映画『キネマの神様』
ご無沙汰しております。
更新できずにいた僕の最近の往生ぶりについては後回しにするとしまして・・・。
気がつけば『BALLADE』追加公演もとっくに始まっており、さらには映画『月を喰らう十二ケ月』の情報も解禁されるなど(以前からジュリーがMCで話してくれていた「1年がかりの仕事」ってこれだったんですね。確かに十二ケ月・・・1年ですねぇ)、ジュリー界の話題も事欠きませんが、今日は書くのが遅れていた映画『キネマの神様』のレビューと言うか、個人的な感想記事を更新させて頂きます。よろしくお願い申し上げます。
①大好きな「原作のゴウ」が見えた!
まずはジュリーの演技から書きませんとね。
僕は原田マハさんの原作小説が大好きで、登場人物や原作ストーリーに思い入れがありました(今年はじめに書いた原田さんの原作『キネマの神様』レビュー記事はこちら!)。
もちろん「ジュリー代役主演で映画化」の報を受けて読んだのですが、僕の場合映画独自のあらすじをよく把握していない時期に一気読みしたので、「あのジュリーがブロガーになる!」という原作に沿ったキャラクターを期待したものです。
実際は映画は小説とはまったく異なるストーリー。それでも、愛すべき「原作のゴウ」を僕はジュリーの演技から随所に感じることができたのでした。
ジュリー自身の意識がどうだったにせよ、特に前田旺志郎さん演じる孫とのやりとりのシーンにそれは強く感じられました。
「もし予定通り志村さんがゴウ役だったら」というのはこの映画を観た人すべてが思いを馳せるところでしょうが、結果として良し悪しは言えないにせよ、あの魅力的な、ヤンチャですぐふてくされて誰彼かまわずトラブルに巻き込む情熱家老人「原作のゴウ」に思い入れのある立場から観ると、代役ジュリーはバッチリ嵌ったキャスティングだったのではないか、と「ゴウと孫」のシーンはそう思わせてくれます。
ちなみに「一人娘・歩の息子=ゴウの孫」の設定は原作には無く、このキャラクターの原作からのモデルとなるのが歩の勤務する出版社の編集長の息子さん。引きこもりなスーパー・ネットユーザーとアナログな無頼漢の世代を離れた対比、情の通い合いは映画の方が細やかに描かれていたとも言えましょう。このあたりがいかにも山田洋次監督作品!
好きなジュリーの台詞も、孫とのやりとりのシーンに多かったです。
例えば。
かつて映画製作に打ち込んでいた時代の若きゴウが書いた一世一代の古い脚本『キネマの神様』を手直しして賞に応募する、という孫のアイデアに、ジュリー演じる老人ゴウが曰く
「オマエ、俺に賭けるつもりか?」
直前に「大井競馬にブッ込みたいから金を貸してくれ」との話があるから光る台詞なんですね。
孫に競馬資金をせびるゴウもゴウだし、それをクールに断る孫も孫です。こんなことは過去何度もあったんだろうな、と思わせる2人のやりとりが本当に微笑ましい中、「孫がいつもと違う反応を返してきた」と興奮するゴウの気持ちの昂ぶりがよく表れた台詞でありシーンでした。
あと「オマエ、童貞のくせに分かってるじゃねぇか!」の台詞も好きで、これ「童貞」はジュリーのアドリブのような気がするんですよ。
台本は「ガキ」あたりだったんじゃないかと・・・勝手な推測ですけどね。
②野田洋次郎さんのこれからに期待!
僕も含め、ジュリーファンはやっぱりジュリーの演技目当てで映画館に足を運んだと思います。
で、実際に作品を観てみなさまはジュリー以外のキャストで誰がお気に入りでしたか?
僕は断然、若き日のテラシンを演じた野田洋次郎さんです。個人的には『泣き虫しょったんの奇跡』から俳優としての野田さんを贔屓にしていたこともあります。
菅田さんや永野さん、宮本さん、北川さん、捻持さん達が素晴らしいことは観る前から分かっていましたから、そのぶん僕は野田さんの熱演により集中できたようですね。
映画が終わった後で一緒に行ったカミさんが、宮本さんと永野さんの雰囲気がそっくりだったと言っていました。もちろんその通りで、それはジュリーと菅田さんにも言えること。
ただ僕はそれ以上に捻持さんと野田さんの雰囲気があまりにも合致していたことに驚きました。
野田さんは音楽家としても大成功していらっしゃいます。仕事柄それは知っていたのですが、俳優としてもここまで凄い才をお持ちというのが凄い。天はニ物を与えまくっています。
朴訥で、身の丈を知る好青年。しかしその胸にはあまりに純情過ぎる情熱を隠し持つ若者、テラシン。
原田マハさんの原作には「若き日のテラシン」の描写は一切ありません。ゴウとテラシン、淑子さんの関係性を大きく拡げ踏み込んだ映画オリジナルの脚本に見事生命を吹き込んだ野田さんの演技には、本当に感動させられました。
きっと野田さんは今後も音楽と演技を両立させ、名バイプレイヤー俳優として大成されるでしょう。
顔立ちも併せて、ちょっとサリーさんみたいな雰囲気、大物感が伝わってきませんか?
