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2021年7月

2021年7月24日 (土)

沢田研二 「言葉にできない僕の気持ち」

from『サーモスタットな夏』、1997

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1. サーモスタットな夏
2. オリーヴ・オイル
3. 言葉にできない僕の気持ち
4. 僕がせめぎあう
5. PEARL HARBOR LOVE STORY
6. 愛は痛い
7. ミネラル・ランチ
8. ダメ
9. 恋なんて呼ばない
10. マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!

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関東はこの1週間すさまじく暑いです・・・。
みなさまお住まいの地はいかがでしょうか。

さて、ようやく僕の住む自治体でも「50代」対象のワクチン接種予約が始まりました。近隣の自治体と比べるとかなり遅かったのでヤキモキしていましたよ。
実際の接種はまだ先ですけど、気持ち的にはこれでひとまず一歩進んだ、という感じかなぁ。


今日は予定通り”ジュリー・アルバム全曲お題記事コンプリート”シリーズでの更新。
せっかくなので季節に合わせて、と選んだアルバムは『サーモスタットな夏』です。
記事未執筆で最後に残っていたお題曲は「言葉にできない僕の気持ち」。ちょっと短めの文量ですが、よろしくおつき合いください。


『サーモスタットな夏』は個人的に大好きな名盤で、『ジュリー祭り』で本格ジュリー堕ちを果たしてから未聴のアルバムを怒涛に大人買いしていた時期、『サーモスタットな夏』はCDのみならず「ジュリーLIVEへの飢え」を満たすべく手を出したDVD作品も印象深い1枚です。
また収録曲では「サーモスタットな夏」「僕がせめぎあう」「PEARL HARBOR LOVE STORY」「愛は痛い」「ミネラル・ランチ」「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」と半数以上の6曲をLIVE体感済みで、セットリスト入り率の高さから、ジュリー自身もお気に入りのアルバムなのでは?と想像しています。

改めてアルバムのクレジットを確認して意外に感じるのは、白井さんの作曲作品が無いことです。
『サーモスタットな夏』は個人的にアレンジャーとしての白井さんのベスト、とも思っていたのですが、ここで白井さんは自身以外の精鋭作曲家競う10篇のアレンジに専念し見事このコンセプト・アルバムを仕上げた、ということなのでしょう。

作家陣を見ていくと、朝本さん、樋口さん、芹澤さん、八島さんの安定感をまず再確認する中、来るべき2000年代ジュリーのハード路線を先取りするような吉田光さんの斬新な2篇と、古き良き時代、ロック黎明期のビートを温め直すような藤井尚之さん珠玉の2篇、このお2人の提供作品対比がとても面白いんですよねぇ。


さて、アルバム音源だと「懐かしきマージービート」な雰囲気ズバリの「言葉にできない僕の気持ち」ですが、ツアーDVDでは時代最先端の楽曲に聴こえてしまうのがこれまた面白い。
柴山さんのエレキがCDオリジナル・ヴァージョンよりだいぶサスティンを効かせていること、この曲では出番の無い泰輝さんがリードする形でお客さんから手拍子が起こっていること、そして何よりポンタさんの生ドラムがその大きな要因でしょう。
オリジナルが機械のドラムですから、ずいぶん印象が違ってきますね。

ジュリーはCDと同じように発声しているんですけど、そこはやっぱりLIVEの人。バンドをグイグイ引っ張っていくのが分かります。

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CDでは良い意味で淡々としているこの曲が何か得体の知れぬ「新しさ」を纏ってしまう不思議なグルーヴ。セットリスト的にもここから「さぁ、新しい曲どんどん行くよ!」という配置になっています(今となっては珍しい、セトリ前半の長~いMCの直後。ポンタさんがいったんドラムセットを離れ着替えてから再スタンバイするほどの時間を割いて色々とおしゃべりしてくれます)し、アルバムの中でも重要度の高い名曲、名演ではないでしょうか。

