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2022年12月

2022年12月29日 (木)

沢田研二 「コインに任せて」

from『TOKIO』、1979

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1. TOKIO
2. MITSUKO
3. ロンリー・ウルフ
4. KNOCK TURN
5. ミュータント
6. DEAR
7. コインに任せて
8. 捨てぜりふ
9. アムネジア
10. 夢を語れる相手がいれば
11. TOKIO(REPRISE)

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年の瀬はさすがにバタバタしましたが、年内の仕事も昨日を以て無事終了。
冬休み初日、早速の更新です。

2022年最後の記事・・・今日は、去る8月21日に開催された『ゆうちゃん三昧2022』のことを書きます。

拙ブログに度々登場する年長のタイガース・ファンの友人・YOUさんが4年に1度のペースで企画する『ゆうちゃん三昧』は、今回で3度目の開催。
公演サブタイトルに、左門町LIVEをもじって「PEEが奏でない」とあった通り、演奏こそしませんがあのピーさんがトークコーナーのゲストとして参加。会場はおなじみの四谷LOTUSさん、ということで多くのピーファン、タイガースファンも駆けつけたLIVEです。

今回はなんとYOUさん、ジュリーのコピーバンドではアルバム『TOKIO』収録全曲を歌ったのです。
そんなYOUさんのチャレンジ精神溢れる企画にあやかり、この記事は『TOKIO』収録曲である「コインに任せて」をお題に借りることにいたしました。

今夜は陽気に馬鹿騒ぎ ♪
F                       G

ということで、みなさま年の瀬のひととき、よろしくおつき合いください。


①『ゆうちゃん三昧2022』総括

まずは『ゆうちゃん三昧2022』公演全体について、駆け足ですが出演順に振り返ってみましょう。

1.「ゆうちゃんバンド」

『ゆうちゃん三昧』企画では毎回お馴染み、X-JAPANのコピーバンド。僕が観るのは前回の『ゆうちゃん三昧』以来4年ぶりなのかな。

ドラムスの「けん」さんは毎年の左門町LIVEでお世話になっていますし、ヴォーカルの「たけ」さんも昨年の同LIVE出演で顔なじみ・・・なのですが、YOUさん含めてみなさんX-JAPAN仕様にウィッグと化粧で変身していますから、開演前に控室に挨拶にお邪魔した時も誰が誰やら(笑)。
今回ママさんロッカーとしてバンド復帰された紅一点のベースのお姉さんが相変わらず美しくて、彼女だけひと目で「あっ、あの人だ」と分かりました。

意外だったのは、「ゆうちゃんバンド」が1番手の出番だったこと。てっきり大トリだと思っていましたから。
YOUさん曰く
「ジュリーのコピーバンドを出番先にやっちゃうと、ヴォーカルで力を使い果たして(「ゆうちゃんバンド)のギターがうまく弾けなくなるから」
とのことですが、実は他にも理由はあって・・・そこはすぐ後に書きます。

今回は事前にピーさんのゲスト参加が告知されていたのでピーファンのお客さんが多く、ステージと客席での「エ~ックス!」の掛け合いもみなさんおそるおそる、という感じではありましたが、演奏の完成度は過去イチだったと思います。

20220821_180510
客席最後方にいたので、遠目の写真ですが・・・

2.「トークタイム(PEE & YOU)」

左門町LIVEでは恒例、そして思い返せば『ゆうちゃん三昧』第1回でも実現(この時は事前アナウンス無しのサプライズでピーさんが登場)していたピーさんとYOUさんのトークコーナー。
ただ今回は左門町LIVEのような「友情漫才」要素は控え目に、YOUさんは聞き役メインでピーさんの思い出話を引き出す感じでしたね。

ピーさんのお話はタイガース四谷生活時代の回顧に始まり、その後はおもに中井國ニさんとの思い出話。
タイガース晩期のピーさんとしては「(中井さんは)結局会社側の人間だろう」という思いからピリピリした関係であったこと、それから長い年月を経て再会し、昔のことも色々と話をしてわだかまりは完全に払拭されたこと、ピーさんが倒れて帰国入院した際に、中井さんが迎えにきてくれて車椅子を押してくれたこと。そして今度は中井さんが病に倒れた時

「僕の車椅子を押してくれた中井さんを、今度は僕が車椅子で押している・・・不思議な心持ちでした」

僕はタイガースの知識は後追いですが、中井さんの尽力なくしてピーさんの芸能界復帰、さらにはザ・タイガース再結成への道程が開かれなかったことは承知しています。
会場に駆けつけたリアル世代のピーファン、タイガースファンのお客さんは、この日のピーさんのお話にグッと胸を突かれたのではないでしょうか。

3.「刑事魂」(デカダマシイ)

事前にYOUさんからお話を伺っていて、とても楽しみにしていたバンド。
井上堯之バンド・リスペクトを掲げ、さらには曲間に刑事ドラマ風の寸劇を織り込んでくるというマニアックかつユニークなバンドなのです。

拙ブログでは何度も書いているように、僕の音楽的「原風景」は『太陽にほえろ!』サウンドトラックで、40才手前で突然トランペットを始めた時に徹底練習していたのが「行動のテーマ(マカロニ刑事のテーマ)」と「青春のテーマ(ジーパン刑事のテーマ)」。
「刑事魂」は、その2曲ともこの日やってくれました。さすがに格が違います!

「青春のテーマ」はオリジナルではソロがトランペットですが、サックスでも違和感無く素晴らしかったですし、間奏のオルガン・ソロがまた素晴らしい。ギターがこれまた黒子に徹していて素晴らしい、という。

リーダーのベーシストさんは、とにかくサリーさんのベースが好きでこのバンドを結成したのだそうです。
サリーさんばりのオクターブ・フィルも炸裂、感動です。

ちなみに当日大トリ出演、今回YOUさんが結成したジュリーのコピーバンド「てっぺん」は、この「刑事魂」のメンバーがそのままバックを務めます(ギターのみ、今年の左門町LIVEに出演した「おーちゃん」に交代)。
そこで気がつく・・・「刑事魂」のドラマーさんがサウスポーなんですよ。
つまり、「刑事魂」と「てっぺん」はセッティングの都合上続けての出演でなければならなかった、これが先述したバンド演奏順理由のひとつ。
ハイハットが向かって左、フロアタムが右。僕はサウスポーのドラムスを生で観るのは初めてで、とても新鮮でした。カッコ良かったです!

4.「てっぺん」

『ゆうちゃん三昧』では毎回メンバーを変えてジュリーのコピーバンドが結成され、YOUさんがリード・ヴォーカルを務めます。

この企画で「次はアルバム『TOKIO』全曲をやる!」とのアイデアは実は2020年2月には聞いており、採譜も依頼されていました。
第1回左門町LIVEの打ち合わせの席で、ちょうどコロナ禍直前のことです。

僕はその時から「3曲ほど(細部の採譜が)無理っぽい曲があるのですが・・・」とYOUさんにお伝えしておりまして、結局そのうち「MITSUKO」「DEAR」の2曲については本当に不完全な形で採譜提出してしまいました。
それでも見事練り込んでくださった「てっぺん」のメンバーには感謝しかありません。

先述の通り「てっぺん」は「刑事魂」のメンバーがバックで、これは「刑事魂」が井上堯之バンド・リスペクトを掲げている、というのが大きなポイント。
というのは、YOUさんが今回『TOKIO』を採り上げたのは、「井上バンドが関わった最後のジュリー・アルバム」であったからなのです。
僕もジュリーファンの先輩方と接していると、井上バンド時代のジュリーに格別の思いを持つ方が多くいらっしゃって、YOUさんもそのお1人なのですね。

