鉄人バンドのインスト on『ジュリー祭り』第2部
from DVD『人間60年 ジュリー祭り』、2008
disc-1
1. OVERTURE~そのキスが欲しい
2. 60th. Anniversary Club Soda
3. 確信
4. A. C. B.
5. 銀の骨
6. すべてはこの夜に
7. 銀河のロマンス
8. モナリザの微笑
9. 青い鳥
10. シーサイド・バウンド
11. 君だけに愛を
12. 花・太陽・雨
13. 君をのせて
14. 許されない愛
15. あなたへの愛
16. 追憶
17. コバルトの季節の中で
18. 巴里にひとり
19. おまえがパラダイス
20. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
21. 晴れのちBLUE BOY
disc-2
22. Snow Blind
23. 明星-Venus-
24. 風は知らない
25. ある青春
26. いくつかの場面
27. 単純な永遠
28. 届かない花々
29. つづくシアワセ
30. 生きてたらシアワセ
31. greenboy
32. 俺たち最高
33. 睡蓮
34. ポラロイドGIRL
35. a・b・c...i love you
36. サーモスタットな夏
37. 彼女はデリケート
38. 君のキレイのために
39. マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!
40. さよならを待たせて
41. 世紀の片恋
42. ラヴ・ラヴ・ラヴ
disc-3
1. 不良時代
2. Long Good-by
3. 涙
4. 美しき愛の掟
5. 護られているI Love You
6. あたなだけでいい
7. サムライ
8. 風に押され僕は
9. 我が窮状
10. Beloved
11. やわらかな後悔
12. 海に向けて
13. 憎みきれないろくでなし
14. ウィンクでさよなら
15. ダーリング
16. TOKIO
17. Instrumental
disc-4
18. Don't be afraid to LOVE
19. 約束の地
20. ユア・レディ
21. ロマンスブルー
22. TOMO=DACHI
23. 神々たちよ護れ
24. ス・ト・リ・ッ・パ・-
25. 危険なふたり
26. ”おまえにチェック・イン”
27. 君をいま抱かせてくれ
28. ROCK' ROLL MARCH
29. カサブランカ・ダンディ
30. 勝手にしやがれ
31. 恋は邪魔もの
32. あなたに今夜はワインをふりかけ
33. 時の過ぎゆくままに
34. ヤマトより愛をこめて
35. 気になるお前
36. 朝に別れのほほえみを
37. 遠い夜明け
38. いい風よ吹け
39. 愛まで待てない
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暑いですね・・・。
話に聞けば、今年は10月まで暑さが続く可能性があるとか。一体地球はどうなっているのでしょう。これはもう、栗本薫さんの『魔界水滸伝』初っ端そのままの世界が現実に起こっていますよね・・・。
しかしそんな中、今日は暑さも吹き飛ぶ大変おめでたい日です。
本日8月27日・・・鉄人バンドの柴山和彦さんが、還暦・満60歳のお誕生日を迎えられました!!
かつてジュリーの横で演奏してきた多くのミュージシャン・・・それぞれ素晴らしいプロフェッショナルだと思っています。ジュリーと関わったすべてのミュージシャン、すべてのバンドを僕はリスペクトしていますが、やはり鉄人バンドのメンバーというのは僕にとって特別な存在です。
何故なら、『ジュリー祭り』を機に後追いのジュリーファンとなった僕は、鉄人バンドの音でジュリーに堕ちた、と言えますし、これまで鉄人バンドのジュリーLIVEだけを生で観てきているからです。やはり生で観ているのといないのとでは、思い入れは全然違いますよね。
ジュリーwithザ・ワイルドワンズや老虎ツアーの時にも、変わらず鉄人バンドの姿がありましたから・・・。
そんな鉄人バンドのバンドマスター・柴山さんが、ジュリーから遅れること4年、無事還暦を迎える日を、1ファンとしてお祝いの発信ができるとは・・・感無量でございます。
そこで今日は『祝・柴山さん還暦記念』をコンセプトに、鉄人バンドのインストをお題に採り上げます。
選んだのは、『ジュリー祭り』第2部で演奏された、柴山さん作曲の爽快なナンバー。
これは隠れた名曲です!
