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2022年7月 4日 (月)

ザ・タイガース 「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」

from『ザ・タイガース/サウンズ・イン・コロシアム』

Soundsincolosseum_20220702115201

disc-1
1. ホンキー・トンク・ウィメン
2. サティスファクション
3. スージーQ
4. アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー
5. ルート66!
6. ドッグ・オヴ・ザ・ベイ
7. ザ・ビージーズ・メドレー
8. ルーキー・ルーキー
9. コットン・フィールズ
10. 監獄ロック
11. トラベリン・バンド
12. ラレーニア
13. ホワッド・アイ・セイ
disc-2
1. 都会
2. ザ・タイガース・オリジナル・メドレー
3. スマイル・フォー・ミー
4. 散りゆく青春
5. 美しき愛の掟
6. 想い出を胸に
7. ヘイ・ジュテーム
8. エニーバディズ・アンサー
9. ハートブレイカー
10. 素晴しい旅行
11. 怒りの鐘を鳴らせ
12. ラヴ・ラヴ・ラヴ

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ジュリーの新曲考察の前に、今日はタイガースです。

7月4日は、敬愛するタイガースファンにしてジュリーファンの先輩である真樹さんの命日。
4年が経ちました。あっという間と言えばそうなんですけど、そのあっという間の期間に、真樹さんとお話したいことが溜まりまくっているという・・・、
すなわちジュリーの活躍いまなお留まるところを知らず、ということなのですね。

毎年この日はタイガースのお題記事を真樹さんに捧げていますが、昨年同様に『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE」』にセトリ入りした、タイガースの代表的な洋楽カバーの中で『サウンズ・イン・コロシアム』にも収められている曲をお題に選びました。
田コロで「CCRの曲をお届けしました」と熱唱を終えた後に「水もしたたるなんとやら」とのジュリーのMCでお客さんが「キャ~!」となっている「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」です。

タイガース・リアル世代の先輩方にとっては懐かしい1曲なのではないでしょうか。
今日もよろしくおつき合いください。


①ザ・タイガースとCCR

僕がCCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)のオリジナル・アルバム7枚すべてを聴いたのは、ここ数年でのことです。
気にはなっていたバンドでしたが何故か長年、しっかり聴く機会を逸していたんですよねぇ。

聴き始めたきっかけのひとつというのが他でもない、「瞳みのる&二十二世紀バンド」のLIVEで「グッド・ゴリー・ミス・モーリー」を生体感したから。
タイガースファンの先輩方の多くがずっと以前に経験されたであろう「タイガースの演奏を聴いて、カバー元の洋楽曲に興味を持つ」パターンを、40数年後に僕も違った形で追体験したわけです。
聴いてみるとCCRは僕にとってとても波長の合うバンドで、気に入ったいくつかの名曲は今ではコード進行まで頭に叩きこんでいます。

Iputaspellonyou_20220704182801

さてこのCCR、左門町LIVEに向けてのスタジオ・リハにてピーさん曰く
「有名な曲は意外とカバー(CCRのオリジナル・ナンバーではない)が多いんだよね」
と。
言われてみれば確かに。
タイガースがカバーしたものでも(つまり、「カバーのカバー」ということになりますか)「スージーQ」「コットン・フィールズ」「グッド・ゴリー・ミス・モーリー」そして記事お題の「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」がそうです。
もちろんジョン・フォガティが書いたCCRオリジナルも、有名な「雨をみたかい」や個人的に彼等のナンバーで最も好きな「ローダイ」、タイガースが『サウンズ・イン・コロシアム』で披露している「トラベリン・バンド」
等素晴らしい名曲ばかりですが、カバーのヒット曲、有名曲が多いことは事実。
でもタイガースはそれらの曲を「CCRのカバー」としてそステージで採り上げていたようです。

CCRは、決して演奏力が特に秀でたバンドというわけではありません。
「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」を同じ短調3連の「ハートブレイカー」(グランド・ファンク・レイルロード)とそれぞれ原曲比較すると、GFRの方は超絶に上手い。リズムも安定していますし各パートの手数も多いです。
ただ、どちらのグルーヴが好みかと言われれば僕は明快にCCRの3連符の方が好きなんですね。曲想は近くても、そのくらい原曲の感覚は違います。

ところがこの2曲、タイガースがカバーすると驚くほど似ていてグルーヴの統一感が出てきます。やはりこれはピーさんとサリーさんのリズム隊の個性なのでしょうか。
ドラムスについては、CCRの奏法をピーさんがGFRにも応用させた感じ。「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」のドラムはCCR音源の段階で既にピーさんの得意技でもある「神出鬼没な鬼神ロール」が炸裂していますから。

タイガースも決して当時から「上手い」と表現されるバンドではなかったそうです。
ピーさんとサリーさんのリズム隊が後年の再評価を待たなければならなかっらことは意外な気もしますが、CCRとの演奏観がよく似ていたことは特に『サウンズ・イン・コロシアム』での「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」を聴けば明らかで、やはりこのLIVE盤は名演オンパレードなのですねぇ。

リアル世代のファンにとって「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」は、「ホワッド・アイ・セイ」と並び、LP1枚目(disc-1)の目玉曲だったのではないでしょうか。


②PYGヴァージョンとの比較

先の左門町LIVEで主催のYOUさんがこの曲のセトリ入りを決めた際、ピーさんはじめバンドメンバーに配布した参考音源は『FREE with PYG』のヴァージョンでした。
間奏ギター・ソロをPYGでの堯之さんのフレージングで再現したい、との狙いがあったそうです。
YOUさん曰く「堯之さんが弾いたソロの中でこれが一番長いんだよね」と。
ただし小節割りはCCRのオリジナルもタイガースも同じですから、「一番長いギター・ソロ」は3つのバンドすべてについて言えそうですけど。

