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2022年6月16日 (木)

瞳みのる 「久しき昔」

from『久しき昔』、2021

Lomglomgago

1. Game Over
2. 三都物語
3. 東下り物語
4. 何時か何処かで(旅立ちの歌)
5. 久しき昔

----------------

首を長くして待っていた新譜、さらには重量3.5kgにも及ぶというタケジさんの作品集の発売情報の解禁と、今年の6月25日に向けてジュリーファンのテンションが上がりまくっている今日この頃です。
うっとおしい梅雨の季節を吹き飛ばすような、嬉しいジュリー誕生月となっていますね。

さてそんな中、拙ブログでは今日はピーさんのLIVEレポをお届けいたします。

去る5月15日、年長のタイガースファンの友人・YOUさんが主催する『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE」2022』が、四谷のライヴハウス『LOTUS』さんにて開催されました。

タイガースゆかりの地、左門町。
3年目となるこの企画LIVE、今年も僕は引き続きスタッフとしてお手伝いさせて頂き、おもにバンドメンバー用スコアの手配、ピーさんが使用する歌詞カンペの作成、当日のコーラス・エフェクト操作の重責を担いました。

2~3月の尿管結石騒動があり、過去2年と比べて僕の準備作業は日程ギリギリまで遅れてしまったのですが、今年のセットリストはカバー曲が市販のスコアで揃う曲ばかりだったので採譜の負担が軽減したことも幸いし、なんとか任務をまっとうすることができました。

今年も盛り上がりましたよ~!

レポ本題に入る前に、まずは今日の記事お題とした名曲「久しき昔」について少し書いておきます。

昨年リリースされたピーさんのミニ・アルバム『久しき昔』のタイトルチューン。
アルバム全体がテーマ性の高い名盤でしたが、僕は特に「久しき昔」という曲が大好きになりました。個人的には過去のピーさんのソロ作品の中で1番です。

夜天(よぞら)一杯 星屑を
G                                D

喜び一杯 幸せを
Em                Bm

悲しさ 寂しさ 切なさ 虚しさ
   C         G          Am      Em

乗り越えて ♪
C         D     Am7  D7

初めて聴いた時、無性に旧い友人と酒を酌み交わしたくなりました。
そういえばYOKO君達音楽仲間ともコロナ以来、大勢で集まって飲むという機会がありません。それまでは少なくとも年に1度は皆で集まっていたのに・・・と、そんな感慨もあって、「久しき昔」でピーさんが何度も繰り返す「一杯♪」のフレーズが心に沁みたのでした。

では、ピーさん御本人はどのような思いでこの詞を書かれたのでしょうか。

僕がまず想像したのは、中井さんの尽力もあり、ピーさんが30数年ぶりにタイガースのメンバーと再会を果たした酒席の情景でした。
これはおそらくタイガースファン、ピーファンのみなさま同様に頭に浮かぶのではないかと思います。
数々の想い出が一瞬で現在へと繋がり、メンバーそれぞれが抱えていたかもしれないわだかまりすら瞬時に溶けてゆく、そんな「一杯」です。

この解釈が合っているのかどうか・・・YOUさんとも事前にそんな話をしていました。

秋の大空 一杯の爽やかさ
 Em    Bm     C            G

君が戻ってきたから
Am

君 君 君だけに ♪
 C                 D7

「君だけに♪」のフレーズから、僕らはどうしたってタイガースを連想してしまいますよね。

そこで、さすがはYOUさんです。
LIVEに向けての初回スタジオ・リハを終えた後、それこそ一杯やりながらズバリ「久しき昔」の詞についてピーさんにこう尋ねました。
「”君”って誰のことですか?」