常々YOUさんは「自分は歌が下手」と仰いますが、『ゆうちゃん三昧』の度に僕は毎回YOUさんのヴォーカル・パフォーマンスに圧倒されます。
YOUさんは歌唱の技巧以前に「歌に気持ちを乗せる」ことができる人なのです(同じことはピーさんのヴォーカルについても言えます)。
凡人には、これができないのですな~。

個人的に今回YOUさんの『TOKIO』収録曲中のヴォーカル・ベストとして「捨てぜりふ」を挙げたいです。
これこそ、「気持ちを歌に乗せる」ことができないと成立しない曲ですからね。

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ただセットリスト中、YOUさんの真のベスト・パフォーマンスは『TOKIO』以外の楽曲で生まれたのです。
さてその曲とは・・・。


②『ゆうちゃん三昧2022』 (another story)

続きまして、ここでは他でもない『ゆうちゃん三昧2022』主催のYOUさんと、スペシャルゲストとして登場したピーさんお2人の、舞台裏でのお話を。

まずYOUさん。
今回アルバム『TOKIO』全曲カバーという企画で臨んだわけですが、演目はそれ以外にもありました。
当日の「てっぺん」セットリストをおさらいしますと

1.「TOKIO」
2.「MITSUKO」
3.「ロンリー・ウルフ」
4.「KNOCK TURN」
5.「ミュータント」
6.「DEAR」
7.「コインに任せて」
8.「捨てぜりふ」
9.「アムネジア」
10.「夢を語れる相手がいれば」
11.「most beautiful」
12.「勝手にしやがれ」

ご覧の通り、最後の2曲がアルバム『TOKIO』以外の選曲です。

過去2回の『YOUちゃん三昧』を思い起こすと、セットリストにはそれぞれ強力な「勝負曲」があり、第1回(2014年)で「残された時間」、第2回(2018年)で「」が採り上げられ、YOUさんは渾身のパフォーマンスを魅せてくれました。
第3回の今年は「most beautiful」がその「勝負曲」に当たります(「てっぺん」では、伴奏のメインをピアノではなく「おーちゃん」の8分の6アルペジオでアレンジ。この演奏解釈には一本とられましたね)。

ですから本来、今日の記事お題も「most beautiful」とするのが王道なのですが、なにせ僕がまだ正式な形でCDを所有しておらず(したがって採譜時の歌詞中仮名使いも、以前先輩から授かった音源からの聴き取りでした)、今回「記事お題」とすることは見送りました。
いずれ佐山さんのアルバムを購入した暁にじっくり考察記事を書くつもりです。

そんな中で今日、ここでどうしてもこの曲にまつわることで書いておきたいのは・・・。

今年になってから、たまたまネット検索でこの名曲を知ったというYOUさんが「これは凄い歌だ!」とひと目(ひと聴き?)惚れしたことで急遽『ゆうちゃん三昧2022』セトリ入りとなったわけで、採譜担当の僕としても「毎回毎回、なんちゅう難曲を・・・」と頭を抱えつつも(汗)、「思い立ったら考えるよりも先にまず動き、見事決行してしまう」YOUさんらしい英断に改めてのリスペクトを持ったものです。

さて、「most beautiful」のジュリーのペンによる歌詞内容はジュリーファンのみなさまには説明不要ですね。
ジョン・レノンの「ウーマン」やポール・マッカートニーの「マイ・ラヴ」にも匹敵する、熱烈直球の求愛。
YOUさんはきっと最愛の奥様のためにこの曲を捧げ歌うんだな、と思いながら採譜作業をなんとか済ませ、当日を楽しみにしていました。

ところが、LIVE本番を前にYOUさんの奥様が思いもよらぬことから重篤の状態となってしまわれたのです。
「最悪の事態も覚悟するように、お医者さんから言われました」とYOUさんから連絡を頂いたのは、もう『ゆうちゃん三昧2022』開催まで残り僅か数日というところでした。
それでもYOUさんは大変な心労をお客さんには微塵も見せず、LIVEを成功させました。
僕も含め、事情を知る関係者数人はそんな状況下でYOUさんが歌う「most beautiful」を聴いたのです。

あの日のYOUさんの歌が「素晴らしい熱唱」なんて言葉では済まない魂の吐露であったことを、僕はこの場を借りてみなさまにお伝えしたい・・・。
そして、きっとYOUさんの一念が通じたのでしょう、LIVE後に奥様は見事回復し、無事退院されたことも併せてお知らせしておきます。

続いてピーさんのお話。
毎年の左門町LIVEで万事ピーさんに尽くされているYOUさんの意気に感じていらしたのでしょう、今回ピーさんはトークコーナーへのゲスト出演と事前の出演告知を快諾、LIVEの盛況にひと役買いました。
この男気こそがピーさんなのです。

当日ピーさんは開演前には控室にスタンバイ、プログラム1番手のX-JAPANカバー・バンド「ゆうちゃんバンド」の演奏を客席から鑑賞されました。
僕は事前にYOUさんから
「もしピーさんが客席から観たい、ということになったら、万一のためにガードをお願いします」
と指令を受けておりまして、ピーさんが会場奥の関係者席に着席されると、ひとまず少し離れた横位置に仁王立ち(いや、世界一頼りないボディーガードですな笑)。
しかし心配は無用、お客さんの多くはピーさんの入場に気づかれて振り返りながらザワザワ、とはしていたものの失礼なことをする方など皆無で、さすがはYOUさんのお客さんです。

そうしていますとピーさんはひとつ空いている隣席を指して「瀬戸口さん、座ったら?」と・・・。
僕のような者にまでこの気遣い、重ね重ねですがこれがピーさんの男気であり人柄なのですよ。

お言葉に甘え着席、色々なお話を伺った中で特筆すべきは、今後の音楽活動についてピーさんが
「反戦を掲げていきたい」
とキッパリ仰ったことです。
「タイガースにも反戦歌はたくさんある。『ヒューマン・ルネッサンス』もそういうアルバムだしね」
と。
そんなタイガース・ナンバーをLIVEで少しずつ採り上げていかれるのでしょう。

また、昨年から怒涛のリリース・ラッシュが続いているオリジナル曲も、タイガース回顧や対コロナというテーマに加え、ジャケット・デザインも含めて、憂うべき世界の状況を反映するコンセプトの作品が増えてきました。
現在レコーディング中、と先日ブログで書いていらした曲もきっとそうではないでしょうか。

僕は二十二世紀バンドのLIVEは年明けの四谷に参加する予定で、既に公演を終えた関西のセットリストはネタバレしないようにしていますが、ブログのアクセス解析を見ると「おっ!」という社会性の強いタイガース・ナンバーの記事に多くの訪問があったりして、「LIVEでやってくれたのかなぁ?」と想像を逞しくしているところです。

そうそう、LIVEと言えばピーさんは二十二世紀バンドのツアー後に、エディ藩さん、ミッキー吉野さんとのジョイントLIVEも控えていて(2月12日横浜、3月12日神戸)、これはYOUさんのプロデュース企画なのです。
詳しくはこちら


ピーさんはジュリーより2つ年上、僕のちょうど20歳上になります。
YOUさんもそうですが(YOUさんの方は僕のひとまわり年上です)、ピーさんもなんとお元気なことか・・・僕もまだまだ老け込むわけにはいきませぬ。
僕はお2人にお会いするたびそんな思いで、大いにエネルギーを貰っているのです。


③「コインに任せて」

最後になりましたが、今日の記事お題に借りた「コインに任せて」について少しだけ。

YOUさんは「この曲好きなんです」と仰っていて、いかにもジュリーらしいビート系は僕も好むところ。でも決して『TOKIO』の中で目立つ曲ではありません。
ただ、アルバムの重要なピースとして無くてはならない1曲。速水さんの作曲作品、というのが意味深いのです。

