沢田研二 「若者よ」
from 『涙色の空』、2010
1. 涙色の空
2. エメラルド・アイズ
3. まほろばの地球
4. 若者よ
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随分お待たせしてしまいました~。
本日のお題は、ジュリーのニュー・マキシシングル『涙色の空』からいよいよ大トリ。
発売前からじゅり風呂界の話題を攫い、蓋を開けてみるまで誰もその実態を予測できなかった、ストレートが故の問題作(?)。
そして僕の観たところ、絶賛開催中のソロツアー『秋の大運動会~涙色の空』のセットリストにおいて、新曲4曲の中では最もお客さんのノリが良い、ロッケン・ジュリーなナンバーです。
ちょっと書くことが増えてしまったので、枕はここまで。
「若者よ」、伝授!
まず、今回の記事執筆にあたって、僕はこのようなものを購入いたしました。
ザ・ジャガーズのベスト盤。
シングル集・・・なのかな?ライナーが簡単なバンド履歴紹介しか掲載していないもので、よく分かりません。
先だっての大阪グランキューブ公演後の打ち上げにて、いわみ先輩が高らかに宣言した
「柴山さんの作曲はジャガーズなんだよDY君」
というお言葉。
大先輩にそんな伝授をされてしまった以上、そこを無視して楽曲記事を書くわけにはまいりませんよ!
で、聴いてみました。
おぉ、勝手に描いていたイメージとは全然違うバンドだぞ!
僕はジャガーズについてはまったく知識を持たず、「キサナドゥーの伝説」に原曲があったことすら、例のGS楽譜集復刻の際に初めて知ったというような状況。
で、音をちょっとだけ聴いて
「ベンチャーズの影響を受けた湘南系・・・ワイルドワンズに近いな」
などと、決めつけてしまっていたのでした~。すみませんすみません。
CDを購入して驚いたのは、全収録10曲のうち半分までをも、あの筒美京平さんが作曲なさっているという事実。
オックス「スワンの涙」が筒美さんの作品であることは知っていましたが、ジャガーズにも深く関わっていらっしゃったのですね。
筒美さんは、僕が大野克夫さんと同じくらいに尊敬する、昭和の大作曲家です。
下地に明らかな洋楽のエッセンスがあるのが大きな特徴で、各作品の元ネタを列挙するだけで1冊本が書けてしまうほどです。
よく巷で「パクリ」という言葉を耳にしますが、これには2種類あって
①卓越したセンスで元ネタの楽曲を新たに発展させ、違う解釈におとしこむ志によるもの
②さも自らのオリジナルであるように見せかける厚顔無恥な表現によるもの
で、筒美さんは当然ながら①。と言いますか、①において右に出るものはいない、というくらいのプロフェッショナルです。
僕は②についてはハッキリ侮蔑しますが、①が卓越している作曲家さんにはとても憧れるのです。
今回購入したザ・ジャガーズの筒美作品の中で言いますと、例えば「マドモアゼル・ブルース」。
クールで渋~い大名曲でしたが、これは・・・。
僕と同じくビートルズ・フリークなジュリーファンでいらっしゃるひいきゃん様やちこ様がお聴きになっても一目かと思います。これは、「今日の誓い」です!
元ネタが渋過ぎますよ筒美先生・・・。
ここでまた恐縮ながら手前ミソなお話を。
もう10年以上前になりますが、僕の勤務する会社から、素晴らしい譜面が刊行されたことがありました。
『筒美京平/永遠のベスト・ヒット100』
誰もが知る名曲ばかり。まさに一家に一冊、といった豊穣の品なのですが、思うようには売れませんで・・・残念でした。
その後の在庫処理などを経て、現在は絶版状態になっております。
でも、この楽曲群・・・凄まじいと思いませんか?
そして、筒美さんの作風はこの収載曲のようなキャッチーなものばかりではないところがまたスゴイ。
ジュリーファンであれば、冒険心に富んだ『女たちよ』という好例でもって、筒美さんの功績を堪能することができますね。
・・・ずいぶん話が逸れました(だから枕を短くしたのよ)。
結局、ザ・ジャガーズと柴山さん作曲「若者よ」の比較考察はどうだったかと言いますと。
こんな僕でも、共通のエッセンスを感じとることができました!
ヴォーカルに絡む哀愁のリード・ギターや、明解なマイナー・スケールを多用して押しまくる進行などがそうです。
特にリード・ギター!