ピーさんの答えは
「聴く人によって色々な解釈をしてくれればいい」

例えば、聴き手が実際に長年離れていた誰か特別な人と再会した経験があるのなら、”君”はその人のことになるのだ、と仰るのです。

「僕がお客さんの前で歌ったら”、君”は聴いてくれているファンのことになるし、タイガースのメンバーからすると、”君”が僕(ピーさん)のことになるだろうしね」
と。

元々この歌の制作は、有名なスタンダード唱歌として知られる「Long Long Ago」(邦題「久しき昔」、ベイリー作)にピーさんが新たな詞を書いてみよう、と考えたところからスタートしたのだそうです。

Longlongago
『世界抒情歌全集/第一巻』より

しかしこのテーマに取り組むとなるとやはりピーさん、特別過ぎるご自身の体験があるわけですから・・・。
どんどんアイデアが膨らんでいって、詞は完全にオリジナルとなり、KAZUさんがまったく違う曲をつける、という流れとなりました。

個人的には、ピーさんの作詞コンセプト、KAZUさんのメロディーいずれも同窓会期のアルバム『THE TIGERS 1982』ラスト収録の大好きなバラード「朝焼けのカンタータ」(タローさんの作曲作品では1番好き!)と不思議によく似ていることにも感動させられます。
「朝焼けのカンタータ」で描かれた「君」との再会は10年ぶりですが、タイガースの目線ならこちらはその3倍以上もの歳月。
正に「久しき昔」です。

よって僕らタイガースファンは「これはピーさんとメンバー再会の歌だ!」と考えることこそ自然。

ピーさん自身が「大好きな歌」と語っていますし、生のLIVEでのヴォーカルは特に気持ちが入っています。
『PEEが奏でる「四谷左門町LIVE」2022』においても、この曲がセットリストの(配置的にも)目玉であったことは間違いありません。


さぁ、それではいよいよセトリに沿ってLIVEレポートを書いていきたいと思います。

今年もピーさんは(YOUさんとバンドメンバーも)超人的な活躍で1日3ステージを完走しました。
分かり易いように、10;00~からの公開リハーサルを「朝の部」、14:00~からの本番第1ステージを「昼の部」、18:00~からの本番第2ステージを「夜の部」と明記することとします。
「夜の部」については今年もアーカイブ映像を販売中です(今年の11月が購入&視聴期限となりますのでどうぞお早めに。詳しくはこちら!)。
アーカイブを鑑賞しながら読んで頂ければなお嬉しいです。よろしくお願い申し上げます!


1曲目「花・雨・夢」
(PYG「花・太陽・雨」)

Pygbest_20220608210401

シングル・ヴァージョンのカバー。
これはタイガースファンのお客さんもよくご存知の曲・・・なのですが、「朝の部」でしたか、MCでYOUさん曰く「あれっ、と思ったでしょ?」と。
そう、今回のセトリ入りにあたってピーさんがかなり歌詞を変えて歌ったのです。

ただ「少し詞を替えるよ」とピーさんから事前に聞いていたというYOUさんも、さすがに楽曲タイトルまで変わるとは思っていなかったようで、初回スタジオリハ直前に全容を知り驚いていました。
箇所によっては文字数も増えたり減ったりしているので、一緒にヴォーカルをとるYOUさんは(ショーケンのパートを歌います)、ピーさんと抑揚をキッチリ合わせるまでにはかなり稽古の時間を費やしたようです。

詞を変えたことについてピーさんはまず
「単語を連呼する箇所なんかは、どうしても韻を踏みたくなる」
と、漢詩の専門家としての血が騒いだ(?)ことがきっかけだったそうです。
LIVE当日のMCでは
「岸部の詞だから容赦なく変えさせて貰いました(笑)。阿久悠だったらそうはいかない」
とお客さんを笑わせてくれましたが、僕がカンペ作成のためにピーさんから頂いたワードのデータでは、きちんとオリジナルの詞も全篇明記した上で「改稿」という形で下座にご自身の新たな詞を併記していらっしゃいました。
盟友・サリーさんへのピーさんのリスペクトがさりげなく垣間見え、改変ヴァージョンの詞をいち早く目にできた僕は本当に役得だったと思います。