『TOKIO』に作品を寄せた作曲家は、まず直近3作『思いきり気障な人生』『今度は、華麗な宴にどうぞ。』『LOVE ~愛とは不幸を怖れないこと』で全曲を担当していた大野さん。
さらに加瀬さんに加えてBOROさん、りりィさんのビッグネームも連なり、豪華な布陣です。
そして堯之さんと速水さん。ジュリー・アルバムへの作曲提供は久々ですよね。これをどう捉えるか。

何度か書いてきていますが、僕は『TOKIO』というアルバムは製作当初、『JEWEL JULIE Ⅷ 追憶』のような「ジュリーと井上バンドの作品」をコンセプトにスタートしたのではないか、と考えています。
加瀬さんの「TOKIO」が突き抜けて仕上がった段階で、コンセプトが変わっていったという説です。

凄い名盤ですけど、トータル・コンセプトのイメージはバラけているじゃないですか(だからこそ、統一感を持たせるために「TOKIO」のリプライズが必要だった、と)。
これを単に70年代と80年代ロックの境界、とだけ考えるのは片手落ち。
「井上バンド」の存在を考えて初めて合点がゆく構成のアルバムだと思うのですよ。堯之さんの「DEAR」と速水さんの「コインに任せて」はその意味で重要です。

「コインに任せて」は採譜自体の苦労はありませんでしたが、作業してみて改めてメロディーや小節、音符割りの面白さを再確認できました。例えば

お前 酔わせてくれる女 ♪
    Dm      B♭        C  Dm

とか

悲劇と喜劇は 裏表 ♪
B♭          C7      F

などの箇所は、普通のパターンより遅らせた拍でメロディーが繋がり、独特のせり上がりを感じます。
速水さん提供のジュリー・ナンバーは、どれも味わい深いですよね。



さぁ、2022年ももうすぐ終わりです。
今年の僕は体調面でも仕事面でもなかなかに厳しい局面がありましたが、3年連続で左門町LIVEに関われたことは貴重な体験でしたし、ジュリーのツアーや映画のおかげもあって濃厚な1年を過ごせたなぁ、と思います。

2023年も公私ともに頑張らなくては。
みなさま、どうぞよいお年をお迎えください。

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2022年12月20日 (火)

沢田研二 「whisper」

from『CROQUEMADAME & HOTCAKES』、2004

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1. オーガニック オーガズム
2. whisper
3. カリスマ
4. 届かない花々
5. しあわせの悲しみ
6. 
7. 夢の日常
8. 感情ドライブ
9. 彼方の空へ
10. PonpointでLove

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まずはみなさま、さいたまスーパーアリーナの先行予約抽選結果はいかがでしたか?

僕は音楽仲間と併せ計4枚を申し込み、無事当選いたしました。
広い会場ですから普通に手続ミスなく申し込めば自動的に当選だろう、と踏んでいたのですが、聞けば落選された方もいらっしゃったとか。
やはり今回は色々な意味で特別な公演ですし、関東圏のみならず全国各地のジュリーファンが名乗りを挙げ駆けつけてくださる、ということなのでしょう。

「さいたまアリーナを満員に!」との目標に近づけているようで、そこは嬉しく思います。
あとは落選された方々が今後無事チケット購入が叶うことを祈りつつ、僕は僕でまだまだ周囲への声がけ頑張っていきます!

さて、私事ながら今日は僕の誕生日。
56歳になりました。遂にアラカン突入です。

毎年この日は「ジュリーが今の自分と同じ年齢の年にどんな歌を歌っていたか」をテーマに記事お題を選んでいますが、少し前までは
「同い年のジュリーはこんなに元気じゃないか!自分もまだまだ行けるはず!」
と励まされる感覚が大きかったのが、ここ数年は
「これで僕と同い年?信じられん。やっぱりジュリーは凄過ぎる!」
と、ただただ感嘆し自分の情けなさを嘆く、みたいなパターンに変わってきたような気がするなぁ。

今年なんて特にそうですよ。
なにせジュリーが56歳を迎えた年にリリースしたアルバムは『CROQUEMADAME & HOTCAKES』。
すべてのジュリー・アルバムの中でも1、2を争うパワフルな名盤ですからね。

僕はと言えば、会社の健康診断結果に一喜一憂、普段もちょっとしたことで身体にガタがきていると実感させられたり。
それに比べて56歳のジュリーの健啖なことよ・・・今の僕と「どっこい」なのは老眼くらいじゃないですか?(『CROQUEMADAME & HOTCAKES』の歌詞カードは読みやすいよね!笑)

今日はそんなジュリー56歳リリースの名曲から、「whisper」を採り上げます。
2度目のお題記事、ヒヨッコ時代執筆の過去記事では書ききれなかったことを大長文で・・・と意気込んでいましたが、ここへきてまた少し忙しくなり充分な下書き期間がとれず、予定より少なめの分量となってしまいました(それでもまぁまぁ長文ですが汗)。
それでは、参ります!
よろしくおつき合いくださいませ。


①改めて、『きめコン』セトリに地団太踏んでみた

『ジュリー祭り』で本格ジュリー堕ちを果たした僕はその勢いを駆って、明けてお正月の『奇跡元年』には(先輩方の手助けもあり)参加を果たしましたが、その後の裕也さんとのジョイント『きめてやる今夜』は見送ってしまいました。

開催が平日だったこと、澤會さんに入会しておらずチケット購入が難しかったこと等が一応理由として挙げられるものの、新規ファンであった当時の僕の熱量が「ジュリーのソロ」のみに向けられていたことも事実です。
もし同時期にソロLIVEが開催されるスケジュールだったら、相当無理してでも参加していた筈。

その頃はまだ裕也さんや加瀬さんとジュリーの深い関係まで把握しておらず、タイガースですらよく知らない状況。さらに翌年のジュリーwithザ・ワイルドワンズの噂が流れてきた時も、最初は「え~っ、普通のソロ・ツアーが良いなぁ」と思ってしまったくらいですから。
正にヒヨッコ、『きめコン』のチラシを『奇跡元年』で手にしていながら
「裕也さんとのジョイントか・・・まぁここは我慢しておこう」
と考えてしまった自分を、今は叱りつけたい!

改めて『きめてやる今夜』のセットリストを調べてみますと、涎とともに悔し涙が出てくる・・・なんですかこの貴重過ぎるラインナップは。

まず、豪華絢爛の洋楽カバー。
「アイム・ダウン」「ブラウン・シュガー」なんて元々思い入れのある楽曲です(「アイム・ダウン」は、ポールのLIVEでも未だ体感できていない・・・)。
「傷だらけのアイドル」は、後に『前夜祭』で歌われた時の感動を複数の先輩方から聞くことになりますが、『きめコン』に参加してさえいれば僕もここで体感できていたんですよねぇ。

そして、ジュリー・オリジナル・ナンバーで目を惹く2タイトル・・・「CANDY」と「whisper」です。

どちらも現時点で『ジュリー祭り』以降『きめコン』でしかセトリ入りしていない曲。つまり僕は未体感。
「CANDY」の方は、この先LIVEに参加し続けていればいつか出逢える曲のように思えますが、やっぱり悔しいのは「whisper」ですよ。
これ、もう生で聴くことは叶わないんじゃないか、なんてレア曲を見逃してしまったんだ僕は・・・と今、地団太を踏んでいます。

とにかく「whisper」は『ジュリー祭り』後の怒涛の「じゅり勉」過程で大好きになった1曲です。
どういうふうに好きなのか、惹かれるのか。ひとまず涙をぬぐって(笑)、次項で書いていきましょう。


