ジュリーをとりまくプロフェッショナル

2024年7月 4日 (木)

5.19 『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE2024」』セットリスト&レポート

今日7月4日は、生前親しくさせて頂いていたタイガースファンの先輩、真樹さんのご命日です。
お別れがジュリーの『OLD GUYS ROCK』の年でしたから、早いものでもう6年。真樹さんにお話したいこともどんどん溜まって増えてきています。

毎年この日は、タイガース関連の記事を書いて真樹さんに捧げると決めています。
今年は、去る5月19日に開催された『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE2024」』のレポートを、真樹さんのご命日に合わせて書いておきたいと思います。



ザ・タイガース&ロックの先達にしてひと回り年長の友人であるYOUさんが主催する四谷左門町LIVEは、あのコロナ禍の年に始まり毎年欠かさず開催され、僕もスタッフとして年を追うごとに深く関わらせて頂くようになっていますが、昨年は多忙のためLIVEレポートは書くことができませんでした。
で、今年も実際は昨年以上に忙しいという状況なのですが、YOUさんが容赦なく「今年は書いてね~」と。

他でもないYOUさんにお願いされてしまったら、そんなん命令と同じですよ・・・(笑)。
頑張ります。


まず最初に大事なことから。
今年の左門町LIVEは、YOUさんの決断により例年とは違うスタイルで行われました。

皆様御存知の通り、主演のピーさんが今年に入って矢継ぎ早に肺炎、腰椎骨折に見舞われました(最近は白内障の手術も)。
3月のEXシアターLIVEでは元気にドラムを叩きステージも大成功、誰もがピーさんの「完全復活」を確信しましたが、ピーさんが相当無理をし負担を抱えていることを見抜いたYOUさんは、自身主催の左門町LIVEでは
「絶対にピーさんに無理をさせない」
と決めたそうです。

昨年まで1日3公演だったのを2公演に減らし、ピーさんはドラムスの演奏無し。
ピーさんには全編リード・ヴォーカルに専念して貰い、途中休憩も充分とれるような構成に。

これもひとえに「この先ピーさんにはまだまだ長く活躍して頂き、ファンの皆様とおつき合いできるように」とのYOUさんの思いでした。

僕は左門町LIVEではまずバンドメンバー用のセットリスト採譜、スコア作成という任務があるため、ピーさんの身体に異変が起こる前、既にYOUさんから今年のセットリスト案概要を知らされていました。
最終的にそのセトリからは大幅な入れ替えがあり、ピーさんが負担なく歌に専念できるザ・タイガースのナンバーと、ソロ・オリジナル曲を中心に纏められました。
僕が初期段階で採譜しメンバーの元へと送った、いかにもYOUさんらしい選曲だったレアな楽曲達は、来年以降きっと披露の機会が来ると思います。
みなさまどうぞお楽しみに。

さて、昨年アキレス腱断裂のアクシデントで欠席となったベースのかまちゃんも復活、今年はゆうさんバンド正規メンバーが揃いました。
昨年代役のベーシストだったキム兄さんが今年はスタッフとしてお手伝いしてくださることになり、ピーさんのバックアップは万全の態勢。

それではLIVEレポート、セトリ順にまいりましょう!

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「怒りの鐘を鳴らせ」
「割れた地球」
「美しき愛の掟」

YOUさんが熟考の末に「ヴォーカリスト・瞳みのる」のステージとして纏め上げたセトリは曲想ごとの配置に狙いがあり、冒頭にハードなタイガース・ナンバー3曲を固め打ち。
(ピーさん曰く)「いきなり激しいね~」というオープニングから、フルテンションのピーさんが見られます。

さて、第2回左門町LIVEから毎年僕が担当しているヴォーカル・エフェクト操作(YOUさんのコーラスを3度或いは5度、オクターブ等の複声に変換)なのですが、便利な機械とは言え人間の肉声とは違いどうしても人工的なハーモニーに聴こえてしまうのが難点。
今回はYOUさんから「極力最小限の使用で」とお願いされており、スタジオリハ段階からバンドと一緒に試行錯誤しました。

そんな中、救世主が登場。
今年はピーさんの代わりにセトリ全編ドラムスを叩くことになったけんちゃんが「俺、コーラスもやりましょうか?」と立候補してくれたのです。
おもに高音パートを担当してくれました。
例えば毎年エフェクト操作に大忙しだった「怒りの鐘を鳴らせ」、今年の僕の役目はYOUさんの声をオクターブ変換してサリーさんのパートを作っただけ。あとの箇所はYOUさんとけんちゃんの純肉声ハーモニーです。
やはりコーラスは生身の声の方が全然良いですねぇ。

「割れた地球」と「美しき愛の掟」では、後奏のギター・ソロで入魂トランス状態となるYOUさん。
スタジオリハの段階では「YOUさんの気が済むまで他メンバーが待つ」スタイル(笑)で演奏していましたが、最終的に「やはり小節数は決めておこう」ということになり、本番当日は客席最後方にいる僕が小節数カウントして「これで終わり」の合図をステージに送ることになりました。
「美しき愛の掟」はキッチリしたコード進行の循環があるので問題ありませんが、「割れた地球」の方はワンコードが続くため、油断して演奏に身を任せていると「今何小節目?」と迷子になります。
ノリノリで聴きたいのを我慢して、クールにカウントしていましたよ~。

ちなみに「美しき愛の掟」は、ベースのかまちゃんがリハで「今回のセトリで演奏してて一番楽しい」と言っていた曲。
Aメロ2回し目の超絶フレーズは、ベーシストなら誰しも弾いていて気持ちが良いのでしょう。
ただし「弾くだけ」なら。
YOUさんが「このベースを弾きながらリード・ヴォーカルもとる人がいるんだよ」と言うと(二十二世紀バンドのJEFFさんですね)、かまちゃんは「え~っ?!」とビックリしていました。

このオープニング3曲、それぞれコンセプトもリリース時期も違うのに、連続すると組曲のように聴こえてしまいます。
ピーさんのシャウトはドラム叩き語りの時とは少し違っていて、ヴォーカル部合間合間のうねりを頻繁に入れてきてくれました。

「青い鳥」
「散りゆく青春」

MCを挟み、今度は穏やかなタイガース・ナンバーの名曲が2曲続きます。
いずれもタローさんの作曲作品で、ピーさんもタローさんのメロディーを絶賛。

「青い鳥」では、事前に打ち合わせがあったわけではないのに、ピーさんは最初のスタジオ・リハの段階から2番のサビ部「あ~おい、と~り~♪」のリード・ヴォーカルを目線でYOUさんに譲ります。
6月の上野黒船亭公演でも同様のシーンがありました。
YOUさんはこのピーさんの気遣いがとても嬉しいのだそうです。

「ミスター・ムーンライト」
「ホンキー・トンク・ウィメン」
「ハートブレイカー」

続いてタイガースの代表的な洋楽カバー3曲。

いずれも過去の左門町LIVEで演奏されたことがある、という中で僕の今年のイチオシは「ホンキー・トンク・ウィメン」です。前回演奏時とはガラッと雰囲気が変わりましたから。
別にアレンジや演奏フレーズ、譜割りを変えたわけではありません。基本、前回とまったく同じ。
ただひとつの変化は、聖子さんが生のカウベルを叩いたこと・・・これが素晴らしかったのです(前回はシンセでカウベルの音を出していました)。
聖子さんは完全なクラシック畑のプレイヤーとして「ゆうさんバンド」に加入しましたが、カウベルをエモーショナルに演奏する御姿には、ロック魂を感じました。
これは聖子さん自身がここ数年のLIVEで徐々にロックに馴染んできたこともあるでしょう。
ピーファンの皆様からの支持も年々上がり、最後のメンバー紹介時も聖子さんへの声援は大きかったです。

「ハートブレイカー」は毎回ピーさんがドラムスに専念、YOUさんがリード・ヴォーカルというスタイルでやっていますが、今年はピーさんがドラムを叩きませんから、ここでピーさんはいったん退場、ゆうさんバンドのみでの演奏の間に充分休憩をとって頂くという構成です。
そのぶんメンバーは、重低音ドラマー・けんちゃんをはじめ張り切って演奏。
昨年に引き続き、おーちゃんの間奏ソロも炸裂しました(メタル好きの血が騒ぐ曲なのかな?)。

「クロスロード」

この日「昼の部」(公開リハーサル)のみのご参加だったお客さんがこのブログを読んでくださっていたら、ここで「あれっ?」と思われたでしょう。
「夜の部」のみ突発的に演奏された、エリック・クラプトン(クリーム期)の代表曲です。

本来は「ハートブレイカー」が終わったらそのままメンバーがはけてトークコーナーなんですけど、「ハートブレイカー」でのけんちゃんのドラムスを控室で聴いていたピーさんがウズウズ状態となり
「僕にも何か叩かせて!」
と乱入してきた、というわけ。
急遽ピーさん、YOUさん、かまちゃんの3人体制で「クロスロード」の演奏となったのでした。

何故この曲かと言うと、「クロスロード」が典型的なブルース進行だからです。
例えばこれがメンバー初顔合わせのロックバンドで、「とりあえず何かやってみよう」となった時、「クロスロード」のようなブルース・ナンバーは最適。キーさえ決めればすぐ合わせられますから。
進行中のひと回しでは、ソロかと見まがうほどの激しいピーさんのドラムスも聴けました。やっぱりピーさんの音は独特、唯一無二ですねぇ。

「安藤、安堵して」

左門町LIVE恒例のトークコーナーでは、今回もピーさんとYOUさんの友情漫才が繰り広げられましたが、その中で例年と違いシリアスな時間もありました。
ピーさん長年の友人である日経記者の安藤さんが若くして亡くなられ(ピーさんのひと回り年下とのことで、本当に突然のお別れだったそうです)、安藤さんとの出会いや思い出が語られたのです。

ピーさんは後日に迫っていたお別れ会に向け安藤さんに捧げる詞を一気に書き上げ、KAZUさんの作曲を得て1篇の鎮魂歌としていました。
「安藤、安堵して」・・・この曲を今年の左門町LIVEのトークコーナーで歌いたい、とのピーさんの希望があり、YOUさんが弾くギター1本の伴奏でそれは実現しました。
安藤さんの訃報が左門町本番差し迫ってのタイミングでもあり、この曲のスタジオリハは1週間前の唯1回のみでしたが、YOUさんは見事に演奏を仕上げてきました。

そのスタジオでの2人のリハ演奏にメンバーも僕もしんみりと聴き入る中、ピーさんはしきりに
「大丈夫かなぁ、大丈夫かなぁ」
と。
いえ、歌や演奏に不安がある、ということではありあせん。ただ1点「本番で泣いてしまうのではないか」という自身の心境をピーさんは案じていたのです。
実際スタジオでは泣いていらっしゃいましたから・・・。

結果、左門町LIVE本番でピーさんは涙を浮かべてはいたものの取り乱すことなく歌いきりました。

「この先レコーディングするとか、他LIVEで歌うとかいったことは考えていない」というこの曲をファンの前で歌う機会を得たこと。
それが日付的にもピーさんの気持ち的にも5.19と合致したこと。
これこそがYOUさんの主催する左門町LIVEの特性、個性なのだ、と改めて感じさせられます。

「テネシー・ワルツ」
「花は何処へ」
「My Way ~いつも心のあるがままに~」
「ラヴ・ラヴ・ラヴ」

左門町LIVEでは、トークコーナーが終わってからセットリスト本割ラストまでの流れが決まっています。

まずは「有名スタンダード」のカバー・コーナー。
このコーナーでのピーさんの狙いは
「世間でよく知られているメロディーの曲が、実際どんな内容を歌っているのか、までを自身の訳詞で掘り下げ、お客さんに知って貰いたい」
ということ。これは芸能界復帰後のピーさんのライフワークでもあります。
「世にある有名洋楽の日本語ヴァージョンは、原詞とかけ離れているものがあまりに多い」
とピーさんは、ご自身ではできる限りの直訳を、しっかり韻を踏んで仕上げることに重点を置いています。

今年は「テネシー・ワルツ」の原詞(英語)、中国語訳、日本語訳の三ヶ国語ヴァージョンが、聖子さんのピアノ伴奏(要所でけんちゃんのドラムスがサポート)で披露されました。
「悲しい失恋の歌なんだよね」とピーさんが言う通り、僕も今回のピーさんの訳詞で初めて「テネシー・ワルツ」の歌詞の内容を知ることができました。

続いてピーさんの思い入れの深いソロ・オリジナルのコーナー。
ここでは毎年「明月荘ブルース」を歌っていたピーさん、今年は「花は何処へ」(昨年の新曲、ウクライナ情勢を題材とした反戦歌)と入れ替えてきました。
やはり世界をとりまく現況、ピーさんは「黙ってはいられない」との思いが強かったのでしょう。

今回「明月荘ブルース」がセトリから外れたことにより、「左門町LIVE開始以来必ずセトリ入りしている」のは続く「My Way ~いつも心のあるがままに~」「ラヴ・ラヴ・ラヴ」の2曲となりました。
「My Way」はピーさんの音楽活動において、左門町LIVE限定の1曲となっており、ピーさんの人生を総括する日本語詞を載せた全13番にも及ぶ大長編です。
そこから間髪入れず「ラヴ・ラヴ・ラヴ」のフィルに移行するのが恒例。
「ラヴ・ラヴ・ラヴ」が終わるとピーさんとバンドは喝采を受けつついったん退場となります。

~アンコール~

「秋望」
「雨の街角」

今年は音源リリース前のピーさんソロ・オリジナル新曲2曲が、アルンコールでまず歌われました。
「秋望」はEXシアターでもセトリ入りしていましたが、「雨の街角」はこの左門町LIVEが初披露です。
「秋望」は聖子さんのシンセ、「雨の街角」ではYOUさんがソロを受け持ち、ピーさんの「思い」に寄り添います。

「秋望」は、ピーさんが杜甫の「春眺」からインスパイアを受け作詞した反戦歌で、「ガザ」「ウクライナ」を題材としています(あの痛ましいガザ侵攻は、昨年秋の出来事でした)。

一方「雨の街角」は失恋の歌で、「今までに無かったようなメロディーで気に入っている」と、ピーさん現在イチオシのオリジナル。
僕はこの曲、作曲のKAZUさんが最近のピーさんの歌唱スタイル(崩しメロのような感じでパパパッ、と歌い駆けることが多い)を念頭に、無理なくその歌い方ができるように工夫し作曲されたのではないか、と想像しています。名曲です!

ちなみにYOUさんがスタジオリハについて「自分のギターソロがまだ固まらない」とブログに書かれていた曲こそ「雨の街角」のことで、ピーさんお気に入りの1曲だからこそ、YOUさんは最後の最後まで妥協せずフレーズを練り込んでいたようです。

そして、ピーさんからのお知らせ。
近年次々と新曲を仕上げてきたピーさん、遂にファースト・ソロ・アルバムが秋にリリース予定です。
バースデイ・イベントでの発売を視野に入れていらっしゃるそうで、正にファン待望ですよね。

5曲入りだった『久しき昔』もミニ・アルバムとして僕は捉えていましたが、今回は堂々フル・アルバムということでしょう。
ピーさんの作詞のスピード感と意欲、さらにはピーさん曰く「本当に色々な引き出しを持っている」という作曲のKAZUさん、このお2人がいれば近々のフル・アルバム製作は疑いない、と僕は一昨年から考えていましたし、これは本当に楽しみ!
発売が待ち遠しいです。

「色つきの女でいてくれよ」

今年の大トリはこれ!