結果どのように詞が変わったか・・・気になるみなさまは是非アーカイブを購入し確認してみてください。


2曲目「遠い渚」
(ザ・シャープ・ホークス)

Tooinagisa

3年前にこのLIVEをお手伝いさせて頂くようになった時から、ピーさんがタイガース以外のGS名曲群のお話をされるたびに「この詞はイイんだよ~」と推してくださっていた曲、満を持して今年はセトリ入りです。
ところが初回スタジオリハ、通しで叩き語りしてみたピーさんは
「エンディングの繰り返しが長いね・・・どれだけ未練があるんだ!(笑)」
ということで、ゆうさんバンドの演奏ではリフレインを短めに、サクッと潔く終わることになりました。

YOUさんは「この曲のピーさんのヴォーカルは、オリジナルに近い雰囲気がある」と、選曲の手応えを感じていたご様子。
GS世代のお客さんにとって、懐かしい1曲だったのではないでしょうか。


3曲目「朝まで待てない」
(ザ・モップス)

Asamadematenai

オリジナルと比べ、ピーさんが演奏するとドラムもヴォーカルも若干テンポ速めのハードなビートに変貌するのが面白いです。

リアル世代ではない僕は、この歌が阿久悠さんの作詞デビュー曲であることも今回YOUさんから教わって初めて知ったという(恥)。
ただ、タイトルだけではピンと来なかったのに音源を聴いたら「ああ、この歌か!」と。
不朽の有名曲であることは間違いないですね。

コーラス・エフェクトは高低3度を採用。
字ハモのパートだけではなく「hoo♪」と2番以降のAメロを包む箇所が重要なのです。

おーちゃんのソロは音階がサイケっぽくてカッコ良かったなぁ。


4曲目「夢見る少女じゃいられない」
(相川七瀬)

Aikawa

YOUさんがブログで今年の左門町LIVEについて「みなさんがあっと驚くようなカバー曲もある」とアナウンスされていたのは、たぶんこの曲のことかな。
なにせ僕も今年始めにセットリストを知らされた時、これには「え~っ?」と驚きましたから。

YOUさんによれば「何気ない時にこの歌が流れているのを聴いて、ハード・ロック調で良いかもと思った」とのことなのですが、ピーさんは選曲の理由を深読みされたそうで、「色つきの女でいてくれよ」で描かれた「乙女」が成長し「少女」となったというコンセプトでしょ?とYOUさんに尋ねられたそうです。YOUさん、逆にビックリ(笑)。
僕はこのピーさんの深読みと言うか、自身が何事かに取り組もうとする際に明確な動機づけを持とうとする姿勢にメチャクチャ共感します。

オリジナルは嬰ハ短調で、スタジオリハは当初そのままのキーでやっていたのですが、さすがのピーさんも女声のキーに合わせるのは大変(しかもピーさんのアイデアでエンディングにドラム・ソロ・パートが導入され演奏も相当ハードに)ということで、最終リハで嬰ヘ短調に移調してのカバーです。

本番は「昼の部」は完璧、「夜の部」はピーさんが2番を端折った(後に控える渾身のドラム・ソロ・フレーズの組み立てに集中されていたのでしょう)ものですから超ショート・ヴァージョンに。
バンドメンバーは即座に対応し、見事ピーさんに合わせきりました。


5曲目「ホンキー・トンク・ウィメン」
(ザ・ローリング・ストーンズ)

Honkytonkwomen

今回のセトリはタイガース・オリジナルは「ラヴ・ラヴ・ラヴ」1曲のみでしたが、「タイガースファンお馴染みで、まだ披露していない洋楽カバーを」とのYOUさんの狙いがあり、これはストーンズファンの僕としても貴重な体験となった1曲。
せいこさんが楽曲通しての肝であるカウベルを担当し、イントロの数打だけでこの曲と分かったファンも多かったでしょう。

