瀬戸口雅資のジュリー一撃伝授!

2020年11月18日 (水)

沢田研二 「夢を語れる相手がいれば」

from『TOKIO』、1979

Tokio

1. TOKIO
2. MITSUKO
3. ロンリー・ウルフ
4. KNOCK TURN
5. ミュータント
6. DEAR
7. コインに任せて
8. 捨てぜりふ
9. アムネジア
10. 夢を語れる相手がいれば
11. TOKIO(REPRISE)

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一週間続いたマンションの排水管更新立ち入り工事も今日が最終日。
在宅担当の僕は予定通り1日かけてブログの更新に充てることとなりました。

前回記事で、個人的妄想舞台『act#11 阿久悠』オープニング曲に「思いきり気障な人生」こそふさわしい、なんてことを書きましたが、今日はエンディング。
指名曲は「夢を語れる相手がいれば」です。
どうでしょう・・・ジュリーが阿久さんの作詞家人生をactで歌い演じるとしたら、これこそエンディングにぴったりだと思いませんか?

またしても妄想考察系の記事となりますが、今回もよろしくおつき合いください。


まず最初に、僕の考える『act#11 阿久悠』全演目20曲の阿久作品をご紹介しておきましょう。
(カッコ内は「作曲者/歌手」です)

1. 思いきり気障な人生
 (大野克夫/沢田研二)
2. 時の過ぎゆくままに
 (大野克夫/沢田研二)
3. 探偵~哀しきチェイサー
 (大野克夫/沢田研二)
4. アメリカン・バラエティー
 (大野克夫/沢田研二) 
5. ウォンテッド
 (都倉俊一/ピンク・レディー)
6. グッバイ・マリア
 (大野克夫/沢田研二)
7. 五番街のマリーへ
 (都倉俊一/ペドロ&カプリシャス)
8. ブルージンの子守歌
 (加藤和彦/萩原健一)
9. ナイフをとれよ
 (大野克夫/沢田研二)
10. マッハバロン
 (井上忠夫/すぎうらよしひろ)
11. 真赤なスカーフ
 (宮川泰/ささきいさお)
12. 愛よその日まで
 (布施明/布施明)
13. ヤマトより愛をこめて
 (大野克夫/沢田研二)
14. お前に惚れた
 (井上堯之/萩原健一)
15. 麗人
 (沢田研二/沢田研二)
16. 女神
 (佐藤隆/沢田研二)
17. 薔薇の門
 (大野克夫/沢田研二)
18. 吟遊詩人
 (大野克夫/沢田研二)
19. 十年ロマンス
 (沢田研二/ザ・タイガース)
20. 夢を語れる相手がいれば
 (大野克夫/沢田研二)

いかがでしょうか?
とにかく20曲に絞るだけでも大変な作業でした。泣く泣く外した曲がどれだけあったか・・・。
ご覧の通り、ジュリー・ナンバーについては超有名曲ももちろん外せないものは入れましたが、世間的にはあまり知られていないであろう「隠れた名曲」を多めにピックアップしてみました。

一方で他歌手が歌った阿久作品の「カバー曲」はメジャーどころを選びましたから、みなさまも一部を除きほぼご存知というセットリストになっていようかと思います。
例外は、昭和の特撮&アニメ番組から抜擢した「マッハバロン」「真赤なスカーフ」の2曲でしょうか。
酔狂で選んだわけではありません。阿久さんは、僕らの世代にとって原風景とも言えるこのジャンルにおいても「一線を超えた」素晴らしい詞を多く残されているのです(本当は「今日もどこかでデビルマン」(アニメ『デビルマン』エンディングテーマ)なども入れたかったのですが、さすがにキリが無いので2曲に抑えました)。
そんな阿久さんの名篇をジュリーが歌う、という妄想は本当に心躍ります。

「マッハバロン」は井上忠夫さんの作曲がT-レックスばりのグラム・ロックでマニアの間でも評価が高いのですが、突出しているのは何といっても阿久さんの歌詞。

悪の天才が 時に野心を抱き
世界征服を夢見た時に
君はどうする 君はどうするか 君は
蹂躪されて 黙っているか

超絶なる悪から見ると「世界征服」とは「夢見る」ものなのだという発想も戦慄ながら、小学生の子供達が観るヒーローもののテレビ番組主題歌に「蹂躪」なんて言葉を採用するセンスには驚くほか他ありません。

当時はたとえ大人であっても馴染みの薄いフレーズ。
その証拠に、「パチソン」(昭和文化のひとつで、テレビ番組の主題歌を各地の名も無いバンドが耳コピで演奏し録音したフェイク・レコードがスーパー等で格安で売られていた時代の記憶はみなさまお持ちなのではないでしょうか。
その独創的過ぎる「コピー」っぷり(笑)は「パチソン」なるジャンルで現代も様々な意味で高い評価を得ています)版の「マッハバロン」はアレンジばかりか歌詞も耳コピだったらしく、「蹂躪」の聞き取りができていません(マニアにはそこがウケているのですが)。

オリジナル版「マッハバロン」
パチソン版「マッハバロン」

阿久さんの奔放斬新なフレーズ使いが生んだ「歌詞違いパチソン」伝説の1曲にまつわる逸話です。

「真赤なスカーフ」の方は、女子でもアニメ『宇宙戦艦ヤマト』を観ていた人は多そうですから、このエンディングの名バラードもご存知のかたはいらっしゃるでしょうね。
上記セトリで「真赤なスカーフ」、布施さんの「愛よその日まで」、そしてジュリーの「ヤマトより愛をこめて」の3曲は、「ヤマト」繋がりのメドレー形式をイメージ。
(余談ながら、「探偵~哀しきチェイサー」から「ナイフをとれよ」までが、「阿久探偵」物語だったりします)

さて、「夢を語れる相手がいれば」。
僕はこの歌を、アルバム『思いきり気障な人生』収録の「ナイフをとれよ」の一人称・二人称を入れ替えた「返し歌」のように聴いているのです。
つまり「ナイフをとれよ」で、「女の愛に傷つけられ」て主人公の部屋に転がり込んできた親友の男「おまえ」が一晩中したたかに酔い、あくる朝に煙草の煙を残して去っていき、そのまま行方知れずとなった・・・そんな親友同士の久々の偶然の再会を人物視点を変えて描いた歌が「夢を語れる相手がいれば」というわけです。

三年前から 深酒はやめにした
E♭                Cm           Gm7

その朝 悲しい女の顔を見たから
      A♭    B♭  E♭  Cm    G7   B♭

だけど今夜は 君と出会えて
      A♭            E♭       C7

久々に飲もうかと 思っているよ ♪
   Fm7        B♭7    F7   B♭ E♭

「ナイフをとれよ」では主人公を歌い手のジュリー、酔い潰れた友人を阿久さん自身の分身として詞に託していたのが、「夢を語れる相手がいれば」では逆に主人公が阿久さんで、「君」(ジュリー)と行き会って久々に酒を酌み交わしている、それを歌手・ジュリーが歌い演じているという二重構図。

また、この曲を語る上で欠かせないと思うのが、当時現実の時代背景です。

70年代から80年代への移り変わりって、特に音楽においては独特なんだよなぁといつも思います。
ジュリーで言うとシングル「TOKIO」が80年代幕開けの曲として広く語られていますし、それは正しくその通り。でもアルバム『TOKIO』は79年にレコーディング、リリースされていて、『思いきり気障な人生』『今度は、華麗な宴にどうぞ。』『LOVE~愛とは不幸を怖れないこと』と続いた阿久=大野時代から大胆にコンセプト・チェンジ、音作りもテクノやニューウェーヴの影響を受けガラリと変わったという面はあるにせよ、どちらかと言えば「70年代締めくくりの1枚」として製作が始まったんじゃないかと思うんですよ。
お題の「夢を語れる相手がいれば」が阿久=大野作品の集大成的な詞曲ですし、何よりアルバムに大野さんだけでなく堯之さんや速水さん作曲のナンバーが収録されている点に注目したい・・・当初は、『JEWEL JULIE』のような「井上バンドとのアルバム」としてスタートしたんじゃないかなぁ、と。

ジュリーがアルバムから選んだファースト・シングルが大野さんの「ロンリー・ウルフ」だったというのもそんな経緯からかなぁと想像したりね。

しかし加瀬さんの「TOKIO」が糸井重里さんを作詞に迎え完成した時点で、このアルバムは時代を先取りした前衛的なコンセプトを宿命づけられました。そのくらいインパクトの強い楽曲が誕生したのです。
「TOKIO」をアルバム・オープニングとエンディングのリプライズに配する構成は、製作途中で切り替えられたアイデアだったんじゃないかなぁ。
まぁこれも僕の妄想ですけどね。

でも「TOKIO」の2ヴァージョンに挟まれたアルバム収録各曲の本質はあくまで「70年代」のジュリーであり、「夢を語れる相手がいれば」はそれを明快に表すバラードだと僕は考えます。

阿久さんについては、もちろん80年代に入っても幾多の名篇を手がけていますし、ジュリーとの絡みもすぐにザ・タイガース同窓会時に実現しています。
ただ当時のシングル・レコード情報歌本(『YOUNG SONG』『HEIBON SONG』)を見返すと、70年代までは阿久さんの作詞クレジットがこれでもか!と居並び歌謡界のド真ん中に君臨していたのが、作品数だけで言えば80年代に入ってまず松本隆さんにその座を譲っているという現実があります。
それをして「阿久悠=70年代歌謡曲の象徴」との見方はできるのかもしれません。

ジュリーはその直中で阿久さんと一緒に時代を作っていたわけで、阿久さんにとってジュリーが(作品を通して)「夢を語れる(矜持を託せる)相手」だったことは間違いないでしょう。
70年代の最後の最後に阿久さんがジュリーに提供した「夢を語れる相手がいれば」を、そんなふうに聴いてみるのもアリではないでしょうか。


それでは次回更新は、未執筆だったザ・タイガースのオリジナル・ナンバーを考えています。

今週は結構暖かい日が続いていますが、これからあっという間に冬らしくなるのでしょう。
みなさま、お身体どうぞご自愛ください。

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2020年11月13日 (金)

沢田研二 「思いきり気障な人生」

from『思いきり気障な人生』、1977

Omoikirikiza

1. 思いきり気障な人生
2. あなたに今夜はワインをふりかけ
3. 再会
4. さよならをいう気もない
5. ラム酒入りのオレンジ
6. 勝手にしやがれ
7. サムライ
8. ナイフをとれよ
9. 憎みきれないろくでなし
10. ママ......

