瀬戸口雅資のジュリー一撃伝授!

2018年1月12日 (金)

沢田研二 「TRUE BLUE」

from『TRUE BLUE』、1988

Trueblue

1. TRUE BLUE
2. 強くなって
3. 笑ってやるハッ!ハッ!!
4. 旅芸人
5. EDEN
6. WALL IN NIGHT
7. 風の中
8. 痛み

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from『ROYAL STRAIGHT FLUSH 1980-1996』
original released on 1988、single


Royal80

disc-1
1. TOKIO
2. 恋のバッド・チューニング
3. 酒場でDABADA
4. おまえがパラダイス
5. 渚のラブレター
6. ス・ト・リ・ッ・パ・-
7. 麗人
8. ”おまえにチェック・イン”
9. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
10. 背中まで45分
11. 晴れのちBLUE BOY
12. きめてやる今夜
13. どん底
14. 渡り鳥 はぐれ鳥
15. AMAPOLA
16. 灰とダイヤモンド
17. アリフ・ライラ・ウィ・ライラ~千夜一夜物語~
disc-2
1. 女神
2. きわどい季節
3. STEPPIN' STONES
4. CHANCE
5. TRUE BLUE
6. Stranger -Only Tonight-
7. Muda
8. ポラロイドGIRL
9. DOWN
10. 世界はUp & Fall
11. SPLEEN ~六月の風にゆれて~
12. 太陽のひとりごと
13. そのキスが欲しい
14. HELLO
15. YOKOHAMA BAY BLUES
16. あんじょうやりや
17. 愛まで待てない

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改めまして、新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

年末から引き続き仕事で忙しくしています。そんな中、新年早々悲しいニュースが・・・。
星野仙一さん、70歳。あまりに早過ぎる旅立ちです。
闘病されていたことすら知らなかった・・・のは当たり前で、星野さんの大親友である山本浩二さんですら病気のことを知らされていなかったというのですから。
星野さんの美学、なのでしょうか。それとも矜持なのでしょうか。あまりに大きな精神力、周囲への気遣いは僕などでは推し量ることもできません。

ドラゴンズファン、或いはイーグルスファンの皆様には怒られるかもしれませんが、僕にとって星野さんは「阪神タイガースの監督」です。

吉田監督のもと、球団史上初の日本一になった85年に僕は阪神ファンになりました。しかしその後、ファンとしては長い暗黒時代が続きました。
万年Bクラスの流れを断ち切るべく「監督外部招聘」に踏み切ったタイガースは、まず野村さんを迎え、引き継いだのが星野さん。そして2003年のリーグ制覇。ジュリーが『明日は晴れる』ツアーで「Rock 黄 Wind」を歌うたびに圧倒的に勝ちまくった年です(その頃僕はまだジュリーファンではなかったのですが・・・)。
以来、岡田さん、真弓さん、和田さん、金本さん。監督は代わりましたがタイガースは常にリーグ優勝を争うチームとなりました。阪神が本当に強くなったのは星野監督から・・・僕にはそんなイメージがあります。

星野さん、どうぞ安らかに・・・。



では、ひとまず気をとり直しまして。
今日は新年最初の楽曲考察記事となります。お題は昨年から決めていました。
いつもより短めの文量となりますが、2018年を僕はまずこの名曲からスタートさせたいと思います。
「TRUE BLUE」伝授!


①2018年、世界が平和な年でありますように


毎年この思いに変わりはありませんが、新年を迎えての祈りは平和な1年であること。これに尽きます。

「TRUE BLUE」の作詞者である加川良さんについて、僕はほとんど知りません。ただ、加川さんの曲で唯一知っているのが、あまりにも有名な「教訓I」。


Kyoukun1

↑ 『魂のフォーク・ソング大 全集』より

この1曲をして僕は加川さんを「反戦フォークの人」だと、長い間そんな認識でいました。

昨年末、忘年会をご一緒したジュリー道の師匠の先輩と、何がきっかけだったか加川さんのお話になりました。その先輩は「ロック」をリアルタイムでプレスリーからご存知で、ビートルズもザ・タイガースもその出現から体験されたお方。当然、後のフォークソング・ムーヴメントもリアルな想い出を持っていらっしゃいます。
加川さんのことを「反戦フォークの人、ですよね?」と言う僕に、先輩が怪訝な顔で仰るには
「(「フォーク」のジャンルには違いないけれど)あの人はロックよ」「ロックで、そしてハンサムよ」
と。
GS贔屓(ロック贔屓)な先輩が、当時世に登場した多くのフォークシンガーの中で好きだったのが「拓郎さん、泉谷さん、加川さん」だそうです。
改めて、あぁそうなのかぁと。敬愛する先輩がそこまで仰るからには、加川さんはデビューの頃から素敵な歌手だったに違いないです。

「教訓I」の付け焼刃な自分の先入観からひとまず離れてジュリーの「TRUE BLUE」を聴くと、そう確かにこの詞を書いた加川さんの根本は「反戦」というある意味煽動的な表現で断ずるよりも「平和への祈り」と考えた方がしっくりきます。

「TRUE BLUE」で歌われるのは「日常」ですよね。

悲しみは つよく抱いて
E7                   Am

ほほ寄せて 溶けるまで
   G                    C

よろこびは 静かな祈り
E7                    Am

君に贈る たったひとつのことば ♪
        Dm7            G7

悲しみの中にいる人、よろこびの中にいる人。そしてその人の近くにいる自分。
これはジュリー作詞の「揺るぎない優しさ」とまったく同じ「優しさ」の在り方なのだ、と感じます。
考えてみれば、平和について思う時僕らは最終的にはごく身近な日常の、身の回りにいる人への接し方、心の持ち方を自問するところに辿り着きます。
そうした日常の中で、「君とまもる」のは空の色・・・なるほどこれは加川さんらしい素直な直球の詞なのかな、とその人柄まで想像してみたり。

「TRUE BLUE」が88年のジュリー・アルバムのタイトルチューンとなったこと。
そして今この名曲が、長いファン歴の先輩方の間でも大きな再評価を得ていること(50周年ツアーが始まる前、セトリ入りを切望されていた方が僕の周りにとても多かったのです)も考え合わせ、リリースから30年後の今年2018年の平和を祈念するにあたってふさわしいナンバーなのではないか、ということで僕は今日この記事を書いているところなのです。


②シングルとアルバム、2つのヴァージョンを比較

以前「EDEN」の記事を書いた時にはできなかった、シングルとアルバムのヴァージョン聴き比べ・・・「TRUE BLUE」については『ROYAL STRAIGHT FLUSH(黒盤)』でシングル・ヴァージョンを聴くことができますので是非これはやっておきませんとね~。
いずれのヴァージョンも印象は似通っていますが、細かい部分でずいぶん違います。

まずはトータルタイム。アルバムの方が長いです。
と言っても2つのヴァージョンはマスター音源は同一のようで、エンディングのフェイド・アウト部のミックス違いでそうなっているんですね。
何故そこまでの差が出たか・・・これは石間さんのギター・トラックが別物なのです(フレーズが全然異なりますからみなさまもそこはお気づきのはず)。
レコーディングを終えた甲乙つけ難い2つのギター・トラックがあり、双方をシングル、アルバムで振り分けたという。キッチリと決めたフレーズで「リフ」しているのがシングルで、自由度が高くアドリブっぽい仕上がり(それでも「弾きまくり」な感じにならないのが石間さんらしく、CO-CoLOの特性でもあります)なのがアルバム・ヴァージョン、と言えましょう。

あと、全体的にはシングルの方がシンプル。シンセなんて、アルバムでは2番から全開の音量で噛んでくるのに対し、シングルは「薄~く聴こえてくる・・・かな?」と感じる程度の絞ったミックスです。
さらには、「アルバムにはあってシングルには無い音」も。そう、間奏で鳴っている「キラキラキラキラ~♪」という美しい音ですね。これは「ツリーチャイム」というパーカッションではないでしょうか。「アレンジ重視」のCO-CoLOらしい装飾。他のトラックはすべて最初のレコーディング(シングル)の時に揃っていたでしょうが、このツリーチャイムだけはアルバム・リリース時に追加された可能性が高いです。

そして、ジュリーのヴォーカル。同一のトラックかもしれませんがエフェクトは違います。
それでもジュリーの「声」はエフェクトに左右されない圧倒的存在感で、ほとんどのリスナーがその違いに気づくのは、歌メロの締めになってからだと思います。

TRUE BLUE     BLUE TRUE LOVE
C       Em        Dm7   G7     C

TRUE BLUE     BLUE TRUE LOVE ♪
C       Em        Dm7   G7     C

アルバムではこの箇所のエフェクトが極限まで深くセンドリターンされていて、「シンプルなシングル・ヴァージョン」「おめかししたアルバム・ヴァージョン」の違いをジュリーのヴォーカルにも見出すことができますね。
ただしアルバムの方も一番最後の「BLUE TRUE LOVE♪」ではエフェクトが忽然と消え、ほとんど「素」のジュリーの声に。深いディレイ・コーラスの直後だけにドキリとさせられます。
その上でシングル・ヴァージョンを聴くと・・・まぁ何とピュアな歌声であることか。
先輩方はこの曲をシングル→アルバムの順に聴かれたと思いますが、後追いの僕は逆のパターンでしたから・・・『ROYAL』黒盤で初めて聴いたシングル・ヴァージョンは鮮烈に感じたものです。

ちなみにこのラスト2行、コード進行は同じですが単に繰り返しではなく、メロディーもジュリーの声の伸ばし方も異なりますよね。
僕は2行目の方の「BLUE TRUE LOVE♪」を聴くたび、ジョン・レノンの「LOVE」最後の「To Be Love ♪」のメロディー、発声を思い出します。チト河内さんの作曲中、或いはジュリーを含めたレコーディング中のCO-CoLOメンバーに、ジョンのこの名曲がよぎっていたかもしれません。
旋律の類似のみならず、歌い手の胸にある「真実」がそのまま声に出ている感じ・・・僕は『TRUE BLUE』というアルバムへの評価がずいぶん遅れてしまいましたが、今は「ジュリー版『ジョンの魂』みたいだなぁ」としみじみ聴いています。名盤です!

③50周年LIVE、セトリから漏れた名シングル達

ジュリーデビュー50周年記念のメモリアルツアーもいよいよ残り僅かとなり、僕の参加は14日に遠征する熊本公演が最後。
今年2018年は、さらなるメモリアル・イベントの古希記念ツアーが予定されていて(武蔵野公演でジュリー曰く「準備万端整っております」とのこと。夏くらいからスタートなのかなぁ?)、50周年記念ツアーでセットリスト50曲から漏れた名シングル群がスライドして今度こそ歌われるのではないか、と僕らはどうしても期待を持ってしまいますよね。
今回のセトリから外れているシングルと言えば、まず「カサブランカ・ダンディ」「おまえがパラダイス」。おそらく多くのジュリーファンがツアー初日の時点で「えっ、歌わないの?」と意外に感じた曲かと思います。タイガース「銀河のロマンス」、PYG「花・太陽・雨」もそうかな?

他にもまだまだありますが、僕が今から期待しているのは(というか願望ですな)、今ツアーを通してジュリー自身の中に「CO-CoLO期のナンバーへのゴキゲンな手応え」が生まれていて、それが古希ツアーに反映されるのではないか、というね。
過去に1度だけ生体感済みの「女神」、そして(こちらはまだ未体感)今日のお題「TRUE BLUE」というCO-CoLO期のシングルのセットリスト入りを夢想しています。
特に「TRUE BLUE」は、ジュリーが近年歌い続けている「平和への祈り」「日常の無事」というテーマにも沿っていると思いますし、なんとか1度、生で歌っている姿が観たい!と。
もし実現したら、柴山さんはアコギを持つと僕は予想します。元々CO-CoLOのオリジナルテイクがいかにも「エレアコ」な響きということ、さらには「柴山さんがアコギで単音のソロを弾くシーンが観たい」という個人的な興味もありまして。
つまり、昨年「アルシオネ」で魅せてくれた「エレキを背負って、要所でスタンドのアコギからチェンジする」スタイルではなく、最後(エンディングのソロ・パート)までアコギ1本で通すアレンジに期待しているのです。
シングル・ヴァージョンのスロー・ハンド・フレーズを柴山さんがアコギで再現・・・ジュリーの神々しいヴォーカル直後のシーンとなるだけに想像するとワクワクしてきますが、「TRUE BLUE」の古希ツアーでのセトリ入りについて、みなさまの予想はいかがでしょうか。


ということで、新年1発目の楽曲考察はちょっと駆け足でしたが・・・待ちに待った熊本遠征がいよいよ明後日、というところまで迫ってきました。
隣県の鹿児島出身の僕はもちろん何度も訪れたことのある地、熊本。でもいつ以来かと思い出すと、これがもう30年ぶりになるのですな~。

現在は従弟一家や、高校時代に一緒にバンドをやっていた友人(税理士として独立、一城の主となっています)も住んでいるという、九州各県の中でも特に身近な土地です。そしてあの震災の時、オフィシャルサイトでメッセージを残してくれたジュリー・・・満を持して現地での新年公演が実現。
ジュリーは「いつも通り」「普段通り」に頑張ってくれるに違いありませんが、やっぱり今ツアーのこの熊本公演のスケジュールに特別の意味を感じてしまいます。
同じように思っていらっしゃる先輩方も多いようで、僕が把握しているだけでも、九州各県はもちろん、関東から、東海から、山陽から・・・遠征される方々も多数。本当に久しぶりにお会いできるかな?という先輩も何人かいらして、それも大きな楽しみです。
何より地元・熊本のジュリーファンのみなさま・・・どうぞよろしくお願いいたします。

次回更新はその熊本公演のレポを予定しています。
また更新間隔が空いてしまうでしょうし、今日はお題関連のオマケ画像も無いので、若き日のジュリーのショットを1枚、お留守番代わりに置いておきます。


011

それでは14日、行ってまいります!

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2017年12月30日 (土)

沢田研二 「オーバチュア」「バタフライ・ムーン」

from『S/T/R/I/P/P/E/R』、1981

Stripper

1. オーバチュア
2. ス・ト・リ・ッ・パ・-
3. BYE BYE HANDY LOVE
4. そばにいたい
5. DIRTY WORK
6. バイバイジェラシー
7. 想い出のアニー・ローリー
8. FOXY FOX
9. テーブル4の女
10. 渚のラブレター
11. テレフォン
12. シャワー
13. バタフライ・ムーン

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いよいよ2017年も残りあと僅か・・・。
ジュリーのデビュー50周年記念ツアーは年が明けても続き、僕も熊本公演に遠征参加しますが、ひとまずこのメモリアル・イヤーの締めくくりにふさわしい考察お題ということで色々と考えまして。
今日は、個人的に大好きなパブ・ロックとの関わりも深いアルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』から、記事未執筆の2曲を纏めて採り上げ、この大名盤の収録全曲執筆達成を以って2017年を送らせて頂きます。

未執筆で残っていた2曲は、はからずもアルバムのオープニングとエンディング。
僕はビートルズでロックに目覚めた少年時代から「LPアルバムの曲順フェチ」でして、ジュリーの場合はレコード時代にリアルタイムで聴いていませんからその点でずいぶん損をしているなぁ、という自覚があります。
LPのA面ラスト、B面1発目にどの曲が配されているかはとても重要ですし、そこから連なるB面2曲目、3曲目といった配置にもそれぞれ役割がある、というのが僕の考え方。LPでリリースされたアルバムをCDで聴くとどうしてもそのあたりが掴み辛く、アルバムの本質までは理解できていないんじゃないかと思います。

ただ、オープニング・ナンバーとエンディング・ナンバーに限っては辛うじてその醍醐味をCDでも味わうことができます。最初と最後の収録曲がアルバム全体の音のコンセプトを表している・・・これはそのまま「名盤の条件」とも言えるでしょう。
その点『S/T/R/I/P/P/E/R』はどうでしょうか。

ということで今日はアルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』から、「オーバチュア」「バタフライ・ムーン」の2曲を纏めて語ってまいりましょう。伝授~!

①「ビッグバンド」が製作当初のコンセプト?

このアルバムは、個人的にはジュリー堕ち以前からハマリまくっていたパブ・ロックの一派からビリー・ブレムナー(ギター&コーラス)とポール・キャラック(コーラス、本職はキーボード)の2人がロンドン・レコーディングのゲスト参加ということで思い入れ深い1枚ですが、全体的としては何と言っても2曲目のタイトルチューン「ス・ト・リ・ッ・パ・-」が目立っていて、この曲が短調のハード・ロカビリーですから「ストレイ・キャッツ的な作品」・・・というのが第一印象。
しかし聴き込んでいくと賑やかで陽気で、陽射しの熱さのような感触がしてきて、ストレイ・キャッツのダークでシビアなイメージが払拭されていく、という不思議な二重構造の魅力を持つ名盤なんですよね。

ほぼ同世代ながらジュリーファンとしては大先輩でいらっしゃるkeinatumeg様が、2009年に同じ主旨の素晴らしい御記事を書いてくださっています(こちら)。
実はちょうどこの頃に僕とkeinatumeg様はブログの相互リンクをさせて頂いていて、メールでこのアルバムに絡んでロックパイルの「ハート」(「バイバイジェラシー」のオマージュ元)の話をしたりしていました。
ジュリーファンとロックパイルの話ができるというだけで嬉しかったのに、そんな矢先に書いてくださったこの御記事。我が意を得たり、と言うのかとにかくとても嬉しく、共感したことを覚えています。

keinatumeg様が書いていらっしゃる通り、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』の「陽」の色はエンディング収録の「バタフライ・ムーン」が決定づけているでしょう。
そしてその陽気なムードはそのままオープニングのビッグバンドな「オーバチュア」へと回帰します。針を落とす度に(いや、僕はCDなんだけどさ・・・泣)擦り込まれてゆく、肩の力の抜けた気ままなパーティーの雰囲気。「オーバチュア」と「バタフライ・ムーン」にサンドされた名曲群。それがこのアルバムの魅力の正体です。

そう思っていたところに、今年になって僕は81年のラジオ音源『音楽夜話』で、当初「バタフライ・ムーン」にも「オーバチュア」と同じブラスのアレンジが施される予定だった、という衝撃の事実を知りました。
なるほど、ビッグバンド仕様の2曲で最初と最後を彩るというアイデア・・・『S/T/R/I/P/P/E/R』は元々そんなコンセプト・アルバム志向だったんですね。
ただ残念ながら「バタフライ・ムーン」のブラス・テイクは、録ってはみたものの出来がイマイチで、結局カットされたのだそうです(詳細はチャプター③で書きます!)。
そのぶん西平さんのラテンチックなキーボードが際立つアレンジとなり、「バタフライ・ムーン」は申し分のない名曲としてリリースに至りますが、アレンジフェチの僕としては、グダグダのブラス・ヴァージョンも聴いてみたかったなぁ、と思うわけです。
きっと、アルバム全体にビッグバンドの陽気な空気感漂う「起承転結」を楽しめたんじゃないかな?
だって、「テレフォン」→「シャワー」の2曲ってどう考えても「転」じゃないですか。カットされたブラス・トラックがどれほど酷かったのか僕らには分からないけれど(笑)、「起」の「オーバチュア」と対を成す「結」としての、ビッグバンド・テイストな「バタフライ・ムーン」が実現しなかったことは、ちょっと勿体無かったですねぇ・・・。

②ジュリー無敵の覚醒期!

さてここでは「バタフライ・ムーン」に絞った考察を。


Stripper19

Butterflymoon1_2

↑ 今回の参考スコアは当然『ス・ト・リ・ッ・パ・-楽譜集』!


先述のkeinatumeg様の御記事にある通り、これはメチャクチャ高音域のメロディーを擁するナンバーなのですね。「試しにこの曲のサビを一緒に歌ってみて!」と書いていらっしゃるkeinatumeg様のお言葉に、またまた深く共感させられます。
この曲を男声で楽に歌えることができるのは、ほんの僅かの優れた喉の持ち主に限られるはずです。

人生はバタフライ 花から花へ飛ぶよ
E        B7                            E

人生はバタフライ
E        B7

月の光を浴びながら飛ぶ Hey! ♪
B7         E                 B7

サビまでのAメロが音域としては普通で、しかもサビ直前はむしろ低音域のメロディーですから、いきなりのオクターブを駆け上がる展開にまずビックリ。
ひたすらに高音が続き、ひとつの発声も休ませてくれないという・・・しかもこの曲の最高音(高い「ラ」の音)はサビ最後の最後「Hey!」。これはドミナント・コードの7th音をそのままメロディーに採り入れていてすごく「ロック」な感じなのですが、それにしても高い!

ヒイヒイ言いながら歌ってきてトドメにこの最高音を出すなど、普通の男声では無理。
ところがジュリーは楽々です。

何と言っても「バタフライ・ムーン」はジュリー自身の作曲作品です。
伊藤銀次さんが「キーを下げるはずだったものをそのままレコーディングしてしまったのに、ジュリーは楽々声が出ていた」と語った逸話が有名な「渚のラブレター」も然り、「このサビの高音を歌えるのはアイツしかいない」と、トッポのハイトーンを意識して作曲したという「十年ロマンス」然り。いずれもジュリーは当然自分でメロディーを声に出して作曲しているわけで、この頃のジュリーは高い「ラ」の音、或いはそれ以上すらも余裕で発声圏内であったことが分かります。
「バタフライ・ムーン」をはじめとする当時の自作曲が示すのは、ロック・ヴォーカリストとして、作曲家としても完全覚醒したジュリー「無敵の時期」です。

ジャマイカン・レゲエのアレンジは誰のアイデアだったのかな。作曲段階からジュリーの頭にあったのか、それとも銀次さんが満を持して引き出しを開けたのか。
はたまた「裏ノリ」ビートに敏感な吉田建さんの提案だったのかもしれません。建さんは後のEMI期のジュリー・プロデュースで(特にアルバム『Beautiful World』)レゲエっぽいアレンジを多用していて、自身のベーシストとしての演奏もそうでしょうが、「質の高いリズム解釈」を志す人ですから。
ただ、「バタフライ・ムーン」はジュリーにしては珍しいレゲエ・パターンの中でも「陽」が突出しています。三浦徳子さんの「花から花へと飛ぶ」陽気な無頼を感じさせる詞を引き出したのがジュリーの作ったメロディーであったことは疑いようがなく、これはやっぱり作曲家兼ヴォーカリストとしての揺るぎない力量ですよ。

それに『S/T/R/I/P/P/E/R』ってジュリーのアルバムとしては全体のリズム・コンセプトが異色。エイト・ビートが極端に少ないんです。
次々に繰り出されるのは3連符のシャッフルであったり、尖り跳ねまくる16ビートであったり・・・。
そんな中、のどかで無頼なレゲエ・ナンバー「バタフライ・ムーン」は、この大名盤を締めくくるにふさわしい名曲、名テイクではないでしょうか。

③『音楽夜話』より本日のお題2曲の話

ここでは、今年に入って半定番化しておりますジュリーのラジオ音源のご紹介です(たくさんのラジオ音源を授けてくださった福岡の先輩には、1月の熊本公演の会場にて改めて直接お礼を申し上げる機会に恵まれそうで喜んでいるところです)。

とにかく、先輩方にとっては「ジュリーファンとして常識」な逸話であっても、僕にとってはただただ目からウロコ、これ以上の勉強材料は無い!ということで、こうして時々考察記事に織り込んでいます。
今日は、アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』リリース直後にジュリーがゲスト出演した、小室等さんの番組『音楽夜話』。僕はこの番組自体を今年になって初めて知りましたが、とても良い雰囲気の番組ですねぇ。
小室さんが本当に「聞き上手」で、ジュリーも胸のうちにある「言っておきたい」ことを存分に話せているんじゃないかな、という印象です。

ジュリーは一週間通してのゲストで、本当に色々な話が聞けますが、今日はとりあえず「オーバチュア」「バタフライ・ムーン」の2曲にジュリーが言及している部分を抜粋する形でお届けしたいと思います(他箇所はいずれの機会に!)。
まず、初日の放送冒頭で「オーバチュア」が流れます。



-突然の1920年代、という感じで始まりましたが・・・今週一週間の『音楽夜話』はお客様に沢田研二さんをお迎えして、『S/T/R/I/P/P/E/R』という6月10日に発売されましたアルバムを聴きながらお話を伺いしようというわけであります。今聴こえているのはそのアルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』の中の最初に出てくる「オーバチュア」の部分でありますが、何か「ジュリーがこれに合わせて踊っている!」と考えてしまいますが。
(ジュリーの小さな笑い声がここで聞こえます)
ひとつよろしくお願いします。

J「こちらこそ!」(←いきなりすごくイイ声!)

