ジュリー出演映画レビュー!

2022年12月10日 (土)

沢田研二 「いつか君は」

from『いつか君は』、2022

Itukakimiha

1. いつか君は
2. 遠い夏

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original released on 『愛まで待てない』、1996

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1. 愛しい勇気
2. 愛まで待てない
3. 強いHEART
4. 恋して破れて美しく
5. 嘆きの天使
6. キスまでが遠い
7. MOON NOUVEAU
8. 子猫ちゃん
9. 30th Anniversary Club Soda
10. いつか君は

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関東も先週から一気に朝晩寒くなりました。
フォーラム公演があった11月は例年になく暖かかった印象ですが、さすがに12月となりますとね。
映画『土を喰らう十二ヵ月』をきっかけに改めて覚えた二十四節気で言うと、今は「大雪」ですから。

さて今日はその『土を喰らう十二ヵ月』主題歌となった「いつか君は」がお題です。
せっかくの機会ですので、昨年の『キネマの神様』に続き『ジュリー出演映画レビュー』のカテゴリー第2弾としてこの記事を更新いたします。
あと、みなさまの映画のご感想などもコメント欄にてお聞かせ頂ければ嬉しいです。
今日もよろしくおつき合いください。


①映画『土を喰らう十二ヵ月』レビュー!
 (注:ネタバレを含みますので御注意ください)

ひと言、素晴らしかった!
この名作がジュリー主演という奇跡、なるほど中江監督のキーワードは「色気」ですか~。
まずは監督の慧眼に感謝、感謝です。

最近は、視覚的にも聴覚的にも煽りたててくるような映画が増えているじゃないですか。
それはそれで良いのだろうけど、僕の嗜好にはこのくらい淡々と、味わい深く進行していく作品が合うなぁ。
観終わった後にまったく疲れず、穏やかな活力が漲ってくる映画はそうそうありません。個人的にここ数年で観た中では「イエスタディ」と双璧です。

さて僕はこの映画、フォーラム公演があった週末の土曜日に池袋まで観に行きました。
公開からは日が経っていたのにお客さんの入りは7、8割の盛況。年齢層も広くて、ジュリーがフォーラムMCで話していた「爺さん婆さんばかり」なんてことはなかったです。
若いカップルも見かけたましたから、世の映画好きの方々にとってかなりの話題作なんだろうなぁと。
また、土井先生の料理のファン、という層も多くいらっしゃるようですね。

今回ムビチケを手配してくれて一緒に行ったカミさんも大満足の様子で(『キネマの神様』の時は「う~ん、良いんだけど・・・」と微妙な感じだったっけ)、ちょうど正午くらいに鑑賞を終えて2人でまずとりかかったのが、「近場の和食の店を探しまくる」という(笑)。
いや、この映画を観た後にお腹のすいていない人なんていないでしょう。
結局入ったのが、一品料理も充実したこちらのお蕎麦屋さん。美味しかったですよ!

で、夕食は大根を炊いて味噌をつけて・・・これがメインであとは味噌汁と漬物とご飯のみ。「これで充分だよねぇ」と言い合いながらね。
心の底からそう思えましたが、精進の足りない僕らが「一汁一菜」の志を持てたのは結局この1食だけ。まだまだツトムさんや土井先生のようにはいきませんな~。

ジュリー以外のキャストも魅力的でした。
松たか子さん演じる真知子さん、前中半と後半で雰囲気がガラリと変わる!さすがです。
眼鏡をかけラフな格好で山荘を訪れ、大きな口を開けてツトムさんの料理に舌鼓を打つ真知子さんも、とても山にキノコ狩りになんて向いてそうもないパリッとしたスーツで、婚約したことを知らせにきた真知子さんも、どちらも素敵。
印象深いシーンは、やっぱり山荘の床で眠れずに考え込みながら月を見つめるシーンですねぇ。
言うだけ野暮ですが、営みの後の情景・・・真知子さんがツトムさんと共に暮らすことをいったんは決意した瞬間、じゃないのかなぁ?