これからも僕は俳優・野田洋次郎さんを注視し推していきたいと思っています。
そうそう、ひとつだけ、劇中での野田さんの「音楽家ならでは!」という特別な演技について。
若きテラシンが青年時代のゴウを自室に招き入れて「恋の悩み」を相談するシーンで、テラシンはアコギを弾きながら話をするんです。これね、ギターを嗜む人なら一目なのですが、「後から録った音を当てる」という普通の手法ではないですから!
野田さん、演技しながらマジ弾きです。音もその場で同時に拾われています。
ポール・マッカートニーがLIVEで「ブラックバード」を歌う前にMCをしながらGとDのコードトーンのヴァリエーションで軽く音鳴らしている、正にあんな感じ。このシーンだけで、野田さんのアルペジオが相当の腕前であると分かります。
これから映画を観る方、再度鑑賞されようとしている方は是非注目してください。
③コロナ禍と志村けんさん
本来主演であったはずの志村けんさんは、憎きコロナに倒れ天国へと旅立ってしまいました。
山田監督や森本プロデューサーとの深い縁もあり我らがジュリーが代役を快諾、映画は見事完成しましたが、撮影や脚本、製作過程で「対コロナ」のテーマが織り込まれ、何より志村さんへのリスペクトが随所に押し出される仕上がりとなったのは、志村さん亡き後の「路線変更」ではあったでしょう。
そして、緊急事態宣言下での公開。
そんな時ですから僕もやはり都内の大きな映画館に出かけるのは避け、居住する埼玉県でも一番家から近いTOHOシネマで鑑賞することにしました。
公開からある程度日が経っていたこともあり、お客さんは20人いたかどうか。
でも、そんな状況下で鑑賞できたことが、逆にこの映画の「ジュリー代役決定後の新たなコンセプト」を受け止めるにはより適した環境でもあったのかなぁ、と思います。
いつかDVD或いはテレビ放映等で再鑑賞した人は皆、改めて志村さんのことを思い出すでしょう。
そしてその時に「映画館で観たあの頃は本当に大変だったな」と思えるまでにコロナ禍が収束していることを今はただ願うばかりです。
最後に映画評とは本質を離れますが、僕はこの場を借りて、世間ではあまり語られることのない志村さんの素晴らしい音楽の才能、センスについて書き留めておきたいです。
劇中、78歳にして思わぬ名声と評価を得たゴウがお祝いの場で「得意の歌」を披露するシーンがあります。歌われるのはあの有名な志村さんの「東村山音頭」です。
映像で流れるのは「4丁目」「3丁目」まで。ただもちろん僕ら観る側としては、ゴウがその後ノリノリで「1丁目」まで歌ったのだろうな、と想像できます。
のどかな長調の「4丁目」。
哀愁漂う短調の「3丁目」。
そして80年代後半の空前の世界的ラップ・ブームを思いっきり先取りしたファンキーな「1丁目」。
曲想の異なる3つの東村山音頭がそれぞれ本当にキャッチーで、しかも短いヴァースのみで成立さているという志村さん驚愕の才能。
僕は正にリアルタイムで歌が大衆に膾炙してゆく過程を体験し、「子供達が皆歌っている」と言われたその中の1人だったわけですからなおさら感慨深くゴウの歌を聴きました。
これは志村さん主演時から脚本にあったシーンなのか、それとも新たに「追悼」の意を捧げたのか。
いずれにしても「代役はジュリー以外考えられない」という話は、「東村山音頭をゴウが歌う」シーンを以って特に頷けるのです。
☆
さて映画公開からもう2ヶ月以上が経ち、世間ではコロナ感染者数が減ってきているなどと言ってはいますが、最近になって遂に会社同僚や親しい音楽仲間にも感染者が出て・・・僕としては確実に身近に迫ってきているな、という印象でまったく油断できません。
僕は先日2度目のワクチン接種を終えました。
正直とても怖かったです。実は8月に受けた1度目の接種で結構な副反応が出まして。
最近巷で認知されつつある「心筋炎」を皮切りに、ネットで調べたら出てくるレアなケース含めほぼフルコースでした。特に往生したのは一定期続いた吐き気と、なんとも説明し難い身体の脱力感です。
さらに、これは因果関係不明なのですが腰痛と円形脱毛も発症。あと、突然3キロ太った・・・(汗)。
そうしたこともあり普通の人より長い2ケ月弱の間隔を開けての2度目接種。
パスする選択肢も考えられましたが、僕の場合は体質的にコロナ感染すると重篤化の可能性が高いこと、またカミさんがアレルギー持ちでワクチン接種できず、万一感染という時僕が動ける大勢を整えておかなければならないこと、そして何よりジュリーのLIVEに少しでも安心して参加したいじゃないですか。
ということで決行しました。
結果、症状は1度目とほぼ同じで熱がちょっと高かったくらい。覚悟ができていたぶん前より楽に思えます。あらかじめ有給休暇の予約もとっていましたしね。「休む」準備は万端でした。
仕事では、長年同部署で頑張ってきた同僚が8月に大病を患い現在もリタイア中。
業務の負担も増しました。今日からまたまた更新間隔が開いてしまったら、「あぁ、色々と往生してるんだな」と思ってください(笑)。
それではまた!
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