『ジュリー祭り』のインストと言うとどうしてもオーバーチュア(こちらも柴山さん作曲)が目立っていますが、重厚さと軽快さとの対比はそのまま、柴山さんの作曲・編曲スタイルの幅広さを物語るものです。メロディーやコード進行については、第2部のインストの方が僕としては好みなのです。
・・・とは言っても『ジュリー祭り』参加時の僕は、恥ずかしいことにまだ鉄人バンドのインストにさしたる印象を持ってはおらず、後でDVDを鑑賞して感動させられた、というクチなんですけどね。
さて、今回は鉄人バンドのインストがお題ということで、以前、ジュリーLIVEでのインスト復活を祈願して立ち上げたカテゴリー『DYNAMITE-CANDLE』での記事執筆となります。
このカテゴリーを考案した時のいきさつを色々と説明しますと、それだけでかなりの大長文になってしまいますから、事情をよく呑み込めない方々は、同カテゴリー第1回のこちらの記事をご参照くださいませ。
とにかく今日の記事は、拙ブログのカテゴリーで明らかに異彩を放つ・・・いわゆる”妄想系”の内容となります。
妄想ですから、登場するキャラクター設定などは、明らかなモデルはあれどもまったく架空のものとご了承願います。
しかも、ふざけた妄想の割には、たいして面白くもありません。
ただ・・・登場人物の発言中、楽曲考察部については僕が真剣に吟味、採譜、分析したことをそのまま書いております。どうかその点のみ、真面目な話とお考え頂けると嬉しいです。
それでは・・・よろしゅうございますか?
DYNAMITE-CANDLE、2本目です!
☆ ☆ ☆
暑い・・・異常に暑い。
もう何日猛暑日が続いているだろうか。
額に汗の玉を浮かばせた長髪、痩身の男が、部屋で扇風機に当たりながらDVDプレイヤーのモニター画面を胡坐の状態で見入っている。
スピーカーから「サンキュ~、トキオ~!」という、力強いシャウトが聴こえてくる。
モニターに見入る男はそのシャウトに合わせ、手にした水色のギターで、「じゃ~ん♪」と軽く「D」のローコードを鳴らした。
痩身のためか、それとも元々の体質のせいか、普段から汗をかきにくく「暑さには強い」と自負していた、その男・・・霊界の正統なる皇子という身分を捨て、下界でギタリストを生業としているプリンス・ジュンも・・・さすがに今年の暑さには参ってしまっている。
「霊界の夏は涼しかったなぁ」
と、若干ホームシック気味なプリンスなのであった。
下界では、お盆の大型連休を終えようとしているところである。
連休の初っ端に渋谷公会堂で行われた『3月8日の雲~カガヤケイノチ』ツアー前半最終日を無事に終え、プリンスも充電休暇中だ。
ただ、いくらオフとは言え、9月上旬にはツアー後半が幕を開ける。気を抜いて指の感覚を鈍らせるわけにはいかない。何でも良いから日々”ギターをいじる”こと、それが肝要だ。
ということで、この日プリンスは思い出の『ジュリー祭り』DVDを鑑賞しつつ、アンプを通していないストラトキャスターで適度にフレーズやコードを合わせながら過ごしていた。
モニターの映像はdisc-3の大詰め、「TOKIO」へと進んだところである。
バッキング・コードを合わせていくプリンス。ピックを持つ親指はちょうど付け根が上を向く格好になる。血管の浮き出たその指に、長髪の先からしたたり落ちた汗の滴が躍っている。
「・・・って!暑っちい!扇風機効かね~!!」
プリンスは遂に音を上げ、ゴロン、とギターを抱えたまま仰向けに寝転がってしまった。
と、その時である。
部屋の片隅の奥まった空間がユラユラと揺らめき、ゆるやかな振動と共に宙から小柄な老人が忽然と姿を現した。
「若っ!お久しゅうございます!」
「うわったったった!!」
不意を突かれ慌てて起き直るプリンス。突然目の前に姿を現した老人こそ、霊界の後継者達への帝王教育係として一生を捧げた、プリンスにとって唯一頭の上がらない人物・・・”爺”と呼ばれている読者諸君お馴染みの老人である。
