沢田研二 「TOKIO 2022」
from『LUCKY/一生懸命』、2022
1. LUCKY/一生懸命
2. TOKIO 2022
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長い間バタバタしておりましたが、今週からようやく落ち着きました。
まぁこれから年末にかけては休日に友人と会うことが多いですから相変わらず多忙と言えば多忙ですが、平日にブログの下書きができるのは有り難い・・・2022年ラストスパート、年末まで更新頑張っていきますよ~。
早速、「年内の執筆必須」と心に決めたジュリー・ナンバー5曲の編集CDを作り、通勤中に聴き込む日々です。
今日はその5曲からの第1弾「TOKIO 2022」。
先の東京国際フォーラム公演の感想も交えつつ更新、よろしくお願い申し上げます!
①反体制パンク→力強いラヴ・バラード!
まずは、お題曲「TOKIO 2022」の考察を。
これは今年6月25日に新譜『LUCKY/一生懸命』カップリングとして音源リリースされましたが、「柴山さんの演奏をギター1本体制時と比較したい」との思いがあり、お題記事執筆を保留していました。
いや~、慌てて書かないで本当に良かったです。
何故って、ギター1本体制アレンジのLIVE→バンド・スタイルのCD音源リリース→『まだまだ一生懸命』ツアー渋谷初日→今回の東京国際フォーラムのステージと、僕のこのヴァージョンへの印象は本当に大きく変わっていきましたから。
昨年のギター1本体制のツアー『BALLADE』で今年の「TOKIO 2022」基本形となる16ビート・ヴァージョン(「TOKIO 2021」と言うべきかな)を初めて聴いた際、僕はやはり「東京五輪の強引な開催」等社会的テーマと合わせてその斬新なアレンジを捉えていて、ゴリゴリにエレキ1本で歌うジュリーのヴォーカルをして「これはパンクだ!」と思いました。
柴山さんのギターには当然ニール・ヤングを連想させられ、ジュリーがかつて日本武道館公演で語った「僕らのような商売の者は、反体制であるべきだと思う」との言葉を象徴するような新アレンジ、ヴォーカルに舵を切ったものと考察していたものです(当時の記事がこちら)。
その柴山さんのギター・アレンジを土台とする形でさらにバンド・スタイルへと昇華された今年の新譜音源を聴いた時には「あれっ、明るいポップチューンに聴こえるなぁ」と印象が変化しました。
明快な理由もあって・・・まずこの斉藤さんアレンジの音源、キーは何だと思います?
きっと70年代前半までのスコアであれば、調号無しのイ短調で採譜するのでしょう。Aメロ冒頭のトニックでは明らかに「Am」が鳴っていますし。
しかしこれ、キーは「A」(イ長調)なのですよ。
したがって五線譜にした時の調号表記はシャープが3つ(「ド」「ファ」「ソ」)。
実際、歌い出し「そ~らを飛ぶ♪」の「そ」をジュリーは「ド#」で歌っているんです。
並の歌手、並のバンド・アンサンブルなら不協してしまうところ、ここは斉藤さんのアレンジそしてジュリーのリード・ギター半音チョーキングの如きヴォーカル・テクニックが光ります。
ブルーノートの逆転パターンとでも言うのかなぁ。
ただし音源リリース時点での僕の楽曲解釈変化は「良質で明るいポップス」にBARAKA特有のプログレッシブ・ロックを加味した感じ・・・までにとどまり、コンセプトについては、やはり社会性の高いプロテスト・ヴァージョンなのであろう、と思っていました。
特に平石さんのスネアの打点が変則的で(表で入ったり、裏の裏で入ったりします)、ハードなイメージも強くなったくらいです。
その考えはツアー初日渋谷でも大きくは変わらず。
ところが先日のフォーラム公演。客席に老虎メンバーが駆けつけていたこともあってか、セットリスト冒頭から超ゴキゲンモードなジュリー・・・初日以上に楽しい雰囲気の中で2度目の生体感となった「TOKIO 2022」を、僕は「I LOVE 東京」なラブ・バラードとして聴いたんですよね・・・。自分でもビックリしました。
ギター1本体制でこのリアレンジ基本形を聴いたジュリーファンの先輩の多くが、「バラード・ヴァージョン」と仰っていたのだけど、僕はその時には全然「バラード」とは感じられなかった・・・ここへきて懺悔、懺悔。音を理屈で聴いてしまうが故の盲目。
僕はどうやら間違っていたようで、みなさんの方がいち早く本質に気づかれていたのですねぇ。