②「ビートルズライク」なパワー・ポップ

まずこれ、タイトルが良いじゃないですか。
「whisper」・・・覚さんの詞を追っていくと、「囁き」に留まらない意味を持つことが分かります。

歌の主人公は、テレビなんか消して「君」のwhisperが聞きたい、と言います。
確かにテレビから流れ耳に入る音は猛々しくしかも一方通行で、それに比べれば暗がりの中近い距離で交し合う人間の声は静かな「whisper」でしょう。
ポイントは、主人公と「君」の関係性。
昨日今日知り合って口説いている歌ではなくて、これはある程度年季の入った夫婦或いは恋人同士の情景。
これまで何度も聞いてきた「君」の幼い夏の思い出話をもう一度聞きたい、と言っているのですから。
この歌での「whisper」は、日本語なら「睦言」と変換したいところですね。

さて、「whisper」はパワー・ポップです。
「パワー・ポップ」なるジャンルの中で僕が好むバンドやアーティストは、総じてビートルズの匂いがします。
別格過ぎてそう呼ばれることはない(と思う)けど、そもそもポールがビートルズ解散後に結成したウイングスは完全にパワー・ポップ・バンドだったと思っていますし。
そして、ジュリーの「whisper」は正に僕好みのそんなパワー・ポップ・ナンバーなのです。

まず、これは2009年に書いた記事でも一応考察していますが、白井さんのアレンジはバッドフィンガーの「NO MATTER WHAT(嵐の恋)」を意識しているようです。
全体的な演奏トラックのアンサンブルはもちろん、歌い出し直前に前奏をいったんストップさせて、パワフルなヴォーカルをソロで聴かせておいてからAメロに突入していく手法も。

ジュリーファンのみなさまなら「バッドフィンガー」のバンド名は知らずとも、「デイ・アフィター・デイ」「ウィザウト・ユー」といった楽曲はジュリーのカバーでご存知かもしれませんね(「ウィザウト・ユー」については、ジュリーはニルソンのヴァージョンをカバーしていますが、オリジナルはバッドフィンガーです)。
バッドフィンガーは「パワー・ポップの元祖」とされているバンドで、彼等は元々ビートルズが「アップル・レコード」を立ち上げ独立した直後に、ビートルズのメンバー肝いりで同社からデビューした(前身バンドは別名)という経緯があります。
アップル・レコードの新人発掘にはビートルズ自身も深く関わっていて、バッドフィンガー名義のファースト・アルバムに収録された「マジック・クリスチャンのテーマ」はポールの作詞・作曲作品でしたし、アルバムによってはポール、ジョージの演奏ゲスト参加クレジットもあります。
つまり「ビートルズ直系」のバンドがパワー・ポップというジャンルを作り上げていったわけです。

そこで、「whisper」の中にバッドフィンガーから遡るビートルズ・オマージュを探してみると、「ノー・リプライ」(『ビートルズ・フォー・セール』収録)が挙げられます。

SLOW DANCE  SLOW DANCE ♪
          F#m    A          F#m

ここですね。
「ノー・リプライ」サビのキメ部をオマージュしています。

僕は「whisper」を初めて聴いた時、この箇所の詞に違和感がありました。
何故唐突に歌詞構成との脈絡が無い「SLOW DANCE」のフレーズが出てくるのか、と。

得意の深読み(邪推とも言う汗)をしますと、もしかしたらココ、白井さんのビートルズ・オマージュによってアレンジ最終段階で付け加えられたヴァースなのでは?
歌詞の追加も本当に最後の最後、というわけです。もちろん覚さんではなく、白井さんかジュリーのどちらか。
だって歌詞カードに明記が無いんですよ。最初から覚さん考案のフレーズだったらそれは無いでしょう。

作曲者の八島さんのプリプロ音源が聴ければ、この説が合っているかどうかわかるのですが・・・ファンの勝手な無いものねだりですな~。

それにしても、八島さんのメロディーとジュリー・ヴォーカルの相性は抜群ですよね。
パワー・ポップの特色はまず「ハードな演奏と甘いメロディーの融合」ですが、例えば「whisper」なら

くちびるを寄せてよ もっと近くに ♪
A               Bm C#m  D    E    A

このせり上がっていく感触、パワフルなのに哀愁もあって。これがまた「ビートルズライク」と言えるのです。

さらにこの曲はジュリー特有のジャンル「エロック」でもあります。
完全にピロートークですからね。男性の僕も、やっぱりエロいジュリーは大歓迎、大好物です。

そんな大好きな「whisper」がセトリ入りした『きめてやる今夜』は、関東・関西各一夜の2公演のみ・・・だったのでしたっけ?
覚さんの詞を借りれば正に

星空 それより 贅沢な一度きりの夜 ♪
   C#m       F#7   Bm   B7     E7

という貴重なLIVEだったのだ、と今さらながらに思います(この歌詞部のメロディーもとてもイイ!)。
参加できたみなさまが本当に羨ましい・・・。


③56歳?信じ難いパワーと色気の大名盤!

最後に、大好きなアルバム『CROQUEMADAME & HOTCAKES』について。

『ジュリー祭り』後すぐに購入した数枚のアルバムのひとつで、その時も「凄い!」とは思いましたが、いざ自分自身がリリース時のジュリーと同じ年齢になってみるとなおさら感嘆、ひれ伏すしかない名盤ですな~。
あと、もし新規ファンの方が読んでくださっていたら、これはツアーDVDもメチャクチャお勧め!
ジュリーのパフォーマンス、セトリも演奏も凄いし、ジュリー史上2番目に奇抜な「全身トカゲ」衣装も見どころです(長らく奇抜度は「史上1番」だったんだけど、最近になってあの「全身猫」に抜かれました笑)。

先述の通り「パワー・ポップ」はバッドフィンガーが元祖とされますが、90年代オルタナ全盛期にアメリカ、カナダを中心に優れたバンドが多く出て来て、僕はメリーメイカーズやファストボール、オーズリーといったあたりを夢中で聴いていました。
個人的には「パブ・ロック」「ネオ・モッズ」と並び、呼び名を聞いただけで心躍るロック・ジャンルです。

で、これは白井さんのアレンジが大きいと思いますが、ジュリーについては2001年『新しい想い出2021』から2005年「greenboy」までは完全にパワー・ポップなアルバムだと思います。
そんな中「キャッチーなメロディーとハードな演奏、アレンジ」の融合性で言えば、2002年『忘却の天才』と2004年の『CROQUEMADAME & HOTCAKES』が双璧と言えましょう。

『CROQUEMADAME & HOTCAKES』の場合は、「whisper」は分かり易いんですがその他の曲でも白井さんならではの「あっ!」と驚くビートルズ・オマージュがあって、「オーガニック オーガズム」が「イエスタディ」だったり、「PinpointでLove」が「ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット」だったりと、ビートルズマニアの僕としては採譜がとても楽しい1枚。

そしてこれも先述した「エロック」の要素がアルバム全体を通して重要です。
「Whisper」以外では冒頭の「オーガニック オーガズム」と大トリ「PinpointでLove」、そして「感情ドライブ」。
ジュリー56歳にしてエロ全開です。

クロックマダムを模したキュートなパッケージも含めて大好きなアルバムですね~。

で、ですよ。
この名盤、意外や2000年代のアルバムの中では他と比べLIVEセトリ率が低いのです。
これまで僕が体感できているのは、常連曲「届かない花々」ともう1曲「彼方の空へ」のみ。
その意味でも「whisper」が降臨した『きめコン』不参加を悔いています。

果たしてこの先、未体感8曲を生で聴く機会が巡ってくるのかどうか。
個人的には「感情ドライブ」がBARAKAメンバーの演奏スタイルにとても合う曲だと思いますから、七福神(仮)でのセトリ入りに期待を持ってはいるのですが・・・。


それでは、次回は年内最後の更新です。
去る8月21日、年長のタイガース・ファンの友人であるYOUさんが開催した『ゆうちゃん三昧2022』のことを書きたいと思います。

この企画LIVE『ゆうちゃん三昧』は2014年、2018年に続く3度目の公演。過去2回と同様、今年もYOUさんはジュリーのコピー・バンドを結成し(毎回メンバーが違います)、今回は何とアルバム『TOKIO』収録曲をすべてカバーする、という内容でした。
よって記事お題は、まだ未執筆の『TOKIO』収録曲の中から選びます。

トーク・コーナーにゲスト参加されたピーさんの話題含め、『ゆうちゃん三昧2022』を総括できれば、と。
よろしくお願い申し上げます!