「なんだ爺。下界に用事でも・・・?」
わざとぶっきらぼうに声をかけるのも、プリンスの爺に対する愛情の裏返しだ。長身痩躯のプリンスが立ち上がると、小柄な爺は見上げた視線に少し不満の色を浮かべながら
「用事でも、ではございませぬ・・・。この爺、お盆に入ってからずっと下界で働いておったのですぞ」
「えっ、そうなのか?」
驚くプリンスの言葉に、爺は重々しくうなずくと
「今回は中井殿の里帰りの御伴でございました。あの御仁は顔が広くてなかなか移動が大変でございましたよ・・・。中井殿の霊界への無事のお戻りを見送ったその足で、ちょっと若の様子が心配で見に参ったのです。案の定、このうだるような暑さの中を、扇風機だけで過ごされているとは・・・」
「いやぁ・・・節電しないと、と思って・・・。下界は下界で色々大変なんだよ」
頭を搔くプリンス。爺は首を振り
「若の志、分かっております。しかし何よりもまず健やかなる身体あってこそ。若のために、霊界から少しばかり保存冷気を持ってきましたゆえ・・・御免、ハッ!」
爺は勢いよく跳躍すると、老人とは思えない俊敏な動きで気合もろとも肢体を激しく空中で回転させた。
「ボディーを冷やさ~なくちゃ~♪ハイ、ハイ、ハイ!」
歌声とともに爺の身体から放たれた冷気が次々に渦となって拡散し、部屋の隅々にまで行き渡る。たちまちプリンスの部屋は快適な気温に保たれ、空気はそのまま安定した。
「おぉ・・・久しぶりだなぁ、爺の霊力・・・」
プリンスは薄く笑って喜んだが、ふいに眉をひそめて
「しかし、以前の爺は霊力を使う時に歌など歌わなかったぞ。しかも今日はBOKE BOKE SISTERSのパートまで・・・。俺を仕込んでくれた頃の、厳かなキャラは何処へ行ってしまったのだ・・・まさか・・・」
爺は微笑んで
「はい。ご想像の通り、現在の我々のやりとりは下界の祐筆によって広く発信されております。今回は例の怪しげな男の祐筆が執筆しております故、我々のキャラもそれに順じて変化しているというわけです」
「むむむ・・・イヤだなぁ。何だかあの祐筆にかかると俺は、薄い氷の上でニヤニヤしながら危なっかしく踊っているような、とても軽いキャラになっていないか?」
プリンスは心底うんざりしたように言うと
「で、奴は今回、何についての発信をしようというのだ?」
と尋ねた。
「それそれ、それでござるよ」
爺は我が意を得たり、とうなずくと
「ズバリ、柴山殿の還暦記念でござる。亜空間をつたい若の部屋を訪ねてみれば、ちょうど若が『ジュリー祭り』のDVDを鑑賞しておられたので、この爺、しかるべき楽曲へと映像が進むまで待機してから実体化したという次第でございます」
「えっ、そんなに長いこと亜空間から俺の部屋を覗いていたのか?」
プリンスは再び驚き
「我慢強いというか意識し過ぎというか何と言うか・・・もう少し早く涼しくしてくれて良かったのに。で・・・ええっと、ってことはこれから我々が語るべきは・・・この曲かぁ~。懐かしいな!」
モニターではちょうど「TOKIO」が終了し、鉄人バンドこの公演中2度目のインストゥルメンタル・タイムが始まったところだ。
「ドーム公演ではインストを2曲やったが、どちらも柴山さんの曲だったなぁ。あの時は沢田さんの還暦のために演奏したが・・・今年は遂に柴山さんが還暦か。早いものだな・・・」
「2大ドーム興行でそれぞれ80曲を歌った沢田殿が、”バンドは(自分より多い)82曲をやっている。鉄人です”と『奇跡元年』で言ったことで、若達の”鉄人バンド”という名称が定着したんでしたな」
「うむ。まさか正式名称になるとは思ってなかったけどな~」
プリンスは感慨深げにうなずいた。
「爺、せっかくだから、この柴山さんの名曲、コード進行を拾ってみせてみろ。爺の腕が落ちていないかどうか、俺が判断してくれようぞ」
プリンスは持っていたストラトキャスターとピックを、そのまま爺に手渡す。