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忙しい日々が続いていましたが、今日は1日たっぷり時間ができましたので更新します。

と言うのも実は住んでいるマンションの排水管更新工事がありまして、これがなかなか大がかりな工事で一週間かかるのです。
僕の部屋は5階で、そこから1階まで共用で縦に通っている管を各階で切断し取り替えるという。
洗面所の壁を豪快にブッ壊して大穴を開け粉塵を飛ばし爆音を響かせながら・・・いやはや作業の方々も大変です。で、工事の性質上作業者が部屋に1日立ち入ることになるわけで、必ず住人の誰かが在宅していなければならないんですね。
カミさんと分担でスケジュールを組み、僕は今日と来週水曜に有給をとって在宅担当。こうしてブログを書く時間ができたというわけ。
ついでに早々の予告しておきますと、次回更新はその来週水曜、18日の予定です(笑)。

さて今日は、前回に引き続いて「妄想考察」系の記事となります。
お題は77年リリースのアルバム・タイトルチューン「思いきり気障な人生」。
個人的には好きになるまで結構時間がかかった曲で、どのような「気づき」を経て好きになっていったか、後追いファンの僕が妄想含めてこの歌をどんなふうに聴いているのか、といった感じの記事になります。
今回もよろしくおつき合いください。


これまで何度も書いているように、僕には『ジュリー祭り』参加の数年前、勤務先で『ROYAL STRAIGHT FLUSH』3枚の再発試聴盤を聴いたことがきっかけとなった”第一次ジュリー堕ち期”というのがありまして、友人のYOKO君と競うようにして(20年の付き合いだったのに、彼がジュリーを好んで聴くことをそれまで知らなかったという)ポリドール時代の全オリジナル・アルバムを次々に購入していきました。

ただ、アルバム『思いきり気障な人生』を購入したのは本当に最後の方で、聴いてからもしばらくの間はアルバムとして高い評価はしていませんでした。
理由は単純、「既に知っている曲が多かった」から。

「あなたに今夜はワインをふりかけ」「さよならをいう気もない」「勝手にしやがれ」「サムライ」「憎みきれないろくでなし」・・・収録半数に及ぶこれら5曲は(ヴァージョン違いが2曲あるとはいえ)、『ROYAL STRAIGHT FLUSH』との重複があります。
未知の名曲を体感するスリリングな感覚が薄かったというわけですね。
「ナイフをとれよ」「ママ…」の2曲を熱烈に好きになったものの、アルバム1枚通して聴く回数は少なく、他曲への評価が遅れてしまいました。

今では詞曲アレンジとも大好きになっている今日のお題「思いきり気障な人生」の場合は、当初阿久さんの歌詞に抵抗がありました。
「抽象的過ぎて、何が言いたいのかよく分からないなぁ・・・」と(恥)。
YOKO君の方は
「出たなッ、阿久さんの「虫」シリーズ!」
とか言って最初から大喜び(「雨だれの挽歌」「バタフライ革命」と合わせ、僕らの間では「虫・三部作」と呼ばれています笑)だったんですけどね。僕はどうも馴染めなかったんです。

あなたは 気障を悪いというけれど
      Dm              C           F

心に気障をなくしちゃつら過ぎる ♪
  Gm         E7               A7

僕の鈍い感性では、ジュリー・ヴォーカルをもってしてもこの詞が胸に伝わってこない・・・。

それが一転「そうか!」と腑に落ち劇的にこの詞が好きになったのは、割と最近のこと。
きっかけは、年長のタイガースファンの友人・YOUさんがジュリーのコピー・バンドを組んでLIVEを開催、セットリストの採譜をお手伝いした際、洋楽カバー曲「絆」と真剣に向き合ったことでした。

「絆」はその時のYOUさんのLIVEのメイン・コンセプトになっていて、ステージ全体にストーリー性を持たせるにふさわしい楽曲でした。
豪快なアレンジ、何よりジュリーのあの凄まじいヴォーカルです(それをコピーし自ら歌おうというYOUさんのチャレンジ魂にも大いにビビリましたが)。
で、採譜をしながら
「ジュリーのこの歌い方は・・・何か似た感じの曲がオリジナルのレコーディング音源にあったはず」
と思い、行き着いたのが「思いきり気障な人生」でした。

では、「好きになって以後」の個人的な解釈・・・まず大野さんの作曲から見ていきましょう。

みなさん、「思いきり気障な人生」のサビって何処だと思います?
この頃の阿久=大野作品は「詞先」の作業だったそうで、『今度は、華麗な宴にどうぞ。』『LOVE~愛とは不幸を怖れないこと』含め、アルバムの中に必ず1、2曲は「こりゃあ強引だ~」と思えるほど阿久さんの詞に寄せきった音符割り、譜割りの曲(←それがまた良いのです)があります。
頭を一度マッサラにして「思いきり気障な人生」の歌詞カードだけ読むと、メロディーをつける際にどの箇所をサビに配置し作曲すればよいのか僕レベルでは本当に分からないところ、プロフェッショナル・大野さんがどう料理したのかと言うと

阿久さんが詞を書いていない部分に他ヴァースから言葉を借りてきてサビにしてしまう!

という驚嘆の手法をブッ込んでいるんですね。
具体的には1番が2’38”あたり、2番が5’32”あたりから展開する、本来であれば楽器伴奏部とコーラスのみのヴァース(歌詞カードには「アアア・・・アアア・・・」と記されているトコね)。
そこに

いやだよ そんな面白くもない ♪

の歌詞部を借り、リフレインとして配しています(「Dm→C7→Dm」に載せているので、阿久さんの同フレーズ歌詞部とはコード進行は異なります)。
1番、2番とも同じようにメロディーが載っている点から、これがレコーディング時のジュリーのアドリブでないことは確実。
大野さんが「ここで、こう歌って!」と作曲段階で用意していた「サビ」というわけで、そのジュリーの歌い方が「絆」っぽいと僕には聴こえ、もしかすると大野さんから「『絆』みたいな感じで歌って欲しい」とサジェスチョンがあったのでは、とすら考えます。

ジュリーのアルバム丸ごと1枚、阿久さんとのコンビですべての収録曲の作曲を担うは大野さんのキャリアで初の挑戦でした。
大野さんは気合を入れてアルバム・トータル・コンセプトまで練って取り組んだに違いなく、「絆」たった1曲で壮大なドラマを表現し得るジュリー(バックで演奏していても「おおっ!」と戦慄したでしょう)の資質とキャリアを買って、「ドラマ性」をアルバム・コンセプトとし、そのプロローグとしてふさわしいメロディーを1曲目「思いきり気障な人生」を以ってジュリー・ヴォーカルに託したのではないでしょうか。

「歌で演じる」ジュリーの天賦の才。
改めてその特性を考えると、あまりに阿久さんの主張が強過ぎるように感じていた「思いきり気障な人生」の歌詞も、聴こえ方はまったく違ってきます。
「気障をなくしちゃつら過ぎる♪」は実質阿久さんの矜持で、それをジュリーが演じている、と。

これは、10代だった僕が無知故に「きめてやる今夜」の歌詞に引っかかりを感じ好きになれずにいたのが、本格ジュリー堕ち後に「あれは元々ジュリーが裕也さんのために作った詞だったのだ」と知ってガラリと印象が変わり大好きになった、そんな経緯と似ています。

そして、「思いきり気障な人生」のドラマ性から転じた僕の妄想はさらに暴走するのです。
あり得ない話だけど、長い年月を経て今もし『act』シリーズの11作目が復活実現し、それがズバリ『阿久悠』だったとしたら、オープニング曲は「思いきり気障な人生」で決まり!ではないかと。

僕はもう次の更新記事を練っています。
そこでは、妄想版『act-11 阿久悠』演目全20曲も紹介させて頂くつもりです(笑)。

あまりにも有名な曲が多い阿久作品ですが、どのみち妄想ですからジュリー・ナンバーについては完全に個人趣味に走って、世間的にはマイナーな曲が中心。
さらに「actらしさ」も考えジュリー以外の歌手が歌った阿久作品のカバーもいくつか入れてます。

オープニングは「思いきり気障な人生」。
ではエンディングは?
それが次回のお題です。

ひとまず今年の『秋の妄想考察シリーズ』(←シリーズだったんかい!)の締めくくりとなる次回更新。
さぁ、僕の考える『act-11 阿久悠』のエンディングはどの曲でしょうか?
全ジュリーファン投票で多数決をとったら「ヤマトより愛をこめて」あたりが支持を集めると思いますが、僕は敢えてマイナー曲で攻めますよ~。

よろしければコメントにて、みなさまの考えるエンディング曲も教えてくださいね。

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2020年11月 3日 (火)

沢田研二 「New York Chic Connection」

『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Years』収録

Singlecollection1_20201031130801

disc-42

Wataridori

1. 渡り鳥 はぐれ鳥
2. New York Chic Connection

(『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Years』全収録曲リストは、「恋から愛へ」の前回記事をご参照ください)

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”『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Years』再発売・熱烈推奨”のテーマでもう1曲、この機に書いておきたいと思います。

お題はシングル『渡り鳥 はぐれ鳥』のB面「New York Chic Connection」。「ロック」に特化したジュリーが好きなファンから支持の高い1曲のようですね。
今日は妄想考察系の記事となりますが、よろしくおつき合いください。


長いジュリーファンの先輩方なら、特にセールス全盛のポリドール期のシングルについて
「もしB面曲の方がA面だったら?」
と想像してみたことがあるのではないですか?

「あなたに今夜はワインをふりかけ」のような特殊な例を除き、「ファン以外にはまったく知られていないB面曲」がシングルA面として多くの人々の記憶に残っている」という架空の歴史を妄想。
実際のA面曲の実績を凌ぐヒットになっていたかもしれない、曲が違うわけですから当然衣装のコンセプトも違ってくる、この曲ならこういう衣装で、ベストテンは最高何位で・・・と、楽しい想像をかきたてられます。

その点で考える僕の個人的イチ推しは「お前のハートは札つきだ」ですかね~。
『Rock'n Tour '79』のLIVE音源なんか聴いてるとジュリーのハジケっぷりが伝わりますし、詞曲アレンジ演奏、何もかもあの時代ジャストのシングル・ヒットにふさわしい名曲たりえたんじゃないかな?