「言葉にできない僕の気持ち」はその尚之さん作曲の名篇。
もう1篇の「ミネラル・ランチ」も名曲ですが、こちらはズバリ60年代マージー・ビートを意識したロックで、僕が好む洋楽にかなり近い作曲構成です。

白井さんも尚之さんの意図は敏感に感じ取ったようで、いわゆる「ネオ・モッズ」的なアレンジを徹底させています(ネオ・モッズは70年代後半から80年代にかけてのムーヴメントなんですけど、コンセプト自体に「60年代ビート・ロックへの回帰」があり、それが逆に新しかった、という時代の手法です)。
「言葉にできない僕の気持ち」でのネオ・モッズ的手管を具体的に挙げますと、まず「擬似・擬似ステレオ」ミックスに耐えうる楽器パート、フレーズ構成の採用。ヘッドホンで聴くと、アルバム中この曲だけ『G. S. I LOVE YOU』みたいにトラックが左右にくっきり分かれてるでしょ?

あとは、ベースとギターがリフ・フレーズをユニゾンさせる、リズムを小節の頭で突然噛ませる、などのアレンジはいかにもネオ・モッズ直系のものです。
ドラムスに敢えてチープなリズム・ボックスを使ったり、エレキは歪ませてはいるけどサスティン無しの細い音にしたり、というのもポイントでしょうか。
エレキの音は、僕が高校時代に流行ったエフェクター(オレンジ色のディストーション)の初期設定にそっくり。これ、「そうそう!」と分かる人どれくらいいらっしゃるかなぁ?
白井さんの狙いは明快であり、尚之さんの作曲に見事寄り添ったものです。

一方、アレンジ最大の肝であるアコギのストロークについては、おそらくプリプロ音源での尚之さんの演奏を踏襲しそのまま生かしたのではないでしょうか(尚之さんはギターで作曲する、と以前教わりました)。
セーハ・コードを武骨に連ねるストロークは、プリプロ時点での曲のカッコ良さを体現しているようです。

キーは嬰ヘ長調。トニックの「F#」からサブ・ドミナントの「B」、1音上がりの「G#」、或いは豪快に駆け上がっての「A」に移動するなどガチガチのロック志向・・・にも関わらずドミナント・コードの「C#(7)」が登場しないのが尚之さんの工夫で、「次ドコ行くか分かんないよ?」的な進行が「らしさ」なのかな。

これがもしロー・ポジションの「E」(ホ長調)の作曲だったらこういう進行にはならなかったはず。

き、きき君 には イカレたよ ♪
A         C#  B           F#

とか特にね。
「メジャー・コードをアコギのセーハで弾く」のはマージー・ビートの醍醐味と言えましょう。

尚之さんのキャリア・スタートであるチェッカーズは素晴らしい作曲家が揃っていますが、ジュリー・ナンバーで言うと鶴久さん提供の「僕は泣く」(『彼は眠れない』)と尚之さんの「言葉にできない僕の気持ち」を比較してみるのも面白いです。
鶴久さんの方はドミナントも使いますし、途中マイナー・コードにも寄り道して「ポップ」を引き立たせます。
いずれも古き良き時代のロックをオマージュしつつこうした違いが表れるのは、尚之さんが「コードから」、鶴久さんが「メロディーから」作曲されているからではないか、と僕は想像しますが実際はどうなのでしょうか。

ザ・ベストテン世代の僕にとって、尚之さんが在籍したチェッカーズはやはり思い入れのあるバンドです(同じ九州出身、というのも大きい)。
今年の春でしたか・・・NHKでフミヤさんの特番があり、予告で「チェッカーズ時代の曲を歌いまくる」と分かったので、同世代のカミさんと楽しく観ました。

驚いたのは僕が彼等のシングルで最も好きな名曲「NANA」(尚之さん作曲)を歌ってくれたこと。
この曲がNHKで歌われる、というのは結構な事件です。と言うのも「NANA」はシングル・リリース時、「歌詞の一部に卑猥な表現がある」との理由でNHKから放送禁止を食らいましたからね・・・。
でもまぁ、番組内ではフミヤさんもそれを明るくトークのネタにされていましたし、NHKもようやく「過去を脱ぎ捨て」ることができたようで良かった良かった。