ギタリストにとって、自分の愛器を易々と預けられる人物など滅多にいない。これもプリンスの爺に対する愛情の証だ。
それが分かる爺は感激し、張り切ってギターを構える。
「爺はこの曲が大好きで・・・何と言っても若の”テケテケ”が聴ける貴重なナンバーですからな!光栄なことでございます。ドームでの柴山殿作曲のインストは2曲ともに素晴らしい曲ですが、今の季節・・・夏にピッタリなのはこちら第2部の曲の方ですな・・・」
爺はモニターを凝視し、耳をすますと
「ディレイ系のエフェクターをフィーチャーしたイントロ部4小節・・・ここは、C→Am→F→G7でよろしいですな?」
「うむ。世のロック&ポップスに一番多く使われる王道の進行だな」
プリンスは、コードを鳴らす爺を優しげに見つめて
「柴山さんの作曲は、歌モノだと複雑な転調を繰り返す難易度の高い曲が多いんだが、インストになると意外とシンプルだ。声を使わない、楽器だけの表現にこだわるとそうなるんだろうし、自分以外のバンドメンバーにも見せ場を作るため、人によって広い解釈が可能な、ストレートな進行で組み立てているんじゃないかな。実際、俺も泰輝も、ソロ部は自分の得意な形でブルース系の解釈に持ちこめているしな」
「なるほど、作曲ひとつとっても、人柄なのですなぁ・・・」
曲は、Aメロ1番のソロへと進んでいく。
爺は楽しそうに
「柴山殿、ほとんどフレットを見ずに弾きますなぁ・・・。え~と、このAメロ部で若のバッキング・コードは・・・C→A7→Dm→Gでよろしいですかな?ならばこれは沢田殿の『OH!ギャル』のサビと同進行ということになりますが・・・」
「爺、現場を離れてさすがに少し鈍ったな。それでは50点しかあげられん」
「な、なんと・・・何処が問題ですかな?」
慌てる爺に、プリンスは優しく微笑みかけると
「もちろん、爺の言う通りのコード進行でバッキングをしても、柴山さんの作った主メロとは合う。しかしウチはベースレスという特殊なロック・バンドだからな。常に誰かしらがベーシストの代わりに経過音の感覚を持っていなければならん。爺、問題は2番目のコード、A7のところだ」
「A7コードが問題・・・そして経過音・・・つまりCとDmの間の音・・・。あっ!なるほど、2番目のコードはC#dimですな!」
「そうだ。この経過音のおかげで、Aメロの柴山さんのリード・ギターで奏でられる主旋律が、穏やかな波のような雰囲気になる。和音の変化による堅さが無くなるんだな」
「潮の香りがしてきそうな進行ですなぁ・・・」
「ディミニッシュ・コードは、流れるようなメロディーをさらに引き立てる効果があるからな。今回の沢田さんのツアーでも、『君をのせて』の”肩と肩をぶつけながら♪”や、『マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!』の”歌い尽くしたい♪”のところで、俺はデミニッシュ・コードを使ってバッキングを弾いている。柴山さんのインストAメロ部も含めて、どれもメロディーの流れがちょっと似ているだろう?」
爺はしばらく思案して
「実はこの爺、以前よりこの曲のAメロ部を、何処かで聴いたことがあるような気がして、色々と調べたのでございます。マニアックな曲ではなく、世間でもかなり有名な曲で似たフレーズがあったように思えて・・・サザンロック、サーフィンエレキなどの名曲の心当たりをくまなく探してみたのですが・・・見つかりませんでした。これは爺の気のせいなのでしょうか。若はお分かりになりますかな?」
「爺、言っていることは分かるぞ。似たメロディーの有名な曲は、実際ある。しかし・・・確かにこの柴山さんの曲は潮の香りに満ちた明るく穏やかなサウンドだ。ただ、純粋に楽曲構成を考察する時、曲想の先入観に縛られてはいかん。サザンロックやサーフィンエレキにこだわらず、あらゆるジャンルに目を向けてみろ」
「むむ・・・すると70年代ロックあたりに意外な元ネタが・・・?」