シンプルなブルース進行ながら面白いアレンジ構成の名曲で、Aメロまでは待機するかまちゃんのベースが噛んでからのサビの盛り上がりが独特です。

ピーさんのヴォーカルは、「divorcee」「rosese」の語尾の粘りがカッコイイです。
「夜の部」では前曲ほどではなかったのですが若干のショート・ヴァージョンに。
おーちゃん(「野生のカン」を持つ男笑)が咄嗟にソロを弾きまくってリカバーしたので、その点気づかなかったお客さんもいらしたかもしれません。


6曲目「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」
(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)

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引き続きタイガースファンお馴染みの洋楽カバーですが、こちらはスタジオリハ段階からPYGのカバー・ヴァージョンでゆうさんバンドが取り組みました。
YOUさん曰く「堯之さんが弾いたソロの中でこのヴァージョンが一番長い」という。
実は今回、2年前の左門町LIVEに参加した堯之さんと縁深いギタリスト、タイラーさんがゆうさんバンドに復帰予定で、YOUさんがPYGヴァージョンを採り上げたのもその点があったと思うのですが、残念ながらタイラーさんはどたん場でスケジュール都合により不参加となり、ギタリストはおーちゃんに交代。
残すところスタジオリハ1回、というギリギリになって代役を快諾したおーちゃんも凄いですが、急遽この「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」のソロを買って出たYOUさんも凄い!
この曲はピーさんも「叩き語りは今回これが一番大変」と語っていただけに、YOUさんは「俺がなんとかせねば」との思いだったでしょう。
当日YOUさんにはこのソロで「ピーさんとシンクロした感覚」があったのだそうです。

容赦のない3連符強打を繰り出すピーさんのドラムス・インパクトは「ハートブレイカー」にも匹敵。しかもこちらは「歌いながら」ですから。
みなさまにおかれましては、アーカイブでピーさんの熱演を再確認しつつ、コロシアムでのドラム演奏と聴き比べるみるのも面白いでしょう。


7曲目「エニーバディズ・アンサー
(グランド・ファンク・レイルロード)

Soundsincolosseum_20220610200701

ここから2曲、ピーさんはドラムに専念。
「エニーバディズ・アンサー」は昨年好評につき今年もセトリ入り、今回はギター2本体制に戻ったこともあり、ヴォーカルはYOUさんが担当します。

個人的にはコーラス・エフェクターの操作が一番忙しかった曲。下3度、オクターブと箇所によってハーモニー設定を切り替えていくのです。
「sun...♪」と歌うメロディー最高音部のオクターブ設定については、3度のスタジオリハいずれもYOUさんが普通のメロディー音階を歌い、エフェクターでオクターブ上の声を作って重ねていたのですが、どたん場でYOUさんから連絡があり
「やっぱり俺、高い方で歌う!エフェクトはオクターブ下にして」
と。
「え~っ、大丈夫?」と思いましたが当日は見事歌いきったYOUさん、よくあの高い声が出せるものです。
常々「ヴォーカルには自信が無い」と言いながら、YOUさんは相当広い声域をお持ちのようですね。

ピーさんのドラムの迫力は言わずもがな、そしてここからの2曲はベースのかまちゃんの奮闘にも注目です。
これすなわち、GFRのリズム隊の凄さ、ひいてはそれをほぼリアルタイムでカバーしていたタイガースのリズム隊(ピーさん&サリーさん)の魅力が遡って分かろうというもの。
ピーさん曰く「当時の機材環境では、他のメンバーの音なんてほとんど聴こえていなかった」のだそうですから、なおさらです。


8曲目「ハートブレイカー」
(グランド・ファンク・レイルロード)

Soundsincolosseum_20220610200701 

左門町LIVEではもう定番。昨年同様、「エニーバディズ・アンサー」から間髪入れずメドレー形式です。ヴォーカルは引き続きYOUさんが担当。
今年は「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」も合わせ、特に「夜の部」ではピーさんのドラム「今年の左門町総決算」と言うべき怒涛のコーナーとなりました。