実はこの曲、昨年セトリ入りの予定でした。
「タイガースの中で個人的に一番好きな曲」と、かまちゃんがリクエストしていたのです。
ところがそのかまちゃんが怪我で出演できなくなったことを受け、メンバー想いのYOUさんが「来年にとっておくから」と粋な計らい(セトリは「GS陽気なロックンロール」に変更)。
そして今年かまちゃんの怪我は完治、リクエスト曲実現が叶ったのでした。

ピーさんのカウントから始まった「色つきの女でいてくれよ」では昼の部、夜の部とも会場は総立ちになってくれて、演者にとってもお客さんにとってもハッピーな締めくくりとなりました。

大変な盛り上がりの中、僕はと言えばお客さんと一緒に立ち上がることもできないほどの大忙し。
YOUさんのコーラス・メロディーからさらに3度下のハーモニーを作りつつ、YOUさんのソロ・ヴォーカル部(ジュリーのパートですね)ではエフェクトを完全に切らなければなりません。
今回のセトリで最もエフェクト操作が複雑だったのが「色つきの女でいてくれよ」でした。

まぁしかし僕のそんな苦労は置いて、アーカーブを購入してくださった皆様にこの曲で再度チェックして頂きたいのが、けんちゃんのコーラスです。
けんちゃんが担当したのはシローさんのパート。
サビ部で字ハモではなく、「あ~、あ~あ~♪」とキレイな高音で歌っている、あの印象的なシローさんの声を完璧に再現してくれていますよ~。
是非アーカイヴでおさらいしてみてください。



大成功に終わった左門町LIVE2024、最大の功労者はやはり今年もYOUさんです。

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ご自身の肉体的、経済的負担をまったく省みずピーさんに尽くすYOUさんですから、それは毎年のこととは言え、今年は特に・・・ピーさんの身体を徹底的に気遣い、セトリ構成の練り直し、各所への配慮、さらには「安藤、安堵して」の突発的な演奏案にもスピーディーに対応。
あのタフなYOUさんが、LIVE数日後しばらく寝込んでしまったくらいですから、ご自身気づかない間にも相当疲労の蓄積があったのでしょう。

そうそう、常に万事抜かりのないYOUさんが、今年は珍しく本番に限っていくつかの忘れ物をしました。
そのことをしても、YOUさんが当日直前までかなり自身を追い込んでいたのだと想像できます。

その忘れ物の中でYOUさんが「これはマズい!」と顔色を変えたのが、『三日月』のCDです。
左門町LIVE常連の皆様なら、最後にピーさんが退場する時は必ずこの曲をBGMに乗せて、というのはよくご存知でしょう。
「これだけは、お店のBGMではダメだ」
と焦るYOUさん。
入場時間待ちをされていたお客さんの中で、「三日月」を取り込んでいらっしゃる方がスマホを貸してくださったのですが、PAとの接続の関係でうまく行きません。
出番を数10分後に控え、これほど困った様子のYOUさんは本当に珍しい。

そこで不肖DYNAMITE、おもむろに自宅へ連絡。
電話に出たカミさんに
「俺の部屋のCD棚から『瞳みのる/三日月』ってやつを探して!」
と。
CDは無事見つかり、そのままカミさんに四谷まで持ってきて貰って、BGMの用意は間に合いました。

YOUさんは「CD持ってたの?」なんて驚いていましたけど、そりゃ持ってますって。
今ではすっかりスタッフ面していても、僕の正体はただの1ファンなのですから(笑)。

スタッフとして僕は毎年大したことはできていないのですが、この件はYOUさんから当日お別れ際にも「本当に助かった」と御礼を言って頂けたくらいで、より充実の2024年左門町LIVEだったなぁと、今も感慨に浸れています。

毎年のことながら、LIVE本番はもちろんスタジオリハの日々も胸に刻まれた思い出は数知れず。
リハ、本番ともピーさんが「お気に入り」という今川焼を大量に差し入れしてくださったり、スタジオリハの休憩中にピーさんの携帯にタローさんから電話がかかってきて、一同聞き耳(笑)をたてていたり(ジョイントLIVEのスケジュール相談だったそうです)。
楽しい裏話、書ききれなくてすみません。


最後になりましたが、皆様ピーさんの身体をとても心配されていることと思います。

僕はこの左門町LIVE後も、6月に上野の老舗洋食店・黒船亭にて開催されたディナーショー(1日2公演でしたから厳密にはランチ&ディナーショー)にスタッフとして参加したり、今週末6日土曜日に六本木で開催予定のJANETTEさんとのジョイントLIVE用のカンペ作成等、「YOU企画」主催のピーさんの活動を継続してお手伝いしていますが、ピーさんはメチャクチャお元気です。

もちろんオフィシャルブログで書いていらっしゃる通り、お医者さんとのおつき合いは一生ものとのことですが、頭脳の冴え、相変わらずの愉快なおしゃべり、軽快なフットワーク、メールでの格調高い文章も健在どころか加速しています。
何よりポジティブなお人柄ですので、これからますます音楽活動、創作活動に邁進されてゆくでしょう。
僕も微力ながら、自分の身体が動く限りは全力でお手伝いさせて頂く決意です。

さて、先述しました黒船亭ディナーショー(6月16日)、こちらもレポを書くつもりです。
冒頭の繰り返しとなりますが、YOUさんに「書いてね」とお願いされてしまったら、僕にとってそれは命令と同じなのですよ(笑)。
通常のLIVEとはまた趣の違った、楽しく貴重な体験をさせて頂きましたから、「黒船亭での愉快な1日」みたいな感じで、レポも少しスタイルを変えて書ければなぁ、と考えています。

そして、あらかじめピーファンの皆様にも先にお詫びをさせておいてください。
僕は多忙のため昨年から、ブログに頂いたコメントにまったくお返事ができておりません。
その旨平に御容赦頂きたく、お願い&お詫び申し上げます。もし当記事にコメントを頂けたら、すぐにではなくても必ず目を通します。感謝の思いは変わりません。

それでは次回更新、黒船亭ディナーショーのレポートまでしばらくお待ちください。
なんとか夏が終わるまでには!

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2023年4月20日 (木)

ザ・ワイルドワンズ 「あなたのいる空」

『All Of My Life~40th Anniversary Best』収録
original released on single、2004

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disc-1
1. 想い出の渚
2. 夕陽と共に
3. ユア・ベイビー
4. あの人
5. 貝殻の夏
6. 青空のある限り
7. 幸せの道
8. あの雲といっしょに
9. 可愛い恋人
10. ジャスト・ワン・モア・タイム
11. トライ・アゲイン
12. 風よつたえて
13. バラの恋人
14. 青い果実
15. 赤い靴のマリア
16. 花のヤング・タウン
17. 小さな倖せ
18. 想い出は心の友
19. 愛するアニタ
20. 美しすぎた夏
21. 夏のアイドル
22. セシリア
23. あの頃
disc-2
1. 白い水平線
2. 涙色のイヤリング
3. Welcome to my boat
4. ロング・ボード Jive
5. 夏が来るたび
6. ワン・モア・ラブ
7. 想い出の渚 ’91
8. 追憶のlove letter
9. 星の恋人たち
10. ハート燃えて 愛になれ
11. 幸せのドアー
12. 黄昏れが海を染めても
13. Yes, We Can Do It
14. あなたのいる空
15. 愛することから始めよう
16. 懐かしきラヴソング
17. 夢をつかもう

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大変ご無沙汰しております。

ここ数年この時期は毎年公私ともに大忙しでございまして、なかなかネットで自分のブログを開く、という時間もありません。
ひとまず5月21日開催『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE」 2023』のスタッフ業務を無事終えるまではなかなかブログ更新もままならない状況ですが・・・・

本日4月20日は加瀬さんのご命日。
僕は毎年この日、ザ・ワイルドワンズの楽曲お題で記事を書くと決めています。今日は書かなければ。

ただ、時間も無く楽曲考察まではできませんでした。
今日は2000年代ワイルドワンズのシングル「あなたのいる空」をお題に借りまして、簡単な旅日記の更新にて失礼いたします。

何故この曲を選んだか・・・。
実は僕は去る15日から2日間、母親の23回忌法要のため故郷・鹿児島県霧島市に帰省していたのです。

「あなたのいる空」は、文字通り空に旅立った大切な人を偲ぶ歌(作詞は佐藤純子さん、作曲は当然加瀬さん)。別れからのかなり長い年月を思わせる内容です。

ありがとう あんなにも
   F    G           C    Am

手を  振ってくれて
   Dm7    G7        C

ありがとう あんなにも
   F    G           E7   Am

僕に 愛をくれて ♪
   F     G7      C

東京に戻ってきてから改めて聴いて、法要を終えたばかりのタイミングでもあり涙が出てしまいましたが、鳥塚さんのリード・ヴォーカルによるワンズらしい温かいナンバーで、悲しみよりもむしろこれから先の自分の人生を改めて見つめ直すというメッセージ・ソング。
普遍性の高い名曲だと思います。

それでは旅日記を駆け足で。



鹿児島県霧島市隼人町にある実家への帰省は、コロナのこともあって前回の母親の17回忌法要以来6年ぶりでした。

その6年の間に、飛行機の載り方がガラリと変わっていてまずビックリ。
ネット予約した段階では「何が何やら」と心配でしたが、ANAのアプリをダウンロードしていざ搭乗24時間前からのオンライン・チェックインというのをやってみたら意外と簡単で、空港での面倒な手続きも省かれ、アプリに保存したスマホのバーコードをかざしてスイスイと。

ただこれ、実際やってみるまでは事前の説明とか読んでもチンプンカンプンですから。
「とにかく搭乗バーコードを取得する」のが肝要なのだと今回初めて理解しました。

にしても・・・ANAについては今年4月からチェックインがオンラインのみになったとのことで、1年半前までの僕のようなスマホ持ってない人は、一体どうやって搭乗するのやら。


父親は86歳となった今もまだまだ元気で、薬剤師の仕事も現役。
帰省前はさすがに年齢を考えるともうそろそろヤバイんじゃないかと心配で、突っ込んだ話もしなきゃならんかと兄弟で相談、今回はそれぞれの家族は連れず息子3人のみで帰省したわけですが、杞憂でございました。

ただ、庭のキンモクセイが巨木化してた・・・キンモクセイってこんなに大きくなるのか、と。
車道ではないとは言え枝が道にはみだしていましたから、あれは折を見て手を入れる算段をしなきゃなぁ。

帰省初日は久々に実家で親子4人色々な話をして、夕食は地元では人気の薩摩蕎麦のお店『吹上庵』へ。

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薩摩蕎麦の特徴は、器たっぷりに入っている甘みの強いつゆ。東京のつゆとは全然違います。

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薩摩揚げ。大根おろしも甘めです。


実家は既に父親が不要のものはスッキリ片付けてしまったので布団も余分になく、その後我々兄弟は車で20分ほど移動、全国的にも有名な温泉町・日当山にある『優湯庵』さんに宿泊。
次男の弟が手配、予約してくれていたのは、宿の離れの一軒家(1階が居間と浴場、2階が寝室)を丸ごと使うという贅沢なプランでした。

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『優湯庵』離れ宿。

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裏手を流れるは、我が青春の原風景・天降川。

兄弟3人が同じ部屋に寝泊りするのはそれこそ実家暮らしの時以来で、こんなこともおそらく今回が最後となるのでしょうな~。

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内湯。その奥のドアを開くと・・・

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露天。

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もちろん外からは見えないようになっていますが、完全に「庭にお風呂がある」感覚を堪能できます。


翌日11時より23回忌法要。

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錦織寺(きんしょくじ、浄土真宗)。

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隼人港。遠くにうっすらと桜島が見えます。


法要もつつがなく終わり、空港に戻る途中で昼食。

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日当山の有名店『ラーメン楽天』。

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鹿児島ラーメンの王道、サラサラとんこつ。
『楽天』さんの具はチャーシュー、きくらげ、ネギ、そして写真では隠れていますがもやしと刻みキャベツも結構な量入っていまして、最後にスープと一緒にそれをすくって食べるのが至福の時間です。



というわけで無事帰京し、すぐに慌しい日常に戻っていますが、やはり故郷は良いものです。
しんどい仕事も控えている時に気持ちを切り替えられたのは何よりでした。


例によって次回更新がいつになるかまったく未定なんですけど、僕はおかげさまでこの通り元気にやっています。
もしご心配をおかけしていたとしたら、申し訳ありません。身体の方はいつになく好調ですので。

5月21日の左門町LIVE、そして6月25日のさいたまスーパーアリーナ。
ジュリーファン、タイガースファンのみなさまとの再会を楽しみにしております。
それではまた!

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2022年6月16日 (木)

瞳みのる 「久しき昔」

from『久しき昔』、2021

Lomglomgago

1. Game Over
2. 三都物語
3. 東下り物語
4. 何時か何処かで(旅立ちの歌)
5. 久しき昔

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首を長くして待っていた新譜、さらには重量3.5kgにも及ぶというタケジさんの作品集の発売情報の解禁と、今年の6月25日に向けてジュリーファンのテンションが上がりまくっている今日この頃です。
うっとおしい梅雨の季節を吹き飛ばすような、嬉しいジュリー誕生月となっていますね。

さてそんな中、拙ブログでは今日はピーさんのLIVEレポをお届けいたします。

去る5月15日、年長のタイガースファンの友人・YOUさんが主催する『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE」2022』が、四谷のライヴハウス『LOTUS』さんにて開催されました。

タイガースゆかりの地、左門町。
3年目となるこの企画LIVE、今年も僕は引き続きスタッフとしてお手伝いさせて頂き、おもにバンドメンバー用スコアの手配、ピーさんが使用する歌詞カンペの作成、当日のコーラス・エフェクト操作の重責を担いました。

2~3月の尿管結石騒動があり、過去2年と比べて僕の準備作業は日程ギリギリまで遅れてしまったのですが、今年のセットリストはカバー曲が市販のスコアで揃う曲ばかりだったので採譜の負担が軽減したことも幸いし、なんとか任務をまっとうすることができました。

今年も盛り上がりましたよ~!

レポ本題に入る前に、まずは今日の記事お題とした名曲「久しき昔」について少し書いておきます。

昨年リリースされたピーさんのミニ・アルバム『久しき昔』のタイトルチューン。
アルバム全体がテーマ性の高い名盤でしたが、僕は特に「久しき昔」という曲が大好きになりました。個人的には過去のピーさんのソロ作品の中で1番です。

夜天(よぞら)一杯 星屑を
G                                D

喜び一杯 幸せを
Em                Bm

悲しさ 寂しさ 切なさ 虚しさ
   C         G          Am      Em

乗り越えて ♪
C         D     Am7  D7

初めて聴いた時、無性に旧い友人と酒を酌み交わしたくなりました。
そういえばYOKO君達音楽仲間ともコロナ以来、大勢で集まって飲むという機会がありません。それまでは少なくとも年に1度は皆で集まっていたのに・・・と、そんな感慨もあって、「久しき昔」でピーさんが何度も繰り返す「一杯♪」のフレーズが心に沁みたのでした。

では、ピーさん御本人はどのような思いでこの詞を書かれたのでしょうか。

僕がまず想像したのは、中井さんの尽力もあり、ピーさんが30数年ぶりにタイガースのメンバーと再会を果たした酒席の情景でした。
これはおそらくタイガースファン、ピーファンのみなさま同様に頭に浮かぶのではないかと思います。
数々の想い出が一瞬で現在へと繋がり、メンバーそれぞれが抱えていたかもしれないわだかまりすら瞬時に溶けてゆく、そんな「一杯」です。

この解釈が合っているのかどうか・・・YOUさんとも事前にそんな話をしていました。

秋の大空 一杯の爽やかさ
 Em    Bm     C            G

君が戻ってきたから
Am

君 君 君だけに ♪
 C                 D7

「君だけに♪」のフレーズから、僕らはどうしたってタイガースを連想してしまいますよね。

そこで、さすがはYOUさんです。
LIVEに向けての初回スタジオ・リハを終えた後、それこそ一杯やりながらズバリ「久しき昔」の詞についてピーさんにこう尋ねました。
「”君”って誰のことですか?」

ピーさんの答えは
「聴く人によって色々な解釈をしてくれればいい」

例えば、聴き手が実際に長年離れていた誰か特別な人と再会した経験があるのなら、”君”はその人のことになるのだ、と仰るのです。

「僕がお客さんの前で歌ったら”、君”は聴いてくれているファンのことになるし、タイガースのメンバーからすると、”君”が僕(ピーさん)のことになるだろうしね」
と。

元々この歌の制作は、有名なスタンダード唱歌として知られる「Long Long Ago」(邦題「久しき昔」、ベイリー作)にピーさんが新たな詞を書いてみよう、と考えたところからスタートしたのだそうです。

Longlongago
『世界抒情歌全集/第一巻』より

しかしこのテーマに取り組むとなるとやはりピーさん、特別過ぎるご自身の体験があるわけですから・・・。
どんどんアイデアが膨らんでいって、詞は完全にオリジナルとなり、KAZUさんがまったく違う曲をつける、という流れとなりました。

個人的には、ピーさんの作詞コンセプト、KAZUさんのメロディーいずれも同窓会期のアルバム『THE TIGERS 1982』ラスト収録の大好きなバラード「朝焼けのカンタータ」(タローさんの作曲作品では1番好き!)と不思議によく似ていることにも感動させられます。
「朝焼けのカンタータ」で描かれた「君」との再会は10年ぶりですが、タイガースの目線ならこちらはその3倍以上もの歳月。
正に「久しき昔」です。

よって僕らタイガースファンは「これはピーさんとメンバー再会の歌だ!」と考えることこそ自然。

ピーさん自身が「大好きな歌」と語っていますし、生のLIVEでのヴォーカルは特に気持ちが入っています。
『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE」2022』においても、この曲がセットリストの(配置的にも)目玉であったことは間違いありません。


さぁ、それではいよいよセトリに沿ってLIVEレポートを書いていきたいと思います。

今年もピーさんは(YOUさんとバンドメンバーも)超人的な活躍で1日3ステージを完走しました。
分かり易いように、10;00~からの公開リハーサルを「朝の部」、14:00~からの本番第1ステージを「昼の部」、18:00~からの本番第2ステージを「夜の部」と明記することとします。
「夜の部」については今年もアーカイブ映像を販売中です(今年の11月が購入&視聴期限となりますのでどうぞお早めに。詳しくはこちら!)。
アーカイブを鑑賞しながら読んで頂ければなお嬉しいです。よろしくお願い申し上げます!