「いや、もっともっと視野を広げなくてはいかんな・・・まぁいい。爺の頭に浮かんでいる”有名な曲”ってのは、たぶんこいつだよ」
http://www.youtube.com/watch?v=0JxMHZMzAcQ
爺は飛び上がった。
「な、な、なんと・・・。これは驚きました。まさか時代劇とは」
プリンスは涼しい顔で
「無論、一部メロディーの酷似は単なる偶然だ。第一、長調と短調という決定的な違いがあるんだからな。ただ、コード進行を紐解いた時、共通するフレーズの謎は解ける。『大岡越前のテーマ』はロ短調だが、イ短調に移調するとAm→A7→Dm・・・となる。はからずも、さっき爺が答えたA7→Dmがここで登場するワケだ。2曲を比べると、Dmへと移行する時のメロディーはまったくの同一フレーズとなっている。爺が混同するのも無理はないさ」
「なるほど・・・しかし、DVDで若の手元を注意して見ると、2番目のコードでは確かにC#dimのフォームになっていますな」
爺はさらに目を凝らして
「続いてEm→A7を2回繰り返し・・・1番の終わりの、せり上がる部分はDm→Em→F→Gですかな?」
「そうだ。基音がレ→ミ→ファ→ソと上昇する。ストレートな進行だな。でも、Em→A7のところは、若干風変わりとも言えるかな」
曲は2番へと進む。
1番と同じフレーズが繰り返され、爺はコードを再確認しながらうんうん、とうなずいていたが、映像でカメラが切り替わった瞬間、「あっ!」と嬌声を上げた。
「この曲での若のアップシーン、久しぶりに見ましたぞ・・・。おっ、Gのところで若は細かい単音を入れているのですな!」
見ると、画面のプリンスの中指が宙に浮いたりフレット上に舞い戻ったり・・・と、細かく動き回るのが映し出されているところである。
プリンスは「なんだ、このくらい」と一笑すると
「アップで見て初めて気づいているようではイカンな、爺。俺は1番でも同じことをやっているぞ。音だけで気づいて欲しかったな」
「こ・・・これはしたり。とすればこのオブリガートはアドリブではなく、リハーサル段階で詰められていたものなのですな」
爺は感心してそう言うと、再び画面を振り返って
「ところで若は、Gのコードを小指を使わないフォームで押さえるのですな。今日の祐筆が事あるごとに”これは自分と同じ押さえ方だ”と喜んでおりますが・・・」
「ふん・・・それだけ年を食ってる、ということを認めているようなものだぞ。要は、巷のコードブックに指番号表記が無かった時代にギター・コードを習得した、というだけのことだろう」
「おお・・・Em→A7以降で、柴山殿は1番のフレーズよりオクターブ高音で演奏しているのですな。この指圧・・・うねるような音の繋がり、まさに波のようですなぁ」
「うむ、これぞ柴山さんらしい奏法だな。今年の沢田さんのツアーのセットリスト曲では『F.A.P.P』や『明日は晴れる』で同じスタイルの奏法を聞かせてくれているぞ」
「それは承知しています。そう言えば今日の祐筆男、柴山殿のそのうねりに惑わされ、『F.A.P.P』や『明日は晴れる』のリードギターを、スライドだと書いていたことがありましたな。つくづく恥ずかしい男です」
曲は2番の終わりを迎える。
「なるほど、ここはC→B♭の繰り返しで纏めていますな」
「うむ。ちなみに俺はこのCとB♭については、下4弦のハイポジションで弾いている」
「ジャッ、チャラララッ!というキメ部に合わせるためですな。そしてここから、いよいよ他メンバーの見せ場となりますな~」
いつしかプリンスも腰を下ろし、爺と同様画面を食い入るように注視し始めている。
「泰輝は、素直なコード進行にブルース音階を載せるのが好きなんだよな~。音色は違うが、”緑色のKiss Kiss Kiss”の間奏に似たフレージングになっているな」
「左手でずっと低音をカバーしているのも凄いですな・・・。そして、次は遂に若の出番ですな!」