逆に、「これはB面だからイイんだよな」と思える曲もありますね。
大ヒットしたA面の裏側に隠れた大名曲。一般的には知られていなくても、ジュリーファンである自分はこの名曲を知っている、大切な宝物のように思っている・・・そんな状況自体が愛おしいという。
例えば「青い恋人たち」なんてどうでしょう?
A面が「危険なふたり」であることは揺るぎない、それでももしかしたらA面よりB面の方が好きかも、と1人胸をキュンキュンさせている。そんなスタンスの名曲。

で、今日のお題「New York Chic Connection」。
僕にとってはそのいずれのパターンにも当て嵌まるシングルB面曲なのです。
以下、色々と問題提起じみたことも書きますが、前提として僕はA面「渡り鳥 はぐれ鳥」、B面「New York Chic Connection」いずれも大好きな曲で、今回記事はその上での個人的妄想ということで誤解なきよう、よろしくお願い申し上げます。

「New York Chic Connection」は、楽曲の仕上がりを俯瞰するとまだまだ発展途上要素もあって、その意味では「いかにもB面曲」との印象です。
アレンジや演奏には、それまでのジュリー・ナンバーで徹底されていた時代先取り要素は無く、初期ニュー・ロマンティックの後追い感は否めません。もちろんエキゾティクスの腕前あればこそ出来ることなんですけど。

またこの曲は大沢誉志幸さんが作詞・作曲を一手に担っています。
大沢さんはソロ・キャリアでも自身の作詞作品は少なく、どちらかと言うと作曲特化型のソングライターで、「New York Chic Connection」の作詞については語感追及。
例えば「~tion」の英単語で語尾を揃える手法にしても、さえきけんぞうさんや佐野元春さんのような全体のストーリー性から意味を持たせ演繹法で編み出された単語並びではなく、思いついたまま列挙している感じです。

New York Chic Imagination
F            D♭            C

New York Chic Temptation
F            D♭            C

New York Chic Connection ♪
D♭ E♭             F

いや、カッコイイんですよ。
でも
「これほどスリリングなメロディーに、この手法は勿体ないなぁ」
・・・と、これはジュリーファン堕ち間もないヒヨッコ時代だった僕の、正直かつ浅はかな感想。

84年のこの時期にあの大沢さんの作曲作品をリリースするからには、「New York Chic Connection」が企画段階ではバリバリの「A面候補」だったと考えるのは自然ですし、当初大沢さんのこの曲には作詞家さん(時期的には三浦徳子さんとか大津あきらさんとか)のまったく違う詞が載る予定だったのではないでしょうか。
大沢さんの詞はあくまでプリプロ用だった、というのが僕の推測(妄想)です。

ゴキゲンな曲を手にしたジュリーとスタッフが、さぁどういう風に仕上げてやろうか・・・とそんな時、もうひとつのA面候補曲「渡り鳥 はぐれ鳥」に、「せっかくスペクトラムの新田一郎さんの歌なんだから、エキゾに加えてホーン・セクションを従えたステージングはどうだ?」との案が持ち上がる・・・「うん、これは行けるぞ。ド派手なジュリー復活にふさわしい!」

かくして「New York Chic Connection」はB面扱いへ。
「時間も無いし、大沢さんのプリプロの詞がなかなか雰囲気良いし、そのまま使っちゃえ。演奏はとりあえず今流行りのパターン踏襲で」
(いや、繰り返しますが全部妄想話ですよ汗)

しかし、ここで僕は言いたい(どん!と机を叩く)。
「ホーン・セクションを従えたド派手はステージング」シングル・ヒット展開案を「New York Chic Connection」でも試してみよう、と切り出す人は誰かいなかったのか!と。

絶対嵌る、と思うんです。
キーも金管と相性の良いF(ヘ長調)ですしね。

もともと曲自体がメチャクチャにカッコ良いし、後の「muda」のような圧倒的なブラス・パワー・ポップに化けていた可能性充分です。

詞の方は専門の作詞家さんが大沢さんのフレーズを生かす形で手を入れ、ニューヨークの雑踏をしたたかに生きるバイセクシャルな男のストーリー性を持たせます。
新田さんに土下座してA面B面をひっくり返し、「New York Chic Connection」は当時のセールス苦戦を取り戻して余りある爆発的な大ヒットに。
さらに、ジュリーの独立話も吹き飛ぶ!

あり得た・・・かもしれないジュリー史の妄想ですがいかがでしょうか。

そうなっていたら当然アルバム『NON POLICY』にはこちらが収録されていたでしょう。
曲順も変わって、ふさわしいのはB面1曲目(CD6曲目)。「シルクの夜」をアルバム大トリにシフト、というのはどうでしょう?
ひいては、ネームバリュー抜群の新田さんが作曲した「渡り鳥 はぐれ鳥」が何とシングルでしか聴けないB面曲という凄まじく贅沢なリリースとなっていたわけで、これはもう歴史的1枚です。

とは言え、現実にはひっそりとB面曲に留まる仕上がりとなった「New York Chic Connection」もそれはそれで素晴らしい。
一般には知られていなくとも、ファンだからこそ大切に聴きたい1曲。
やっぱり「歴史通り」が一番しっくりくる楽しみ方なのかな、とも思います。

新しいジュリーファンの方がもしこの記事を読んでくださり、未知の名曲「New York Chic Connection」に興味が沸いてきましたら・・・是非『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Years』ご購入を。
前回記事に引き続き、熱烈推奨いたします!

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2020年10月24日 (土)

沢田研二 「恋から愛へ」

『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Years』収録
Original Released on 1971 シングル『君をのせて』B面

Singlecollection1

disc-1
1. 君をのせて
2. 恋から愛へ
disc-2
1. 許されない愛
2. 美しい予感
disc-3
1. あなただけでいい
2. 別れのテーマ
disc-4
1. 死んでもいい
2. 愛はもう偽り
disc-5
1. あなたへの愛
2. 淋しい想い出
disc-6
1. 危険なふたり
2. 青い恋人たち
disc-7
1. 胸いっぱいの悲しみ
2. 気になるお前
disc-8
1. 魅せられた夜
2. 15の時
disc-9
1. 恋は邪魔もの
2. 遠い旅
disc-10
1. 追憶
2. 甘いたわむれ
disc-11
1. THE FUGITIVE~愛の逃亡者
2. I WAS BORN TO LOVE YOU
disc-12
1. 白い部屋
2. 風吹く頃
disc-13
1. 巴里にひとり
2. 明日では遅すぎる
disc-14
1. 時の過ぎゆくままに
2. 旅立つ朝
disc-15
1. 立ちどまるな ふりむくな
2. 流転
disc-16
1. ウィンクでさよなら
2. 薔薇の真心
disc-17
1. コバルトの季節の中で
2. 夕なぎ
disc-18
1. さよならをいう気もない
2. つめたい抱擁
disc-19
1. 勝手にしやがれ
2. 若き日の手紙
disc-20
1. MEMORIES
2. LONG AGO AND FAR AWAY
disc-21
1. 憎みきれないろくでなし
2. 俺とお前
disc-22
1. サムライ
2. あなたに今夜はワインをふりかけ
disc-23
1. ダーリング
2. お嬢さんお手上げだ
disc-24
1. ヤマトより愛をこめて
2. 酔いどれ関係
disc-25
1. LOVE(抱きしめたい)
2. 真夜中の喝采
disc-26
1. カサブランカ・ダンディ
2. バタフライ革命
disc-27
1. OH!ギャル
2. おまえのハートは札つきだ
disc-28
1. ロンリー・ウルフ
2. アムネジア
disc-29
1. TOKIO
2. I am I(俺は俺)
disc-30
1. 恋のバッド・チューニング
2. 世紀末ブルース
disc-31
1. 酒場でDABADA
2. 嘘はつけない
disc-32
1. おまえがパラダイス
2. クライマックス
disc-33
1. 渚のラブレター
2. バイバイジェラシー
disc-34
1. ス・ト・リ・ッ・パ・-
2. ジャンジャンロック
disc-35
1. 麗人
2. 月曜日までお元気で
disc-36
1. ”おまえにチェック・イン”
2. ZOKKON
disc-37
1. 6番目のユ・ウ・ウ・ツ
2. ロマンティックはご一緒に
disc-38
1. 背中まで45分
2. How Many "Good Bye"
disc-39
1. 晴れのちBLUE BOY
2. 出来心でセンチメンタル
disc-40
1. きめてやる今夜
2. 枯葉のように囁いて
disc-41
1. どん底
2. 愛情物語
disc-42
1. 渡り鳥 はぐれ鳥
2. New York Chic Connection
disc-43
1. AMAPOLA(アマポーラ)
2. CHI SEI(君は誰)
bonus disc
1. 晴れのちBLUE BOY(Disco Version)

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この2週間、職場の産業廃棄物を片付けたりする仕事があって埃まみれになったせいか体調を崩し、加えて酷使した腰もいたわりつつ・・・前回更新からちょっとご無沙汰してしまいました。

今年は全国ツアーの中止で極度のジュリー枯れ・・・新しい情報もなかなか入って来ない時期が長かったですが、今月は大きな動きがありました。
映画『キネマの神様』ヴィジュアル公開!
一気にジュリーファンも賑やかになりましたね。これだけカッコ良いヴィジュアルが出てくると、一層映画公開への期待が高まります。

12月にはNHKのDVDも発売されますし(当然僕も予約済み)、LIVEが無いのはとても淋しいけれど、いよいよ楽しみが近づいてきたなという感じです。

さらに、『キネマの神様』の情報と同時にじゅり風呂さんの記事で知ったのが、『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』の再発売決定。
僕はこれ持ってるんですけど、今日はこの豪華なBOXをまだお持ちでないジュリーファンの皆様に熱烈にお勧めしたい、という主旨にて更新したいと思います。
よろしくお願い申し上げます。


僕が『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』を購入したのは、『ジュリー祭り』での本格ジュリー堕ち後数ヶ月が経った頃でした。
今思えば一時廃盤状態となる前の時期で、タイミングとしてはラッキーだったのでしょう。
ただ、アマゾンさんでポチッとしてした直後商品が届くまでの間は「エライ高い買い物をしてしまった」と少し後悔もしていました。
ポリドール期のシングル両面網羅ですからボリューム的に値段が張るのは当然、でも単純に計算しても収録されているうち半分の曲は『A面コレクション』でこと足りてるわけでね。
割高だよなぁ、と思ってしまったんです。