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2022年12月10日 (土)

沢田研二 「いつか君は」

from『いつか君は』、2022

Itukakimiha

1. いつか君は
2. 遠い夏

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original released on 『愛まで待てない』、1996

Aimadematenai_20221208181801


1. 愛しい勇気
2. 愛まで待てない
3. 強いHEART
4. 恋して破れて美しく
5. 嘆きの天使
6. キスまでが遠い
7. MOON NOUVEAU
8. 子猫ちゃん
9. 30th Anniversary Club Soda
10. いつか君は

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関東も先週から一気に朝晩寒くなりました。
フォーラム公演があった11月は例年になく暖かかった印象ですが、さすがに12月となりますとね。
映画『土を喰らう十二ヵ月』をきっかけに改めて覚えた二十四節気で言うと、今は「大雪」ですから。

さて今日はその『土を喰らう十二ヵ月』主題歌となった「いつか君は」がお題です。
せっかくの機会ですので、昨年の『キネマの神様』に続き『ジュリー出演映画レビュー』のカテゴリー第2弾としてこの記事を更新いたします。
あと、みなさまの映画のご感想などもコメント欄にてお聞かせ頂ければ嬉しいです。
今日もよろしくおつき合いください。


①映画『土を喰らう十二ヵ月』レビュー!
 (注:ネタバレを含みますので御注意ください)

ひと言、素晴らしかった!
この名作がジュリー主演という奇跡、なるほど中江監督のキーワードは「色気」ですか~。
まずは監督の慧眼に感謝、感謝です。

最近は、視覚的にも聴覚的にも煽りたててくるような映画が増えているじゃないですか。
それはそれで良いのだろうけど、僕の嗜好にはこのくらい淡々と、味わい深く進行していく作品が合うなぁ。
観終わった後にまったく疲れず、穏やかな活力が漲ってくる映画はそうそうありません。個人的にここ数年で観た中では「イエスタディ」と双璧です。

さて僕はこの映画、フォーラム公演があった週末の土曜日に池袋まで観に行きました。
公開からは日が経っていたのにお客さんの入りは7、8割の盛況。年齢層も広くて、ジュリーがフォーラムMCで話していた「爺さん婆さんばかり」なんてことはなかったです。
若いカップルも見かけたましたから、世の映画好きの方々にとってかなりの話題作なんだろうなぁと。
また、土井先生の料理のファン、という層も多くいらっしゃるようですね。

今回ムビチケを手配してくれて一緒に行ったカミさんも大満足の様子で(『キネマの神様』の時は「う~ん、良いんだけど・・・」と微妙な感じだったっけ)、ちょうど正午くらいに鑑賞を終えて2人でまずとりかかったのが、「近場の和食の店を探しまくる」という(笑)。
いや、この映画を観た後にお腹のすいていない人なんていないでしょう。
結局入ったのが、一品料理も充実したこちらのお蕎麦屋さん。美味しかったですよ!

で、夕食は大根を炊いて味噌をつけて・・・これがメインであとは味噌汁と漬物とご飯のみ。「これで充分だよねぇ」と言い合いながらね。
心の底からそう思えましたが、精進の足りない僕らが「一汁一菜」の志を持てたのは結局この1食だけ。まだまだツトムさんや土井先生のようにはいきませんな~。

ジュリー以外のキャストも魅力的でした。
松たか子さん演じる真知子さん、前中半と後半で雰囲気がガラリと変わる!さすがです。
眼鏡をかけラフな格好で山荘を訪れ、大きな口を開けてツトムさんの料理に舌鼓を打つ真知子さんも、とても山にキノコ狩りになんて向いてそうもないパリッとしたスーツで、婚約したことを知らせにきた真知子さんも、どちらも素敵。
印象深いシーンは、やっぱり山荘の床で眠れずに考え込みながら月を見つめるシーンですねぇ。
言うだけ野暮ですが、営みの後の情景・・・真知子さんがツトムさんと共に暮らすことをいったんは決意した瞬間、じゃないのかなぁ?

また、『太陽にほえろ!』の後番組『太陽にほえろ!PART2』で女ボスだった奈良岡さん、さらにその後番組『ジャングル』レギュラー刑事役の火野さん、『スウィングガールズ』で知った西田さんは元々贔屓の役者さんですし、「こういう役を演じたらピカイチ」な尾身さんもとても良かった。
加えて「さんしょ」の可愛らしさ、健気さはもちろん、たった2度の登場シーンで見事に季節の移ろいを表現してのけたカエルさんの名演(?)も光りましたね~。

そして、何と言ってもジュリーのツトムさんです。
前記事でも少し書きました。ジュリーは「あれは、僕本人ではなくて演じているんですよ」と話してくれて(フォーラムMCより)、もちろんそれはそうなんですけど、ファンから見るとジュリーとツトムさんってすごくリンクするように感じます。
「いい男ね~」「せやろ」のシーンに限らずね。

ファンの妄想承知で細かいところを挙げれば、お義母さんの家で軽やかな音をたてて沢庵を食べるシーン、ジュリーはこういう食べ方しそうだなぁ、とか。
畑や池を見に行くシーンは、僕らが普段LIVEで観ている、終演して最後にしずしずとステージからはけてゆくジュリーの所作そのまま。
「一緒に暮らさないか?」と真知子さんを誘う時の、照れて遠慮がちに見えながら実は有無を言わせぬ一途な熱を感じる(これが、中江監督の求めた「色気」でもあるのかな?)ところなんかも。

スクリーンにツトムさんが現れ、下から上に顔のアップが移動していくとこちらは「おお~、ジュリーだぁ!」となる・・・でも劇中ではそれが違和感なくツトムさんで。
仕方ないよね・・・僕らはいつもジュリーを見てきて「無洗米はあまりおいしくない。お米はやっぱり自分でとがないと」といつかのMCで話してくれた、そんなジュリーを知っていますから。
「お米をといでいるジュリーが見れた!」みたいな感覚は、この映画におけるジュリーファンだけの特権です。

厳しい真冬の季節に限られた食材で工夫を凝らすこと、これはジュリーの音楽活動の手法に通じるでしょうし、水上さんの原案本『土を喰う日々』で最重要のキーワード「精進」は、今年の新譜「LUCKY/一生懸命」のコンセプトに通じます。

では、そんなジュリー演じるツトムさんが劇中で大悟に至った「明日も、明後日も、と考えずに今日1日を過ごす」、寝る前には「みなさん、さようなら」といったんこの世との別れを告げ、翌日を無事に迎えるという生き方は、ジュリー自身が推した主題歌「いつか君は」とどのように繋がるのでしょうか。
次項ではその名曲について考察していきましょう。


②永遠なんてないことを許せるつよさ

ズバリ、↑ この歌詞部でしょうな~。
先日の「いい風よ吹け」の記事で書いたように僕は『敦盛』の境地には程遠く、「この世」が永遠でないという真理に向き合うことすら怖いです。まして「許せる」なんて到底。
けれども、僕は無理かと思いますが何かのタイミングでその真理を受け入れられる資質を持つ人はきっと世に多くいて、『土を喰らう十二ヵ月』でのツトムさんの場合は自らの体調の異変がきっかけだったのだろうと解釈できます。
そしてツトムさんを演じるジュリーは、おそらく既に「受け入れる」腹を括れている人ですよね。

「いい風よ吹け」「桜舞う」「護られている I love you」等、自作詞曲で感じられるジュリーの死生観。
これはジュリーが覚和歌子さんの作詞曲を、自身が辿る年齢とリンクしつつ歌えた経験が大きいんじゃないかなぁ、と僕は考えていて。
「約束の地」で芽生えて「いつか君は」で確立、とすると腑に落ちる気がするんですよね。
これは正に『土を喰らう十二ヵ月』でツトムさんが直面する死生観ですから、ジュリーが「この映画に合う」と「いつか君は」を推したことも頷けます。

曲想で言っても「長調のバラード」はこの映画のエンドロールにふさわしい。
ただ、中江監督が「主題歌を沢田さんの歌にしたい」と打診しなければそれも実現しなかったわけで・・・ジュリーファンはとても喜んでいますよ、監督!