「素晴らしい、若のテケテケ!カッコイイですぞ!」
「ちょっと変わったことをすると”カッコイイ”とか騒ぐんだからな・・・まぁ、やはり曲調から考えて、ギターソロに求められているのはコレだろう。ストレートな進行部だけに、ソロの自由度も高いな。俺もちょっとブルースっぽい音を加味してみた」
「柴山殿以外のメンバー3人の見せ場は、すべてコード進行はF7→Cで統一されておりますな。それにしても、GRACE殿のカンペは大きくて目立ちますな・・・」
「そりゃまぁ、82曲ビッシリ書いてあるわけだから・・・」
「沢田殿はもちろんとして、若達バンドメンバーも、本当に大変なことをやってのけたものですなぁ・・・」
「沢田さんを筆頭に、バンドのメンバーも皆ある程度の年齢を重ねたからこそ逆に出来たことだ。若さと体力にまかせるだけでは不可能だっただろう。良い意味で、”抜く”感覚を持っていなければな」
「パワーを緩めなくちゃ~♪ハイ、ハイ、ハイ!」
思わず反応して歌ってしまった爺の身体に僅かに残っていた保存冷気が、歌につられてほとばしる。寒~い空気が部屋に漂った。
「・・・爺。毎度細かいことを言うようだが、今爺が歌った歌詞部分には、BOKE BOKE SISTERSのかけ合いコーラスは無い」
「な・・・左様でございましたっけ・・・?いやいや、さすがは若。今回の沢田殿のツアーの”サーモスタットな夏”では、リードギターにコーラスに、と大活躍でございますからな!」
映像は、最後のキメ部へと移行していく。
爺は、プリンスがアップになるシーンが嬉しくてたまらぬ様子である。目を輝かせながら
「おおっ!なるほど、ここではCのコードを8フレットの下4弦で押さえておられますな。『歌門来福』の”スマイル・フォー・ミー”のエンディングと同じフォームですな!」
と、はしゃいだ。
プリンスは照れて
「いやいや、ここも含めて、俺が大写しになるような箇所じゃないんだけどな。この曲では、もっともっとカメラが柴山さんをアップで捉えた方が良かったような気がする。Aメロの1番、2番、3番・・・それぞれ同じ進行上で柴山さんはその都度違うことをやっている、その辺りを見て欲しいところだしな・・・ただ」
プリンスはそう言って、エンディングの画面を指さした。
「とにかく最後の最後にこの笑顔を抜いたカメラワークは見事だ。柴山さんと言えば、やっぱりコレだよ!」
「この時、56歳ですか・・・信じられない若さですな」
「沢田さんに続いて、今年は柴山さんまでが還暦になる。俺は自分の還暦など想像もつかん、と思って過ごしてきたが、今この二人の姿を見ていると、年をとるのが楽しくなってくるようだ。有難いことだな・・・」
プリンスは感慨深げにそう言うと
「爺、人生は楽しんでこそだ。爺だってまだまだだぞ・・・。そうだ、このまま俺の部屋でしばらくゆっくりしていくがよい。急いで帰らなくてもいいんだろう?」
「そうですな・・・慌てることもありますまい。しばし御厄介になりますかな」
「やった!これでしばらくは涼しいぞ!」
プリンスは飛び上がって喜んだ。爺は
「それが目的ですか・・・」
と、若干しょげたようだ。
「いやいや冗談だ。よし、これから二人で、柴山さん還暦の前祝いに軍艦カレーを食べに行こう!もちろん、柴山さんの故郷・横須賀で」
「いいですなぁ・・・若と二人で食事など、いつ以来ですかな。それにしても我々のこのやりとりが、横須賀に軍艦カレーを食べに行く、などというどうしようもないオチで、祐筆の男もさぞ頭をかかえておるでしょうな・・・ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ!」
その時二人は同時に、バンドメンバーで次に還暦を迎えるプリンス・・・来たるべきその日の景色を思った。
今と変わらないメンバーでのツアーがあり、その最中に迎えるであろう、その日のことを・・・。
☆ ☆ ☆
尻切れトンボ的超適当なオチで、すみません!
