンズが歌っているが故に、Qさんの描いた世界よりもさらに時空が広がってしまう(いや、歌の主人公の現在年齢が上がってしまうだけ説もありますが)という、「涙がこぼれちゃう」と同じ現象を引き起こしています。

「いつかの”熱視線ギャル”」、1番→2番→3番と進むに連れて、時代が進んでいく事はみなさまお解かりでしょう。
1番の段階で物語に登場するのは、バリバリの「ギャル」ですね。当然歌い手=主人公も「バッドボーイ」であるワケです。
絵に描いたような、二人。
バッドボーイがタイトジーンズ娘にに目移りしたりもしますが、どうにかこうにかうまくやっているようです。

ところが転機は2番です。二人の間に温度差が生じてくるのです。
「ギャル」はこの次点で「ギャル」である事を卒業していると思われます。
「♪絵に描いたような暮らし」を支えられるだけの、充分に成長し、分をわきまえた素敵な女性になっています。
ところが男という生き物はどうしようもない
「バッドボーイ」の血は未だに騒ぎ落ち着かず、「絵に描いたような暮らし」は時に窮屈。
慣れてるワケでもないのに、若き日同様の刺激的な恋を求めて、海へ!

ところが。
♪ 夏の恋 待ちぼうけ ♪

若い娘に相手にしてもらえません。

それで良かったんじゃあない?
いいオヤジが、万が一うまいこと若い娘をつかまえたとしても、それこそその娘の元カレに
「しょっぼい男と見かけた街で♪」
なんて歌われかねませんからね。

3番でようやく、「恋心それなりにいつまでも♪」の境地を真に知る主人公。
とうにその域に達していた「いつかの”熱視線ギャル”」は、「やれやれ・・・やっと落ち着いたかこのガキは」と、かなりの御年になってようやく胸を撫で下ろすのでありました。
かくして夫婦は円満に。

・・・って、合ってるのか、僕のこの解釈は?
調子に乗って、歌詞について思ったことは、ほぼ語ってしまいましたが・・・。

でもね、加瀬さんは、そういう風に受け取ったと思うんだ~。
「海」がキーワードになっていますし、かつての「湘南ボーイ」加瀬さんの琴線に触れまくるナンバーだったのではないでしょうか。
そして

「まだまだ若いな・・・よし、俺がこの物語の、さらに続きを書いてやろう」

てなことで作ったのが「僕達ほとんどいいんじゃあない」なのではなかろうか・・・という大胆な仮説も打ち立ててみましたが、いかがでしょうかね~。

あ~あ、詞の考察だけで、すでに大長文になってます。
まだまだお話は半分程度しか終わっていません。


吉田Qさんは不思議なお方で、作詞については、ド直球のコンセプトを少しからかったような愉快な雰囲気に変えてしまいます。この点は僕が説明せずとも伝わりそうですが、実は作曲についても、そうなんですよ~。

高度なメロディー、シンコペーション、コード進行・・・それらを、最も聴きやすく、最も作者自身の気持ちの良い形にまで、噛んで噛んで、なだらかに丸めていくのです。
まずは楽曲として徹底的にいい曲であれ、ポップであれ、という究極の職人技。

あまりにも完璧なポップチューン過ぎて、隠された工夫に気づきにくい仕上がりになっています。

王道のメロディーのようでも、「ちょっと一味違うのよ」という細かい点を拾ってみますと

♪ 誰より熱視線ギャル 俺を好きと言って ♪
    C       Cm               G       E7

太字で表記した「Cm」と「E7」が渋い!
ここは通常ですと「C→D7→G→Em」という進行が常套。
このパターンをどのようにひねっていくか、というのはポップス職人永遠のテーマとも言えますが、例えば白井良明さんだと

♪ 君 素敵過ぎるよ もう 遠のいていく夏 ♪
         C                 D7  G               E7 
     (沢田研二 「グランドクロス」
   便宜上、ハ長調をト長調に移調して表記)

この進行は、ポップ解釈としてかなり「いつかの”熱視線ギャル”」に近いかなぁ。
ちなみに「グランドクロス」は、名盤『第六感』に収録されています(と、さりげなくダメを押しておこう)。

まぁこのあたりは実は序の口でございまして、僕が一番シビれたのは、間奏です。

♪ 夏の恋 待ちぼうけ ♪
  Am7 D7           Cmaj7→Gmaj7→Cmaj7→Gma7

海~な感じのツインリード・アンサンブル。

さらにmaj7コード独特のポヨ~ンとした和音が、待ちぼうけ~な感じをも醸し出していますね。

そして、ハッと我に返る主人公の気持ちの動きを表現したのでしょうか、この後いきなり転調します。キーボードのソロに切り替わって

Dm7→G7→Em7→Am

で、遂に大悟し、奥さんの元へ駆け出します・・・な感じで元調に舞い戻ってコーラスが加わり

A7→D7sus4→D7

以上が間奏の流れ。これはAメロにも、サビにも出てこない、間奏だけのために特別に作られた進行なのです。大変凝った構成だと言えます。

そんなに凝っている楽曲なのに、解り易く表現しまくろうとしうアレンジの心意気もまたスゴイ!
僕は90年代以降、最近のJ-POPのアレンジを聴いていて、「それはどうか」と微妙な感想に陥ることがままあります。
何故無理矢理にでも16分音符の装飾音が強調されなければならないのか。
それは、シンプルなリズム装飾だと、メロディー作りの貧しさが露呈してしまうからではないのか。


シンプルなエイトビートの威力をナメてはいけません。
おそらく吉田Qさんの作曲段階から、本当に良いメロディーが作られた時の最も効果的な”魅せ方”を狙っている・・・「いつかの”熱視線ギャル」は、そんなナンバーでもあります。

Aメロの楽器構成は

・突っ込むドラムス
・動き回るベース
・アコースティックギターの元気なストローク
・エレキギターの繊細なカッティング

それだけです。
キーボードやパーカッション、それにオーバーダブのギターは、「キメ!」という部分にしか出てきません。
これこそがビートルズ直系、エイトビートの正しき道。

だからこそ、Aメロ以外で登場するキーボードのオルガン音色がオイシイ。
そして、左サイドに姿を現すオーバーダブのギターは、シンプルな音階ながら抜群の威力を発揮します。
何よりもこのギターアレンジ、加瀬さんの12弦ギター単音が似合いそうではありませんか。つまりこの曲のリードギターは、2008年のNHK「songs」出演時に加瀬さんが弾いた「危険なふたり」に匹敵する素晴らしさを感じさせてくれるのです。

さらに、パーカッションとしてハンドクラップ(手拍子の音)が登場。
これは「涙がこぼれちゃう」でも導入されている、シンセサイザーで出している音なんですけど、とにかくビートルズの洗礼を受けた者にとって、

「うん、たた、うん、た!」

というハンドクラップの使用は・・・揺るぎない信仰心を示すようなものなんだなぁ。

♪ 黄昏電車で肩を落として ♪
     E7            Am

この部分から始まるBメロ部で導入されるのですが、ここはちょうどジュリーから植田さん(ですよね?)へとリードヴォーカルが引き継がれる箇所ではないですか!
ということは・・・。

LIVEでは、ジュリーがこのリズムで手拍子を煽ってくれる!

みなさま、これは是非とも予習を~。
サビ直前に演奏が一瞬ストップする
「♪灼熱の浜辺♪」(2番だと「ビビりまくる俺♪」)
のトコで、このハンドクラップ音が継続して残っているのが、メチャクチャ楽しい、重要なアレンジの肝なんですから!
会場全体でやりましょう、それを!

「涙がこぼれちゃう」でも、サビを歌い終わった後の演奏部でジュリーは同じ手拍子を煽ると思います。
こちらはプレプレツアーの「AZAYAKANI」と同じタイミング、同じリズムですから難しいことは何もありません。その場でジュリーに身をまかせましょう。

・・・本当に大長文になってきました。
すみません、あと少しだけ。ジュリーのヴォーカルに触れさせてください。

ジュリー最大の魅力は、心ごと、身体ごと歌の世界に入り込む能力。これは僕の中で譲れない絶対のものです。
先に述べたように、かつて”ギャル”というフレーズに違和感を示したジュリー。
”ギンギン”という形容詞が「虚構」を意味するならば、今「現実」を最大の武器にしているジュリーはどんな姿勢で「いつかの”熱視線ギャル”」に臨んだのでしょうか。

「OH!ギャル」の場合は、若い女性の奔放な様を、男性の猥雑な視点で描いたもの。
それはそれで素晴らしいですしまぎれもない名曲ですが、ジュリーにとって消化し難い部分が確かにあったのでしょう。

「涙がこぼれちゃう」「いつかの”熱視線ギャル”」の2篇を知り、僕の中には吉田Qさんの詞についてもまとまった感想が芽生えてきました。

女性には見せたくはない「男心」を敢えて晒す

「枕を濡らしちゃう」であったり「遊び慣れずに臆病」であったり、恥ずかしながらの「男心」の真実を、敢えてコミカルなフレーズで描いていますが、Qさんは相当に自分自身の気持ちを追い込んだ状態で作詞をされているのではないでしょうか。
2篇ともに、ギリギリの線で揺れ動く気持ちを捉えた名作でしたからね・・・。

それは、「心をさらして歌う」というジュリーのヴォーカル・スタイルと何ら反することではありません。
加瀬さんが見つけてきた吉田Qさんという若い才能は、ジュリーが自然に気持ちをこめられる楽曲を書く人でもあったのです。

♪ 街で見かけたよその タイトジーンズのあの娘に
    G                           Bm
     ぐらついてしまいそうさ ♪
        C              Cm

この部分などは、ジュリーが初めて見せるようなヴォーカルニュアンスが聴けたり、楽曲との相乗効果も大きいです。
曲のあちらこちらに、普段ジュリーが歌わないような類のフレーズもたくさんあって、新鮮ですしね。

年齢を積み重ねていく「絵に描いたような=普通の」連れ添った男女の絆。
その境地を吉田Qさんのように20代の若さで到達し、作品にしてしまう・・・それが音楽という、歌というジャンルの素晴らしい点であり、理屈で解明できない不思議な点でもあります。

アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』に収録された吉田Qさんの2篇「涙がこぼれちゃう」「いつかの”熱視線ギャル”」は、若い作曲家の作品にもかかわらず、ジュリーwithザ・ワイルドワンズの「年齢を最大の武器にする」というコンセプトとズバリ合致し、大きな光を放ちました。
今回「songs」を観て「涙がこぼれちゃう」を知りアルバムを買った方々は、「いつかの”熱視線ギャル”」という、「吉田Qさんの作ったもう1曲」を、大いに期待して聴くことでしょう。
そして「やっぱりイイ曲を書く人だ」と思ってくださるはず。
確固たる作風を持つ、という強みが、そこにあります。

僕の場合は決して「内緒の午後にビビりまくる」ような行いはしておりませんが、人間的成長度は大きくカミさんに水をあけられていますし、男のどうしようもない面が解るだけに、「いつかの”熱視線ギャル”」には相当肩入れしてしまい、余計なゴタクを並べてしまいました。
でも、「良い詞が良いメロディーと良いアレンジに載っている」というのが、聴き手に解るただひとつのことなのです、結局。

そんな曲を、ジュリーが歌ってくれた。
それだけ書けば、良かったんだなぁ・・・。

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2010年4月 3日 (土)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「アオゾラ」

アオゾラ 「一緒にいよう」と
約束交わしたあの夏の日
変わらない青さ、変わってくキミに
何度も恋をした

(詞・hyko)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

すっかり元気になりました。
多くのみなさまのおかげなのです。実際、相当の深手を負いましたから。
僕と同じ凹み方をした方々も多いと思いますが、できれば一緒に立ち直って、元気になって。
共にジュリワンのLIVEに行きましょう
きっとですよ!

今日は、アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』7曲目に収録されている「アオゾラ」の記事を書きます。
記事の順番が「アオゾラ」で、本当に良かった。
だって、先日のNHK「songs」で僕が一番感動したのは、「愛するアニタ」の植田さんだったのです。
このタイミングで植田さんヴォーカルの「アオゾラ」を語れるのは、とても心強いなぁ。

先日コメント欄でご紹介したYOKO君のメールですけど、続きがありまして。
まぁここでは書けないような文章があって、最後の最後、締めくくりが

アニタ~!

だったのです。
やはり彼もそうか・・・。
あの日放映された楽曲の中で、ずば抜けてバンドマンの心を揺すぶった・・・それが「愛するアニタ」。
植田さんが一番カッコ良かったけど、島さんが最後にオイシイとこ持ってくんですね~、あの曲。
TVを観ながら、横のカミさんに
「やるなぁ、ワイルドワンズ!」(偉そう・・・汗)
って、叫んだもんね。
加瀬さんのソロも最高でしたし。
さすが現役ですね!バッチリ稽古してる曲は、問題なかったわけだ、うんうん。
今はそう思えます。

そして今日のお題は。
その「愛するアニタ」の激しいヴォーカルとは一転、優しさに満ちた最高に渋い植田さんのヴォーカルがフィーチャーされた、これまた名曲です。
「アオゾラ」、伝授!

意外やこの曲、アルバム中、ヘタするとジュリーファンの間では1番人気なんじゃないんですか~?
アルバムから好きな曲を3曲挙げなさい、というアンケートをとって集計したら、「アオゾラ」が第1位かもしれません。
多くの先輩ブロガーさん達も、この曲がお気に入りの御様子。

中でも、「青空」と書けるところを敢えて「アオゾラ」と表記することの意味を考えさせてくださった先輩ブロガーさんの記事は、強く印象に残りました。
その方は広島の方なので、「ヒロシマ」という表記についても教えてくださっていました。

ヒントは、”人間同士の共通の思い”ということなのでしょう。
この「アオゾラ」はきっと”誰か”と”誰か”の共通の思いを示しているのです。単に景色としての”青空”ではないのですね。
僕はこの曲の作詞者・hykoさんについて全く情報を得ていません。女性の方なのでしょうか?
作曲の亀井さんは大物でいらっしゃいますが・・・。

曲の分析の前に、恒例のアレをやっておきますか。
ジュリワンアルバム・8大感動事項!
ズバリ、「アオゾラ」が象徴しているんですけど、新たな魅力が多く詰まったジュリワンとは言え、”懐かしきGSの雰囲気”というのも大切な要素だと思うんですよ。
もしもそればっかりだったら、ここまでの支持は勝ち取れなかったと思いますが、懐かしきGSアプローチは、微量であれ必要不可欠。加瀬さんはそう考えていたはずです。
そこで威力を発揮したのが「アオゾラ」という楽曲。

ただでさえ、”懐かしい感じ”の曲なんですね。
オールディーズ時代からの、古き良き”3連符のバラード”。この手の楽曲については、「君をのせて」の記事でも触れました。

ただ、「アオゾラ」はそれだけでは語れません。
この曲1番の攻めどころ、”3連符バラード”ならではの王道コード進行を、今回みなさまに是非ともご紹介差し上げたい。

♪ 変わらない青さ  変わってくキミに ♪
              G♭   Gdim D♭        B♭7

これです!
「アオゾラ」の場合はキーがちょっと難しいので、ト長調に移調して表記しますと
C→C#dim→G→E7
という事になりますね。

この進行は、日本人がとても好むもので、多くの邦楽に取り入れられてきましたが、特筆すべきは

3連符の楽曲で使用されてこそ、威力を発揮する

という特殊性でしょう。
有名な楽曲で例を挙げると、中嶋みゆきさんの「時代」がすぐに思い浮かびます。この曲はみなさま御存知でしょうから、サビをちょっと歌えば「あぁ!」と手を打って頂けるはず。

でも、僕が是非ここでご紹介しておきたい、大好きな曲があるんだなぁ。
GSと深い関わりのあるアーティストの楽曲。

♪ 生きて     ゆく道連れは 夜明けの風さ♪
    C     C#dim  G      E7    Am   D7  G

(寺尾 聰「出航 -SASURAI-」)

ザ・サベージのベーシストであった寺尾さんが1981年に放ち、あまりの大ヒットに”お化けアルバム”とも言われた『リフレクションズ』から、大トリのバラードです。
3連符というだけでなく、ワルツというのがスゴい。
この美しい盛り上がり部、途中までなのですが「アオゾラ」と同じ進行である事が、コード表記にてお解かり頂けると思います。
「アオゾラ」を聴いて、僕は久しぶりに”3連符バラードの王道進行”に身を震わせました。
理屈は知らずとも、この部分に感動した方は多いのではないか、と思っています。

レコーディング・クレジットでは、ベースを弾いた、Bank Bandの美久月千晴さんのお名前が目を引きます。
Bank Bandは、当時まだ普及半ばであった「エコ」という概念をコンセプトに持つ、超一流のアーティストが集結したユニット。
楽譜は再生紙で作らせて頂いたのですよ~。

さて、植田さんのヴォーカルです。
先日放映された「愛するアニタ」を観て改めて思ったことでもあるのですが、このお方、キャラと歌声が合ってないですね。
それまでジュリワンについては今ひとつ乗り切れていなかったカミさんが、アルバムを聴いて、「この内容に植田さんのトークがあるならLIVEが楽しみ」と、やや乗り気になってきました。
まったく同感で、植田さんのおしゃべりはLIVEの重要な核となるやもしれません。ジュリーはあんまり喋らないかも、ですよ、お姉さま方。

そんな植田さんがひとたび歌い出すと、ハスキーというだけでなく、懐の深い叙情性で魅了させられます。
普通カスレ声系のヴォーカリストには、尖った印象を受けるものですが、植田さんの場合はとても優しい。
う~ん、てことは・・・キャラと歌声は実は合ってるのかな?

この名曲、ジュリーが歌ったヴァージョンってのも、想像すると背筋に電気走りそうですが、LIVEでは多くの方が植田さんのヴォーカルに癒されることでしょう。
ワイルドワンズの演奏を「songs」で予習できて良かったなぁ。彼らの演奏も、とても楽しみになってきましたもの。

最後に。
本当は来週の「songs」までには全曲のアルバムレビューを終えたかったけど、ギリギリ間に合わないような気がしています。

だから、ちょっとだけ先に書いちゃいます。
これは、「FRIENDSHIP」の記事で書きたかったことなんだけど・・・。
次回の「songs」、見どころを予想!

アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』からは、「プロフィール」「FRIENDSHIP」の2曲が放映されるようですね。
まずは「プロフィール」、大っ好きな曲だけど、まぁ色々な意味で覚悟はできています
それで良いのです。
だって、拙ブログ左サイドの”検索フレーズランキング”を御覧ください。
涙がこぼれちゃう」、1位2位独占ですよ。
これは明らかに「songs」の影響。
僕は以前記事にも書きました。「プロフィ-ル」をどんどん巷で流して欲しい、と。
きっと来週は「プロフィール」の検索数が爆発するでしょう。
ということで。

でもね。
「FRIENDSHIP」については、油断禁物だと思うんだ。
変な覚悟はしないでおきます。
鉄人バンドへの男気がある一方で、ジュリーには加瀬さんへの男気もあるはずだから。

「今夜だけの、スペシャルヴァージョンでお届けします」

そんなナレーションが、僕の頭の中ではすでに流れちゃってます。
柴山さんがアコギのアルペジオ、下山さんがエレキ。
泰輝さんのピアノ、GRACE姉さん渾身のフィルイン。
ワンズのみなさまが、スタンディング横並びでコーラス。
加瀬さん、目が真っ赤。

なんてことになったら、どう?
期待し過ぎかな?

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2010年3月31日 (水)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「僕達ほとんどいいんじゃあない」

東京タワーに明かりがついて
一番星がその上に
「あの星とって、君にあげる」と
言ったら ふき出した

(詞・加瀬邦彦)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

予告よりも早い更新です~。
とにかくスゴイです、『JULIE WITH THE WILD ONES』は。
まったく飽きません。
毎日毎日、通勤時間、移動中、帰宅後、何度も繰り返し聴いているというのに・・・。

しかも、まだまだ新しい発見があります。
既に書き終えた収録曲の記事に、この後に及んで手を加えたくなるほどです。語りつくしてしまいたい。
プロフィール」の美しいコード進行(「メジャ~リ~ガ~なんざ~♪」の箇所でA→G#m7→F#m7と下降していく感じがシビレる)とか、「熱愛台風」の3本目のエレキギターは下山さんであろう、とか、「Oh Sandy」の間奏リードギターがGSテイストなんだなぁ、とか。

そこはグッと堪えて、今日からいよいよアルバム後半。
楽曲記事の前に、ますはお約束の「ジュリワンアルバム・8大感動事項」から参ります。
今回採り上げる感動ポイントは・・・。

新しいCDにジュリーの写真がパッケージされるのは、2000年のアルバム『耒タルベキ素敵』以来・・・何と10年ぶり!