今回記事を書くにあたって採譜をして歌ってもみたんですけどね、まぁ男声としてはキーが高い高い!
アルバム『愛まで待てない』は、他にも「愛しい勇気」「強いHEART」あたりメチャメチャ高くて、96年のジュリーの喉は充実、円熟を迎えていたようです。

またこのアルバムは、我が国が生んだ傑出のスーパー・ギタリストの1人である故・大村憲司さんが深く関わった最後のジュリー作品でもあり、「いつか君は」はその大村さんの作曲作品(当然アレンジも大村さん)。
映画の世界観を考え合せると、ジュリーには今回、覚さんのみならず大村さんへの改めてのリスペクトがあったかもしれません。

リマスターのことも書いておきましょう。
収録2曲のオリジナルが96年と2006年ということで、リマスターしてもさほど劇的な変化は無いだろうと思っていましたが、聴いてみたら「全然違う!」という。
個人差あろう中での僕の感想は「演奏の聴こえ方はオリジナルの方が好きだけど、ジュリーのヴォーカルはリマスター万歳!」です。

まず演奏の聴こえ方は、「ああ、今年の『LUCKY/一生懸命』ってこうだよなぁ」という仕上がり。
これが世の現在のマスタリング王道なのでしょう。『LUCKY/一生懸命』は初聴ですから違和感はまったくありませんでしたが、オリジナルが耳に沁み込んでいる「いつか君は」「遠い夏」のリマスターは「あれ?」となります。
低音が前に出て、高音が引っこんでいる印象。「ズシ~ン」という耳辺りをして「こっちの方が好き」という方も大勢いらっしゃると思うけど、僕はもうちょっと高音が軽くキラキラしてる方が馴染むんです。

「リミックス」ではなく「リマスター」ですから、各トラックのフェーダー・バランス自体は変わりません。
イコライジング補正の上で、おもに「音圧の向上」を志すと、おのずと低音が際立つ・・・この「今現在の世のリマスター手法」の特色、去る9月に吉田Qさんとお会いした際に色々とお話ししたので、年明け早々に書く予定のQさんのアルバム・レビュー記事(Qさん、結局年内に書くことができずすみません)で触れたいと思います。

次にジュリーのヴァーカル、こちらは今回のリマスターの方が好きです。
「かすかな呼吸で♪」の「かすか」の箇所にドキッとして、「ここ、ジュリーこんなに色っぽく歌ってたんだっけ?」と再度オリジナルと聴き比べ、「やっぱりリマスターの効果だな」と思いました。
僕はよく「ジュリーは「か行」と鼻濁音系の発声が素晴らしい!」と書きますが、今回の「いつか君は」リマスターでは「さ行」にヤラレてしまった感じですね。
みなさまはいかがでしょうか。

大切な人との別れを思い起こさせる歌というのは、どうしたって切なさ、悲しさが同居します。
実は僕も先日、長い間勤務先でお世話になった方(勇退されるまでの十数年は、僕の直属の上司でした)の訃報に接したばかり。
そんな状況で聴く「いつか君は」は胸が詰まる・・・しかしそれは楽曲とジュリーの歌にそれだけ訴えかける力があるということ。
流れ落とされる、というのかな。

『土を喰らう十二ヵ月』のような映画の主題歌が「いつか君は」で良かった、良い映画だったなぁ、と思います。


③カップリング「遠い夏」の謎

最後に、『いつか君は』カップリング(個人的には「B面」と呼びたい)の「遠い夏」について少し。

僕はこの曲が大好きでずいぶん前にお題記事を書き終えていたんですけど、11月にシングルCDのリリースがあったからでしょう、拙ブログ過去記事としては異例のアクセス数を頂いていたようです。
11月ページ別アクセス解析スクショがこちら。

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注目すべきは「入口回数」の数字で、これは「最初にどのページから訪問されているか」を表します。
常連の読者様は、だいたい最初はトップページに来てくださって、その後各ページを読んでくださるという順序かと思います。その場合は、トップページが「入口回数」にカウントされるわけです。

そこで11月の「遠い夏」の「入口回数」の数字を見ますと、ちょっと桁違い。つまり、ハッキリ「遠い夏」についての情報を求めての訪問が多いということなんですよね。
なにせ本格堕ち間もない時期に書いた記事・・・アクセス解析を見て冷や汗が出ましたが、読み返してみるとヒヨッコ時期にしてはまぁまぁ考察っぽい内容になっていて、ホッとしました。

今日ここで考えたいのは、「遠い夏」が今回シングル・カップリングに抜擢された理由です。
選曲は当然ジュリーで間違いないでしょうが、何故この曲が選ばれたのでしょうか。

まず、僕はてっきり「遠い夏」も映画『土を喰らう十二ヵ月』の挿入歌なのかと思い込んでいて、劇中で季節が夏を迎えたあたりで「さぁ来るか、来るか」と待ち構えていました。
しかし最後まで「遠い夏」がかかることはなく・・・意外でした。ストーリーやシーンを邪魔せず、素晴らしい意味で淡々とスクリーンに溶け込める歌だ思うんだけどなぁ。

だから、結果挿入歌ではなかったけれど、ジュリーはやっぱり「遠い夏」を「いつか君は」と別の側面から「この映画に合っている」と考えカップリングに決めたのではないか、と僕は考えたいのですが、どうでしょうか。

いずれにしても、ファンの間でも特に語られる機会がさほど多くはなかった隠れた名曲が、思わぬ形で今見直され再評価を得ているのはとても嬉しい。
僕は年明けの渋谷には参加できないのですが、またセトリの入れ替えがあって「遠い夏」を歌った!なんてことになったらホント悔し泣きしそうです(笑)。『きめてやる今夜』の時の「whisper」以上に地団太踏みそう。
まぁ、今回のセトリは流れ的に完璧ですから、入れ替える曲の予想はまったくつきませんけどね。
実現の暁には是非コメント欄に速報をお願い申し上げます。僕に地団太踏ませてくださいね。


ということで次回更新は、僕の56歳の誕生日である12月20日を予定しています。

毎年この日は「今の僕と同い年のジュリーがどんな歌を歌っていたか」をテーマにお題を選んでいます。
ジュリーが56歳の年にリリースしたアルバムは、あのパワフルな大名盤『CROQUEMADAME & HOTCAKES』。
収録曲ではまだ「カリスマ」「夢の日常」が未執筆なのですが、今回は『過去記事懺悔やり直し伝授!』のカテゴリーにて、「2度目の記事」のお題を採り上げます。さっきチラッとタイトル出した曲ね。
これまた先日の「いい風よ吹け」同様「好き過ぎてヒヨッコ時代早々に書いてしまったものの、考察内容に後悔を残す記事」のひとつ。
白井さんのアレンジ・オマージュ元とか、書きたいことが山積みな名曲です。どうぞお楽しみに!