ところがいざ聴いてみると・・・何ですかこのB面曲群のレベルの高さ、素晴らしさは。
もちろん長いファンの先輩方はシングルレコードを聴いていらしたでしょうからとうにご存知のことでしょうが、僕は「愛はもう偽り」も「淋しい想い出」も「青い恋人たち」も「遠い旅」も「夕なぎ」も「バタフライ革命」も「I am I(俺は俺)」も「クライマックス」も「ジャンジャンロック」も「ロマンティックは御一緒に」も・・・とにかく書ききれないほどのシングルB面大名曲を知らずにこのBOXを買ったのですから、そのインパクトたるや・・・ご想像ください。

「最近になってジュリーに堕ちた」というファンの方がもしこの記事を読んでくださっていたら、ここで断言しておきます。
このBOXはマスト・アイテムです。
少々お値段が張ろうが、この機に是非ご購入をお勧めいたします!
B面にはアルバム収録との重複もありますが、油断は禁物ですよ~。「世紀末ブルース」「バイバイジェラシー」等は全然違うヴァージョンですから。

さらには復帰組、或いは「ずっとファンだけどシングルレコードは失くしてしまった」と仰る先輩方も、かつて手にされていたシングル盤をそのままの形でディスク化した企画物として、きっと満足できる商品だと思います。
例えばディスクの1枚1枚にしっかり付いているジャケット、歌詞カード。
『君をのせて/恋から愛へ』ですと

Img01

Img02

Img03

↑歌詞をすべて載せるとマズイのでトリミングしてあります

「君をのせて」タイトル下に付記してある「”合歓ポピュラー・フェスティバル”参加曲」。
これだけでもレコードを買った当時を懐かしく思い出されるのではないですか?

あと個人的に惹かれるのが、ある時期まで必ずついていた「英題」です。
変に強引な直訳だと興醒めになるところ、上添付画像の通り「君をのせて」が「MY BOAT FOR YOU」、「恋から愛へ」は何と「PASSION TO LOVE」ですよ。
ズバリ!です。

ポリドール時代にジュリー・ナンバーの「英題」をどなたが担当されていたのか興味があります。
相当センスに長けた人がいらしたのかな。

さて僕は世代的にも本格的にジュリー堕ちした時期的にも完全に後追いのファンなので、ジュリーの作品リリースを後から時系列に脳内整理するだけで大変な作業でした(楽しかったですが)。
当初よくゴッチャになっていたのが、ファースト・ソロ・アルバム『JULIE』とファースト・ソロ・シングル『君をのせて』のリリース時期。
ソロ歌手としてのアルバム・デビューがザ・タイガース活動期で、シングル・デビューが解散後というのはなかなか他に例もなく、「君をのせて」もタイガース在籍時代、と思い込んでしまっていたことがあったり。

で、正しいリリース時期を把握するとどうしても考えたくなるのがPYGとの並行性です。
前提として当時のジュリーファンはほとんどが「タイガースの頃からジュリーが好き!」な先輩方でいらしたと考えてみます。
タイガース解散後、前衛的なバンド「PYG」が結成され、そこでジュリーは「花・太陽・雨」「やすらぎを求めて」「自由に歩いて愛して」「淋しさをわかりかけた時」といった歌を歌い始めました。
メッセージ性が高い曲はタイガースの頃からあるけれど、PYGのそれは明らかにカウンター・カルチャー寄り。歌の内容ばかりかメンバーがグイグイ主張する演奏にまで思弁性があって。

「ジュリーは、バンド内の1ヴォーカリストとして難しい歌を歌う道に進んだんだ」

・・・と、リアルタイムのファンの皆様は、特別な「個」が発する圧倒的な大衆性こそジュリー本来の魅力とは分かっていながらも、新しい道を行くジュリーを変わらず応援していこうと決めた・・・そんな矢先のファースト・ソロ・シングル・リリースだったのではないですか?

まったく異なる2つのベクトルから並行リリースされるジュリーの歌。
最終的にはそれは、PYGの活動が「井上堯之バンド」へとシフトすることで統合されたように先輩方は感じていらしたのかな。

ただ、そんな中シングル『君をのせて』B面にジュリーの自作曲「恋から愛へ」が収められた意義がとても大きいように思えます。
タイガースでデビュー以来、ジュリーが作詞・作曲を1人で担った曲がレコードとなるのは、これが初めてだったんですよね?

72年にジュリーは自身の持ち歌について「自分で作った方が歌いやすい(伝えやすい)」といった発言をしていて、自作曲リリースへの渇望は(タイガース時代後期あたりから?)ずっと強かったようです。

シングルB面という扱いではありましたが、ソロ歌手デビュー盤となった「恋から愛へ」の作詞・作曲には「この1曲に今の自分の創作力をすべて注ぎ込む!A面を食ってやる!」くらいの気合を感じます。
とにかく凝りまくっているんです。
その上で、良い意味でとても初々しいと言うか、ピュアなんですよね。

タイトル的には「恋→愛」を意味しているようですが、詞の内容は完全に「恋<愛」がテーマ。
「今僕の胸で燃えているのは、恋ではなく愛なのだ!」と世界中に発表するように歌われます。
作曲の肝は言うまでもなくサビ部のリズムチェンジで、ジュリーがタイガース時代から「幼少時に親しんだ歌」として挙げていた「美しき天然」のワルツのリズムを自身作曲で初めて採りいれた記念すべきナンバーが、この「恋から愛へ」というわけです。

作曲だけについて言えば過去に「素晴しい旅行」(タイガース)、「やすらぎを求めて」(PYG)など実績を残してきたジュリーですが、いずれも個人の主張よりも「バンドに寄せる」ことを重視して作曲しているように感じます。
「恋から愛へ」ではその点、ジュリーの純粋な解放感が際立つことに。

「恋から愛へ」を知らない、と仰る新規ジュリーファンの方々も多くいらっしゃるでしょう。
You Tubeで探せば曲は聴けるのでしょうけど、ジュリーファンとして本道を行くならばここは是非『JULIE SINGLE COLLECTION BOX~Polydor Yeas』再発版をご購入ください。

10年ほど前の僕が味わったように、CDケースを1枚1枚取り出してジュリーのシングル・レコードを追体験する至福に浸って頂きたい・・・熱烈にお勧めいたします。
まずはこのdisc-1から!

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2020年10月15日 (木)

沢田研二 「物語の終わりの朝は」

from『女たちよ』、1983

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1. 藤いろの恋
2. 夕顔 はかないひと
3. おぼろ月夜だった
4. さすらって
5. 愛の旅人
6. エピソード
7. 水をへだてて
8. 二つの夜
9. ただよう小舟
10. 物語の終わりの朝は

-----------------

久しぶりのジュリー・ナンバーお題での更新、別曲の記事の下書きをのんびり進めていた最中だったのですが、またしても訃報です。
先日のシローさんの時と同様、急遽の追悼記事を書くことになってしまいました。

筒美京平さん。80才。
日本が誇る音楽界の重鎮、宝のような方です。

洋楽のエッセンスを下地にしながらも、僕ら日本人が世代を越えて親しみ歌い継ぐ国民的メロディー、数々の名曲を作曲されました。
「サザエさん」の主題歌を知らない人はいませんよね。

一般的な筒美さんのイメージは「稀代のヒット・メイカー」でしょうか。
僕が持っている筒美さんのヒストリーCD-BOX(Vol.1&2併せて8枚組!)付属の豪華ライナー・ブックには、筒美さんが作曲を手がけたシングル曲のチャート・ランキング総覧が載っています。
あらゆる歌手のあらゆるヒット曲が列挙されているだけで壮観と言う他ありませんが、この中に「沢田研二」の名前はありません。意外なほど筒美さんとジュリーの関わりは少なかったのです。
そもそもシングル曲が1作も無いのですから。

しかし、筒美さんが長きに渡り作家として活躍された中のほんの僅かな一瞬、1983年のアルバム『女たちよ』において筒美さんは収録全曲を作曲し、「年月」とか「チャート」とかいった現世の概念を越えようかというほど濃密に、ジュリーと関わっているんですよね。
(このアルバム以外は唯1曲、71年のセカンド・アルバム『JULIEⅡ』収録の清廉なワルツ小品「二人の生活」が筒美さんの作品です)。

『源氏物語』をモチーフとして完全にストーリー形式のコンセプト・アルバム『女たちよ』からは、シングル・カット曲もありません。ですから、83年といえばまだまだジュリーがテレビ番組、年末の賞レース常連の頃だったにも関わらず、このアルバムはファン以外にはまったく知られていないでしょう。

まるで、普段輝かしい陽の中で世間の視線を浴び続けている才人達(歌手・ジュリー、作詞・高橋睦郎さん、作曲・筒美さん、アレンジ・大村雅郎さん)が密かに夜に隠れて、妖しい営みを交わし合ってているような・・・。
『女たちよ』はそんな名盤なのです。

筒美さんと言えば、一度聴いたらスッと覚えてしまうようなキャッチーな曲を連想しがちです。実際、世の中が知る筒美さんの代表曲はすべてその通りです。
しかし『女たちよ』での筒美さんの作曲は、二度、三度聴いたくらいでは把握不可能。
何度も聴いてメロディーが分かりかけてきた瞬間から虜となる・・・そういうタイプの名曲ばかりです。

新規ジュリーファンにとっても、そしてもし筒美さんのキーワード検索でこの記事を読んでくださっている筒美さんのファンの方がいらして、「へぇ、このアルバムは知らなかったなぁ」とお思いであれば、そんな方々にとっても・・・『女たちよ』は超・上級篇です。

アルバムのラストを飾るのが、今日のお題曲「物語の終わりの朝は」。

忍び隠れた営みの夜が明ける朝。
偉大な才人の「生=性」とその終わり。

筒美さんの旅立ちを受けて聴いたこの曲、1番が終わってガクンとキーが下降した瞬間、僕は『源氏』の物語とはまた別のところで筒美さんの真髄を新たに感じることができたように思います。

心より、筒美さんのご冥福をお祈りいたします。
合掌。

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2020年5月31日 (日)