これですわ。
長いファンの方々にとっては、かなりの大事件ではなかったですか?

裏ジャケはほとんどシルエットだけですが、CD盤の中敷部に、あまりにもカッコ良いジュリーの立ち姿が~。
これは、「渚でシャララ」PVの際の写真ですね。
何か重要な打ち合わせのタイミングだったのでしょうか、ジュリーもワイルドワンズのメンバーも真剣な表情です。
ジュリー、加瀬さん、島さんの3人が左前方向を見つめていますね。そちらにモニターがあったのでしょう。

この写真のジュリーのカッコ良さにつきましては、多くの先輩ブロガーさんが画像付きで採り上げて熱く語っていらっしゃいますから、僕としては敢えて、別の角度からこの写真を考察してみたいと思います。

これ、PV撮影現場のショットである事は明らかですから、ワンズのメンバーが演奏姿を披露しようとしている楽曲は、当然「渚でシャララ」ということになりますよね。
そんな前提のもと、弦楽器のお三方をじっくり観察してみますと・・・。

File04921_2

↑ ベースの島さん。
   4弦5フレットを押さえています。これはAコードのルート音「ラ」のポジションです。「渚でシャララ」のキーはAですからね!

File04922

↑ ギターの鳥塚さん。
  島さんや加瀬さんが「準備オッケ~!」の面持ちでスタンバっているのに対し、鳥塚さんは「もう1回、おさらい!」といった雰囲気です。
 押さえているコードはE。
 「渚でシャ~ララッ♪」のA→Eの部分を再度試し弾きしてるんじゃないかな?

File04923

↑ 代名詞でもある12弦ギターの加瀬さん。
  このフォームを見て、僕はとても嬉しかった!
 出している音はAの和音なのですが、変則的なフォームです。ひとさし指で1弦と2弦の5フレットをセーハ、中指で3弦6フレット、薬指で4弦7フレットを押さえています。Fのローコード・フォームをそのままずらして、5フレットを起点にしてAの和音を出しているのですね。
これはコードがAだからこそ威力があるフォーム。何故なら、開放の5弦をルート音として併用できるからです。加瀬さんは12弦ギターですし、この押え方だと高音から低音まで網羅した厚い響きが得られます。
空いている小指を使って、susu4などのアレンジメント・コードを細かく挿入することもできます。
そして、これは指の長いプレイヤーに限られるのですが、親指で6弦5フレットを押さえてルート音を倍増!という荒業も可能。加瀬さんの親指は見事に6弦に届いていますね~。

何が嬉しかったのかと言いますと、僕もよくAで同じ押さえ方をするんです(僕も結構指が長いんですよ)。
僕はビートルズの「涙の乗車券」でこのフォームを覚えました。加瀬さんもそうだといいなぁ・・・。


今日はそんな加瀬さん、作詞・作曲のナンバーがお題。
アルバム6曲目。ジュリー曰く「笑うで~」な、ジュリワン・ツアー・タイトルにもなっております。
「僕達ほとんどいいんじゃあない」、伝授!

アルバムの中ではこの曲だけ、リズム隊が生音ではありません。
ドラムスは打ち込み、ベースは打ち込みではなく、キーボードのベース音パッチで実際に弾いているものと思います。
ただ、打ち込みとは言っても、これもまたある意味昭和の音なんだよね~。ドラムスのプログラミングは、わざとチープに仕上げていますよ。
こういったシンプルかつちょっとオシャレなリズムの打ち込みに合わせて囁きかけるように歌うスタイルは、80年代の懐かしい匂いがします。

思わずニヤニヤとしてしうような、加瀬さん自身によるほのぼのとした歌詞。
この詞について実は僕には大胆な仮説がございまして・・・。これはね、まだ記事にしていない「いつかの”熱視線ギャル”」の考察と密接な関わりがあるものですから、その時に。近日の機会をお待ちください。

今回は何と言っても加瀬さんのヴォーカル。ソコに触れないわけにはまいりません。
何人かのJ先輩が仰るように、確かに憂歌団を思い起しますね。
でも、僕がこの曲を初めて聴いた時に連想したのは、意外なバンドの意外なナンバーでした。あまり有名な曲ではないけれど

ユニコーンの「Oh, What a beautiful morning」。

♪白衣のマドンナ ルミさんの検温♪

・・・だったかな?そんな詞なんですけどね。
穏やかでコミカルで、それでいてちょっぴり切ない老境男性の独白。ヴォーカルのみならず、そんな歌詞の雰囲気も「僕達ほとんどいいんじゃあない」と似ているなぁ、って。

声質は全然違うのですが、歌唱に向かうアプローチがね・・・。
”年齢かえりみず、ちょっとエッチに駄々こねる”という共通のコンセプトがそう思わせたのかもしれません。
それにこの2曲、メロディーやアレンジの狙うところ、つまり曲作りの際にインスパイアされた洋楽のオマージュ元が同じであるように僕は想像するのです。

それは、ビートルズの

「ホエン・アイム・シックスティー・フォー」
「ハニー・パイ」

このあたり。
迫力あるロックンロールや、至高のバラードが身上のポール・マッカートニーが時折見せる得意技のひとつ。
懐古的でのどかな曲調とアレンジ、そして甘えるようなヴォーカルがこれらの楽曲の特徴です。
加瀬さんはもちろんのこと、「Oh, What a beautiful morning」の作曲者である奥田民生さんも、ビートルズの引き出しをたくさん持っていますから。オマージュの源が重なっても不思議ではありません。

加瀬さんは当初、「僕達ほとんどいいんじゃあない」をジュリーに歌ってもらおうとしたそうですね。
おそらく、先に挙げた2曲での、ポールの甘えん坊ヴォーカルのような感じで歌ってほしかったんだと思います。良くも悪くも、ポールのこの手のヴォーカルには、自然と”可愛らしいいやらしさ”が加味されるんですよ。
それをジュリーに求めたんじゃないかなぁ。
「もっといやらしく」と、さかんにジュリーにリクエストしていたようですからね。

結局ジュリーが「うまく歌えない」とのことで、加瀬さん「自分で歌っちゃえ」と。
いいんじゃあない?
加瀬さんのヴォーカル。
熟年カップル(或いは、長年の友人)の、さりげない求愛の歌声。
特別でなくても、風格感じる♪

アルバム全体を通して、「ちょっとリラックス」的な位置に収録されているのがまた良くて。無論、加瀬さんヴォーカルになったが故のこの配置、だとは思いますが。
ジュリーが歌っていたら、アルバムの核にもなりかねない(笑)。なんたってツアータイトルですからね~。

キーはホ長調で、転調こそしませんが複雑な進行、コードチェンジも激しいです。加瀬さん、さりげなく刀を抜きましたね。
LIVEで、加瀬さんはギターを弾きながら歌うのでしょうか。加瀬さんがBaugのコードをどんなフォームで押さえるのか、興味深々です。

あとこの曲、淡々と演奏しているようですが、LIVEでは2本のギターに注目です。
おそらく右サイドから聴こえるパートが柴山さんになるでしょう。コードカッティングもボサノバ風、さらに間奏ギターソロは4小節と短いのですが、この音階はぬお顔率高し!と見ましたよ。
そして、下山さん担当になるかと思われる左サイドの音。これ、ひょっとしたら下山さん、スティールギターを弾くかもしれません!寝かせて弾く、ハワイアンなギターね。
下山さんは過去のジュリーLIVEでも、スティールギターを弾いたことがありますよね。この曲のLIVE、僕は密かに下山さんガン見に期待しています。
最初から最後まで泰輝さんが活躍するのは当然でしょう。キーボードの音色は2種類を使用かな?またまた大忙しですね。

さてさて、注目はジュリーですよ。
この曲でジュリーは何をするのか。コーラスと言っても、出番はほとんどなさそうですし・・・。
僕としては、タンバリンを持ってほしいなぁ。
後追いながら、過去の映像を観たり音源を聴いたりしますと、タイガース時代からジュリーのタンバリンには、どの曲でも強烈なグルーブ感がある事がわかります。特にLIVEはね!
一方のタンバリンの雄・シローはただ叩いてるだけのようでしたが・・・。

キッス音は加瀬さんが自分でやってしまいそうな気がしますが、お姉さま方はジュリーに期待しているのではないですか~?

さぁ、そんなこんなで『JULIE WITH THE WILD ONES』、アルバム発売から1週間、今日はいよいよNHK「songs」ですね。
今日の放映はGS時代のヒット曲中心のラインナップで、アルバム収録曲は流れないかもしれませんが、シングル「渚でシャララ」だけは観れるようです。
みなさま、どうかお見逃しなく!

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2010年3月28日 (日)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「Oh Sandy」

街から10マイル
水平線はゴールド
満ち始めた 波打ち際
君が手を振る

(詞・GRACE)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

音楽劇「新・センセイの鞄」の評判がよろしいようでございまして。
僕はLIVE以外のジュリーはちょっと控えよう、という考え方でおるのですが、勿体ないですか・・・。

今日は、僕等自身は観劇しないにも関わらず、お芝居を観に上京してきたJ先輩にランチを招かれ、お昼前にカミさんと新宿高島屋まで出かけました。
ま、場所がズバリの場所だったからでしょうか、いつの間にやら人数も増えておりまして楽しいひととき。
みなさま当然、アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』をヘビロテ中でいらして、僕の記事にも目を通して頂けているようで・・・ありがとうございますありがとうございます。

そんなワケで、アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』伝授シリーズ、今日も元気に続きます。
まずは恒例、”ジュリワンアルバム8大感動事項”から~。

ひょっとしたら覚えていらっしゃる方も。
僕、どこかの記事のコメントで
”mumoの試聴コーナーだと、ベースが聴きとれない曲がいくつかある。心配だ~!”
と、書きました。

せっかく「渚でシャララ」シングル盤で、ジュリーwithザ・ワイルドワンズという新たなバンドサウンドを世に知らしめたのだから、アルバムで一般の方がとっつきにくいベースレス・レコーディングは、新しいリスナーの初見イメージをマイナスで固定してしう恐れがあります。今回だけは、それは避けて欲しかったのです。

杞憂でしたわ~。
全曲ガツンとベースあり(「僕達ほとんどいいんじゃあない」だけ、キーボードで弾いてますけどね)の完璧なポップ対応サウンド!
あらためて、「このアルバムはマジに行ける!」と思えました。

しかし。
大先輩のいわみ様もこちらで書いていらっしゃるように、もはやオリコンチャートに一喜一憂する必要はない・・・そんな内容のアルバムであるように思えてもきました。
本当に優れた作品が評価されるのは当然のこと、夏を越えてロングセラーに、それもまた良し。
僕としては、このアルバムの素晴らしさを、世の中に向けてできる限り詳しく発信するのみですね!