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2022年12月 3日 (土)

沢田研二 「いい風よ吹け」

from『いい風よ吹け』、1999

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1. インチキ小町
2. 真夏・白昼夢
3. 鼓動
4. 無邪気な酔っぱらい
5. いい風よ吹け
6. 奇跡
7. 蜜月
8. ティキティキ物語
9. いとしの惑星
10. お気楽が極楽
11. 涙と微笑み

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12月3日です。
東京ドーム組の『ジュリー祭り』参加ファンにとっては、あの幸せな空間を思い出す記念日。
加えて僕にとっては、それが初のジュリー生体感→本格堕ちしたという重要な日付でもあります(ついでに言えば結婚記念日だったり)。

毎年『ジュリー祭り』セットリストからお題を選び更新していますが、今年はせっかくですから現在の全国ツアー『まだまだ一生懸命』でも歌われている曲を、と考え「いい風よ吹け」に決めました。

ここ数年同様、『過去記事懺悔やり直し伝授!』のカテゴリーで「2度目の記事」を書くことになります。
よろしくおつきあいくださいませ~。


①思へばこの世は常の住処ならず

僕が初めて「いい風よ吹け」をしっかり聴いたのは、言うまでもない『ジュリー祭り』でのジュリーの生歌。
その後アルバムを購入し、すぐに詞曲とも大好きになりました。

ジュリー本格堕ちが遅れた僕は、おもに90年代後半以降のアルバムを後追いで聴く度に、ジュリー自作詞の進化に驚かされ、魅了されていったものです。
「いい風よ吹け」もそんな名篇のひとつで、大好きな曲だからこそヒヨッコ状態のまま早々に「考察」とは程遠いお題記事を書いてしまいました。
「やり直し」のこの機に何より書きたいのが、ジュリーの自作詞のことなのです。

「いいい風よ吹け」の詞について僕は初聴時からしばらくの間「ピロートーク」としてのみ捉えていました。
もちろんその要素がこの詞にあることは間違いないにせよ、肝心の「ジュリーの死生観」を見出すまでには時間がかかり・・・他のジュリー作詞作品とのリンクや、鉄人バンドの演奏で何度もLIVE生体感するうちようやく詞の本質が見えてきたのですよ。

そんなわけで「さぁ書くぞ!」と久々にCD『いい風よ吹け』の歌詞カードを取り出し、まず絶句。
文字がほとんど読めない・・・色合いのせいもありましょうが、少し前まではこのくらいのフォントなら楽に読めていたはずなのに、恐るべしは50代の老眼進行速度ですな~(泣)。
やむを得ず拡大鏡を駆使しつつ書いています(笑)。

僕は戦国武将マニアということもあり

思へばこの世は常の住処ならず
草葉に置く白露、水に映る月よりなほあやし

と歌われる『敦盛』の詩がとても好きです。
この詩そのままの通りの人生を駆けぬけたような織田信長を敬愛する一方、最後まで「生」に未練を持ち続けた豊臣秀吉も、健啖長くしてすべてを手中とし大往生した徳川家康もそれぞれ大好きで(来年の大河はメチャクチャ楽しみ!)、まぁその中でも僕の死生観は秀吉に近いのかな。死ぬことがすごく怖いし、少なくとも矍鑠として過ごせる時間は残りあと僅かでしょう。
ではジュリーは?

『ジュリー祭り』で掲げた「人間60年」は『敦盛』の「人間50年」へのオマージュでもあったわけですが、とにかく「永遠の命」など無いという当然の理にしっかり向き合いながらも強く生きる、健康に70代を駆けている、80代そしてその先まで考えていそうなジュリーの生き様には感嘆するばかり。
それは、映画『土を喰らう十二ヵ月』を観たばかりのタイミングの今だからなおさら考えさせられるわけで。
「この映画にピッタリ」とのジュリーの言葉があって主題歌となった「いつか君は」。もしかしたらジュリーの死生観は覚さんのこの詞を歌った頃から確立されていったのかもしれません(数年遡っての「約束の地」も重要ですけど)。
そこから後の自作詞曲「いい風よ吹け」「桜舞う」「護られている I love you」あたりにコンセプトが引き継がれていったんじゃないかなぁ。

僕は『敦盛』の境地には到底及びません。
ジュリーのようにこの世の理と強い心で向き合うこともできないし、ツトムさんのように潔く意を決することもできません。
「明日も、明後日も」と時間に頼って物事を考えてしまうタイプなのですね。

青い空飛んで行く鳥が
   F

羨ましくはなくて
Dm       Am7

辛いだろうと思う
Dm          Gm

そっといい風よ     吹け ♪
B♭6           B♭(onC)    F

この世に宿るすべての生命にとって、小さな力を尽くしこの世を生き抜くことは厳しく辛い苦行。
それをやり遂げた先に穏やかな来世(常の住処)があるのだ、だから自分や身近な人を含めすべての生命の営みは愛おしい、とそんなふうに思えればよいのだけれど(ツトムさんの言葉で言えば、「その日1日を過ごせれば充分」と)、凡庸たる身にはなかなか難しいことです。

先日、ジュリー道の師匠が「いい風よ吹け」について、「ジュリーもこんな詞を書くようになったのね」と感激したという思い出を話してくださいましたが、ジュリーがこの名曲をリリースしたのは現在の僕より全然年下なんですよねぇ。
特別な才能、経験をしてきたジュリーは死生観ひとつとってもモノが違うんだなぁ、と感じ入るばかりです。

ジュリーは先のフォーラム公演MCで、『月を喰らう十二ヵ月』のワンシーンについて
「あれは僕が言ってるんじゃなくて、僕はツトムを演じているんですよ」
と話してくれたけれど、ファンから見ればジュリーとツトムさんって、やっぱりリンクしますよ。
「いい男ね~」と言われたら「せやろ」と応えそうなジュリーだと思ってしまう・・・おっと、こういう話は次回記事で書くつもりだったんだっけ。
今日のところはここまでで(笑)。

で、今ちょうど次項に向けて『ジュリー祭り』DVDの「いい風よ吹け」を観ているのですが、やっぱりこの日最終盤のジュリーには神々しい何かが降りてきていますね。
歌詞を思い出しながら歌っている感じがまったくしない・・・無心の状態で唇から歌声が自然に流れこぼれてゆく様子がひしひしと伝わってきます。

そんな映像に見とれつつ、今年もまた『ジュリー祭り』のあの日に思いを馳せている次第です。


②七福神(仮)と鉄人バンド、演奏聴き比べ

僕はツアー初日に「いい風よ吹け」を聴いた時、大好きな名曲久々の降臨(ギター1本体制では歌われていません)に感動したものの、どちらかと言うと鉄人バンドの演奏を懐かしく思う複雑な気持ちの方が大きかったのです。
それが先日のフォーラムで七福神(仮)ヴァージョン2度目の体感を経て、「うん、甲乙つけ難い。どちらのバンド演奏も素晴らしいじゃないか」と。

そこで今日はこの機に「いい風よ吹け」を演奏する七福神(仮)と鉄人バンド、それぞれの特色、魅力について書いておきたいと思います。

まず鉄人バンド。
「必要最低限」の音数でオリジナルCD音源を再現する、研ぎ澄まされた演奏です。
柴山さんがエレキ、下山さんがアコギ、そして泰輝さんはベースラインとムーグ。GRACE姉さんのドラムス(この曲では、高い音色のスネアと、要所で挿し込まれるフロアタムの対比がとても好きでした。鉄人バンドの演奏に思い入れのある僕が、今回のツアー初日段階の感想として「いい風よ吹け」にちょっとした違和感を覚えたのは、ギターよりむしろスネアの感触だったのです)も合わせ、4人の音がどれも聴きとり易くスッと身体に入りこんできます。
あくまでジュリーのヴォーカルがメインであり黒子に徹するアンサンブルを志しているにも関わらず、幾多の名演の中でも「鉄人バンドの音」が特に心に残る演奏曲のひとつに仕上がっているんですよね。

個人的に推していたのが、下山さんのアコギです。
「F」のアルペジオ・バリエーションをここまで・・・という。これが「C」とか「G」「D」あたり、或いはカポ・プレイなら難易度は普通なのですが。