で、もちろん尚之さんもバンドで出演されていて。
いくつになってもカッコイイ兄弟です。それぞれのキャラクターが絶妙に違う、というのが良いのかな。
ちょっとブルース・ブラザースのようなバランスだなぁ、と思ったりしたのでした。
僕はよくジュリーのことを「”不良少年のイノセンス”を永遠に持ち続けるロッカー」だと書きますが、藤井兄弟も正にそんな感じですね。


さぁ、これでアルバム『サーモスタットな夏』収録全曲の記事執筆が成りました。過去記事のカテゴリーもアルバム・タイトルに移行させて頂きます。

個人的には90年代ジュリーの中で最も番好きなアルバム。
酷暑続く日々ですが、みなさまもこの名盤を真夏の連休BGMにいかがでしょうか。

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2021年7月17日 (土)

沢田研二 「私生活のない女」

from『架空のオペラ』、1985

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1. 
2. はるかに遠い夢
3. 灰とダイヤモンド
4. 君が泣くのを見た
5. 吟遊詩人
6. 砂漠のバレリーナ
7. 影--ルーマニアン・ナイト
8. 私生活のない女
9. 絹の部屋

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各地で豪雨の被害が相次いでいます。
僕の故郷鹿児島でも、ジュリーが「みんな入ろ」で歌った「せんちゃん」立地の薩摩川内を中心に、川内川流域で甚大な被害が出てしまいました。
これ以上のことが起きないよう祈ります・・・。


さて、バタバタして少し更新間隔が開きました。
今日は休日。しかしこちら関東圏では「危険な暑さになる」との予報が出ていましたし、外出は控えてこの記事を書いています。
やっぱり更新が少ないというのは自分でも淋しいですから、時に短めの文量であってもなるべく間隔を開けずに当面頑張っていきたいものです。

今日はアルバム『架空のオペラ』から「私生活のない女」をお題に選びました。少し前から「書こう」と色々と考えていたお題です。
85年というのはジュリーにとっても特別な年(独立がありましたからね)ですが、実は大野さんの作曲スタイルにも大きな変化があった時期で、今日はそのあたりをメインに考察してみたいと思います。
よろしくお願い申し上げます。

コロナ禍の影響で、先の『BAKKADE』3大都市公演が「1年4ヶ月ぶり」のLIVEとなったジュリー。
タイガース時代からの百戦錬磨のジュリーファンの先輩方にとっても、ここまで長期「ジュリーに逢う」ことができなかったのは初めての経験だったそうで、会場の雰囲気は歓喜に満ちていましたね。

で、そこまで長くはないけれど過去にジュリーが「LIVEを休む」ことがあった・・・と、新規ファンの僕は現時点でジュリー2度の休止期間を認識しています。
1度目は3月に書いた「熱いまなざし」の記事で触れた76年。そして2度目が85年です。
85年当時のジュリーには「休むことは罪だと思うけれど、戻ってきた時には”さすが休んだだけのことはある”と言われたい」という思いがあったようです。
参照資料として、以前に福岡の先輩から授かりました雑誌記事を添付しておきましょう。

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後追いファンの僕などからすると一瞬
「カンヌには仕事絡みで行っているわけだしジュリー全然休んでないじゃん!」
と思ってしまいますが、ここでジュリーの言う「休む」とはテレビ含めたステージ・・・「歌」のことなんですよね?

その後、新生ジュリーが「戻って」きたのが、泥まみれになりながら「指」を歌ったあの映像で合ってるのかな。その前にLIVE復帰があったんでしたっけ?
このあたりが僕にはまだ把握できていません。

そして、心機一転のニューアルバム『架空のオペラ』でジュリーが作曲を託したのが大野さんであったという(先行シングルにして自作の「灰とダイモンド」以外の全8曲)、ここにジュリーの「歌」への決意が見てとれます。
声との相性を重視したとのことですが、そこにはセールス絶頂期を思い起こしたり、遡ってのPYG→井上バンド、さらに以前のGS期のエッセンスを求めての大野さんの起用でもあったでしょう。