沢田研二 「大切な普通」

from『新しい想い出2001』、2001

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1. 大切な普通
2. 愛だけが世界基準
3. 心の宇宙(ソラ)
4. あの日は雨
5. 「C」
6. AZAYAKANI
7. ハートの青さなら 空にさえ負けない
8. バラード491
9. Good good day

------------------

5月をこの曲の記事で締めくくる、とずいぶん前から決めていたのに、タイムリミットが迫ってしまいました。
考察もできぬまま、駆け足の簡単な記事で更新させて頂くこと、お許しください。

アルバム『新しい想い出2001』のトップを飾るBPM速めのモータウン・ビート・ナンバー「大切な普通」。
アルバムそれ自体がジュリーの新たな方向性を示す中で、GRACE姉さんのこの詞はその後のジュリーの創作を推し量るような、「的を得た」名篇のように思います。

今年2020年、全世界で突然のコロナ禍により「大切な普通」が危機に陥る事態となりました。
ごく平凡なサラリーマンである僕の生活も4、5月の間は様変わりをし、先週の緊急事態宣言解除を受けていったんは元に戻りました。
時短業務と週休3日がしばらく続いていたので、「普通」の生活パターンに戻すことになかなか精魂を使います。その上で、引き続き身体や環境に気を配らなければなりませんから、なおさらです。

「電車がまた混みはじめてきた」のも実感。
「収束には程遠い」のも実感。

それでも「大切な普通」を取り戻すべく、頑張れる環境にある自分は頑張らないと、と思っています。

ジュリーの「大切な普通」って、冒頭からギターがギンギンに鳴っているのでハードな印象を抱かれているかもしれないけど、メロディーはかなりポップ寄りなんですよね。例えば

ツナガル ツムグ ツチカウ ツクス ♪
A                       C#

「時の過ぎゆくままに」ばりの泣きの進行。
或いは

キーワード 縛られて ♪
         A            Aaug

「夕なぎ」ばりのオーギュメントの採用。

さらに、間奏のリード・ギターに派手なエフェクトはかけられていません。

ハードなアレンジの中の優しげな本質。
何か、せわしない仕事に追われていることが何気ない平穏な日常だった、と思わせてくれるような。

でも、忙しけりゃいいってものでもないとも思う・・・そりゃあ暇よりはよいのだろうけど、この機にちょっと「普通」の在り方を皆で考え直してみたい。
身の廻りで考えても、都会ばかりに極端に人が密集していたり、そういうことを普通に感じていたのはおかしなことだったんじゃないか、とかね・・・考え始めています。

みなさまはこの2ヵ月、どんなふうに過ごし、どんなことを考えていましたか?
この期間を、せめて今後に向けての貴重な経験値にしたいものです。

明日から6月です。ジュリーの誕生月ですね。
拙ブログではこの6月、久々にactシリーズの楽曲お題に取り組もうと思っています。
5月ほど時間の余裕がなく、どのくらいの曲数書けるかは分かりませんが、ジュリーの誕生日である25日更新のお題だけはもう決めています。

日常を頑張りつつ、マイペースで更新してゆきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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2020年5月28日 (木)

沢田研二 「強いHEART」

from『愛まで待てない』、1996

Aimadematenai

1. 愛しい勇気
2. 愛まで待てない
3. 強いHEART
4. 恋して破れて美しく
5. 嘆きの天使
6. キスまでが遠い
7. MOON NOUVEAU
8. 子猫ちゃん
9. 30th Anniversary Club Soda
10. いつか君は

-----------------

緊急事態宣言が明けました。
各業界業種の対応は様々かと思いますが、YOKO君の
情報によれば仲間いきつけの音楽スタジオが営業を再開したとか。
僕の勤務先も今週か
らほぼ通常モード。自粛期間の空白を取り戻さんとばかりの、特に関西の問屋さん、お店さんの元気、活気を感じられるのは嬉しいことです。

もちろん油断は大敵。第二波の心配もありますし引き続き気をつけて生活し
てゆくことは当然です。特に僕などは元々身体が強くはありませんから・・・。
気をつ
けることも山積み、ギアを入れ直して改めてとりかかる仕事も山積み。
それでもまずは
、今頑張れる環境に置かれている者から率先して頑張っていかなくては、と思っています。

それでは『元気の出るジュリー・ナンバー』更新シリーズもひとまずあと2曲とな
りました。
今回と次回は「歌詞に勇気を貰える名曲」の
テーマでお題を選んでみました。今日はアルバム『愛まで待てない』から、ジュリー作詞・玉置浩二さん作曲の「強いHEART」を採り上げます。

2009年の『Pleasure Plea
sure』ツアーで生体感できていますが、是非もう一度聴きたいとその後もセトリ入りを期待し続けている名曲。
ただこの曲は歌詞解釈がとても難しくて、個人的にはここでの
「君」を同性の友人、もしかするとタイガースのメンバーを思って書いたのかなぁとも考えていますが(TEA FOR THREE始動への繋がりも合わせて)まったく自信はありません。

戻れない   底抜けの軽さ に ♪
         G   A               F#m7 Bm

この「底抜けの軽さ」をストンと解釈できれば詞の全体像も掴めるは
ず、とは思っているのですが・・・。

いずれにしても「強いHEART」がプライヴェート
色の濃さと同時に、ジュリーの矜持を解放させたような強力なメッセージ・ソングであることは確か。明るい内容の歌とも思えないのに勇気が沸く、憧れ続けられる・・・僕にとってはそんな名曲です。
今日は考察というより「僕はこんなふうに聴いています」
という内容ですが、よろしくおつき合いください。


前回、『キネマの神様』主
演決定のニュースで友人や職場の同僚からジュリーの話題を振られ良い気分で過ごしている、と書きました。
ジュリーのことがそんなふうに周囲で話題となるのは、一昨年の
さいたまアリーナの件以来なんですけど、あの時は「良い気分」とはいかなかったんですよね。
話す相手に逐一ジュリーの普段の志や事情を説明することに躍起になったもの
です。

何より僕自身があの件をうまく受け止めきれていなかった・・・ジュリーが会見
で語った「意地」のフレーズが引っかかってしまったりね。
修行が足りません・・・あ
の時僕はジュリーの言う「意地」を「プライド」と混同していました。
ジュリーは矜持
のためならプライドなんて捨てられる人だと思っていたので(ジュリワンで出演した『songs』の時にそのあたりを色々と考えたことがあります)、「あれっ、ジュリーがプライドを保とうとしたってこと?おかしいなぁ」と勘違いし、まぁ悩んだわけです。
今はそうではありません。「プライド」とは対世間であり「意地」とは対自分
自身。ジュリーはそんなふうに言葉を使い分けているのだ、と思い当たりましたから。

そして、「意地」を他のフレーズに置き換えるとするならば、それが「強いHEART」ではないでしょうか。

壊れない   掛け替えのないもの
         G    A                 F#m7  Bm

強い  HEART
      Gm   A

プライド捨てたっ て    失くすものはない ♪
     G    A   F#m7  Bm         G   A          D

この歌では「強いHEART」と「プライド」の両フレーズは対比的
に書かれています。
「世間がどうやかましかろうと、自分の矜持を譲らなければそれで
よい」と解釈するのは僕が凡庸だからかもしれないけど、そう思えることで勇気が出ます。
アルバム『愛まで待てない』初っ端3曲の畳みかけは、その意味で最強の並びと感
じています。

「世間」と言えば思い出すのは、さいたまアリーナの件について多くの著
名人が色々な発言をしていたこと。
あの時こそ、(これは発言の有る無しに関わらず
、ですが)いざという時にジュリーを理解しジュリーの側に立つ人が明快になったかもしれませんね。
当然ながらタイガースのメンバー(サリーさんとピーさんの発信は僕も
ネットで確認しました)、加えて嬉しかったのは、あの直後に玉置浩二さんがステージで突発的に「君をのせて」を歌ってくれた、との情報でした。

玉置さんのジュリーへの楽
曲提供は今日お題の「強いHEART」1曲のみですが、この名曲隅々にまで溢れるジュリーへのリスペクトは、ずっと変わらずその胸にあったのだなぁ、と。
ジュリーと玉置さん
って、活動が離れていても共鳴し合える関係のように思えるんですよね。

作曲家としての玉置さんはもう「天才!」としか言いようがないです。
何故こんなふうにコードが繋がるのか、何故こんなふうにメロディーが載るのか・・・凡人には到底考え及ばぬ独創性、それでいてなおかつキャッチーな大衆性も合わせ持つという。

僕が玉置さんの曲で「強いHEART」と同じくらい凄いと思うのは、84年に小林麻美さんに提供している「哀しみのスパイ」(作詞は松任谷由美さん!)。
Aメロ途中に「Dm7→G7→C」という進行が登場します。これ、キーがイ短調(或いはハ長調)の曲ならば王道中の王道、しかしこの曲はホ短調なのです。
Emをボ~ンと鳴らしてから作曲を開始して、何故この進行をいきなりブッ込めるのか・・・考えられません。

ジュリーの「強いHEART」の場合は、クリシェ・ラインの繋ぎ方が凄まじい。

お互いに      時間をかけ    て
         Bm   Bm(onA)     Bm(onG) F#m

今はもう     変わらずにい    て ♪
         Em  Em7(onD)      C#m7-5  F#7

(↑歌詞は3番。個人的に一番好きな箇所です)

進行の中に「シ→ラ→ソ→ファ#→ミ→レ→ド#」と下降する1本のぶっとい線があって、和音が支配されているんですけど、歌メロにはそんな制約は微塵も感じられない・・・何故こうなる?と感嘆しつつも和音とメロディーを重ねて追うだけで大変です。

あと、小節の頭に向かってメロディーがグイグイ来る感覚。きっと理屈ではないんですね。
ほら、学生時代に「勉強しないのにメチャクチャ勉強ができる人」っていたじゃないですか。玉置さんの作曲はそんなふうに「神童」的なんですよ。
ジュリーには名だたる作曲家が数えきれないほどの名曲を提供していますが、コード進行とメロディーだけで「こりゃとんでもない。凡人には絶対作れない!」とある種「得体の知れなさ」まで感じるほど畏怖させられるのは玉置さんの「強いHEART」とミッキー吉野さんの「未来地図」の2曲だけ。
みなさま、試しにこの2曲を続けて聴いてみてください。編曲者はそれぞれ大村憲司さん、白井良明さんと異なるのに雰囲気がよく似ていませんか?
これは作曲者の強さと密度に引っ張られているんですよ(とは言え「強いHEART」の大村さんのアレンジの素晴らしさも只事ではありませんが)。