-いやぁ、1920年代ですねぇ。

J「そうですね」

-「キャバレー」と言うか、「ストリッパー」と言うか・・・。

J「ストリップ小屋で本当に出てきそうな感じですね」

-昔は僕もよく行きましたよ。(2人で大爆笑)

ここから、アルバム・タイトルの由来や、「人生はストリッパー」なるコンセプトはジュリー自身の仕事の仕方と重なる部分が大きい、とか、過去に喧嘩事件を起こして新聞に『暴力人気歌手』なんて書かれてしまったので(そ、そうだったのですか・・・)「もうこれ以上恥ずかしいこともないだろう」と肝を固めて歌や衣装も変わってきた・・・等々、「ストリッパー」と「歌手」それぞれの覚悟の在り方、その共通点を中心に話が進み、シングル「ス・ト・リ・ッ・パ・-」がフルサイズでオンエアされてジュリー・ゲスト初日の放送は終わります。

そして、僕が本当に仰天した「バタフライ・ムーン」の逸話が登場するのは3日目の放送回。
ジュリーは一度も「バタフライ・ムーン」というタイトルを口にせずこの話をしてくれていますが、「キーがE(ホ長調)である」「ブラス・トラックをカットした後に西平さんがマリンバっぽい音を足している」などのヒントにより、曲の特定は容易なのです。



-もう少しレコードの話を聞こうかな。え~、ロンドンで(レコーディングを)やろうっていう動機は?

J「最近好きなグループ(バンド)が、たまたまロンドンでやってる人達だったんです。ロックパイルっていうグループと、ストレイ・キャッツっていう。その人達がどういうミキサーでやってるんだろうって、ちょっと興味を持って調べてみたら、たまたま(2つのバンドとも)一緒だったんですね、ミキサーも。スタジオも同じとこを使ってたんです。エデン・スタジオっていうところでね。
で、「これはいいや」と思ってそのエデン・スタジオが空いてるかなって連絡したら、ちょうど僕達が望んでいるところが空いてて。多少空いてないところも、わざわざ日本から、極東から来るんだから(笑)つって調整して10日間空けてくれて。ミキサーの人も空いてるっていうことでね。じゃあ、これはもう「来い」ということだから「行こう!」って感じでね(笑)」


-バンドみんなで行ったんでしょ?

J「そうです。新しいバンド・・・前のオールウェイズにいた3人と、新しいギターと新しいドラムで、初仕事がこのレコーディングだったんですね。だからまぁ、ちょっとした合宿気分でもう行っちゃおう!っていうね」

-そのメンバーでコンサートとかいうのは?

J「まだやったことないです。これからやるんですけどね(笑)」

-ただ、ゲストで誰かいたんですよね?

J「ええ、ビリー・ブレムナーっていう人が。ロックパイルでギター弾いてる人なんですけど、その人に来て貰ったり、あとコーラスも(これはポール・キャラックのことですな)。
あと・・・ブラスの人も頼んだんだけどそれはあんまり良くなくて、カットしましたけど」


-ハッハッハ!

J「お金は払いましたけどね(笑)ヘタなのがいるんですよ、やっぱりイギリスにも。ちゃんと吹かないんだから!(笑)
まぁ、キーもちょっと難しかったらしいんですね、ペット(トランペット)にすると。Eというキーで、ペットだとやりにくいらしいんですよ。さかんに「やりにくい」とか、向こうの人はゴチャゴチャ言うでしょ?言い訳とか(笑)。
ハーモニーにして多少重ねれば誤魔化せるかな、ってやってもね、全っ然ダメなんですよね。ロレロレで」


-それでカットして、どうしたんですか?

J「うちのキーボードがシンセサイザーでね、「もう全然違う感じで行こう」ってマリンバみたいな音にしちゃったんです。
(ブラスを入れる、という当初のアイデアは)本当は「パララララッ!」とかやろうとしてたんだけど(ブラスの人は)「デロレロロ~」みたいな(笑)。お祭り気分にしたいのに、何か黄昏た気分になってるっていう・・・」


-ハッハッハ!(大爆笑)

J「地味~な感じになって、こりゃイカンわ、と。でもせっかく金払うんだったら最後までやらしたろ!って全部やって貰ったんだけど、全部消してる(笑)」

-ロンドンに行きゃあ大丈夫、ってわけじゃないと。

J「そうなんですよ。ヘタな奴はヘタ。前の日くらいにね、「ブラス入れたいんだけど」ってスタジオの人に頼んで、結構有名な人のバックなんかやってたらしいんだけど。

-たまたま苦手なことだったんですかね~。
で、ロックパイルのなんとかっていうギタリスト・・・

J「はい、ビリー・ブレムナー」

-彼はどうでした?

J「いや、もうこの人は全然大丈夫っていうか。コードを書いて、ここのところを弾いて下さい、って。
別に譜面が読めるわけじゃなく「聴いて覚えるから」って言って。「何回もかけてくれ」って、一生懸命そこのとこだけ練習するわけ。向こうの人っていうのは割と自分流でやってる人が多いみたいで、「C#m」って言うと「ん?C#mってのはどうだ?」なんて言ってね。教えると「あぁ、これか、これやったことある!って(笑)。
でも、いざやり出すと凄い。アイデアと言うか、パターンをたくさん持ってるっていうかね。


-自分の身体を通って把握できると、やることは凄い、と。

J「凄いですね」

とまぁ、最後は「想い出のアニー・ローリー」の話(ギター・ソロ部のコード進行にC#mが出てきますからね)ですが、僕はもう、「おおお~!ジュリーがビリー・ブレムナーを絶賛しとる!」と大興奮。
これまで何度か『S/T/R/I/P/P/E/E』収録曲の考察記事で書いてきたように、ビリー・ブレムナーは僕がこの世で最も敬愛しているギタリストですから。嬉しい!
以前先輩に教えて頂いた「現地のプレイヤーがイマイチだった」という話は、ビリーじゃなくて「バタフライ・ムーン」のトランペット奏者のことだったんですね。
良かったよかった。

最後に、この逸話について補足をしておきましょう。
僕は30代後半くらいの頃、映画『スウィングガールズ』に影響されていきなりトランペットを購入、独学で勉強を始めました。相当練習したけれど、結局モノにはならなかったなぁ・・・と、今まで思っていたんです。
と言うのは、曲によって楽々吹けるキーの曲とまったく吹けないキーの曲が出てきて。#が2つ以上つくキーの曲がダメだったんですね。
#が2つつくのはD(Bm)のキーから。A(F#m)だと#3つ、E(C#m)は4つです。
僕のトランペットの場合は具体的に言うと「ド」と「ソ」の#が上手く吹けない。いずれも3本のピストンすべて押さえるフォームになるんですけど、同じ音を連続で繰り出す際、他のフォームは「ぱぱぱっ!」と歯切れ良く音が出るのに、「ド#」「ソ#」のフォームは「ほえっ、ほえっ、ほえっ」みたいな音になる上、素早い連続音がどうしても出せません。
#が2つ以上つく調号の曲は必ず「ド」の音には#がつきます。しかもトランペットはB菅楽器と言って、ギターやピアノに合わせて吹く場合、1音ぶんキーを上げますから、Eの曲を吹こうと思ったらペットはF#のキーで吹かなければいけません。
F#なんて、#6つの調号ですよ・・・とても無理です。

そんなこんなで
「自分は壁にブチ当たり、クリアできなかった・・・才能無かったのかな」
と思っていた次第ですが、この『音楽夜話』でのジュリーの話で、これはプロでも難しいことなんだ!と初めて知り、ちょっと安心しました(笑)。

ちなみにブラス・アレンジということで言えば、「オーバーチュア」のキーはF(ヘ長調)。これならB菅楽器のトランペットはGで吹けばよく、#は「ファ」の1つにしかつきませんから楽ちん(「ファ#」は1本ピストンのフォームで音が出しやすい)なのですよ~。
こういうことは、もしトランペットを練習していなかったら解説できなかったはずで、今日は珍しく「伝授!」っぽい内容の記事が書けた・・・のかなぁ?


それでは、オマケです!
今日は、同い年の男性ジュリーファンからお借りしている切り抜き資料で、Rock'n Tour '81関連の記事(出典が僕には分かりません・・・)から数ページぶんを。


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さらに、年の瀬なので奮発してもう一丁!
こちらも出典は不明ですが、ピーファンの先輩に以前お借りした切り抜き集から。

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ということで、年末ギリギリの更新でしたが・・・。
『G.S. I LOVE YOU』『ROCK'N ROLL MARCH』に続き、この大名盤『S/T/R/I/P/P/E/R』についてもこれにて収録全曲の記事コンプリートとなりました。
時期を見て、それぞれの記事カテゴリーもアルバム・タイトルに移行させようと思います。


今年も大変お世話になりました。
お読みくださるみなさまには、相変わらずの大長文におつきあい頂き恐縮です。ありがとうございます。

まぁ、長文が書けるというのも僕自身にまだまだその体力がある、という証(なのかいな?)。
それができる限り、僕のこのブログについては今まで通りの変わらないスタイルで来年も・・・ジュリーの古希イヤー、頑張って書いていきたいと思います。

年明け1月半ばに熊本公演への遠征が控えていることもあり、この年末年始の我が家は1日だけ温泉に行く予定こそありますが、基本的には節約モード。のんびり過ごすつもりです。みなさまはいかがでしょうか。
どうぞよいお年をお迎えください。

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2017年12月21日 (木)

沢田研二 「奇跡」

from『いい風よ吹け』、1999

Iikazeyofuke

1. インチキ小町
2. 真夏・白昼夢
3. 鼓動
4. 無邪気な酔っ払い
5. いい風よ吹け
6. 奇跡
7. 蜜月
8. ティキティキ物語
9. いとしの惑星
10. お気楽が極楽
11. 涙と微笑み

---------------------

日付、変わってしまった・・・(汗)。不肖DYNAMITE、12月20日を以て51歳になりました!
誕生日のこの日は毎年「寒い」という印象で、風邪をひいていることも多いのですが今年は大丈夫。みなさまはお変わりないでしょうか。

さて今日は例年通り「ジュリーが自分と同じ年齢の年にどんな歌を歌っていたか」をテーマに考察記事お題を選びました。連日の更新で長い枕を書いている時間がありませんので(笑)、サクサク行ってもよろしいでしょうか?(←ジュリーMCのマネ)。
ジュリーが51歳となる年(1999年)にリリースされたアルバム『いい風よ吹け』収録曲の中でも特に好きな曲のひとつです。
「奇跡」、伝授~!


①2009~2018 ジュリーの「奇跡10年」、開幕曲!

未だに「自分はこの曲を生で聴いたことがある」という事実がまるで夢の中の出来事だったように感じる時がある・・・そんな1曲です。

還暦を超えて二大ドーム公演を大成功させたジュリーは、そこから次の節目である自身古希までの10年を「奇跡10年」であると位置づけました。
よって、2009年最初のお正月LIVEのツアー・タイトルが『奇跡元年』。記念すべきセットリストのオープニングとしてジュリーが抜擢した曲が「奇跡」でしたよね。

僕は本当に「一度くらい沢田研二を観ておくか」程度の軽い気持ちで『ジュリー祭り』東京ドーム公演に参加しました。ですから『ジュリー祭り』後の熱病のような「本格ジュリー堕ち」などまったくの想定外。
ついでに、世の中の反応など予想もせずに書いた東京ドームのレポート記事で、これまでお目にかかったことのないアクセス数を目の当たりにしたことにもまたビックリ。以後このブログは完全に「じゅり風呂」へとシフトしたわけですが、あのドームの記事を書いていなかったら僕は『奇跡元年』に参加できていません。
コンビニをハシゴして「お正月LIVE」のチケットを探し求めるも購入できず途方に暮れていたところに、あの記事に目を通してくださったジュリーファンの先輩方とのご縁が重なり繋がって、僕はどうにか『奇跡元年』CCレモンホール(渋谷公会堂)公演への参加が叶ったのでした。
ドームから間を置かず渋公のジュリーを観た、というこの流れが僕のジュリーファンとしての道を大きく変えた、と言っても過言ではありません。

さて、「奇跡」。
『ジュリー祭り』後に怒涛に大人買い→猛勉強した未聴のアルバム、幾多の名盤の中に『いい風よ吹け』もあり、『奇跡元年』なるツアー・タイトルなんだからこれはやるかも知れない、と『奇跡元年』参加前夜にヒヨッコなりにみっちり予習していたという名曲。
予想は当たり、ジュリーにしてはストレートに(と言うか、ジュリーのツアー・タイトルとセトリの関係が一筋縄ではいかない、と僕が知るのはまだまだ先の話になるのですが)、これが見事セットリストの1曲目でした。
今でもあの「初めて体感するお正月LIVEの1曲目」のイントロの興奮はハッキリ身体が覚えています。本当に、血が滾った瞬間でした。
ジュリーファンの先輩方はもう何回もこの感覚を味わっているのか、と羨ましく思ったりしましたね。

実は「奇跡」は僕が初めて”おいっちに体操”に参加した曲でもありまして。
東京ドームの時はYOKO君と2人で2階席から、「あぁ、アリーナの皆さんやってるな~」としみじみ”おいっちに体操”の図を眺めてはいたんだけど、自分達はそこまで踏み出せなくて。
『奇跡元年』参加が確定した段階で僕は、「今度は絶対俺も一緒にやる!」と意気込んだものです(笑)。
でも、ジュリー今回そういう曲やってくれるのかなぁ、なんて思ったりもしてたものですから、「奇跡」のイントロで早くもジュリーが繰り出した”おいっちに体操”に僕は「来た来た~!」と大喜び。今にして思えば、物凄いテンションで腕振り上げてたんじゃないかなぁ。
席が1階の最後列だったしね。『ジュリー祭り』と違って後ろの人を気にせず暴れられましたから。

ジュリーの”おいっちに体操”ナンバーはいくつかありますが、「奇跡」はメロディーラインも綺麗で、でもコード進行はロックに尖っていて、詞もヴォーカルもハジけまくっているという「万能」タイプなんです。
泰輝さんのジュリーへの楽曲提供は、『第六感』収録の「夏の陽炎」に次いで2曲目。どんなパターンの曲も作れる泰輝さんが、おそらく99年当時の「ジュリー」をそのままイメージして作曲し、そこに覚さんが「ズバリ」の詞を載せたのでしょう。

引き際が早くて がんばらない僕が
F#          E           B             D

あきらめなかったの 何故だ ♪
F#              E                B    D

Aメロは、無骨なロック進行に究極にポップなメロディー。そして僕ら凡人でも難なく共感できる、「ささやかな人生の誇り」を描く詞をウキウキと歌うジュリー。
こういう曲が入っている『いい風よ吹け』って、やっぱりエポックなアルバムです。
ジュリーとファンの年齢のことを考えてもね。

「奇跡」ではさらに

小さなキスさえ   奇跡にみちて
D#m        D#mmaj7  D#m7  G#7

この世はまだ 捨てたものじゃない よ
B                  E                   D#m   G#7

熱い夏が終わり告げても ♪
   F#      C#               F#

このBメロは、クリシェの美しい王道コード進行も、覚さんの歌詞も本当に感動的。
「夏の終わり」って、人生を四季に例える時かなり切ないイメージとなる筈なのに、ジュリーの「奇跡」は「いやいや、むしろこれからが本番でしょう」と。
日常のほんのふとした出来事、人との触れ合いが奇跡のように嬉しく、愛おしく思えることがある。
それが正に50を超えてからの人生・・・なのかな?

その上で、スウィートなだけの曲というわけでもないのがまた素晴らしい。
このアルバムに限らず白井良明さんのアレンジはいつも「過激」ですが、明快にエレキ・サウンドを押し出したという点で、アルバム『いい風よ吹け』は白井さんアレンジのジュリー作品の中で重要なターニング・ポイントとなる1枚でしょう。
『サーモスタットな夏』ではビートルズやレッド・ツエッペリン、『第六巻』ではクイーン、とそれぞれのギター・サウンドのオマージュが60年代から70年代の洋楽ロックを元にしてきた白井さんが、この『いい風よ吹け』では突如、当時リアルタイムで全盛を誇ったオルタナ・ロックへと趣向を変化させます。
特に想起させられるのは、90年代にグラミー賞を二度も受賞し飛ぶ鳥を落とす勢いだったレッド・ホット・チリ・ペッパーズの破天荒なギター・アレンジ(ただし、彼等のギター・サウンドと言えばまずヒレル・スロヴァクによる歪みまくったブラッシングを効かせたカッティングですから、ギター・オマージュとしては80年代ということにもなるのですが)。
白井さんのこの試みは、「ライヴ」での表現をこれまで以上に渇望するジュリーの歌人生、さらには音の好み(ジュリーはエレキギター好きなのだとか)ともリンクし、2000年代の重厚なサウンドへと繋がってゆきます。
そんな中、僕はこのアルバムの「奇跡」~「蜜月」の2曲の流れに、エキゾティクス期『S/T/R/I/P/P/E/R』収録の「テレフォン」~「シャワー」をも重ねるのです。
過激で、ラウドで、容赦無いほどにロックで・・・でも実はとてもメロディーがポップで、スリリングな「2曲で1曲」の感覚。大好物です。

あと、「奇跡」は伊豆田さんのコーラスが素敵ですねぇ。
「Can't you see♪」は聴くたびにとろけそうになります。みなさまはいかがでしょうか。

②人生は51から?

ここから先はお題曲の考察からはちょっと外れて、アルバム全体のことを短めの文量で書いていきます。

アルバム『いい風よ吹け』は、(今日のお題「奇跡」もそう言えますが)覚さん、GRACE姉さんのの作詞作品も含め「年齢と向き合う」ジュリーのリアルなメッセージが初めて前面に押し出された名盤です。
50歳を超えるとやはり身体のことがあちこち気になってくる・・・その一方で、気持ちは不思議に正直になってきますよね。ある意味「この世に生まれた状態にリセット」する時期、ということかもしれません。

以前、ご事情あって断捨離された大分の先輩から授かった大量のジュリー関連の資料の中にこのような切り抜き記事がありました。


Img4981

Img4982

小林信彦さん・・・僕が敬愛する作家の一人です。
名作揃いの小林作品の中でも溺愛しているのが『オヨヨ大統領』シリーズで、「日本の小説の中で最も愛する作品は?」と問われたら僕は迷わず「合言葉はオヨヨ」(シリーズ中最長にして最高の傑作)と応えるほど。
その小林さんが2000年(その時ジュリーはまだ誕生日を迎える前の51才)に「特にファンというわけではないけれど」としながらも、ジュリーについてこんな素敵な文章を書いていらしたのですね。

現在51才になったばかりの僕はまだ、「人生は51から」の言葉を実感することはできません。
還暦も過ぎて(2000年当時)なお精力的に活動されていた小林さんだからこそ、の真理なのだろうなぁと。
この先僕もひたひたと老人になってゆく中で「そういえば51才あたりから・・・」と後になって感じる人生の醍醐味がきっとある、と信じたいものですが・・・。

ジュリーはこの年齢の頃から「日常」や「平和」を歌い始め、還暦を超え「奇跡10年」をもうすぐ達成、というところ。まっとうに、当たり前に成果を残してきました。
「お客さんが入らない時期もあった」というジュリーの話は、『ジュリー祭り』が初ジュリーLIVEだった僕にはなかなか想像し難いんですけど、そんな状況があればこそ「ステージで一生懸命に歌う姿を見せる」ことへの確信も生まれたのかなぁとも思うし・・・自分にとって一番大切なことを見つける、やり続けるって、なかなか普通の人にはできないこと。僕らは少しでもそんなジュリーの「真っ当さ」にあやかりたいですね。

まだ再来年の話ではありますが、古希を超えたジュリーは「次の10年」をどのように銘打つでしょうか。
今からとても楽しみです。

③アルバム『いい風よ吹け』から今後のセトリ入りは?

僕がこれまでアルバム『いい風よ吹け』収録曲のうち生のLIVEで体感できているのは、「鼓動」「いい風よ吹け」「奇跡」「いとしの惑星」「お気楽が極楽」の計5曲。
近年のセトリ入り率はかなり高いアルバムと言えます。

最も聴く機会の多いタイトルチューン「いい風よ吹け」は、先日お題記事を書いた「愛まで待てない」と共に、僕にとっては『ジュリー祭り』での鉄人バンドの演奏で歌うジュリーの印象が今も強く残っている大名曲。今後も必ずセトリ入りする(来年か?)と確信していますが、個人的には「ギター1本体制での演奏がまったく想像できない」というのは、下山さんがバンドから抜けた後に何度か書いている通りです。
『ジュリー祭り』79曲目・・・かつて「アコギを弾く指の感覚が無くなっていた」と下山さんがラジオで語っていたように、「いい風よ吹け」=「アコギ・アルペジオ」というのが僕の絶対的なイメージ。
百歩譲ってエレキで弾くにしても、じゃあ柴山さんが代わりにアルペジオ・パートを弾けば良い、という問題でもありません。何故って、「いい風よ吹け」のもう1つのギター・パート・・・「この曲のためにある」と言っても過言ではない柴山さんの白のフェルナンデス(通称”いい風ギター”(byしょあ様)もしくは”『世界のカブトムシ図鑑』に載ってるやつ”(byDYNAMITE汗)による、無限サスティンのリード・ギターもまた絶対に必要だから。
2つのパートを併用して弾くことは無理だと僕には思えるのですが、柴山さんなら何とかしちゃうのかも、と密かな期待もあったり、まぁとにかく「これから」のこの曲のセトリ入りには複雑な思いを抱えています。

未だ生体感できていない他収録曲で、「これからLIVEに通い続けていればいつかきっと聴ける」と予感しているのは、「インチキ小町」です。ジュリーの「逮捕されてしまえ♪」が生で聴きたい!
他では、「蜜月」「ティキティキ物語」が拙ブログで言うところの「ダイブ曲」ですが、セトリ入りの可能性となると厳しいのかなぁ。
「真夏・白昼夢」は可能性ありかもしれません。イントロ数秒で「来た!」と反応して「ぱぱぱん!」のハンドクラップに合わせられるか?が最大の楽しみです。

今日のお題「奇跡」は先に書いた通り「この曲を生で聴いたことがある」あの幸せな時間は夢かうつつか、という状態でおりますので、なんとかもう一度体感してみたいものですが・・・さて実現しますかどうか。


それでは、オマケです!
今日は、先述の大分の先輩から授かりました資料の中から、99年『アサヒグラフ』に掲載された、『いい風よ吹け』全国ツアーの特集記事をどうぞ~!