また、『太陽にほえろ!』の後番組『太陽にほえろ!PART2』で女ボスだった奈良岡さん、さらにその後番組『ジャングル』レギュラー刑事役の火野さん、『スウィングガールズ』で知った西田さんは元々贔屓の役者さんですし、「こういう役を演じたらピカイチ」な尾身さんもとても良かった。
加えて「さんしょ」の可愛らしさ、健気さはもちろん、たった2度の登場シーンで見事に季節の移ろいを表現してのけたカエルさんの名演(?)も光りましたね~。

そして、何と言ってもジュリーのツトムさんです。
前記事でも少し書きました。ジュリーは「あれは、僕本人ではなくて演じているんですよ」と話してくれて(フォーラムMCより)、もちろんそれはそうなんですけど、ファンから見るとジュリーとツトムさんってすごくリンクするように感じます。
「いい男ね~」「せやろ」のシーンに限らずね。

ファンの妄想承知で細かいところを挙げれば、お義母さんの家で軽やかな音をたてて沢庵を食べるシーン、ジュリーはこういう食べ方しそうだなぁ、とか。
畑や池を見に行くシーンは、僕らが普段LIVEで観ている、終演して最後にしずしずとステージからはけてゆくジュリーの所作そのまま。
「一緒に暮らさないか?」と真知子さんを誘う時の、照れて遠慮がちに見えながら実は有無を言わせぬ一途な熱を感じる(これが、中江監督の求めた「色気」でもあるのかな?)ところなんかも。

スクリーンにツトムさんが現れ、下から上に顔のアップが移動していくとこちらは「おお~、ジュリーだぁ!」となる・・・でも劇中ではそれが違和感なくツトムさんで。
仕方ないよね・・・僕らはいつもジュリーを見てきて「無洗米はあまりおいしくない。お米はやっぱり自分でとがないと」といつかのMCで話してくれた、そんなジュリーを知っていますから。
「お米をといでいるジュリーが見れた!」みたいな感覚は、この映画におけるジュリーファンだけの特権です。

厳しい真冬の季節に限られた食材で工夫を凝らすこと、これはジュリーの音楽活動の手法に通じるでしょうし、水上さんの原案本『土を喰う日々』で最重要のキーワード「精進」は、今年の新譜「LUCKY/一生懸命」のコンセプトに通じます。

では、そんなジュリー演じるツトムさんが劇中で大悟に至った「明日も、明後日も、と考えずに今日1日を過ごす」、寝る前には「みなさん、さようなら」といったんこの世との別れを告げ、翌日を無事に迎えるという生き方は、ジュリー自身が推した主題歌「いつか君は」とどのように繋がるのでしょうか。
次項ではその名曲について考察していきましょう。


②永遠なんてないことを許せるつよさ

ズバリ、↑ この歌詞部でしょうな~。
先日の「いい風よ吹け」の記事で書いたように僕は『敦盛』の境地には程遠く、「この世」が永遠でないという真理に向き合うことすら怖いです。まして「許せる」なんて到底。
けれども、僕は無理かと思いますが何かのタイミングでその真理を受け入れられる資質を持つ人はきっと世に多くいて、『土を喰らう十二ヵ月』でのツトムさんの場合は自らの体調の異変がきっかけだったのだろうと解釈できます。
そしてツトムさんを演じるジュリーは、おそらく既に「受け入れる」腹を括れている人ですよね。

「いい風よ吹け」「桜舞う」「護られている I love you」等、自作詞曲で感じられるジュリーの死生観。
これはジュリーが覚和歌子さんの作詞曲を、自身が辿る年齢とリンクしつつ歌えた経験が大きいんじゃないかなぁ、と僕は考えていて。
「約束の地」で芽生えて「いつか君は」で確立、とすると腑に落ちる気がするんですよね。
これは正に『土を喰らう十二ヵ月』でツトムさんが直面する死生観ですから、ジュリーが「この映画に合う」と「いつか君は」を推したことも頷けます。

曲想で言っても「長調のバラード」はこの映画のエンドロールにふさわしい。
ただ、中江監督が「主題歌を沢田さんの歌にしたい」と打診しなければそれも実現しなかったわけで・・・ジュリーファンはとても喜んでいますよ、監督!