考えてみれば、東京という街もずいぶん変わったなぁ、と。コロナ禍だけの話ではなく、「TOKIO」がりりースされてからこの数十年の間にね。
ド派手なスーパーシティ、「欲しいなら何もかもその手にできる」ほど何から何まで揃う街。
僕もそんなスーパーシティに憧れて大学入学とともに上京してきたクチで、その時はまだジュリーが80年代幕開けと共にシングル・ヒットさせた「TOKIO」のままの東京だったと思う・・・普通に歩き回れば欲しい本やレコードは難なく手にできたものです。
高田馬場駅からキャンパスまでの通学道中には舗道左右にズラリと古書店が並び、この店へ行けば海外SFノヴェルズは「マレヴィル」以外全部揃ってるとか、この店なら歴史群像バックナンバーは大抵買える、とか。
それが今ではほとんどの店がシャッターを降ろして、かつて「神保町と並ぶ二大古書街」と言われた面影はまったくありません。
時代が変わったと言えばそれまでですけど、やっぱり寂しいことですよ。
でも、じゃあ東京に愛想が尽きたかというとそんなことはなくて、今でも僕は東京がとても好きで。
「憧れ」から「応援」に愛情の方向性が変わっただけのような気がする・・・だからジュリーの「TOKIO 2022」を、現在の東京へのエール、愛する街への力強いラヴ・ソングだと思えたのかな。
個人的には、そんな「I LOVE 東京」の気持ちを再確認させてくれたジュリーと七福神(仮)の「TOKIO 2022」生LIVEに立ち会えたことを感謝する日々なのです。
ジュリーは「苦しみからなんとかして立ち直ろうとする人々」への共感を近年多くの自作詞で採り上げてきたと思いますし、それは「人」に限らず「街」に対しても同じではないのかなぁ?
「TOKIO 2022」の今ヴァージョンに一連の「祈り歌」を重ねるとすれば、プロテスト・ソングの面よりも愛情、シンパシー面の方だと今は考えます。
とても前向きな、愛すべきヴァージョンだと思いますよ!
それにしても、斬新なリアレンジで大きく楽曲が変わったとは言え加瀬さんのメロディーはそのままですから、オリジナルのニ長調から今回のイ長調へのキー変更は、ほとんど「女声→男声」くらいの大胆な移調です。
今のジュリー・ヴォーカルにこのキーが合っている、ということなのでしょうね。
②11.14 東京国際フォーラム公演の感想
「TOKIO 2022」の話が長くなりましたし、ここは駆け足の箇条形式で失礼いたします~。
「ジャスト フィット」
ツアー初日の衝撃再び。改めて、最初からテンションMAXになる素晴らしいオープニング!
「サーモスタットな夏」
前曲に続き、「うん・たた・うん・た♪」のリズム畳みかけ。過去のセトリを見ても、ジュリーってこういう「リズム繋がり」連発パターンをよくやってくれるんですよね。
初日同行した友人の佐藤君に渡していたセトリ予想CDで、歌う順番こそ違えど僕はこの2曲を繋げて収録していたんですよ~。・・・って、自慢にもなりませんが(汗)。
「I'M IN BLUE」
もちろんジュリー・ヴァージョンは最高。その上で、これは佐野さんのセルフカバー・ヴァージョンもとても良いので、未聴の方は是非アルバム『Someday』を聴いて頂きたいです。
「greenboy」
今度は前曲から「色」繋がり?
オリジナル音源には無い、斉藤さんのハモンドによる体位法の裏メロがメチャクチャ良いです。
「いい風よ吹け」
初日は高見さんの足元まで見えず、エフェクトはオートフィルター(あらかじめワウの設定ができるやつ)かなぁと思いましたが、今回ペダルを確認。
これまたオリジナル音源には無いアレンジ解釈です。
「勝手にしやがれ」
かつて下山さんが「オリジナル音源にギター・トラックがひとつしかないので、LIVEで弾く自分の音を探す」一例として挙げていたのがこれ。鉄人バンドの場合はベースレスですから下山さんは低音をカバーすべくパワー・コードを弾いたりしていました。
一方、フルバンド編成となった七福神(仮)で高見さんが「探した」音はなんとBメロでブラス・フレーズとのユニゾンという。その発想自体が凄いなぁ。
「時の過ぎゆくままに」
どこの会場でしたか、柴山さんがイントロをやらかしてしまったと聞いたのですが、具体的にどのような状況だったのかがいくら調べても判明せず。キーが違ったのか、音色なのか、フレーズなのか・・・もちろんフォーラムの柴山さんは完璧。見とれてしまいますね~。
「危険なふたり」
最近「年上のひと・物色パフォーマンス」を見てない気がする・・・あれ大好きなんだけどなぁ。近くで見ると細かくやってくれてるのかな?
