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2021年6月25日 (金)

沢田研二 「淋しいのは君だけじゃない」

from『act#7 BUSTER KEATON』、1995

Buster1

1. another 1
2. ボクはスモークマン
3. あくび・デインジャラス
4. ストーン・フェイス
5. サマータイム
6. グレート・スピーカー
7. 青いカナリア
8. 淋しいのは君だけじゃない
9. チャップリンなんか知らないよ
10. 無題
11. another 2

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今年もやってきました、6月25日。
ジュリー、73歳のお誕生日おめでとうございます!

7401nitigeki12

↑ 毎年恒例・記事お題とはまったく関係ない、若ジュリーの「ありがとう」と言ってそうなショット。
 今年の出典は74年1月『沢田研二ショー』パンフレットより。
 
今日帰宅すると、『BALLADE』追加公演のお知らせハガキが届いていました。
(関東圏の我が家にはたぶん昨日到着していたんだと思うけど、昨日はポストを見ていなかったのです)

先のフォーラムMCで「秋の予定」を話してくれた際にはまだ確定ではなかったのか言及されなかった宮城、長野、新潟の地方公演もあり、さらには久々の神奈川県民ホールも。
ジュリーの誕生日とともにお知らせを受け取られた(言及のあった博多を含めた)各該当地のファンのみなさまの喜びが想像できるようです。
ジュリー、粋なことをしますねぇ。

ただ個人的には、渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)が月末の平日月曜日というのはキツイ・・・。
その日は早退ができそうもなく、僕の参加はツアー千穐楽、11月のフォーラム1本となりそうです。

ともあれ、とても嬉しい6月25日のジュリーからのお便りでした。

さて拙ブログで近年、ジュリー誕生月の6月に集中更新するパターンが多い『act』ナンバーお題記事。
今年はこの25日の1本のみとなってしまいましたが、ジュリー73歳の誕生日に『BUSTER KEATON』から「淋しいのは君だけじゃない」の記事を捧げ、お祝いに代えたいと思います。

Buster3


僕は数年前からエルヴィス・プレスリーの音源の勉強を始めており、ようやくプレスリー・ナンバーの知識も楽曲数3桁に迫るところまで来ました。

勉強開始のきっかけは、『act-CD大全集』各作品の中でも上位級に気に入った『ELVIS PRESLEY』収載曲のオリジナル・ヴァージョンに興味を持ったからです。
それまで僕はプレスリーについて「本当に有名な曲をいくつか、なんとか知っている」程度でしかなかったのです。「ハートブレイク・ホテル」とか「ラヴ・ミー・テンダー」とかね。
これではイカンとまず購入したのが豪華3枚組のベスト盤。act『ELVIS PRESLEY』で知った楽曲が次から次へと飛び出し、初聴から楽しんだことを覚えています。
まずジュリーのカバーで曲を知り、それからオリジナルを聴く・・・このパターンも良いものですね。

そんな3枚組ベスト盤の中で「えっ、これもプレスリーだったのか!」と驚きを以って遅まきながらの把握となったのが、「Are You Lonesome Tonight?」=邦題「今夜はひとりかい?」なるワルツ・バラード。
そう、これが本日のお題「淋しいのは君だけじゃない」の原曲というわけです。

Areyoulonesometonight

↑ 『ELVIS PRESLEY/GUITAR CHORD SONGBOOK』より

プレスリーの有名なヒット曲のひとつとしてよく知られているらしいですが、不勉強だった僕はCD『BUSTER KEATON』を聴いただけでは、この曲をプレスリーと結びつけることができませんでした。
調べますとなかなか面白い逸話を持つ曲のようで。
「今夜ひとりで淋しくしてるの?」と問いかける色男にして「キング」なエルヴィスの「語り」も含んだバラードに、一般リスナーばかりか業界の強者達すらメロメロにされたらしく・・・この曲のアンサー・ソングのような内容の歌を何人かの女性シンガーがこぞって歌ったのだとか(「淋しいに決まってるわよ!」みたいな感じ?)。
僕はこういう話、好きですねぇ。
歌がさらに歌を生む、という・・・ジュリー(最初はタローさん)の「Long Good-by」と、ピーさんの「道」もそうした関係にありますし。

97年の『ELVIS PRESLEY』に先駆けて95年の『BUSTER KEATON』、プレスリーも好きなリアルタイムのジュリーファンの先輩方は、ジュリーが「今夜はひとりかい?」を採り上げてくれて「わあ~」と感激されたでしょう。
また『BUSTER KEATON』では、全盛期にプレスリーと人気を2分したと聞くパット・ブーンのカバーである「あくび・デインジャラス」が歌われているのも面白い選曲だったんだなぁと思ったりします。

「淋しいのは君だけじゃない」は、日本語詞もジュリー自身です。
以前「VERDE~みどり」(『SALVADOR DALI』)の記事でも書いたように、原詞のフレーズやコンセプトをうまく採り入れつつ、actのテーマ人物の背景をキチンと反映させてくるのがジュリーのact自作詞群の魅力。

「淋しいのは君だけじゃない」 でのキートン像として、詞中で語りかける「君」があたかも自分の分身のような存在であることを感じさせてくれます。
ちょっと強引なようですけど、今改めてこの日本語詞を読んで思い出すのは、『BALLADE』に向けて僕が”全然当たらないセットリスト予想”シリーズで採り上げた「悲しくなると」でした。
「さびしさが逢いにきてくれる」という若き日のジュリー独特の感性が、「淋しいのは君だけじゃない」にも生かされているように感じるのです。
孤独(空白)の夜のひとり語り、ですね。

また、僕が初めてプレスリーの「今夜はひとりかい?」を聴いて歌詞を読んだ時、「おやっ?」と考えたことがありまして。
原詞で描かれているシチュエーションが、ジュリー83年の自作詞ナンバー「BURNING SEXY SILENT NIGHT」とかなり似ているなぁ、と。
ジュリーは世代的にこの曲をよく知っていたでしょう。もしかするとオマージュ元だったのかな?

