ザ・ワイルドワンズ 「ムーンライト・カクテル」
from『ON THE BEACH』、1981
1. 白い水平線
2. ムーンライト・カクテル
3. ロング・ボード Jive
4. Dreamin'
5. 海と空と二人
6. 想い出の渚
7. 白いサンゴ礁
8. 夕陽と共に
9. 海は恋してる
10. 青空のある限り
11. 空に星があるように
-bonus truck
12. 雨のテレフォン
13. モノクローム
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今日は加瀬さんが旅立たれてから丸7年・・・毎年思うことですが、本当に早いものです。
拙ブログでは毎年4月20日、ワイルドワンズ・ナンバーのお題記事を加瀬さんに捧げると決めています。
今年の更新に備えて購入したアルバムは、1981年リリースの『ON THE BEACH』。
ワンズの再結成については79年にシングル、アルバムのリリースがありますけど、後でご紹介する植田さんのインタビューを読むと、この『ON THE BEACH』製作から本格的に再結成、という認識のようです(記事タイトルは「ザ・ワイルドワンズ」としましたが、ここでの正式なバンド・クレジットは「加瀬邦彦とザ・ワイルドワンズ」)。
現時点で一番気に入っている、2曲目収録の「ムーンライト・カクテル」をお題に選びました。
今年もよろしくお願い申し上げます。
最初に『ON THE BEACH』というアルバム全体について、僕自身の勉強も兼ねて書いていきましょう。
まだまだワイルドワンズ白帯を自覚している僕が、今回まったく初めて聴いた1枚。
有り難いことに付属のブックレットには植田さんのインタビューが載っていて、リリース当時のことを詳しく語ってくださっています。
まずはそちらをお読みください。
※ 文末に記された年月日をご覧ください。CD再発に寄せて植田さんがこのインタビューを受けたのは、加瀬さんが旅立たれるほんのひと月前なのです・・・。言葉もありません。
僕としても「再結成間もないワンズってどんなだったんだろう?」と興味を惹かれ購入したわけですが、植田さんのインタビューを読みながら音を聴きはじめて、2曲目の「ムーンライト・カクテル」Aメロにさしかかったあたりで「あっ!」と思いました。
そうか、ワンズの再結成は単にGS回帰ブームの産物だっただけでなく、81年と言う時代がこのバンドの特性、音を求めたのだ!と。
植田さんの言葉にある通り、本格的な再結成の気運は日劇がきっかけだったでしょう。タイガース同窓会もそうですしね。
しかしそこに加えて、業界全体が彼等の個性を放っておかなかった、と想像します。
81年と言えば、大滝詠一さんのアルバム『A LONG VACATION』が大ヒットし、ナイアガラ界隈に留まらず邦楽界にマリン・サウンド、ビーチ・サウンドの一大ムーヴメントが起こっていました。
広義にはシティ・ポップの火付け役ともなったそのサウンド・ムーヴメントは、目利きの音楽人達がかつてのGSの雄・ワイルドワンズに抱いていたイメージとピタリ重なったのではないでしょうか。
植田さんが語る「オファーが増えた」大きな要因はそこでしょう。
『ON THE BEACH』はCDで言うと1~5曲目までが新曲、6~11曲目までがGS時代の名曲のリメイク&カバー曲という構成(12.、13曲目は同年シングルAB面をボーナス収録)。
新曲に着目すると(LPA面?)、もちろんオリジナルについては全曲加瀬さんの作曲で、1、2曲目の作詞が松本隆さんです。
松本さんは言わずと知れた『A LONG VACATION』の実質的なコンセプター。
新曲の中で、「ムーンライト・カクテル」は特に『A LONG VACATION』っぽくて(「カナリア諸島にて」に近いと感じました)、ワンズが以前から持っていたビーチ・サウンドの魅力を、ちょっと大人びたハイセンスな洒落っ気のあるアレンジとエフェクトで仕上げる手法です。
これこそ、時代が新生ワイルドワンズに求めた音だったんじゃないかなぁ。
(ワンズのこの路線は、CDではボーナス・トラック収録の同年末シングル盤「雨のテレフォン/モノクローム」に受け継がれ、『A LONG VACATION』をモロに意識したセンドリターンの深いディレイ処理を楽しめます)。
ちなみにアルバムの3曲目が植田さんの詞で、4、5曲目は三浦徳子さん。