ただ、もちろん大野さんは70年代と変わらぬ素晴らしいメロディーでジュリーの期待に応える一方、自身の製作アプローチの変化、進化も存分に投入してきました。
結果『架空のオペラ』は、メロディーやコード進行については70年代ジュリー・ナンバーを受け継ぎつつ、アレンジ、演奏については大野さんの新たな表現も前面に出た異色作、「他に似たアルバムが無い」貴重なジュリー名盤となったのです。

ジュリー絡みの知識は完全に後追いの僕ですが、この頃の大野さんの変化はリアルタイムで追えています。
言うまでもなく『太陽にほえろ!』サウンドトラック(番組の音楽クレジットは「井上堯之バンド」→「フリーウェイズ」→「大野克夫バンド」と変遷しますが作曲はすべて大野さん)で。

僕は高校進学後バンドに熱中したこともありほとんどテレビを観なくなった中で『太陽にほえろ!』は時々観ていて、特に殉職篇や新人刑事着任篇は必ず観るようにしていました。サウンドトラックもずっと追いかけていましたから、新人刑事着任篇では新たなレギュラーのテーマ曲(=大野さんの新曲)のお披露目も大きな楽しみのひとつでしたね。
華麗な王道メロディーの作曲自体はそのままに、大野さんの劇的なアレンジ・アプローチの変化が突如訪れたのが84年11月、新任のマイコン刑事(石原良純さん)のテーマです。
素人でもそれと分かる「テクノ風」なニュー・ロマンティック、大胆なサンプリング・エフェクトの導入。

まぁこの曲の時点では「マイコン」なるニックネームにちなんで敢えてそういうアレンジにしたのかな、と考えられたものの、86年の橘警部(渡哲也さん)&DJ刑事(西山浩司さん)着任篇において、いきなりメインテーマ(誰もが知る「ミドラ~♪」ってアレね)のアレンジまでもが激変(「メイン・テーマ’86」)。
とにかく全編チャカポコ、チャカポコな感じで、いわゆる「シンセ~!」な仕上がり。
さすがの僕も当初これには戸惑って「ちょっとやり過ぎなのでは?」と感じていたものです。
しかしその後サントラ盤でフルサイズのヴァージョンを聴くとギター・ソロとか最高にカッコ良くて、「以前のアレンジのヴァージョンと甲乙つけ難い、これが大野さんの新境地か!」と病みつきになりました。

『架空のオペラ』はそのちょうどド真ん中の時期に製作されているわけです。
つまり『架空のオペラ』での大野さんのアレンジ、演奏はまず「マイコン刑事のテーマ」でスタートしたアプローチを引き継ぎ、さらに86年の『太陽にほえろ!』音楽改変時に大きな影響を与えている、というね。

そこで「私生活のない女」です。
『架空のオペラ』収録曲中、最も『太陽にほえろ!』サントラと一線で結びやすいのがこの曲。リアルタイムでアルバムを聴いた先輩方も、一番「打ち込み感」を覚えた曲が「私生活のない女」ではなかったですか?

まず『マイコン刑事のテーマ』で導入されたスネア以外の音での「連打」サンプリングがここで採用されています(これはほぼ同時期に『太陽にほえろ!』サントラで「デューク刑事のテーマ」にも引き継がれています)。

さらに「私生活のない女」で是非注目して頂きたいのが、1'30"で唐突に登場する半音上がりの転調。
ポップ・ミュージックにおいて半音上がり、或いは1音上がりの転調は王道手法です。ただしそのほとんどは、「最後にもうひと盛り上がり!」といった楽曲の終盤、「ダメ押し」的な箇所で転調させます。
ジュリー・ナンバーで言えば「君をのせて」とか「あなたへの愛」とかね。

それが「私生活のない女」では、歌メロ1番と2番の境目に半音上がりの転調がくるんですよ!
楽曲の真ん中に半音上がりの転調があり、前後半のキーを二分する」 という、ポップス史上稀少な構成に仕上げられたわけです。