1曲目「花・雨・夢」
(PYG「花・太陽・雨」)

Pygbest_20220608210401

シングル・ヴァージョンのカバー。
これはタイガースファンのお客さんもよくご存知の曲・・・なのですが、「朝の部」でしたか、MCでYOUさん曰く「あれっ、と思ったでしょ?」と。
そう、今回のセトリ入りにあたってピーさんがかなり歌詞を変えて歌ったのです。

ただ「少し詞を替えるよ」とピーさんから事前に聞いていたというYOUさんも、さすがに楽曲タイトルまで変わるとは思っていなかったようで、初回スタジオリハ直前に全容を知り驚いていました。
箇所によっては文字数も増えたり減ったりしているので、一緒にヴォーカルをとるYOUさんは(ショーケンのパートを歌います)、ピーさんと抑揚をキッチリ合わせるまでにはかなり稽古の時間を費やしたようです。

詞を変えたことについてピーさんはまず
「単語を連呼する箇所なんかは、どうしても韻を踏みたくなる」
と、漢詩の専門家としての血が騒いだ(?)ことがきっかけだったそうです。
LIVE当日のMCでは
「岸部の詞だから容赦なく変えさせて貰いました(笑)。阿久悠だったらそうはいかない」
とお客さんを笑わせてくれましたが、僕がカンペ作成のためにピーさんから頂いたワードのデータでは、きちんとオリジナルの詞も全篇明記した上で「改稿」という形で下座にご自身の新たな詞を併記していらっしゃいました。
盟友・サリーさんへのピーさんのリスペクトがさりげなく垣間見え、改変ヴァージョンの詞をいち早く目にできた僕は本当に役得だったと思います。

結果どのように詞が変わったか・・・気になるみなさまは是非アーカイブを購入し確認してみてください。


2曲目「遠い渚」
(ザ・シャープ・ホークス)

Tooinagisa

3年前にこのLIVEをお手伝いさせて頂くようになった時から、ピーさんがタイガース以外のGS名曲群のお話をされるたびに「この詞はイイんだよ~」と推してくださっていた曲、満を持して今年はセトリ入りです。
ところが初回スタジオリハ、通しで叩き語りしてみたピーさんは
「エンディングの繰り返しが長いね・・・どれだけ未練があるんだ!(笑)」
ということで、ゆうさんバンドの演奏ではリフレインを短めに、サクッと潔く終わることになりました。

YOUさんは「この曲のピーさんのヴォーカルは、オリジナルに近い雰囲気がある」と、選曲の手応えを感じていたご様子。
GS世代のお客さんにとって、懐かしい1曲だったのではないでしょうか。


3曲目「朝まで待てない」
(ザ・モップス)

Asamadematenai

オリジナルと比べ、ピーさんが演奏するとドラムもヴォーカルも若干テンポ速めのハードなビートに変貌するのが面白いです。

リアル世代ではない僕は、この歌が阿久悠さんの作詞デビュー曲であることも今回YOUさんから教わって初めて知ったという(恥)。
ただ、タイトルだけではピンと来なかったのに音源を聴いたら「ああ、この歌か!」と。
不朽の有名曲であることは間違いないですね。

コーラス・エフェクトは高低3度を採用。
字ハモのパートだけではなく「hoo♪」と2番以降のAメロを包む箇所が重要なのです。

おーちゃんのソロは音階がサイケっぽくてカッコ良かったなぁ。


4曲目「夢見る少女じゃいられない」
(相川七瀬)

Aikawa

YOUさんがブログで今年の左門町LIVEについて「みなさんがあっと驚くようなカバー曲もある」とアナウンスされていたのは、たぶんこの曲のことかな。
なにせ僕も今年始めにセットリストを知らされた時、これには「え~っ?」と驚きましたから。

YOUさんによれば「何気ない時にこの歌が流れているのを聴いて、ハード・ロック調で良いかもと思った」とのことなのですが、ピーさんは選曲の理由を深読みされたそうで、「色つきの女でいてくれよ」で描かれた「乙女」が成長し「少女」となったというコンセプトでしょ?とYOUさんに尋ねられたそうです。YOUさん、逆にビックリ(笑)。
僕はこのピーさんの深読みと言うか、自身が何事かに取り組もうとする際に明確な動機づけを持とうとする姿勢にメチャクチャ共感します。

オリジナルは嬰ハ短調で、スタジオリハは当初そのままのキーでやっていたのですが、さすがのピーさんも女声のキーに合わせるのは大変(しかもピーさんのアイデアでエンディングにドラム・ソロ・パートが導入され演奏も相当ハードに)ということで、最終リハで嬰ヘ短調に移調してのカバーです。

本番は「昼の部」は完璧、「夜の部」はピーさんが2番を端折った(後に控える渾身のドラム・ソロ・フレーズの組み立てに集中されていたのでしょう)ものですから超ショート・ヴァージョンに。
バンドメンバーは即座に対応し、見事ピーさんに合わせきりました。


5曲目「ホンキー・トンク・ウィメン」
(ザ・ローリング・ストーンズ)

Honkytonkwomen

今回のセトリはタイガース・オリジナルは「ラヴ・ラヴ・ラヴ」1曲のみでしたが、「タイガースファンお馴染みで、まだ披露していない洋楽カバーを」とのYOUさんの狙いがあり、これはストーンズファンの僕としても貴重な体験となった1曲。
せいこさんが楽曲通しての肝であるカウベルを担当し、イントロの数打だけでこの曲と分かったファンも多かったでしょう。

シンプルなブルース進行ながら面白いアレンジ構成の名曲で、Aメロまでは待機するかまちゃんのベースが噛んでからのサビの盛り上がりが独特です。

ピーさんのヴォーカルは、「divorcee」「rosese」の語尾の粘りがカッコイイです。
「夜の部」では前曲ほどではなかったのですが若干のショート・ヴァージョンに。
おーちゃん(「野生のカン」を持つ男笑)が咄嗟にソロを弾きまくってリカバーしたので、その点気づかなかったお客さんもいらしたかもしれません。


6曲目「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」
(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)

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引き続きタイガースファンお馴染みの洋楽カバーですが、こちらはスタジオリハ段階からPYGのカバー・ヴァージョンでゆうさんバンドが取り組みました。
YOUさん曰く「堯之さんが弾いたソロの中でこのヴァージョンが一番長い」という。
実は今回、2年前の左門町LIVEに参加した堯之さんと縁深いギタリスト、タイラーさんがゆうさんバンドに復帰予定で、YOUさんがPYGヴァージョンを採り上げたのもその点があったと思うのですが、残念ながらタイラーさんはどたん場でスケジュール都合により不参加となり、ギタリストはおーちゃんに交代。
残すところスタジオリハ1回、というギリギリになって代役を快諾したおーちゃんも凄いですが、急遽この「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」のソロを買って出たYOUさんも凄い!
この曲はピーさんも「叩き語りは今回これが一番大変」と語っていただけに、YOUさんは「俺がなんとかせねば」との思いだったでしょう。
当日YOUさんにはこのソロで「ピーさんとシンクロした感覚」があったのだそうです。

容赦のない3連符強打を繰り出すピーさんのドラムス・インパクトは「ハートブレイカー」にも匹敵。しかもこちらは「歌いながら」ですから。
みなさまにおかれましては、アーカイブでピーさんの熱演を再確認しつつ、コロシアムでのドラム演奏と聴き比べるみるのも面白いでしょう。


7曲目「エニーバディズ・アンサー
(グランド・ファンク・レイルロード)

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ここから2曲、ピーさんはドラムに専念。
「エニーバディズ・アンサー」は昨年好評につき今年もセトリ入り、今回はギター2本体制に戻ったこともあり、ヴォーカルはYOUさんが担当します。

個人的にはコーラス・エフェクターの操作が一番忙しかった曲。下3度、オクターブと箇所によってハーモニー設定を切り替えていくのです。
「sun...♪」と歌うメロディー最高音部のオクターブ設定については、3度のスタジオリハいずれもYOUさんが普通のメロディー音階を歌い、エフェクターでオクターブ上の声を作って重ねていたのですが、どたん場でYOUさんから連絡があり
「やっぱり俺、高い方で歌う!エフェクトはオクターブ下にして」
と。
「え~っ、大丈夫?」と思いましたが当日は見事歌いきったYOUさん、よくあの高い声が出せるものです。
常々「ヴォーカルには自信が無い」と言いながら、YOUさんは相当広い声域をお持ちのようですね。

ピーさんのドラムの迫力は言わずもがな、そしてここからの2曲はベースのかまちゃんの奮闘にも注目です。
これすなわち、GFRのリズム隊の凄さ、ひいてはそれをほぼリアルタイムでカバーしていたタイガースのリズム隊(ピーさん&サリーさん)の魅力が遡って分かろうというもの。
ピーさん曰く「当時の機材環境では、他のメンバーの音なんてほとんど聴こえていなかった」のだそうですから、なおさらです。


8曲目「ハートブレイカー」
(グランド・ファンク・レイルロード)

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左門町LIVEではもう定番。昨年同様、「エニーバディズ・アンサー」から間髪入れずメドレー形式です。ヴォーカルは引き続きYOUさんが担当。
今年は「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」も合わせ、特に「夜の部」ではピーさんのドラム「今年の左門町総決算」と言うべき怒涛のコーナーとなりました。

「ハートブレイカー」ではピーさんは特にドラマーの血が騒ぐのか、スタジオリハの段階から強打を繰り出し勢いあまってリムに指を打ちつけて流血するという一幕も。
それでも「出血大サービス!」と言って心配するメンバーを笑わせてくれるピーさんなのです。
これ以上の絶賛は今さら野暮というもの・・・「ハートブレイカー」へと結実するハードな3曲の流れ、ドラマー・ピーさんに思い入れのあるファンのみなさまにはアーカイブで今一度堪能して頂きたいです。


~トークコーナー~

ドラム演奏で全力を出し切ったピーさんにここでひと息、というYOUさんの配慮もあって毎年「ハートブレイカー」後に設けられている、お馴染みの友情漫才コーナー(笑)。

「去年は配信のことを忘れて、ちょっと脱線し過ぎてマズイことも言っちゃった」
と事前に反省していたピーさんですが、今年も脱線はとどまるところを知らず・・・貴重なお話の数々に加えYOUさんのツッコミも炸裂していますので、こちらも是非アーカイブにてご確認を!


9曲目「ムーン・リバー」
(アンディ・ウィリアムス)

Moonriver

ここからピーさんはヴォーカルに専念。ドラムスには左門町LIVE3年連続参加のけんさんが入ります。
毎年、自身の出番でない時もずっとドラムセット背後にスタンバイしピーさんを完璧にサポートするけんさん、常連のピーファンのみなさまからの支持が爆上がりしているようで、声援が飛びます(笑)。

トークコーナーの後は、ピーさんならではの訳詞がついた誰もが知るスタンダード・ナンバー・・・これまた左門町LIVEで確立したセットリスト配置。
一昨年の「ダニー・ボーイ」、昨年の「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」に続き、今年は「ムーン・リバー」。これら3曲すべて、ピーさんはオリジナルより高いキーで歌っているんですよ~。

スタジオ・リハでは「ロック畑」のメンバーが苦労する1曲となりましたが、シンセのせいこさんがリハの都度アイデアを加えてゆき、ゆうさんバンドとしての完成形を本番で迎えることができました。

ピーさんの的確かつ抒情味ある訳詞のフレーズ・センスは、今年の「ムーン・リバー」でも発揮されました。
1番を英語、2番を日本語で歌い進む中、ラストに登場する「素敵なひと/おさななじみ/あなたとわたし」というピーさんのフレーズがとても素敵です。


10曲目「東下り物語」
(瞳みのる)

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昨年の左門町LIVEのレポで僕は「ピーさんは今、アルバム・リリースもできるくらい続々と新曲を作っている」と書きました。
当時製作中の曲の詞を見せて頂いたり、コンセプトを教えてくださったりしていたのでそう書いたのですが、やはり5曲入りミニ・アルバム『久しき昔』をはじめ、昨年後半のピーさんは新譜ラッシュとなりましたね。

「東下り物語」はその昨年のスタジオリハの際に詞を見せて頂いていた曲のひとつ。
「三都物語」と並び、明快に「虎の道のり」をコンセプトとしています。
リアルタイムのタイガースファンには特に響くであろう詞の内容について先輩方に教えて頂きたいことも多々あるのですが、アルバム『久しき昔』は素晴らしい名盤で、機会あらば各曲お題記事に取り組むことを考えていますので、「東下り物語」についてここでは左門町LIVEに絞って書いておきます。

本番までわすか2週間、スタジオリハは残すところ1回というギリギリの日程でギタリストの代役を引き受けたおーちゃんは、長年のキャリア、豊富な引き出しで悠々と難題をクリアしましたが、彼が参加することでそれまでのリハと雰囲気をガラリ変えたのが、この「東下り物語」でした。
おーちゃん曰く「俺の中ではこの曲はマイケル・シェンカー!」と。

なるほど、ハイ・ビートのシャッフル解釈ですか~。リハ初日からピーさんは自ら速めのカウント出しで歌おうとしていましたし、おーちゃんの演奏アプローチには「我が意を得たり」だったのではないでしょうか。


11曲目「明月荘ブルース
(瞳みのる)

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リリース時から「ずっと歌い続けていきたい」と語っているピーさんの言葉通り、左門町LIVEでも3年連続セトリ入りです。
YOUさんもスタジオリハで「これは名曲!」と毎年のように新メンバーに紹介していますし、自らが担当する間奏ギター・ソロにも気合が漲っています。

そうそう、ピーさんは
「明月荘のメンバー部屋割りは覚えているけど、四谷は誰と同部屋だったか記憶がハッキリしない」
のだそうです。
そのくらい大忙しの日々だった、ということなのでしょう。
「岸部か太郎のどちらかと一緒だと思うんだけど・・・ファンで誰か知ってる人はいないかなぁ?」と。

当時メンバー4人が暮らしていた四谷左門町のアパートはピーさん曰く
「セキュリティーなんてあったもんじゃないよ~」
とのことで、当時はファンにお風呂まで覗かれていたくらいだと言いますし、それももう時効ですから、部屋割りをよくご存知のかたはこの機に潔く手を挙げましょう!(笑)


12曲目「My Way ~いつも心のあるがままに」

Myway

こちらも3年連続セトリ入り。
原曲はフランク・シナトラのヴァージョンですが、カバー曲ながらこれは最早ピーさんオリジナルのような存在感がある名篇。ピーさんの人生を歌う大長編、セトリの配置もずっと変わりません。
おーちゃんが最後のリハで合流した際、「(詞が)13番まである」と知り唖然としていたっけ(笑)。