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ということで暮れも迫ってまいりまして、次回が今年最後の更新になるかと思います。これから仕事納めまで怒涛に忙しい日々が続くので、更新は冬休みに入ってから・・・年末ギリギリになりそうです。
何かジュリーのデビュー50周年イヤーの締めくくりにふさわしい未執筆のお題曲がないかなぁと思いを巡らせていますが、まだ決めていません。いずれにしても、個人的に「大好きな曲」を選ぶことになるでしょう。

インフルエンザが流行っているようです。みなさまくれぐれもお気をつけください。

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2017年12月 3日 (日)

沢田研二 「愛まで待てない」

from『人間60年 ジュリー祭り』、2008

Juliematuricd

disc-1
1. OVERTURE~そのキスが欲しい
2. 60th. Anniversary Club Soda
3. 確信
4. A. C. B.
5. 銀の骨
6. すべてはこの夜に
7. 銀河のロマンス
8. モナリザの微笑
9. 青い鳥
10. シーサイド・バウンド
11. 君だけに愛を
12. 花・太陽・雨
disc-2
1. 君をのせて
2. 許されない愛
3. あなたへの愛
4. 追憶
5. コバルトの季節の中で
6. 巴里にひとり
7. おまえがパラダイス
8. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
9. 晴れのちBLUE BOY
10. Snow Blind
11. 明星 -Venus-
12. 風は知らない
13. ある青春
14. いくつかの場面
disc-3
1. 単純な永遠
2. 届かない花々
3. つづくシアワセ
4. 生きてたらシアワセ
5. greenboy
6. 俺たち最高
7. 睡蓮
8. ポラロイドGIRL
9. a・b・c...i love you
10. サーモスタットな夏
11. 彼女はデリケート
12. 君のキレイのために
13. マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!
14. さよならを待たせて
15. 世紀の片恋
16. ラヴ・ラヴ・ラヴ
disc-4
1. 不良時代
2. Long Good-by
3. 
4. 美しき愛の掟
5. 護られているI Love You
6. あなただけでいい
7. サムライ
8. 風に押され僕は
9. 我が窮状
10. Beloved
11. やわらかな後悔
12. 海にむけて
13. 憎みきれないろくでなし
14. ウィンクでさよなら
15. ダーリング
16. TOKIO
17. Instrumental
disc-5
1. Don't be afraid to LOVE
2. 約束の地
3. ユア・レディ
4. ロマンスブルー
5. TOMO=DACHI
6. 神々たちよ護れ
7. ス・ト・リ・ッ・パ・-
8. 危険なふたり
9. ”おまえにチェック・イン”
10. 君をいま抱かせてくれ
11. ROCK' ROLL MARCH
disc-6
1. カサブランカ・ダンディ
2. 勝手にしやがれ
3. 恋は邪魔もの
4. あなたに今夜はワインをふりかけ
5. 時の過ぎゆくままに
6. ヤマトより愛をこめて
7. 気になるお前
8. 朝に別れのほほえみを
9. 遠い夜明け
10. いい風よ吹け
11. 愛まで待てない

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from『愛まで待てない』、1996

Aimadematenai

1. 愛しい勇気
2. 愛まで待てない
3. 強いHEART
4. 恋して破れて美しく
5. 嘆きの天使
6. キスまでが遠い
7. MOON NOUVEAU
8. 子猫ちゃん
9. 30th Anniversary Club Soda
10. いつか君は

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気になっていた今ツアー九州シリーズ第2弾でのジュリーの様子もチラホラと情報を頂いておりまして、僕の故郷、鹿児島の公演もとても素敵なステージだったと分かり、嬉しく思っています。
他、何でも鳥栖公演では、最前列にいらしたいつもお世話になっている長崎の先輩のお1人が「突然ジュリーからトスを受け取って腰砕けになっていた」とか?
最初は何のことやら状況がよく掴めなかったのですが、どうやらジュリーが「鳥栖=トス」のギャグを思いついて、「鳥栖」と言う度にお客さんにトスをしてくれていたのだそうです。
今日の沖縄はどうだったかな?

こちらは慌しい年末でございますが、先月の小田原遠征に続いての忘年会第2弾・・・昨夜は在京のJ先輩お2人にお誘い頂き、根津の『大八』さんにて美味しい和食とともにたっぷりジュリーの話もしてきました。
そして今日、12月3日。今年も僕の「ジュリー本格堕ち」記念日がやってきました。
『ジュリー祭り』9周年です。毎年この日は『ジュリー祭り』のセトリからお題を選び記事更新しています。
もちろんこの日付以外にも『ジュリー祭り』セトリのお題記事は地道に書いてきて、鉄人バンドのインスト2曲も含めたセットリスト全82曲中、今日が何と78曲目!
とうとうここまで来ましたよ~。
来年のジュリー70歳の誕生日に82曲すべてを書き終える予定でおりまして、来年からはこの12月3日の更新どうしよう?セトリの中から『過去記事懺悔やり直し伝授』を選ぶか?などと気の早いことも考えたりしますが・・・ひとまず今日のお題に集中。

採り上げるのは、現在絶賛進行中のデビュー50周年ツアー、”セットリストを振り返る”シリーズの大トリ曲ともなる、「愛まで待てない」です。
いよいよこの曲も書く時が来たか、という個人的な感慨にも耽りつつ、僭越ながら伝授!


①ゆったりテンポの「原型」を想像してみる

「最速」のジュリー・シングル(演奏時間が短いというのではなく、テンポの速度が速い、ってことね)ってどの曲なのでしょうか?

厳密にBPM計測するまでもなくパッと思いつくのが「世界はUp & Fall」と今日のお題「愛まで待てない」の2曲。どちらもファンの人気が高そうなシングルですが、僕はまだ「世界はUp & Fall」を生で聴いたことが無いので(今回のセトリから外れたのは残念)、高速で突っ走るLIVEヴァージョンの実体験も踏まえると、僕の中では「愛まで待てない」が”ジュリー最速シングル”ですかね~。「B♭→B♭sus4」のイントロ数秒の時点で既に「かっ飛び」感があります。
他に『G. S. I LOVE YOU』収録の「彼女はデリケート」も相当早いですが、「愛まで待てない」の方が僅差で1等賞かなぁ。

この「彼女はデリケート」「愛まで待てない」の韋駄天ツートップは僕もLIVEで聴くことができていて、いやぁジュリーの弾けっぷりは甲乙つけ難い。
それぞれギター(或いはベース)が8分音符を縦にカマすアレンジで疾走感を出し、ステージのジュリーがそこに身体ごと乗っかるのですね。
「愛まで待てない」で言うと、会場が「キャ~!」となる歌メロ直前の”その場駆け足”の部分が分かり易いでしょう。今ツアー、依知川さんがジュリーを通せんぼしながら「8つ打ちのビート×4小節」を繰り出すシーンです。
これが16分音符ではなく8分音符なわけですから、とにかく速い速い!

ところが、聞くところによりますとこの「愛まで待てない」は、吉田光さんの作曲段階ではもっと落ち着いたテンポの曲だった、とのことですから驚きです。
さすがに「バラードだった」と言われると想像すらできないのですが、「程好いミディアム・テンポのハード・ロック」としてあれこれ自分の知る洋楽のパターンに思いを巡らせていたら、吉田さんが最初に提示したテイクはこんな感じのテンポと雰囲気だったのではないか、という曲を発見しました。
ズバリ、キッスの「狂気の叫び(SHOUT IT OUT LOUD)」(
こちら)。この曲のテンポを極限まで速めたら、「愛まで待てない」のような仕上がりになりそうです。

それに、原型がこんな感じだったとしたら吉田さんはおそらくイ長調で作曲していたと思うんですよ。
僕らがCDで耳にしている完成形「愛まで待てない」のキーは変ロ長調。レコーデング段階ではテンポだけでなく、キーも上げたのではないでしょうか。ジュリーのヴォーカル、白井さんのアレンジにはそのくらいのテンションを感じます。

ジュリーが「もっとテンポを速くしたい」と考えたのはどのタイミングだったのでしょうね。
曲を貰ったプリプロ段階で速攻だったのか、覚さんの歌詞が載った後か、はたまたレコーディングの打ち合わせの時だったのか。
個人的には、覚さんの詞がきっかけだったのではないかと推測します。ジュリーはアルバムのタイトルチューンにもなったこの詞を気に入っていたはずですし。
「愛まで待てない」は、「”会い”まで待てない」でもあります。「君」に会えば、愛の火種を振り撒かれて僕は永遠に燃え続ける。でも、会わないでいる時間に火種が尽きかけて僕の身体の炎は灰になりそうだ、今すぐ会わなきゃ、会わなきゃと前のめりになっている歌ですよね。愛へと急ぐ高速のテンポを詞が求めちゃっているわけです。
まぁ、テンポアップしたオケが既に完成していて、覚さんがそれに合わせてきた可能性もありますが。

このテンポチェンジで白井さんが担った役割は相当大きいでしょう。
「仕掛ける」「いじり倒す」アレンジが得意な白井さんですが、この曲の場合は「テンポをトコトン上げる」アイデア自体が冒険的な仕掛けですから(メロディーについては吉田さんの原曲そのままだったそうですが、取り巻く「音」「構成」には当然白井さん考案の変化があるはずです)、より「素」の白井さんが表れた1曲。
豪快なギター・アンサンブルは勿論として、僕が特に惹かれるのは最後のリフレインの小節割りで、2’24”あたりなんて1小節丸々すっ飛んでいるんですよ(通常の小節割りの2’14”と比べてみてください)。
ダメ押しのサビメロ連打を「これは”突っ込む”曲なんだ」と前倒しで繋げてしまうセンス。これがジュリーの生のステージで最高に効いてくる・・・走り回りながら歌うジュリーは、いつもここで「限界を超えたる!」とばかりにギアを上げてきます。LIVEの生歌を聴いて初めて完結するアレンジの素晴らしさですね。

白井さんって、良い意味で「変態」アレンジャーです。曲を一度開封してしまって、改めて構築し直してから作曲者の個性を甦らせる究極の職人。
ただしその変態性はいつも溌剌、健全です。これが『MIS CAST』の頃にはまだ見出されていなかった「ジュリーと白井さんとの相性」ではないかと僕は考えます。
吉田さんのジュリー提供曲中最もステージで歌われる機会の多い「愛まで待てない」は、メロディーを変えずに仕上げたぶん、白井さんの「溌剌」「健全」がフルに生かされたジュリー・シングルではないでしょうか。

年明けのファイナルまで残り少なくなってきた今ツアー、「愛まで待てない」を歌うジュリーも会場のお客さんも、これから一層加速してゆくでしょうね。

②B面「君をのせて1990」について

今年のツアーは、入場してから開演までのBGMも楽しみですね。早めに会場入りしたくなります。
僕はここまで、初日と松戸のBGMがかぶっちゃって(タイガースから70年代初期)。あと大宮では「祈り歌」。次回参加の武蔵野ではまた別の時代の曲を楽しみたいところですが、さてどういう順番が巡ってきますか。

本日のお題「愛まで待てない」のシングルB面は、「君をのせて1990」。
何故90年に製作されたこの曲が96年のシングルB面(と言うかカップリングね)に抜擢されたのか、などの知識を僕はまったく持ちませんし、そもそも時のCMの記憶すら無いのですからお話になりません。
それでも、2009年に兵庫の先輩にCO-CoLO期以降のシングルB面集CDを作って頂き聴いた時から、僕はこのジュリーにしては珍しいリメイク・レコーディング・ヴァージョンがかなり好きで、いつかの機会にこのヴァージョンのことを書きたいと思っていました。
せっかくですからA面がお題の今回、併せて簡単に書いておこうと思います。

そりゃあ71年のオリジナル・テイクには敵いません。音がどれだけクリアになろうと、リズム解釈に斬新かつ高度な味つけがあろうと、やっぱり「君をのせて」はジュリーのソロ・ファースト・シングルが最高。
例えば、「1990」では間奏のストリングスが「ミソラ~♪」まで。そこで「ソミド~、レミレ~♪まで行ってくれよ!」と感じるのはおそらく僕だけではないでしょう。
でも、僕はそこもひっくるめて「1990」が大好き。
オリジナルとは異なる歌とアレンジで「とんでもない名曲なんだ」と再確認できるだけでも、リメイク・レコーディングの意義があったと思います。

で、そういうジュリー・ナンバーは「君をのせて」が唯一だ、とも思うのです。
「君をのせて」はどんなアレンジでも、どんな歌手が歌っても名曲(もちろん僕らにとってはジュリーが一番ですが)。数年前、ドラマのワンシーンで瑛太さんがカラオケで歌ったことがありました。また、今年だったと思いますが、玉置浩二さんがNHK『SONGS』で「沢田研二さんの曲です」と紹介してからこの曲を歌っているのを観た人も多いでしょう。
それぞれが本当に素晴らしく・・・いざ「風に~♪」と歌い出せばその人の、そのシーンの歌になる。同時に「名曲」の本質は変わらない。それが「君をのせて」。
これほど普遍性の高い曲はジュリー・ナンバーで他に無いのではないでしょうか。
それはすなわち、ジュリー自身がどんなアレンジで歌っても普遍の名曲であるということ。
『ジュリー祭り』直前の『SONGS』でしたか、白井良明さんが大胆にアレンジを変えた「君をのせて」をジュリーが歌っていましたよね。白井さんも「これはそうしてよい曲だ」と考えたのだと思います。

「1990」は吉田建さんのアレンジです。連なる3連符それぞれの最後の裏拍にアクセントをつけ、「お洒落」に仕上げていますね。建さんとしては、「これからちょっとお出かけ」みたいなウキウキ感を狙ったのではないかと僕は考えています。
ジュリーの歌もバックの演奏も、とても素敵な意味で「外向き」です。聴いている僕らも「よし、じゃあ一緒に行こうか!」と爽快な気持ちになる・・・そんなヴァージョンだと思うんですよ。

演奏トラックで特筆すべきはアコギ。「1990」のストロークは早い段階から「じゃんじゃかじゃか、じゃんじゃかじゃか♪」と3連を跳ねて弾きます。
これは『Barbe argentee』での柴山さんのアコギとまったく同じ演奏なのですね(2016年お正月LIVE。ギター1本体制となったバンドで、柴山さんがこの曲をアコギ1本で最後まで通したステージは今でも鮮明に覚えています)。後追いファンの僕は知識を持たないのですが、「1990」のレコーディングでは柴山さんがアコギを弾いているのではないですか?

「君をのせて」という曲は、歌詞の解釈も歌手によりアレンジによりシーンにより聴き手の心境により様々です。
久世さんの有名な言葉のように「男同士の友情の歌」でもありましょうし、愛する人に向けてのピロートークでもあり、ちっぽけな存在である自分を嘆く歌でもあり、強い自分を奮い立たせる歌でもあり・・・。
ジュリーはいつも「リアル」な歌手ですから、何度歌ってもその都度解釈は違うかもしれません。今年のツアーはどんな気持ちで歌っているのか・・・僕には、歌詞中の「君」をファンのこととして歌っているように思えて仕方ありませんが、みなさまはいかがでしょうか。
とにかく、こんな普遍の名曲がソロ・デビュー曲であったというそのことひとつとっても、ジュリーは「選ばれた」歌手なんだなぁと今しみじみ思うばかりなのです。

③2008年12月3日(仏滅)の衝撃、醒めやらず

さて、「愛まで待てない」の話に戻ります。
タイトルから曲を思い浮かべる時、僕にはCD音源よりLIVEでの歌、演奏の方が先に出てくるジュリー・ナンバーがいくつかあります。
これは、『ジュリー祭り』以前はほとんど知らなかった→その後LIVEに通い始めてから何度も生で聴いた、という曲に限られていて、「睡蓮」「届かない花々」なんかもそうだけど、その点で圧倒的なのが「いい風よ吹け」「愛まで待てない」の2曲。ご存知の通り、あの『ジュリー祭り』のラスト2曲です。
音で言うと、「いい風よ吹け」と言えば下山さんのアコギ・アルペジオですし、「愛まで待てない」のソロは柴山さんの速弾き・・・僕にとっては今でもそうなのです。

僕が「愛まで待てない」という曲を初めて知ったのは、確か『ジュリー祭り』の前日。まったく初めてのジュリーLIVEを目前にして「知らない曲もやるだろうから、少しは予習していかなきゃ」と思い立って、You Tubeハシゴ勉強一夜漬けの中の1曲でした。
正直なところ僕は、『ジュリー祭り』と銘打つほどの一大イベントなのだから、大野さんや吉田建さんあたりは飛び入りのゲスト参加があるだろうし、セットリスト最後は「誰でも知っている」有名な曲で締めくくられるだろう、とそんな心構えで東京ドームに参加していました。
しかし・・・鉄人バンド4人と共にひたすら歌い、ひたすらに弾き、という感じでステージが進んでいき、「あと、有名な曲って何が残ってるっけ?」などと考える余裕も最後には吹き飛び、過ぎ去る6時間。79曲目の「いい風よ吹け」が終わって、巨大モニターに映ったジュリーが「79曲歌っちゃったか~?」と(モニターには泰輝さんも映っていて、「うんうん」と頷いていました。今でも鮮明に覚えている『ジュリー祭り』名シーンのひとつです)。
もうその時に、「最後も俺等(僕とYOKO君ね)のよく知らない曲が来る!」と直感しましたね。
「無知の知」ではありませんが、僕にとっては「自らのヒヨッコさ加減を覚醒」の瞬間です。

始まった曲は、ギリギリ予習が間に合っていた「愛まで待てない」でした。
今思えば・・・80曲歌い通すセットリストのラストが、80曲の中で一番テンポが速いロック・ナンバーですよ。走るジュリー、叫ぶジュリー、「何なんだこの60歳!」と呆然と観ていたように思います。自分が手拍子したか、してないかの記憶も無い・・・その驚異の気力、体力にただただ「参りました」って感じだったなぁ。

今年の「デビュー50周年」セットリストのラストに向かう数曲もいわゆる「有名曲」ではないですよね。
ジュリーLIVE初参加の人の中には、『ジュリー祭り』の時の僕と同じような心構えで来て、最後の最後に「よく知らない曲」連打で逆に「参った!」したお客さんがいらっしゃると思います。そうして虜になる、知らない曲も改めてCDを聴いてみて、また来ようと思う・・・そんな「次」への繋がりがあります。
今ジュリーが自然体でやっていることが、そのまま最高の集客戦略となってしまう不思議な奇跡。やっぱり継続の尊さ、ジュリーの歴史の偉大さ、でしょうね~。

その意味で『ジュリー祭り』80曲目の「愛まで待てない」は、僕の中で宝物のような1曲です。まぁ、『ジュリー祭り』で歌われた全曲が宝物なんですけど。
「ジュリー70越えまでに『ジュリー祭り』セットリスト全曲の記事を書く」と決めたのは『Pleasure Pleasure』ツアーの時ですが、「公言してしまったけど本当にそんなことできるんかいな?」という不安もありました。
でも、あの東京ドームから丸9年・・・残す曲は鉄人バンドのOVERTURE含めて僅か4曲となりました。
僕のような凡人でも、コツコツ続けていればここまで来れます。それもジュリーが導いてくれたこと。
感謝しかありません。
来年の6月25日、ジュリー70越えのリミットに向けて、何とか達成したい大目標です。


それでは、オマケです!
お題「愛まで待てない」リリースの1996年のネタが手元に尽きておりますので、今日はチャプター②で強引に触れた「君をのせて」関連のものを。
Mママ様からお預かりしている切り抜き資料です。


Kimiwonosete02

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ということで僕の次回ジュリーツアー参加は15日の武蔵野ですが、その前に瞳みのる&二十二世紀バンドの四谷公演が控えています。

ピーさんが音楽活動を再開してから、年に1度のLIVE参加は大きな楽しみのひとつ。ジュリーのそれとはまた違った素晴らしさ、面白さがあるんですよね。
次の更新は(またまた間隔が開いてしまいますが)、そちらのLIVEレポートになるかなぁ。
参加されるみなさま、会場でお会いしましょう!

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2017年11月 1日 (水)

沢田研二 「STEPPIN' STONES」

from『告白 -CONFESSION-』、1987

Kokuhaku

1. 女びいき
2. 般若湯
3. FADE IN
4. STEPPIN' STONES
5. 明星 -Venus-
6. DEAR MY FATHER
7. 青春藪ん中
8. 晴れた日
9. 透明な孔雀
10. 護り給え

-------------------

ジュリーの全国ツアーも進化しながら順調に進んでいるようで、いよいよ明後日が松戸公演!というところまで来ました。
秋も深まり(と言うかもう冬なのか?)朝晩冷え込んできましたが、みなさま風邪などひいていないでしょうか。僕は先週完全にこじらせてしまいましたが、なんとか松戸公演の前に体調を戻すことができました。

で、松戸公演の前日・・・つまり明日には、以前からお知らせしているBARAKA・20周年記念LIVEもございます。残念ながら僕は仕事で参加できませんが、カミさんが応援に駆けつけますし、ジュリーファンの先輩の中にも何人か参加される方を知っています。

Baraka3

依知川さんはBARAKAのフォーラム、翌日がジュリーの松戸と連日のステージとなりますね。
いずれの会場も大成功、大盛況となりますように。


さて今日は、ジュリー50周年記念LIVE”セットリストを振り返る”シリーズ第4弾として、前回に引き続いてのCO-CoLO期、ジュリー作詞・作曲による名シングル「STEPPIN' STONES」をお題に採り上げます。
「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」同様、僕としては特に「勉強途上」を自覚している時期の作品です。無知故の至らぬ点も多々あるかと思いますが、今のベストを尽くして考察記事を書いてまいります。
枕もそこそこに、伝授!


①山あり谷あり・・・されど「光」あり!

30代の後半って、ジュリーのような特別な人に限らず僕らのような一般ピープルにとっても、それまで続けてきた仕事で「正念場」「過渡期」「踏ん張りどころ」を迎え、もがき悩むと同時に、自分自身の才覚と行動を以ってそれを乗り越えようとガムシャラに頑張る・・・多くの「仕事を持つ人間」の人生においてそんな時期なのではないでしょうか。

ジュリーとは比較にならないくらいの低いレベルだけど、僕も40才になる直前はそうだったなぁ。
色々な選択肢が見える中で、僕の場合は「なんとかしてスキルを上げてこのまま同じ仕事を続ける」ことを頑張って乗り越えたわけだけど、人によっては変化と可能性を求めて違う世界の仕事に飛び立つパターンもあるし、「ガムシャラ」の方向性は人それぞれ。30代後半のこの時期にどれほどガムシャラになれたか、は後々の人生に大きく影響してきます。
まぁそんなふうに振り返るようになったのは、つい最近なんですけどね。

ジュリーはいつの時代も全力、入魂の姿勢を変えませんが、「乗り越えよう」とするガムシャラがハッキリ見えるのは、やはり30代後半のCO-CoLO期。
それがそのまま自作曲として反映されたシングルこそ「STEPPIN' STONES」だと僕は考えます。

今ツアーのMCではこれまでの歌人生を振り返って「山あり谷ありだった」と語ることも多いジュリー。
僕などは後追いの新規ファンなので、ジュリーの「正直過ぎる」(と感じる)MCにはいまだに驚いたりドキドキしたり、ということもあるんですけど・・・。

ジュリー自身の「谷」の想い出のひとつ、なのでしょうか、先の広島公演で「バンドメンバーの意を汲んで一度小さな会場でやってみたけど・・・」と話をしてくれたそうです。ジュリーは大きな会場で、自分のファン以外のお客さんも混ざっている中で歌うのが好きなんだ、と続けて今後の決意を語ってくれた、と
僕は詳しいことは分からないのですが、その「小さな会場」って正に今日のお題「STEPPIN' STONES」を歌ったという、このステージのことなのでしょうか?