間奏では、明らかにレコーディングの入力音量レベルを大幅に超えてしまった時に起こる「ブチブチブチ・・・」というノイズが入っていて、最初聴いた時には、「うへ~!」と思ってしまいましたが、どうやらこれはわざとかもしれない・・・。
他の演奏音に比して、エレキギターの単音が爆裂的にデカい!というのもまた、60年代GSの味だったりするのです。(タイガースは小さいけどね。『自由と憧れと友情』の中に数曲デカいミックスのギターがあるけど・・・その辺りについてはいずれね)←コラコラコラ
まぁ、とにかく・・・然るに柴山さんの「若者よ」の作曲は、まさに洋楽直系と言える特色をも兼ね備えています。
例えばイ短調(=Am)の進行だとしたら、ドミナントのE7の直前にフックを入れる作曲手法がすぐに考えられますが、「若者よ」のようなメロディーでそのフックのコードに最も一般的な「Bm7-5」を使用しますと、フォーク的要素が強くなってしまいます。
そこで柴山さん、代わりに「B7」を投入します・・・これで、不思議なことにとてもGSっぽくなるのですね。
いわみ先輩の頭の中にはひょっとしたら具体的な曲名があるのかもしれませんが、僕が一番「若者よ」の雰囲気に近いと感じたのは、「君に会いたい」というナンバーでした。
こちらは筒美作品ではなく、作詞・作曲ともに瀬川正一さんです。実に明解な洋楽直系のヒットチューンです。
いわみ先輩はおそらく「若者よ」を聴いてすぐに、これらの点に気がつかれたのでしょう。さすがは、「とにかくウンチクが止まらないおじさま」と呼ばれるお方だけのことはあります。
(註:DYNAMITEは「おじさん」で、いわみ先輩は「おじさま」です。ココ大事。引っかけ問題として試験に出ます)
ただ、ですね。
僕はこの「若者よ」のCD音源は、やはり下山さんのアコースティックギターをもう1トラック追加すれば更に良くなったのではないか、という考え方でもあります。
マキシ・シングル『涙色の空』収録曲のアレンジについて、LIVE演奏との接近を狙ったものとして特にタイトルチューンの「涙色の空」を絶賛する記事を書いてきました。
「若者よ」もまた、LIVEに限りなく近い最小限のトラック数でレコーディングされています。唯一、柴山さんのリードギターが後から追加されているだけです(そのトラックこそ、GSの雰囲気を出しているのですが)。
泰輝さんのエレクトリック・ピアノがすごくセンスの良い噛み方をしているだけに、楽曲全体を通してジャカジャカかき鳴らしているアコギの音が薄く聴こえていても良かったかなぁ、と。
しかし、現在行われているソロツアーを観て、実際のLIVE演奏についてはこのアレンジでまったく問題無いことが解りました。
いや、問題無いどころか、凄まじい盛り上がりです。
柴山さんのリードギター、下山さんのサイドギターと、エレキ2本の絡みは素晴らしく、ジュリーのヴォーカルも猛々しく、また若々しい。
一体どの辺が
♪ 俺たち、老人! ♪
B7 E7
(註:先述したGSっぽいコード進行部のひとつです)
なのでしょうか。
さらに言いますと、これは多くのじゅり風呂さんも書いていらっしゃるのですが、この曲での柴山さんのコーラスは、爆音です!
さすがは作曲者、歌っていて気持ちが良いのでしょうね。
一番声を張り上げるのは、キメのメロディー
♪ POWERLESS・・・・・・POWERLESS POWER ♪
C G7 C
の部分。
主メロのジュリーが
「ミ~ミ~ミレド、ミ~ミ~ミレド・・・♪」
という音階で歌うのに対し、柴山さんは
「ソ~ソ~ソファミ、ソ~ソ~ソファミ・・・♪」
と歌います。
結構高い音ですけど、柴山さんは色々なジュリーナンバーのLIVEで、かなりの高音コーラスを担っていますから、余裕でしょうか。
さて、ストレートなジュリー自身の歌詞について。
この「若者」というフレーズの範疇には、僕の年代も含まれていると感じました。そして、ジュリーは自分の年齢を敏感に意識している、とも。
ステージではあんなに元気なジュリーだけど、MCで身体のことを色々と言っているのは、きっと本音ですよね。でなければ・・・「まかせてるぜ」のメッセージを受け止められない。
「見守り支えていく♪」というジュリーの言葉を受け止めたいから、僕は敢えてそう考えようと思ったのです。
あと、「POWERLESS POWER」の解釈が難しい・・・。
関連して思い浮かべるのは、「我が窮状」の「老いたるは無力を気骨に変えて♪」であったり、「緑色のkiss kiss kiss」の「声なき声♪」であったり。
「パワーレス」とは、パワーが無いということではなく、「ささやかなパワー」という意味ではないか、と今は考えています。
(2013年1月註:何と恥ずかしい・・・とんでもない浅い考察です!2013年お正月コンサートで歌われたこの「若者よ」。セットリストのリンクを貼るために久々に『涙色の空』リリース当時に自分が書いた当記事を読んで愕然としています・・・。
「パワーレス・パワー」とは「武力なき力」。
「希望」のコーラス・パートにも登場する、作詞家・ジュリーにとって大変重要なフレーズです!)
最後に。
「若者よ」は今回のツアー・セットリストの中で、大変盛り上がるナンバーのひとつになっています。
僕が渋谷、大阪と観てきた感じですと、Bメロの
♪ 舵取りをするのは君だ 若者たち ♪
Dm Am
の部分からお客さんの手拍子が頭打ち4連打になり、サビもそのまま雪崩れ込む、というのが参加パターンになっているようです。
でも、ジュリーは2番Bメロ直後のサビ
♪ 若者よ若者よ 俺たちはまかせてるぜ ♪
C G7 C
の箇所では、1拍ずつ拳を突き上げていました。
次回10月29日の渋谷で、僕はこの拳突き上げを踏襲してやってみようと思っています!
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