昨年までと変わった点は、まずキーを1音上げたこと(ハ長調からニ長調)。
さらにせいこさんのアイデアにより1番、2番は完全にピーさんの「語り」となりました。アレンジのバランスが良くなり、「語り」直後に導入するピアノがより生きるのです。

あと、おーちゃんは分数コードの利便性を考え2カポで演奏、YOUさんは「自分のギターで最も美しいクリア・トーンを採用」されたそうです。


13曲目「ラヴ・ラヴ・ラヴ
(ザ・タイガース)

Tigersblue

これまた3年連続、セトリには欠かせません。
「My Way」が終わってすぐに、けんさんがフィル・インを炸裂させる構成もこれまで通りです。

丸1日のステージを通し、最後まで声が持続するピーさんの喉は凄い・・・この曲の転調後の最高音を「夜の部」になっても難なく歌いますからね。

ちなみにメンバー紹介でせいこさんの担当楽器を「キーボード」ではなく「シンセサイザー」と紹介するのは、せいこさん御本人の拘り。
楽器業界では今は「キーボード=鍵盤楽器の総称」で、シンセもキーボードの1種になるんだけど、やはり本格的に鍵盤をやってる人からすると「キーボード」って言葉だと安価なもの限定のイメージがあるのかな。せいこさんのKORGは高そうだ~。

今年からライヴハウスのコロナ感染対策ガイドラインが変わり、人数制限をクリアしていればスタンディング&声出しOK(もちろんマスクは着用の上で)だったので、お客さん皆立ち上がって「PEE~!」と声援を送ってのセトリ本割フィナーレとなりました。


~アンコール~

14曲目「久しき昔」
(瞳みのる)

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一昨年、昨年とアンコールは1曲「Lock Down」のみでしたが今年は曲も変わって計2曲。いずれもミニ・アルバム『久しき昔』からの選曲です。
まずはタイトルチューンの「久しき昔」。
冒頭の繰り返しになりますが、僕はこの曲が大好きで、YOUさんとも”「明月荘ブルース」と並び、ピーさんがこの先長く歌い続けていくであろう大名曲”との考えで一致しています。

YOUさんは今回のセトリを決めた際、この曲を「今年の勝負曲」とバンドメンバーに伝えたのだそうです。
印象的なのはまずピーさんの熱唱。CD音源よりもさらにこのLIVEの歌の方が素晴らしいです。これ、本当にそうなんです。
スタッフとしての手前味噌ではありませんよ~。

さらにはイントロのベース・ソロ。かまちゃんは初回スタジオ・リハから完璧に仕上げてきていました。
ギター2本体制ならではのツイン・リードのハーモニーも見事再現。

そしてサビのコーラス。
YOUさんはユニゾンで歌っているのですが、エフェクター設定ではYOUさんの地声を消去した上でオクターブ上の声を作りセンド・リターンしています。
CD音源でのなおこさんのコーラス・パートを再現する狙いでしたが、いかがだったでしょうか。


15曲目「Game Over」
(瞳みのる)

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YOUさんはこの左門町LIVEを第1回(2020年)から継続して「対コロナ」の重要なコンセプトとしています。
それもあり昨年までの大トリ曲が「Lock Down」だったのですが、今年は新たに「Game Over」がその配置に選ばれとって代わりました。

これはおそらくアルバム『久しき昔』収録5曲のうち最も新しく作られたナンバー。
と言うのは、昨年の左門町LIVEの段階で僕は他4曲の歌詞は見せて貰っていて、その後国内でコロナのさらなる感染拡大が危ぶまれていた時期、ピーさんから「もういい加減にしてくれ!という思いで”Game Over”という曲を作っています」とメールを頂いたのです。
その時点で楽曲タイトルだけを知った僕は「沈痛な内容なんだろうなぁ」と想像したわけですが、いざアルバムがリリースされ聴いてみると意外や楽しい雰囲気の曲。歌詞も前向きで。なるほどこれはいかにもピーさんらしい、「Lock Down」と同じ系統だな、と思った次第です。

ゴキゲンなスカ・ビートはセットリストを締めくくるにふさわしく、「夜の部」ではピーさんが最後の力を振り絞り「陽気に羽目を外してしまえ!」と言わんばかりに2番からは表拍と裏拍をひっくり返しての大暴れ。
ピーさんの全力疾走に食らいつくけんさん、かまちゃん、せいこさん。
演奏自由度の高いギターの2人、YOUさんとおーちゃんはニッコニコで皆に合わせていきます。

先の「夢見る少女じゃいられない」もそうですが、このように今年は「何が起こるか分からないステージ」が、アーカイブ配信のあった「夜の部」に集中しました。
完璧にキッチリ纏ったのは「昼の部」でしたが、今年の「夜の部」はその意味で「1日3ステージを駆けるピーさんの魅力」を象徴する名演だったかと思います。



最後に。
毎年そうなのですが、僕にとって左門町LIVEは準備期間含め実際にピーさんにお会いして色々なお話を伺う機会、ということで夢のような時間を過ごせます。
お話は色々とある中で、じゃあ堂々とブログに書ける内容のものとなると・・・そうだ、今年はピーさん先生時代の「教え子」話の中で印象に残ったエピソードを、この場を借りご紹介しておくことにしましょう。

ピーさんはあの伝説のGSムーヴメント全体に深い愛着をお持ちで、タイガースに限らず様々なGSバンドについてよく話をしてくださいます。
確か初回スタジオリハ後の食事の際、どういう流れだったか「ズー・ニー・ブー」のお話になりました。
「辛うじてバンド名を知っている」程度の知識しか無かった僕が戸惑っていると、YOUさんが「ヴォーカルは町田義人さん」と助け舟を出してくれて、僕は「あぁ、『野性の証明』ですね!」と(町田さんのヒット曲である主題歌「戦士の休息」なら、僕はリアル世代です)。

そうしたら今度はピーさんの方が、『野性の証明』をよく知らないと。
YOUさんが「薬師丸ひろ子さんの出世作で・・・」と言うと「あぁ!」とピーさん、すかさず話を脱線(ピーさんの話術は脱線してからが真骨頂!)して
「僕の教え子に高柳ってのがいて、薬師丸ひろ子の映画の相手役として俳優デビューしたんだよ」
と。

『ねらわれた学園』の高柳良一さんですね。
これまた僕はリアル世代ですから、高柳さんが当時人気絶頂の薬師丸さんの相手役として一般オーディションで選ばれた、とのニュースはよく覚えています。
人見先生の生徒さんだったのか!

合格の報を受けた高柳さんは「まさか自分が」という心境だったらしく、「やるべきかどうか」とピーさんに相談されたのだそうで、ピーさんはしっかり背中を押してあげたのだとか。

時系列を整理すると驚くのは、そんな出来事のすぐ後にあのタイガースの「同窓会」があったわけで。
僕としては、いつもながらひょんなところでピーさんの人脈や稀有な人生に驚かされるパターンのお話なんですけど、ピーさんにとっては普通の思い出話、というのがまた不思議な感覚です。

さらにピーさんは
「そうしたら、高柳がその後出演した映画で高校生役をやったんだけど、先生役で岸部が出てたんだよ!しかもあろうことか漢文の先生!」
と、いかにも「遺憾」の表情を作って僕らを笑わせてくれました。

「もしかしたら、プロデューサーか誰かが僕のことを知ってたんじゃないかな」とピーさん。

調べたら、有名な『時をかける少女』がそれでした(残念ながら僕は観ていません)。
83年公開の映画ということですから、当時のピーさんとサリーさんの距離を考えると、タイガースファンとしてはなんとも言えない感慨があります。
「教え子の活躍を拝見」と映画を観たピーさんが、スクリーン越しとはいえ何とサリーさんと再会。しかも自分と同じ先生の役どころ、というね。
今となっては「ほのぼの」な逸話ですが。

そうそう、「教え子」話と言えば『夜の部』のトークコーナーでは「石原4兄弟」の話題が飛び出しました(兄弟全員がピーさんの教え子ではありませんけど)。
LIVEに来れなかったみなさまも、この話についてはアーカイブで視聴できますよ~。


ピーさんは本当に、僕のような者にも気さくにお話をしてくださいます。
それだけでも有り難いのに、僕はスタジオリハでは超特等席でピーさんのドラムを聴けていますから・・・身にあまる光栄としか言えません。

またピーさんには気さくさだけでなく、「この人のためなら」と思わせるオーラがあります(おそらくタイガースのメンバー全員が持つオーラでしょう)。
YOUさんを見ていれば、それが僕だけの感覚ではないことは歴然。左門町LIVEに関してYOUさんは御自身の体力的、精神的、時間的、経済的な負担まったく度外視で、万事ピーさんに尽くされていますから。

そんなYOUさんですが、来たる8月21日には同じ『四谷LOTUS』さんで、今度は自身が主役のLIVEを開催されます(詳しくはこちら)。
『ゆうちゃん三昧』という4年に1度の企画LIVEで、トークコーナーのゲストとしてピーさんも駆けつけます。
このLIVEも僕は毎回微力ながらお手伝いさせて頂いています。お時間のあるみなさまは是非!


というわけで、改めて。
ピーさん、YOUさん、ゆうさんバンドのみなさん、スタッフのみなさん、そして来場してくださったお客さん、当日は本当にお疲れさまでした。

僕自身も毎年貴重な経験を積ませて頂いています。
感謝、感謝です。またみなさまと左門町で再会できる日を待ち望んでいます!


それでは次回更新は、当然の6月25日。
お題を当日発売の新曲にして考察記事にできればカッコイイけど、僕の力量ではさすがに無理(汗)。
新曲はいずれじっくりということで、25日は近年恒例、actシリーズからのお題でジュリーの誕生日をお祝いしたいと思います。

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2022年4月20日 (水)

ザ・ワイルドワンズ 「ムーンライト・カクテル」

from『ON THE BEACH』、1981

Onthebeach

1. 白い水平線
2. ムーンライト・カクテル
3. ロング・ボード Jive
4. Dreamin'
5. 海と空と二人
6. 想い出の渚
7. 白いサンゴ礁
8. 夕陽と共に
9. 海は恋してる
10. 青空のある限り
11. 空に星があるように
-bonus truck
12. 雨のテレフォン
13. モノクローム

---------------

今日は加瀬さんが旅立たれてから丸7年・・・毎年思うことですが、本当に早いものです。 

拙ブログでは毎年4月20日、ワイルドワンズ・ナンバーのお題記事を加瀬さんに捧げると決めています。
今年の更新に備えて購入したアルバムは、1981年リリースの『ON THE BEACH』。

ワンズの再結成については79年にシングル、アルバムのリリースがありますけど、後でご紹介する植田さんのインタビューを読むと、この『ON THE BEACH』製作から本格的に再結成、という認識のようです(記事タイトルは「ザ・ワイルドワンズ」としましたが、ここでの正式なバンド・クレジットは「加瀬邦彦とザ・ワイルドワンズ」)。

現時点で一番気に入っている、2曲目収録の「ムーンライト・カクテル」をお題に選びました。
今年もよろしくお願い申し上げます。


最初に『ON THE BEACH』というアルバム全体について、僕自身の勉強も兼ねて書いていきましょう。

まだまだワイルドワンズ白帯を自覚している僕が、今回まったく初めて聴いた1枚。
有り難いことに付属のブックレットには植田さんのインタビューが載っていて、リリース当時のことを詳しく語ってくださっています。
まずはそちらをお読みください。

Onthebeachcd2
Onthebeachcd3

※ 文末に記された年月日をご覧ください。CD再発に寄せて植田さんがこのインタビューを受けたのは、加瀬さんが旅立たれるほんのひと月前なのです・・・。言葉もありません。

僕としても「再結成間もないワンズってどんなだったんだろう?」と興味を惹かれ購入したわけですが、植田さんのインタビューを読みながら音を聴きはじめて、2曲目の「ムーンライト・カクテル」Aメロにさしかかったあたりで「あっ!」と思いました。
そうか、ワンズの再結成は単にGS回帰ブームの産物だっただけでなく、81年と言う時代がこのバンドの特性、音を求めたのだ!と。

植田さんの言葉にある通り、本格的な再結成の気運は日劇がきっかけだったでしょう。タイガース同窓会もそうですしね。

しかしそこに加えて、業界全体が彼等の個性を放っておかなかった、と想像します。
81年と言えば、大滝詠一さんのアルバム『A LONG VACATION』が大ヒットし、ナイアガラ界隈に留まらず邦楽界にマリン・サウンド、ビーチ・サウンドの一大ムーヴメントが起こっていました。
広義にはシティ・ポップの火付け役ともなったそのサウンド・ムーヴメントは、目利きの音楽人達がかつてのGSの雄・ワイルドワンズに抱いていたイメージとピタリ重なったのではないでしょうか。
植田さんが語る「オファーが増えた」大きな要因はそこでしょう。

『ON THE BEACH』はCDで言うと1~5曲目までが新曲、6~11曲目までがGS時代の名曲のリメイク&カバー曲という構成(12.、13曲目は同年シングルAB面をボーナス収録)。

Onthebeachcd1

新曲に着目すると(LPA面?)、もちろんオリジナルについては全曲加瀬さんの作曲で、1、2曲目の作詞が松本隆さんです。

松本さんは言わずと知れた『A LONG VACATION』の実質的なコンセプター。
新曲の中で、「ムーンライト・カクテル」は特に『A LONG VACATION』っぽくて(「カナリア諸島にて」に近いと感じました)、ワンズが以前から持っていたビーチ・サウンドの魅力を、ちょっと大人びたハイセンスな洒落っ気のあるアレンジとエフェクトで仕上げる手法です。
これこそ、時代が新生ワイルドワンズに求めた音だったんじゃないかなぁ。
(ワンズのこの路線は、CDではボーナス・トラック収録の同年末シングル盤「雨のテレフォン/モノクローム」に受け継がれ、『A LONG VACATION』をモロに意識したセンドリターンの深いディレイ処理を楽しめます)。

ちなみにアルバムの3曲目が植田さんの詞で、4、5曲目は三浦徳子さん。
僕は常々、ジュリーの『S/T/R/I/P/P/R』(81年)と『A WONDERFUL TIME.』(82年)での加瀬さんのプロデュースの大胆な変貌を安易に「邦洋問わず音楽の流行に敏感な加瀬さんが、パブ・ロックからシティ・ポップスへとシフトさせた」と考えていましたが、間にワイルドワンズの『ON THE BEACH』を挟むと、それが加瀬さんにとって自然な流れであったことが分かります(『WONDERFUL TIME.』ではなく『A WONDERFUL TIME.』っていうのも今にして考えれば・・・とか)。
日劇からの道程で80年の『G. S. I LOVE YOU』含め、一貫して三浦さんが噛んでいることや、銀次兄さんの尽力(『ON THE BEACH』では全曲のアレンジを加瀬さんとともに担当)など、その人脈からもジュリーの歴史と同時進行的に深い関わりを持つワイルドワンズの名盤、僕は本当に知るのが遅れたなぁと今思っています。

さて、僕が『ON THE BEACH』の中で「ムーンライト・カクテル」を特に気に入り今日のお題としたのにはまた別の理由もあります。
僕はワンズのことを2010年のジュリーWithザ・ワイルドワンズ結成きっかけで知っていきましたから、出発点であるジュリワンのアルバム、ツアーには今でも深い思い入れを持ちます。
「ムーンライト・カクテル」は、そのジュリワンにも繋がる曲だと感じたのですよ。

アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』の中で抜きん出て好きな曲が「プロフィール」(しかもこの曲、年齢を重ねれば重ねるほど沁みる!)。
「SUNSET OIL」なる作詞・作曲クレジットの謎は未だ解けないままですけど、鳥塚さんからジュリーへとリレーするヴォーカル、植田さんの絶妙なコーラス・・・僕にとっては「聴くと元気が出る歌」長年不動の第1位。
そう言えば2010年にNHK『SONGS』で「プロフィール」が採り上げられた時、柴山さんの鬼のアコギ・ストロークを観て僕は「これは”さらばシベリア鉄道”だ!」と盛り上がったっけ。これでジュリワンと『A LONG VACATION』も繋がった!(強引)