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『不協和音 Vol.6』より。今日の記事は文脈に沿う形で、これがそのままオマケ画像コーナーとなっております~。


実際のステージがどんな感じだったのか・・・想像すら難しいのですが、僕は『INKSTICK』を観ている先輩方を心底羨ましいと思います。たとえジュリーが「小さな会場」に気乗りしていなかったとしても、それは素晴らしい「LIVE」だったんだろうなぁ。
そして、そこでのジュリーの歌、ステージの素晴らしさを「STEPPIN' STONES」というシングル曲の考察を以って後追いすることは可能ではないでしょうか。

めざす道にかすか見える光 虹色
D                                  C       D

夜の奥で拳かざす 髪を清めて
D                             C       G

祈る言葉も響かない 静かな日々に別れ告げ ♪
A                            G                           A7

苦境の中でベストを尽くす・・・本当に難しいことだけれど、そこでガムシャラに頑張るだけなら僕らにもなんとかできなくはない。でもジュリーが凄いのは、しっかり「虹色のかすかな光」を見据えていたこと。
誰にでもできることではありません。
その「光」を遂にジュリーが手にしたのが還暦の『ジュリー祭り』だったのだ、という少し前までの僕の考えは、単に自分のファン歴に無理矢理こじつけていたんだなぁ、と反省し畏れ入ったのが今年の50周年ツアー。
とにかく僕は今回初めて「STEPPIN' STONES」を生で聴きましたのでね。やはり生歌を聴くと、楽曲の解釈もずいぶん変わるものです。

ヒシヒシと感じたのは、ジュリーの「継続する(Keep on running)」力の尊さでした。
「夜の奥で拳かざす」ような時期は、人生を振り返れば誰しも(特に男性は)覚えがあるはず。
ではそこでどうするか。祈るだけでなく行動しよう、自分の力で何かやろう、と。
ジュリーにとってそれが歌を作り歌うことだったわけで、今もずっとそれは継続していて。
ゴールを決めない、妥協しない、迎合もしない、というのは本当に強い人にしかできないことで、ましてやそれをひたすら続けるなんてねぇ。何度も書きますが、あれだけの才と実績を誇る人が「地道に一生懸命努力し続ける」ことを大切にしている・・・僕はそんなジュリーにどうしようもなく惹かれます。
普通の人は、いつもぬくぬくとしたお湯に浸かっていたいと思うものですよね。でもジュリーはそういう道は選ばない、と。

実は、僕が「STEPPIN' STONES」のジュリーの詞の素晴らしさを実感できるようになったのは、ほんのここ数年のことでして(恥)。
最近はそういうことも少なくなりましたが、僕の場合はまず「自分の持つ引き出しと照らし合わせる」聴き方をしてしまう傾向があり、「STEPPIN' STONES」についてはその点で詞よりも強烈なインパクトがあったものですから、却って曲全体の本質を把握できなかったのだと思います。
数年前までの僕はこの曲をどのように解釈し聴いていたのか・・・甘い考察だったとは言え「間違い」でもなさそうなので、次チャプターではおもにジュリーの「作曲」の面からそのあたりのお話をしてみましょう。

②「ローリング・ストーン」と「ステッピン・ストーン」


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今日の参考スコアは当然『不協和音 Vol.6』。残念ながら五線譜ではなくコード付歌詞の表記ですが、貴重な資料です。


僕が「STEPPIN' STONES」を初めて知ったのは、前回お題「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」と同時です。
ただし、聴いた瞬間にジュリーの自作詞に魅せられた「アリフ~」と違い、当初「STEPPIN' STONES」の詞については軽視していた・・・これは先述の通り。
僕が真っ先に見つけた「STEPPIN' STONES」の魅力とは、「この曲のジュリー、ミック・ジャガーにそっくり!」という洋楽フェチならでは、そして「映像から先に曲を知った」という後追いファンならではのものでした。

CD音源だけで明快にミック・ジャガーを見出すことのできる「お前は魔法使い」に対し、「STEPPIN' STONES」はレコーディング音源についてはさほどミック・ジャガーの影響、ローリング・ストーンズへのアレンジ・オマージュは強く感じません(個人的に石間さんのギターはストーンズ脱退後のミック・テイラーという印象)。
スタジオLIVEでせり上がるようにして熱唱するジュリー、そのアクションがミックっぽいわけですね。

とは言え、ジュリーが作曲段階で相当ストーンズを意識していたことは間違いないでしょう。
サビでトニックから連なるロックンロール王道のスリーコードにトーキング・スタイルを織り交ぜた抑揚のメロディーを載せるあたりは、「ひとりぼっちの世界」で確立したストーンズ独特のグルーヴ・パターンですし、なにせタイトルが「STEPPIN' STONES」。
CO-CoLO時代のインタビューではストーンズに言及していることの多いジュリーです。前回書いた「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」では「どんなメロディーが自分の声に合っているのか」を突き詰めていたのが、翌年のこの自作曲では「自分はどんな曲が本当に好きなのか」を突き詰めたのではないでしょうか。
「大好きなストーンズみたいな曲」をとっかかりのコンセプトとして生まれたシングルが「STEPPIN' STONES」だったと僕は推測します。

重要なのは「ローリング・ストーンズ」転じて「ステッピン・ストーンズ」の発想。
以前何かの記事でも書いたことがある通り、「ローリング・ストーン=転がる石」なるフレーズには「とるに足らない存在」という意味合いがあります。
かつて栄華を極めた人物が奈落の底に転落し、誰からもその存在を気にもとめられなくなる・・・「どんな気分だ、転がる石のような今のそのザマは?」と歌ったのはボブ・ディランですが(「ライク・ア・ローリング・ストーン」)、ジュリーは「いや、それは傍から見てる奴の言い草だろう」と言わんばかりに、「ステッピン・ストーン」なるフレーズを考案。このタイトル・フレーズがジュリー自らの行く様、歌人生を表現していることについては、先輩方も異論の無いところでしょう。
(ちなみにこの曲、ジュリーはストーンズだけどCO-CoLOはディラン、というのがレコーディング音源初聴時の僕のイメージ。ゴスペルっぽいコーラスも、70年代末から80年代にかけてのディランを想起します。以前も書きましたが、僕がジュリーの曲にディランを重ねるのはCO-CoLO期のみです)

ここからは最近の考察となりますが・・・ジュリーは何を置いても歌う、どんな状況でも歌う、例え世間からは谷底へ転がり落ちる石のように見える状況(三流紙お得意の「浮き沈みを論ずる」対象となることもそのうちのひとつでしょう)であろうとも、ジュリー自身の感覚は「Keep on runninng」なステッピン・ストーン。
歌い続ける限りはそうであると。

不思議なことに、今ツアーで生体感した「STEPPIN' STONES」を歌うジュリーに、僕はまったくミック・ジャガーの影を見なかったという・・・髄までジュリー、ジュリー以外の何者でもない歌だなぁ、と思ったわけです。

さあ我を忘れて さあ肌を立たせて
G           D        G             D

さあ遥か見つける HALLELUJA ♪
G             D                   A7

1番のみのショート・ヴァージョンなので今ツアーではこの2番の歌詞までは聴けないんだけど、歌詞その通りのジュリーが今確かにそこにいます。
虹色の光はもう「かすか」ではなくハッキリ見えていて、ジュリーの身を纏っていますね。

「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」「CHANCE」ともども、ジュリーは今回のステージでCO-CoLO期の名シングル群でのお客さんの盛り上がりをひときわ嬉しく思っているように見えます。
これを機に、来年以降CO-CoLOナンバーのセットリスト入り率が上がっていくことを期待したいです。

③『NISSAN ミッドナイト・ステーション』より ジュリーA面ベストテン(後半部)

ここでは前回記事の続き・・・「シングルA面」ということだけにあやかりまして、82年放送のラジオ音源『NISSAN ミッドナイト・ステーション』から特別企画『ジュリーA面ベストテン』の後半部をお届けいたします。
まずは第4位から2位までの発表。


4位「コバルトの季節の中で」(168通)
3位「勝手にしやがれ」(190通)
2位「時の過ぎゆくままに(221通)

「コバルト」、これが4位ってのは予想外でございましたね、うん。まぁひょっとしてベストテンの中に入るかなとは思っておりましたが、こんなに上位に食い込むとは。大健闘でございますね。
今年は秋になってからも暖かい日が続いたりなんかして、やっと今「秋」という感じでね。ちょうどこの曲が合うのかな、とそんなことを思ったりなんかしたんですけれども。
まぁ「時の過ぎゆくままに」「勝手にしやがれ」というのは順当なところではなかろうかと思いますが、しかしこうなると1位は何でございましょうか。


と勿体つけるジュリーですが、その第1位の発表の前にここで少しの間、僕としてはかなり興味深い、なるほどなぁという話をしてくれています。

しかし、(シングルを出す時に)A面を選ぶっていうのもね~、本当に難しい作業なんですよね。
まぁ、割とここんところ(最近)は、「シングルだから」というような、いわゆる「大衆にウケなければいけない!」ということでもって、ある種の迎合と言いますかね、そういうものはとんと無くなってきまして。どんどんどんどん突っ走れと。新しいのがイイんだ、というようなね、沢田研二のA面に関しては、そういう具合になってきました。
だから、「こんなのが大衆に受け入れられるのか?」というようなね、今の「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」みたいなああいうサウンドが、大衆の中にこう、すんなり入っていくっていうのは凄いことだ、と言ってくれた評論家の人達もいたくらいで。
やっぱり、大ヒットするような曲を見ますと、サウンド的には「新しいと売れない」みたいな、逆にね、そういうところもあるでしょ。あみんの「待つわ」にしても別に「新しさ」っていうものは(サウンドについては)無いんだけど、歌詞の中にはそういうね、女心のね、あんたがフラレるまで待つわ、というような、(大衆に)引っかかるところがあるわけで、あれは歌詞で売れたんじゃないかな、と僕は分析してるんですが(笑)。

とにかく僕の場合はサウンド面、バンドを従えてのサウンドということもあったりなんかして、必ずこう、大きなヒットになるっていうのは過去見てまぁ、例えばレコードの売上が1等賞になったのが「危険なふたり」「追憶」「時の過ぎゆくままに」「勝手にしやがれ」「カサブランカ・ダンディ」と、こういう具合に、この1等賞になった(5曲の)中には「重なったパターン」ってのが無いわけね。
だから、独自のパターン、5つのパターンっつうのがあるもんかと。この5つ以外のもの(パターン)でヒットを出さなきゃいけないっていうことで、その後ず~っとやっとるわけだよね~。
でも、まぁしかしねぇ・・・ほんっとに最近は、ヒットを生むというのは・・・え~~~・・・・痛みを感じますなぁ、うん(笑)。
何度も何度も言うようではございますが、これだけヒット曲があるっていうのは本当に嬉しいことでございますね。

で、ここでね、1曲聴いて頂きたい曲があるんですけれども・・・ソロになってからの最初のヒットなんですよ。
レコード大賞の方でもね、歌唱賞に初めて選ばれて、昔は歌唱賞ってのは5人選ばれたんですよ。その中から最優秀歌唱賞ってのがまた選ばれてたんですけれども、今は「金賞」って言って10人選ばれる。倍になって値打ちが薄なった、って感じがするんですけど、まぁそんなことで、初めての歌唱賞受賞曲でもございました、「許されない愛」。これを聴いて下さい。


「許されない愛」オンエア

これは、1972年。ロンドンで録音して、LPの中に入ってた曲なんですけれども、まぁ、周りの、正論を仰る人達の反対を押し切って出したら、当たったというやつなんですね(笑)。
だから僕はやっぱり、結局は「冒険をしないとイカン」ということなんやね、最後まで。うん、そう思っております。


ジュリーのアルバムの中で『JULIEⅡ』が一番好き、という僕にとって「許されない愛」は格別に思い入れのあるシングル曲(リアルタイムで知っていたわけではないのですが)。でもなんとなく「アルバムの中の1曲」としての評価の方が高くて。
ジュリーの話を聞き、やっぱりそうかと思いました。
シングル・カットの話が最初からあったのではないのですね。会社の上層部の難色を、おそらくジュリー本人や加瀬さん、池田さんあたりが押し切ってシングルとして出して、それが大当たりしたと。
それで、以前から知っていた「会社が”許されない愛”大ヒットのご褒美としてジュリーのセルフ・プロデュース・アルバム製作(『JULIE Ⅳ 今、僕は倖せです』にGOを出した」という話にも繋がります。
いやぁ、勉強になりました!


さて!残る1曲(第1位)は何でございましょうか。
大好きなのに(まだ)かかってないという、あの曲でございますよ。あなたの予想とピッタシ行きますかどうか。

第1位「ス・ト・リ・ッ・パ・-」(253通)


というわけで1等賞は「ス・ト・リ・ッ・パ・-」ということでございましてね、うん。そうか~。自分で作った曲でございますからね、嬉しいんですが・・・何が(良くて)1位だったのかなぁと色々分析しておるんですがね。割と最近(の曲)である、ということと、エキゾティクスとの最初の仕事でもあったし、それから、テレビなんかの出方が結構派手に、「ヒラヒラ巻物」が印象的でもあっただろうし、というね。色んなことが考えられるわけでございますけれども。
エキゾティクスのファンの人達の票も入ってる(笑)、という、そんな分析もしておりますね。


82年という時期を考えますと、ファン投票の1位が「ス・ト・リ・ッ・パ・-」というのは当然に感じます。
ジュリーも「そうかそうか~」と満足げですが、最後にひと言だけボソリと


「ス・ト・リ・ッ・パ・-」・・・なんでもっと売れなかったのかなぁ?なんて思ったりもするんですが。

と。
「ス・ト・リ・ッ・パ・-」は実際のセールス・ランキングでは「1等賞」に届かなかったのですね。少年時代の僕の記憶では「すごく売れている」印象なのですが。


さて、このリスナー投票のA面ベストテン企画、今実現したらどうなるんだろう、とどうしても夢想してしまいますが・・・順位は大きく変動するでしょうね。第1位の本命は「そのキスが欲しい」ではないでしょうか。
そんな中、この当時と変わらず「コバルトの季節の中で」は上位に食い込んでくるはずです。

ちなみに先輩方の多くは覚えていらっしゃるのでしょうが、この『ジュリーA面ベストテン』の前回放送では『B面ベストテン』も開催されています。
これがまた面白い!
いずれシングルB面曲のお題記事の際に書きたいと思っておりますので、気長にお待ちくださいませ。


では次回更新は、松戸公演のレポートです。8月の大宮以来のジュリー・・・待ち遠しかったです。

今回はYOKO君も含め音楽仲間(&その奥様2名)を誘い、総勢7名での参加。
この人数だとどんなふうにチケットが来るんだろう、と思っていたのですが、前後2列に3名、4名ずつで固まるパターンでした。
YOKO君が「DYNAMITEの真後ろ希望」と言っておりまして、どうやら彼は今セットリスト中で熱烈推しの「STEPPIN' STONES」のイントロで後ろから僕の首を絞めようと企んでいるらしい・・・なんとかその着席配置だけは避けたいです(笑)。
1階の、前過ぎず後ろ過ぎないセンターブロックということで、初めてのジュリーLIVEとなる面々を引き連れて参加するには絶好の席を頂けたと思います。
皆のビビッドな反応、感想が楽しみです。

50曲すべてのレポを書くとひと月かかってしまうことが分かっているので、何か別のスタイルで、とは考えていますがまだ具体的なことは決めていません。
こればかりは、実際終わってみないとね~。
何はともあれ、気合入れて行ってまいります!

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2017年10月18日 (水)

沢田研二 「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」

from『ROYAL STRAIGHT FLUSH Vol.3』
original released on single、1982

Royal3

1. どん底
2. きめてやる今夜
3. 晴れのちBLUE BOY
4. 背中まで45分
5. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
6. ”おまえにチェック・イン”
7. 麗人
8. ス・ト・リ・ッ・パ・-
9. TOKIO
10. サムライ
11. 勝手にしやがれ
12. あなたへの愛
---------------------

みなさま大絶賛のフォーラム公演の後、先の土日にジュリーの50周年記念ツアーは”プチ関西シリーズ”の奈良、三田の公演を終えました。
この三田公演の評判がまた大変良いのですな~。
ジュリーとお客さん双方がどんどん高め合い、暖め合う素晴らしい雰囲気のステージだったようで・・・僕は参加していないので実感は沸きませんが、小さな会場での名演は、昨年で言えば三木公演のような感じだったのでしょうか。フォーラムともども、体感されたみなさまを羨ましく思うばかりです。
今日の新潟はどうだったでしょうか。

さて、前回からスタートした今ツアーの”セットリストを振り返る”シリーズ。今日のお題は超・有名曲「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」です。
セットリストの佳境、この曲で一般ピープルのお客さんも完全に巻き込み、直後に怒涛の「愛まで待てない」→「ROCK'N ROLL MARCH」→「そのキスが欲しい」の流れへと繋がっていく・・・重要な位置に配された大ヒット・ナンバー。次回参加、松戸公演に誘っている音楽仲間達も絶対に知っている曲で、反応が楽しみです。
新規ファンの僕が最近になって知ったこの曲にまつわる逸話も多く、またまた大長文となるやもしれませんので枕もそこそこに・・・僭越ながら伝授!

①「6番目」の解釈、意味づけ・あれこれ

まずはこの摩訶不思議な楽曲タイトル「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」・・・「何故”6番目”なのか」についての諸説様々な解釈を考えてみたいと思います。

とは言っても「6番目」なるフレーズには「特に意味は無い」という事実、先輩方ならご存知ですよね。僕はそのことを今年になって勉強した『歌謡ベストテン』のラジオ音源でのジュリーの話で初めて知ったのでした。
しかしジュリーファン以外の一般のリスナーが、特によく知られているこの大ヒット・シングルのタイトルについて、当時から現在に至るまで「どういう意味だろう」と考えてみる、というのはごく自然なこと。数え切れないほどの解釈が世に存在するのでしょう。
まずは82年秋から冬にかけ『ザ・ベストテン』で毎週のようにこの曲を聴いていた若き日のDYNAMITE少年がどう考えていたのか、から書いていくことにします。

僕の場合は、「6番目」=「第六感」と推測しました。
確か曲と同時期、もしくはその少し前だったかもしれませんが、『霊感・ヤマカン・第六感』というテレビ番組を時々見ていて、そこから連想したのだと思います。
人間の基本感覚である「五感」、加えて選ばれし人だけが持つ超常能力としての「第六感」。後にジュリーがズバリのタイトルで98年にアルバム・タイトルとしたこの言葉は、「科学的な説明はできないけれど、感ずる当人にとっては何よりも確かな”誠”の感覚」といったところでしょうか。
今年のツアーではそのアルバム『第六感』から、名曲「永遠に」が歌われていますね。

幼い頃からSFやミステリーが大好きだった僕は、「特殊な超常能力の持ち主であるミュータント(エスパー)の、その能力故の孤独」を扱ったような小説もたくさん読んでいましたから、「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」とはそうした「特殊な人間」の苦悩(憂鬱)をテーマにした曲であろうとの解釈に至ったわけです。
例えば「ミュータントもの」で考えるなら、どんなに素敵な恋人であろうと相手の心が完全に読めてしまっては、そりゃユウウツにもなるわな、という。
その解釈は、テレビで観る妖しく神秘的なジュリーのルックスとも自然にリンクするものでした。

「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」なるタイトルについて僕のこの考え方は、おそらく多数派だったんじゃないかな。
それとは別の、僕などでは想像もできないような様々な少数派解釈もあったはずで、何と言っても有名な曲ですから、今に至るまで多岐多様な解釈の拡がりが継続し、世に存在しているのではないでしょうか。

その中のひとつ・・・ここでご紹介したいのは、「歌詞(タイトル)解釈」というのとは少し違いますが、某病院の仲○和正医師による「老人の鬱病」総説です。
これは以前、J先輩から教えて頂いていた論説で、仲○先生がが3年前に発表されたもの。本文こそ専門的で難しい内容ですが、冒頭にジュリーの「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」の紹介があり、歌詞の引用が登場します。
原文のまま書き出しますと


昔、沢田研二(ジュリー、66歳)の「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」(三浦徳子作詞)という歌がありました。家内の友人がジュリーのファンで毎年欠かさずコンサートに行ってるのですが、ジュリーが「75歳までコンサートやるぞ!皆いいか!」と言うと「オー!」とおばさん、おっさん皆で総立ちで歓声を上げるのだそうです。

という「掴み」に始まり


6番目のユ・ウ・ウ・ツ」の歌詞は次のようなもので、大うつ病(Major Depressive Disorder)の診断クライテリアのうち6つ満たします。5つ以上で「うつ」確定です。

「毎日僕ねむれない(不眠)やるせない(焦燥感)
毎日僕生きてない(無価値感)愛せない
あなたを抱いても 誰かを抱いても ユ・ウ・ウ・ツだよ(喜びの消失と憂鬱感)」
「もっと血を流してみたい 見知らぬナイフに傷つけば そこはmisty zone(自殺念慮)」

特に、「誰かを抱いても、ユ・ウ・ウ・ツだよ」こそは、鬱病の中核症状(core symptom)である2大症状、すなわち喜び・興味の消失(anhedonia)と憂鬱(depressed mood)とを含んでいます。
中核症状を忘れたら「誰かを抱いてもユウウツだよ」と歌ってみれば良いのです。だけど、この歌は、歌詞は鬱っぽいけどリズムが良くて歌うと元気になると思います。

「6番目」のタイトルをヒントと捉え、鍵となるフレーズを歌詞本編の中から6つ拾い上げる、という考察。正に理系ならではの着眼で、純文系の僕には到底思いもつかない斬新な切り口。面白いですね~。
そう、確かに暗い、危険な感覚の歌詞なのです。でも「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」という歌は歌うと元気になる・・・先生の仰る通りではないでしょうか。

こんなふうに、本当は「特に意味は無い」のだとしても、「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」は聴き手の数だけ自由に内容を紐解ける懐の深さがあります。まるで謎解きをしているかのように楽しめるミステリアスな名曲・・・その意味で数あるジュリー・シングルの中でも唯一無二、素晴らしい「大ヒット曲」と言えるでしょう。
みなさまは、それぞれどのような「6番目」の自由な解釈を思い浮かべるでしょうか。

②謎解きの楽しさは歌詞(タイトル)のみにあらず!


Yuuutu21

Yuuutu22


続いて楽曲全体の考察ですが、この名曲の「謎解き」の楽しさは歌詞(タイトル)にとどまらず、様々なポイントでミステリー感が満載!です。

最も基本的な「謎
」と言えば、あの印象的な「擬似・女声コーラス」ですね。
サビにも負けないインパクトがあって、幼い子供達の琴線にも引っかかる重要なパートですが、じゃあその声が実際何と歌っているか、という。

僕自身は今でこそ「I don't need your love at all♪」の認識は持っていますが、いつ頃「正解」を把握したかは我が事ながら不明。確かなのはこの曲が大ヒットしていた当時はまったく分かっていなかった、と。
謎は謎のまま残しておいて、テレビのジュリーを観ながらあのコーラスを楽しんでいました。
今でもハッキリ覚えていますが、当時DYNAMITE少年が通学の自転車に乗りながら口ずさむこの曲は必ずコーラス部で、言葉の意味などまるで意識せずに

あどみちゃ、らばほ~、らばほ~、らばほ~
あどみちゃ、らばほ~、らばほ~ほ~、hoo!