僕は常々、ジュリーの『S/T/R/I/P/P/R』(81年)と『A WONDERFUL TIME.』(82年)での加瀬さんのプロデュースの大胆な変貌を安易に「邦洋問わず音楽の流行に敏感な加瀬さんが、パブ・ロックからシティ・ポップスへとシフトさせた」と考えていましたが、間にワイルドワンズの『ON THE BEACH』を挟むと、それが加瀬さんにとって自然な流れであったことが分かります(『WONDERFUL TIME.』ではなく『A WONDERFUL TIME.』っていうのも今にして考えれば・・・とか)。
日劇からの道程で80年の『G. S. I LOVE YOU』含め、一貫して三浦さんが噛んでいることや、銀次兄さんの尽力(『ON THE BEACH』では全曲のアレンジを加瀬さんとともに担当)など、その人脈からもジュリーの歴史と同時進行的に深い関わりを持つワイルドワンズの名盤、僕は本当に知るのが遅れたなぁと今思っています。
さて、僕が『ON THE BEACH』の中で「ムーンライト・カクテル」を特に気に入り今日のお題としたのにはまた別の理由もあります。
僕はワンズのことを2010年のジュリーWithザ・ワイルドワンズ結成きっかけで知っていきましたから、出発点であるジュリワンのアルバム、ツアーには今でも深い思い入れを持ちます。
「ムーンライト・カクテル」は、そのジュリワンにも繋がる曲だと感じたのですよ。
アルバム『JULIE WITH THE WILD ONES』の中で抜きん出て好きな曲が「プロフィール」(しかもこの曲、年齢を重ねれば重ねるほど沁みる!)。
「SUNSET OIL」なる作詞・作曲クレジットの謎は未だ解けないままですけど、鳥塚さんからジュリーへとリレーするヴォーカル、植田さんの絶妙なコーラス・・・僕にとっては「聴くと元気が出る歌」長年不動の第1位。
そう言えば2010年にNHK『SONGS』で「プロフィール」が採り上げられた時、柴山さんの鬼のアコギ・ストロークを観て僕は「これは”さらばシベリア鉄道”だ!」と盛り上がったっけ。これでジュリワンと『A LONG VACATION』も繋がった!(強引)
で、「ムーンライト・カクテル」の歌詞には「プロフィール」というフレーズが登場します。
籐椅子に もたれる君の プロフィール ♪
G7 C Bm Am7 D7 G
鳥塚さんの声で「プロフィ~ル♪」と歌われるだけで僕は萌えてしまうわけで。
あと、Aメロのコード進行に注目。
月灯りで洗うような濡れた瞳哀しく ♪
G Gaug G6 G7
上昇型のクリシェ(和音の中の1つの音だけを変化させてゆく進行)です。
このポップな手法は世の楽曲に多く例があり、ジュリー・ナンバーでパッと思いつくだけでも「I'M IN BLUE」「単純な永遠」「失われた楽園」「Fridays Voice」「ロイヤル・ピーチ」等で採用されていますが、今は『JULIE WITH THE WILD ONES』の話をしていますから、この曲を挙げないわけにはいかないでしょう・・・。
ズバリ、「渚でシャララ」。
傷つけあうより ホホエミえらんで ♪
G Gaug G6 G7
(「渚でシャララ」のオリジナル・キーはイ長調ですが、ここでは「ムーンライト・カクテル」と比較しやすいようにト長調に移調し明記しています)
加瀬さんがジュリワン本気のプロモーションに向けた看板シングルの「渚でシャララ」を作曲しながら、「そう言えばこのパターン、昔ワイルドワンズでもやったっけ」なんて考えていらしたかどうか・・・楽しく妄想できます。
僕は確かにワンズについては後追いも後追い、少しずつ勉強している最中ではあるんですけど、『ジュリー祭り』以降ジュリーのLIVEに通い続けて特別に心に残っている公演は、『ジュリー祭り』を別格とすると、2010年のジュリワン八王子、2015年の『こっちの水苦いぞ』ツアー・ファイナル(東京国際フォーラム)の2本が突出しています。
いずれも「加瀬さんへの思い」抜きには語れないステージなのです。
アルバム『ON THE BEACH』は、「ムーンライト・カクテル」のジュリワンへの繋がり、さらにはそのジュリワン・ツアーで何度も生体感した「白い水平線」も収録されていて、僕の個人的な加瀬さんへの思いを甦らせてくれた名盤でした。
ワイルドワンズは翌1982年、『ON THE BEACH '82』というアルバムをリリースしているようで、こちらも近々に購入したいと思います。
さらに、じゃあ『ON THE BRACH』に先んじて79年にリリースされているアルバム『アンコール』は一体どういった経緯で?ということも僕はまだ知りません。もしかするとCD再発盤ならばそのあたりを解説するライナーがついてるかも・・・これまたいずれ購入しなければ。
加瀬さん。
僕の「ワイルドワンズ探究の旅」は、ゆっくりですがこれからも着実に進んでゆきます!
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