それではまいりましょうか。
今日はアルバム5曲目です。
ハード・ロカビリーなナンバーは、実は加瀬さんの作曲において隠れた得意技。
しかもこのパターンの楽曲は、LIVEでジュリーの熱唱モード・スイッチが入ること間違いナシです。
「Oh Sandy」、伝授!

この曲も、ベースがとても重要。
大体、シャッフルリズムの2ビート系、4ビート系の楽曲は、ベースの果たす役割ってすごく大きいんです。あるとないでは、聴こえ方がまるで違います。
僕はアルバム『俺たち最高』収録の「NOW HERE MAN」には今でも違和感があるんです。素晴らしい楽曲だと思うだけにね。
少なくともレコーディング音源に関して、ああいったリズムの楽曲には、ベースが必要なんですよ。


すべてのジュリーナンバーの中で、最もベースが素晴らしい楽曲を挙げろと言われれば、僕は文句なく「ジャンジャンロック」ですし。
これまたロカビリー・タッチのナンバーですよね。

さて、ジュリーにとっては、そんな久しぶりのロカビリーナンバー。「Oh Sandy」は上田さんのイカしたベースも活躍し、完成度の高い仕上がりですが。
左右のギターが、ブランキー・ジェット・シティーばりの、ハード・ロカビリーなんだなぁ。
特に左サイド。2番から忽然と姿を現すカッコ良さが、現在のミュージックシーンでは、ロカビリーの王道とされる技なのです。
右サイドのギターは、「I wanna hold you~♪」と歌いながらAmを起点にエロエロな雰囲気を醸し出す部分で、サウンドのエロ化に激しい小指のフォームチェンジで一役買っていますね。
大体は、楽曲全体を通じてベースとドラムスの噛みで伴奏をこなし、ギターは生き物のように変幻自在に動き回る、というのがハード・ロカビリーの醍醐味と言えます

まさにこのタイプの楽曲が、過去のジュリーナンバー、しかも加瀬さん作曲の作品群の中にあったことを、みなさま覚えていらっしゃいますか?

アルバム『耒タルベキ素敵』収録の「ねじれた祈り」。

「Oh Sandy」は、同じハード・ロカビリー・タッチというだけでなく、GRACE=加瀬邦彦コンビの続編だったというワケですね~。

GRACE姉さんの作詞の素晴らしさは、視線に何のてらいもなく、それでいて歌い手(ジュリー)への憧れがあり、キラキラとしたフレーズを織り交ぜられている点です。
「逆光線のライン♪」とか。
そういったキラキラなフレーズをいくつか組み合わせて、「歌」へと昇華させていく作詞作業。GRACE姉さんはドラムス演奏にせよ作詞にせよ、”決して器用ではないが、素直な歌心”を持っているのが最大の強みではないでしょうか。
それはそのまま、”加瀬さんと手が合う”ことにも繋がると思います。

その加瀬さんの曲。上田さんのアレンジもゴキゲンな仕上がりで。
イントロは、Am→Bm→C→D(add9で弾くと雰囲気が出ます)と刺激的なカッティングで導入。このアレンジはザ・バーズの「WHY」じゃないかなぁ。

ならば普通のエイト・ビートか・・・と思わせておいて、3小節目でドミナントのE7に着地した瞬間、この曲がロカビリーのリズムである事が初めて解る仕掛けです。

ロカビリーと言えば、そりゃもうプレスリーの時代から・・・。60年代のマージービートにも大きく影響を与えているワケですし、したがって日本のGSにも要所要所で取り入れられていたはずです。
僕はタイムリーでないのでその空気感は掴みにくいのですが、この曲を「GSっぽい」という先輩方の評価には、そんな下地があるんだろうなぁ、と思え、とても共感できます。

「Oh Sandy」のキーはイ短調(Am)です。登場するコードはシンプルながら、うねりのある進行(F→Gの部分だけ譜割が長かったりとか)。
短調のロカビリーは、ストレイ・キャッツの影響もあったエキゾチックス時代からジュリー・ヴォーカルとの相性は抜群ですし、「Oh Sandy」はアルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』収録曲の中で最もLIVE映えする可能性があります。
楽しみですね~。

ところでこの曲、ジュリーのエロティックな
♪I wanna hold you~♪

の後に、もう一発
♪I wanna hold you~!♪

と、メチャクチャ渋い追っかけコーラスがあります。
曲が進むに連れてどんどん爆発していくコーラスなのですが、これ、誰ですかね~。
植田さんのようでもありますが、少し声質が違うような。
鳥塚さんではないようですし、加瀬さんがまさか。
島さん・・・?
僕は詳しく知らないのですが、島さんって「愛するアニタ」のシャウトの人なんですよね?

とにかくこのコーラス担当のお方、終盤のハジけっぷりは見事です。
エンディング間際の

♪Oh sandy~!♪

ジュリーを食ってしまいそうなシャウトが、次曲「僕達ほとんどいいんじゃあない」の脳天気なほのぼのした感じを引き立てているような気がします。
『JULIE WITH THE WILD ONES』というアルバムは、そんな各曲の収録順、繋がり方がまた素敵。
どの時代でも大切な、名盤の条件ですね。

さてさて矢継ぎ早に『JULIE WITH THE WILD ONES』から3曲連日の記事更新をさせて頂きました。
もちろんこれから、残り5曲も続けて記事を書くのですが、明日からはキビシイお仕事が待っております。
月末はね~。色々とね~。
次回更新はsongs観た後になるかなぁ。

てなことで、みなさま。
3月31日のsongsをどうかお忘れなく~!

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2010年3月27日 (土)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「熱愛台風」

軋む骨まで
裂かれるような恋になろうぜ
号泣する恋になろうぜ

(詞・沢田研二)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

引き続きアルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』よりお届けいたします。
楽曲の前にまずはお約束の”ジュリワンアルバム8大感動事項”からまいりましょうか。昨日の「プロフィール」では、ワイルドワンズのみなさまのヴォーカルパートが素晴らしい、という点を挙げましたが、さて今回は。
これ、本日のお題とあまりにも密接に関係する、重要なポイントでございます。

鉄人バンドを引き連れ!
ソロモードのジュリーが炸裂する!

『JULIE WITH THE WILD ONES』の豪華ヴァラエティーに加味された嬉しい刺激、絶妙のスパイス。そんなソロモードのロッケン・ジュリーナンバーが2曲も収録されているのですよ~。
今日はその中から、ガツンと昂ぶるアルバム4曲目。
老いて盛んな「熱愛台風」、伝授!

作詞・作曲・沢田研二
ドラムス・GRACE
ベース・上田健司
ギター・柴山和彦、下山淳
キーボード・泰輝

おぉ~~~!
ジュリーオリジナルの楽曲で、鉄人バンド、上田さん、そしてワイルドワンズが酒池肉林の大共演だぁ~!

GRACE姉さんのオープン・ハイハットのカウントに始まり、柴山さんのゴキゲンなフレーズと、下山さんのアコギ(「Pleasure Pleasure」とまったく同じ鳴りなんだこれが)がガッシャンガッシャンのストローク。
お~っと、泰輝さんは「BAMBINO EXCUSE」ばりの音色でホンキー・トンクなオルガン、そして上田さん職人芸のベースが絡みます。
ジュリーのさわやかでハートウォームな恫喝ヴォーカル(なんだろうねその表現は)を、ワンズのみなさんが愉快なコーラスで追っかけるっ!

・・・待てよ。
このコーラス、LIVEでは僕らも参加して追っかける・・・のでしょうか?

どれどれ。
コーラス部分の詞は、と・・・。
なんたって、作詞がジュリーですからね~。おそるおそる・・・。

♪瞳も唇も指も♪

うぉ~、老いて盛んな、エッチなジュリー節。
視線で舐めるパーツが、若造とは一味違うワケです。リズムに載って発音すると、楽しいですね~。

♪別離がつらくて♪

歌詞カード読んで自然に「わかれ」と発音転換してしまいましたが、ストレートに「べつり」と読ませるのね。ジュリーらしい。うんうん。

♪神経も脳も六感も♪

おお、いいじゃないですか。メロディーの抑揚に合わせて母音が伸びるフレーズ。「ロッカン」って語感も気持ち良いですし。

♪ふたりじゃ熱くて♪

良いですね、歯止めの効かない感じ。

♪夜は家で男料理♪

はは・・・独特ですね~。

♪触れ合おうイチャイチャ♪

・・・・・・。
う~む、もしも客席でコーラス参加してるのが自分一人だった場合、ここは結構恥ずかしいぞ・・・大丈夫かなぁ。

まぁ、ハナから参加することばかり考えている僕こそがオカシイですか。
「台風(タイフ~ン♪)」って箇所のハモりは、是非参加したいのですが・・・。

「熱愛台風」はこのように、”いつものジュリー”色が満載の愉快でハッピーな歌詞が、これまた”いつものジュリー”的に一筋縄ではいかないトリッキーな構成の曲に載せて展開するという、ジュリーファンにとって安心感いっぱい・ずっぱまりの名曲です。
さらに、これは多くの先輩方もそうかと思いますが、イントロの瞬間に「おぉっ鉄人バンド!」という、耳馴染んだ演奏がタマランのですね。