1番(ホ短調)

ピリオドのない退屈が
Em

今日も貴方をダメにする
D

プログラム通りに その身体を過ぎていく
C                                B7

おきまりのKISS ♪
              Em

2番(ヘ短調)

危なげだったあの頃が
Fm

貴方の夜に訪れる
E♭

悪戯に愛され たわむれに愛した
D♭                          C7

夏の日の恋 ♪
            Fm

「マイコン刑事のテーマ」を皮切りにサンプリング系の製作へとシフトした大野さんはその後、ややもすると単調になりがちな打ち込みパターンにいかに楽曲中の「要所」を載せていくか・・・様々な工夫を凝らす過程でこのアイデアを考案し、「私生活のない女」で初めて採用したのではないでしょうか。

そしてそのアイデアは86年の「DJ刑事のテーマ」に明快に受け継がれたのです(1’10”あたりに半音上がりの転調があります。ちなみにこの曲では、最後の最後に半音下がって元のキーに戻るオチを追加するオチャメな大野さん!)

拙ブログではこれまで、僕の「原風景」「自覚しないまま得ていたジュリー・サウンドへの資質」として何度も『太陽にほえろ!』サントラに触れてきました。
「私生活のない女」は、激烈、華麗な名曲が並ぶ『架空のオペラ』にあって決して目立つ歌ではありませんが、大野さんのアレンジ、演奏に特化して聴くと個人的にはとても大切に思える1曲。
「隠れた名曲」だと思っています。


最後に蛇足ではありますが・・・2009年以降の「マキシ」形式を除くそれ以前のジュリー・アルバムの中、これにて『架空のオペラ』は『G.S I LOVE YOU』『ROCK'N ROLL MARCH』『S/T/R/I/P/P/E/R』に続いて「ひとまず全収録曲のお題記事を書き終えた」1枚となりました。
各過去記事のカテゴリーもアルバム・タイトルに移行することとします。

感慨深いんですよね・・・僕と同時期(『ジュリー祭り』開催年)にジュリー堕ちされた方や、ファン復活された中抜け組の方ならお分かり頂けるかと思いますが、未聴の過去のジュリー・アルバムにはとにかく廃盤状態のものが多く、それらをなんとか遡って集めていこうという過程で、当時『架空のオペラ』が「最後に残された1枚」となった方は多いのではないでしょうか。
なにせ中古で1万円越えは当たり前。僕もさすがに手が出せずにいました。
「手に入らない」となると、アルバム・タイトルから不思議な「神々しさ」さえ感じられてくるというね。

個人的には先輩のご好意で音源だけは2009年に聴けていましたが、「正規品には一生巡り逢えないのでは」と思っていました。しかしその後CoCOLO期、EMI期と併せ待望のCD復刻は成り、今ではこうしてジャケットも歌詞カードも手元にあるわけです。
まさかこんなに早く全曲の記事を書き終える日が来るとは、10数年前では考えられないことでしたね。
まぁ「灰とダイヤモンド」「吟遊詩人」「砂漠のバレリーナ」「影-ルーマニアン・ナイト」あたりはヒヨッコ時代丸出しの浅い考察しかできていませんから、機会あらば改めて書き直したいとは思っていますが。

その『架空のオペラ』、これまで僕が収録曲中LIVE体感できているのは「灰とダイヤモンド」「砂漠のバレリーナ」の2曲です。
「砂漠のバレリーナ」を生で聴いた(2010年『歌門来福』)、というだけでジュリーファンとしての格が爆上がりしたように思ったものですが、そろそろ他の曲も・・・と切望しています。
今後セトリ入りの可能性が高いのは、ラジオ『ジュリー三昧』でジュリー自身が「大好き」な歌とまで語ってくれた「君が泣くのを見た」でしょうか。
『BALLADE』追加公演ではさすがに無いでしょうが、来年以降期待したいです!