と歌っていましたねぇ。
って、計算してみたら僕は「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」が流行っている頃にはもう高校1年生になってるぞ・・・。そんなアホだったのか僕は(笑)。
英語の成績は悪くはなかった筈ですが・・・まぁ、学校の勉強と人生現場の実践とはまた全然別の話、ってことなのでしょうな~(←言い訳)。

続いて「音」の面。これね、「この曲のオリジナル・キーは?」という大きな謎があるのです。
82年にリリースされたオリジナル音源のキーは、「ホ短調とへ短調の間」、つまり一番最初の和音で言うと「ミ・ソ・シ」なのか「ファ・ラ♭・ド」なのかが曖昧。この曲は最初から最後まで「鍵盤には存在しない」微妙にズレた音が鳴り続けているんですよ。こういうマスタリングって、ピッチ・コントロールのマスターテープ録音の時代には時折あるんですが、絶対音感をお持ちの方々にはどんなふうに聴こえるのかな。
要は、楽器と歌すべてのトラックをレコーディングした後にピッチをいじってミックスダウンしているわけですが、元がヘ短調の録音であればピッチを下げて(テンポを遅くして)、ホ短調の録音であればピッチを上げて(テンポを速くして)処理しているということ。

手元には、同い年の男性ジュリーファンの友人がコピーしてくれたこの曲の貴重なバンドスコアがあり、そこでは♭4つのヘ短調(Fm)での採譜となっています。


Yuuutu


でも僕は、この曲は元々ホ短調(Em)でレコーディングされていた、と解きます。
根拠はジュリーのヴォーカル。よ~く聴き込むと、この曲のジュリーは当時の地声より少しだけ高い、細い声で歌っているように感じませんか?
つまり、一度ホ短調で完成したテイクがあり、その後から(おそらく加瀬さんあたりの)「もうちょっとテンポを速くした方がいいんじゃない?」との提言を受け、ピッチを上げてミックスダウン作業に移行した、という推測ですね。
この謎解き、僕は自信ありますよ。ですので以下の考察はすべて、参考スコアとは違うホ短調のコード表記とさせて頂きます。

SFやミステリー小説は、物語導入からしばらくは一見関連性の無いいくつかのエピソードが描かれ、それが物語が進むに連れて密接に関わり絡み合い「謎」が一気に収束していく・・・そんな醍醐味があります。
「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」で西平彰さんが作り上げた楽曲構成は正にそれ。Aメロ、Bメロ、そしてサビ。それぞれ別の曲から持ってきたようなヴァースが見事に絡み合い進行していくディープ・インパクトは、ジュリー・シングルの中でも抜群の構成力を誇ります。
次チャプターでラジオでのジュリーの言葉を借りて書きますが、この「新曲」のキャッチ・フレーズは「クラシカル・ニューウェイヴ」。その心は、「新しい魅力もあれば、古い(懐かしい)魅力もある」曲なのだと。
言われてみますとAメロは

泣きたいときにはいつも
Em7        Bm7          Am7   Bm7

聖母のほほえみで・・・ほら
Em7    Bm7        Am7    D

レースのハンカチーフ 僕に差し出すよ
Am                           Em

できすぎた  恋人さ ♪
G         D(onF#)  A


(う~ん、こりゃ主人公だけじゃなくて相手の恋人もテレパスという状況でしょうか笑)

コード進行も歌メロも、懐かしき歌謡曲黄金時代・・・ジュリーで言えば阿久=大野時代の雰囲気。ミディアム・テンポの艶やかなヒット性を感じます。
それがBメロになると突然イ長調に転調して(ホ短調でも違和感の無い「A→G」を一度経て、「あふれすぎて♪」の「D」がサブ・ドミナント、「いるよ♪」の「A」でようやくトニックという仕組みですから、ここは転調に気づかず聴いている人も多いと思います)「ビート」感がハッキリと出てきます。
続く強烈なサビ。このサビに繋ぐ(ホ短調に舞い戻る)瞬間の進行がまず斬新過ぎます。

この部屋は暖かすぎる まるで safety zone ♪
A             G           D            A

この1行、最初「A」と最後の「A」の鳴りが、同じ和音なのに全然違う・・・こんな戻り方、聴いたことないですよ(西平さんのメロディー展開の素晴らしさ故です)。
しかもジュリーの「safety zone♪」があまりに妖しく美しく、盛り上げ感が凄い。「さぁ、サビ行くぞ!」と煽られた聴き手はワケもわからずサビの「ハッ!ハッ!ハッ!」までグ~ッとそのまま引っ張り込まれるという・・・ミステリー・パズルの完璧な収束ですね。

このシングル盤、ジュリーは自作曲をA面にするつもりでいたのを(「ロマンティックはご一緒に」のことでしょうね)、西平さんの「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」と入れ替えられた・・・「彰に負けた」と当時ジュリーがよく話していた、と先輩から教えて頂いたことがありますが、これほどの曲が出来たからにはジュリーも「これはイケる!」と納得のA面リリースだったのではないでしょうか。

で、先程レコーディング後のテンポ・アップの話をしましたが、Aメロについては元々のテンポ(キー)がしっくりきて、それで録音したと思うんですよ。
出来上がってみたらあまりにBメロとサビのビートの説得力が凄いので、それを生かすために「全体のピッチを上げる」アイデアが生まれたんじゃないかなぁ。

長くなってきましたが(汗)、蛇足ながら、もうひとつだけこの曲の「謎」の話を。
これは僕の長年の「うっかり」で、実はこの記事を書き始めてからようやく氷解したという、無知なヒヨッコならではのくだらない「謎」なんですが・・・。

「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」って『ROYAL STRAIGHT FLUSH Vol.3』の5曲目に収録されているじゃないですか。僕は「せっかくの特別な編集盤なんだから、「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」を6曲目にする気の効かせ方ができなかったのかいな」などと考えていました。
今回の記事で冒頭に収録曲目を書いていて・・・「あっ、これ”新しい”曲順に並んでるんだ!」と。
気づくのが遅い、話にならんぞDYNAMITE!
このルールはポリドール期の『ROYAL STRAIGHT FLUSH』3枚の中で『3』だけのものですから、今まで完全に見落としていました(恥)。
それでラストが「あなたへの愛」なんですね・・・。

③『歌謡ベストテン』よりジュリー・インタビュー

ここでは、僕が今年勉強したラジオ音源の中から、シングル「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」リリース直後の『コーセー・歌謡ベストテン』での話をご紹介です。

当時テレビはベストテン形式の番組全盛期ですが、同形式のラジオ番組もあったんですね。『歌謡ベストテン』・・・恥ずかしながら知りませんでした。
「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」をリリースしたばかりのジュリーがゲスト出演し、色々とお話をしてくれた回のこの音源を、僕は最近になって勉強したばかり。
全編書き起こしてみましょう。



- ツアーが始まりまして、今日静岡なんですけれども、出発前の大変慌ただしい時にお邪魔をしまして、どうもすみません。

J 「いえいえ」


- 新曲の方が・・・今年最後のシングル盤になりますね?

J 「たぶんそうだと思いますね。まぁこの調子でいきますと、(年内この曲で)持つと思います(笑)」


- 「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」、今大ヒット中で『歌謡ベストテン』では今週第7位なんです。

J 「ああそうですか。ありがとうございます」


- この曲を初めて聴いた時、ものすごく印象的で、不思議な世界に惹き込まれるみたいな感じがしたんですけど。パンクっぽい、と言うのか・・・(本人としては)どういう曲なんですか?

J 「まぁね~、パンクっぽい雰囲気もあるし、ファシズム的な匂いもしないでもないし、クラシカルな面もあるし、ってんで・・・スタッフなんかも相談して、キャッチフレーズは「クラシカル・ニューウェーヴ」っていうね。古い部分もあって新しい部分もあって、ってそういう感じの曲にしたつもりなんですけどね」


- ”6番目”ということにはあまり意味は無いそうですね。

J 「タイトルを決める時に結構苦労したんですね。みんなで徹夜で考えて朝までかかってね。
まぁ”6番目”ってすると”何で6番目なんですか?”って言われるんじゃないかとかね、その時のために答を用意しておかないといけないけれども。でも、なんとなく映画のタイトルみたいでね。『7年目の浮気』とか、そういう映画ありましたよね?だからそういう感じで、”何か意味があるのかな?”と思ってみんなが考えてくれるんじゃないか、とか言ってね(笑)。結局これになったんですけども」


- それでは、「クラシカル・ニューウェーヴ」の「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」です。

(「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」、フルサイズでオンエア)

- さて、いま秋のコンサート・ツアー中ということで、今日の静岡から始まりまして、相模原、千葉、豊田、四日市、松山、久留米とその他14箇所、夏にず~っと(ツアーを)まわっていらして、そこをまわれなかった所をカバーするということで。

J 「そうですね」


- じゃあ、内容的にはほとんど同じ?

J 「ほとんど同じで、あと新曲が入って、中身が少し・・・一部変わる、ということですね」


- (ツアーの)タイトルも、『A WONDERFUL TIME パート2』という・・・。やっぱりあの、『パート1』を終えて、反省の意味もこめてパート2はこうしたいんだ、みたいなところはあります?

J 「そうですね~。(パート1」は)結構喋る時間が長かったんですね。30分か・・・ちょっとハメ外すと40分くらい喋ってて。評論家のかたに「ちょっとダレ気味だった」とか書かれてね。(今回は)短くしようと思いまして、喋りを(笑)」


- 今年の予定としては、あと映画をやる、というお話も来ているようですね。それから、アルバムも12月頃には出る予定だということですけれども、今年はもう沢田さんが頭からずっと連続ヒットで、とてもいい年だったと思うんですけれども、やはり歌謡界はもう10月ともなりますと(1年の)終わりというのが近づいてきましたから・・・振り返ってみてどうですか?

J 「まぁあの~、今年は歌の方ではタイガース(同窓会)があったでしょう。で、「色つきの女でいてくれよ」ってのが、これがもう当たったもんですからね~。沢田研二個人としては、「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」でその(売上)枚数を抜かないと(笑)。なんか、タイガースに賞を持っていかれそうな感じですから(笑)。
ですから、なんとか頑張って・・・(賞については)岩崎宏美さんもいるし、細川たかしさんもいるし、聖子ちゃん、マッチ、トシちゃんと・・・この中に入って何となく6番目あたりにつけてるな、って感じなんでね(笑)。これではイカンので。
なんとかもうちょっと頑張りたいと思ってます」


- この曲(「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」)はまだ出たばっかりですからね。まだまだずっと上位までいきそうですから、頑張って下さい。今日はどうもありがとうございました。

J 「ありがとうございました」



なるほど、曲先の作業で作詞は三浦さんだけど、タイトルについてはレコーディングの最後の最後まで正式決定していなかったわけですね。

一般のリスナーはそんなことはないでしょうけど、「今週第7位です」に対するジュリーの「ああそうですか」に、「まだ7位なのか~」というニュアンスが混ざっているのは、ジュリーファンなら分かっちゃいますよね~。
いつも思うことですが、ジュリーって正直過ぎるくらいにその時の気持ちが声のトーンに表れる人です。そこがイイんですね。だから、ジュリーが嬉しいとこちらも嬉しい、悔しいとこちらも悔しい・・・そんな不思議な気持ちの疎通があって、長いファンの先輩方はずっとそうしてきたんだなぁ、と。

「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」はこのインタビューでも語られた通り、82年末の賞レースに向けて「この曲で勝負!」的なリリースだったようです。「大ヒット」と言って良い曲なのでしょうけど、その意味ではジュリーの目指した特等賞には惜しくも届かず、という結果でした。
ただ、そこから30数年、リリース時のキャッチ・フレーズ「クラシカル・ニューウェーブ」がまったく色褪せないまま今もステージで歌い続けられていること、それが本当に素晴らしい。今この曲をひょんなことで聴いて、「こんな曲を歌いたい!」と考える若いアイドル、歌手は多いんじゃないかな。
時代が変わっても、楽曲の鮮度は変わらないまま。

数あるヒット曲の中でもLIVEセットリスト入り率の特に高い1曲で、『ジュリー祭り』から僅か9年のキャリアの僕ですら、もうオリジナル音源よりもLIVEヴァージョンのイメージの方が強くなってきているシングルのひとつ。
先輩方はそれこそリリースから30数年この曲の生歌を聴き続けていらっしゃるわけですから、たまにCDでこの曲を聴いた時に「あれっ、6番目のユ・ウ・ウ・ツって最後フェイドアウトだったんだ」と再確認、なんてこともあったりするんじゃないですか?

ともあれ次参加の松戸公演では、仲間達の前でビシッ!と最後の「ハイ!」を合わせてきますよ~。
チケット、早く来い来い!


それでは、オマケです!
今日は、『ミスキャスト』ツアーのパンフレットから、まだ過去に添付していないジュリーのショットです。
このツアー・パンフレットは、写真撮影がちょうど「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」がヒットしていた時期(或いはリリース直前)と思われ、アルバム『ミスキャスト』より少し前のジュリー、というイメージのショットが多いです。


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次回のお題は「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」です。
この曲については、まだ僕の知らない事実や逸話がたくさんありそう。先輩方に色々とコメントで教えて頂かなければならない内容の考察になりそうですが、ひとまず自分のベストを尽くして書いてみます。

あと、前回記事でちょっと触れた『NISSAN ミッドナイト・ステーション』の特別企画『ジュリーA面ベストテン』についてお2人の先輩から「興味津々」「懐かしい」とのお言葉を頂いておりますので、「シングルA面」というそれだけにかこつけて、ラジオ音源コーナーのチャプターも設けます(僕自身の勉強のためにも)。
ただし、なにせ『NISSAN ミッドナイト・ステーション』は60分番組です。一気に全部書くと大変な文量になってしまいますから、次回「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」、次々回「STEPPIN' STONES」と2つのお題に分けて書いていくことにいたします。どうぞお楽しみに!

今週は肌寒い日が続いています。またか、とお思いでしょうが実は月曜から少し喉の調子が・・・(汗)。
みなさまも油断なさいませぬよう。

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2017年10月14日 (土)

沢田研二 「愛の逃亡者」

from『愛の逃亡者』、1974

Fugitive

1. 愛の逃亡者/THE FUGITIVE
2. ゴー・スージー・ゴー/GO SUSY GO
3. ウォーキング・イン・ザ・シティ/WALKING IN THE CITY
4. サタデー・ナイト/SATURDAY NIGHT
5. 悪夢の銀行強盗/RUN WITH THE DEVIL
6. マンデー・モーニング/MONDAY MORNING
7. 恋のジューク・ボックス/JUKE BOX JIVE
8. 十代のロックンロール/WAY BACK IN THE FIFTIES
9. 傷心の日々/NOTHING BUT A HEARTACHE
10. アイ・ウォズ・ボーン・ト・ラヴ・ユー/I WAS BORN TO LOVE YOU
11. L.A. ウーマン/L. A. WOMAN
12. キャンディー/CANDY

--------------------

50周年ツアーも一昨日の東京国際フォーラム公演を終え(タイガースや沢田組メンバーを客席に迎えての素晴らしいステージだったと聞いています。参加されたみなさまが羨ましい!)、今日が奈良。長いツアーのほぼ折り返し地点というところでしょうか。
例年であれば「もう全国ツアーの公演会場も残すところ僅か、という季節なのですが今回はまだまだ続きます。ジュリー達に疲れが無い筈はありませんが、元気いっぱいのパフォーマンスが各地で続いているようで、本当に頼もしいですね。

さて今日からはその50周年記念LIVEの”セットリストを振り返る”シリーズとして、僕の次回参加の松戸公演(チケットまだかいな~。発送が待ち遠しいです)までに5曲を採り上げ考察記事を書いてまいります。
本当は前回更新から間髪入れず開始する予定だったんですけど、いつもコメントをくださるねこ仮面様が、奈良公演までセットリストのネタバレ我慢を続けていらっしゃるようで(素晴らしき鋼鉄の意志。ツアー初日から3ケ月のネタバレ我慢など僕には到底無理です)、記事本文は読まずとも、うっかり僕のブログを開いてレアな楽曲タイトルが目に飛び込んできたりするとあまりに申し訳ない・・・ということで、今回のこのシリーズ第1弾更新は奈良公演の当日に、と待ち構えていた次第。

本日、シリーズ第1弾のお題は「愛の逃亡者」です。
神席で観たばかりの(自慢汗)今年のジュリーのステージを思い浮かべながら・・・張り切って伝授!


①「完璧な音」ゆえの現地セールス苦戦?


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以前ピーファンの先輩にお借りした75年お正月LIVE『新春歌いぞめ』パンフレットより。
「愛の逃亡者」が最新シングル、というステージですね。


「パリは良かった、ロンドンはダメだった」
74年末から勇躍開始された海外戦略、フランス、イギリス双方の現地ファースト・シングル「モナ・ムール・ジュ・ヴィアン・ドゥ・ブ・ドゥ・モンド」「愛の逃亡者」のセールスについてジュリーは近年も(今年の大宮公演でも)よくそんな話をしてくれます。
2曲とも素晴らしい名曲ですが、どういうわけでセールスにそれほどの差がついたのでしょうか。

最後のチャプターで詳しく書きますが、僕は今年になって『愛をもとめて』のラジオ音源を勉強し、イギリスとフランスでのレコーディング手法の違い、ジュリー自身の手応えの有無を、2曲それぞれについて今さらのように実感しているところです。
フルアルバム12曲ぶんを一気に録ったロンドンと、とりあえず第1弾シングルに絞ったパリとではそりゃあ単純比較はできません。でもジュリーのラジオでの話を聞くと、双方の現地プロデュースに両極とも言える大きな違いがあったことが分かります。

まず、「歌入れ終わったらもう大丈夫。あとは完璧に仕上げておくから任せて!」というイギリスはビッカートン&ワディントンのポップ職人幼馴染コンビ。
ジュリーの発音についても「普段喋ってる言葉じゃないんだから」とフォロー発言すらあった・・・というのは以前先輩から教えて頂いた逸話でした。
これまで何度か書いてきた通り、ビッカートン&ワディントンは驚異のポップ性を持つ名コンビで、ジュリーのアルバムについても「序盤・中盤・終盤隙が無い」音作りで完璧、極上の名盤を作り上げてくれました。
もちろんジュリーの歌だって最高に素晴らしい。ただ、僕レベルでは分からないのですが、完璧な音ゆえに「現地で通用する発音」として見るとジュリーの「歌」の方には若干ハンデがあったかもしれません。
アルバム収録曲で言うと、例えば「傷心の日々」での「everyday」「teardrop」などの単語は(あくまで発音については)僕でも「んん?」という違和感はあって、そのあたりが「愛の逃亡者」についても現地のリスナーにハッキリと持たれたりしたのかなぁ、と。

対して「一番の土台(歌)がキチンとしていないとダメ。話はそれからだ」というパリはフランス・ポリドールのピエールさん。
実は、このロンドン、パリのプロデュース手法でどちらが個人的に肌が合うかと言うと、僕はビッカートン&ワディントンの方なんですね。
これはおそらく加瀬さんもそうだったと思います。加瀬さんには「ジュリーという天賦の素材をプロデューサーの色に染める。そこでジュリーがどう映えるかを楽しむ」という感覚はあった筈です。その点、「愛の逃亡者」の仕上がりには満足していたんじゃないかな。

言わば、「音楽人気質」のプロデュースと「ビジネス気質」のプロデュースの違い。
ジュリーは歌手なんだから前者の方が良いだろう、とは単純にいかないところがまた音楽の面白さ。タイガース時代「時計の針のよう」と言われたと聞く「きっちり、しっかり」派のジュリーにとって、パリでのビジネス気質のプロデュース・・・徹底的にしごかれる、それに対してなにくそと徹底的に努力する、というレコーディングの方が性に合っていて、結果それがイギリスとパリとのセールスに素直に反映されたのかもしれません。

とは言え、僕ら日本人が「ジュリーの英語曲」として聴く限りは「愛の逃亡者」は大変な名曲。何よりジュリーが今も歌い続けてくれている、というのが大きい。
時間を超えて、当時のセールス状況に惑わされずに聴くジュリー・シングル。今年は「CHANCE」もそうでしたが、「愛の逃亡者」も僕などは初めて生体感してようやく「いや、これは素晴らしい曲だ」と大興奮でした。新規ファンにはそういう人は多いと思います。
次のチャプターでは、僕が今年改めて頭に叩き込んだこの曲の魅力について紐解いていきましょう。

②これほどの名曲!再確認させられたセトリ入り


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今日の参考スコア、『YOUNG SONG』75年1月号より


今ツアーでは、「時の過ぎゆくままに」→「勝手にしやがれ」という超特大ヒット曲連発の直後に配されたこの曲。後に続くのがCO-CoLOコーナーというのがまた渋くて、セトリ順を完全に覚えこんだ状態で臨む今後参加会場では、「待ち構える」感覚で楽しみにしている僕にとっての「LIVEレア曲」です。
考えてみると『ジュリー祭り』から9年、僕はアルバム『愛の逃亡者』収録曲を今年初めて生体感したことになります(「キャンディー」を歌った2009年の『きめてやる今夜』は無念の不参加でした)。

洋楽に詳しいつもりでいながら、ビッカートン&ワディントンの魅力を初めて知ったのも2005年のポリドール再発シリーズで購入したこのアルバムで、ジュリーの名盤の中でも格別に好きな1枚です。
ただし、実はタイトルチューンにしてシングルの「愛の逃亡者」は今まで軽視していました。イギリスのセールス戦略、これじゃなくてアルバムの他収録曲にシングル・カットの有力候補があったのでは、みたいなことも生意気に以前の記事で書いたこともあります。
それが今年の初生歌、初生演奏で見事ヤラれたという。素晴らしい存在感を持つ曲ですよ!

その上で改めて74年のレコーディング音源を聴くと、ジュリーの歌はもちろん、鳴っているすべての音が心地よいんですよね。
まずはギター。左右に分けてミックスされたトラックはいずれもバッキングに徹し、ワウを効かせて楽曲全体の輪郭を作り上げます(今年のツアーで柴山さんもワウを使用しています)。

あとはベース、ドラムスの基本隊に加えてブラス、ストリングス、そして何より素晴らしいのが鍵盤パート。この曲はキーボードが2トラックですが、2つの異なる音色が入れ替わり立ち替わり、かと思いきやユニゾンしたり・・・さすがはビッカートン&ワディントン御大のプロデュース、本当に緻密かつ耳に優しいです。
そして「あぁ、泰輝さんも確かにこのアレンジ、この通りの音色で演奏していたなぁ」と、今ツアーで聴いたばかりのこの曲に思いを馳せるのです。泰輝さんのキーボード、最高にカッコ良かったですからね~。
松戸では再度チェックしてきます!