「ハートブレイカー」ではピーさんは特にドラマーの血が騒ぐのか、スタジオリハの段階から強打を繰り出し勢いあまってリムに指を打ちつけて流血するという一幕も。
それでも「出血大サービス!」と言って心配するメンバーを笑わせてくれるピーさんなのです。
これ以上の絶賛は今さら野暮というもの・・・「ハートブレイカー」へと結実するハードな3曲の流れ、ドラマー・ピーさんに思い入れのあるファンのみなさまにはアーカイブで今一度堪能して頂きたいです。


~トークコーナー~

ドラム演奏で全力を出し切ったピーさんにここでひと息、というYOUさんの配慮もあって毎年「ハートブレイカー」後に設けられている、お馴染みの友情漫才コーナー(笑)。

「去年は配信のことを忘れて、ちょっと脱線し過ぎてマズイことも言っちゃった」
と事前に反省していたピーさんですが、今年も脱線はとどまるところを知らず・・・貴重なお話の数々に加えYOUさんのツッコミも炸裂していますので、こちらも是非アーカイブにてご確認を!


9曲目「ムーン・リバー」
(アンディ・ウィリアムス)

Moonriver

ここからピーさんはヴォーカルに専念。ドラムスには左門町LIVE3年連続参加のけんさんが入ります。
毎年、自身の出番でない時もずっとドラムセット背後にスタンバイしピーさんを完璧にサポートするけんさん、常連のピーファンのみなさまからの支持が爆上がりしているようで、声援が飛びます(笑)。

トークコーナーの後は、ピーさんならではの訳詞がついた誰もが知るスタンダード・ナンバー・・・これまた左門町LIVEで確立したセットリスト配置。
一昨年の「ダニー・ボーイ」、昨年の「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」に続き、今年は「ムーン・リバー」。これら3曲すべて、ピーさんはオリジナルより高いキーで歌っているんですよ~。

スタジオ・リハでは「ロック畑」のメンバーが苦労する1曲となりましたが、シンセのせいこさんがリハの都度アイデアを加えてゆき、ゆうさんバンドとしての完成形を本番で迎えることができました。

ピーさんの的確かつ抒情味ある訳詞のフレーズ・センスは、今年の「ムーン・リバー」でも発揮されました。
1番を英語、2番を日本語で歌い進む中、ラストに登場する「素敵なひと/おさななじみ/あなたとわたし」というピーさんのフレーズがとても素敵です。


10曲目「東下り物語」
(瞳みのる)

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昨年の左門町LIVEのレポで僕は「ピーさんは今、アルバム・リリースもできるくらい続々と新曲を作っている」と書きました。
当時製作中の曲の詞を見せて頂いたり、コンセプトを教えてくださったりしていたのでそう書いたのですが、やはり5曲入りミニ・アルバム『久しき昔』をはじめ、昨年後半のピーさんは新譜ラッシュとなりましたね。

「東下り物語」はその昨年のスタジオリハの際に詞を見せて頂いていた曲のひとつ。
「三都物語」と並び、明快に「虎の道のり」をコンセプトとしています。
リアルタイムのタイガースファンには特に響くであろう詞の内容について先輩方に教えて頂きたいことも多々あるのですが、アルバム『久しき昔』は素晴らしい名盤で、機会あらば各曲お題記事に取り組むことを考えていますので、「東下り物語」についてここでは左門町LIVEに絞って書いておきます。

本番までわすか2週間、スタジオリハは残すところ1回というギリギリの日程でギタリストの代役を引き受けたおーちゃんは、長年のキャリア、豊富な引き出しで悠々と難題をクリアしましたが、彼が参加することでそれまでのリハと雰囲気をガラリ変えたのが、この「東下り物語」でした。
おーちゃん曰く「俺の中ではこの曲はマイケル・シェンカー!」と。