そでれは次回更新は・・・。
今日『架空のオペラ』全曲の記事をひとまず書き終えることができましたが、他に「あと残り1曲を書けば収録全曲の執筆終了!」というジュリー・アルバムが現時点で5枚ありますので、せっかくですからこの勢いでもう1枚「コンプリート」しておこうかと。

どのアルバムにするかはまだ未定。とにかく早めの更新で頑張りたいと思います。

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2021年7月 4日 (日)

ザ・タイガース 「エニーバディズ・アンサー」

from『ザ・タイガース/サウンズ・イン・コロシアム』

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disc-1
1. ホンキー・トンク・ウィメン
2. サティスファクション
3. スージーQ
4. アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー
5. ルート66!
6. ドック・オヴ・ザ・ベイ
7. ザ・ビージーズ・メドレー
8. ルーキー・ルーキー
9. コットン・フィールズ
10. 監獄ロック
11. トラベリン・バンド
12. ラレーニア
13. ホワッド・アイ・セイ
disc-2
1. 都会
2. ザ・タイガース・オリジナル・メドレー
3. スマイル・フォー・ミー
4. 散りゆく青春
5. 美しき愛の掟
6. 想い出を胸に
7. ヘイ・ジュテーム
8. エニーバディズ・アンサー
9. ハートブレイカー
10. 素晴しい旅行
11. 怒りの鐘を鳴らせ
12. ラヴ・ラヴ・ラヴ

-------------

みなさま、『BALLADE』追加公演の先行発売争奪戦はいかがでしたか?
僕はフォーラムのみの参加で他会場の枚数状況はチェックしませんでしたが、渋谷公会堂とか初日の博多とか、かなり大変だったんじゃないですか?

いずれにしても、渋谷に行ける人が羨ましい・・・僕は11月の千穐楽まで辛抱です。


それでは、今日はかねてからの予定通り『ザ・タイガース/サウンズ・イン・コロシアム』収録、グランド・ファンク・レイルロードのカバー「エニーバディズ・アンサー」を採り上げます。

敬愛するタイガース・ファンの先輩、真樹さんが天国へと旅立たれてから今日で丸3年が経ちました。
7月4日は拙ブログが「この日は必ず更新」と決めている日付のひとつ。毎年、タイガースの音源をお題として真樹さんに捧げています。

今日のお題「エニーバディズ・アンサー」は何と言っても5月に四谷LOTUSさんで開催された『PEEが奏でる四谷左門町LIVE2021』で「ピーさんが50年ぶりにドラムを叩いた」ステージを目の当たりにした・・・ばかりか、縁あってLIVEのお手伝いをさせて頂いた関係で、本番に向けたスタジオ・リハーサルで少なくとも10回はピーさんの熱演を間近で体感したという、僕としては今年この日に書くのはこれしかない!と思える1曲。

そんなわけで今日はコロシアムだけでなく1.24武道館のタイガースのLIVE音源もおさらいすると共に、直近のピーさんの進化した演奏にも触れながら書いていきます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。


まず、左門町LIVEの主催者・YOUさんが「エニーバディズ・アンサー」のセットリスト入りを決めてピーさんに伝えたところ、ピーさんがかつてこの曲を演奏したことを「覚えていなかった」という衝撃の事実については、先の「ロード246」の記事でも書いた通り。
リハのスタジオで「いやぁあの時は時間も余裕も無くて」とピーさんが語ってくださったのは1.24の解散コンサートを指してのことだったのですが、よく考えたら「エニーバディズ・アンサー」はコロシアムでも演奏されているんですよね。
それでも覚えておられなかったのか・・・(笑)。

そこには様々な要因があるかと思いますが、僕が考えるに、ピーさんのみならずタイガースのメンバーにとって「エニーバディズ・アンサー」は「ハートブレイカー」と「2曲でひとつ」のイメージが強かったんじゃないかな、と。
これは僕自身が左門町LIVEの準備過程で改めて気づかされたことですが、上記GFRの2曲はとてもよく似ていて、キーが同じロ短調、トニックのBmから展開するコード進行も王道。
「エニーバディズ・アンサー」にはイントロとエンディングに3連へのリズムチェンジがあり、エンディングのそれがそのまま全編3連の「ハートブレイカー」イントロに置き換えることができます。