「TOKIO 2022」
来年のさいたまアリーナには熱心なジュリーファンではない一般ピープルも多く参加されるでしょうから(絶賛声がけ中)、「勝手~」からの「有名曲連発」の流れでこのヴァージョンがどんな反応を会場に起こすのか、密かに楽しみにしています。
「LUCKY/一生懸命」
今回書いたように、「TOKIO 2022」のコンセプトを「エール」と解釈すると、さらに心地よいのがそこからこの曲を続けて歌ってくれるジュリーのセトリ配置。やっぱりこれが今ツアーの目玉かな。
セトリ中「この1曲」を挙げろと言われたら、フォーラム後の僕はこれを推します。
「Come On !! Come On !!」
本当に素晴らしい選曲。
欲を言えば平石さんには転調後の歌メロ直前の「ドコドン♪」をやって欲しいのですが・・・。
「時計/夏がいく」
今年の夏は行ってしまいましたが、やっぱり途方もなく好きな1曲。そう言えば初めてこれを生体感した『奇跡元年』の日は寒かったけど、このイントロで完全に汗だくになったっけ。
「君をいま抱かせてくれ」
縦横無尽な平石さんのドラムスが合いますね~。
「愛まで待てない」
ジュリーの躍動感、柴山さんと高見さんのギター・バトルが目立つ中、依知川さんのベースが密かに神!
「約束の地」
エンディング、左胸にじっと手を当てるジュリーに目を奪われます。
以前はここで大きく手をかざしたりしていたと思うけど、今回のジュリーの所作もまたグッと来ますねぇ。
「いつか君は」
あれだけ頑張って1週間のネット断ちを完遂して臨んだフォーラム公演当日、なんと僕はこの瞬間まで「セトリ入れ替えあり」の件をすっかり忘れていたという(笑)。イントロで電気走りましたよ。
いや、「いつか君は」を歌ってくれるのかな?とは事前に予想できていましたけど、「頑張んべぇよ」との入れ替えは僕は想定できませんでした。
でも、この日もMCで『土を喰らう十二ヵ月』の話をしてくれたジュリー、アンコール1曲目に主演映画の主題歌を歌うのは、セトリの流れから言うと「ここしかない!」配置でしょうか。
この曲はまだお題記事を書いていなくて、今年になって絶好の執筆機会を得た、と思っています。
次の次の更新で書きますよ!
「ダーリング」
ここでは「勝手にしやがれ」以上に凄まじい、高見さんが「探した」音・・・Aメロでのサックスとリードギターのユニゾンが素晴らしいです。
「(ここへすわってくれ~)チャララララッチャッチャ♪」
という。細かく言うと32分音符のニュアンスまで出してしまっている神技!