ジュリーのヴォーカルはガ~ッと一気に録った感じなのでしょうか。僕はこのアルバムのヴォーカルはとても好きですが(良い意味で「歌わされている」時のジュリーになにやら「歌の神」が降臨するパターンのヴォーカル・・・個人的には「ウォーキング・イン・ザ・シティー」に最もそれが表れているように思います)、ジュリー本人には「もっと良くなったかもしれない」といった心残りは多少あったのではないでしょうか。
これは『愛をもとめて』でのロンドン報告とパリ報告でのジュリーのテンションの違いから感じること。
いや、ロンドン報告は「いつものジュリー」なんですよ。ただ、パリ報告の方が尋常でなくテンションが高いんですね。まだいずれもセールスの結果が出る前の放送ですから、それはジュリーの率直な手応えを反映していると考えて良いでしょう。パリは「やりきった」、ロンドンは「もう少し頑張れたんじゃないか」と。
今も変わらず、当時からジュリーは「話す」ことについては本当に正直で、気持ちがそのまま声に表れる人なんだなぁと思ったり。

でも、先述したように・・・だからこそ作品化された後もその時の曲達をステージで歌い続けているジュリーに特別さ、格別さ、突出性を感じます。
アルバム『愛の逃亡者』なら、長い歌人生の中でLIVEセットリスト入り率の高い「キャンディー」そしてシングル曲「愛の逃亡者」は正にその代表格でしょう。
あと、アルバムではさほど目立たない(←個人的な感想です)「ゴー・スージー・ゴー」のLIVEヴァージョンを聴いた時の衝撃たるや。確か2009年、先輩に聴かせて貰った比叡山のテイクだったかな・・・レコーディング音源の時からあっという間に進化を遂げています。きっと発音も、もちろんエモーションもね。
僕はジュリーの「努力家」の面がとても好きです。あれほどの才能、輝きを持っていながら努力家ってのが本当にイイですね~。元々が素晴らしいので、努力の成果の表れ方も凄いですし。
イギリス現地では思うような結果は出なかったかもしれませんが、今年のツアーで「愛の逃亡者」を聴いて、ジュリーのそんな資質を観た気がします。

ジュリー・ナンバーに「裏打ち」のレゲエ・スタイルはさほど多くはありませんから、その意味でも「愛の逃亡者」は貴重な1曲。
似通ったコンセプトやリズムの曲を連続で繰り出すセトリ順を好むジュリー・・・レゲエ・ビートに必要不可欠なベースについても、今は依知川さんもバンド復帰してくれましたし、いつか「愛の逃亡者」→「EDEN」→「海に還るべき・だろう」なんていう夢のようなセットリストを体感してみたいものです。


③『愛をもとめて』より”イギリスの報告”編

最後に、ジュリー・ラジオ音源のコーナーです。
このコーナーは僕自身の勉強の意味もあって、参考資料として最近の考察記事ではよく採り上げているんですが、多くの先輩方にとっては「昔からよく知っている話題のおさらい」という感じになるのかなぁ?

今日はもちろん、75年(たぶん2月初めの放送)の『愛をもとめて』からお届けいたします。
現地でリリースされた曲のプロモーション遠征から帰ってきたばかりのジュリーのお話です(この次の放送回が、以前「マ・ゲイシャ・ドゥ・フランス」の記事で書いた「パリの報告」という順序になります)。


イギリスでは、ご存知「愛の逃亡者」・・・もちろん英語版でございますが、向こうでは正式に「THE FUGITIVE KIND」というタイトルになっておりましてですね。B面が日本では「I WAS BORN TO LOVE YOU」でしたけれども向こうでは「NOTHING BUT A HEARTACHE」というのが入っております。

「愛の逃亡者」は日本盤では併記の英語タイトルが単に「THE FUGITIVE」ですね。そこがまず違う、と。
また、日本盤とイギリス盤のB面収録曲の違いは以前先輩にコメントでご指摘頂いたことがあり(僕はその時まで同じカップリングだと思い込んでいました)そこはもう知識として持っていたんですが、「愛の逃亡者」と「傷心の日々」の組み合わせって、相当攻めていますね。イギリスではまず「ロック」に拘る、という戦略を加瀬さん達スタッフも持っていたのではないでしょうか。

それはさておき、続いて僕がこのラジオ音源を聞くまで知らなかった話が飛び出します。


で、「FUGITIVE KIND」のミキシングね、日本で出たやつは「あっ!」「うっ!」っていう掛け声が入ってるでしょ?あれが(イギリス盤シングルでは)無くなってましてね。

これ、何故なんでしょうねぇ。あの掛け声は間違いなく「愛の逃亡者」の肝だと思うし、現地でもあった方が良かったんじゃないかと思うのですが・・・。
これはビッカートンさんの好みの問題なのかな。声を余計に入れるよりも、後からオーヴァーダブした豪華なブラスやストリングスにリスナーの耳が行くよう仕上げたい、という狙いだったとするならそれはそれで分かるような気もします。


そのレコードのプロモートのために行ったわけですが、1月26日の日曜日ですかな・・・その日はロンドンに泊まりまして、月曜日にはロンドン以外のおもな都市を歩いたんです。歩いたって言うか、要するにラジオ局を回ったんですね。

ジュリーの話によれば、イギリスでは国営放送(BBC)の支所がローカル局として各都市にある、加えて民放もある、それを順繰りに訪ねていったようです。
各地を歩き回った中でジュリーが特に挙げて話をしてくれた町は、サウスポート。


リバプール近くの小さな町なんですけど、(ジュリーが訪れる)一週間くらい前から、ケンジ・サワダという日本で有名な歌手が来ます、というチラシがあってね。結構女の子達もいっぱい集まってて、その中にね、去年の夏頃までかな、原宿に住んでたっていう女の子がいてね。
裏口から入って控室みたいなところにちょっと待機してたら、「いらっしゃいませ」なんてこう日本語で言われてね。「あっ?」てね。話を聞いてみたら、「私、一番好きなのジュリーさんね。その次マチャアキ、その次ににしきのあきらさん」ってね、そういう女の子もいたんですが。


いやぁ、日本じゃ「控室でジュリーとお話する」なんてことは夢物語ですからね。当時ラジオを聞いていらした先輩方は、「ムキ~!」となったんじゃないですか?

イギリスでよく尋ねられたのは、左手の薬指に指輪をしていたので「結婚してるのか?」とか、「日本でそんなに有名なのに、何故またこっちでやるのか?」というようなことだったとか。
あと、「君はイギリスの歌手で言うと誰なんだ?デヴィッド・○○か?」(○○の部分が聴き取れません涙。「ボウイ」とは言ってないように思いますが)と言われて、「いや、ミック・ジャガーだ」と答えたらしいですよ~。
なるほど、「日本のミック・ジャガー」がイギリスでシングル・リリースとなったら、B面は「アイ・ウォズ・ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」よりも「傷心の日々」の方がふさわしいですか。納得です。

そしてジュリーの話は現地のセールス状況に。


なかなかこれ難しいんですね。ってのは、レコード屋さん自体が買取でね、返品できない、そういう日本なんかとは違う販売システムで、BBCっていう国営放送のポピュラー音楽ベスト50位以内に入らないと店頭には置かないっていう・・・損したくないっていうね。

この話は聞いたことあるなぁ。いつか何処かのジュリーのMCで聞いたんだっけなぁ?思い出せません。
ただこのシステムはラジオからじわじわと火が点いてヒットに繋がるパターンも多いらしくて、日本のように(シングルで出した曲が)1ケ月経ってダメだったらその後もずっとダメ、ということは言えないみたい。


だからプロデューサーの人も言ってましたけど、10週間はかかるだろうと。2ケ月経ってやっとこう、どうなのかな、っていう状態が掴めると。まぁ、(まだ)分かんないですね、とにかく。あとは成りゆきに任せるしかないし。

このあたりのジュリーの発言が、次放送回のパリ編とずいぶん違うんです。
「モナ・ムール・ジュ・ヴィアン・ドゥ・ブ・ドゥ・モンド」については「楽しみ楽しみ!」みたいなことを、セールスの結果が出る前からジュリーは盛り上がって話しているわけですから、やっぱりこれはジュリー本人のレコーディングの手応えが違ったのでしょう。
それでもイギリス戦略についてジュリーは最後に


自分自身への戒めと言うか、教訓を授かるっていうことが多いしね。勉強になるだけでもいい、と思っている次第であります。

今年のツアーで自らの歌手生活50年を振り返り、「良いことだけでなく悪いことも糧としてきた」といった内容のMCを時々聞かせてくれているジュリー。
イギリスの「愛の逃亡者」も、フランスの「モナ・ムール・ジュ・ヴィアン・ドゥ・ブ・ドゥ・モンド」も同じように血肉としてきた、ということでしょうか。

まぁ大宮のMCではロンドンの話は数秒、パリの話は30分近く(あくまで僕の体感ですが)、と双方にかなりの差が出てましたけどね(笑)。


それでは、オマケです!
今日は、冒頭にも1枚添付しました75年『新春歌いぞめ』パンフレットから数ページぶんをどうぞ~。


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このLIVEに参加されていた先輩方は、衣装やセトリを覚えていらっしゃるのかな?
ステージの様子は、こちらは福岡の先輩からお預かりしている資料『ヤング』75年2月号で(1ページだけの記事ですが)窺うことができます。


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さて、次回更新では僭越ながら、「一般ピープルもよくご存知」な超有名曲「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」の考察に挑戦させて頂きます。
もうとっくに書き終えていても不思議のない曲ですけど、ここまで記事お題に採り上げるタイミングを逃していたのが逆に幸い・・・これまた今年になって勉強したラジオ音源で初めて知ったあれやこれやの逸話がとても多いシングル曲なのです。
ちょっと前までは『NISSANミッドナイト・ステーション』で開催されていた『ジュリーA面ベストテン』という企画放送回をご紹介するつもりでいましたが予定を変更。
ズバリ「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」リリース直後に放送された『歌謡ベストテン』でのジュリーのインタビュー音源を採り上げつつ、この名曲の妖しげな魅力を僕なりに紐解いていきたいと考えています。


去年の今頃は痔核切除の術後の激痛にのたうち回っていたので、「秋をしみじみ実感する」余裕など無かったですが、今年はなんとか元気に過ごせています。
こちら関東は昨日の雨で急激に気温が下がり、まぁ涼しくなってよく眠れるのは嬉しいんですけど、体調管理には特に気を遣わなければいけない季節(僕は季節の変わり目によく風邪をひくので)となりました。
みなさまもどうぞお気をつけて!

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2017年10月 4日 (水)

沢田研二 「Aurora」

from『俺たち最高』、2006

Oretatisaikou

1. 涙のhappy new year
2. 俺たち最高
3. Caress
4. 勇気凛々
5. 桜舞う
6. weeping swallow
7. 遠い夏
8. now here man
9. Aurora
10. 未来地図

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はじめに。
またしてもロック・レジェンドの訃報・・・トム・ペティの突然の旅立ちにはただただ驚き、肩を落とすばかりです。
過剰な装飾音を嫌い、土の匂いがするロックを貫いた偉大なシンガーであり、プレイヤーでした。訃報を受けてのボブ・ディランのコメントが本当に切ないです。
天国でジョージ・ハリスンやロイ・オービソンとも再会を果たし、早速バリバリ活躍しているんだ、と今はそう思うことしかできません。ご冥福をお祈りいたします・・・。

☆    ☆    ☆

10月です。すっかり秋ですな~。

ツアーが始まってから記事更新の頻度が落ちているので、今月は頑張りますよ!せっせと更新を頑張っているうちに、僕の次回参加会場・松戸公演が自然に近づいてくる、という目論みです。
で、恒例の”セットリストを振り返る”シリーズに入る前に、今日はアルバム『俺たち最高』から1曲採り上げておきたいと思います。

枕もそこそこに・・・なるべくタイトな文量で、とは考えていますがどうなりますやら。
依知川さんの作曲作品で、「Aurora」伝授です!


①応援!BARAKA結成20周年記念公演

まずここでは依知川さん作曲作品のお題にあやかり、依知川さん率いるプログレッシヴ・バンド、BARAKA(ジャンルで括るにはあまりにも多彩なクオリティーを誇るバンドですが、ひとまず「プログレ」とするのが最も適切でしょう)について書かせて頂きます。

僕は今年の5月、依知川さんと浅野孝巳さん(ゴダイゴのギタリスト)のユニット「あさいち」のLIVEに参加、そこでたまたま同席させて頂いたBARAKA後援会の男性お2人とお友達になり、BARAKAが今年結成20周年を迎えること、そのメモリアルLIVEとして来たる11月2日の東京国際フォーラムC公演が決定しており、「なんとか会場満員のお客さんでお祝いしたい」と後援会一丸となって集客を頑張っていらっしゃることを知りました。

僕自身は11・2への参加は仕事的に厳しい状況なのですが、お2人の熱意に打たれメモリアルLIVE成功祈願と、ジュリーファンへの呼びかけをお約束し、これまで何度か記事中にてこの件に触れてきました。
いよいよ公演まで残すところ1ケ月を切ったというタイミングですので、今日は改めての告知です!


Baraka3

BARAKAを未体感のジュリーファンのみなさまが気になるのは、「そもそもBARAKAってどんなバンドなの?」ということかと思います。
僕は先の9月1日、BARAKAの埼玉・鶴ヶ島公演を観てきましたので、その時の感想を交えて僭越ながらここで解説させて頂きましょう。

楽曲はインストゥルメンタル(歌無し)が中心です。
20年間のキャリアで多数のオリジナルCDをリリースしてきたBARAKA。その中から、会場で再会した後援会のM様お勧めの1枚を購入してみたところ、歌入りのオリジナル曲もありフォーラムではそうした曲も披露されるとは思いますが、鶴ヶ島ではアンコールの2曲(ビートルズとジミヘンのカバー)を除きセットリスト本割はすべてインストでした。

プログレというのは大作志向が強く、BARAKAのオリジナル曲も例外ではありません。特に鶴ヶ島セトリ本割ラストの曲は超大作で、40~50分くらいの演奏時間だったでしょうか。ただし長時間とは言っても、楽章形式とも言うべき無数のアイデアを凝縮した楽曲構成は、パートの見せ場が矢継ぎ早に繰り出されるスリリングな「音の物語性」重視でまったく飽きさせません。
美味しいメロディーやテクニカルなソロが代わる代わるに織り成す「ロックバンド」の醍醐味が味わえる「超大作」なのです。

演奏されたほとんどの曲のリズムは複雑怪奇で、僕も最初は「今いったい何分の何拍子なんだ?」と意地になって確認しながら聴いていましたが、あまりに高度過ぎて途中でギブアップ。本割のセトリで唯一の洋楽カバーとして披露されたビートルズ・メドレーにしても、一体何処から何処までが「キャント・バイ・ミー・ラヴ」で何処から何処までが「サムシング」なのか・・・ビートルズ・ナンバーならばメロディーもアレンジもすべて頭に叩き込んでいる、と自負する僕が迷子になるほどの斬新なアレンジには完全に白旗状態でした。

(追記:記事を読んでくださったM様よりご紹介頂いた、BARAKAの「キャント・バイ・ミー・ラヴ」「ラヴ・ミー・ドゥ」「「サムシング」一発録り生演奏映像です)

ところがBARAKAの音って、「頭で考える」聴き方を放棄してからが凄まじい快感で。
余計なことは考えず無心で演奏を受け入れる状態こそが心地よい・・・そんなサウンドなのですよ。

パートはギター(高見一生さん)、ベース(依知川さん)、ドラムス(平石正樹さん)の3人編成。
曲によって時折シンセの音色が流れてくるのは、依知川さんがサスティン・ペダルを併奏しているんじゃないかな(鶴ヶ島で僕は依知川さん真ん前のテーブル席で観たのですが、残念ながら足元は死角でした)。

3人とも超絶のテクニシャンです。分かり易く例えるならば、正にこのフライヤーのキャッチコピーの通り。


Baraka4

「ジミヘン」はジミー・ヘンドリックス、「マッカートニー」はポール・マッカートニー(ビートルズ)、「ボンゾ」はジョン・ボーナム(レッド・ツェッペリン)。
そんな3人が個性と技量をぶつけ合って「プログレする」のですからそりゃあ凄いわけですよ!

依知川さんはジュリーLIVEとはガラリとスタイルを変え(と言うかこちらが「普段」の姿)、5弦ベースを徹底的に指弾きで魅せてくれます。楽曲中でギターと交互に主メロを高音で担当するシーンも多く、かつて「まるでリード・ギターのように動き回る」と評されたポール・マッカートニーへのリスペクトが確かに感じられます。

僕は今回の鶴ヶ島公演が初めてのBARAKA体感だったわけですが、最も感銘を受けたのが高見さんのギター演奏でした。
特に楽器演奏についての知識など無くても、高見さんのギターの「凄さ」は万人に伝わるものと思います。「百聞は一見に如かず」ですから、余計な説明は野暮というもの。「自由度の高さ」という点で、僕がこれまで生で観た中ではダントツのギタリストですね~。
アンコールでの「カム・トゥゲザー」(ビートルズ)なんて、あのお馴染みのリフをそのままではなく3度上、5度上で弾く・・・そんなスタイルの演奏が炸裂しまくり。まったく新しいフレーズを弾いているように聴こえるんです(依知川さんがキッチリとオリジナルそのままに弾いているのがまた不思議なハーモニーへと昇華)。
高見さんは演奏時の表情も豊かで、「良いギタリストって、チョーキングで「ぬお~っ!」となるものなんだなぁ」と改めて納得した次第です。
これほどまでに自由奔放なスタイル、しかもメンバー中最年少の高見さんが、結成時からずっとBARAKAで演奏を続けていることが即ち、依知川さんと平石さんの高い技量、度量を証明しているとも言えそうです。

加えて高見さんは、ハードで攻撃的な演奏と人懐っこい天然なキャラクターのギャップも魅力。
例えば、BARAKAは来年2月に海外遠征ツアーも決定しており、それが何とイエス主催(!)による世界に名だたるプログレッシブ・ロックのレジェンドが一同に会する豪華な対バン形式の船上公演なのだとか。
それについて依知川さんの場合はMCで
「(世界のレジェンド達に対して)もちろんリスペクトはありますけど、同じ人間。ステージ上では対等、という気持ちで臨みたいと思います」
と静かな闘志を燃やしていたのですが、片や高見さんはと言うと、のんびりとした口調で
「(競演者の)スティーヴ・ハケット(ジェネシス)とジャック・ダニエルが飲みたいな~」
とまぁ、驚異的なまでの超自然体モード。
その気負いの無さこそ、高見さんのスケールの大きさなのでしょうか。

ともあれBARAKAの演奏は世界に通じる素晴らしいものですから、来年の海外ツアーでは世界のレジェンド達の間でも、「ジャパンから来た3人組、相当ヤリやがるぜ!」と話題となること、疑いありません。
演奏を終えた高見さんにスティーヴ・ハケットが駆け寄ってジャック・ダニエルを振る舞う、というシーンはきっと現実となるでしょうね~。

ただ、その前に今年11月2日、BARAKAにとって大きなステージが控えているという状況。
鶴ヶ島公演の時点で「あと2ケ月」に迫っていたフォーラム公演。依知川さんがMCで曰く「まだ良い席も残っている」とのことでした。
後援会のM様も、集客の手応えは「まだまだ」と満足には至っていないご様子で、「是非ともジュリーファンの方々も」と改めてお誘いを頂きました。

ジュリーファンのみなさま、依知川さんのジュリーバンド復帰というタイミングでの巡り合わせ・・・これも何かのご縁です。ここはひとつ、フォーラム満員のお客さんでBARAKAの20周年お祝いと行きましょう!
ご都合のよろしい方は、是非11月2日の公演にご参加ください。ジュリー松戸公演の前日です。
よろしくお願い申し上げます!

②「Aurora」楽曲考察

チャプター①が想定以上の長文となってしまいましたので、ここからはちょっと駆け足でまいります(笑)。

アルバム『俺たち最高』はジュリー初のベースレス・アレンジのアルバムですね。後追いファンの僕は『ジュリー祭り』の年に予習として『ROCK'N ROLL MARCH』を購入した時にもベースレスのアレンジに強烈な違和感を覚えましたが、その後遡って聴いた『俺たち最高』の方がその感覚はより強かったような気がします。
『生きてたらシアワセ』『ROCK'N ROLL MARCH』とは違い「ドラムスは生なのにベースが無いなんて・・・」と、生意気にもそんなふうに考えた記憶が(汗)。
ただ、収録曲で言うと「Aurora」についてはその感覚はありませんでした。
初めて聴いた時に「おっ、これはドアーズだな」と思ったからです。

ベースレスでのアルバム製作は、音源作品とステージとの乖離を最小にとどめたい、という以前からのジュリーの考え方に沿う手法だったでしょうが、ジュリーは当初そのことについて
「LIVEではキーボードが左手でベースを弾く。ドアーズみたいでカッコイイ!」
と話していたそうですね。
斬新な試みを以ってアルバム『俺たち最高』のアレンジを託された白井良明さんにも当然「ベースレス・ロックバンドの先駆者」であるドアーズの楽曲群は引き出しにあったはずです。それが最も明快に表れた収録曲が「Aurora」というわけ。

肝はキーボード。良い意味でチープなオルガンの音色が、左右のギター・トラックとくんずほぐれつに絡み合う・・・具体的には、ジュリーの歌メロ部では左サイドのバッキングとリズムを揃え、歌の隙間に右トラックのリード・ギターと音階を揃えます。
それをワントラックのキーボードでやる、というのがドアーズのレコーディング作品でよく見られるレイ・マンザレク直系のスタイル。
このオルガンを柱としたベースレスのアレンジは、後の鉄人バンドによる「こっちの水苦いぞ」の演奏で、より洗練された形で引き継がれていると思います。

依知川さんのジュリーへの提供曲は、昨年の「犀か象」以外すべて直球。
BARAKAではメロディーもリズムもあれほど変則的な作曲をする依知川さん、懐が深い!のひと言です。
「Aurora」でも調号の変化は無く、シンプルなリズムに王道・イ短調のメロディーを採用。コード割りは白井さんが相当イジリ倒していると思いますけど。

僕がこの曲で今着目したいのは、ジュリーの作詞に登場する英フレーズ。今年の新譜「ISONOMIA」と比較してみるととても面白いのです。
「ISONOMIA」には、英フレーズが計8単語が繰り出されます。それぞれジュリーが「良い意味」と考える「~ful」が4つ、「悪い意味」の「~ness」が4つずつ。良い、悪いの対比はハッキリしていますね。
一方「Aurora」に登場する英フレーズは3つで、「Happiness」「Loneliness」「Tenderness」。
普通に考えると「Happiness」「Tenderness」は「良い」、「Loneliness」は「悪い」意味合いでしょうが、ジュリーがそれぞれに組み合わせた日本語が逆説的で

「薄光のHappiness」
「女神はLoneliness」
「寒風のTenderness」

となっています。「薄光」「寒風」は楽曲タイトル「Aurora」からの連想、そして「オーロラの見える国」=「平和な国」とするなら、本来は平和の象徴であるはずの「女神」・・・これは「届かない花々」に同じく「9.11」の意味を持たせてジュリーは言葉を選んでいるかもしれません。

『俺たち最高』は音作りの面でも前作『greenboy』とはガラリと作風を変えましたが、「Aurora」などいくつかの収録曲では「日常の尊さ」をコンセプトとして受け継ぎつつ、さらに平和へのメッセージが強く加味するという、貴重なターニング・ポイント的な名盤と言えるのではないでしょうか。

それにしても「旨いものなさそうだけど♪」はジュリーらしさ全開ですよね~。
はからずも明日から東北・北海道へと向かう50周年記念ツアー。ジュリー達は各地で美味しいものをたくさん食べるのでしょう。
それが楽しみで、この季節に北へと向かうスケジュールを組んだんだったりして・・・。

③アルバム『俺たち最高』、今後のセトリ入りは?