上田さんは鉄人バンドと相性抜群ですよ。アレンジも、メンバーの個性を重視しています。
イントロのギターフレーズ部は最初「E→E7、E→E7」とハードにコード進行するのに、フィルイン後の5小節目から、同じギターフレーズに合わせているにもかかわらず、コードが「E→A7」とポップなニュアンスの進行にチェンジしています。初めて聴いた時にはドキッとしました。
難しい箇所ではなく、何てことのない、それでいて必ず聴き手の耳に残るであろうポイントでこのひとひねり。細かいですが素晴らしいアレンジセンスです。
おそらくジュリーが作った「E→A7」のイントロ・コードに、上田さんがハードな4小節分の導入部を加えた、って感じでしょうね。

詞のヤンチャが目立つ曲ではありますが、相変わらずジュリーの作るコード進行は面白い。
型に嵌った着地をせず、小節のキメの部分で放り出すような進行なのです。

♪ア~、情熱のキスだ~♪
   A       B7  E        G#7

このG#7の放り投げ。
普通ホ長調の曲でG#7使う場合はもっと露骨に泣かせ進行にしちゃうモンだけどねぇ。やっぱり、そのあたりがジュリー作曲の魅力ですか。
僕はこの部分、同じホ長調のナンバーで

♪ゾッコンなんだよね~♪
   E                     G#7

ってのを思い起こしましたけどね。
でもこれは、他にモロ同じな進行のジュリーナンバーがある!と僕の貧弱な記憶をたよりに脳が叫んでいます。思い出したらまた註で書きますわ~。

ヤケクソのようなサビメロ(褒めてます!)もジュリーらしくて、これ、音階だけで言うと

♪ミミミミ~ミミミ、ミミミミ~ミミミ~♪

オイオイ、ってなもんですが、コード進行は

♪シビレル~ような、恋にな~ろうぜ~♪
   C                       A               E

ギターを弾く方はお気づきかと思いますが、ここに登場する「C」「A」「E」の3つの和音をローポジションで弾いた際、コードフォーム上、1弦はすべて開放なのですね。
1弦の開放音は、高い「ミ」です。つまり

ジュリーはこの曲をギターのローポジションでコードチェンジしながら、1弦の音を耳で拾ってメロディーをつけた

という作曲手法の証明ができてしまうサビなんです、これは。
ずっと伸ばしていた爪を切ってギター弾いて
「エエ曲ができたんですよ~」
と、プレプレツアーのMCで報告してくれたのは、どうやらこの「熱愛台風」ですかね~。いやぁ、エエ曲ですよ、ジュリー!

それにしても、ここへきて鉄人バンドは本当に、ジュリーも含め、「このメンバーでないと出せない!」というバンドとしての音を確立してしまいましたねぇ。
長く長く、続けてほしい。
そんなことも感じさせてくれた『JULIE WITH THE WILD ONES』の4曲目。
こんな収録曲が入っていることもまた、予想以上の歓びでした。
つくづく、懐の深いアルバムですよね~。

そうそう、最後にひとつだけ。
歌詞で

♪Ah 熟愛テクだ~♪

という、いかにもジュリー!ってフレーズが出てくるじゃないですか。
これ、「熟愛手管」のダブルミーニングですかね。
深読みし過ぎ?

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2010年3月26日 (金)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「プロフィール」

子供の頃と変わらぬものが
今僕に語りかける
まだ見ぬ場所が 次のページが
「歩みを止めるな」と言う

(詞・Sunset Oil)

~from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』は、期待を遥かに上回る大名盤でした。
誇張ではありません。
加瀬さんの自信。「ええのができましたよ」という、「歌門来福」でのジュリーの報告。よくよく思い起せば、当然の傑作。
つまり、僕の予想が甘かっただけです。
「難しいことは考えず、楽しめればそれでよい」
と、その程度の心構えしかなかったのでした・・・。

客観的に、超良質なアルバム。全曲にそれぞれ違った良さがある見事なヴァリエーションです。
贔屓目なしに、「これは売れる」と思える・・・これは初めてタイムリーでジュリーの新音源を聴いた『Pleasure Pleasure』の時の、一人のジュリーファンとしての「名盤!」という感想とはまったく異なる意味のものです。
『Pleasure Pleasure』は、新規ジュリーファンとしての大切な宝物。『JULIE WITH THE WILD ONES』は、ジュリーやワイルドワンズのファンを問わず、一般世間に対して、「聴いてくれ!」と思ってしまう作品なのです。

予想を越えて感動したポイントはいくつも挙げられます。
僕はこれから時間をかけて8曲分の記事を書きますから(1曲目「涙がこぼれちゃう」、2曲目「渚でシャララ」については、シングルリリース時にすでに書いておりますのでどうかあらためてご参照のほどを)、8つの感動ポイントを小出しにその都度書いていきますが、まず1つ目。
これは良い意味で一番裏切られた点なのですが、鳥塚さん、植田さん、そして加瀬さんをフィーチャーしたリードヴォーカル・パートが、とても素晴らしくポップであった、ということ。
ワンズのみなさんは、日々ヴォイストレーニングに励んでいたそうですね。それを知っていながら、僕はその成果のほどを軽く予想し過ぎていました。
できればアルバム収録曲すべて、最初から最後まで、ジュリー一人のリードヴォーカルで行ってほしいなぁ、なんて考えていたのです。
アルバムを聴いた今となっては、そんな自分が恥ずかしい。穴があったら入りたいですよ。

この埋め合わせは、微力ながら全力で各曲の記事を書き、少しでも多くのみなさまにこのアルバムの素晴らしさを伝え、一般の方々にも興味を持って頂くこと、それしかありません。
頑張ります。

さて、収録曲の中で
「ジュリー一筋で歩いてこられた先輩方には、ひょっとしたらイメージがずれてとっつきにくいのかもしれない」
と僕が考えるナンバーが2曲あります。
「プロフィール」と「いつかの”熱視線ギャル”」。
全曲素晴らしいという中で、僕はこの2曲を猛烈に推します
これまでジュリーや加瀬さん達に興味のなかった若いリスナー層に訴えるパワーを、充分に秘めていると考えたからです。
・・・いや、「若い」というのも少し違うのかな。

ここで、「歌門来福」2月5日でのジュリーのMCを思い起してみましょうか。

「レコード会社は、”ジュリーwithザ・ワイルドワンズのターゲットは40代”って言うのよ。そんなん、団塊の世代に決まってるじゃないですか。人数多いトコ狙わんでどうするの~!」

その時は僕も、「仰せの通り!」と思いました。僕はその時すでにシングル「渚でシャララ/涙がこぼれちゃう」を聴いていたわけですが、それを踏まえてなおかつ、ジュリーの言う通りだ、と思ったのです。

ところがアルバムを通して聴いてまず、「これは、GS回帰以上に、まったく新しい、ジュリーや加瀬さんなりのバンドスタイルの音だ」という印象を受けました。
その点を考えるうちに引っかかってきたのが、「プロフィール」「いつかの”熱視線ギャル”」の2曲でした。

エイベックスさんは販促のプロです。
ジュリーやワンズへの思い入れ抜きにして、現実に完成したアルバムを吟味し、どの層にウケる音に仕上がっているのか、をプロの耳で判断した結果「40代」という答えが出たのではないでしょうか。

40代・・・ズバリ僕ですね。

例えば、僕が東京ドームにも行かず、相変わらずのまま2010年を迎えていたと仮定してみます。
当然、このブログもじゅり風呂にはなっていません。先輩方の熱い声を聞くすべもなく、ジュリーが今何をやっているかも知らない状態だったでしょうね。
そんな時、ふとどこかで「プロフィール」か「いつかの”熱視線ギャル”」を耳にしたとしましょう。

「おっ、イイ曲!今はこんなのが流行ってるのか~」

とまずは軽く反応・・・のちに

「あれ、もしかしてジュリーじゃないのこれ?」

と気がつき、色々と調べてみる。
で、アルバムを買ってみる。感動。
YOKO君を誘いLIVEに行く(たぶん川口ですね)。
さらに感動して、二人して「ジュリー祭り」DVDを買ってみる。

ハイ、40代が2名、一丁あがり。

もちろんこれは、”新しいリスナーを獲得”という狙いにおけるターゲット層の話です。
まずジュリーと同年代の方々が聴いて感動できる、というのはセールスのスタート地点、前提としてあるのではないかと。
ずっとジュリーやワンズを追いかけてきた先輩方は、販促が無くともついてきてくださいます。
GS世代で音楽から離れていた方々も、「渚でシャララ」で戻ってきてくださる。エイベックスさん、そして加瀬さんの狙いは、その先の開拓層にまで視野にあるのではないでしょうか。

とすれば、次の作戦として上記2曲のうち「プロフィール」を巷でガンガン流してほしい、と僕は思います。
メロディーと音作りで新規ファンをとりこめますし、この曲は、加えてじっくり聴いた時に、多くの幅広い層に共感を呼ぶメッセージがこめられた詞を擁しているからです。

今日はそんな期待感を込めて、アルバム3曲目「プロフィール」の記事を書きます。
しなやかな飛翔、湧き上がる勇気、明日への決意。
実は最大の謎を残したまま、伝授!

とにかくですね。

作詞・作曲・Sunset-Oil

このクレジットが大きな謎としてまだ残っているのです。
僕はそのお名前(ユニット名?)に何の心当たりもなかったものですから、検索しまくりましたが・・・。
何もわからない。
いつも頼りにしている博識の先輩方数人にお尋ねしてもわからず、会社で聞きまくり調べまくっても、わからない!

アルバム制作に臨んで、加瀬さんが聴いたという、知られざる200曲の中のひとつ?
それとも、特別な企画作曲?

無名の若手なのか、未だ僕の知らない実力者でいらっしゃるのか。
いや、まさか覆面クレジットの超大物?

