沢田研二 「時計/夏がいく」
from『sur←』、1995
1. sur←
2. 緑色の部屋
3. ZA ZA ZA
4. 恋がしたいな
5. 時計/夏がいく
6. さよならを待たせて
7. あんじょうやりや
8. 君が嫁いだ景色
9. 泥棒
10. 銀の骨
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「8月のうちにやっておきたい」と予定していたことがほとんどできないまま、夏は行ってしまいました。
本日のお題曲そのまま、正に「僕を置いてく~♪」ですよ・・・残暑はまだまだ厳しいですが。
趣味の音楽活動も然り。そしてブログ関連で言えば、『まだまだ一生懸命』ツアー初日渋谷の後、セトリの答え合わせ編くらいしかまともに更新できてない・・・。
本当は、ピーさんがゲスト参加したYOUさんのLIVEのこととか、吉田Qさんの新譜レビューとか、8月のうちに書くつもりだったのですが・・・まぁ、こうなったら焦らずこれからコツコツと進めていきます。
その間、ジュリーのツアーは新潟に続き神戸、大阪公演も延期となりました。
これは事情が事情ですからやむを得ません。参加予定だった関西の先輩方も、すぐに延期日程を出してくれたジュリーに感謝していらっしゃる様子でよかった・・・今はただただ、コロナ憎し!の気持ちです。
実は僕の勤務先でも8月から9月にかけ立て続けに同部署の陽性者が出ましてね。
幸い社内感染には至らず(いずれも家庭内感染と見られます)そこはホッとしていますが、僕より上の重鎮2名の長期休みが相次ぎ、面倒な仕事が大量に僕に回ってきていたという・・・ずっとバタバタしていました。
そんな中ですが気をとり直しまして、今日は久々の楽曲考察&ツアー・セットリストの振り返りにて更新です。
よろしくお願い申し上げます。
①『ジュリー祭り』幻の8曲を考える
「時計/夏がいく」は、『ジュリー祭り』に参加して本格ジュリー堕ちを果たした僕が、そのまま未所有のアルバム怒涛の大人買い期に突入、すぐに大好きになった1曲。
その頃購入したアルバム収録曲の中では、「PEARL HARBOR LOVE STORY」や「不死鳥の調べ」「違いのわかる男」などとともに「日替わり・ジュリーで一番好きな曲」常連となり、このブログにもヒヨッコ・ファン状態丸出しのまますぐにお題記事をupしてしまった、という名曲。
『ジュリー祭り』の余韻醒めやらぬまま参加した翌年すぐのお正月LIVE『奇跡元年』で「時計/夏がいく」が歌われた時には大々興奮、我を忘れるほど盛り上がったことを今でもよく覚えています。
で、いつだったかジュリーがMCで語ったところによれば、当初『ジュリー祭り』セットリストに用意した候補は88曲あったのが、それだとドームの演奏時間をオーバーしてしまいそうなのでギリギリになって80曲に絞ったらしいのですね。
以前にも書いたことがあるのですが、「幻」のセトリとなったその8曲が、短いスパンで開催の『奇跡元年』にそのままシフトされのではないか、と僕は推測しています。
『奇跡元年』のセトリで『ジュリー祭り』と重複していない曲は、全9曲。
演奏順に
「奇跡」
「時計/夏がいく」
「MENOPAUSE」
「アリフ・ライラ・ウィ・ライラ」
「生きてる実感」
「希望 ✌ 」
「ジェラシーが濡れてゆく」
「THE VANITY FACTORY」
「ヘイ・デイヴ」
このうち「ヘイ・デイヴ」は『ジュリー祭り』直前のデイヴさんの旅立ちを受けて急遽新年LIVEに採り上げられたのでしょうから、残るは8曲。
これらをジュリーは元々2大ドーム用のセトリ88曲の中に選んでいて、鉄人バンドもある時期までは各自のリハで準備、それが『奇跡元年』で回収された・・・僕はそのように想像すのですが、いかがでしょうか。
いずれにしても今ツアー『まだまだ一生懸命』のセットリストは、超有名シング・ヒットに加えて「バンド時代の常連曲をこの機に!」とジュリーが張り切って自分の大好きな歌達を選んだに違いなく、来年のさいたまスーパーアリーナ公演に向け、演者も僕らファンもテンションの上がりまくるラインナップ。
その熱量が一般ピープルにも広がって、さいたまアリーナが歴史的イベントとなる光景・・・今から易々と見えてくるではないですか~。
僕としては、『ジュリー祭り』に参加した時の自分のようなお客さんが1人でも多く発掘されることを期待。
そしてそんなお客さんが「知らない歌だけど、あのちょっと沖縄っぽいカッコイイ曲は何?」とネット検索して、当記事をヒットさせてくれたら何より嬉しいことです。