最後に、「隠れた名盤」とも言うべきスタンスかと思いますが、アルバム『俺たち最高』について。
先日お会いしたJ友さんとたまたまこのアルバムの話になって、「最初はとっつきにくかったよねぇ」と。

これは新規ファン独特の感覚なのかな・・・僕の場合はまず先述の「ベースレス」への違和感があり、加えて、今でこそ「ジュリーってこんな感じ」としっかり身につけているんですけど、ジュリーの自作詞の奇抜さと言うか奔放さと言うか、そういう面が目立つナンバーが多く収録されているように感じていました。
例えば僕は長い間「涙のhappy new year」の詞の言葉並びが苦手で(今はそうは思っていませんよ!)、このブログでも「三大壁曲の筆頭」と書いていたほど。
2014年お正月LIVEでのジュリーの生歌と鉄人バンドの演奏の素晴らしさで完全に克服、今では大好きなジュリー・バラードとなっていますが、「1曲目がダメ」という長い時期がこのアルバムの正当な評価を個人的に遅らせていたことは事実です。でも実際は、本当にジュリーファンが愛すべき1枚・・・名盤なんですよね。

収録曲中僕がこれまで生のLIVEで体感できているのは、今触れた「涙のhappy new year」と、「俺たち最高」(『ジュリー祭り』)「桜舞う」(『燃えろ東京スワローズ』)の計3曲。2000年代のアルバムとしては、セトリ入り率は低い方なのかな。
アルバムで一番好きな曲は「未来地図」。ただし「この先LIVEで一番聴きたい曲は?」ということになると圧倒的に「weeping swallow」です。毎回、ツアーの度に期待をかけていますが未だ実現せず・・・これまで何度も「セットリスト予想」に書こうと思いつつ機を逸しているうち、「そう簡単に書いてよい曲じゃないぞ」と考えが変わってきました。なにせ昨今のこの国、ひいては世界情勢がね・・・もしこの曲の考察記事を書くなら、自分の中の「NO WAR」をトコトン追求してからでないと、と今は思っています。
今日のお題が「Aurora」ということで、アルバム『俺たち最高』収録曲の中で僕がまだ記事未執筆の曲は「weeping awallow」1曲を残すのみとなっておりまして、いつか「平和」を実感しながら書くのが一番ふさわしいとは思いますが、まだ時間はかかりそうですねぇ。

この「weeping swallow」をはじめ「勇気凛々」「遠い夏」、そして「Aurora」・・・これらジュリー作詞のナンバーはいつツアー・セットリスト入りがあってもおかしくないと僕は思っています。
中でも「Aurora」は依知川さんの作曲作品ですし、近々要チェックの予習必須曲ではないでしょうか。

「エンドレスで歌い続ける」と宣言してくれたジュリー・・・今後は「久々に歌うか~」と次々にレア曲を採り上げてくれるのではないか、と。
とりあえず来年の古希イヤーでは、『ジュリー祭り』以来となるアルバム・タイトルチューン「俺たち最高」のセトリ入りに期待しています!


☆    ☆    ☆

さて、今日はオマケの添付画像がありません。
2006年関連資料の手元のネタが尽きてしまっているのですよ・・・。そのぶん次回は奮発するつもりです。

それでは次回から”『沢田研二50周年記念LIVE』・セットリストを振り返る”シリーズへと突入します。
今回のセトリで記事未執筆の曲は全部で6曲。その中から「時の過ぎゆくままに」以外(以前からの予告の通り、「時過ぎ」は来年の6月25日の更新お題と決めています)の5曲を矢継ぎ早に書いてまいります。
どうぞお楽しみに~!

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2017年7月 6日 (木)

沢田研二 「CHANCE」

from『ROYAL STRAIGHT FLUSH 1980-1996』
original released on 1987、single


Royal80

disc-1
1. TOKIO
2. 恋のバッド・チューニング
3. 酒場でDABADA
4. おまえがパラダイス
5. 渚のラブレター
6. ス・ト・リ・ッ・パ・-
7. 麗人
8. ”おまえにチェック・イン”
9. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
10. 背中まで45分
11. 晴れのちBLUE BOY
12. きめてやる今夜
13. どん底
14. 渡り鳥 はぐれ鳥
15. AMAPOLA
16. 灰とダイヤモンド
17. アリフ・ライラ・ウィ・ライラ~千夜一夜物語~
disc-2
1. 女神
2. きわどい季節
3. STEPPIN' STONES
4. CHANCE
5. TRUE BLUE
6. Stranger -Only Tonight-
7. Muda
8. ポラロイドGIRL
9. DOWN
10. 世界はUp & Fall
11. SPLEEN ~六月の風にゆれて~
12. 太陽のひとりごと
13. そのキスが欲しい
14. HELLO
15. YOKOHAMA BAY BLUES
16. あんじょうやりや
17. 愛まで待てない

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今週、こちらは蒸し暑い日が続いています。
全国的にも暑いようですが、それだけならまだしも、台風や大雨の被害のニュースを見ると「また今年も・・・」とやるせない気持ちになります。
このところ毎年のようにこの季節は極端な天候となり、今年もこちら東京、埼玉では昨日、ダムの取水制限が決まったりして水不足が懸念されている一方、西の地では猛烈な雨で大変な被害が発生。特に故郷・九州の深刻な被害には絶句するしかありません。

相次ぐ痛ましいニュースで無力感、焦燥感に駆られますが、僕にできるのは「普段通りの記事を書くこと」しか無いのです。
平穏無事、とは本当に尊いものです。
全国各地のジュリーファンのみなさまの、今回のツアーへの無事のご参加をお祈りいたします。

そのジュリーの全国ツアーですが、今回はチケットの発送が変則的だったそうで、後便となっていた方々の元には昨日あたりからチケットが届き始めているようですね。まだ届かない、と気が気ではないご様子の先輩もいらっしゃいますが、やっぱり実際にチケットを手にするまでは落ち着かないものですからねぇ。

ということで、『沢田研二 50周年記念LIVE 2017-2018』ツアー開幕までいよいよ10日ほどとなりました。
今日のお題は
全力で外しにいったのに当たっちゃった!パターンを期待したいセットリスト予想シリーズ
の第2弾。
「ジュリーが選ぶ50曲に入るかどうかギリギリのライン」だと個人的に考えるシングルA面曲の中から、CO-CoLO期の名曲を採り上げます。
またまた大長文になりそうなので、枕もそこそこに参りましょう。87年リリース、ソリッドな名演にして名曲「CHANCE」、伝授です!


①ジュリー・ヴォーカルの高音適性

今のジュリーが、シングル曲に限らず過去幾多の名曲群をLIVEで採り上げる際、「意地になって原曲のキーで歌っている」曲もあれば、現在の声域で歌い易くキーを下げて歌われる曲もあります。
僕は絶対音感を持ちませんがひと通りの楽器をやるので、コード・フォームであったりフレットのポジショニングであったり楽器のチェンジなどからそのあたりに気がつくケースが多いんですよね。
では、ジュリーは現在、どんな曲、どんな基準でキーを下げる場合があるのでしょうか。

これは単純に音階の問題ではなさそうです。ある程度は、高い「ソ」の音あたりが目安となっているようですが、「カサブランカ・ダンディ」などは「意地になって」原曲のままのキー(ホ短調)で歌っています。
また、「君をのせて」もジュリーはずっとオリジナル・キー(ハ長調→嬰ハ長調)で歌い続けているんですけど、こちらは「意地になって」いる感じはまったく無くて。あの転調後のサビの高音を昔のままに堂々と歌うジュリーは本当に凄いです。リリース当時はどうだったのか分かりませんが、今ジュリーは「君をのせて」を「なんて俺の喉に合う歌なんだ」と毎回新たな感動を覚えながら気持ちよく歌っているように見えます。
いずれにしてもこの2曲は当然今回のツアーでもセットリスト入りするでしょう。

一方、「最近ご無沙汰」な曲をセットリストに組み込んだ際に、ジュリーならば今の声域でも気合入れれば充分対応できる音域であるにも関わらず、キーを下げて歌う場合があります。2015年、加瀬さんに捧げるために久々に披露してくれた「恋のバッド・チューニング」などはそのパターンでした。
要は今のジュリー自身の感覚として「歌い慣れ」ているかどうか、「自分の喉に合っているかどうか」という、傍から推し量ることのできない基準でキー設定の目安とする場合があるのではないでしょうか。

「シングルばかり50曲を歌う」と宣言している今回のツアー、久々に歌うことになる曲も多くあるでしょう。その中に「メロディーの最高音が高いソの音以上」なんてシングル曲はゴロゴロしているわけです。
そこでジュリーが「ちょっと今の自分の喉には辛いかな」と考えてキーを下げる曲もあるでしょうし、「よし、これはいけそうだ!」と原曲キーで歌う曲もあるはず。
そこで今日のお題「CHANCE」。メロディー音域について言えば、この曲はもうとんでもなく高いです!
高い「ソ」の音どころか最高音は「ラ」にまで至りますし、高い「ミ」から「ラ」までをうろつくサビのメロディーは、例えば僕のような普通の男性がカラオケで歌ったら息も絶え絶え、声がひっくり返りまくります。

ジュリーとて、さすがに69歳となってこの曲をオリジナル・キーで歌うというのはキツイ。しかし重要なのは、この曲がジュリー自身の作曲作品だということ。
「渚のラブレター」「バタフライ・ムーン」・・・ジュリーには普通の男性ではとても太刀打ちできない高音域のメロディーを擁する作曲作品が数多くあります。
自分でギターを弾きながら作曲するわけですから、メロディーを考えながら平気でその音域を口ずさめているわけで、ジュリーが生来の声の良さに加え優れた声域の持ち主であることは、こうした自作曲のキー設定で証明できますね。

もうひとつ、「CHANCE」はジュリーが高音域ヴォーカルを特に自在に操る曲調・・・ブルース進行を土台として作曲、アレンジされている点にも注目。
ジュリーはもちろん若い頃はどんな曲だって高い「ラ」の音は楽々出ていました。『Zuzusongs』で、「ラヴ・ラヴ・ラヴ」を歌った後に「いや~、高っかい!」と息を整えながら、昔は「G」どころか「A」も楽に出た、と語っていますが、この「A」というのが「CHANCE」のメロディー最高音である高い「ラ」の音のことです。
裏を返せば、『Zuzusongs』の時点でジュリーは「最近はG(高い「ソ」の音)ですらキツくなってきた。でも今歌った「ラヴ・ラヴ・ラヴ」では意地になって「A」を出しとるんやで」という意味。
「苦しいことは苦しい」と吐露しているわけです。
その後の90年代後半そして2000年代のナンバーにも高い「ソ」「ラ」の音は楽曲によって時折登場し、ジュリーは問題もなく歌っています。つまり同じ高音でも、ジュリーには「出しやすい」曲調、メロディーというものがあると考えられます。

高い「ラ」の音は、2005年の「GO-READY-GO」を最後にしばらく封印されます。
再度登場したのは2012年「F.A.P.P」「カガヤケイノチ」の2曲。これは「自分自身が限界ギリギリの高音で歌うことをしないと意味がない」とのジュリーの決意でありキー設定の例外であったと僕は考えます。『PRAY FOR EAST JAPAN』第1作なのですからね。
ですからジュリーが「年齢を重ねても高い音が歌いやすい」曲調として「GO-READY-GO」はひとつの判断基準となりそうです。
「GO-READY-GO」はブルース進行でこそありませんが、せりあがるロックなメロディーはジュリーが歌うブルース調の過去のナンバーの特徴とも言え、それは「CHANCE」とも共通するもの。もし今回のツアーで「CHANCE」が採り上げられるとすれば、ジュリーは「意地になって」でも原曲のキーで歌うと僕は予想します。

まぁ、キーを下げる下げない抜きにして、「CHANCE」のような(最近は)レアなシングル曲がセットリスト入りするかもしれない、と期待を抱かせるデビュー50周年記念LIVE・・・開幕が本当に楽しみですね。

②楽曲全体の考察

まずはジュリー・ヴォーカルについての補足です。
「CHANCE」のヴォーカルは、いわゆる「ダブル・トラック」なのですね。僕は初めてレコーディング音源を聴いた時(2009年、『正月歌劇』を勧めてくださった先輩にお願いして、CO-CoLO期のシングル音源を授かった頃のことです)、「ジュリーの本テイクをコンマ数秒ずらした新たな複製トラックを作成」したミックスダウンの手法によるダブル・トラックであろうと思い込みました。
でもその後聴き込んで「いや、違う!」と。

これ、ジュリーが別々に歌ったテイクを同時に流しているんですよ。パッと聴いただけだと、音程のみならず抑揚や音の伸ばし方まであまりにキレイに2つの声が揃っているので、機械の作業だと勘違いしてしまいます。
持って生まれたセンス(天才です!)に加え、徹底的に「こういうふうに歌う」と決めて本番レコーディングに臨むという「準備怠りなし」の努力。凄いぞジュリー!
それでもジュリーとて人間。よ~く聴くと2つのテイクには微妙なズレ、違いがあることに気づきます。
とは言え僕レベルで把握できているのは、歌の最後の最後にたったの2箇所。

オレのボスは「チャンス」あんただけさ
F#m7                         Bm7

古い愛され方 彼女は知らない ♪
      C#7                            F#m7

「彼女は、知らない~♪」の語尾のロングトーンを切る位置が少しだけ違うのと、直後の「Ah!Ah!Ah!」のシャウトが、(おそらく2度目のテイクの方は)「Ha!Ha!Ha!」と変わっています。
さすがにこのメチャクチャ高音域のサビをリフレインしていてジュリーも若干苦しくなり、咄嗟に「息を吐く」ようなスタイルのシャウトに切り替えたのかなぁ、と僕などはニヤリとしてしまうのですが、それも含めて「CHANCE」のヴォーカルは圧巻。
ジュリーの全身全霊を感じずにはいられません。

このように「CHANCE」は凄まじい高音ヴォーカルがまず最大の魅力ですが、CO-CoLOの演奏がまたまた素晴らしい。ジュリーの全シングルの中で最も「ソリッド」なナンバーと言えるでしょう。
「ソリッド」とは楽曲を評する際にしばしば使われる表現ですが、同じ「硬質」の魅力を表す言葉として「ハード」とはしっかり区別をつけたいものです。
僕の中では、いくつかの単体の楽曲において例外はあるにせよ、基本アルバム『sur←』までが「ソリッド」であり、『愛まで待てない』以降が「ハード」です。
いずれも大絶賛の意を込めての評価ながら、「ソリッド」という表現が最もふさわしいのはCO-CoLOのアレンジ、演奏であり、その中でも「CHANCE」は最高峰だと僕は考えています。

まずはアレンジ。音作り以前に、調の解釈でCO-CoLOならではの特性があります。
Aメロが嬰ヘ長調のブルース、Bメロとサビが近親移調して嬰ヘ短調の歌謡曲よりのロック。
同じ曲の進行上でサブ・ドミナントが「B7」なのか「Bm7」なのかでここまで印象が違うというのがCO-CoLOならではの渋さ、素晴らしさ。
でもね。

金曜日の夜が始まり 又オレは一人になった
F#7                         B7                         F#7

着飾ったshow-windowに
C#7

横目でwink ツイてないのさ ♪
B7                                F#7

その作曲家としての個性、キャリアから推し測ると、ジュリーはおそらくAメロの「F#7」の箇所をすべて「F#m7」で作ってプリプロしていたと思うのですよ。
それをCO-CoLOがジュリーのヴォーカルに合わせてコードまで踏み込んでいじっているのではないかと・・・。嬰ヘ長調のAメロのブルース・アレンジこそがCO-CoLOの「ソリッド」真骨頂ではないでしょうか。

僕はCO-CoLO時代の石間さんのギターを聴いていて、「まるでミック・テイラーみたいだなぁ」と思うことがよくあります。ただしそれはストーンズ時代のミックではなく、ストーンズ脱退後、80年代にボブ・ディランのバックでレコーディングに参加していた頃のミックのギターのイメージなのですね。
双方どう違うかと言うと、これがそのまま「ハード」と「ソリッド」の違いでして。
ストーンズ時代はとにかくヴォーカル部であろうがなんであろうが容赦なく弾きまくり、しまいには「誰かアイツに、そこではギターを弾かなくていい、と教えてやれ!」な~んて言われたこともあったみたいですけど、僕も含めて特にミック在籍時のストーンズの音作りには熱烈なファンも多いです。
ところが数年後のディランのバックになると、これがとにかく渋い!ベタ~ッと絡みつくような独特のフレージングや音色、運指は変わらないのだけれど、どこか一歩退いていると言うのか、「ソロです!」という箇所になってもバッキングっぽい音を続けたり、敢えて単音に切れ目を作ったり、要は「間」があるんですよ。
それが逆に不思議な存在感となって、ディランの孤高の世界観に合うのです。

この微妙にして絶妙なバランスが、僕にはジュリーのヴォーカルと石間さんのギターの相性に重なります。
堯之さんや柴山さんとはまた異なる「ジュリー・サウンドのギター」。CO-CoLOの音は石間さんのギターである、と言っても良いんじゃないかなぁ。
例えば「CHANCE」の間奏での「じれったさ」(←良い意味ですよ!)、後奏の「収拾のつかなさ」(←これも絶賛の意で言ってます)なども本当に独特。
僕はジュリー・ナンバーにディランを感じることってほとんど無いのだけど、CO-CoLO期のいくつかの曲については例外です。それは石間さんのギターによるところが大きい、と思っています。

アレンジ全体としては、やはりCO-CoLO、キーボードとパーカッションの活躍が真っ先に多くのリスナーの耳を捕えるでしょうか。
キーボードはイントロから全編を彩る単音が2種類と、シンセベース。当然ながらこの曲は普通にエレキベースも入っていますから、シンセも合わせてツインベース体制ということになりますが、シンセベースの方は要所要所にビシッと噛み込んでくるスタイル。通常のシンセベースよりもオクターブ上で弾いているっぽいですね。

どのパートもニューウェイヴから派生し枝分かれした様々な洋楽ロックの趣向、流れを踏襲していることは間違いないと思われ、『NON POLICY』の頃のようなシティ・サウンドとは似て非なるもの。
80年代半ばのエイティーズ・ロック直系の演奏とアレンジ、その中でも優れた大衆性を押し出したサウンドからの影響・・・YOKO君は「ダイア・ストレイツを思わせる」と言っていましたが僕はホール&オーツです。
例えばこの曲(「
ポゼッション・オブセッション」)。
どうです、CO-CoLOっぽいなぁと思いません?

いずれにしても「CHANCE」は80年代半ばから後半の海の向こうの「売れ線」的な音作りであることは確かで、特に僕などはエイティーズ・ロックがドンピシャの世代ですから、初聴時から「懐かしい」タイプの名曲だと感じたものでした。
もちろん今年のツアーで「CHANCE」が採り上げられたとしてもリリース当時そのままの雰囲気にはならないでしょう。でも、泰輝さんがきっとシンセの3つの音色をキッチリ再現してくれる筈ですし、「ハード」のみならず「ソリッド」の名手でもある柴山さんは、原曲のアレンジに忠実な音階でギターを奏でてくれると思います。

そしてジュリーのヴォーカル。今の声で歌ったらメチャクチャにカッコイイと思いますよ!
たぶん生で聴いた時に一番痺れる箇所は

こんなはずじゃないのに
Bm                          A

Oh My God 逆らう罰あたり ♪
G#7            C#7

この2番のサビ直前の刺激的なフレーズ。ここはジュリーも松本さんの歌詞を受けて、今現在の世相も重ね合わせて気合入れて歌うんじゃないかな。
今年の新曲「ISONOMIA」で歌われている「ヒエラルキー」ってわけじゃないだろうけど、世の不公平をして「身をわきまえろ」的な天の決定に「罰当たり上等!」で逆らってやろうってのがね、ジュリーの好むロックなコンセプトだと思いますから。
リリース当時とはまた違ったジュリーの歌詞解釈、気持ちがググッと入ってくると思いますよ。

あ、でも今回はもし「CHANCE」がセットリスト入りしたとしても、2番まで歌わないアレンジになるのか・・・。
まぁ贅沢を言うはやめましょう。
とにかく、一度は生で聴いてみたい名曲・・・正に今年はその「チャンス」です!
松本さんの詞は様々な解釈ができそうですが、その中から「一攫千金」的なニュアンスを掘り起こして、当時あの豪快なアクション(札束をばらまく)のアイデアが生まれているわけですよね。
さすがに小道具の再現は無理としても、身振りだけでもジュリーのあのカッコイイ動きを今年のツアーで僕ら新規ファンも追体験できたら、と妄想しています。

③私的セトリ予想・CO-CoLO期シングル篇

今回僕がセットリスト予想記事で書く3曲はいずれも「セットリストに入るかどうかは微妙だけど是非期待したい」位置にあるシングルで、今日の「CHANCE」も実際歌われるかどうかは可能性半々、もしくはちょっと分が悪いかな、という感じです。
では、他のCO-CoLO期シングルはどうでしょう?
これが前回の『A面コレクション』とは違って、「絶対」と言い切れる鉄板曲は無いんですね(あ、「灰とダイタモンド」を一応CO-CoLO期とするなら鉄板かとは思いますが)。そんな中で個人的にセットリスト入りの可能性上位として考えているのは「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」「STEPPIN' STONES」の2曲です。

まず「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」の方は、『ジュリー祭り』の80曲からは惜しくも漏れましたが、明けて2009年のお正月LIVE『奇跡元年』ですぐに採り上げられているところを見ると、当初ジュリーが『ジュリー祭り』に向けてひとまず88曲の候補を挙げた中には入っていた曲だったと考えられます。
その後も2010年の『歌門来福』で歌われるなど、ジュリーにとってはお気に入りの自作曲(作詞・作曲)で、今年厳選される「50曲のシングル」の中にCO-CoLO期代表曲のひとつとして加わる可能性は充分。
一方こちらもジュリー自身の作詞・作曲による名曲「STEPPIN' STONES」については、個人的に「正にこの2017年の特別なツアーで歌われることを約束されていたような歌詞」との思いがありまして。
ちょうど30年前、ジュリーがしっかりと見据えていた「虹色のかすか光」は今やハッキリと輝きを現しジュリーファンならば誰の目にも見えています。各会場大盛況間違いなし!の歴史的ステージにふさわしいシングル曲と言えるのではないでしょうか。

その他ですと、「女神」「きわどい季節」の2曲は、比較的最近セットリスト入りを果たしている(つまり『ジュリー祭り』以降採り上げられたことがあり、新規ファンの僕でも生で体感できている)こと、あとは阿久さんの作詞作品という共通点があります。
採り上げられたとしても不思議はありませんが、見送られたとしても(もちろん残念ですが)納得はできる、という本当に微妙な位置づけの2曲です。でも、「CHANCE」よりほんの少しだけ優位かもしれません。
残る1曲が「TRUE BLUE」。これはいつもお世話になっている先輩が期待していらっしゃいますし、僕としても是非とも生で聴いてみたい名曲なんですけど、今年の「デビュー50周年記念」50曲の括りで考えるとセットリスト入りは厳しそうです。
むしろ来年の古希イヤー、噂されている武道館3daysでのセトリ入り候補として考えてみたいと思うのですがいかがでしょうか。

こうしてみると「CHANCE」はギリギリ見送られてしまうのかなぁ、とも考えてしまいますが、所詮はこのヒヨッコの個人的な予想ですから。
ジュリーの歌人生を共に歩んでこられた目利きの先輩方の「いや、「CHANCE」歌うならココしかないでしょ!」という力強いコメントをお待ちしております(笑)。


それでは、オマケです!
今日は87年繋がりということで、『Keep on Running』ツアー・パンフレットから数枚どうぞ~。


Keeponrunning01

Keeponrunning02

Keeponrunning03

Keeponrunning07

Keeponrunning12


それでは次回更新は、いよいよ”全力で外しにいったのに当たっちゃった!パターンを期待したいセットリスト予想シリーズ”第3弾にして締めくくりのお題。
ズバリ、「周囲の多くの先輩方の、本当に熱烈なセトリ入り希望を耳にしている」大名曲です。
個人的には「う~ん、歌われない可能性の方が高いんじゃないかなぁ」とは思っているんですけど、長いファンのみなさまから圧倒的に切望されている曲のようで、「DYさんが予想記事書いちゃうと選曲から漏れちゃいそうだけど、でもこの機に書いて欲しい」との有難くも恐縮なリクエストを頂きました。

先達のみなさまの深い思い入れを想像すると大きなプレッシャーもかかる・・・そんな特別な1曲ではありますが、なんとか頑張って書いてみたいと思います。
どうぞお楽しみに!