僕の印象では、タイガース・ヴァージョンとPYGヴァージョンで大きく違うのはまずドラムのフィル、そして何と言ってもジュリーのヴォーカルなのですね。

タイガース(田コロ)でのジュリーは、CCRの音源を忠実に再現しようと丁寧に歌っています。
歌詞フレーズや歌の抑揚を間違えないようにと腐心する、なぞるような歌い方・・・「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」のメロディーは、業界用語で言う「講釈」(いわばトーキング・スタイル。ボブ・ディランや吉田拓郎さんの歌をイメージして頂ければ分かり易いと思います)に近いものがありますので、ジュリーもその点稽古を重ねたのでしょう。

これがPYGになると突然ソウルフルなジュリー・ヴォーカルへと変わります。
講釈のスタイルを歌い慣れてきた以上に「こう歌うのが自分の解釈」という主張が出てきています。フレーズも部分部分で端折ったり、溜めを効かせてシャウトに繋げたりと、これは明らかに「ロック」であらんと意識して歌っていますね。
PYGというバンド自体に、ジュリーをしてそうさせる雰囲気があったのでしょう。

然るに、技巧的または情熱的と表現できるのはPYGのヴァージョンなのですが、じゃあ僕が個人的にどちらのジュリー・ヴォーカルが好きかと問われれば、これがタイガースの方なのです。

僕はよく『JULIE Ⅱ』(一番好きなジュリー・アルバム)収録曲についてある意味ジュリーは「歌わされている」状態のヴォーカルだと書きます。
それは若きジュリーの場合悪い意味では決してなくて、「これを歌って」と提示された時、「自分は歌が上手い歌手ではない」という自覚(そんなことは全然ないのにね)から、その素材を素直になぞる、楽曲に対して無垢なまでに対峙するという姿勢が、素晴らしい「ジュリーの歌」を目覚めさせるわけで、田コロの「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」でも同じことが起こっているんですよね。

LIVEではそれが起こり易いのかな。ソロになってからも「ウィザウト・ユー」なんかはそうですから。

もちろん、PYGヴァージョンも素晴らしいんです。「どちらも生で観たよ」という先輩方が「わたしはPYGの方が好き」と仰ることも充分考えられると思っています。
僕の好みや考察は結局「後追いで、音源だけで聴いている」絶対的なハンデがあることを自覚した上で、個人的にはタイガース・ヴァージョンを推す、ということです。さてみなさまはいかがでしょうか。


③左門町LIVEの「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」

せっかくですから最後は、5月に開催された『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE」2022』でのこの曲のピーさんの熱演について書いておきましょう。

主催のYOUさんが今年のセットリストを決め、それを受けたピーさんが自宅での稽古を開始する中「一番厳しい。もしかしたらドラム叩き語りは無理かも」とも当初言っていたのが実はこの曲。
ピーさんがドラムに専念し、YOUさんがリード・ヴォーカルをとる案も出ていました。
しかしそこはピーさん、「無理難題に直面すると燃えてくる」という負けじ魂を滾らせて稽古を重ね、LIVEにご参加のみなさまならば御存知の通り、見事この難曲を仕上げてきました。

難しかったのはヴォーカルの抑揚だそうで、オリジナル音源を何度も聴いて語感を頭に叩きこんだそうです。
「(タイガース)当時は考えたことなかったけど、今にしてLIVE音源を聴くと沢田も早口に苦労していたのがよく分かる」と。

ピーさんの場合は加えてドラム演奏があります。
「ハートブレイカー」とよく似た重厚な3連符パターン。ピーさんとしては特に打点が強くなるリズムです。
結果、今年の左門町セットリストでは「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」→「エニーバディズ・アンサー」→「ハートブレイカー」という怒涛のコーナーが生まれ、ドラマー・ピーさんのステージ真骨頂となったのでした。

スタジオ・リハでも「しんどい、しんどい」と言いつつ自ら「もう1回!」と闘志むき出しの3曲(おかげで「ホンキー・トンク・ウィメン」の演奏が楽に感じる、とも)。
あまりに強い打点を誤ってリムに打ちつけた際には思わぬ指流血シーンも。それでも「出血大サービス!」とギャグを飛ばし心配する僕らを笑わせてくれるという。
そして本番ステージでは、稽古の苦労や当日3ステージの疲労をものともせずに「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」の詞の内容について
「お前に魔法をかけてやる。お前は俺のものだ!っていう歌です」
とサラリとカッコイイことを言ってお客さんを喜ばせるピーさん、やはりスターですな~。

不思議なもので、こうして何度も近い距離でピーさんの演奏を体感した上で改めて『サウンジ・イン・コロシアム』を聴くと、今までは(当時のミックス技術の関係で)よく聴きとれていなかった「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」での細かいキックが耳に入ってくるんですよね。
ピーさんのドラムスは豪快なフィルがまず明快な魅力ですが、通常箇所での独特なスネアとキックのコンビネーション、これが一番の持ち味なんだなぁと再認識した次第です。


それでは次回更新は、ジュリーの新曲「LUCKY/一生懸命」を書きます。
カップリングの「TOKIO2022」はツアーが始まってからにする予定(柴山さんのカッティングが昨年のツアーの演奏と同じかどうか確認したい)。

気合を入れて「LUCKY/一生懸命」を考察してから、満を持して『まだまだ一生懸命』ツアー渋谷初日を迎える所存・・・頑張りたいと思います!

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