もちろん玉置さんは作曲のみならずヴォーカル、ギターも素晴らしいです。
僕がリアルタイムで観て忘れられない映像は、第27回レコード大賞「作曲賞」の受賞シーンです。受賞者は井上陽水さんで、当時既に大ブレイクを果たしていた安全地帯がバックを務めたという豪華なパフォーマンス(安全地帯が陽水さんのツアー・バンドのキャリアを持つことは有名なのでご存知のかたも多いでしょう)。
陽水さんと玉置さんが横並びになって「飾りじゃないのよ涙は」を綺麗に、そして豪快にハモるわけです。
「ワインレッドの心」をベストテンでよく観ていた時には当然玉置さんのヴォーカルは凄いなぁと感じていたけれど、ギターは弾いてるんだか弾いてないんだかよく分からなかった・・・ところがその「飾りじゃないのよ涙は」での玉置さんのストロークの情熱的なことよ・・・。
「魂入れて弾く、とはこういうことか。玉置さんギターも凄ぇ!」と衝撃を受けたものでした。

「強いHEART」の玉置さんのプリプロ音源はギターの弾き語りだったのでしょうが、叶うならばそちらも一度聴いてみたいものです。
たぶん最終的なジュリーの音源よりもバラード色が強かったんじゃないかなぁ・・・。独特の粘りがある玉置さんのヴォーカルと、あまりに個性的な作曲手法をギターの鳴りに置き換えて想像するとね。
最高音が高い「ラ」の音まで跳ね上がるのも、玉置さんの作曲段階からそうだったのでしょう。
ジュリーも意地とリスペクトを以って見事応えています。この場合の「意地」も当然素敵な意味ですよ!

僕はアルバム『愛まで待てない』からは「愛しい勇気」「愛まで待てない」「強いHEART」「嘆きの天使」「30th Anniversary Club Soda」の5曲を生体感できています。
『Pleasure Pleasure』ツアーの「強いHEART」は柴山さんがバッキング、リードが下山さんだったなぁ。

アルバム収録曲10曲のうち半分の5曲ですから、これはなかなかのセトリ率(『サーモスタットな夏』の10曲中6曲には及びませんが)。
今後残る5曲を聴く機会はあるでしょうか・・・楽しみにその時を待ちたいものです。


それでは次回、5月内になんとかあと1曲・・・GRACE姉さん作詞のナンバーを書きたいと思います。

今週からいきなり忙しくなりました。
まだ油断はできませんが、思いもかけない休日で時間の余裕があった日々もどうやらひと区切り。
それでも忙しいというのは有り難いことです。「大切な普通」が戻ってこようとしているのですから。
・・・って、これは次回お題の予告になってしまっていますが、お題を計画的にピックアップした更新予定としては「狙い通り」なタイミングの曲ではあります。

長かったようであっという間だった5月の締めくくり記事、あと3日で更新間に合うかな・・・。
なんとか頑張ります(笑)。

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2020年5月22日 (金)

沢田研二 「Beautiful World」

from『Beautiful World』、1992

Beautifulworld_20200522112801

1. alone
2. SOMEBODY'S CRYIN'
3. 太陽のひとりごと
4. 坂道
5. a long good-bye
6. Beautiful World
7. 懲りないスクリプト
8. SAYONARA
9. 月明かりなら眩しすぎない
10. 約束の地
11. Courage

-----------------

映画『キネマの神様』ジュリー主演決定のニュースは広く世間でも話題となり、普段ジュリーの話をしない友人からメールを貰ったり、職場でも「沢田研二凄いね」と言われたり(皆、僕がジュリーファンであることは知っています)、ファンとしてはちょっとくすぐったいような、なかなか気持ちの良い日々が続いております。
こうして明るいニュースも届けられ、大変な世の中にこれから少しずつ平穏が戻ってくるのでしょうか。
そうなることを願っています。

僕は今日はお休みを頂いております。
月末にこちらの緊急事態宣言が解除されれば、勤務先では時短業務こそそのまま続くかもしれませんが、さすがに交代制の週休3日はなくなるでしょう。
「不思議な休日」をこうしてブログ更新にあてられる日々も、あと僅かかなぁ?

さて『元気の出るジュリー・ナンバー』更新シリーズ、前回の「サンセット広場」に引き続き今日も「楽曲それ自体が既に癒し」という「ほのぼの系」の名曲がお題。
採り上げるのはアルバム『Beautiful World』表題曲「Beautiful World」です。よろしくおつき合いください。


前回の「サンセット広場」では素晴らしい意味での「詞曲不一致」の魅力について書きましたが、今度は一転、完璧な「詞曲一致」です。
少し前に「いとしの惑星」でも書いたように、覚和歌子さんの「メロディーに合った」歌詞、コンセプトやテーマの構築力は超一流で、「Beautiful World」もそんな名曲となっています。この頃は「曲先」の製作だったでしょうからなおさら凄い!
覚さんの詞が載ることで、まるでメロディーもヴォーカルもアレンジも最初から「こういう感じ」と狙って演繹法で作られたかのような仕上がりに思えてしまう・・・。
いや、もしかしたらこの曲の場合は本当にそんなこともあったのかな。
何と言ってもアルバム・タイトルなのですからね。

まずは吉田建さんの作曲とアレンジから見ていきましょうか。
いかにもベーシスト好みらしい裏ノリのリズム。穏やかなテンポで長調のレゲエ・ビート、というだけで既に「癒し系」が確定です。少し遡ると88年のアルバム『TRUE BLUE』収録の「EDEN」もそうでした。

ジュリーEMI期の建さんはプロデューサーとしての立場から、自身の作曲作品を以ってアルバム全体のバランスをとる、ということも考えていたと思います。
他収録曲が集まった時点で1枚ぶんのコンセプト・イメージを捉え、即した形で自らも作曲。
『Beautiful World』にはそれまでの3作とは一変して穏やかな作風のナンバーが集まっていて、「じゃあ(自分の曲の)リズムはこうだ!」という感じでしょうか。
建さんがもう1曲提供したハーフタイム・シャッフルの「a long good-bye」も併せ、「お洒落」な音のアルバムにしよう、という建さんの狙いが見えてきます。
「Beautiful World」のキーはト長調なんですけど、1番のサビ最後をマイナーに着地させるなど曲に柔らかなイメージを持たせています。これがまたアルバムのトータル・コンセプトを象徴しているように思えるのです。

そんな建さんのお洒落なメロディーに、ズバリ!の詞を載せてきた覚さん。
僕はこのアルバムを激安中古で購入したのですが(『ジュリー祭り』直後の時期で、その頃はEMI期のアルバムは廃盤状態のため高値をつけていたのでラッキーでした)、購入前は「Beautiful World」なるフレーズに、きらびやかで特別に輝かしい世界の歌なのだろう、スーパースターであるジュリーがそれをド派手に演じているのだろう、とイメージしていました。
ところが実際に聴くと全然逆で。

余計な輝きも  足りない夢もないから
C             Bm7     B7     Em          Am7

感じてほしい ♪
      B♭   D

覚さんの描く「Beautiful World」とは「何気ない日常」のことで、2人出逢っていなければそんな日常がどれほど美しく素晴らしい世界であるかを気づかずに過ごしていただろう、と歌うわけです。

It's a so Beautiful World
G                       Gmaj7

もしもふたり 出逢わなければ
              Am7               D

It's a so Beautiful World
G                       Gmaj7

こんな景色 知らないまま過ぎてたけど ♪
             Am7             D            G 

「いとしの惑星」同様に、今こんな状況になってこそ沁みる平凡、平穏の喜び。
本格ジュリー堕ちしたからこそ分かる、これは正にジュリー好みのコンセプトなのですねぇ。人生における瞬間瞬間の「特別さ」の描き方が阿久さんの時代とはこうも変わるものか、と後追いファンの僕などはしみじみ思う次第です。

・・・と、偉そうに書いてはいますが、実は今回記事を書くにあたり「エスパス」「フォルム」「シノプシス」の意味を初めてしっかり調べたんですけどね(汗)。
全部フランス語だった・・・意味はだいたいそれまで漠然と捉えていた通りだったとは言え、やはり

変わりつづけるのは フォルムだけ
G                      Gmaj7           Em7

一秒のシノプシス ♪
       C          D

このあたりの理解度は違ってきますな~。

見事な「詞曲一致」は、演奏やジュリーのヴォーカル処理にも必然影響してきます。

演奏では間奏のギターソロに注目。
「Beautiful World」にはゴリゴリのディストーションやド派手な速弾きフレーズは必要ありません。
空間系のエフェクトを施した優しい音色と音階。僕はこういうソロ、好きですねぇ。
例えば白井さんが弾いた「Pearl Harbor Love Story」や「勇気凛々」、下山さんが弾いた「エメラルド・アイズ」。僕はどうもこうした必然性あるギター・ソロに惹かれるようで、「Beautiful World」も同じ意味で名演と考えます。

で、ジュリーのヴォーカルですよ!
この時期のジュリー・ナンバーでは珍しい、ダブル・トラック(主旋律を複数のヴォーカル・トラックでユニゾン処理)が採用されています。
ジュリーの声の艶ならば、ヴォーカルはシングル・トラックの方が素敵に決まっている・・・でもこの曲は違うんです。ギター・ソロ同様に、「詞曲一致」がここでは優しさや朴訥さを求めていますから。

ダブル・トラック・ヴォーカル処理についてはジュリー・ナンバーお題でこれまで何度か書いたことがあって、おもに2つの手法があります。
別々に歌録りしたトラックを同時にミックスする方法(「人待ち顔」参照)と、単一のトラックを機材でコンマ数秒ずらして複製を作成しミックスする方法(「影 -ルーマニアン・ナイト-」参照)です。

「Beautiful World」ではジュリーの歌があまりに綺麗に、違和感なくピタリと重なっているので後者かと思いきや、実際はどうやら前者。
一番最後のサビ直前に、軽く囁くような感じでジュリーが「Yeah・・・」と声を出している箇所(3’50”あたり))だけシングルなんですよ。複製の手法ならここもダブルになるはずですから。
ジュリーの歌入れまでの万全の準備が想像されると同時に、天性の声の抑揚センスも窺い知れ、その素晴らしさが分かろうというものですね。

アルバム『Beautiful World』はEMI期の他の4枚に比べると地味で、ギンギンの作風とは言えません。
しかし長年かけて進化してきたロックのレコーディング技術の手管、収録楽曲のクオリティー、そして何より覚さんとの出逢いによりジュリーが「ささやかな日常をロックする」ことを志した最初の1枚としてとても、重要な名盤です。
それに、今のような時期にじっくり楽しむには最適のアルバムではないでしょうか。

僕はこのアルバムから今年の全国ツアー・セットリスト入りに「約束の地」を予想していましたが、2010年『歌門来福』で体感できた「SOMEBODY'S CRYIN'」を含め他収録曲サプライズ級の選曲ももちろん期待しています。
ギター1本体制でジュリーがトコトン「エレキ」の伴奏に拘るならば、「Courage」で柴山さんの神がかったアレンジが聴ける日もいずれ来るかもしれません。
楽しみは尽きませんね。


それでは次回更新は・・・6月は久々に「act月間」とする予定で、その前のこの5月中に「元気の出るジュリー・ナンバー」としてなんとか頑張ってあと2本の記事を書きたいと思っています。

今度は「歌詞に勇気づけられる」をテーマに名曲2曲を用意しました。
ジュリー自身の作詞と、もう1曲はGRACE姉さんの作詞・・・まずはジュリー作詞の方からとりかかります。
どうぞお楽しみに!