で、2曲のうちジュリー・ヴォーカルの3連適性や有名な「エビ反り」パフォーマンスでファンに熱狂的支持を得た(と後追いで知りました)「ハートブレーカー」の方が演者であるメンバーの記憶に強く残り、「エニーバディズ・サンサー」はちょっと地味な位置づけになっていたのかもしれません。
しかしこちらも当然の名曲であることはGFRの原曲、タイガースのカバー音源が共に示す通りです。

僕は「エニーバディーズ・アンサー」についてはタイガースのカバーを先に知りました。タイガース・ファンとしてはむしろそれが王道パターン。
個人的には歌詞の波長が合わない箇所もある曲なのですが、GFRの演奏は素晴らしく、技術もさることながら「スリーピースでこうなるのか!」という驚愕のテンションで繰り広げられるアンサンブルが凄まじいです。
ラジオっ子のカミさんが毎週「ばんばひろふみのロックな夜話」という番組を愛聴していて隣の僕の部屋まで聞こえてくるんですけど、ちょっと前にGFRの特集があり、「彼等がまだ無名の頃にレッド・ツェッペリンの前座で演奏したら、あまりの凄さにツェッペリンのメンバーがビビってしまった」との逸話をばんばさんが紹介してくださっていたっけ・・・。

そんなGFRの演奏を当時タイガースはとても丁寧にカバーしています。
タイガースの場合はギターが2本ですから(テンポチェンジ部以外のコード・ストロークのパートはシローさんですよね?)タローさんの負担が多少軽いとは言え、サリーさんのベースとピーさんのドラムスは誤魔化しが効きません。よって、タイガースのLIVEバンドとしての実力を語る上で、「エニーバディズ・アンサー」はこれ以上無い洋楽カバー曲と言えるでしょう。

では、そのタイガースの2つのライヴ音源を比較してみましょう(『フィナーレ』ではカットされている1.24の「エニーバディス・アンサー」は、5枚組のCD-BOXで聴くことができますね)。
面白いのは、サリーさんはコロシアムの方が、ピーさんは武道館の方が入魂度の高い演奏をされている、という・・・僕は有り難いことに武道館の当時のお話をピーさんから直接伺う機会がありましたから、今はなおさら
「気持ちって音に出るものなんだなぁ」
としみじみ聴き入ってしまいます。

いやしかしコロシアムのこの曲のサリーさんのベースは凄い。これはタイガースのステージとしてはサリーさんのベスト・プレイじゃないですか?
ガレージ以上の「うなる」という表現がズバリなピック奏法です。

ピーさんのドラムスでは、中間部でジュリーが絶唱する「SUN・・・♪」に満を持して噛み込んでくるキックの連打に注目して2つのヴァージョンを聴き比べるのがお勧めです。
武道館のヴァージョンは正に「鬼」。次の曲、さらにその先の曲のために体力をとっておこう、なんて考えはこのステージのピーさんには微塵も無かったようですね。
「誓いの明日」や「ラヴ・ラヴ・ラヴ」でピーさんのドラムスに乱れが生じているのはおそらく足が攣り、とうに限界を振り切っていたからなのだ・・・武道館ヴァージョンの「エニーバディズ・アンサー」は、タイガースの4年間を体感できなかった後追いファンの僕にそう示してくれるドラムス・テイクです。

タローさんのギターは2つのヴァージョン甲乙つけ難いところで、個人的な好みはコロシアムかな。
ただ武道館の方は音が太くて、ハードロックをよく聴く人はこちらが好き、と仰るかもしれません。

いずれにしても『サウンズ・イン・コロシアム』は「エニーバディズ・アンサー」「ハートブレイカー」2曲を繋がって楽しめるという点が非常に大きく、やはりタイガースLIVEの記録としての名盤ぶりは際立ちますね。
ここまで書いた2つのLIVE音源はいずれもピーさんのドラムが右サイドにミックスされており「聴きとり易い」一方で、サイドのトラックにギュッと振り分けるということはすなわち音を拾っているマイクは多くて2本(1本の可能性も高いと思います)。
ピーさんが凄まじい音量と手数足数で熱演されていることは充分伝わりますが、「生」の迫力はどうしても当時の録音技術的に半減してしまっています。