今回記事を書くにあたって採譜をして歌ってもみたんですけどね、まぁ男声としてはキーが高い高い!
アルバム『愛まで待てない』は、他にも「愛しい勇気」「強いHEART」あたりメチャメチャ高くて、96年のジュリーの喉は充実、円熟を迎えていたようです。

またこのアルバムは、我が国が生んだ傑出のスーパー・ギタリストの1人である故・大村憲司さんが深く関わった最後のジュリー作品でもあり、「いつか君は」はその大村さんの作曲作品(当然アレンジも大村さん)。
映画の世界観を考え合せると、ジュリーには今回、覚さんのみならず大村さんへの改めてのリスペクトがあったかもしれません。

リマスターのことも書いておきましょう。
収録2曲のオリジナルが96年と2006年ということで、リマスターしてもさほど劇的な変化は無いだろうと思っていましたが、聴いてみたら「全然違う!」という。
個人差あろう中での僕の感想は「演奏の聴こえ方はオリジナルの方が好きだけど、ジュリーのヴォーカルはリマスター万歳!」です。

まず演奏の聴こえ方は、「ああ、今年の『LUCKY/一生懸命』ってこうだよなぁ」という仕上がり。
これが世の現在のマスタリング王道なのでしょう。『LUCKY/一生懸命』は初聴ですから違和感はまったくありませんでしたが、オリジナルが耳に沁み込んでいる「いつか君は」「遠い夏」のリマスターは「あれ?」となります。
低音が前に出て、高音が引っこんでいる印象。「ズシ~ン」という耳辺りをして「こっちの方が好き」という方も大勢いらっしゃると思うけど、僕はもうちょっと高音が軽くキラキラしてる方が馴染むんです。

「リミックス」ではなく「リマスター」ですから、各トラックのフェーダー・バランス自体は変わりません。
イコライジング補正の上で、おもに「音圧の向上」を志すと、おのずと低音が際立つ・・・この「今現在の世のリマスター手法」の特色、去る9月に吉田Qさんとお会いした際に色々とお話ししたので、年明け早々に書く予定のQさんのアルバム・レビュー記事(Qさん、結局年内に書くことができずすみません)で触れたいと思います。

次にジュリーのヴァーカル、こちらは今回のリマスターの方が好きです。
「かすかな呼吸で♪」の「かすか」の箇所にドキッとして、「ここ、ジュリーこんなに色っぽく歌ってたんだっけ?」と再度オリジナルと聴き比べ、「やっぱりリマスターの効果だな」と思いました。
僕はよく「ジュリーは「か行」と鼻濁音系の発声が素晴らしい!」と書きますが、今回の「いつか君は」リマスターでは「さ行」にヤラレてしまった感じですね。
みなさまはいかがでしょうか。

大切な人との別れを思い起こさせる歌というのは、どうしたって切なさ、悲しさが同居します。
実は僕も先日、長い間勤務先でお世話になった方(勇退されるまでの十数年は、僕の直属の上司でした)の訃報に接したばかり。
そんな状況で聴く「いつか君は」は胸が詰まる・・・しかしそれは楽曲とジュリーの歌にそれだけ訴えかける力があるということ。
流れ落とされる、というのかな。

『土を喰らう十二ヵ月』のような映画の主題歌が「いつか君は」で良かった、良い映画だったなぁ、と思います。


③カップリング「遠い夏」の謎

最後に、『いつか君は』カップリング(個人的には「B面」と呼びたい)の「遠い夏」について少し。

僕はこの曲が大好きでずいぶん前にお題記事を書き終えていたんですけど、11月にシングルCDのリリースがあったからでしょう、拙ブログ過去記事としては異例のアクセス数を頂いていたようです。
11月ページ別アクセス解析スクショがこちら。

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注目すべきは「入口回数」の数字で、これは「最初にどのページから訪問されているか」を表します。
常連の読者様は、だいたい最初はトップページに来てくださって、その後各ページを読んでくださるという順序かと思います。その場合は、トップページが「入口回数」にカウントされるわけです。

そこで11月の「遠い夏」の「入口回数」の数字を見ますと、ちょっと桁違い。つまり、ハッキリ「遠い夏」についての情報を求めての訪問が多いということなんですよね。
なにせ本格堕ち間もない時期に書いた記事・・・アクセス解析を見て冷や汗が出ましたが、読み返してみるとヒヨッコ時期にしてはまぁまぁ考察っぽい内容になっていて、ホッとしました。

今日ここで考えたいのは、「遠い夏」が今回シングル・カップリングに抜擢された理由です。
選曲は当然ジュリーで間違いないでしょうが、何故この曲が選ばれたのでしょうか。