なるほど、ハイ・ビートのシャッフル解釈ですか~。リハ初日からピーさんは自ら速めのカウント出しで歌おうとしていましたし、おーちゃんの演奏アプローチには「我が意を得たり」だったのではないでしょうか。


11曲目「明月荘ブルース
(瞳みのる)

Meigetusoublues_20220611094401

リリース時から「ずっと歌い続けていきたい」と語っているピーさんの言葉通り、左門町LIVEでも3年連続セトリ入りです。
YOUさんもスタジオリハで「これは名曲!」と毎年のように新メンバーに紹介していますし、自らが担当する間奏ギター・ソロにも気合が漲っています。

そうそう、ピーさんは
「明月荘のメンバー部屋割りは覚えているけど、四谷は誰と同部屋だったか記憶がハッキリしない」
のだそうです。
そのくらい大忙しの日々だった、ということなのでしょう。
「岸部か太郎のどちらかと一緒だと思うんだけど・・・ファンで誰か知ってる人はいないかなぁ?」と。

当時メンバー4人が暮らしていた四谷左門町のアパートはピーさん曰く
「セキュリティーなんてあったもんじゃないよ~」
とのことで、当時はファンにお風呂まで覗かれていたくらいだと言いますし、それももう時効ですから、部屋割りをよくご存知のかたはこの機に潔く手を挙げましょう!(笑)


12曲目「My Way ~いつも心のあるがままに」

Myway

こちらも3年連続セトリ入り。
原曲はフランク・シナトラのヴァージョンですが、カバー曲ながらこれは最早ピーさんオリジナルのような存在感がある名篇。ピーさんの人生を歌う大長編、セトリの配置もずっと変わりません。
おーちゃんが最後のリハで合流した際、「(詞が)13番まである」と知り唖然としていたっけ(笑)。

昨年までと変わった点は、まずキーを1音上げたこと(ハ長調からニ長調)。
さらにせいこさんのアイデアにより1番、2番は完全にピーさんの「語り」となりました。アレンジのバランスが良くなり、「語り」直後に導入するピアノがより生きるのです。

あと、おーちゃんは分数コードの利便性を考え2カポで演奏、YOUさんは「自分のギターで最も美しいクリア・トーンを採用」されたそうです。


13曲目「ラヴ・ラヴ・ラヴ
(ザ・タイガース)

Tigersblue

これまた3年連続、セトリには欠かせません。
「My Way」が終わってすぐに、けんさんがフィル・インを炸裂させる構成もこれまで通りです。

丸1日のステージを通し、最後まで声が持続するピーさんの喉は凄い・・・この曲の転調後の最高音を「夜の部」になっても難なく歌いますからね。

ちなみにメンバー紹介でせいこさんの担当楽器を「キーボード」ではなく「シンセサイザー」と紹介するのは、せいこさん御本人の拘り。
楽器業界では今は「キーボード=鍵盤楽器の総称」で、シンセもキーボードの1種になるんだけど、やはり本格的に鍵盤をやってる人からすると「キーボード」って言葉だと安価なもの限定のイメージがあるのかな。せいこさんのKORGは高そうだ~。

今年からライヴハウスのコロナ感染対策ガイドラインが変わり、人数制限をクリアしていればスタンディング&声出しOK(もちろんマスクは着用の上で)だったので、お客さん皆立ち上がって「PEE~!」と声援を送ってのセトリ本割フィナーレとなりました。


~アンコール~

14曲目「久しき昔」
(瞳みのる)

Lomglomgago_20220616154501

一昨年、昨年とアンコールは1曲「Lock Down」のみでしたが今年は曲も変わって計2曲。いずれもミニ・アルバム『久しき昔』からの選曲です。
まずはタイトルチューンの「久しき昔」。
冒頭の繰り返しになりますが、僕はこの曲が大好きで、YOUさんとも”「明月荘ブルース」と並び、ピーさんがこの先長く歌い続けていくであろう大名曲”との考えで一致しています。