で、「ムーンライト・カクテル」の歌詞には「プロフィール」というフレーズが登場します。

籐椅子に もたれる君の プロフィール ♪
G7    C             Bm      Am7 D7   G

鳥塚さんの声で「プロフィ~ル♪」と歌われるだけで僕は萌えてしまうわけで。

あと、Aメロのコード進行に注目。

月灯りで洗うような濡れた瞳哀しく ♪
    G           Gaug         G6      G7

上昇型のクリシェ(和音の中の1つの音だけを変化させてゆく進行)です。
このポップな手法は世の楽曲に多く例があり、ジュリー・ナンバーでパッと思いつくだけでも「I'M IN BLUE」「単純な永遠」「失われた楽園」「Fridays Voice」「ロイヤル・ピーチ」等で採用されていますが、今は『JULIE WITH THE WILD ONES』の話をしていますから、この曲を挙げないわけにはいかないでしょう・・・。
ズバリ、「渚でシャララ」。

傷つけあうより ホホエミえらんで ♪
 G        Gaug       G6             G7

(「渚でシャララ」のオリジナル・キーはイ長調ですが、ここでは「ムーンライト・カクテル」と比較しやすいようにト長調に移調し明記しています)

加瀬さんがジュリワン本気のプロモーションに向けた看板シングルの「渚でシャララ」を作曲しながら、「そう言えばこのパターン、昔ワイルドワンズでもやったっけ」なんて考えていらしたかどうか・・・楽しく妄想できます。


僕は確かにワンズについては後追いも後追い、少しずつ勉強している最中ではあるんですけど、『ジュリー祭り』以降ジュリーのLIVEに通い続けて特別に心に残っている公演は、『ジュリー祭り』を別格とすると、2010年のジュリワン八王子、2015年の『こっちの水苦いぞ』ツアー・ファイナル(東京国際フォーラム)の2本が突出しています。
いずれも「加瀬さんへの思い」抜きには語れないステージなのです。
アルバム『ON THE BEACH』は、「ムーンライト・カクテル」のジュリワンへの繋がり、さらにはそのジュリワン・ツアーで何度も生体感した「白い水平線」も収録されていて、僕の個人的な加瀬さんへの思いを甦らせてくれた名盤でした。

ワイルドワンズは翌1982年、『ON THE BEACH '82』というアルバムをリリースしているようで、こちらも近々に購入したいと思います。
さらに、じゃあ『ON THE BRACH』に先んじて79年にリリースされているアルバム『アンコール』は一体どういった経緯で?ということも僕はまだ知りません。もしかするとCD再発盤ならばそのあたりを解説するライナーがついてるかも・・・これまたいずれ購入しなければ。

加瀬さん。
僕の「ワイルドワンズ探究の旅」は、ゆっくりですがこれからも着実に進んでゆきます!

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2021年11月10日 (水)

JULIE × BARAKA!

さて、こちらは相変わらずバタバタしていますが・・・ジュリー界は今「バンドスタイルLIVEへ回帰!」のビッグニュースに沸き立っているでしょうね。
僕ももちろんその1人。

『ジュリー祭り』堕ち組である僕の場合はジュリーのバンドと言えばやはり鉄人バンドに思い入れがありますが、だとしても来たるお正月LIVEから始動するという新生バンドのメンバーは・・・ヤバい、これは凄いですよ!

JULIE×BARAKA!

いやぁ、やるなぁ。
さすがは「冒険」好きなジュリー。ここまで刺激的な決断をするとは。

ということで、新たなバンドメンバー告知の中で個人的に特にド肝を抜かれた「BARAKA」の3人のことを中心に、今日はつらつらと書かせてください。


僕はBARAKAのLIVEを1度観ています。
ちょうど依知川さんがジュリーのツアーと並行しつつ、結成20周年記念LIVE(東京国際フォーラム)、さらにはその後に控えていた海外クルーズLIVE(世界の名だたるプログレッシブ・バンドが集結)に向けBARAKAが凄まじい勢いでアクセルを踏んでいた時期でした。
その時のステージ感想記事がこちら。

沢田研二 「Aurora」

つまりはBARAKAって、超絶プログレッシブ・バンドなのです。
ジュリーがこれまで組んできた、関わってきたどのバンドと比べても異質。「ポップ性」とは程遠い、ガチガチ、コチコチに容赦の無いロックです。

そんなBARAKAのメンバー3人全員がジュリーの新生バンドに参画するという・・・一体どんな化学反応が起こるのか、まったく想像できません。
それはジュリーのみならず、柴山さんとの絡みについても同様です。
柴山さんはこの3年で「ジュリー・ナンバーにおける無限の引き出し」を持つことを証明したわけで、これはもう素晴らしい意味で「ジュリー&柴山さん vs BARAKA」のセメント・バトルですよ!

僕等ジュリーファンは来年早々、歴史的瞬間に立ち合うことになります。
そして、どんな色、どんな刀をも飲み込み輝く、歌手・ジュリーの凄味を再認識するでしょう。

そこで今日は、僕が持つBARAKAのイメージから導かれたお正月LIVEセットリストの「鉄板」3曲、「無茶ぶり」3曲をそれぞれ予想してみました。

まずは「セトリ入り鉄板」と予想する3曲から。

・「ス・ト・リ・ッ・パ・-」
腕利きのドラマーならば絶対に燃える、「演奏してみたい」曲。しかもドラマーによってまったくバンドの雰囲気が変わるという稀有な曲でもあります。
平石さんの3連符、イントロから大注目です。

・「愛まで待てない」
ジュリー・ナンバーきってのBPMを誇るセトリ常連曲にBARAKAのグルーヴが襲いかかる!
高見さんがこの曲のソロを弾いたら一体どうなっちゃうの?と今から楽しみ過ぎます。

・「睡蓮」
言うまでもありません。依知川さんの獅子舞ベース、超久々の降臨間違い無し!

続いて「無茶ぶり」予想の3曲は・・・。

・「U. F. O.」
BARAKAと言えばプログレ、プログレなジュリー・ナンバーと言えば「U. F. O.」!
すわさん達コーラス隊が「見よ!」「飛べ!」とかやってくれたら僕は確実にダイブします。

・「感情ドライブ」

BARAKAと言えば変拍子、変拍子なジュリー・ナンバーと言えば「感情ドライブ」!
ジュリーの「エロック」最高峰とも言うべきこのレア曲を待ち望むファンは多いはず。

・「やわらかな後悔」
BARAKAと言えば変態転調、変態転調なジュリー・ナンバーと言えば「やわらかな後悔」!
比較的最近の曲という印象はありますが、実は収録アルバム『ROCK'N ROLL MARCH』の年にしか歌われていない、隠れた名曲。
ただこれは柴山さんの作曲作品ですから、上記2曲と違いセトリ入り実現の可能性は僅かにあるかな?


さぁ、みなさまは『沢田研二2022 初詣ライブ』に、どんなセトリを期待していますか?
考えてみれば「お正月コンサート」自体が久々なわけで。しかもそれがバンド復活とくれば、こんなにめでたい新年はないのです。

コロナ禍で苦しんだこの2年。
来年こそは明るい年になりそう・・・そう思わせてくれたジュリーからのビッグニュースに感謝!

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2021年6月12日 (土)

瞳みのる 「ロード246」

from『ロード246』、2020

Road246

1. ロード246
2. 失うものは何もない

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6月です。
早いもので、気づけば今年ももう半分が過ぎようとしているんですね・・・。

今月の拙ブログは今日と次回、5月に開催された2つのLIVE(5.16四谷LOTUS『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE2021」』&5.28東京国際フォーラムA『BALLADE』)について、それぞれのセットリストから1曲記事お題を選んで更新していきます。
まず今日はピーさんのLIVEから!

ザ・タイガースゆかりの地、四谷左門町のライヴハウス「LOTUS」さんを舞台とする『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE2021」』が、主催者であるYOUさんの多大な尽力により今年も大成功に終わりました。
昨年に続きスタッフとしてお手伝いさせて頂いた僕にも、またひとつ大切な想い出が増えました。

新型コロナウィルス感染防止対策は昨年の同LIVEで実績もあり、当然今年も万全を尽くしての開催。
バンドメンバーやスタッフの意識はもちろんのこと、参加のお客さんには今年もYOUさんから事前に注意事項を伝達、すべてのお客さんの気持ちのよいご協力があっての成功です。
YOUさんは今年は「変異株」の潜伏期間も考慮、3週間経過の時点ですべての関係人員、お客さんの健康状態を確認し、めでたく先週日曜日『大勝利宣言』の運びとなりました。

LIVEの全容、ピーさんのパワフルな演奏、熱唱についてみなさまには上記リンクのYOUさんのブログ記事でご案内がある「無期限アーカイブ」をご購入の上実際に観て頂くことをお勧めするとして、僕はスタッフ参加の目線から、LIVE当日や事前リハーサルでのピーさん達の奮闘、ちょっとしたウラ話等を中心に書かせて頂きたいと思います。
今年も長くなりますがよろしくおつき合いください。


僕は昨年同様スタッフ参加でしたが、今回はホール換気やお客さん誘導の任務からは外れ、最初から最後までステージに近い客席最端につきっきりで

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このような機材と格闘しておりました。

「ゆうさんバンド」は昨年とはメンバーを一新、今年も個性豊かなプレイヤーが揃った中で唯一の問題点が、コーラス担当メンバーの不足でした。
ザ・タイガースの曲を再現するには、YOUさん&ニューフェイスの「たけ」さん以外にもう1人どうしてもコーラス・パートが必要。そこでYOUさんが購入したヴォイス・エフェクターを僕が操作することになったのでした。

僕も初めて扱う機材でしたがこれが面白い!
YOUさんのマイクと接続させると、入力されたYOUさんの声を瞬時多様に増幅させることができます。
曲のキーを設定した上で3度、5度のハーモニーを作るのはもちろん、オクターブ下の声を作りつつ入力元のYOUさんの地声だけ消す、というアクロバティックな操作も可能。
現地や配信でご参加のみなさまは、今年もセットリスト入りした「怒りの鐘を鳴らせ」でサリーさんばりの低音コーラスに気づかれたと思いますが、あれはYOUさんの声をオクターブ変換しているんですよ~。

本来こうした作業はライヴハウスのPAさんに担当して頂くのがベストとは言え、セトリ各曲のキーと転調箇所、コーラスが入るタイミングをあらかじめ把握しておく必要があるということで、僕に役目が回ってきたのです。
コーラスのヴァリエーションが多く転調もある「怒りの鐘を鳴らせ」は特に大変でしたが、何とか当日の任務は遂行できました。
ただ、最後の最後(午前開催の公開リハ含めて3ステージ目)にこの日1日の感動、余韻に浸るあまり「ラヴ・ラヴ・ラヴ」の転調をうっかりしてキー変更を遅らせてしまったのが唯一、痛恨のミス。
リベンジの機会を待ちたいと思います。


さて、昨年コロナ禍のため開催直前に無念の不参加を決断されたピーファンのお客さんが多くいらしたことを受け、今年はそんなみなさまに「再度の機会を」とのコンセプトに立った『左門町LIVE2021』。
ピーさんとYOUさんが話し合い、基本的には昨年のセットリストを踏襲する形となりました(昨年のセトリについては、こちらをご参照ください)。
目玉が「My Way~いつも心のあるがままに」(みなさまご存知のあの有名曲に、ピーさんが自身の人生を辿った13番にも及ぶ日本語詞をつけた大長篇ナンバー)であることもそのまま引き継がれました。

そんな中、今年新たにメンバー皆でリハを重ねセットリスト入りした曲もいくつかあります。
この記事では、それら「新セトリ演目」の紹介をメインに書いてゆくことにしましょう。

「LOVE(抱きしめたい)」
(沢田研二)

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↑ ピアノ弾き語り『沢田研二/ベスト・アルバム』より

YOUさんの選曲。
YOUさんはご自身の還暦企画LIVEでこの曲をカバーしたことがあり、その経験も今回のサプライズ選曲にひと役買っていたかもしれません。

ただピーさん曰く「当時まったく知らなかった歌」だったのだそうです。
「バラードなのに歌うのに凄くパワーが要る。沢田はさすが」とのことで、事前スタジオ・リハーサルでは特に演奏回数を費やした1曲です。
ヴォーカルの難易度に加え、何と言ってもピーさんはドラム叩き語りですからね。
昨年の「時の過ぎゆくままに」もそうでしたが、ピーさんはたとえバラードでも要所要所で凄まじい打点のフィルを繰り出します。74歳にして年々ドラムの音量が上がってゆくのは一体どういうことなのか・・・通常の人類の理屈では説明がつきません(笑)。
ちなみにピーさん、5月末に迫っていたジュリーの『BALLADE』東京公演について「皆で行くよ!」とリハの合間にお話してくださり、「この曲やるんじゃないかな?」とも予想されていましたがそれは当たりませんでした。
今回ご自身で歌ってみて、「本家の歌を生で聴いてみたい」と思われたのでしょうね。

LIVE当日は、特殊なチューニングのギターに持ち替えたYOUさんのアルペジオや、シンセサイザーの「せいこ」さんが弾くオリジナルに忠実なメロディーも光りました。
また、ちょうどアーカイブ配信された3ステージ目ではピーさんのヴォーカルの拍がずれてしまい「仕切りなおし」があったり。
こうしたハプニングも生LIVEならでは、貴重なシーンだったなぁと思います。

「ブラック・サンド・ビーチ」
(加山雄三withランチャーズ)

Blacksandbeach

↑ バンドスコア『ベンチャーズ/スーパー・ベスト』より

YOUさんの選曲。
昨年同様、タイガース・ナンバー以外に「ピーさんにゆかりのある意外なセットリスト曲」を採り上げるYOUさんのコンセプト、今年ご指名の名曲がこれです。

恥ずかしながら僕はこれ、ベンチャーズのオリジナルだとばかり思い込んでいました。実際は加山雄三さんの作曲作品(作曲クレジットは加山さんのペンネーム、弾厚作)だったのですね。
加山さんがピーさんの「大学の先輩」であることにYOUさんは着目したのでした。

今年の「ゆうさんバンド」はギター1本体制。僕は最初のスタジオ・リハの前までは「本当にギター1本で大丈夫なんだろうか」と心配していたのですが、YOUさんのギターと新メンバー「かまちゃん」のベース演奏を聴きまったくの杞憂であったと思い知りました。
この曲をスリーピースで再現した「ゆうさんバンド」に脱帽です。

「久々のインストゥルメンタル演奏」(ファニーズ以来?)に燃えたピーさんのスネアも心地よく、お客さんも「ご存知の曲」だったと見えて特に本番での盛り上がりを見せた1曲でした。

「エニーバディズ・アンサー」
(グランド・ファンク・レイルロード)

Anybodysanswer

YOUさんの選曲。
リアルタイムのタイガースファンなら、71年1.24武道館を思い出されるであろう洋楽カバー曲。

「ピーさんが50年ぶりにこの曲のドラムを叩く!」
というサプライズがYOUさんの狙いでした。
しかし今回YOUさんがこの選曲をピーさんに伝えたところ、ピーさんは「(かつて演奏したことを)まったく覚えてない」という衝撃の事実が判明。
「え~っ?!」と驚くみなさまの声が聞こえてきそうですが、ピーさんによればあのコンサートは
「とにかく間違えないようにしなきゃ。皆に迷惑をかけないようにしなきゃ」
という思いで頭がいっぱいで、楽曲自体を吟味する余裕は無かったのだそうです。当時ピーさんには「ドラム演奏はこれが最後」との決意があったわけですしねぇ。
あの1.24武道館に向けてはタイガース・メンバー揃ってのリハーサルも事前に行われたのだそうですが、それでも時間も余裕も無く、ただただ必死のステージだったのだ、と。

お話の内容もさることながら、50年前にはタイガースの「た」の字も知らなかった一般人の僕が、他でもないピーさん本人からそんなお話を伺っている状況というのも、本当に不思議な心もちがしました。

この「エニーバディズ・アンサー」とセトリ次曲「ハートブレイカー」の2曲はメドレー形式の演奏(キーが同じロ短調、コード進行もよく似ているので、「2つでひとつ」の組曲のような効果が得られます)で、リード・ヴォーカルは新メンバーの「たけ」さんが担当、ピーさんはマイクから離れドラムに専念します。
とは言えピーさんはあのパワフルにして妥協一切無しの熱演です。スタジオリハでもこの2曲を叩き終えた直後はグッタリの様子。
それでも本番当日の3ステージはリハ以上の演奏を魅せてくれるのですから本当に凄いですよ。