わかりません。
僕のつたない想像では、30代~40代の男性アーティストの作品なのではないか、と愚考しておりますが・・・。
この詞の主人公が、それくらいの年代として描かれているように思えるんですよ。

”折り目のとれたスーツ”を着て、通勤途中の海岸線で”波待ち人をうらやんでいる”、社会に出て慣れてきた頃の年代。
そんな働きざかりの年代が、しばし若かりしヤンチャな少年時代を振り返り足を止めますが、「まだまだこれから!」と気合を入れ直す歌のように思えます。

「プロフィール」というタイトルの付け方、また”バッティングセンター”→”特大のホームラン”→”メジャーリーガー”という独特の連続するフレーズ・センスは、オーガスタ系の「ス」がつく大物アーティストの得意技を連想します。
また、流麗に流れ、うねるようなロングトーンのメロディーは、「レ」がつく大物バンドの作風を彷彿させますが・・・どうなんでしょう。

謎は、謎のまま♪

しかしですよ。
この詞をジュリーwithザ・ワイルドワンズが歌うと、風景が変わるのです。だって、”プロフィール”のページ数自体が違う(人生経験特記項目が多いってことですわな)のですから、時空が飛び、スケールが大きくなります。
これは、「涙がこぼれちゃう」の記事で書いた感想とも重なります。

では、ジュリーwithザ・ワイルドワンズの歌によって、新たにどんな風景が見えてくるのでしょうか。
恒例の深読み(個人的な妄想とも言う)で、まずはその辺りを紐解いてまいりましょう。

初めて聴いて、その場で泣けてしまう楽曲なんて、滅多にないですよね。
僕はこの「プロフィール」を初めて聴いて(すまん、アルバム到着即、いきなり3曲目から聴きました。そういう人多いかも・・・。今はちゃんと最初から通して聴いています)、カミさんに隠れて泣きましたよ。

ホント、泣ける・・・!
泣ける曲というのがどんなナンバーなのかは人によって違うと思いますが、そうそうあることではない・・・いや、僕も年をとったってことなのかな?

「年のせいか、涙腺が弱くなってな」

なんて、ジュリーもドームで言ってましたっけ。

では、年をとるとは、どういうことなのでしょう。若い頃と比べ、何が変わっていくのでしょう。

♪傍若無人に酔う 大器晩成を希望
  思った通りには行かなかった ♪

1番のこの詞。

♪傍若無人に酔う♪
これ、周囲迷惑かえりみず酔っ払ってる、なんて意味では決してないですからね(いや、深読みですからご容赦を)。
若い少年の頃には未来に恐れを持たず、「俺は俺だ」「俺がルールだ」・・・極端に言えばそんな世界に住んでいます。そんな前途洋洋たる己の存在にに陶酔する(酔う)ことが簡単にできるのです。

♪大器晩成を希望♪
そして少年は、青年となり、社会に出てゆきます。
「うん?俺の人生、考えていたのとは少し違う。いつの間にか皆と同じように、世間に右倣えか?・・・いやいや、まだまだ、俺はこれからだ」

♪思った通りには、行かなかった♪
しかし時は流れ、気がつけばこんな年に・・・。
昔は明日のことなんかまったく考えなかった。遠い未来を考えれていれば。
でも、そんな事を語り合ったあの頃の仲間は皆、何かが劇的に変わる”明日”を待ちわびていたんだ。

・・・考えてみれば、今でも俺はそうなんじゃないか。

そう考える自分は、素敵な大人になったんじゃないか。

♪あの日の空と あの日観た夢
  あの日の僕はここにいる ♪

年をとるということは、物事が解ってくるということ。
う~ん、こりゃ当たり前の事です。先輩方はとっくに境地、その域には達していらしゃるかもしれません。
しかし、僕はこの「プロフィール」という曲を聴いて、初めてそんなことを考えたのでした。
年をとることが、怖くなくなった・・・楽しみにすらなってきました。

そんなことを気づかせてくれたのは、卓越した詞曲もさることながら、この素敵過ぎるヴォーカルの威力のおかげですよ。

Aメロのヴォーカルは鳥塚さんです。
鳥塚さんのパートは、何度か拙ブログで解説したことのある、ダブルトラック処理。”ひとりで2度歌う”パターンではなく、”ひとつのテイクをコンマ数秒ずらして重ね合わせる”という、ジュリーナンバーで言えば「バイ・バイ・バイ」で使われたレコーディング技術ですね。
いいです、このヴォーカル!
ちょっと足を止めて若かりし頃に思いを馳せている「普通の」おじさま。
Aメロは、1番にしろ2番にしろ、そんな人物像が浮かびあがる歌詞です。それをこの鳥塚さんのヴォーカルは何の脚色もなく自然に表現しています。

鳥塚さんは今回のレコーディングではかなり苦労された、という話もあったようですが、例えば1番2回し目の

♪ あいつらどうしてるかな
   地元はあいかわらずかな ♪

の「かな」を「かな~♪」と抑揚をつけるのが鳥塚さんにならではの独特のアプローチで、とても良い!楽曲の求めるところと合っています。

で、そんな鳥塚さんの歌を聴きながら、
「ジュリーは?ジュリーの歌は、まだ?」
と身構えておりますと

♪ 明日のことなど どうでもよかった頃 ♪

ジュリーきた~!!ぐぁ~カッコえ~~~!!

ここはメロディーのニュアンスも一変する重要な箇所。
大体、キーがEの曲でC#m→B→Aとサブ・ドミナントに向けて降下していく進行(アコギのストロークにとても合う)は基本的にそれだけで泣けます。
それがガツ~ン!とこの曲お初のジュリーヴォーカルでカマされるわけですから。

「どうでも良かった頃♪」の「頃」を、「こぉろ♪」と段階をつけて語尾着地するのが、今も昔も変わらぬジュリーの必殺技です。
最後の「ぉろ♪」が果てしなく色っぽい。この歌唱法はジョン・レノンとジュリーが双璧だと僕は思っています。

でねでね、ここでは、「おぉっジュリー来たぁ!」とリスナーの脳と身体が反応した直後のタイミングにズバリ合わせるかのように、

3拍目の裏から突然キーボードが噛んでくる!

その「シ~ソ#~」というたった2音の導入部が、小便チビるくらいにカッコ良いのです!
左サイドから聴こえてくるオルガン系の音です。少し注意して聴けばみなさん容易に気づけるはずですよ。

という流れで、ここでいきなりアレンジの話に飛ぶのですが、編曲の上田健司さんを僭越ながらご紹介いたしますと。
元ザ・ピロウズのリーダーにしてベーシスト。
和製オルタナ系の猛者。プロ中のプロ。職人中の職人。
上田さんは途中で離れてしまいますが、ザ・ピロウズは平成のミュージックシーンを席捲したミスター・チルドレンなどのバンドメンバー多くからリスペクトを受けている超・実力派バンドです。
(関係ないですがバンドスコアもよう売れとるのよ)

「JULIE WITH THE WILD ONES」の楽曲クレジットが公になった時、編曲者に上田さんの名前を見つけ、僕は祈るように
「いつもの上田さんの感じでお願いします。できればベースも弾いててくださいませ~」
と期待いたしました。
見事、期待通り!
地味ですが本当に素晴らしい技とセンスを持ったお方なのです。良い音楽のオイシイ聴かせ方を心得ていらっしゃる。
上田さんのベースはまさしく職人芸。
また、間奏もリードギターも、心が燃え上がるようなフレーズですよね。
これは、LIVEではおそらく柴山さんのパートになりますよ!想像するだけで胸が高鳴るではありませんか~。

アレンジでは、2番Aメロ部にもかなりシビレます。
ギターカッティングとハイハットを残して静まる演奏。
情景は、車の窓からふと見かけた若い波待ち人を眺め、心の足を止めている渋滞の海岸線通勤ロード。
「いや、まだやれるはず!」
と、主人公が徐々に躍動を開始するのは、4連打で忽然と噛みこむドラムスのキックが表現しています。
そして・・・。

♪今だってビッグウェイブ(ざっぱ~~~ん!)
   狙っている~(ざざ~~~ん!) ♪

この大きな波音のS.E.(サウンド・エフェクト)こそが、抑えきれない魂の咆哮。
ブリッジとサビのジュリーももちろんカッコいいけど、このアレンジに溶け込んだAメロを歌う鳥塚さんは、最高にカッコいいぜっ!
やっぱりこのアルバムは夏だ。
夏に爆発する!

この「プロフィール」という楽曲には、本当に勇気を貰いました。
僕の中では、「愛しい勇気」と同じくらい、魂を揺さぶられ、活力が湧き上がるナンバーです。
そして、ジュリーwithザ・ワイルドワンズが歌うことによって、僕よりずっと年上の先輩方にとっても、明日への指標となっている、これは大名曲ではないでしょうか。

コツコツと積み重ねてきた、分厚い”プロフィール”(年齢)を最大の武器にして、今しなやかに飛翔したイーグル達。
69歳・加瀬さんが狙う”ビッグウェイブ”を、僕もみなさまと同じように、応援しています!

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2010年2月14日 (日)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「涙がこぼれちゃう」

たまに優しい言葉をかけてくれたなら
それだけで 人は生きてゆけるのさ
だから寂しくてやりきれぬ夜は
ためらわず電話しなよ 涙がこぼれちゃう

(詞・吉田Q)

from 『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

(2010年6月14日註:
「涙がこぼれちゃう」の検索フレーズでこちらにお越しのみなさま。
この大名曲を作詞・作曲した吉田Qさんに是非とも力をお貸しくださいませ。
ASAHI SUPER DRY THE LIVE
真夏のフェス出場を賭けて、吉田Qさんがweb投票にエントリー中です!投票は今週18日・金曜日が締切なのです。
まずは投票頂いてから読んでたもれ~。

(2010年6月25日註:みなさまの応援のおかげで、吉田Qさんは見事web投票2位で夏フェス出場権を獲得いたしました~。ありがとうございます!)

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風邪も治りまして、先日に引き続きジュリワン・デビューシングルのお題です。
このB面曲(と、敢えて呼びたい。「シングルB面」と言うだけで、名曲の匂いがするじゃないですか~)、予想以上にみなさまの大好評を博しているようですね。
おおむね、「カワイイ」「メロメロ」といった乙女な感想が多いようでして。このナンバーをジュリーに歌わせた加瀬さん、会心の勝利と言えましょう。

先日「渚でシャララ」の記事でも触れたように、万が一ですが、作曲者御本人の目に触れるという可能性もございますので、気合を入れて、真剣に長文更新いたします。
名曲「涙がこぼれちゃう」、僭越ながら伝授!