まず、僕はてっきり「遠い夏」も映画『土を喰らう十二ヵ月』の挿入歌なのかと思い込んでいて、劇中で季節が夏を迎えたあたりで「さぁ来るか、来るか」と待ち構えていました。
しかし最後まで「遠い夏」がかかることはなく・・・意外でした。ストーリーやシーンを邪魔せず、素晴らしい意味で淡々とスクリーンに溶け込める歌だ思うんだけどなぁ。

だから、結果挿入歌ではなかったけれど、ジュリーはやっぱり「遠い夏」を「いつか君は」と別の側面から「この映画に合っている」と考えカップリングに決めたのではないか、と僕は考えたいのですが、どうでしょうか。

いずれにしても、ファンの間でも特に語られる機会がさほど多くはなかった隠れた名曲が、思わぬ形で今見直され再評価を得ているのはとても嬉しい。
僕は年明けの渋谷には参加できないのですが、またセトリの入れ替えがあって「遠い夏」を歌った!なんてことになったらホント悔し泣きしそうです(笑)。『きめてやる今夜』の時の「whisper」以上に地団太踏みそう。
まぁ、今回のセトリは流れ的に完璧ですから、入れ替える曲の予想はまったくつきませんけどね。
実現の暁には是非コメント欄に速報をお願い申し上げます。僕に地団太踏ませてくださいね。


ということで次回更新は、僕の56歳の誕生日である12月20日を予定しています。

毎年この日は「今の僕と同い年のジュリーがどんな歌を歌っていたか」をテーマにお題を選んでいます。
ジュリーが56歳の年にリリースしたアルバムは、あのパワフルな大名盤『CROQUEMADAME & HOTCAKES』。
収録曲ではまだ「カリスマ」「夢の日常」が未執筆なのですが、今回は『過去記事懺悔やり直し伝授!』のカテゴリーにて、「2度目の記事」のお題を採り上げます。さっきチラッとタイトル出した曲ね。
これまた先日の「いい風よ吹け」同様「好き過ぎてヒヨッコ時代早々に書いてしまったものの、考察内容に後悔を残す記事」のひとつ。
白井さんのアレンジ・オマージュ元とか、書きたいことが山積みな名曲です。どうぞお楽しみに!

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2021年10月23日 (土)

映画『キネマの神様』

ご無沙汰しております。

更新できずにいた僕の最近の往生ぶりについては後回しにするとしまして・・・。
気がつけば『BALLADE』追加公演もとっくに始まっており、さらには映画『月を喰らう十二ケ月』の情報も解禁されるなど(以前からジュリーがMCで話してくれていた「1年がかりの仕事」ってこれだったんですね。確かに十二ケ月・・・1年ですねぇ)、ジュリー界の話題も事欠きませんが、今日は書くのが遅れていた映画『キネマの神様』のレビューと言うか、個人的な感想記事を更新させて頂きます。よろしくお願い申し上げます。


①大好きな「原作のゴウ」が見えた!

まずはジュリーの演技から書きませんとね。
僕は原田マハさんの原作小説が大好きで、登場人物や原作ストーリーに思い入れがありました(今年はじめに書いた原田さんの原作『キネマの神様』レビュー記事はこちら!)。
もちろん「ジュリー代役主演で映画化」の報を受けて読んだのですが、僕の場合映画独自のあらすじをよく把握していない時期に一気読みしたので、「あのジュリーがブロガーになる!」という原作に沿ったキャラクターを期待したものです。
実際は映画は小説とはまったく異なるストーリー。それでも、愛すべき「原作のゴウ」を僕はジュリーの演技から随所に感じることができたのでした。

ジュリー自身の意識がどうだったにせよ、特に前田旺志郎さん演じる孫とのやりとりのシーンにそれは強く感じられました。
「もし予定通り志村さんがゴウ役だったら」というのはこの映画を観た人すべてが思いを馳せるところでしょうが、結果として良し悪しは言えないにせよ、あの魅力的な、ヤンチャですぐふてくされて誰彼かまわずトラブルに巻き込む情熱家老人「原作のゴウ」に思い入れのある立場から観ると、代役ジュリーはバッチリ嵌ったキャスティングだったのではないか、と「ゴウと孫」のシーンはそう思わせてくれます。
ちなみに「一人娘・歩の息子=ゴウの孫」の設定は原作には無く、このキャラクターの原作からのモデルとなるのが歩の勤務する出版社の編集長の息子さん。引きこもりなスーパー・ネットユーザーとアナログな無頼漢の世代を離れた対比、情の通い合いは映画の方が細やかに描かれていたとも言えましょう。このあたりがいかにも山田洋次監督作品!