あと、最初のスタジオ・リハで初めて聴いた「たけ」さんのリード・ヴォーカルには驚かされました。
ただでさえ高音のメロディーを、ファルセットでもないのに通常のオクターブ上で歌うのですから。
聞けばこれは「ミックス・ヴォイス」なるテクニックなのだそうで、「まず喉の奥で裏声を出して、それを前に持ってきて地声と混ぜ合わせて発声するんですよ」と「たけ」さんが解説してくださいましたが、そんなの普通の人にはできませんから!
さすがは普段X-JAPANコピーバンドのヴォーカリストとして活躍されている方です。
今回グランド・ファンク・レイルロードのハードな2曲が採り上げられるにあたり、「たけ」さんの貢献はとても大きかったのではないでしょうか。

「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」
(フランク・シナトラ)

Flymetothemoon


ピーさんの選曲。
「誰もが知るスタンダード・ナンバーに新たな日本語詞をつけてLIVEで披露する」というのは近年のピーさんの活動の柱のひとつ。昨年の「ダニー・ボーイ」と入れ替える形で今年はこの有名曲がセットリスト入りです。

ピーさんの日本語詞は基本、原曲のコンセプト重視で「わかりやすく歌心を紐解く」スタイル。
そこにはなかなか苦労もあるようで
「日本語訳って、メロディーに載せる文字数が原詞と比べて少なくなってしまうから大変なんだ」
と仰っていました。
例えばこの歌の原詞には
「Let me see what spring is like onJupiter and Mars♪」
なるくだりがあります。
ピーさん曰く「日本語だと、とても木星だ火星だと言ってられないんだよね」と。
「中国語の場合は少ない文字数で色々な意味を表現できるのに、日本語だとそうはいかない」とのことですが、そんな上記箇所に「見せてよ輝く星達を♪」と日本語ならではの表現を当てたピーさんの「訳」は光ります。

ちなみに当初バンドはこの曲をオリジナル・キーのイ短調で演奏していましたが、ピーさんの希望で最終リハから1音上げのロ短調へと変更。
昨年の「ダニー・ボーイ」でも並行調の理屈で言えばまったく同じ経緯があり、ヴォーカリストとしてのピーさんのキーの高さを証明する1曲となりました。

この「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」以降のセットリスト終盤はピーさんがスタンディングのヴォーカルに専念し、ドラムスは昨年に引き続きメンバー入りした「けん」さんが担当します。
普段はメタル・バンドでハード志向の演奏をされている「けん」さんですが、この穏やかなジャズ・スタンダードも難なく叩き、「歌心」の適性を発揮。YOUさん曰く「任せて安心」の腕効きドラマーさんです。

そうそう、今年もセトリ入りした定番の「ラヴ・ラヴ・ラヴ」は、「けん」さんのドラムスが昨年とは変わっているんですよ。タイガース・ファンならお馴染みの、あのキックの連打を今年は披露してくれたのです。
実はこれはスタジオ・リハの時に僕が「やって欲しい」と提案したのでした。
「俺があれをやると、本当にメタルみたいになってうるさくなっちゃうから」と遠慮する「けん」さんを、「タイガース・ファンのお客さんなら、この曲が単に静かなバラードではないと知っていますから大丈夫ですよ」と説得。
隣で話を聞いていたピーさんも「遠慮なく大暴れしてください」と言ってくださり、LIVE当日の入魂のキック連打実現に至りました。

そんなやりとりの中、ピーさんはタイガース時代の演奏体験を思い出されたのか
「(「ラヴ・ラヴ・ラヴ」では)こっちが必死になって手数足数繰り出してるのに、カメラは沢田しか映さないんだよなぁ」
とひとボヤき。
でも芸能界復帰後、二十二世紀バンドとのLIVEやそして今回の左門町LIVEでも、ピーさんは当時とそっくり逆の立場になられたわけですが(笑)。

「ロード246」
(瞳みのる)

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ピーさんの選曲。
CDのカップリング曲で昨年セトリ入りしていた「失うものは何もない」も候補に挙がっていたそうですが、最終的にピーさんがこちらを選びました。

1月の二十二世紀バンドとのLIVEで披露されている新曲、ゆうさんバンドでは初の演奏となります。
今日の記事タイトルでこの曲を押し出したのは、今回LIVEをお手伝いさせて頂く過程で劇的に楽曲解釈が変化した、個人的にも重要な1曲だからです。

CDのリリース後すぐに購入して聴いた僕の「ロード246」の当初の印象は、「ビートが効いたメジャー進行で、ウキウキと楽しい曲」というものでした。
実際、今もそう感じていらっしゃるピーファンのかたも多いと思います。明るいメロディーに加え、演奏もアレンジもポップですからね。

ところが。
左門町LIVEのセットリストが決まり、今年もまず僕がバンドメンバー用の採譜作業をするところから準備が始まったのですが・・・いざ歌詞を書き起こしていて
「あれっ?」
と。例えば

僕は もう この街なんかに
   Dm                Am

何も 求めるものはないと ♪
   B♭                     C

といったように、陽気なメロディーとは乖離する悲観的、否定的な表現が随所に登場します。

「これは一体どういう心境を描いた詞なんだろう?」
との疑問が解けぬまま僕は採譜を済ませ、そのままスタジオリハに突入。ピーさんが合流した最初のリハで、いざ「ロード246」を合わせてみましょう、となった際、YOUさんが笑いながら
1月24日の夜の歌ですね
と言ったので、僕は思わず「えっ、そうなんですか?」と話に食いついてしまいました。

元々この曲は
「国道246号を辿っていくと、偶然にもザ・タイガースゆかりの地が点在している」
ことに着目したピーさんが、タイガース回顧の巡礼ソングのようなアイデアから製作スタートしたものです(246号とタイガース&ピーさん個人ゆかりの地との関係は、ピーさんが昨年こちらのブログ記事で詳しく書いてくださっています)。
とっかかりとしては、タイガース時代のレパートリーでもあったスタンダートR&B「ルート66」へのオマージュもあったかもしれません。

しかしピーさん曰く
「そんなつもりは全然無かった」
のに、完成した詞にはあの1.24武道館が終わり、坂田さんの運転するトラックで一夜かけて京都へと帰っていった時のピーさんの思いが描かれたのでした。
「考えてみたら、あの夜僕は246号を走ってるんだよ。身体に沁みついていたものが自分でも意識しないまま(詞に)出ちゃったんだねぇ」
とピーさんがしみじみ話してくださったのは、その日のリハの休憩(換気)時のことです。
目からウロコ、というにはあまりに衝撃的な、僕の中での楽曲解釈の変化でした。

そうして改めて歌詞を読むと、ピーさんの思いは1.24から膨らんで、タイガース・デビュー時のご自身のキャラクター設定への改悟にも及んでいるような・・・まぁこれは僕の深読みが過ぎるかもしれませんが。
ただ重要なのは、ピーさんがそうした思いを自然に創作に込められるまでになった、という事実でしょう。
今はもう「愛に出逢えて」いるということです。

ですから「ロード246」は「道」以上に俯瞰力の高い名篇と言えましょうし、KAZUさんがこの詞にポップなビート系のメロディーを載せてきたのも結果バッチリ噛み合っている、と僕は考えます。
テンポを落として唐突に終えるアレンジも「過去」から「現在」に立ち返るようで、象徴的なんですよね。

ちなみにピーさんの自作詞が何度も何度も改稿され完成してゆく、ということを昨年も書きましたが、どうやら「ロード246」も例外ではなかったようです。
CDをお持ちのみなさまならお気づきでしょう、付属の歌詞カードと実際の音源とでは、ピーさんの歌詞に違いがあるんですよね。例えば

大の橋 三の茶屋 ♪
F

の箇所は、歌詞カードだと「三の茶屋 駒の沢」となっています。
本当に歌入れ直前の改稿だったのでしょう。

当日のステージでは、「けん」さん&「かまちゃん」の小気味良いビートもさることながら、YOUさんが披露した「ボトルネックを使わずにスライド・ギターの音を出す」というウルトラC演奏が印象に残ります。ギター1本体制による産物なのですが、これは難易度高いです!


ということで、今年新たにセットリスト入りした演目を紹介させて頂きました。

昨年に続き演奏された他の曲も、昨年とは違った味わいや見どころ、聴きどころがあります。是非みなさま「無期限アーカーブ」を購入し楽しんでみてください。
出来たてホヤホヤのピーさんの新曲の一部がカラオケ歌唱でいち早くお客さんに届けられるシーンを含む、ピーさんとYOUさんのトークコーナーも必見です。
この日披露されたのは1曲のみですが、昨年からのピーさんの新曲ラッシュはとどまるところを知らず、完成している、或いは製作真っ只中という新曲がまだまだ控えています。LIVE準備期間中に僕が歌詞を読ませて頂けたものだけでも、その気になればすぐにアルバム1枚リリースできるくらいの曲数。
今年もたくさんの新曲がファンに届けられること、間違いありません。

あとトークコーナーでは、終演後ピーさんが
「配信されているのをウッカリしていた。大丈夫かなぁ」
と苦笑されたほどの「ここだけの話」が飛び出したりもしました。
大丈夫、アーカイブを観た人全員がその胸に秘めておけばよいのです(笑)。


最後に。

『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE」2021』
全演目

1.世界はまわる
2.素晴しい旅行
3.散りゆく青春
4.割れた地球
5.怒りの鐘を鳴らせ
6.美しき愛の掟
7.LOVE(抱きしめたい)
8.ブラック・サンド・ビーチ
9.どうにかなるさ
10.エニーバディズ・アンサー
11.ハートブレイカー

~トークコーナー~

12.フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
13.ロード246
14.明月荘ブルース
15.My Way~いつも心のあるがままに~
16.ラヴ・ラヴ・ラヴ

~アンコール~
17.Lock Down

バンドメンバーのみなさま、入魂の演奏をありがとうございました。

本来クラシック一筋の演奏者ながら、リハを重ねる度にバンドに寄ってくれて、最後には大長編「My Way」のスコアを自作までして「ロック」のスタイルにチャレンジした、シンセサイザーの「せいこ」さん。

ギター1本体制のアンサンブルを堅実に支え、本番でのちょっとしたアクシデントも真っ先に対応、柔軟にして縁の下の力持ちの大奮闘を見せてくれたベースの「かまちゃん」。

ド肝を抜くミックス・ボイスのみならず、コーラスの高音パートやリード・タンバリンでステージを盛り上げてくれたヴォーカル&コーラスの「たけ」さん。

ピーさんのドラムセット横に待機し、何かあれば的確なサポートを完遂、自らスティックを握って以降は抜群の安定感と根っからのバンドマン・テンションで昨年に続き大活躍したドラムスの「けん」さん。

今年の僕は役得でみなさんの演奏を本番でも間近で体感することができ、感動をたくさん頂きました。

そして、ピーさんとYOUさん。
終演後は本当に疲労困憊でいらしたに違いありません。それでもお2人は最後まで笑顔を消すことはなく、この日お客さんはもちろん、スタッフの僕にとっても素敵な想い出がまた増えました。

ピーさんのドラムスの進化は当然ながら、僕が今回身を持って知ったのがそのヴォーカル・センスです。
実は今年はメンバーが一新されアンサンブルが未知数だったこともあり、4月の第1回のスタジオ・リハはピーさんを除くバンドメンバーだけで行いました。ただリード・ヴォーカルが不在だとメンバーが演奏中に迷子になってしまうことも考えられ、僕がYOUさんから「仮ヴォーカル」を依頼されたのです。
僕は歌は本当にダメですから「え~っ?」とは思ったのですが、他ならぬYOUさんにお願いされたらそんなん命令と同じですよ(笑)。
優しいYOUさんが「鼻歌程度で良いですよ」と言ってくださったのに僕は大いに張り切り、前日1日かけて練習しリハに臨みましたが・・・。
語尾が安定しないとか、「ラヴ・ラヴ・ラヴ」転調後の高音が出ない、とかいう技術的なことよりも「歌への思いがまったく声に乗らない」状況に我ながら愕然。
歌詞の意味も考えて懸命に思いを込めようと歌っているのに、それが声に反映されないんですよね。
僕が歌う「怒りの鐘を鳴らせ」や「明月荘ブルース」の何と情けないことよ・・・(涙)。

ところがピーさんはそこが違います。
タイガース・ナンバーや自作オリジナルはもちろん、カバー曲で「まったく初めて歌った」という「LOVE(抱きしめたい)」でも、当たり前のように歌心が声に乗るんです。これは持って生まれたセンスとしか言えません。
特にバンド・スタイルの生歌でこそ、そのセンスが顕著に表れます。ピーさんの歌は、ステージを重ねるごとにこれからもさらに進化してゆくでしょう。

また、ピーさんはこの日の3ステージいずれも「コロナなんかに負けないで」とお客さんにメッセージを送ってくれました。
でもそれを変に気負うでもなく過剰に語気強めるでもなく、サラリと口にされていたのがとても印象的で。
日々の暮らしの中で自ら思い巡らせていることを、ごく自然に僕らに語ってくれた・・・これこそがピーさんの人柄であり魅力です。

YOUさんはピーさん以上に疲れたでしょう。
何と言っても企画から広報、チケット販売の応対、ライヴハウスとの打ち合わせに始まり、注意事項草案、レジュメ作成、当日のステージ進行、メンバーを纏めるリーダーの役割すべて担った上で、ギター1本体制バンドのギタリストとして丸1日の長丁場を駆けたのですから。

僕は最初のスタジオ・リハでYOUさんの演奏を聴いた時、この時点で既に尋常ではない稽古量を積み上げているとすぐに分かりました。
いったん目標を立てたらストイックなまでに全力で取り組む、というYOUさんの実行力は既に知っていたとは言え、改めて「凄い人だ」と思い知った次第です。
本当にお疲れさまでした。最大のリスペクトを捧げ、今日の記事を終えたいと思います。



では次回更新は、今度はジュリーのLIVE。
『BALLADE』セットリストから1曲選んでの記事タイトルです。どの曲にするかはもう決めています。

「衝撃度」という意味では今回のセトリで頭抜けていたんじゃないか、と考えている曲。
有名曲、定番曲であるにも関わらずLIVE当日の僕は、「このヴァージョンは一体・・・?」との違和感に終わってしまったのが悔しく、その後色々と考え抜きましたから、そうしたことをメインに書いてゆき、LIVE全体の感想まで補完できれば、と思っています。

そでれはまた来週!(たぶん)

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2021年4月20日 (火)

ザ・ワイルドワンズ 「旅路」

from『ザ・ワイルドワンズ アルバム第3集~バラの恋人』、1968

Wildones3

1. バラの恋人
2. ハロー・グッドバイ
3. ホリデイ
4. すてきなヴァレリ
5. サイレンス・イズ・ゴールデン
6. マーシー・マイ・ラヴ
7. 花のヤング・タウン
8. ワールド
9. 旅路
10. ノー・ノー・ノー
11. ホールド・オン
12. あの雲といっしょに

----------------

ご無沙汰しております。

ここへ来てコロナ禍が全国的に深刻な状況となってきました。関東圏もこのまま「まん防」のみでゴールデン・ウィークに突入するとは考えられません。緊急事態宣言の発出を覚悟せねばならないでしょう。
一層気を引き締め、やれることをやってゆくしかありませんが、サラリーマンとしては一番注意しなければならないのが通勤時の満員電車。可能な限りラッシュ時を避けて動くことを心がけます。

さて、久々の更新となります。
今年も加瀬さんの命日を迎えました。もう7回忌となりますか・・・本当に早いものです。

加瀬さんが旅立たれたのが2015年。僕は翌2016年からずっと「毎年この日の更新でワイルドワンズの曲を書く」と決めています。
ひと月ほど前「今年はどの曲にしようかな」と考えてふと気がつきました。僕はワイルドワンズのオリジナル・アルバムについては、まだ『ロマン・ホリディ』1枚しか持っていないじゃないか、と。
他のアルバムにもきっと、後追いの僕が未だ知らずにいる素敵な「KASE SONGS」が収録されているに違いない・・・よし、今年は何かアルバムを買って、その中から1曲書こう!そう思った次第です。