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2020年5月17日 (日)

沢田研二 「サンセット広場」

from『LOVE~愛とは不幸をおそれないこと』、1978

Love

1. TWO
2. 24時間のバラード
3. アメリカン・バラエティ
4. サンセット広場
5. 想い出をつくるために愛するのではない
6. 赤と黒
7. 雨の日の挽歌
8. 居酒屋
9. 薔薇の門
10. LOVE(抱きしめたい)

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いやぁ、昨日のジュリー界は予期せぬビッグニュースに沸き立ちましたね!
映画『キネマの神様』公式サイト
志村さんのこと、今の世の中の状況のこと、色々なことがある中でとても暖かな、素敵なニュースでした。

森本千絵さんの旦那さんがこの映画のプロデューサーさんとのこと。そんな繋がりがあってジュリーにオファーがあったのだそうです。
千絵さんがご結婚されてから6年・・・2014年『三年想いよ』ツアーの大宮公演でのジュリーのMCが、「千絵さんの結婚式を振り返る」大長編だったことを思い出して、当時の自分のレポを読み返してみました(こちら←MCのトコだけ読んでね!)。

本当に、人と人の繋がりって不思議です。特にジュリーを見ているとそう思うことが多いのです。

この映画は何をおいても観るしかない!
今は大変な時期だけど、乗り越えた先の楽しみがまたひとつ増えましたね。

それでは「元気の出るジュリー・ナンバー」更新シリーズ、今回と次回の2曲は「ほのぼの系」を用意しました。
歌の内容以前に曲調やリズム、アレンジが既に癒し系という名曲です。
何も考えずにお昼にボ~ッと聴くもよし、夜のお休み前に疲れた身体をリフレッシュさせて明日の活力とするもよし・・・まず今日はアルバム『LOVE ~愛とは不幸をおそれないこと』から、「サンセット広場」を採り上げたいと思います。

濃厚な情念渦巻く異色のアルバム、僕は大好物ですが「ちょっと苦手」と仰る先輩方がいらっしゃるのも事実。
しかしながらその中にひょいと挿し込まれた肩肘張らない明るさ、軽快さを持つこの曲はアルバムの中でも好き、という方は多いのではないでしょうか。
だって、ジュリー自身がたぶんそうだから(笑)。
「アルバムの中ではこの歌が好き」と、何かのラジオ音源で聞いたのか、先輩にそう教えて頂いたのだったか・・・僕の記憶も加齢とともに怪しくはなっていますが、確かジュリーはそんなふうに言っていたのでしたね。
おつき合い頂くみなさま、今日は是非この愉快な名曲「サンセット広場」に癒されてくださいませ。


『ジュリー祭り』以前の、僕にとっては”第一次ジュリー堕ち期”となった2005年に盟友・YOKO君と競い合うようにして聴いたポリドール期の名盤の数々。
アルバムを新たに聴く度に夜な夜な彼と電話でアルバムの感想を語り合う日々だったわけですが、『LOVE ~愛とは不幸をおそれないこと』についての会話は平日深夜にまで及び、特に濃かった!
普段クールなYOKO君がこの名盤にはテンションが上がり、「トラボルタ」「トラボルタ」と連呼しながら阿久さんの詞に大ウケの様子で「イチオシ」していたのが「サンセット広場」でした。

トラボルタと言えば映画『サタデー・ナイト・フィーバー』。
僕は映画それ自体は詳しく語れません。ここで書いておきたいのは、ビージーズの「ナイト・フィーバー」などが収録されたこの映画のサントラが世界のロックに与えた影響。いわゆる「ディスコ・ミュージック」の大流行です。
キャリアのある大御所バンドもこぞって「新たな開拓」とばかりに採り入れ、その後のヒットに繋げました。
このサントラなくしてストーンズの「ミス・ユー」も、ウイングスの「グッドナイト・トゥナイト」も、キンクスの「スーパーマン」も生まれていなかったのではないでしょうか。

「サンセット広場」がディスコ・ミュージックかと言えば、まぁ広義にはそうかもしれませんが、大野さんが明確にそこを志したのは「アメリカン・バラエティ」の方でしょう。これはストーンズの「ミス・ユー」に着想を得ている、というのが僕の推測です。

「アメリカン・バラエティ」と「サンセット広場」は、アルバム曲順が繋がっているという以上に面白い関係です。
例えば阿久さんの歌詞。
サンセット広場で待ちぼうけを食っている女の子を「トラボルタ気どって」ナンパしに来る男の子には、「アメリカン・バラエティ」の主人公のイメージが重なります。
前曲で豪快に持ち上げておいて、次曲で散々なまでに落とす。
いかにも阿久さんらしい手法ではありませんか。

「サンセット広場」の歌の舞台はアメリカなのでしょうが、もし同じシチュエーションが日本で起こっていたら・・・声をかけてきた男の子はトラボルタではなく(無理なのに)ジュリーを気取って「アメリカン・バラエティ」ばりの迫り方をしたかもしれませんね。
OKすることはないよ、お嬢さん(笑)。
ジュリーは唯一無二の男。
鳩の数ほど男はいても、「ジュリーみたいな男」なんていやしないのですから。

ここでちょっと話が逸れますが・・・先日僕は「横浜銀蠅の完全再結成を楽しみにしている」と書きました(本当なら昨日東京公演が開催されていたはずでした)。
80年代当時、横浜銀蠅の中で特に女性人気が高かったのがリード・ギターのJonnyさん。Jonnyさんはソロ・デビューも果たし、弟分である嶋大輔さん、杉本哲太さんも出演したドラマ『茜さんのお弁当』主題歌、自身作詞・作曲の「ジェームス・ディーンのように」(名曲です!)は、いきなりのシングル・ヒットとなりました。
この曲、Jonnyさんは当初ジェームス・ディーンではなく「トラボルタのように」というタイトルで考えていたのを、途中で変更したのだそうです。
印象的な「ジミーのように♪」というコーラス・パートは元々『サタデー・ナイト・フィーバー』をモチーフとして「トニーのように♪」と作っていたのでしょう。

トラボルタがカッコイイ男であることは間違いありませんが、「トラボルタ」なる片仮名の語感が日本人としてはちょっと野暮ったいと言うか、会話するぶんには良いけど歌の歌詞やタイトルとするにはハードルが高そうな名前、というのはごく自然な感覚。
ただそこを平然と打ち砕いてくる・・・どんな語感にも囚われないのが阿久さんなわけで。

トラボルタ気どっても無理なのに
F            D7                 Gm 

フィーバーなんて古い言葉
B♭m             Am        Gm

マジで使って口説いてる ♪
           C              F

突如耳に飛び込んでくる「トラボルタ」のフレーズが逆に迫力の語感となり、初聴時の僕らを貫きます(YOKO君もそこにヤラレたわけです笑)。
しかも「サンセット広場」がリリースされた78年って、それこそディスコ・ブーム、フィーバー大全盛ですよね?
それなのに「フィーバー」を「ダサい」ならまだしも「古い」言葉であるとブッた斬る自由さ、過激さよ。
歌謡曲を通して時代の移ろいの速さを見つめる阿久さんならではの描写だと思います。

そんなラジカルな詞に、とびきり可愛らしいメロディーをつけてきた大野さん。
70年代後半の阿久=大野コンビ(当時はおもに「詞先」の製作だったそうですね)の素晴らしい意味での「詞曲不一致」は、鉄人バンド期の祈り歌(こちらは曲先)にも負けていませんよ~。
言葉もメロディーも、双方の身勝手さ(←絶賛しているんですよ!)に臆することなく主張しているという。

頻度はさほど高くはありませんが、大野さんは「ほのぼの系」の作曲も大得意としています。
『太陽にほえろ!』サントラにも「仲間のテーマ」のような曲があったり、ジュリー・ナンバーにも、阿久さんとの70年代三部作で探せば「ラム酒入りのオレンジ」→「女はワルだ」→「サンセット広場」がそのパターン。
もっと前だと74年の「ママとドキドキ」、あと作曲ではなく編曲ですが76年の「ロ・メロメロ」も加えることができるでしょうか。
「ブロードウェイ風」と言えばよいのかな・・・阿久さんとのコンビでアルバム全曲を任されるようになり、大野さんの「ほのぼの系」もド派手なシングル路線とは違った形で一層研ぎ澄まされていったのではないでしょうか。

結果「サンセット広場」では詞曲それぞれの個性のぶつかり合いからマジックがかかり、とても愉快な癒し系の名曲として聴き手に届けられることとなりました。
もちろん単体で聴いても名曲ですけど、ここは「アメリカン・バラエティ」~「サンセット広場」という流れを楽しむ意味でも、アルバム通して聴くことをお勧めいたします。

トラボルタを気どった男の子の動向。
ディスコからブロードウェイへのメロディー散策。
詞曲ともに味わい深さが増すと思いますよ~。

そして、「本当にイイ男はここにおるで!」と歌っているかのようなジュリー・ヴォーカルの俯瞰力も見えてくるのです。


それでは次回更新・・・今度は90年代。
リズム・アレンジに癒しの特徴を持つ「ほのぼの系」ジュリー・ナンバーがお題です。
しばしのお待ちを!