「あなたへの愛」
ラストにふさわしい名曲。大団円って感じですよね。
ということで、改めて素晴らしいステージでした。
お正月の渋谷に参加できない僕は、次のツアー参加予定がもうファイナルのさいたまアリーナです。
それまで長い期間が空いてしまいますが、ファイナルでも多少のセトリ変動は確実視される中、僕は無事に3公演参加で3パターンのセトリを網羅できた、ということになるのかそれとも年が明けてさらなるセトリ入れ替えがあるのか・・・もし入れ替えがあったら僕も今度はネタバレしますので教えてくださいね。
「遠い夏やったよ!」とか聞いたら悔し泣きしそうですが(笑)、みなさまどうぞよろしくお願い申し上げます。
③さいたまスーパーアリーナ公演にむけて
最後に・・・来年6月25日、ジュリー75歳の誕生日に開催が決定している、『まだまだ一生懸命』ツアー・ファイナル・さいたまスーパーアリーナ公演にむけて、1ジュリーファンとしてのささやかな希望など書いておこうと思います(と言うか、これから書くことはほとんどのジュリーファンの総意ではないのかなぁ?)。
長引いているコロナ禍にあって、ジュリーLIVEは今もスタンディング、声出し厳禁のイベントとして開催されています。
もちろん致し方ないことですし僕らファンも充分その意を汲み取り尊重し、ステージには懸命の拍手を送るにとどめて参加していますね。
一方世間に目を向ければ、スポーツ・イベントで声出し応援が解禁されているケースも多々ありますよね。
音楽イベントの現況って、今はその点どんな感じになっているのかなぁ。例えばピーさんの左門町LIVEは、今年からスタンディングと声出しが解禁されましたが・・・。
僕はプロレスが好きなんですけど、少し前まで「野球やサッカーは大丈夫なのに、プロレスだけ何故いつまでも静かに観戦しなきゃいけないの?」というファンの声が目立っていたのが、業界第一の団体であり先日亡くなられたアントニオ猪木さんが立ち上げた新日本プロレス。
当然それは主催側や出場選手にも同じように「何故我々はそれができないんだ」とのジレンマ、悔しさがあり、長い間ファンと共に耐えしのんできたわけです。
しかしそんな新日本プロレスも今夏から一部会場、一部公演について「声出し応援可」の開催が少しずつ復活しています(ただしマスク着用は必須)。
例えば、現在の新日本プロレス・オフィシャルサイトのスケジュール・ページから抜粋しますと
このスクショ部では、長野はまだダメだけど静岡は声出し応援可の興行とアナウンスされています。
このような可否がそれぞれの自治体のガイドラインによるものなのかどうなのか、詳細は僕には分かりません。
収容人数や座席配置も関係するようです(新日本プロレスでも、声出し応援可の開催であっても一部座席に限り禁止、というパターンがありました)。
ただひとつ言えるのは・・・コロナ禍以来初の「声出し応援可」となった新日本プロレス後楽園ホール大会を僕は配信観戦したのですが、画面越しに見ても明らかに出場選手のテンションもこの2年間とは違いましたし、お客さんの喜び、熱量もひしひしと感じました。
これは音楽イベントについてもきっと同じなのだろう、と思います。
これから年末年始にかけて本格的に第8波が来る、と言われるコロナ禍ではありますが、行動制限が課せられない中だからこそ僕らは一層感染対策に気を配り少しでも早い収束を目指し、ファンの勝手な思いとは重々承知しつつ、なんとか来年6月のさいたまアリーナ公演が「スタンディング、声出し応援可」のイベントとならないものか、と夢想期待している次第。
いずれにしても、ジュリーもフォーラムのMCで(きっと他各会場でも)僕らの身体を気遣ってくれましたし、今後も油断せず、このパンデミックを力を合わせ乗り越えていきたいものです。
それでは次回は12月3日、僕の本格ジュリー堕ち記念日に更新の予定です。
あの『ジュリー祭り』からもう十数年が経ちますか・・・早いものですな~。
『ジュリー祭り』セットリストは、鉄人バンドのインスト含めジュリー70歳の年までに全曲お題記事を書き終えていて、数年前からは「過去記事懺悔やり直し伝授!」のカテゴリーにて「2度目の記事」を書くことにしています。
今年は『まだまだ一生懸命』ツアーのセトリから1曲、もうお題を決めていますよ~。
どうぞお楽しみに!
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敬愛するパブ・ロック重要人物の一人、ウィルコ・ジョンソンの訃報が届いた。
ニック・ロウから経由してドクター・フィールグッドを初めて聴いた僕は、彼らの演奏する「Keep It Out Of Sight」に仰天させられた。ニック・ロウのオリジナルは明らかにデヴィッド・ボウイ「DJ」へのオマージュが見える仕上がりなのに、ドクター・フィールグッドのカバーは原曲とは全然違う攻撃的でパンキッシュなサウンドだった。
何が違うって、そりゃあウィルコのギターである。
鋼鉄のピックでも使っているのか、と思わせる通称”マシンガン・ギター”、この音をウィルコは指弾きしていると知った時の驚愕。いくら真似しようとしても同じ音は出なかった。
イアン・デューリー&ブロックヘッズの来日ツアーについてきてくれて、オープニング・アクトまでやってくれたあの後楽園ホールでの熱演は、当時20歳だった僕の脳裏に焼き付き、今も忘れることはない。
心より哀悼の意を捧げます。
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