面白いことにその演奏、僕の初体感となった『ジュリー祭り』では下山さん大苦戦なのですな。
セトリ80曲の79曲目、後に下山さんはラジオで「ほとんど指が動かない状態だった」と語っていました。
1本ずつ弾かなければいけない箇所で3本同時弾きのコードに切り替えたり、涼しい顔で対応はしていますが内心では「ええい!頑張れ俺の指!」と歯をくいしばっていたはず。
だからこそこの映像、この演奏は貴重です。

あとは柴山さん。
CD音源のサスティン・リードを再現します。
今でも(今ツアーでも)柴山さんは「いい風よ吹け」になると白のフェルナンデスにチェンジ。ずいぶん前にその点について、しょあ様に「あのギターは何?」と尋ねられ、「世界のカブトムシ図鑑に載ってそうなギターですよね~(ヘラクレスオオカブト、胴体が白いのです笑)」とワケの分からない答え方をしてしまったのも懐かしい思い出。
その後の調べで、あのフェルナンデスは1度音を出せば弦の振動を止めない限り永遠に音が伸び続ける設定であることが分かりました。
柴山さんの「1曲入魂」を象徴する演奏でしょう。

ちなみに『ジュリー祭り』80曲目の「愛まで待てない」では今度は柴山さんが大苦戦・・・これまた貴重です!

では、七福神(仮)はどうでしょうか。
人数、編成の違いにより音数が多く、とても豪華、きらびやかな演奏です。
そのぶん柴山さんのフェルナンデスの音が埋もれて聴きとりにくくなっているのですが、こちらのアンサンブルもやはり素晴らしいと思います。

高見さんがアルペジオではなく、エレキを持ってオリジナル音源とは異なる新たなアレンジ解釈をしているのがまず目立ちます。
Aメロの小節の頭でワウの効いた複音を鳴らしますが、ワウ独特のうねりや余韻は、樋口さん作曲の「いい風よ吹け」楽曲自体が持つ浮遊感と合致します。

ただ、鉄人バンドでの下山さんのアルペジオ演奏の中でも、薬指で弾いていたクリシェの音階は「いい風よ吹け」には不可欠のもの。
ギターの代わりにその音階を担当するのが斉藤さんのキーボードで、それを含め斉藤さんはここではピアノ系、シンセ系、ムーグと八面六臂の大活躍なのです。

平石さんの重めのスネアもフォーラムでは「なるほど、ベースありのフルバンド・スタイルだととても合うんだな、と思いましたし、七福神(仮)の場合は音数をオリジナル以上に増やすことで、厚みのあるバラード・アンサンブルを志しているのですね。

そして素晴らしいのがコーラス・ワークです。
鉄人バンドは、この曲では泰輝さんがコーラス・パートを一手に受け持っていました(箇所によってGRACE姉さんがハモっていたかなぁ?少なくとも柴山さん、下山さんがこの曲でコーラスをとっていた記憶はありません)。
それが七福神(仮)には、すわさん、山崎さんのコーラス隊がいますし、加えて依知川さんがコーラスの名手。
シンプルに適役人数の多さが強みで、「いい風よ吹け」では特に「tu,tu,tu...」のハミングが心地よいです。

ともあれ七福神(仮)は今ツアーに限らずこの先何度も「いい風よ吹け」演奏の機会があるでしょう。
どんな進化をこれから魅せてくれるのか・・・。
楽しみにしています。


③目立たないけど、しみじみと良い名盤!

最後にアルバム『いい風よ吹け』について少し。

この名盤を購入したのは、先述の通り『ジュリー祭り』後の怒涛の大人買い期。
短期間で大量の音源を聴いていった僕は、このアルバムに限らず初聴時からその真髄を掴むことはなかなか難しく、とにかく「知らない曲を頭に詰め込む」作業に必死だったなぁと思い返します。

『いい風よ吹け』は当初、「イイんだけど、全体としてはちょっと地味な1枚」と思っていました。
後追いファンの宿命で僕はそれぞれのアルバムを聴いた順序も年代バラバラなんですけど、それでも「もし自分がずっと毎年新譜購入していたら」と想像した時も、『サーモスタットな夏』→『第六感』と来て『いい風よ吹け』・・・たぶん同じような感想を持ったんじゃないかな。

ところがこれが、聴く度にどんどん嵌る。
購入後しばらくの間「苦手」としていた「お気楽が極楽」も、LIVE生体感した瞬間から大好きになりましたし。

ジュリー、覚和歌子さん、GRACE姉さん3人の作詞作品がアルバム内でシンクロする不思議な魅力が続く数年も、この『いい風よ吹け』が始まり。
詞について考えることが好きな僕のようなリスナーにとって、その意味でも重要な名盤と言えるのです。

僕がこれまでLIVE生体感できている収録曲は、「鼓動」「いい風よ吹け」「奇跡」「蜜月」「いとしの惑星」「お気楽が極楽」の計6曲。
「いつ来るか、いつ来るか」と待ち構えている、大好きな「インチキ小町」がまだです。これは依知川さんの作曲作品ですし、近い将来きっと・・・とは思っていますが。
あと「真夏・白昼夢」「無邪気な酔っ払い」「ティキティキ物語」の3曲がいかにもジュリー好みで毎回ツアーの度に期待大。残るラスト収録「涙と微笑み」は大好きなんですけど、今後のセトリ入りとなると難しそう・・・というのが僕の感触です。
みなさまはいかがでしょうか。


それでは次回更新は、映画『土を喰らう十二ヵ月』の感想も併せて「いつか君は」をお題に採り上げます。
僕が映画館に行けたのは結局フォーラムより後になってしまって(その週の土曜日)、実際に観てから「あぁ、あの話はあのシーンのことだったのか」とジュリーのMCを思い返す、という順序になりました。

更新までしばしお待ちを~。

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2022年12月 2日 (金)

ラガーの旅立ち

明日更新予定の記事の下書きを大部分終えたところに、悲しい知らせが届きました。
急遽、更新します。

あの『太陽にほえろ!』でラガー刑事を熱演された俳優・渡辺徹さんが亡くなられました。
61歳での旅立ちはあまりに早過ぎ、ショックです。

山下真司さん演じるスニーカー刑事の後任として七曲署にやってきたのが、渡辺さんのラガー刑事。
「あどけなさ」を持つ新人刑事は、『太陽にほえろ!』初のキャラクターだったでしょう。


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劇中での「ラガー」の名付け親は実は沖雅也さんのスコッチ刑事で、着任後初めての事件を解決した後、ロッキー刑事(木之元亮さん)に「いやぁ、最初に会った時のオマエのタックルには参ったよ~」と言われ「ええ、俺、ラグビーやってましたから」と答えると、スコッチ刑事が「そうか、オマエ、ラガーか」と何の気なしに言ったのです。
すると山さん(露口茂さん)が「よぅし、それで決まった。オマエのニックネームは、今日からラガーだ!」と決めてしまったという。


そんなラガー刑事登場篇は『太陽にほえろ!』の中でも好きな回のひとつで、時々DVDで観返しています。
挿入曲を担当する大野さんは、新人ラガー刑事のために2曲を作曲。そのひとつ、「ラガーの青春」は僕の『太陽にほえろ!』挿入曲・個人的ベスト3に入ります。


純朴、熱血漢の若手刑事として人気が爆発したラガー刑事の渡辺さんは、すぐに歌手デビューも果たし、セカンド・シングル「約束」は大ヒットしました。
鈴木キサブローさんの哀愁のメロディー、大村雅朗さんのタイトなアレンジが大好きで、僕も若い頃よくカラオケで歌ったものです。

郁恵さんの心労も心配ですし、とにかく青少年時代から知っているスターの訃報は本当に辛い・・・。
心よりお悔やみ申し上げます。

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