それでは「沖縄」のキーワードが出たところで、過去記事ではまともにできていなかった「時計/夏がいく」の楽曲考察へと進んでいきましょう。
②『島唄』としての「時計/夏がいく」
ここで言う『島唄』とは、90年代の沖縄ポップス・ムーヴメントから音楽業界でそう呼ばれるようになったジャンルのこと。
僕は楽譜の仕事をしているので、『島唄』をタイトルに付けたピアノ・オムニバスのスコア等が飛ぶように売れていた時期を身近に体験しています。
楽曲で有名なのは、みなさま御存知であろうTHE BOOMのズバリなタイトル「島唄」(92年リリースのアルバム『思春期』収録、翌93年シングル・カット)ですが、沖縄ポップスのブーム自体はその少し前から「癒し系ポップス」と結びつきつつじわじわ起こっていて、THE BOOM「島唄」の大ヒットがムーヴメントを全国的に不動のものとしたわけです。
ジャンルとして確立した『島唄』は、沖縄出身のバンド、BEGINが重鎮となり一般ブームが落ち着いた後も熱心なリスナーの支持を継続させています。
その独特の音階、抑揚は確かに聴くと心安らかとなり、「沖縄三線」や「一五一会」(BEGIN考案の楽器。今秋にはヤイリギターさんの主催で世界大会も予定されています)といった楽器を嗜む人にとっては、特になくてはならない音楽でしょう。
さて、ジュリーの「時計/夏がいく」は95年リリースですから、(少なくとも詞曲については)ムーヴメントとしての『島歌』流行の影響を受けてはいるでしょう。
ただ、ムーヴメントに便乗してゴリゴリにプロモートしていく、というようなことはまったく無くて。
もしアルバム『sur←』から「時計/夏がいく」がシングルカットされていたら、先述のオムニバス・スコアにこの曲が収載されていた可能性もあり、僕としては「もしも」な妄想に臍を噛む思いもあれど、まぁジュリーは奥ゆかしいと言うのか無欲と言うのか、やはりその頃から「セールス流行」からちょっと離れた地平にいて、独自の道を歩んでいたのかなぁ、とも思います。
この時期のジュリーの楽曲製作は「曲先」でしょうから、まずジュリーが「僕もちょっと自分流で沖縄っぽい曲を作ってみようかな。歌ってて楽しそうだし」と難なく作曲をし、西尾佐栄子さんがメロディーにバッチリの名篇を載せた・・・そんな過程が想像できます。
「君をのせて」のヴォーカルを加瀬さんから「沢田らしくてイイ!」と絶賛されて以来
「僕は”あ~あ♪」と歌う歌が多くなりました」
と語るジュリーですが、僕は「時計/夏がいく」の「あ~あ♪」が特に好きですねぇ。
白井さんのアレンジが「沖縄系」とは異質のルーズなブラス&ストリングス・ブルースになっているのも絶妙。
素晴らしい意味で「脱力系」の名曲だと思うんですよ。つまりは「癒し」です。
アーアー 夏がいく
Dm B♭
どこへいく 僕をおいてく ♪
C F A7
メロディー高低の動きがいかにもジュリー・ヴォーカルと合っていて、「沖縄風」との相性もさることながら、やはりジュリー自身の作曲、ということが大きいのでしょう。
これまでのLIVE体感、どのツアーでもジュリーは歌っていて楽しそうに見えるんですよねぇ。
『島唄』のジャンルを愛する方々にも是非知って頂きたい名曲、と思っています。
ところで、一般に沖縄を題材とした歌の歌詞には、THE BOOMの「島唄」をはじめ、現地の戦争体験のメッセージを含むものがまま見受けられます。
西尾さんの「時計/夏がいく」もその点深読みしようと思えばいくらでもできそうですが、この曲には本来そうした社会性は無い、ひたすらに瑞々しいポップスであると僕は考えています。
ただし、沖縄という地の歴史、返還後も続く住民の苦悩などを知った上で聴く方がより素晴らしい、曲への愛情が増すのでは、とは思っていますし、沖縄返還50年の今年にジュリーが全国ツアーでこの曲を採り上げたことにも意義があるでしょう。
先日の知事選結果を見ても、国と県民の考えには大きな隔たりがある・・・そういう「50年」であり続けたのだと、そこを今考えないジュリーではないでしょう。
そう言えば、数年前に突然セトリ入りした「謎の曲」は、沖縄調でしたね。
それにしても本土に育つ子供たちは今、沖縄をめぐる様々な問題や現状をどのように学ぶのでしょうか。
正直、僕の少年時代も特に学校でそれを教わった、ということは無いのです。
例えば僕は高校で日本史選択でしたが、授業は昭和に入ったあたりでもう卒業シーズンでした。
全国の高校がそんなものなのかなぁ?