好きなジュリーの台詞も、孫とのやりとりのシーンに多かったです。
例えば。
かつて映画製作に打ち込んでいた時代の若きゴウが書いた一世一代の古い脚本『キネマの神様』を手直しして賞に応募する、という孫のアイデアに、ジュリー演じる老人ゴウが曰く

「オマエ、俺に賭けるつもりか?」

直前に「大井競馬にブッ込みたいから金を貸してくれ」との話があるから光る台詞なんですね。
孫に競馬資金をせびるゴウもゴウだし、それをクールに断る孫も孫です。こんなことは過去何度もあったんだろうな、と思わせる2人のやりとりが本当に微笑ましい中、「孫がいつもと違う反応を返してきた」と興奮するゴウの気持ちの昂ぶりがよく表れた台詞でありシーンでした。

あと「オマエ、童貞のくせに分かってるじゃねぇか!」の台詞も好きで、これ「童貞」はジュリーのアドリブのような気がするんですよ。
台本は「ガキ」あたりだったんじゃないかと・・・勝手な推測ですけどね。


②野田洋次郎さんのこれからに期待!


僕も含め、ジュリーファンはやっぱりジュリーの演技目当てで映画館に足を運んだと思います。
で、実際に作品を観てみなさまはジュリー以外のキャストで誰がお気に入りでしたか?

僕は断然、若き日のテラシンを演じた野田洋次郎さんです。個人的には『泣き虫しょったんの奇跡』から俳優としての野田さんを贔屓にしていたこともあります。
菅田さんや永野さん、宮本さん、北川さん、捻持さん達が素晴らしいことは観る前から分かっていましたから、そのぶん僕は野田さんの熱演により集中できたようですね。

映画が終わった後で一緒に行ったカミさんが、宮本さんと永野さんの雰囲気がそっくりだったと言っていました。もちろんその通りで、それはジュリーと菅田さんにも言えること。
ただ僕はそれ以上に捻持さんと野田さんの雰囲気があまりにも合致していたことに驚きました。

野田さんは音楽家としても大成功していらっしゃいます。仕事柄それは知っていたのですが、俳優としてもここまで凄い才をお持ちというのが凄い。天はニ物を与えまくっています。

朴訥で、身の丈を知る好青年。しかしその胸にはあまりに純情過ぎる情熱を隠し持つ若者、テラシン。
原田マハさんの原作には「若き日のテラシン」の描写は一切ありません。ゴウとテラシン、淑子さんの関係性を大きく拡げ踏み込んだ映画オリジナルの脚本に見事生命を吹き込んだ野田さんの演技には、本当に感動させられました。

きっと野田さんは今後も音楽と演技を両立させ、名バイプレイヤー俳優として大成されるでしょう。
顔立ちも併せて、ちょっとサリーさんみたいな雰囲気、大物感が伝わってきませんか?
これからも僕は俳優・野田洋次郎さんを注視し推していきたいと思っています。

そうそう、ひとつだけ、劇中での野田さんの「音楽家ならでは!」という特別な演技について。
若きテラシンが青年時代のゴウを自室に招き入れて「恋の悩み」を相談するシーンで、テラシンはアコギを弾きながら話をするんです。これね、ギターを嗜む人なら一目なのですが、「後から録った音を当てる」という普通の手法ではないですから!
野田さん、演技しながらマジ弾きです。音もその場で同時に拾われています。
ポール・マッカートニーがLIVEで「ブラックバード」を歌う前にMCをしながらGとDのコードトーンのヴァリエーションで軽く音鳴らしている、正にあんな感じ。このシーンだけで、野田さんのアルペジオが相当の腕前であると分かります。
これから映画を観る方、再度鑑賞されようとしている方は是非注目してください。