YOUさんは今回のセトリを決めた際、この曲を「今年の勝負曲」とバンドメンバーに伝えたのだそうです。
印象的なのはまずピーさんの熱唱。CD音源よりもさらにこのLIVEの歌の方が素晴らしいです。これ、本当にそうなんです。
スタッフとしての手前味噌ではありませんよ~。

さらにはイントロのベース・ソロ。かまちゃんは初回スタジオ・リハから完璧に仕上げてきていました。
ギター2本体制ならではのツイン・リードのハーモニーも見事再現。

そしてサビのコーラス。
YOUさんはユニゾンで歌っているのですが、エフェクター設定ではYOUさんの地声を消去した上でオクターブ上の声を作りセンド・リターンしています。
CD音源でのなおこさんのコーラス・パートを再現する狙いでしたが、いかがだったでしょうか。


15曲目「Game Over」
(瞳みのる)

Lomglomgago_20220616154501

YOUさんはこの左門町LIVEを第1回(2020年)から継続して「対コロナ」の重要なコンセプトとしています。
それもあり昨年までの大トリ曲が「Lock Down」だったのですが、今年は新たに「Game Over」がその配置に選ばれとって代わりました。

これはおそらくアルバム『久しき昔』収録5曲のうち最も新しく作られたナンバー。
と言うのは、昨年の左門町LIVEの段階で僕は他4曲の歌詞は見せて貰っていて、その後国内でコロナのさらなる感染拡大が危ぶまれていた時期、ピーさんから「もういい加減にしてくれ!という思いで”Game Over”という曲を作っています」とメールを頂いたのです。
その時点で楽曲タイトルだけを知った僕は「沈痛な内容なんだろうなぁ」と想像したわけですが、いざアルバムがリリースされ聴いてみると意外や楽しい雰囲気の曲。歌詞も前向きで。なるほどこれはいかにもピーさんらしい、「Lock Down」と同じ系統だな、と思った次第です。

ゴキゲンなスカ・ビートはセットリストを締めくくるにふさわしく、「夜の部」ではピーさんが最後の力を振り絞り「陽気に羽目を外してしまえ!」と言わんばかりに2番からは表拍と裏拍をひっくり返しての大暴れ。
ピーさんの全力疾走に食らいつくけんさん、かまちゃん、せいこさん。
演奏自由度の高いギターの2人、YOUさんとおーちゃんはニッコニコで皆に合わせていきます。

先の「夢見る少女じゃいられない」もそうですが、このように今年は「何が起こるか分からないステージ」が、アーカイブ配信のあった「夜の部」に集中しました。
完璧にキッチリ纏ったのは「昼の部」でしたが、今年の「夜の部」はその意味で「1日3ステージを駆けるピーさんの魅力」を象徴する名演だったかと思います。



最後に。
毎年そうなのですが、僕にとって左門町LIVEは準備期間含め実際にピーさんにお会いして色々なお話を伺う機会、ということで夢のような時間を過ごせます。
お話は色々とある中で、じゃあ堂々とブログに書ける内容のものとなると・・・そうだ、今年はピーさん先生時代の「教え子」話の中で印象に残ったエピソードを、この場を借りご紹介しておくことにしましょう。

ピーさんはあの伝説のGSムーヴメント全体に深い愛着をお持ちで、タイガースに限らず様々なGSバンドについてよく話をしてくださいます。
確か初回スタジオリハ後の食事の際、どういう流れだったか「ズー・ニー・ブー」のお話になりました。
「辛うじてバンド名を知っている」程度の知識しか無かった僕が戸惑っていると、YOUさんが「ヴォーカルは町田義人さん」と助け舟を出してくれて、僕は「あぁ、『野性の証明』ですね!」と(町田さんのヒット曲である主題歌「戦士の休息」なら、僕はリアル世代です)。

そうしたら今度はピーさんの方が、『野性の証明』をよく知らないと。
YOUさんが「薬師丸ひろ子さんの出世作で・・・」と言うと「あぁ!」とピーさん、すかさず話を脱線(ピーさんの話術は脱線してからが真骨頂!)して
「僕の教え子に高柳ってのがいて、薬師丸ひろ子の映画の相手役として俳優デビューしたんだよ」
と。

『ねらわれた学園』の高柳良一さんですね。
これまた僕はリアル世代ですから、高柳さんが当時人気絶頂の薬師丸さんの相手役として一般オーディションで選ばれた、とのニュースはよく覚えています。
人見先生の生徒さんだったのか!