で、敢えて詳しいリサーチはせず今回ほとんど直感で購入したのが『ザ・ワイルドワンズ アルバム第3集~バラの恋人』でした。
何故この作品に目をつけたかというと、まず68年リリースということ。正にグループ・サウンズ全盛。同年末にはザ・タイガースの『ヒューマン・ルネッサンス』もリリースされている重要な年ですよね。
さらに、個人的にワイルドワンズ・ナンバーの中で1、2を争うほど好きな「バラの恋人」がタイトルにフィーチャーされていること。
新メンバーの渡辺茂樹さん(チャッピー)を迎え、ワンズのアンサンブルもノリに乗っていた時期だったのでは?と想像したのです。

お題曲「旅路」考察の前に、まずはこのアルバムについて少し書いておきましょう。

Wildones3jacket

Wildones3back

全12曲、うち5曲が加瀬さん作曲のオリジナルで、残る7曲は洋楽カバーという構成。
かつて初期のビートルズやストーンズがそうだったように、カバー曲を織り交ぜてなるべくたくさんの曲を詰め込むアルバム・スタイルは日本のGSでも踏襲され、僕は既にスパイダーズのアルバムでそのあたりは勉強済みでした。
ワンズはさすが王道だなぁと思いながら、一方でザ・タイガースの特別さ、つまり『ヒューマン・ルネッサンス』の衝撃というものが当時の音楽業界やGSリスナーに与えた大きさについても考えさせられたり。

ワンズ第3集の洋楽カバーの中には、ジュリーファン、タイガース・ファンのみなさまならお馴染みの「ハロー・グッドバイ」(ビートルズ)や「ホリディ」(ビージーズ)も収められているんですねぇ。ワンズのヴァージョンは初めて聴いたのでとても新鮮でした。
アルバム全体のアレンジを見ると、ワンズらしいシンプルなバンド・サウンドと、東海林修さんのホーン・セクションやストリングスを施した華やかな仕上がりの曲とが混在しており、いかにも68年代後半の邦楽ロック・アルバムの音、という感じです。

さて、加瀬さんのオリジナル5曲のうち「バラの恋人」「花のヤングタウン」「あの雲といっしょに」の3曲は手元にベスト盤『All Of My Life~40th Anniversary Best 』収録の音源があり、今回アルバムでの初聴き「KASE SONGS」は「マーシー・マイ・ラヴ」と「旅路」(どちらも作詞は安井かずみさん)の2曲だったわけですが、やはりイイ曲なんですよね~。

ここでちょっと2015年のジュリーの全国ツアーのことを思い出してみましょう。

「KASE SONGS」満載となったセットリスト、最初のMC後の3曲目から「許されない愛」「死んでもいい」「白い部屋」「追憶」と続いたところでジュリーが「このあたりの加瀬さんの曲は、全部似てると言えば似てる」と語ったことがありました。
情念の詞、金管楽器の採用等もあれど、すぐに分かり易い共通点は、加瀬さんが作った美しくも狂おしい短調のメロディーということになりましょうか。
そして上記曲の中で個人の好みはひとまず置き、最も洗練され完成度が高い曲は?となるとこれはもう「追憶」で間違いないでしょう。

今日お題に選んだワンズの「旅路」は、この「追憶」の原型のような名曲でした。
キーも同じホ短調。

もしかしたらと夢をみても
Em          G    D         C

ダメかもしれない
Em       G       B7

たったひとつの思い出さえも
Em             G    D          C

あの町においてきた ♪
Em        G         B7

(↑ 歌詞は2番より)

物悲しいAメロで心を掴んでおいて、サビは同主音移調のホ長調に転じます。

いいのさ  誰でもいつかは
E       C#m  D      B7

通りすぎる
E          C#m

Ah 旅路だから ♪
D                B7

パ~ッと視界が開けるような感覚。正に「追憶」の作曲コンセプトを先取りしています。
後にソロ歌手・ジュリーのメインライターとなる加瀬さんの、最初の「ジュリーっぽい」作曲作品。それが「旅路」だったのではないでしょうか。
しかも加瀬さんと安井さんのコンビは同年に「これぞGS!」という「シー・シー・シー」も作っていますし、お2人の才能・充実が窺い知れます。

サビは同じコード進行を2度繰り返していますが、「D」→「B7」に載せたメロディーはそれぞれ全然違うという・・・さすが加瀬さん!

8分の6のモデラートには(こちらは加瀬さんの曲ではないですけど)「あなただけでいい」に繋がる印象もあり、「もしジュリーがこの曲を歌っていたら」と想像をかきたてられます。

「旅路」のリード・ヴォーカルは植田さんです。
実は植田さんもジュリーと同じ「3連の適性」を持っていると僕は思っていて、「旅路」の歌声からジュリーwithザ・ワイルドワンズの「アオゾラ」を思い出しました。
サウンド面では「旅路」にストリングスやホーンの装飾は無く、完全なバンド・スタイル。中央にドラムス、ベース、オルガン、右サイドがリード・ギター、左サイドがリズム・ギターの3連ストロークとピアノ。60年代後半王道、個人的には大変好みのミックスです。
鍵盤のみ2トラックということになりますが、どちらも渡辺さんの演奏でしょう。
特にオルガンが歌メロに入っても狂乱のフレーズを弾き続けているのがポイントで、このあたりも井上バンド期のジュリー・ソロを彷彿させます。

このように、まだまだ僕にとって未知なる「KASE SONGS」はたくさんありそうです。
全曲網羅できるかどうか分かりませんが、これからもワイルドワンズのアルバムを少しずつ集めていきたい、と改めて思っています。
次は再結成期のアルバムにしようかな。


最後に。
加瀬さん。
こちらは昨年からのコロナ禍で大変な状況です。
そんな中ジュリーは5月末からの、1年以上ぶりとなるLIVEの開催をお知らせしてくれました。
ツアー・タイトルが『BALLADE』ということで、加瀬さんの名曲群から今回は「追憶」のセットリスト入りが堅いのではないか、と予想しています。サプライズがあるとすれば、「FRIENDSHIP」も。

今は皆で、一刻も早いコロナ禍の収束、公演の無事開催を願うばかりです。
どうぞジュリーをお護りください。

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2021年1月14日 (木)

原田マハ 「キネマの神様」



こちら関東1都3県では1月8日に緊急事態宣言が発出され、また不安な日々が続いています。
みなさまお変わりないでしょうか。

去る11日には「瞳みのる&二十二世紀バンド」四谷区民ホール公演が予定通り開催されましたが、僕は無念ながら参加自粛ということになってしまいました。
もちろん、感染防止対策を徹底しての開催と事前に聞いていました。ただ僕は役職上、緊急事態宣言下でのイベント等への参加自粛とする勤務先のガイドラインを部下に指導せねばならない立場でもあり・・・苦渋の決断を迫られたのです。
2012年以降毎回必ず参加していたピーさんと二十二世紀バンドのツアーを今回初めて欠席したことは、本当に痛恨の極み。
止むを得ない決断だったのだ、と自分に言い聞かせ、「この無念は5月に予定されている四谷左門町LIVEで晴らす!」と、なんとか気持ちを切り替えたところです。

一方ジュリーのLIVE活動再開は未だ見通しの立たない状況ですが、ジュリーファンとしての近々の楽しみは4月公開予定の映画『キネマの神様』ですね。
公式サイトでは予告編映像もリリースされ、映画館でも流れ始めているとか。

そこで今日は、原田マハさんの原作小説「キネマの神様」のレビュー記事を書かせて頂きます。

注:「キネマの神様」のフレーズ検索等でお越しくださった、「はじめまして」の方々へ。
 こちらは沢田研二さん(ジュリー)のファンブログです。
 この記事もジュリーファンとして書いておりますので、一般的な書評やレビューとは若干視点が異なるかと思いますが、その点あらかじめご了承くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。


既に本をお読みになっているみなさまはご存知の通り、原田さんの原作は映画『キネマの神様』公式サイトでのキャスティング情報や予告編映像などから推測される映画のあらすじとは大きくストーリーが異なります。
ですから原田さんの原作を読んでも「映画版の重要なネタバレ」にはなりません。
むしろあらかじめジュリー演じるゴウの性格やゴウをとりまく人間関係を予習しておくことで、映画の基本的設定を理解しやすくなると思いますので、是非公開前に一読されることをお勧めいたします。
何より、本当に素晴らしい物語なのです。

僕は結構本を読む方だと思いますが、読了した瞬間にこれほど暖かい気持ちになれる小説などそうそう出逢うこともありません。
今回の更新が、原作未読のジュリーファンのみなさまへのご案内、この名作を手にとる一助となれば幸いです。
よろしくお願い申し上げます。


さて、憎きコロナ禍さえ無ければ、志村けんさんの主演で昨年末には公開され今頃は世の話題となっていたはずの映画『キネマの神様』。
天国に旅立たれた志村けんさんに代わり、志村さんや製作陣と深い関わりのあったジュリーが「代役主演決定!」とのニュースが飛び込んできた時、僕はすぐに原作を読もうと勇みましたが、少し考えてしばらく待つことにしました。
と言うのは、小説が映画化される場合、表紙や帯などに映画の予告ヴィジュアルを押し出した装丁で改めて再販配本されるのが王道で、「キネマの神様」もそうなるだろうと思ったからです。

予想は当たり、昨年秋には最寄りの本屋さんで新装版の文庫がド~ンと平積みに。僕は満を持してそちらを購入したのでした。
このような表紙になっています。

Kinema

原作の主人公は、映画でジュリーが演じる「ゴウ」の娘さんで、名前は「歩(あゆみ)」。
映画を愛し、映画関係の仕事でエネルギッシュに働く女性です。
原作は一貫して彼女の一人称視点で物語が進んでいきます(したがって、映画ではジュリーとダブル主演を張る菅田さん演じる「若き日のゴウ」については原作では描かれません)。

ギャンブルで借金まみれになり母娘を振り回しながら、開き直って飄々と暮らす父「ゴウ」に呆れつつも、「無類の映画好き」は父と娘の共通点であり絆。

そして「歩」自らの人生にも大きな転機が訪れます。
意地と信念の決断とは言え、突然の会社退職。
なんとか「ゴウ」をギャンブル中毒から脱出させようと奮闘する母親と、持ち金を管理されるやギャンブルができず生気を無くしてゆく父親。そんな両親に構ってばかりもいられなくなり・・・といった感じでスタートした物語は、ギャンブル資金を失い失踪中の「ゴウ」が仮のねぐらとしたネット喫茶で「インターネット」の世界に初めて触れ、何気なく映画談議を投稿したことで劇的に変化します。
「ゴウ」の投稿が老舗の映画雑誌『映友』編集部の目に留まったのです。

”映画ブロガー”「ゴウ」の誕生。

この「変化」が起こって以降のストーリーはもうドキドキの連続、一気読み必至なのですよ~。

すべての登場人物が魅力的ですが、中でも僕が特に惹かれたキャラクターが2人います。
ちなみにこの2人、いずれも現時点で映画の方ではキャストの確認ができていないので、スクリーンに登場しない可能性が高いのですが・・・。

ひとりは「歩」の再就職先となった『映友』編集部の先輩編集者、「新村穣」。
「歩」は当初彼に「ぶっきら棒でいけ好かない」印象を持っていたのが、同僚として様々な難題に共に立ち向かってゆく中で徐々に彼の本質や才覚を知り、不思議な親愛の情を抱くようになります。

作者の原田さんには、原田さんよりずっと早く若くして作家デビューを果たしたお兄さん(原田宗典さん)がいらっしゃいます。
「キネマの神様」(原作小説)の主人公「歩」は原田さんご自身がモデルとのことですが、作中で「歩」は「ゴウ」夫妻の一人娘で兄弟はいない設定。
もしかしたら原田さんはその代わりに、この「新村」にお兄さんのキャラクターを投影されているのではないかな、と僕は想像しています。

もうひとりは、「ローズ・バッド」なるハンドルネームの投稿者。
映画批評で「ゴウ」と散々論戦を戦わすネット上の強者(つわもの)で、その正体を巡る顛末は作中で大きな肝となっています。
つまり読者は、風貌も年齢も国籍も、性別すら謎のまま「ローズ・パッドの投稿文」だけでそのキャラクターに魅せられていくのです。

とにかく原田さんの描く「ゴウ」のブログ投稿(「ゴウ」は文章書きとしては素人なので、当初は「です・ます」と「だ・である」が混在するなどしながらも、映画作品の長所・・・「陽」の部分を推しまくった情熱漲る文章でグイグイと読者を引き込みます)と、「ローズ・パッド」のコメント投稿(作品を本質的には評価しつつも、その奥に秘められた監督や製作者の「闇」の部分を掘り起こし、理路整然と「ゴウ」の見落としや見識不足を指摘するクールかつウィットに富んだ文章で読者を戦慄させます)の書き分けが本当に圧巻です。
当たり前のことかもしれませんが、プロの作家さんというのは凄いですね。

サニーサイドの「ゴウ」と、ダークサイドの「ローズ・バッド」の対決。
「歩」は最初にローズ・バッドから挑戦的な投稿があった際、正体不明の「只者ではない」文章の攻撃力に怯え、「ゴウ」が傷ついてしまうのではないかと心配します。
しかし「ゴウ」の長年の映画仲間「テラシン」や先述の「新村」などは「ゴウさんはそんなタマじゃない」と言い切ります。

実際に「ゴウ」は「テラシン」達の予想通り一層奮起し大活躍するばかりか、文章や考察も次第に練れていき(「ゴウ」の投稿文章が徐々に達者になっていくあたり、作家・原田さんの匠の技と言えましょう)、やがてネット上の宿敵であるはずの「ローズ・バッド」との関係も少しずつ変わってきて・・・。

「ゴウ」と「ローズ・バッド」対決の行方は?
そして「ローズ・バッド」の正体とは?

「ゴウ」一家の生活や、「歩」の仕事はうまくいくのか?

さらには「テラシン」が支配人を務める「街の小さな映画館」の閉館騒動なども絡んで、ストーリーは最後までドキドキの糸を切らすことなく、穏やかに疾走します(「穏やかに疾走」なんて表現はあり得ないのでしょうけど、僕の貧困な語彙力ではそうとしか書けない汗)。

僕も末端ながらこうしてブログを続けていて、どちらかと言えば「ゴウ」のようなサニーサイドの発信スタイルを心がけてきました。
ですから「キネマの神様」の物語には感動はもちろん、大いに励まされ共感を抱きました。

そして今回の映画化。
映画の公式サイトで現在流れている予告編映像を見ると、「ゴウ」は若い頃映画製作に情熱を注いでいた、という設定のようです。
老いて失った情熱を、家族や友人の助けもあって取り戻す・・・そんな脚本に書き換わっているのかな。

したがって、僕が原作を読みながら映画化に思いを馳せ散々萌えまくった

あのジュリーがブロガーになる!

との妄想は、映画のストーリーでは実現しないかも・・・でもこればかりは観るまで分からないですね。


ちなみに僕は恥ずかしながら、原田さんの作品を読むのはこれが初めてでした。
素敵な作家さんに出逢った、と思っていて、先日は原田さんの「総理の夫」を文庫で購入。こちらも映画化され、今年秋に公開だそうです。
主演は今をときめく田中圭さん、今年は「原田マハさん原作の映画」同士、ジュリーと勝負じゃ~!


映画『キネマの神様』が4月にいよいよ公開となった時、多くの人が安心して映画館に足を運べる状況になるよう、なんとかこのコロナ禍を落ち着かせなければなりません。
僕らひとりひとりが危機感を持ち真剣に考え、今できることをコツコツやっていきましょう。

そして春には、『キネマの神様』を大ヒットさせましょう!