みなさまより1ケ月も早く、このシングル盤の音源と情報を得た(恐縮です)僕ですが、その時エイベックスさんのプロモーション書類に綴じこまれていた歌詞カードのクレジットを見て、まずは「ん?」と思ったのでした。
もちとん、A面「渚でシャララ」の三浦徳子さん=加瀬さんのコンビ復活には狂喜乱舞。
ところが一方のB面に、「作詞・作曲・吉田Q」という文字。

何と、不勉強にてまったく初めて目にするお名前です。
しかも詞曲両方を担当なさっているという事で、おそらく僕の知らないシンガーソングライターの方だろうと目星をつけ、早速検索!

非常に個性溢れる、エキセントリックなアーティスト・サイトがヒットいたしました。
アンダーグラウンドの煮えたぎる空気が漂う、只ならぬ雰囲気。
まずはオリジナル楽曲のダウンロードコーナーにリンクし、その場で数曲を拝聴いたしますと。

こ、これは・・・。
ひと筋縄ではいかない才能。
手元にきたばかりの「涙がこぼれちゃう」1曲でイメージを固められるような、簡単なお方ではなさそうです。

結局、検索をかけ続けても多くの情報には辿り着けず。
ジュリー絡みでここまで”謎”の人は久しぶりですね。
1985年生まれ・・・ジュリーのアルバムで言うと「架空のオペラ」の年ですか~!スゴイ話ですね。

ダウンロードさせて頂いた吉田Qさんの楽曲には、意外やどの曲も冷静に醒めた視点がありました。随所に織り交ぜられるユーモラスな表現は、優れた客観性の為せる業でしょうか。
「情緒的な風景を客観で捉える」という能力が作詞においてとても大切だという事は、ようやくこの年になって僕にも理解できるようになってきました。激しい感情が邪魔になる場合があるのですね。
吉田Qさんの楽曲は、そんな才能を若くして充分に発揮したものばかりでした。

ところがここで、吉田Qさんのレパートリーの中ではおそらく直球系に分類されるであろう、「涙がこぼれちゃう」という楽曲が加瀬さんに見出され、ジュリーwithザ・ワイルドワンズによってカバーされることになります。

この曲をジュリーに歌わせようと思いついた加瀬さんの眼力は、本当にスゴイ。
ポジティブな思考、面白いと思った事は何でも挑戦、という加瀬さんのキャラクターならではの発想です。
結果、ジュリーと吉田Qさんの組み合わせは、凄まじい融合作用を生むことに。

これはあくまで僕のとらえた感覚なのですが、「涙がこぼれちゃう」という楽曲、吉田Qさんが歌っていた段階では、若い男のドツボな失恋状況をトコトンまでツッコみ、面白おかしく描いたシュールなポップソングだったと思うのです。

ところが!
ジュリーがこの曲を歌うと。
まず、瞬時にして時空が広がる!

時はあっという間に数十年を駆け巡り、歌の主人公は、いっぱしのオトコになっています。
野生の匂いすら漂う大人の男。もう過去の恋愛にクヨクヨ悩む歳ではないでしょう。
しかし時に挫折が男を襲います。仕事のトラブルかもしれないし、ひょんな人間関係かもしれない・・・そんな挫ける心を吐露する先は、青春時代の恋のお相手だったりとか。

ジュリーが歌う事によって、そこまで話が違ってくるワケです。
しかも。
もうすでに、登場する男女(元カレ&元カノ)二人に既に何らかのコトが起こった、その直後の男側の独白のように・・・(ジュリーのヴォーカルだと)聴こえるのですが・・・深読みし過ぎですか?

歌詞については・・・分析はほどほどにしておいた方が良さそうです。主観の領域でしょうから。
ただ、この詞で胸キュンになったみなさまは、すごく素直にジュリーヴォーカルだけを聴いた方々なのでは、と思うのです。
「渚でシャララ」と続けて聴く、というのも重要なポイント。CD1枚通しての世界観が、既に用意されているワケです。
予備知識なしに、まずジュリーの声ありき、でシングル盤を聴いた方が、この「涙がこぼれちゃう」の歌詞のインパクトは強いはず。
楽曲が、歌詞ごと自分の手を離れていくような目眩めく感覚を、吉田Qさんは味わったのではないでしょうか。

それでは、メロディーと楽曲構成について。
主調は嬰ハ長調(C#)。まったくの偶然ながら、主調とブリッジ部(E→F#と進行、元調ドミナントのG#へと向かい上昇していく)の相関性は、先日記事に採り上げたばかりの「朝の別れにほほえみを」とまったく同じ転調です。
ただ、アレンジから言えば、同じ理屈で転調する楽曲例として「生きてる実感」を挙げた方が、みなさまにとっては解り良いでしょうか。

「涙がこぼれちゃう」のブリッジは、
♪過ちだらけでもいい~♪(「いい♪」のコーラスが、GSにも通じるアレンジ工夫ですね)
と、カッコ良く転調しますが、この部分、「生きてる実感」で、
♪倦怠は迷い♪
と導入するブリッジ部と似ている、と感じた方も多いのでは?
これもまったくの偶然でしょうが、和音進行の理屈のみならず、ヴォーカルにトリッキーな細工が施されている点や、覚え易いメロディーでありながら、独特の譜割りを持つ点など、共通項が多いですね。
どちらもジュリーの「開き直り」物語が聴けるというのも。

Aメロ途中にディミニッシュコードを挟みこむなど、湘南系アレンジにはピタリ。
ワイルドワンズのイメージに近いアレンジに耐え得るという点も、加瀬さんがこの曲に惚れた要因のひとつでしょうが、吉田Qさんはこういったコード進行による作曲を、サザンオールスターズから習得したのではないでしょうか。御本人のブログを拝見しますと、そんな気がいたします。
そして重要なのは、A面「渚でシャララ」と同じくこの曲も、「まず頭からサビ!」という構成を持っているということです。

♪ たまに優しい言葉をかけてくれたなら
  それだけで 人はきっと生きてゆけるのさ
  だから寂しくてやりきれぬ夜は ためらわず
  電話しなよ 涙がこぼれちゃう ♪

何度も言いますが、この詞とメロディーは相当強力です。
「生きてゆけるのさ~♪」の部分、ジュリーのヴォーカルは抜群の抜けを見せてくれます。GS回帰という狙いで言えば、ヴォーカルの説得力はA面をも凌ぐものがあるでしょう。
それを、若い作曲家の作品でやってしまった、というのが会心ではないですか~!

このように、「涙がこぼれちゃう」はジュリーが歌うことによって大きなマジックがかかり、物語が変化していった楽曲と言えますが、吉田Qさんの強靭な個性も、最後まで残っていると思うのです。
それは、主人公のダメージに反して、この曲には暗いイメージがまったく無いということです。
情けなくも弱っている男の心情を描きながら、とても可愛らしく、聴いていて笑ってしまうような作品。それは、吉田Qさんの普段の持ち味がそのまま残ったように思われるのですが、いかがでしょう。

先程も述べたように「涙がこぼれちゃう」のキーはC#(嬰ハ長調)なんですが、吉田Qさんはかなりのハイトーンの持ち主のようですから、オリジナルはD(ニ長調)、或いはもっと上の調だったのかもしれません。
ジュリーwithザ・ワイルドワンズがカバーするにあたり、移調した可能性もありますね。
ともあれ、ジュリーのこれまでの歴史を紐解いた時、この「涙がこぼれちゃう」は「名曲たる宿命」を持っていると言えましょう。
それは、先行シングルのB面&アルバムの1曲目だから!

『ヒューマン・ルネッサンス』の「光ある世界」。
『自由と憧れと友情』の「出発のほかに何がある」。

過去に同様の位置づけを持ったGS・・・ズバリ、タイガースの曲達です。
タイガースをタイムリーで知らない僕が言うのもどうかと思いますが、この「1曲目」というスタンスは、まさに名曲のためのものでしょう。

1曲目を「涙がこぼれちゃう」でキュートにスタートさせるジュリーwithザ・ワイルドワンズのアルバムが、今度は3月に発売されます。
こちらも大いに期待しようではありませんか!

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2010年2月 9日 (火)

ジュリーwithザ・ワイルドワンズ 「渚でシャララ」

泣いてた君を 今のぼくならば
ぎゅっと抱きしめてあげられるだろ
詞・三浦徳子)

from『JULIE WITH THE WILD ONES』、2010

予定より1日早いけど・・・。
もう店頭に並んでるみたいだし、更新しちゃおう!
この曲、さすがにまだお聴きでない人の方が多いと思います。豪快にネタバレいたしますのでご注意を!
というわけで。

ぷはぁぁぁぁ~っ!

やっとこの日が来ました。

な、長かった・・・この1ケ月。
ようやく記事にできます。この、やる気に満ち溢れウキウキと胸躍る、それでいてとても可愛らしいシングル盤について。

まずは、みなさまにお詫びしなければなりません。

この曲の作詞・作曲者予想など、みなさまの会話に敢えて入っていかなかったこと。
或いはB面「涙がこぼれちゃう」のタイトルについて、トホホな予感に怯えていらっしゃる(いや、それが楽しいネタフリだという事は承知しておりますが)先輩方に
「大丈夫ですよ、すごくイイ曲ですから」
とお知らせして、安心させてあげられなかったこと。
申し訳ありませんでした・・・。

実は僕、「ひるおび」で「渚のシャララ」のサワリを聴いた、その約1週間後に、このジュリーwithザ・ワイルドワンズ、4曲入り(「渚でシャララ」「涙がこぼれちゃう」+2曲のインストゥルメンタル・テイク)デビューシングルの試聴盤を聴くことができたのでした~。

リリース前の音源についてリークしない、というのは業界の大切なルールですから、僕もじっと我慢して、口を閉ざしておりました。
必死に自分を抑えなければならないくらいの、本当に素敵なシングル盤でしたね。

いや、この展開に一番驚いたのは、他ならぬ自分自身なのでありまして・・・。

僕は何も、特別な仕事をしているわけではありません。
一介のサラリーマンです。
ただ、音楽業界(末端ながら)に少なからず関わる職種だったりは、します。

僕がこのたび、リリースに大きく先立ってCD音源を聴けることになった経緯につきましては、3月上旬あたりに詳しくご報告できるかと思いますが、とにかく。
僕のような者が、そんな予想だにしていなかった僥倖にあずかれた、という時点で、ですね。

相当本気のプロモーションが展開されている!