楽曲自体の聴きどころはやはり「語り」のヴァースがあること。
プレスリーの方は丸々ワンコーラス語りに当てています(楽器のソロが無いシンプルなアレンジです)が、ジュリーはおよそその半分に限られ、なればこそ貴重。
トロンボーンのソロをある程度聴かせてから満を持して語り出す(その間、ソロがサックスに引き継がれる)、というのがニクイではありませんか。

『BUSTER KEATON』のホーンはトロンボーン×サックスという編成です。
ここにトランペットが加われば王道のホーン・セクションなんですけど、それが無い。必然、通常「縁の下の力持ち」的な役割のトロンボーンが主を張るパターンが多々あり、これが新鮮なんですよね。
トロンボーン独特のスライド感と落ち着いた音色が、「動き回る」サックスとよく対比されているようなアレンジ。「淋しいのは君だけじゃない」では双方のソロのリレーがありますから、なおさらその対比が際立ち、そこにジュリーの「語り」が加わるのが素晴らしい!
ちなみにキーは「今夜はひとりかい?」も「淋しいのは君だけじゃない」も同じハ長調です。1音上げてニ長調で歌った方がジュリーのキーには合っているかなぁ、と思いますが、ホーン・プレオヤーにとってはハ長調の方がありがたいでしょう。

さらに言うと、ホーンの陰でベースと共にリズムを支えているのが柴山さんのギターなのです。
これでビッグバンド・スタイルの雰囲気も楽しめる、という(ビッグバンドにおいてはギター或いはピアノが「リズム・セクション」に分類されます)。

多忙のため舞台演奏から外れざるを得なかったcobaさん不在のactで登板した柴山さん。
演奏の「重鎮」的な役割を果たし、ジュリーも頼もしかったのではないでしょうか。

ヴォーカルについては、「語り」はもちろんジュリーの歌そのものの「憑依力」が格別な1篇。
僕はよく「actシリーズでのワルツ率の高さ」を書きますけど、やっぱりジュリーが歌うワルツは良いですねぇ。
以前ジュリーは『EDIT PIAF』で歌ったワルツ・ナンバー「群衆」について「歌っていると興奮してくるんですよ!」と語ったことがありました。あの曲の場合はテンポやメロディーの抑揚の要素もあるかと思いますが、やっぱりワルツや3連符とジュリー・ヴォーカルの相性の良さはタイガース時代から継続してある、と思います。

加えて「生」の高揚感でしょうか。actの音源は生のステージですからね。
思えば『BALLADE』初日東京公演でのMC、「生がイイ」はファンの僕らとしても実感の言葉でした。
セットリストにワルツは無かったですけどね・・・。
(僕の予想は今回も大外れ。でも「3連」含めれば「渚のラブレター」と「ハートの青さなら 空にさえ負けない」がありましたよ!))。

95年はジュリー節目の年でした。
新譜を自らプロデュース、それはその後ずっと継続されています。
そんな年にactで演じたのがキートンだったというのも何か暗示的。そこで、どのような狙いでこのプレスリー・ナンバーが採り上げられたのか・・・そもそもプレスリーとキートンの関連は?
映像を観れば何か分かるのかなぁ。

ジュリー、プレスリー双方のヴァージョンともに興味尽きない名曲です。


それでは次回更新は7月4日の予定です。
この日はかつて大変お世話になり仲良くさせて頂いていたタイガース・ファンの先輩の命日で、先輩が旅立たれてからは毎年タイガースの曲を書く日と決めていますが、今年も昨年に続き不朽のライヴ盤『ザ・タイガース/サウンズ・イン・コロシアム』から洋楽カバー曲を採り上げたいと思っています。

あの名盤の中に「今年書くならこれしかないだろう」という1曲があるんですよね。
頑張りたいと思います。

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コメント

DY様

大好きな曲です。
切なくて、優しくて。
特に
「恋は違う夢を 重ねるため 思いのたけ 受け止めあう儀式」
本当にそうだよなぁ。自分の想いだけで突っ走っちゃいけません。とか。

『BUSTER KEATON』は無表情の仮面の下の悲しみと切なさが優しさに昇華していくような作品でした。

投稿: nekomodoki | 2021年6月29日 (火) 00時08分

nekomodoki様

ありがとうございます!

僕は未だ映像を観ずにactの曲を書いていますので(汗)端的な感想しか持ち得ませんが、この曲はじめ、ジュリーの日本語詞は大きな魅力ですよね。
元々の曲が良い上に、ジュリーの詞。歌のみならず言葉についても感性の鋭い歌手なんだなぁと分かります。

『BUSTER KEOTON』は、コミカルの中の悲哀を感じる曲が多くてCD大全集の中でも好きな1枚です。
一番好きなのは、ジュリーの詞ではありませんが「another 1」。これは個人的にはact全作品の中でも2~5番手に入ってくるほど好きな曲です!

投稿: DYNAMITE | 2021年7月 1日 (木) 09時21分

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