では僕がどうやって沖縄のことを学んだかと言うと、これが刑事ドラマ『Gメン'75』なのですよ。
藤田美保子さん演じる響圭子刑事主演で、何と3週にも渡った沖縄ロケの大作があります(第59~61話)。
第59話
第60話
第61話
『Gメン'75』って「結末」まで描かないパターンが多くて、この大長編もそうです。
米軍兵士による卑劣な犯罪を追及できない事態に激高し「何故捕まえないの?」と食ってかかるも、地元の刑事に「君は何も知らないようだ・・・」と哀しい顔で諭されるシーンを皮切りに、被害者の親族、老母からは無言の拒絶を受け、若者からは「ヤマトンチュに俺達の気持ちが分かってたまるか!」と罵られ・・・沖縄の現状を少しずつ知ってゆく響刑事。
日本の法では裁けない犯人をなんとか追い込み、それでも「基地に入られたら手出しできない」状況は変わらない中で、ラストシーンは、砂浜を走って逃走する犯人を追う響刑事が被弾し負傷し倒れながらも、犯人に向け拳銃を撃つ・・・その発砲炎に包まれた、涙と汗で濡れる彼女の「憤怒」の表情のアップで唐突にストップ。
視聴者には「ここから先のストーリーは自分で考えろ」と言うわけです。
(スクショはいずれも手持ちのDVD『Gメン'75 BEST SELECT BOX』disc-1より)
もちろん話自体フィクションですし、沖縄返還から僅か数年後の放映ですから単純に今現在とリンクさせるのは無理があります。
しかし、僕の少年時代はこうした題材を堂々と扱う人気ドラマがあった、ということ。
今はそういうの、あるのかな・・・。
③『まだまだ一生懸命』セトリ振り返り
僕もジュリーLIVEに通うようになって早10数年。最近はセットリストに未体感ナンバーが入ることも少なくなってきて、「できればまだ生で聴いたことのない曲多めがよいなぁ」と贅沢な考えを持つようになりましたが、今回は「これまで何度も聴いてるけど、やっぱりイイ!こういう歌が何度でも聴きたいんだ」と再認識させられたと言いますか・・・お題の「時計/夏がいく」をはじめとする「セトリ常連曲」のパワーに大満足。
お正月LIVEに引き続き、ジュリーファンとしての初心に立ち返ったセットリストだったなぁ、と思います。
有名ヒット・シングルはお正月との重複が無い、というのが大きなポイント。
特に6曲目からの「勝手にしやがれ」→「時の過ぎゆくままに」→「危険なふたり」という特大ヒット・チューン3曲の畳みかけは圧巻でした。
アンコールの「ダーリング」も併せ、久々のバンド・スタイル全国ツアー、ジュリーとしても千秋楽さいたまスーパーアリーナ公演に向けてふさわしい選曲、の意味があったのかな。
オーラスが「あなたへの愛」ってのも素晴らしいです。
そんなセトリの中でも個人的に「おお~っ!」と特に盛り上がったのが、10~12曲目。
気合の入りまくった新曲「LUCKY/一生懸命」→LIVE初体感だった「Come On !! Come On !!」→大好きな「時計/夏がいく」の流れです。
もちろん、刺激的なオープニング「ジャスト フィット」から、同じリズムの「サーモスタットな夏」(「やめて!」は、柴山さんの裏声でした)と続く冒頭2曲の時点で、「これは素晴らしいセトリになる!」と約束されたようなものでしたが。
新生バンドとなって、以前とはアレンジが大きく変わった曲もいくつかありました。
特筆すべき「いい風よ吹け」は、今年の12月3日(『ジュリー祭り』記念日)のお題として「やり直し」考察記事を書くつもりです。
あと、「TOKIO 2022」の単独考察記事も近いうちに書かなければ・・・。