という事は、断言できます
そうでなければ、こんなに早々と、僕などの手元に試聴盤が回ってくることはあり得ません。
これが、メジャーリリースの威力とも言えましょう。

では、そんなプロモートに比して、楽曲にそれだけの魅力があるのか、と申しますと。

あります!

A面もB面も、本当に素敵な楽曲。
最近のジュリーナンバーとはまた違った魅力が生まれていますし(これは、加瀬さんが既にそう仰っていますね)、加えて、ハッキリした狙いもあります。

今日は、文字通り満を持しての記事更新です。
まずは、PVも話題のA面から。

ジュリーwithザ・ワイルドワンズのデビューシングル、「渚でシャララ」、発売同時伝授!

70年代~80年代のジュリーナンバー作曲・プロデュース、また御自身のワイルドワンズを率いての活動を通じ、加瀬さんの中には、「ヒット曲とはこういうものだ」といういくつかのイメージがあるのではないでしょうか。
「渚でシャララ」には、それが凝縮されていると思うのです。

覚え易いリフ。
キャッチーな歌詞と甘酸っぱいメロディー。
そして、いきなり曲の頭から「バコ~ン!」と炸裂するサビのメロディー。
Aメロの前にまずサビを聴かせる、という構成(これは、B面「涙がこぼれちゃう」についても同様なのですが)に、並々ならぬ加瀬さんの気合を感じます。

こうして思いつくままに挙げただけでも、シングルヒット、という要素がギュギュッと詰まっているではありませんか。

さて、そのサビメロですが。

ミ・ファ#・ラ・ファ#・シ~シ・シ(渚でシャ~ララ)!
シ・シ・シ・ソ#・ラ~ラ・ラ(二人でシャ~ララ)!

と、音階移動だとこの表記だけで片付きますけどね。
なんと、楽曲全体を通じて、この部分のコード進行(楽器のソロ部含む)には3種類の振り分けがあるのです!

まず、僕が「ひるおび」で聴きとって、すぐにブログに記事を書いた進行が
A→E→E7→A

これが基本パターンである事は確かですが、他の箇所で
A→D→E7→A
或いは
F#m→D→E7→A

という贅沢なヴァリエーションが登場。
この3通りのコード進行すべて、「渚でシャ~ララ!」というメロディーがキレイに載っかるというのが、今回加瀬さん渾身のアイデアでしょう。。
特にF#mからちょっと胸キュンな進行に載せる演奏箇所(フィルイン後のイントロ3小節目と6小節目、1分44秒のあたりなど数箇所)にはドキッとさせられます。
以前「光と花の思い出」の記事で、コード進行のヴァリエーションの魅力について書きましたけど、それに匹敵する素晴らしさ・・・このアイデアは「渚でシャララ」という楽曲の、大切なかくし味になっていると思います。

イントロも良いですね~。
まずベースソロが3小節。新たなレコーディング音源で、ジュリーのヴォーカルとベースが同居していること自体が、まず新鮮で。
バックでは、懐かしいサーフィン・エレキな効果音。そして4小節目のウキウキするドラムス・フィルインがカッコ良すぎ!

そこから、サビメロと同じ旋律を擁した本格的な前奏へと突入します。
バックに絡むホーンセクションはシンセと思いますが、泰輝さんがステージで弾いている姿が目に浮かぶような音色で、楽しいことこの上ありません。

Aメロのヴォーカルパートは、1番が植田さん→鳥塚さん、2番が鳥塚さん→植田さん、で合ってるのかなぁ。
ワイルドワンズのメンバーのヴォーカルを、初めてじっくり聴きました。
それぞれタイプの異なる個性派でいらっしゃいます。これからもっと勉強しなければ。

そして、
♪ 若過ぎたせい、理由(わけ)も聞かずに右と左 ♪
の部分から再びジュリーが歌うのですが、ここがすごく胸キュンなメロディーだと思うんです。
ワンズのお二人のヴォーカルパートを挟んで、「ここでジュリーが来たっ!」という聴き手の心情効果もあるのでしょう。ジュリーの声で歌詞の説得力が増しているような気がします。
僕が「渚でシャララ」を通して一番好きな箇所ですね。

それを受けて、楽曲は甘やかなブリッジ部に移行。
これが、また!おいしいコード進行です。
洋楽から導入され、日本でも、昭和の懐かしいヒット・ポップスに多く使われている進行で、トニックの和音から1小節ごとに、ルート音から半音ずつ下がった音がどんどん足されていくというパターン。
有名な曲で例を挙げますと、ジュリーもカバーしている、ビートルズ「サムシング」のAメロが同じ進行ですね。

そしてそして、ブリッジ部の最後。
「つのる思いは砂に隠して~♪アオッ!!」

この「アオッ!!」、大変重要です。

ホーンセクションがちょうど終わるタイミングで、言わば、「それいけ間奏!」という合図のシャウトなのですが、今のジュリーのスタイルで自然にやるなら、ここは

「おぅ!」
とか
「おぉや!」

になったはずだと思うんですよ。
「神々たちよ護れ」でやってるような感じのシャウトですね。

しかし、そうはならなかった。

僕の想像ですが、これは加瀬さんが
「アオッ!でやってくれ!」
とジュリーにリクエストしたんじゃないか、と。
この、微妙にわざとらしい感じ(褒めてます)がGSヒット曲の味だ、という狙いではないでしょうか。
「ワンズの世界に入ってもらう」
と加瀬さんが言っていたことをジュリーが実践している・・・その象徴のような「アオッ!」。
僕にはそう思えます。

さて、「渚でシャララ」の歌詞(三浦徳子さん!)と曲調から窺える、ジュリーwithザ・ワイルドワンズのトータルコンセプトについて考察してみますと。
これはもう、シングル2曲を聴いただけで解ることですが、「青春=恋の思い出」ということになります。

ちょっとちょっと!
「ベタやな~」と退かないでくださいよ~。
たとえベタであろうとも、その伝わり方は、手法や志によって素晴らしいメッセージへと昇華するのですから。
それが詞曲一体となった音楽の凄いところです。

しかも、AB面ともにそのテーマを押し出していながら、その先に広がる世界や含有する動機づけが全く違ったり、と奥が深い。
同じコンセプトを、違う作詞家・作曲家が担った時の対比の面白さが味わえます。

では、そのコンセプトを具体的にどう表現しているのか。
これが、アラ還バンドならでは、でございまして。
ジュリーwithザ・ワイルドワンズのメンバー(特に歌い手=ほぼジュリー)が、別れて長い年月の経った元カレ役を演ずるというものです!

え、誰の元カレかって?

奥さま、あなたです!

いや、マジですよ。
その昔、音楽を通してジュリー(或いはワンズのメンバー)と恋に落ちた乙女は、今ジュリー以外の男性と一緒になり、幸せな生活を送っている・・・そんなあなたの元に、突然元カレからコンタクトが!
懐かしさもあって、ひさしぶりに会ってみますと、

君は、あの日のまま!

なんて言われたりなんかして。
あとね、これはB面だけど、「涙がこぼれちゃう」の

さみしくてやりきれぬ夜は
ためらわず電話しなよ

こんな事を、元カレ・ジュリーに歌われちゃったら、どうよ~!

と、まぁこれでお分かりの通り、ジュリーwithザ・ワイルドワンズのターゲットは、団塊の世代!
2月5日の「歌門来福」MCでジュリー自身もそう語っておりました。
新しいファン(しかも男性)としては、そんな世代の甘~い再会を応援する立場で聴いてしまいますね~。

少し話がそれるようですが、僕は、加瀬さんの「オリコン1位!」という決意表明を知った時、YMOが「君に、胸キュン」を引っさげて、本気でレコードセールスに打って出た時のことを思い出したのでした。

「ライディーン」で一世を風靡したYMO。
もちろんその後もずっと継続して素晴らしい楽曲を世に送り出していたのですが、その間のTV出演はほぼ皆無。
知名度は高いもののマニアックな存在であった彼らが、ザ・ベストテン隆盛期の歌謡界に、突然正面から挑んでいったのです。
YMOの場合も、まずはTV出演から、でしたね。
ベストテンのスポットライト出演時に、高橋ユキヒロさんが決意表明をしました。
「ベストテン1位獲得!」
「レコード大賞受賞!」
いずれも、当時の歌謡界では最高の勲章です。それを狙いにいく、と。

結果、惜しくも目標達成とはいきませんでしたが、「君に、胸キュン」は、それに準ずる大きな成果、セールスを残しました。
それこそ、長く彼らを支持してきたファンに加えて、中抜け・新規組を巻き込んだムーブメントが起こったのです。

ジュリーwithザ・ワイルドワンズにも、同じくらい、またはそれ以上の成果が待っているでしょう。
しかも、ですよ。
本気のセールスに挑んだYMOの、「ライディーン」から「君に、胸キュン」までの雄伏期間が数年であったのに比べ、ジュリーや加瀬さん達ワイルドワンズは、GSブームから数えて40年にもなろうかという長期の仕込みがあるわけです。
舞い戻ってくるファン、新しいファンの潜在人数は計り知れません。

つまり、ジュリーwithザ・ワイルドワンズは「年齢を重ねている」という事を最大の武器として勇躍しようとしているのです。
なんとも痛快なおじさま達ではありませんか。

微力ながら、そんな素敵な人達を応援する自分、そのおかげで一歩ずつ進んでいる自分を今は実感しています。
僕はジュリーwithザ・ワイルドワンズに、夢への入口を感じます。
少しずつ、あせらず、欲ばらずに。
頑張るじゃん!

あと、今回の記事ではほんの少し触れるに留めましたが、B面「涙がこぼれちゃう」も素晴らしい楽曲ですから、いずれ別に記事を書きたいと思っています。
なんたってココは、箱さんからワンクリックで飛んで来れますからね。
万が一という事もございます。気合の入ったレビューを書かなければ。

そうそう、早めに音源を聴けたと言っても、無論CDは予約していますよ~。
明日届くのでしょうね。

さぁ、「渚でシャララ」の振付けは、歌門来福でジュリーに教わったばかりだし。
あとは、加瀬さん達のオリコン1位ポーズ。
みなさまと共に、僕もしっかり覚えなきゃ~!

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