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2017年7月 1日 (土)

沢田研二 「どん底」

from『A面コレクション』
orginal released on 1984、single


Acollection

disc-1
1. 君をのせて
2. 許されない愛
3. あなただけでいい
4. 死んでもいい
5. あなたへの愛
6. 危険なふたり
7. 胸いっぱいの悲しみ
8. 魅せられた夜
9. 恋は邪魔もの
10. 追憶
11. 愛の逃亡者
12. 白い部屋
13. 巴里にひとり
14. 時の過ぎゆくままに
15. 立ちどまるな ふりむくな
16. ウィンクでさよなら
disc-2
1. コバルトの季節の中で
2. さよならをいう気もない
3. 勝手にしやがれ
4. MEMORIES(メモリーズ)
5. 憎みきれないろくでなし
6. サムライ
7. ダーリング
8. ヤマトより愛をこめて
9. LOVE(抱きしめたい)
10. カサブランカ・ダンディ
11. OH!ギャル
12. ロンリー・ウルフ
13. TOKIO
14. 恋のバッド・チューニング
disc-3
1. 酒場でDABADA
2. おまえがパラダイス
3. 渚のラブレター
4. ス・ト・リ・ッ・パ・-
5. 麗人
6. ”おまえにチェック・イン”
7. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
8. 背中まで45分
9. 晴れのちBLUE BOY
10. きめてやる今夜
11. どん底
12. 渡り鳥 はぐれ鳥
13. AMAPOLA
14. 灰とダイヤモンド

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『沢田研二 50周年記念LIVE 2017~2018』、初回チケット発送が始まっていますな~。どうやら今回は発送日に時間差があるらしく、僕の周囲ではまだ到着していない人の方が多いくらいですが、我が家は早々に初日のチケット2枚を受け取ることができました。
カミさんと参加するんですけど、授かったチケットは・・・ま~思いもかけず素晴らしい席で。以来、ず~っとニマニマが止まりません。
何度見てるんだ、ってくらい頻繁にNHKホールの座席表を開いてポ~ッとしております。この歴史的ツアーの初日に、本当に有難く畏れ多いことです。
初日については落選しなかっただけでもう「ラッキ~!」という感じで、良席の期待など全くしていなかったので、想定外の素敵な巡り合わせに感謝しかありません。

さぁ、いよいよ今月16日、ジュリーのデビュー50周年記念・全国ツアー開幕ということで、拙ブログでは今日からセットリスト予想シリーズに突入、厳選した3曲のお題考察に取り組みます。題して

”全力で外しにいったのに当たっちゃった!パターンを期待したいセットリスト予想”シリーズ

お正月LIVEで、「50という数字にはこだわりたい」とシングル50曲+αのセットリストを予告してくれたジュリーですが、2009年以降のマキシシングルはもちろん、ザ・タイガース、PYG、TEA FOR THREE、ジュリワン・・・A面だけでも100曲超えるシングル名曲群の中から、果たしてどの曲が選ばれるのでしょうか。
お正月LIVEでジュリーの「おそらく漏れはないと思いますが・・・」との言葉がありましたので、ジュリーは一般ピープルまで対象に「みなさまご存知の曲」についてはすべて歌う気でいるでしょう。
ギター1本体制で「時の過ぎゆくままに」をどうアレンジしてくるか、というのが見所のひとつです。

そんな中、「選ばれるか選ばれないか微妙なラインにいる曲は?」というのが今回の僕のセトリ予想のコンセプトとなります。
まず今日は、問答無用にして究極のベスト盤とも言える『A面コレクション』収録曲で、そんなギリギリの線上に位置する曲を探してみましょう。

『A面コレクション』、収録全44曲。
50という数字よりは少ないですけど、あくまでこれは85年リリース「灰とダイヤモンド」までのシングルA面曲を並べたもの。「灰とダイヤモンド」に続く「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」以降のシングルなど、セットリスト候補曲はまだまだ他にもあるわけですから、この圧倒的3枚組『A面コレクション』ですら、数曲(10数曲?)はセットリストから外れることが予想されます。
そこでみなさま、考えてみてください。
『A面コレクション』から今回のツアーで残念ながら漏れてしまうのはどの曲だと思いますか?

みなさまのお考えで一番手に挙がりそうなのが「MEMORIES」でしょうか。いや、僕もみなさまももちろん大好きな1曲ですよね。ただしこの曲は海外戦略がメインで、日本でのリリースについては「一応」という感じだったでしょうから一般ピープルの認知度も低く(実際、僕はYOKO君に『A面コレクション』を借りるまでは知らない曲でした)、厳選50曲の中には入ってこないと思われます。
では、その次にみなさまが「う~ん・・・」と悩みに悩んだ結果、多くの方が二番手に挙げそうだなぁと個人的に想像している曲。それが今日のお題です。

僕がこれまでお話を伺ったりコメントを読ませて頂いたりしたジュリーファンの先輩方、本当にたくさんいらっしゃるんですが、未だこの曲を「大好き!」と仰る方には出逢ったことがありません。
でもね。
「イヤよイヤよも好きのうち」とも申しまして、実は先輩方もLIVEでもう一度聴いてみたいんじゃないか、今のジュリーが生で歌うのを体感したら「最高!」と仰るんじゃないか・・・僕はそんなふうに想像しながら、サプライズなセットリスト入りを期待しているところです。
84年リリースのシングル。
名曲ですよ・・・「どん底」、伝授!

Donzoko83


↑ 『YOUNG SONG』84年5月号より

①阿久=大野時代をオマージュする意義

僕はリアルタイムでは知らなかったのですが、この曲を歌っていた頃「今が”どん底”です」という、83年からシングルのセールス苦戦の状況が続いていたジュリーの自虐的(?)な発言もあったそうですね。
言われてみれば歌番組全盛期に10代を過ごした僕も、「どん底」をテレビで歌うジュリーを見かけたのはほんの数回だったような気がします。

今日の記事では最後のチャプターで84年新春のラジオ音源のことを書きますが、そこでは84年一発目のシングル「どん底」リリースにあたって「ヒットに飢えている」ジュリーの様子がヒシヒシと伝わってきます。
「去年(83年)は今ひとつだった」と振り返り、とにかくこの新曲で巻き返したいと。
結論から言えば「どん底」はジュリー自身やスタッフ、ファンが期待したような結果を出せませんでしたが、「なんとか大ヒットを!」と気合を入れて世に送り込まれたシングルであったことは間違いなさそうです。

83年のシングル「背中まで45分」「晴れのちBLUE BOY」「きめてやる今夜」の3曲について、「きめてやる今夜」で色々と賞を貰った、ちょっと盛り返した、との認識があり(ラジオでジュリー曰く、「もちろん一番大きいの(大賞)はトシちゃんとか細川さんのところへ行ったわけですが・・・」とのこと)、製作サイドも「やっぱりジュリーはキザでギンギンな曲がヒットするのではないか」と狙ったのでしょう・・・84年のニュー・ソングル「どん底」はB面の「愛情物語」も併せ、70年代後半のセールス黄金期の阿久=大野ナンバーへのオマージュを明快に見てとることができます。
作詞・大津あきらさん、作曲・編曲・井上大輔さん。
ジュリーのセールス黄金期へのオマージュを託すには申し分のない組み合わせであり、実際「どん底」はとても良い曲なんですけど、僕自身この曲がジュリー・シングルの中で特に好きな曲かと言われればそうではありません。長いジュリーファンの先輩方もそれは同様なのではないかと推察いたします。
リアルタイムでテレビでチラッと曲を聴いた時、「勝手にしやがれ」の二番煎じだと感じたものでした。

でも、何故か今気になる曲なんです。本当に「二番煎じ」なんて括ってよい曲だろうか、と。
LIVEでバ~ン!とあのイントロが流れ、69歳のジュリーがあのアクションも交えて歌ったら、歌詞や曲調とジュリーの年齢の乖離など微塵も感じずメチャクチャ盛り上がるシングル曲なんじゃないか、とね。
むしろここは一丁、「勝手にしやがれ」と繋げて歌って欲しい!と希望しています。

僕のような新規ファンには分からない感覚ですが・・・一昨年のEMI期アルバム再発時、これまでずっとジュリーをリアルタイムで観て、曲を聴き続けてこられた先輩方の多くが、CO-CoLO時代のアルバムについて「あの頃は馴染めなかったけど、今改めて聴くとすごく良い」と仰っています。どこの会場でしたか、LIVE前に近くの席に座っていらしたお2人連れの先輩が『TRUE BLUE』についてそんなお話をされていたのを耳にしたりもしています。
これね、たぶんポリドール期の終盤のシングルやアルバムについても同じ感覚はきっとある、と僕は想像しているんです。さらに言えば、「どん底」の場合は「生のLIVEで聴いたら絶対」なのでは、と考えるわけです。

いや、もちろん「どん底」は純粋に音源作品としても名テイクです。腕ききのエキゾティクスの演奏は各パートとも自在かつ綿密ですし、ジュリーのヴォーカルもヴァースごとに表情を変え、ドツボに嵌った恋人同士のシチュエーションをズバリ叩き斬っています。
物語の状況やフレージングは「勝手にしやがれ」を受けていますが、「どん底」の大津さんの詞には80年代ならではの「リアル」があります。主人公の「普通さ」が逆に、あのブッ飛んだ阿久=大野ナンバーの世界観へのオマージュを面白く掘り下げているのです。

ドアを蹴って行ってくれ
E♭m

しゃくなドラマに仕立ててくれ
B♭m

やけに想い出 しぼんでいるから ♪
A♭               G♭        A♭    B♭m

「勝手にしやがれ」の主人公は自ら率先してヤケンパチのハイテンション状態ですが、「どん底」では
「いっそヤケンパチにしてくれ」
って感じじゃないですか。「俺はこのどん底のシチュエーションで、なんとかテンションを上げていきたいんだ!」というのははからずもこの時期のジュリーのセールス状況を投影しているようですし、ひいては僕らが過ごしてきた「モノが溢れかえっているけど真に自分が求めているものを探しあぐねている」80年代半ばの世の中の閉塞感をも思い起こさせます。

なんとか「突き抜けて」生きたい。たとえ今、最悪の状況に身を置いていたとしても。

今が最悪  男と女
D♭  B♭m  G♭  A♭

続けてゆくなら 涙をおくれよ
D♭    B♭m     G♭         A♭

サヨナラするなら 台詞はいらない
F7                      B♭m           G♭

答えは背中に投げてくれ
Cm7-5          F7        B♭m

どっちにしたって どっちにしたって
A♭                   G♭

やってられない どん底さ ♪
F7                   A♭     B♭m

1984年・・・みなさまも思い出してみてください。人々の生活、そして音楽の世界でもスマートに「アツくならない」ことがカッコ良いとされた時代です。でも皆本当は感情の吐露に飢えていたのではないでしょうか。
だからジュリーが阿久=大野時代のシチュエーションに再挑戦したかのような「どん底」には、今振り返って「あぁ、あの頃だからそれをやることに意味があったんだ」と思わせるものがあります。当時ヒットはしなかったけど、「ジュリー・シングルに「どん底」あり!」を是非今回のツアーで改めて体感したいものです。

ちなみに、これは楽器弾く人限定の感覚かもしれませんが、この曲のイントロは「福幸よ」のそれと似ているのです(トニックのマイナー・コードからディミニッシュへの進行は、キーこそ違いますがまったく同じ理屈)。


Donzoko113

↑ 同い年の男性ジュリーファンの方がコピーしてくださった貴重なバンドスコア!まさか「どん底」のバンドスコアなんてモノがこの世に存在していたとは・・・。

僕は今年のお正月LIVEの1曲目、イントロ一瞬だけ「まさかのどん底来た!」と勘違いしましたからね。後にYOKO君にその話をしたら、「いや、『祈り歌LOVEDONG特集』ってツアーで「どん底」はさすがにナイでしょ!」と笑われました。
ただし今回の全国ツアーは状況が違います。マイナー→ディミニッシュの初っ端3秒で「おおっ、今度こそどん底キター!」と即座に反応したい、と妄想しています!

②『ROYAL STRAIGHT FLUSH Vol.3』について

このチャプターでは、「どん底」が収録されているベスト盤『ROYAL STRAGHT FLUSH Vol.3』の話をちょっとしておきたいと思います。

僕が完全に「ジュリー堕ち」したのは2008年の『ジュリー祭り』東京ドーム公演でしたが、これまで何度か書いているように、僕にはその前に数年間の”第一次ジュリー堕ち期”があります。2005年にリマスター再発された3枚の『ROYAL STRAIGHT FLUSH』から、『Vol.2』をたまたま聴いて「これは」と感動したことがきっかけで、残る『1』『3』もすぐに聴き、さらにはポリドール期の全オリジナル・アルバム大人買いへと繋がっていったのでした。
そんな経緯が無ければ僕が『ジュリー祭り』にYOKO君を誘って「行ってみようか」と言い出すこともなかったのは明らかで、僕にとって『ROYAL STRAIGHT FLUSH』の3枚は『A面コレクション』以上に大切な、特別なベスト盤ではあるんですけど、ある程度ジュリーのポリドール期について(音源だけは)血肉としたかなぁという時期、ふと「ロイヤルの『3』って個人的にはお気に入りで大好きな想い出の1枚だけど、果たしてこの選曲で正解なんだろうか」と考えたことがありました。

『ROYAL STRAIGHT FLUSH』の収録曲構成は、まず冒頭1曲目にリリース当時の「最新シングル」をド~ン!と配して販促的な要素を持たせ、残りの11曲と併せて豪華な「ベスト」とするものですよね。
『1』の「カサブランカ・ダンディ」、『2』の「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」、『3』の「どん底」。
「今、旬なジュリー・シングル」が1曲目としてそれぞれの『ROYAL STRAIGHT FLUSH』の「顔」となります。

まず『1』は、ソロ・デビューから「カサブランカ・ダンディ」までのジュリーのキャリアの中から「誰もが知る」正に最強のラインナップ。厳選された文句のつけようのない圧倒的な「ベスト」です。
次に『2』の収録曲構成を見てみますと、「OH!ギャル」から「ス・ト・リ・ッ・パ・-」までの全シングル8曲。残る4曲に、惜しくも『1』の選曲から漏れてしまっていたシングルの中から「ウィンクでさよなら」「コバルトの季節の中で」「立ちどまるな ふりむくな」「さよならをいう気もない」をピックアップしています。当時既に『1』を購入済みのリスナーにとってはバランスの良い選曲で、こちらも先輩方は「文句なし」だったでしょう。

対して『3』の場合は・・・。
「麗人」から「どん底」までの全シングル7曲。ここまでは問題無しとして、残りの5曲で『1』から漏れていたシングル曲の収載は「あなたへの愛」のみ。あとは「勝手にしやがれ」「サムライ」「TOKIO」「ス・ト・リ・ッ・パ・-」という定番曲を再度収録しています。
いや、これは84年当時としては最適の選曲であったのかもしれません。レコードの時代ですし、もしかするとその頃『1』『2』の重版が止まり、お店で入手し辛くなっていた可能性も考えられます。新曲「どん底」を押し出し、新たなファンを開拓しようというなら、「ジュリーと言えばこの曲!」という大ヒット・ナンバーを『1』『2』と重複させる手はアリだったでしょう(まぁそれなら「危険なふたり」「時の過ぎゆくままに」も併せて全14曲にすべきだったのでは・・・とも考えますが、さすがに収録時間的にレコードの溝がキツイかな?)。
ただ、今になってみるとね。
ジュリーはその後も現役で歌い続けて、今年はデビュー50周年、「シングルばかり歌う」全国ツアーで、さらに新しいファン、中抜けのファンを獲得するでしょう。それはもう間違いない。そんなファンが、「やっぱりジュリーは凄い!何かCDを聴いてみよう」となった時、まず『ROYAL STRAIGHT FLUSH』はとても求め易い。『1』を買って、感動して『2』も買って・・・さらに『3』も買おうかと思ったら「あれっ、4曲かぶってるなぁ」みたいな感じになりはしないかな?と。

だからやっぱり僕は『3』の選曲については、当時としては無理っぽかったのかもしれないけど、まだまだ『1』に漏れたシングルもあったわけですから、「あなたへの愛」に加えて、「君をのせて」「あなただけでいい」「死んでもいい」「胸いっぱいの悲しみ」「魅せられた夜」「愛の逃亡者」「白い部屋」「巴里にひとり」の中から4曲選んで収録した方が良かったんじゃないか、と(今さらのように)考えてしまうわけです。
そのあたり、『ROYAL STRAIGHT FLUSH』3枚それぞれをリアルタイムで購入してこられた先輩方はいかがでしょうか。あ、でも先輩方はどのみちシングル盤も購入していらっしゃるから「重複」はさほど気にならない・・・むしろ日常茶飯事な感じだったのかなぁ?
まぁ僕自身も、半数以上の重複なんてまるで問題なく、喜んで『黒盤』買いましたけどね・・・。

③ジュリーがラジオで語った「どん底」の話

とんでもない大長文を避けるために記事をチャプター分けしているのに、今日はいつも以上に長くなってしまいますが・・・少し前に福岡の先輩から『愛をもとめて』以外のジュリーのラジオ音源を授かっておりまして(厖大な量です!じゅり勉途上の身としては本当に感謝、感謝です)、その中に「どん底」について語られている84年元旦放送のものがありますので、この機会に書いておきたいと思います。
これは『ニューイヤー・トップスター・スペシャル/おめでとう沢田研二です』という新春特番のようです。


今年にかける意気込みであるとか、あれこれを面白おかしく、おとそ気分でお届けしたいと思います。

とのことで、長尺で色々な話をしてくれるジュリー。「あっ、それ当時聴いた!」と仰る先輩方は多いでしょうけど、当然僕は今回初めて聴いたラジオ音源。
冒頭では「初夢」の話とかしてくれていますが、それは来年の元旦に更新する記事のネタにとっておきましょう(鬼が笑うで~)。
他、「きめてやる今夜」や『山河燃ゆ』の話題などもまたいずれの機会に譲り、番組の最後、ニュー・シングル「どん底」リリース告知(この時点で曲はもう完成していて音源を流してくれています)に絡めてジュリーが語る84年の展望の話を書いていきましょう。


今年は歌の方でも頑張らなければいけない、と言っておりますが、どういう具合に頑張るのか・・・2月の1日に新曲が出ます!これは普通のことではございません。普通ですと1月中に出す(笑)!

ここでジュリーが笑っているのは、84年のジュリーはこの元旦のラジオの仕事が終わったら1週間の休みなのだそうで、「こんなこと初めてですよ!」と。
働き者のジュリーですからねぇ・・・物足りない、ウズウズする、みたいな雰囲気が伝わってきます。長い「休み」があることに自嘲気味にもなっているんですね。


エネルギーを溜めて、2月からドッ!とこう突っ走ろうという。この(新曲の)タイトルがなんと「どん底」。
酒飲みの東京近辺の人は「新宿に”どん底”という酒場があったなぁ」とか、読書家の人ならゴーリキーのね、僕は読んどりませんが、話だけは知っております・・・そっちを思い出しているかたもいらっしゃるかもしれません。


実は僕も、ゴーリキーは読んだことがありません・・・。
ジュリーは明るい調子でさらに話を続けますが、その声から「僕はもっともっと仕事がしたい!」感がますます伝わってくるという。


僕は(去年1年を)シビアに反省しているんです。
「背中まで45分」、ズッコケた。井上陽水に騙された・・・ウソウソ(笑)。「晴れのちBLUE BOY」・・・これは過激に走った。加瀬さんが「これは絶対売れる!」と言った・・・加瀬さんに騙された(もちろんこれも冗談です)。人のせいにしてはいけない!
そこで、大ちゃんだ、あの井上大輔さんだ、と言って「きめてやる今夜」。自分の作った曲を捨ててまで井上さんに作って貰った。これで賞をたくさん貰ったけど、いまひとつだった。こういう反省の上に立ちまして、今年は自分の枠をもっと拡げよう、と。


で、問題はここからの話なんです。僕が今日このラジオ音源のことを書いたのは、先輩方に教わりたいことがあるから・・・ジュリーはこの後、新規ファンの僕にはまるで分からない「84年の予定」について話すんです。


今年はアルバムを2枚出す!

と。
そこまで聞いていた段階で僕はそれを『NON POLICY』と先述の『ROYAL STRAIGHT FLUSH Vol.3』のことだと思いました。でもどうやら違うみたいで。
まず「
全国ツアー最中の夏に1枚出す、派手なアルバムにしたい!」と話してくれて、これは間違いなく『NON POLICY』のことですわな。続けて「今はまだ詳しく話せないのですが、秋くらいに」ということで

これはタネも仕掛けもある・・・話せない話というのが面白い話だ、と思って貰っていいわけです。「えっ、何で?何でそうなってるの?」と(ラジオを聴いてくれているみなさまが)思うような話ですから。話したくてしょうがない、でも話せない。

これは一体・・・?
84年の秋にアルバムは出てません・・・よね?もしかして僕の知らない企画盤とか、ショーとかあったのでしょうか。それともこの時のジュリーの話はその後立ち消えになったとか?
僕にはまったく分かりません・・・。

ともあれジュリーは番組の最後に


今年は本当に、バッチシ決めてみるからね!


と宣言。同時期の『ヤング』にも記述があったように、ジュリーがこの新曲「どん底」に並々ならぬ気合で臨んでいたことを改めてこのラジオ音源で学びました。

繰り返しになりますけど、結果としてセールスの成功は勝ち取れなかったシングル「どん底」。
ジュリー自身にも、長いファンの先輩方にとってもこのシングルは苦い思いが未だ残っている不遇の曲なのかもしれません。でも、もしジュリーが今回のデビュー50周年記念ツアーでこの曲を採り上げたとしたら、リリース当時の気合、意気込みをそのまま改めて再現してくれるような、素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれるのではないでしょうか。
最高にカッコイイですよ、きっと。
実現したら、それがそのまま最後の機会となるかもしれませんしね。ここはひとつ、「どん底」のセットリスト入りを大いに期待しようではありませんか!


それでは、オマケです!
先日ピーファンの先輩に新たにお借りした貴重な切り抜き集の中に、ちょうど84年繋がりで『ときめきに死す』の資料がありましたので、今日はそちらをどうぞ~。


Tokimekinisisu1

Tokimekinisisu2

Tokimekinisisu3

Tokimekinisisu4

Tokimekinisisu5


それでは次回更新は・・・。
今日は『A面コレクション』から「セットリスト入りギリギリ線上」の曲を考えました。次はCO-CoLO時代のシングル群に目を向けてみたいと思います。
これは『A面コレクション』以上に悩みどころですよ。どの曲も「この機に歌ってくれる」ようでもあり「ギリギリのところで割愛される」ようでもあり・・・。
でもジュリー自身がかつてMCで語った「心を込めて作ったのに、一度のツアーしか歌っていない曲もある」ようなアルバム収録曲、隠れた名曲と比較した時、「今回のツアーではもしかしたら・・・」と、光を当てられる機会を僕らファンが期待できるぶん、やっぱり「シングルA面」というだけでそれは特別な曲なんですよね。

みなさまもCO-CoLO時代のシングルの中で、「是非今回のツアーで聴きたい」と考える意中の曲はあるでしょう。ですので、お題曲だけではなく「CO-CoLOのシングル」という括りの話も少しだけ交えるつもりです。
どうぞお楽しみに!

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