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2020年5月14日 (木)

沢田研二 「素敵な気分になってくれ」

from『JULIE CM SONG COLLECTION』

Cmcollection

SIDE-A
1. アルファ クリエーション
2. 素敵な気分になってくれ
3. 渚のラブレター
4. I DO LOVE YOU
5. I am I(俺は俺)
SIDE-B
1. あなたに今夜はワインをふりかけ
2. 愛は炎
3. 二人なら翔べるのに
4. RED SUMMER
5. 熱い想いだけ

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ゴダイゴのギタリスト、浅野孝巳さんが亡くなられました。
コロナ禍によりゴダイゴのツアーが中断されていた最中での訃報はあまりに突然で悲しく、驚いています。

小学生の時、初めて自分で買ったレコードがゴダイゴ『ガンダーラ』のシングル盤でした。続けて『モンキー・マジック』のシングル盤も買い、当時は楽器のことはまったく分からなかったけれど、Aメロで浅野さんのキレッキレのカッティング・フレーズだけが残る一瞬の箇所がとても好きになりました。

3年前の5月、浅野さんと依知川伸一さんのデュオ・ユニット『あさいち』のLIVEに行き、初めて浅野さんのギターを生で聴くことができました(その時のことは、こちらの記事で少し書いています)。
ディナー形式のイベントでしたから、浅野さんは演奏前にお客さんの食事のテーブルを回ってくださり、乾杯もしてくださいました。
幼い頃にテレビで観て憧れていたレジェンドと実際にグラスを合わせて頂けた夜・・・忘れられません。

浅野さんと言えば、「JC-120」というローランド社のギター・アンプ開発に尽力されたことも有名です。
初心者から上級者まで、使い手の技量を問わない万能な奴。スマートなボディなのに、メチャメチャ頑丈な奴。どことなくキュートなその愛称は「ジャズコ」。
貧乏学生時代に利用していた格安の音楽スタジオではマーシャルを置いていない部屋はいくつかあったけど、ジャズコはどの部屋にも必ずありました。
10代でバンドを始めてから、ずっとお世話になり続けています。

心より浅野さんのご冥福をお祈り申し上げます。



今週は今日木曜日が休みのDYNAMITEです。
本来ならば正に昨夜、ジュリーの全国ツアー『Help!Help!Help!Help!』が開幕していたはずで、余韻に浸りながら仕事に励んでいたのでしょうね・・・。

このよ
うな状況になって今つくずく思うのは、久々のお正月LIVEに1度きりとは言え無事参加できていて本当に良かったなぁ、と。
同時に、地方にお住まいの方や、それぞれの事情で参
加が叶わなかったファンのみなさまの現在の心情いかばかりか、とも想像します。
ジュ
リーのLIVEからやむを得ず遠ざかるというのは・・・中でも、もう50年から「毎年」のこととして過ごしてこられた長いファンの先輩方は本当に辛いでしょう。
せめて、とい
うには物足りないかもしれませんが、今日はまず今年のお正月LIVE『名福東阪阪東・寡黙なROCKER』・・・僕が参加した1月10日の東京国際フォーラム公演でのジュリーのMCを少しだけ振り返ることから始めたいと思います。

現在の緊急事態宣言下の毎日で僕ら
は、平時ならあまり耳にすることのない「自粛」という言葉をテレビなどでしょっちゅう聞いていますが、意味こそ違えどジュリーがはからずもお正月LIVEで「自粛」に言及しました。

その頃巷で大きな話題となっていたのは、例のゴーン氏逃亡事
件です。
「綴りは違うのかもしれないけど、名前がゴーン(GONE=行ってしまった)
ってのが・・・」
と、冗談を交えつつ色々とその話をしてくれたのですが、ジュリーが抱いた
素朴な疑問というのが

「これだけの不祥事ですよ。何でニッサンはコ
マーシャルを自粛しないの?」

と。
楽器を入れる箱に入って逃げたらしい、とのことで
「(普段から楽器運搬に関わる身として言うと)そんなところに人が入っちゃダメですよ!」と笑わせてくれたり。
で、何よりこの件については「CMのOBとして言わせて貰う
!」と力説するジュリー。
そう、ジュリーにとってもファンにとっても「ニ
ッサンと言えばブルーバードのCM!」なのですね~。

ということで今日採り上げる「元気
の出るジュリー・ナンバー」は、日本においては初期の佐野元春さんが伊藤銀次さんと共に開拓し確立させた「ピアノ・ロック」の流れを汲むバリバリのビート系「素敵な気分になってくれ」です。よろしくおつき合いください。


ジュリー出演CMは数あれど、タイガース時代の明治チョコレートは別格として、ブルーバードのCMはジュリー本人も特に思い入れが強いのではないでしょうか。
楽曲が在りもののタイアップではなく、しっかりとCM商品のコンセプトに沿って作り込まれている・・・まぁそれだけなら昭和の時代はジュリーに限らずそうした業界の熱量は高かったわけですが、加えてブルーバードの場合はシーズンごとにどんどん新曲を作っていった、というのがね。しかも名曲揃いときています。
いつだったか、大宮公演のMCでジュリーが突然「I am I(俺は俺)」の話をしてくれたこともあったなぁ。

「素敵な気分になってくれ」は一連の作品の中でもCMシリーズ自体が車の売れ行きとともに絶好調のタイミングで製作され、作曲が新星・大沢誉志幸さん、作詞がエキゾティクス期ジュリーの最重要女流作詞家である三浦徳子さん。歌うは完全にロック・シンガー覚醒を遂げたジュリーとなれば、名曲にならない方がおかしいです。

そうした製作・演者双方の時代的なテンションの高さは、以前に大分の先輩から授かった貴重な資料『快走通信 1982』からも読み取ることができます。

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Kaiso824 

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ブルーバードとは「街一番のイイ男が、街一番のイイ女を乗せて走る車」ということになりましょうが、自らを指して「一番のイイ男」なんて歌うとなると「そんな気になりきっている」高揚した普通の男のストーリーとなるはず。
でもジュリーが歌えばそこは「真実」ですからね!
自分がとびきりのイイ男であることに何の疑問も無く物語が展開していくという。個人としてのジュリー本人がどう考えていたかはともかく、歌い手・ジュリーはブルーバードのCMが謳う「スーパースター」にドンピシャの男だったのですな~。
三浦さんもそこは当然心得ていて

恋する女は 世界のためにある ♪
   E♭     B♭    A♭          E♭

恋の相手の方も最高に「イイ女」であると同時に、こちら(歌い手)もそれに見合う「世界のためにある」ほどのイイ男でなければこの詞は成立しませんから。
凡庸たる身には一生かけても辿り着けない境地です。

では、大沢さんの曲はどうでしょうか。
これはジュリー、大好きな感じだと思うんです。と言うのもイントロ冒頭のリフと音階移動が、「気になるお前」や「お前は魔法使い」を連想させるんですよね(勝手に脳内で指笛とカウベルを鳴らすと「おまえのハートは札つきだ」にも相当似てるけど)。
「素敵な気分になってくれ」は、「sus4」や「add9」によるクリシェ・ラインの音をホンキー・トンクなピアノが受け持ち、さらにブラスを噛ませるアレンジがいかにも82年という時代を反映していて、ジュリーと縁深い佐野元春さんの影響も大と見ました。

メロディーとジュリーのヴォーカルで個人的に一番好きな箇所は、Aメロの出だしです。

情熱という 名前の ♪
E♭  Gm7   Cm  A♭m

「名前の」の「の~♪」のジュリーの高音がなんとも言えずクセになりませんか?
実はここ、理屈上でも聴き手にとって「引っかかりのある」一時的な転調音なのです。

この曲はキーが変ホ長調なので、メロディー中「ラ」「シ」「ミ」の3音には自然に♭がつきますが、ここでは「ソ」をフラットさせています。
コード進行としても普通なら「A♭」とするところ、大沢さんが当てたのは「A♭m」。それ自体は珍しくない手法とは言え、そこに向かってパ~ンと跳ね上がる高音を配したのが大沢さんの素晴らしさだと思います。
ただし、この音が曲中メロディー最高音というわけではなくて、例えばすぐ後のAメロ2回し目、「パーティーで♪」の「で~♪」もジュリーの高音が冴えますよね(こちらは調号に忠実な王道のメロディー)。ここがナチュラルの「ソ」の音で、音階としては1行目語尾より半音高い。
それでも僕には「ソ♭」を歌うロングトーンこそが曲中で最もジュリーの高音の魅力を引き出している、と感じられるのですが・・・いかがでしょうか。

最後に。
僕はカセット『JULIE CMソング・コレクション』を正式な形では持たず、先輩から授かった音源のみを所有する状況ですが、これは「アルバム」として考えてもなかなか聴き応えのある作品ではないでしょうか。
リリースの時期は様々なのに不思議な統一感がありますし、楽曲バランスも収録配置も素晴らしい。
お題の「素敵な気分になってくれ」の2曲目収録は曲調と合っていてズバリ!だと思いますし、A面とB面で時代背景がガラリと変わる面白さは、当時実際カセットを購入した先輩方なら実感されたことでしょう。
B面頭が「あなたに今夜はワインをふりかけ」ってのがまた、いかにも強力なアルバム構成という感じです。ここはリリース年代順を崩してきていますから、製作サイドの「狙った」配置だったんじゃないかな。

僕としてはせめてリマスターのクリアな音でのCD再発を切望しますが、難しいのでしょうかねぇ・・・。


それでは次回、次々回更新お題2曲の「元気の出るジュリー・ナンバー」は、またまた曲の雰囲気を変えてみようと思います。
ゴリゴリのビート系ではなく、「微笑ましい曲調」とでも言いましょうか。のんびり、ほのぼのと聴ける・・・ジュリーの歌声はもちろんだけど、メロディーやアレンジ、或いはリズムが既に癒し系、という2曲を用意しています。

それぞれ、70年代と90年代の名曲。まず次回は70年代の方から書いていきますよ~。
お楽しみに!

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