今回のセトリの核は、まずツアー・タイトルチューンでもある「LUCKY/一生懸命」でしょう。
それとは別にジュリーが示す重要な1曲が、アンコールの「頑張んべぇよ」ではないでしょうか。
バンド・アレンジも最高でした(柴山さんのキメのカッティングが、同じように弾いているはずなのにCD音源よりカッコ良く聴こえたほどです)。
これ、初日は(他公演も?)珍しく歌う前にMCでジュリーの「曲紹介」がありましたよね。
「思いきって歌ってみます」と。
以前から、ジュリーのLIVE評は名うてのプロのライターさんも書いてくださっています。
素晴らしい、と嬉しく思う一方「いや、その書き方はちょっと・・・」と感じる文章を時折見かけます。
「キーを下げずに歌っている」ということを、まるでセットリスト全曲がそうであるかように読み取れてしまうことがあるのです。
これはジュリー言うところの「褒め殺し」に当たります。
ジュリーもキーを下げる曲は下げていますし、それはマイナス要因では決してなく、パフォーマンスを高めるための至極当然のステージ手法。
よって、「キーを下げずに歌っている」ジュリーの凄さを語る場合は具体的に曲名を書くべきなのだ、と僕はいつかジュリーが「褒め殺しはやめて」と言った時から気をつけるようにしています(僕自身は絶対音感を持ちませんので、弦楽器の変則チューニングですと判別はできません。原曲とは異なるコード・フォームだったり、鍵盤が見える位置でLIVE参加した場合は分かります)。
最近の傾向だと、高い「ラ」の音か曲によっては高い「ソ」の音の登場頻度を基準に移調が見られるのですが・・・「頑張んべぇよ」って、最高音が高い「シ」なのです(サビ最後の4音連続!)。ジュリーの喉をもってしても、この音はそうそう出せません。
しかしこの曲に「キーを下げる」選択肢は無いでしょう。「ギリギリ出せない」と自覚する高音でジュリー自身が作曲したことが、歌詞とも合致する歌のコンセプト、根幹だからです。
必死、いや「一生懸命」に出ない高音を歌おうという心意気こそが、今ジュリーにとっての「ロック」である、と。
MCでの「思いきって」とは、「これからそんな自分の姿を曝け出す」覚悟を語ってくれたのではないでしょうか。
ともあれ、この最強の布陣でジュリーが来年の千秋楽大舞台まで駆け抜けるつもりでいてくれるのが、ファンとしては頼もしいやら有り難いやら。
この先の各地公演、振替日程も含めて無事開催されるよう、心から願っています。
最後に。
『sur←』は、90年代のアルバムでは『サーモスタットな夏』に並んで収録曲セトリ入り率が高い名盤。
遅れてきたファンの僕も、『ジュリー祭り』での「銀の骨」「さよならを待たせて」を「未知の曲」として体感後、「時計/夏がいく」「あんじょうやりや」「君が嫁いだ景色」「緑色の部屋」と、これまで計6曲を比較的早い段階でLIVEで聴けています。
近い機会に「ZA ZA ZA」とか「恋がしたいな」あたりも是非体感してみたいものですな~。
さて次回更新ですが、これがまたいつになることやら・・・(汗)。
コロナ禍以来、自分の親ともカミさんの親とも会えていなくて、今年に入ってから夫婦で「いい加減にそろそろ」と話をしておりまして。ジュリーの「LUVKY/一生懸命」冒頭の歌詞に背中を押されたこともあり、まずは今週末、3連休を利用してカミさんの実家に帰省します。
そんなこんなで、まだしばらく慌しい日々も続きそうですが、次回も更新の際にはじっくりと、時間をかけて書きたいと思っています。
しばしのお待ちを~。
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