連休2日を丸々使って書けば余裕で纏まるだろう、と考えていましたが甘かったです。久々のキャンドル話に、何度も煮詰まりまくりました。
しかも、結構長くなった割には全然面白くないし・・・。
まぁ、当初の目的・・・楽曲全編を通してのコード起こしは達成しました。これで、ギター弾ける人なら、下山さんが担当しているバッキング・パートはすべて音源に合わせて演奏できるはず。
そう、音源が残されている、というのは有難いことですね。
鉄人バンド、インスト集のCDとか出せばいいのに・・・とか思ってしまいます。
さて、柴山さん・・・”人間60年”おめでとうございます!
ジュリーファンになって、LIVEに行くようになって以来、多くのジュリーファンの先輩方には及ばないまでも、僕も色々な会場で柴山さんの演奏を観てきました。柴山さんとかなり近い席でのLIVE参加も、これまで数度体験してきました。
プレプレ大阪、柴山さん真正面4列目の席では、本当に笑顔と音楽愛のパワーを貰いました。実は僕はその翌日、カミさんの実家に初めての挨拶に行く、ということが決まっていました。ステージの柴山さんに「直球入魂、笑顔で行け」と背中を押されたような気がしたものでした。
ジュリワン八王子、3列目では、これぞプロフェッショナル!というギタリストの真髄を感じました。ジュリーとの信頼関係の大きさもハッキリ伝わりました。
記憶も新しい、先月のびわ湖最前列では・・・あんなに近くで渾身の演奏をしてくれたのに、僕はジュリーばかりに見入ってしまいました。でも、ふと気がつくと、変わらぬ仕事人・柴山さんの姿はすぐ目の前にありました。
僕は「好きこそものの上手なれ」という言葉を座右の銘のように大切に思っていますが、柴山さんは、その言葉を究極まで突き詰め達成したような人なのかなぁ、と感じています。
ツアー中に還暦を迎えたと言っても、これからのツアー後半、柴山さんは前半と何ら変わらぬ自然体で、いつも通りの演奏に臨むでしょう。
でも、次の八王子公演が、柴山さんが還暦を越えて初めてのジュリーLIVEであることは事実。ジュリーや他メンバーにとっても、気合の入るステージなのではないでしょうか。
八王子、僕は幸運にも上手ブロック、トチリ席のチケットを澤会さんから頂いております。
びわ湖ではジュリーに見とれてしまったけれど、今度はハッキリ柴山さんサイドのお席ですから、そのプロフェッショナルな演奏を存分に注目し楽しみながら、お祝いと感謝の気持ちを送ろうと思っています。
柴山さん・・・いつまでも、ジュリーと共にお元気で!
オマケ画像① 『ジュリー』さん
先月、日帰り旅行で訪れた高崎にて偶然発見したお店。ママさんは間違いなく、その道の大先輩でいらっしゃるはずです。
オマケ画像② 『和(KAZU』さん
自宅からとなり駅までの道沿いにある居酒屋さん。機会があれば一度入ってみたいと思っています。
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