③コロナ禍と志村けんさん

本来主演であったはずの志村けんさんは、憎きコロナに倒れ天国へと旅立ってしまいました。
山田監督や森本プロデューサーとの深い縁もあり我らがジュリーが代役を快諾、映画は見事完成しましたが、撮影や脚本、製作過程で「対コロナ」のテーマが織り込まれ、何より志村さんへのリスペクトが随所に押し出される仕上がりとなったのは、志村さん亡き後の「路線変更」ではあったでしょう。

そして、緊急事態宣言下での公開。
そんな時ですから僕もやはり都内の大きな映画館に出かけるのは避け、居住する埼玉県でも一番家から近いTOHOシネマで鑑賞することにしました。
公開からある程度日が経っていたこともあり、お客さんは20人いたかどうか。
でも、そんな状況下で鑑賞できたことが、逆にこの映画の「ジュリー代役決定後の新たなコンセプト」を受け止めるにはより適した環境でもあったのかなぁ、と思います。

いつかDVD或いはテレビ放映等で再鑑賞した人は皆、改めて志村さんのことを思い出すでしょう。
そしてその時に「映画館で観たあの頃は本当に大変だったな」と思えるまでにコロナ禍が収束していることを今はただ願うばかりです。

最後に映画評とは本質を離れますが、僕はこの場を借りて、世間ではあまり語られることのない志村さんの素晴らしい音楽の才能、センスについて書き留めておきたいです。
劇中、78歳にして思わぬ名声と評価を得たゴウがお祝いの場で「得意の歌」を披露するシーンがあります。歌われるのはあの有名な志村さんの「東村山音頭」です。
映像で流れるのは「4丁目」「3丁目」まで。ただもちろん僕ら観る側としては、ゴウがその後ノリノリで「1丁目」まで歌ったのだろうな、と想像できます。

のどかな長調の「4丁目」。
哀愁漂う短調の「3丁目」。
そして80年代後半の空前の世界的ラップ・ブームを思いっきり先取りしたファンキーな「1丁目」。

曲想の異なる3つの東村山音頭がそれぞれ本当にキャッチーで、しかも短いヴァースのみで成立さているという志村さん驚愕の才能。
僕は正にリアルタイムで歌が大衆に膾炙してゆく過程を体験し、「子供達が皆歌っている」と言われたその中の1人だったわけですからなおさら感慨深くゴウの歌を聴きました。
これは志村さん主演時から脚本にあったシーンなのか、それとも新たに「追悼」の意を捧げたのか。
いずれにしても「代役はジュリー以外考えられない」という話は、「東村山音頭をゴウが歌う」シーンを以って特に頷けるのです。



さて映画公開からもう2ヶ月以上が経ち、世間ではコロナ感染者数が減ってきているなどと言ってはいますが、最近になって遂に会社同僚や親しい音楽仲間にも感染者が出て・・・僕としては確実に身近に迫ってきているな、という印象でまったく油断できません。

僕は先日2度目のワクチン接種を終えました。
正直とても怖かったです。実は8月に受けた1度目の接種で結構な副反応が出まして。
最近巷で認知されつつある「心筋炎」を皮切りに、ネットで調べたら出てくるレアなケース含めほぼフルコースでした。特に往生したのは一定期続いた吐き気と、なんとも説明し難い身体の脱力感です。
さらに、これは因果関係不明なのですが腰痛と円形脱毛も発症。あと、突然3キロ太った・・・(汗)。

そうしたこともあり普通の人より長い2ケ月弱の間隔を開けての2度目接種。
パスする選択肢も考えられましたが、僕の場合は体質的にコロナ感染すると重篤化の可能性が高いこと、またカミさんがアレルギー持ちでワクチン接種できず、万一感染という時僕が動ける大勢を整えておかなければならないこと、そして何よりジュリーのLIVEに少しでも安心して参加したいじゃないですか。
ということで決行しました。
結果、症状は1度目とほぼ同じで熱がちょっと高かったくらい。覚悟ができていたぶん前より楽に思えます。あらかじめ有給休暇の予約もとっていましたしね。「休む」準備は万端でした。

仕事では、長年同部署で頑張ってきた同僚が8月に大病を患い現在もリタイア中。
業務の負担も増しました。今日からまたまた更新間隔が開いてしまったら、「あぁ、色々と往生してるんだな」と思ってください(笑)。
それではまた!

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