その映画公開の前に是非みなさま、原田さんの原作もお読みください。なんとも言えない温かい涙が溢れてくること、請け合いますよ~。

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2020年12月31日 (木)

シローとブレッド&バター 「野生の馬」

from『ムーンライト』、1972

Moonlight

1. いつから
2. 野生の馬
3. 舟
4. 雲
5. Happiness
6. 公園
7. なにもかも
8. 空いっぱい
9. Sugar In My Tea
10. やすらぎ
11. MOONLIGHT

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あっという間に大晦日です。
僕は29日から冬休みに入り、晴れて暖かかった一昨日に窓拭き等の大掃除を済ませて、昨日は近場に買い出しと食事。
いかにも連休を過ごしているなぁと実感し、年末モードに浸っています。

2020年は本当に色々なことがあり過ぎて大変な一年でした。ジュリーファンとしても思いのかけない出来事が起こり重なり、「辛抱元年」となりました。

そんな中で8月、シローさんが天国に旅立たれました。
メンバー全員が健在!とタイガースファンが長年当たり前のように誇らしく思っていたのに、メンバー中一番若いシローさんが行ってしまった・・・大きなショックでした。

僕は”ヴォーカリスト”シローさんについては完全に後追いで、「ザ・タイガース」と「サリー&シロー」でしか勉強できぬままこんなことになってしまい、「シローとブレッド&バター」のリマスター・アルバム購入は、シローさんの旅立ちを受けて、という形になってしまいました。
今日はアルバムの中から有名な(と言っても僕自身は今年初めてじっくり音源を聴いた曲なのですが)「野生の馬」をお題に、改めてシローさんを送り、2020年を締めくくりたいと思います。


アルバム『ムーンライト』は大変な名盤でした。

僕は「ブレッド&バター」の作品はこれがまったくの初体感。「フォーク」だと聴いていた彼らの曲は、少なくともこのアルバムではとてつもない「ロック」でした。
まぁこの頃はメインのギターがアコースティックなら「フォーク」とジャンル分けされていたのかな。
でも『ムーンライト』全体の音作りは、サリー&シローの『トラ70619』に近いんですよ。
例えばジミ・ヘンドリックス「風の中のマリー」を思い出したり(「雲」)、ビートルズの「ジュリア」を思い出したり(「公園」)と、僕の好きなロック・ナンバーと重なる魅力を持つ名曲が多く収録されていました。
日本のロック史でこのアルバムの”はっぴいえんど”との共鳴を語る人は今までいなかったのか、それとも僕が不勉強なだけだったのか。いやはや未知なる名盤があったものです。もっと早く知るべきでしたが・・・。

これは「シローとブレッド&バター」名義、唯一のアルバムなのだそうです。

Moonlightinnner

シローさんとブレッド&バターが何故結びついたのか、岡村詩野さんは付属のライナーで「正直今も明確には分からない」としながらも、当時はちょうどヒッピーの理想主義が終焉を迎えていた時期で、アメリカで様々なロックを体得したシローさんがザ・タイガースに加入の末、そうした理想、幻想が崩壊してゆくことを体験し、「癒し」のようなブレッド&バターのウエスト・コースト的音楽性に惹かれたのではないか、と推測されています。

ただ、『ムーンライト』でのシローさんはあくまで「ゲスト」のような立ち位置。
シローさんがまったく参加していない歌もいくつかあり、僕は実際そうした純粋な「ブレッド&バター」ナンバーの方で彼等の才能の再発見に驚き、大いに好きになった曲もその中にあるのですが、アルバムを通して聴くほどに「野生の馬」が光輝くように「主役」の存在を増してゆき、なるほどこれは名曲に違いない、と確信しました。

シローさんとブレッド&バターの結びつきについて僕は、腕利きのサポート・ミュージシャンの人脈も絡んでいたのでは、と想像します。
と言うのは、先述の通り『ムーンライト』は『トラ70619』と音作り、アレンジの印象がとても似通っていて、いくつかの楽器についてはミュージシャンが重複しているとしか思えないんです。

『トラ70619』 は演奏クレジットが不明でしたが、『ムーンライト』は楽曲ごとに明記があります。
僕が特に注視したいのは、「野生の馬」でも名を連ねるアコースティック・ギターの石川鷹彦さん。
みなさま、もし「野生の馬」の音源をお持ちでしたら、是非アコギの鳴りをサリー&シローの「花咲く星」のそれと比べてみてください。同一者の演奏としか聴こえないではありませんか!
石川さんはじめ当時の重要なロック・パーソンが、ブレッド&バターに”ヴォーカリスト”シローさんを推薦したとしても不思議ではない、と思えます。

さて、昨年僕の勤務先が引っ越しをした際に発掘し整理しておいた貴重な資料本の中に、このようなスコアもあったことを思い出し、今回手にとってみました。

Breadandbutter

アルバム『ムーンライト』からは当然、「野生の馬」が収載されています。

Yaseinouma

何も考えずに 自然の中で
      E♭ B♭         E♭  B♭

風を切って走る 
   E♭    D7  C7  F7

まるで野 生の   馬 さ ♪
        B♭   Cm7   E♭  B♭

(スコアは何故かロ長調の採譜ですが、ここではオリジナル音源のキーに準じ変ロ長調で表記しました)

朴訥で志の高い詞。4拍子の進行の中に2拍、3拍の小節が混在しながら、まったく違和感なく耳に溶け入ってくる美しいメロディー。
こんな名曲が普通にヒットし、皆に歌われていた・・・つくづく良い時代ですねぇ。

歌詞は、リリース時の世相と言うか社会性を反映し、「自由」を表現したものだったでしょう。
ただ今年初めて真剣に「野生の馬」を聴いた後追いの僕には、シローさんが歌う自らの「旅立ち」の歌にしか聴こえなくてね・・・。
もちろんザ・タイガース解散後のシローさんの歌ですから、「旅立ち」の解釈は当時もあったかもしれません。しかし今聴こえるシローさんのこの歌の「旅立ち」にはもっと特別な「天国へ」の意味まで考えざるを得ないです。

ちなみに僕が今日書いている(聴いている)「野生の馬」はアルバム『ムーンライト』のヴァージョンです。シングルはヴァージョンが違うのだそうで、残念ながらそちらはまだ聴けていません。
「野生の馬」という曲タイトルだけは僕もずっと以前から知っていて、これはローリング・ストーンズの「ワイルド・ホース」から拝借したのだろうと安易に考えました。
ところが今回調べてみると、アルバム『ムーンライト』のリリースは72年ですが、「野生の馬」シングル盤は71年4月10日にリリースされているのですね。
対してストーンズの「ワイルド・ホース」(『スティッキー・フィンガース』)は71年4月23日。
浅はかな考えを改めねばならないことは、明白です。

洋楽好きだったシローさんに、ストーンズはどういう風に聴こえていたのかな。
「『野生の馬』はワイが先やで!」
と、そんな声が聞こえてきそうです。


シローさんが旅立たれた2020年も、色々なことが未だ続きつつ残り僅か数時間となりました。
来年こそは良い年にしたいけれど、前途多難は間違いない・・・まずしっかりと志を持ち行動してゆくこと、それがジュリーのLIVE活動再開にも繋がると信じます。

今年も拙ブログへのご訪問、有難うございました。
みなさまよいお年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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2020年12月26日 (土)

瞳みのる 「明月荘ブルース」

from『明月荘ブルース』、2020

Meigetusoublues

1. 明月荘ブルース
2. 明月荘ブルース(カラオケ)

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2020年も残すところ5日となりました。

今年は憎きコロナ禍のためジュリーの全国ツアーが中止となり、寂しい1年となってしまいました。
それでも12月に入った頃には、無いだろうなとは思いつつも「もしかしたら突然お正月LIVEのインフォが届くかもしれない」と一縷の望み抱き心待ちにする日々でしたが、先日「澤會」さん解散のお知らせ・・・ジュリーファンとしてこれまで本当にお世話になった澤會さんへの感謝は当然ですが、僕のような新規ファンは正直、動揺の方が大きかったのが現状です。
常々「大きいホールにいっぱいのお客さんが入って、そのお客さんの身体を通って返ってくる音をモニターにしたい」と語っているジュリーですから、コロナ禍の完全な収束がなくしてLIVE再開無し!は当たり前のことなんですけど。

東京での1日の感染者数のニュースを毎日見るたびに、なんだか「少しずつ」増加してゆくのがまるで作られ計算されているかのように、僕らは「慣れて」しまってはいないでしょうか。
もし明日突然「今日の感染者数は2万人です」と報道されたら、誰もが「身近な危険」を感じるはず。
徐々に数が増えてゆく、ということの怖さ。「慣れ」は諦念へと繋がり、志を低くします。
もちろんあってはならないことですが、今この時点で「1日の感染者が数万人」となる状況を想像し、そのくらいの危機感を持って1人1人が気をつけてゆかねばなりません。志をしっかりと高め、僕らはジュリーの決断を尊重し辛抱が希望となるよう努めたいと思います。

一方で、ピーさんが小さい箱ならではの利点を生かし、今年もこの状況下で勇躍二十二世紀バンドとのLIVEをスタートさせたことは何よりの励みです。
僕が参加するのは年明け1月の四谷公演で、チケットを一緒に申し込んでくださったピーファンの先輩のお話では、座席の配置が市松模様のような間隔となっているとのこと。会場の感染防止対策、万全のようです。

ピーさんは「常に動いていないと落ち着かない」タイプだそうで、軽快なフットワークに制限をかけられた今年はそのぶん音源創作にパワーと時間を注がれたのでしょう・・・驚異的な新曲ラッシュの1年となりました。
「Lock Down」「明月荘ブルース」「ロード246」「失うものは何もない」とリリースは続き、さらにクリスマスに合わせChannel Peeにて最新曲「Silent night」の音源発信。
僕は昔から「新曲に向かう」姿勢のアーティストを熱烈に支持したいリスナーで、今年は特にピーさんの新曲に大いに力を貰いました。

今日はそんなピーさんの一連の新曲から「明月荘ブルース」をお題に更新したいと思います。
大変な年となった2020年。シローさんの旅立ちもあり悲しみの最中、タイガースファンの先輩方にとってこの歌がリリースされたことは本当に救われ、感慨深かったのではないかと想像します。

僕も後追いファンながらピーさんの音楽活動復帰から再結成への道程をリアルタイムで体感した身。大阪ミナミの「明月荘」が伝説の地であったことは勉強済みで、スタッフとしてお手伝いさせて頂いた左門町LIVE準備の関係でみなさまより少し先んじてこの歌を聴いた時には、感動で心が震えました。
詞曲を深く理解するより先にまず「思い」の強さがダイレクトに伝わってくる・・・世にある幾多の他曲にあまり例の無い、特殊な魅力を持った歌だと思います。

その上で、名曲とは「素晴らしい詞に素晴らしいメロディーが載っている」単純だけれどそれが真理なのだなぁ、と改めて実感させられます。
ピーさんの作詞、KAZUさんの作曲。
やはり最終的に「作品」として優れた詞曲が結実してこそ、歌い手やリスナーに思いや感動が乗り移るものなのかもしれません。

まずは何と言っても、詞に胸を打たれます。
このブログを読んでくださるみなさまは僕などより詳しくご存知のことかと思いますが一応書いておきますと、「明月荘」とはザ・タイガースがまだファニーズと名乗っていた頃、大阪で活動していたメンバーが共同生活を送った伝説のアパート。

裸電球 三畳間
     Cm        B♭

辿り着いたら 明月荘 ♪
   A♭            B♭  Cm

僕は幸運なことに、今年8月の『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE」』を裏方でお手伝いした関係で、この新曲についてもピーさんから様々なお話を伺う機会を得ました。

「今は、三畳間の貸し部屋なんてあまり見ないよねぇ」

ニコニコとそう語ったピーさんの言葉が印象に残っています。
「明月荘ブルース」は、ファニーズ時代の思い出ばかりでなく、過ぎ去った文化、昭和30~40年代の若者たちの暮らし、世間のたたずまいまでを回顧する歌でもあるのだなぁ、とその時に思ったっけ・・・。

ピーさんは漢詩の専門家です。
僕ら日本人は普通に漢字を使って文章を書いたり脳内変換しながら言葉に発したりしますが、その漢字を1字ごとに単独の意味を深く追求することなど滅多にありません。
中国古来の漢詩において使用される漢字はひとつひとつそれぞれに意味があって、武骨に繋がっていきます(高校時代の僕は、「古文」は女性的で「漢文」は男性的だとなんとなく思っていました)。ピーさんの日本語詞にはそんな漢詩のエッセンスが含まれるため、独特の漢字使いが魅力です。

過ごした日々は 返らない
      Fm                      Cm

期待と不安 ない交ぜに ♪
    Fm                      G7

ここは日本語の漢字使いとしては「帰らない」が常套。例えば「あの日に帰りたい」とか書きますよね。
しかしピーさんは「帰ではなく「返」の字を当てました。「もうひっくり返せない」「引き返せない」という意味を持たせる狙いではないでしょうか。
短調バラードのメロディーと相俟って、切なくも強い思いが伝わってきます。
8月のLIVEに向けて採譜や演奏時用の歌詞カード作成のため、詞を何度も「書き写す」ことが多かった僕は、そんなピーさんの漢字使いに「良いなぁ、ここ良いなぁ」と感動させられたものでした。

左門町LIVEのレポートにも書いた通り、ピーさんは自作詞について徹底的に校正を重ねてゆくタイプです。
ピーさんのこれまでの人生を辿り綴った、歌メロ13番にも及ぶ大長編「My Way ~いつも心のあるがままに」(当LIVEが初演)などは、本番前日まで手を入れていたほどでした。
「明月荘ブルース」も、「My Way」に次ぐ頻度で度々の改稿がありました。例えば

加茂の川から 淀の川 ♪
      Fm                  Cm

京都で暮らしていた若き日のピーさんが志を抱き大阪へと移り住んだ・・・そんな経緯を歌った箇所。言うまでもなく「加茂の川」が京都、「淀の川」が大阪を表します。

ところが僕が8月のLIVEに向けて最初に受け取った歌詞ファイルでは、ここが大きく違っているのです(その頃は歌入れも終わっていたはずですので改稿自体はもう済んでいたのでしょうが、たまたま僕に送ってくださったのが初稿のファイルだったのだと思います)。
それによると同箇所は

古都を離れて 来た商都 ♪

となっていました。

京都が「古都」で大阪が「商都」。
こちらもピーさんらしい素敵な表現ですが、おそらく改稿に至ったのは、KAZUさんの素晴らしいメロディーが完成し実際に「歌って」みて「ここはもっと良くなる」との判断があったのではないでしょうか。
もしそうなら、この改稿はピーさんとKAZUさんの共同作業、相乗効果でもあり、名曲誕生の所以、重要な過程であったと言えると思います。

その他も細かな漢字仮名使いの校正が何度もあり、僕はその都度立ち合うことができました。
LIVEの1週間前に改稿となった箇所もあります。細部の仕上がりまで妥協せず練り込んでゆくピーさんの創作姿勢は、リスペクトせずにはいられません。

このように最後まで熱意の取り組みがあって生まれた歌ですから、もちろんCD音源で聴いても大きな感動がありますが、これは生歌、生演奏で聴くとより一層ピーさんの思いが伝わる、と僕は確信しています。
8月のLIVEではピーさんの熱唱、思いの深さがみるみるうちに「ゆうさんバンド」の演奏に乗り移ってゆき、圧巻のパフォーマンスとなりました。
是非みなさまには「明月荘ブルース」を生歌、生演奏で体感して頂きたいと考えます。

どんな人でも自分の人生を1冊の本にできる・・・そんな話を聞いたことがあります。
それが音楽家という選ばれた才人達にとってはさらに深く広く、自分の人生における様々なシーンを歌にできる、ということでもありましょう。
ピーさんは音楽界復帰後、「道」「一枚の写真」などの新曲を次々にリリースすることで、そんな創作スタイルを実践してきました。

そして・・・ザ・タイガースの根っこのシーンを、ピーさんしか描けない視点で歌った「明月荘ブルース」。
ピーさんとしても、自身の思い入れがより深い作品となったでしょう。当然僕ら聴く側にとっても。
LIVE後しばらくして改めて曲の感動をお伝えした時、ピーさんは「長く歌っていきたい」と力強く仰っていましたから、年明けの四谷公演でもきっとセットリスト入りするでしょう。本当に楽しみです!


それでは次回、もう1本「今年中に書いておきたい」と考えていたお題が残っています。

相変わらず忙しくさせて頂いていますが、29日から冬休みに入りますので年内ギリギリの更新はできそう。
頑張りたいと思います。

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