合格の報を受けた高柳さんは「まさか自分が」という心境だったらしく、「やるべきかどうか」とピーさんに相談されたのだそうで、ピーさんはしっかり背中を押してあげたのだとか。

時系列を整理すると驚くのは、そんな出来事のすぐ後にあのタイガースの「同窓会」があったわけで。
僕としては、いつもながらひょんなところでピーさんの人脈や稀有な人生に驚かされるパターンのお話なんですけど、ピーさんにとっては普通の思い出話、というのがまた不思議な感覚です。

さらにピーさんは
「そうしたら、高柳がその後出演した映画で高校生役をやったんだけど、先生役で岸部が出てたんだよ!しかもあろうことか漢文の先生!」
と、いかにも「遺憾」の表情を作って僕らを笑わせてくれました。

「もしかしたら、プロデューサーか誰かが僕のことを知ってたんじゃないかな」とピーさん。

調べたら、有名な『時をかける少女』がそれでした(残念ながら僕は観ていません)。
83年公開の映画ということですから、当時のピーさんとサリーさんの距離を考えると、タイガースファンとしてはなんとも言えない感慨があります。
「教え子の活躍を拝見」と映画を観たピーさんが、スクリーン越しとはいえ何とサリーさんと再会。しかも自分と同じ先生の役どころ、というね。
今となっては「ほのぼの」な逸話ですが。

そうそう、「教え子」話と言えば『夜の部』のトークコーナーでは「石原4兄弟」の話題が飛び出しました(兄弟全員がピーさんの教え子ではありませんけど)。
LIVEに来れなかったみなさまも、この話についてはアーカイブで視聴できますよ~。


ピーさんは本当に、僕のような者にも気さくにお話をしてくださいます。
それだけでも有り難いのに、僕はスタジオリハでは超特等席でピーさんのドラムを聴けていますから・・・身にあまる光栄としか言えません。

またピーさんには気さくさだけでなく、「この人のためなら」と思わせるオーラがあります(おそらくタイガースのメンバー全員が持つオーラでしょう)。
YOUさんを見ていれば、それが僕だけの感覚ではないことは歴然。左門町LIVEに関してYOUさんは御自身の体力的、精神的、時間的、経済的な負担まったく度外視で、万事ピーさんに尽くされていますから。

そんなYOUさんですが、来たる8月21日には同じ『四谷LOTUS』さんで、今度は自身が主役のLIVEを開催されます(詳しくはこちら)。
『ゆうちゃん三昧』という4年に1度の企画LIVEで、トークコーナーのゲストとしてピーさんも駆けつけます。
このLIVEも僕は毎回微力ながらお手伝いさせて頂いています。お時間のあるみなさまは是非!


というわけで、改めて。
ピーさん、YOUさん、ゆうさんバンドのみなさん、スタッフのみなさん、そして来場してくださったお客さん、当日は本当にお疲れさまでした。

僕自身も毎年貴重な経験を積ませて頂いています。
感謝、感謝です。またみなさまと左門町で再会できる日を待ち望んでいます!


それでは次回更新は、当然の6月25日。
お題を当日発売の新曲にして考察記事にできればカッコイイけど、僕の力量ではさすがに無理(汗)。
新曲はいずれじっくりということで、25日は近年恒例、actシリーズからのお題でジュリーの誕生日をお祝いしたいと思います。

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