そこで触れておきたいのが「左門町LIVE2021」の「エニーバディズ・アンサー」ですよ。
そもそもピーさん自身に年齢と反比例するかのような「年々打点が強く大きくなる」進化があり、これは是非多くのタイガースファンの皆様に無期限アーカーブ(購入のご案内はこちら!)で鑑賞して頂きたい・・・「エニーバディーズ・アンサー」も本当に凄いドラムスですから。

加えてこれはピーさんの演奏スタイルが改めてよく把握できる1曲でもあります。
基本はスネアとキック、ハイハットのコンビネーション(神出鬼没にして強打の裏拍キックがピーさんの持ち味であったことを、この2年で実感させられました)。
その上で思いっきり打ちおろすクラッシュ・シンバルや随所に登場するロールは、華麗なアクセントであると同時に「魅せる」演奏なんですよね。
「技術的には理に適っていない」とも言えてしまう左右の手の動き、大きなモーションで繰り出される演奏は、当時爆発的な人気を得た「ザ・タイガースのドラマー」として宿命づけられたピーさん唯一無二のスタイル。
このスタイルのままピーさんが今も進化し続けている、というのがまた凄いんですけど。

最後に。
僕はここ2年の左門町LIVEにまつわる貴重な体験を通して、ピーさんのドラムスの「聴き分け」に相当な自信をつけました。
例えばスタジオ・レコーディングのタイガース・ナンバーについて「これはピーさんの演奏じゃなかったのか」と気づかされる楽曲も少なからず出てきています。
ただ、そういう聴き方って実は邪道なんですね。そんなことは考えずに聴く方が楽曲への思い入れや理解は深まるし、楽しいはず。

その意味で、間違いなく「タイガースの音」が詰まっている不朽のライヴ盤『サウンズ・イン・コロシアム』は僕の中で急速に重要度を増している作品です。
もちろん『ヒューマン・ルネッサンス』『自由と憧れと友情』のオリジナル・コンセプト・アルバムへの高評価は不変ながらも、「タイガースってライヴ・バンドだよなぁ」と今さらながらに感動します。
このあたりが、なかなか感覚として追いつけない、後追いファンのハンデだったのでしょうね。

真樹さんはこのコロシアム公演をリアルに体感されています。
当時高校生か大学生でいらしたのかな。
「だんだん陽が傾いてきて、風が出てきてね・・・」と思い出を話してくださった言葉がずっと忘れられません。
その「陽が傾いて、風が出てきた」のはちょうど「エニーバディズ・アンサー」が演奏されていたあたりの時間だったんじゃないか、と僕は想像するわけです。

穏やかな風だったのか、それともタイガースの近い将来への不安煽られるような風だったのか。
当時現地に駆けつけた先輩方にしか分からない独特の風が流れていたことは間違いないのでしょう。

来年のこの日も、また『サウンズ・イン・コロシアム』から1曲書こうかな、と思っています。



東京五輪、本当にやる気みたいですね・・・。
先月の「TOKIO」の記事で、僕は心情的には「中止した方がよい」と思うけれど、この時に向け想像を絶する努力を積み重ねてこられた各国代表アスリートのみなさんが世相に後ろめたい気持ちを抱えてしまうのではないか、とも考え「強行とは言えいざ開催ならサニーサイドに切り替えて応援」と書きました。
でもせめて無観客にならないものか・・・このままではやはり不安、心配が尽きません。
あと「五輪開催仕様の祝日スケジュール」の報道、全然観ないけど世間は大丈夫なのかいな。

と、色々思うところもある中で、まずは自分自身が気をつけて過ごす・・・それしかありませんね。

この土日は各地で大雨、長雨による大変な被害が出てしまいました。
気温天候変動の激しい季節、みなさまも充分お気をつけて、そしてお身体ご自愛ください。

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